September 10, 2013
今シーズンのヤンキース監督ジョー・ジラルディのイチロー起用については、多々、言いたいことがある。
とりわけ、今シーズン、イチローのバッティングが好調であっても不規則、不連続な起用を止めず、さらには、起用するにしても、今シーズンの夏までに限っていえば左投手よりも打率が低かった右投手先発ゲームばかり起用し続け、結果として、バッティングを(さらに、ときに守備の勘さえも)「冷やし」続けてきたことについて、不快感を隠そうとは思わない。
例:Yankees hottest hitter, Ichiro Suzuki, pulled from game by Joe Girardi in double switch - NY Daily News
「イチローがあまりにも絶不調だから先発を外されている」とか、「ジーターやAロッドが戦列に復帰したから、イチローをより打率の高い左投手先発ゲームをメインに起用する」というふうな、十分に合理的な「イチローを起用しない理由」「起用を減らす合理性」があるならば、こんなめんどくさい図を作ってまでして、文句をつけようとは思わないが、ジラルディの選手起用には合理性が欠けている。だから文句をつけるのが当然だ。
(ジラルディが「野手のバッティングを冷やした」のは、なにもイチローだけではなく、イチローと同じように、起用されたり、されなかったり、行き当たりばったりに起用され続けている他の打者でも、同じような事態は起きている)
大いに不満な今シーズンのイチローの起用ぶりを記録として残しておくため、まずは以下の図を用意してみた。長大な図だから、そのまま見るのではなく、まずはクリックして別窓にファイルを開き、さらに図をクリックして拡大して、「原寸大」で見ることをすすめる。
わざわざこんな図を作ったのは、ひとつには、後世の人に「2013年にイチローのバッティングは衰えた」などと、わけのわからない誤解をしてもらいたくないからだ。
マルチヒットで調子を上げかけるたびに、毎試合スタメンで使われるようになるどころか、むしろ先発から外され、マイナス30度の冷蔵庫で冷やされるような馬鹿馬鹿しい、不合理な起用ぶりで、ホットなバッティングが維持継続できるわけがない。
また、これも後世の誤解を避ける意味で、「2013年8月以降のイチローは、右投手をまるっきり打ててないわけではない」こともハッキリさせておきたい。
図からわかるように、イチローは、右投手先発ゲームにばかり起用され、バッティングを「冷やされ」だした「8月9日以降から9月8日まで」の1か月間において、右投手先発ゲームで出場した試合数の約3分の1にあたる「6試合」でマルチヒットを記録しているからだ。
つまりは、こういうことだ。
2013シーズンのある時期、イチローが右投手を打ちあぐねた時期があったのは確かであるにしても、他方で、左投手からかなりのヒット数を効率よく稼いだことによって、トータルには打率を2割8分台に乗せ、さらに上昇させつつあった。(そしてシーズン当初、チームは地区首位を走った)
にもかかわらず、ジラルディは、2013年シーズン終盤に突如としてイチローを、打率の高い「左投手先発ゲーム」ではなく、むしろ、より打率の低い「右投手先発ゲーム」でのみ起用する、不合理きわまりない起用法をイチローに押し付けだして、そのことは結果的にイチローのバッティングを「冷やし」た。
しかも、当初は、左投手先発ゲームのゲーム終盤の代打や守備要員としてゲームに出ていたが、やがてベンチに座ったままゲームが終わることが目立ちだした。
その結果、イチローのプレータイムは、「得意な左投手ゲームでの完全な欠場」と「苦手な右投手ゲームでのスタメン」が交互に繰り返される異常な状態にあり、しかも、「出場するたびに、異なる打順を打たされる」ような、データ上の合理性がまったく欠如し、かつ、プレーヤーに過度のストレスのたまる状態に直面させられだした。
イチローが8月初旬以降の1か月の右投手先発ゲームで記録した「6回」のマルチヒットは、そんな「わけのわからない起用」のさなかに記録されたものなのだから、むしろ、たいしたものだといえる。
