September 28, 2013

ホーム最終戦を終え、ヤンキースタジアムのダグアウト裏への階段を下りていくマリアーノ・リベラの後ろ姿を見ていて、「なにか、もの足りない」。そんなことを思った。

ホーム最終戦で彼に、インタビューでも会見でもなく、
スピーチする機会を設けてやるべきだ、と思ったからだ。


ルー・ゲーリッグの有名なスピーチは、「スタジアムの中」で行われた。彼の引退の言葉が長く語りつがれている理由は、実は語った言葉にあるのではなく、「語った場所」にあった。(ちなみに、スピーチが行われたのは1939年7月4日で、ファイナルゲームである4月30日ではない)

Lou Gehrig

ゲーリッグが、スタジアムの中で、マイクに向かって語ってくれたために、その言葉は「病いの中にあるゲーリッグが、ファンに差し出してくれた一葉の手紙」のようなものとしてファンのもとに直接届き、だからこそ、その「遺言のような言葉」をファンは胸の中に大事にしまいこむことができた。


マリアーノ・リベラのホーム最終戦では、ゲーリッグのようなスピーチスタイルをとらず、普段どおりインタビュアーがリベラにマイクを向けて英語で話かけ、リベラは「インタビュアーの問いに答える形」で「英語で」話したわけだが、正直、あれはない。
リベラとファンのための濃密な時間を、インタビュアーのマイクの前や、プレス相手のカンファレンスルームの中などではなく、フィールドの中で作るべきだった。
また、今の時代はアメリカ国内のスペイン系住民やカリブ海周辺のスペイン語圏にたくさんのMLBファンがいる時代なのだし、リベラがスペイン語で語る場面もファンに披露すべきだった。


9回の投手交代をジラルディ自身が告げに行くのではなく、マイナー時代から長年一緒にプレーしてきたペティットとジーターに行かせたことを、なんて素晴らしいアイデアだ、あれでもう十分だと思って涙した人や、リベラがマウンドのダートを両手ですくいとる姿で十分だ、他に何も必要ない、などと思った人がいたかもしれないが、ブログ主は、よくそんな淡泊な考えでいられるな、としか思わない。


本当に美味いものなら、その真髄を飽きるほど食い倒してこそ人生だ、と考えるのが、ブログ主の「真髄」である。


目の前のことばかり見て、将来を考えずに時間を過ごして、「次の時代をあらかじめ用意しておくこと」に失敗したヤンキースが、今シーズンを「終わっていくヤンキースの送別」のためだけに使い果たそうと決めたのなら、半端な若者など使わずに、とことん送別会をやり尽すべきなのであって、ジラルディを先頭に中途半端なことばかりしているのは、今の彼らが「旨いものの本当の食べ方を知らない」証拠である。
リベラはMLB史上の至宝であって、ヤンキースだけのものだとは思わないから言わせてもらうと、残念なことに、今のヤンキースは、リベラの最後の勇姿という素材を、本当の意味で上手に料理して、最高の形で客に出せた、とは、お世辞にもいえない。
(もちろん、リベラ自身がスピーチを固辞した可能性もあるわけだが、ルー・ゲーリッグだって周囲の要請に応える形ではじめて言葉を発したわけであって、うまく名場面をつくるのには周囲の努力が不可欠なのだ)


パラグラフの中で同じ言葉が繰り返されるのを嫌うのと同じように、ルー・ゲーリッグの形を踏襲することは、ゲーリッグとリベラ、2人の権威や彼らへの敬意を損なうから避けるべきだと考える人がいても、それはそれで不思議ではないが、ならば問いたい。

リベラがファンに語りかける場所、それが「マウンド」でなくて、他のどこなら彼にふさわしいのか。

ブログ主はまったく思いつかない。


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