基本的に言いたいことのひとつは、「イチローの出場ゲーム」を表す図の右半分において、「赤色部分(=マルチヒットのゲーム)と、青色部分(=イチローが先発起用されてないゲーム)とが、常に交錯して存在していること」によってハッキリ示されている。
これは、イチローにマルチヒットが続きだしたとき、あるいは、その直後、必ずといっていいほどジラルディはイチローを先発から外していることを意味している。
具体的にいえば、例えば「7月28日」にイチローは「左投手先発ゲーム」で4安打している。にもかかわらず、ジラルディは、その直後の「左投手先発4ゲームを含む8ゲーム」において、半分の4ゲームでイチローを先発させず、左投手先発ゲーム4試合のうち、3試合を先発させていないのだから、この監督の起用は意味がわからない。バッティングが「冷えて」当然である。
同様に、「8月9日」に3安打、「8月18日・20日」には2日続けて2安打しているにもかかわらず、数試合で先発から外されている。また「8月30日」には逆転2ランを打ったにもかかわらず、直後に左投手先発ゲームが3試合続くと、ジラルディはイチローを先発から外し続けた。
図から、7月末以降にイチローが、今シーズン得意としている左投手先発ゲームで、ほとんど起用されていないこと、さらには、たとえ左投手相手にマルチヒットを打ったとしても先発起用が続かないことは、図の最も右側に記した「右」というマークと、イチローの打撃成績を対比させてもらえばわかるはずだ。
8月以降にイチローが左投手のときに先発することもあったように思う人がいるかもしれないが、それは「9月8日」がそうであるように、ジーターが怪我で休んだとか、何か理由があってのことで、ジラルディは左投手先発の日は基本的にはイチローをスターターから外している。
また、この図から、言いたいこと、言えることは、単に「左投手先発ゲームでもイチローを使え」などというような、単純なことばかりではない。
例えば、あまり言及している人がいないことだが、7月にヤンキースと対戦したチームは、大半のゲームで右投手を先発させている。(左投手より右投手のほうが得意なロビンソン・カノーは、7月に多かった右投手との対戦で5月6月の不調な感覚を乗り越えるきっかけを掴んだ)
だが、7月末以降にヤンキースがアルフォンソ・ソリアーノやマーク・レイノルズといった右打者を補強し、右打者ジーターが復帰して、ヤンキースの打線が変化すると、さっそくヤンキースの対戦チームは左投手を先発させるゲームをかなり増やしてきた。
夏に左投手先発ゲームが増えたことで、それまで左投手に高い打率を残していたイチローの起用が8月以降増えたのか、というと、実際には、図を見てもらうとわかるとおり、逆に減少して、右投手先発ゲームでばかり使っているのだから、まったく頭にくる。
例えば、移籍当初、驚異的な打撃成績を残した右打者アルフォンソ・ソリアーノだが、彼がヤンキースに移籍してきたときには、ヤンキースが右投手とばかり対戦していた時期(=7月)を過ぎていた。そのためソリアーノは移籍当初から彼の得意な左投手との対戦も多く、それで高い打撃成績を維持できた。
というのは、ソリアーノは、2013年でも、キャリア通算でみても同じなのだが、「左投手のほうがはるかに得意な、典型的な右バッター」だからだ。
Alfonso Soriano Career Batting Splits - Baseball-Reference.com
ナ・リーグにいたソリアーノのことをよくわからないア・リーグのチームは、おそらく当初は彼の得意不得意がわからず、面食らって打たれもしただろうが、それは「ソリアーノに対する単なるデータ不足」であり、その後ソリアーノの打撃がパタリと止まったことでわかるように、ヤンキースの右打者獲得の効果なんてものが永続するわけではない。
そして、チームがたとえ右打者を増やしたからといって、いわゆるジグザグ打線を組めばいいかというと、そうではないことは、各打者のデータなどから明らかだ。
この図から言えることについては、これからも必要に応じて記事にしていく予定。
© damejima
凡例 legends
図のもっとも右側に「右」とあるのは、「相手チームの先発が右投手だったゲーム」を意味する。この記号は、7月以降について、つけてある。全ゲームつけると良いのはわかっているが、これを調べて図示する作業が、もう、考えられないほどめんどくさい(苦笑)
とりわけ、今シーズン、イチローのバッティングが好調であっても不規則、不連続な起用を止めず、さらには、起用するにしても、今シーズンの夏までに限っていえば左投手よりも打率が低かった右投手先発ゲームばかり起用し続け、結果として、バッティングを(さらに、ときに守備の勘さえも)「冷やし」続けてきたことについて、不快感を隠そうとは思わない。
例:Yankees hottest hitter, Ichiro Suzuki, pulled from game by Joe Girardi in double switch - NY Daily News
「イチローがあまりにも絶不調だから先発を外されている」とか、「ジーターやAロッドが戦列に復帰したから、イチローをより打率の高い左投手先発ゲームをメインに起用する」というふうな、十分に合理的な「イチローを起用しない理由」「起用を減らす合理性」があるならば、こんなめんどくさい図を作ってまでして、文句をつけようとは思わないが、ジラルディの選手起用には合理性が欠けている。だから文句をつけるのが当然だ。
(ジラルディが「野手のバッティングを冷やした」のは、なにもイチローだけではなく、イチローと同じように、起用されたり、されなかったり、行き当たりばったりに起用され続けている他の打者でも、同じような事態は起きている)
大いに不満な今シーズンのイチローの起用ぶりを記録として残しておくため、まずは以下の図を用意してみた。長大な図だから、そのまま見るのではなく、まずはクリックして別窓にファイルを開き、さらに図をクリックして拡大して、「原寸大」で見ることをすすめる。
わざわざこんな図を作ったのは、ひとつには、後世の人に「2013年にイチローのバッティングは衰えた」などと、わけのわからない誤解をしてもらいたくないからだ。
マルチヒットで調子を上げかけるたびに、毎試合スタメンで使われるようになるどころか、むしろ先発から外され、マイナス30度の冷蔵庫で冷やされるような馬鹿馬鹿しい、不合理な起用ぶりで、ホットなバッティングが維持継続できるわけがない。
また、これも後世の誤解を避ける意味で、「2013年8月以降のイチローは、右投手をまるっきり打ててないわけではない」こともハッキリさせておきたい。
図からわかるように、イチローは、右投手先発ゲームにばかり起用され、バッティングを「冷やされ」だした「8月9日以降から9月8日まで」の1か月間において、右投手先発ゲームで出場した試合数の約3分の1にあたる「6試合」でマルチヒットを記録しているからだ。
つまりは、こういうことだ。
2013シーズンのある時期、イチローが右投手を打ちあぐねた時期があったのは確かであるにしても、他方で、左投手からかなりのヒット数を効率よく稼いだことによって、トータルには打率を2割8分台に乗せ、さらに上昇させつつあった。(そしてシーズン当初、チームは地区首位を走った)
にもかかわらず、ジラルディは、2013年シーズン終盤に突如としてイチローを、打率の高い「左投手先発ゲーム」ではなく、むしろ、より打率の低い「右投手先発ゲーム」でのみ起用する、不合理きわまりない起用法をイチローに押し付けだして、そのことは結果的にイチローのバッティングを「冷やし」た。
しかも、当初は、左投手先発ゲームのゲーム終盤の代打や守備要員としてゲームに出ていたが、やがてベンチに座ったままゲームが終わることが目立ちだした。
その結果、イチローのプレータイムは、「得意な左投手ゲームでの完全な欠場」と「苦手な右投手ゲームでのスタメン」が交互に繰り返される異常な状態にあり、しかも、「出場するたびに、異なる打順を打たされる」ような、データ上の合理性がまったく欠如し、かつ、プレーヤーに過度のストレスのたまる状態に直面させられだした。
イチローが8月初旬以降の1か月の右投手先発ゲームで記録した「6回」のマルチヒットは、そんな「わけのわからない起用」のさなかに記録されたものなのだから、むしろ、たいしたものだといえる。
基本的に言いたいことのひとつは、「イチローの出場ゲーム」を表す図の右半分において、「赤色部分(=マルチヒットのゲーム)と、青色部分(=イチローが先発起用されてないゲーム)とが、常に交錯して存在していること」によってハッキリ示されている。
これは、イチローにマルチヒットが続きだしたとき、あるいは、その直後、必ずといっていいほどジラルディはイチローを先発から外していることを意味している。
具体的にいえば、例えば「7月28日」にイチローは「左投手先発ゲーム」で4安打している。にもかかわらず、ジラルディは、その直後の「左投手先発4ゲームを含む8ゲーム」において、半分の4ゲームでイチローを先発させず、左投手先発ゲーム4試合のうち、3試合を先発させていないのだから、この監督の起用は意味がわからない。バッティングが「冷えて」当然である。
同様に、「8月9日」に3安打、「8月18日・20日」には2日続けて2安打しているにもかかわらず、数試合で先発から外されている。また「8月30日」には逆転2ランを打ったにもかかわらず、直後に左投手先発ゲームが3試合続くと、ジラルディはイチローを先発から外し続けた。
図から、7月末以降にイチローが、今シーズン得意としている左投手先発ゲームで、ほとんど起用されていないこと、さらには、たとえ左投手相手にマルチヒットを打ったとしても先発起用が続かないことは、図の最も右側に記した「右」というマークと、イチローの打撃成績を対比させてもらえばわかるはずだ。
8月以降にイチローが左投手のときに先発することもあったように思う人がいるかもしれないが、それは「9月8日」がそうであるように、ジーターが怪我で休んだとか、何か理由があってのことで、ジラルディは左投手先発の日は基本的にはイチローをスターターから外している。
また、この図から、言いたいこと、言えることは、単に「左投手先発ゲームでもイチローを使え」などというような、単純なことばかりではない。
例えば、あまり言及している人がいないことだが、7月にヤンキースと対戦したチームは、大半のゲームで右投手を先発させている。(左投手より右投手のほうが得意なロビンソン・カノーは、7月に多かった右投手との対戦で5月6月の不調な感覚を乗り越えるきっかけを掴んだ)
だが、7月末以降にヤンキースがアルフォンソ・ソリアーノやマーク・レイノルズといった右打者を補強し、右打者ジーターが復帰して、ヤンキースの打線が変化すると、さっそくヤンキースの対戦チームは左投手を先発させるゲームをかなり増やしてきた。
夏に左投手先発ゲームが増えたことで、それまで左投手に高い打率を残していたイチローの起用が8月以降増えたのか、というと、実際には、図を見てもらうとわかるとおり、逆に減少して、右投手先発ゲームでばかり使っているのだから、まったく頭にくる。
例えば、移籍当初、驚異的な打撃成績を残した右打者アルフォンソ・ソリアーノだが、彼がヤンキースに移籍してきたときには、ヤンキースが右投手とばかり対戦していた時期(=7月)を過ぎていた。そのためソリアーノは移籍当初から彼の得意な左投手との対戦も多く、それで高い打撃成績を維持できた。
というのは、ソリアーノは、2013年でも、キャリア通算でみても同じなのだが、「左投手のほうがはるかに得意な、典型的な右バッター」だからだ。
Alfonso Soriano Career Batting Splits - Baseball-Reference.com
ナ・リーグにいたソリアーノのことをよくわからないア・リーグのチームは、おそらく当初は彼の得意不得意がわからず、面食らって打たれもしただろうが、それは「ソリアーノに対する単なるデータ不足」であり、その後ソリアーノの打撃がパタリと止まったことでわかるように、ヤンキースの右打者獲得の効果なんてものが永続するわけではない。
そして、チームがたとえ右打者を増やしたからといって、いわゆるジグザグ打線を組めばいいかというと、そうではないことは、各打者のデータなどから明らかだ。
この図から言えることについては、これからも必要に応じて記事にしていく予定。
© damejima
凡例 legends
図のもっとも右側に「右」とあるのは、「相手チームの先発が右投手だったゲーム」を意味する。この記号は、7月以降について、つけてある。全ゲームつけると良いのはわかっているが、これを調べて図示する作業が、もう、考えられないほどめんどくさい(苦笑)