October 06, 2013

2013年のヤンキースの「凋落」の原因は、長期的には、これまで何度か書いたような1990年代に育成した選手たちに頼り切ってきたチーム構造自体の「老朽化」と、実績のあったマイナー球団を手放したこと、ドラフトでの不手際、若手育成の遅れなど、老朽化対策の酷さにあるが、それ以外にも原因はある。
そのひとつは、以下にみるように、2012年レギュラーシーズン終盤に既に表面化していたさまざまな問題に対する対応を、「そのほとんど全てにおいて間違えたこと」にある。(選手名の後の数字は、それぞれの年度のサラリー。単位は100万ドル)

例:2013年9月の月間打率
テシェイラ .125(出場4ゲーム)
アンドリュー・ジョーンズ .133
グランダーソン .214
チャベス .222
Aロッド .261

2012年9月にボルチモアに激しく追い上げられて地区優勝が危うくなったヤンキースは、打順を大きくいじったが、そうせざるをえなくなった原因は、ひとつやふたつどころではなくて、以下に並べたてたように、それこそ「数限りなく」あった。
それは簡単にいえば、高額サラリーの主力打者の大半が、怪我をしていたか、不振にあえいでいたという、どこにでもある話だが、問題だったのは、彼らの怪我や不振が、実は、「すぐに元に戻る性質のものではなかった」ことだ。
以下にみるように、彼らの怪我や不振が実は、「シーズンをまたいで影響が出るほどの長期的な怪我、長期的な不振」だったにもかかわらず、ヤンキースはその影響がどの程度の時間続いていくのかについて、甘くみていて、対応のほとんどを誤った。


内野手

マーク・テシェイラ
2012年22.5M 2013年22.5M(2016年まで同額)
彼の超高額な年収と、一塁手というポジションは、マーク・テシェイラがクリンアップに常駐し、常にハイグレードな打撃成績とプレーを披露「すべき」プレーヤーであることを意味している。
だが、テシェイラの怪我は一時的なものではなく、おそらく「慢性的な怪我」で、彼がいわゆる「スペランカー化」しつつあることを意味している。
2012年は、8月に左ふくらはぎを痛めて欠場。123ゲームに出場したものの、ボルチモアに猛烈に追い上げられた「2012年9月」には欠場が続き、まったく戦力にならなかった。2013年も、6月1日にいちど戦列復帰したものの、わずか2週間(15ゲーム)プレーしただけで再度離脱。手術を経て、2014年にプレーできるかどうかすら不透明になってしまっている。
チームは、テシェイラの穴を埋めるために、1.25Mという安価な単年契約でライル・オーバーベイを獲ってくることで、なんとか臨時の一塁手を確保した。
だが、だからといって、「怪我がちなテシェイラに、2016年まで毎年22.5Mずつ払い続けなければならないという超高額不良債権」がゼロになってくれるわけではない。これからも怪我でたびたび長期欠場しそうなテシェイラの処遇は、Aロッド問題に並んで、ペイロールを硬直化させる問題になるのは確実だ。

デレク・ジーター
2012年16M 2013年17M 2014年はプレーヤー・オプションで8M(各種ボーナスで最高17M)
ガードナーがいなかった2012年、どうしても運動量の多くなる1番を打ち続けて地区優勝に貢献したが、足の怪我を抱えているのがわかっても、休養せずプレーし続けた「キャプテンとしての頑張り」が、残念ながら結果的にアダとなった。
ボルチモアに追い上げられた「2012年9月」の後半、怪我を抱えたままのジーターのWPAは、マイナス.501。パフォーマンスは明らかに低下してしまっており、ボルチモアの追撃を振り切ることに貢献してはいない。
その後も怪我の再発に悩まされるようになったジーターは、2013年に合計4度にわたって戦列復帰を繰り返したが、そのたびに故障を招き、結果としてシーズン全体を棒に振った。
レジェンドである彼が「復帰と欠場」を繰り返すと、当然ながらチームは復帰のたびに打順や使う選手を大きく入れ替えざるを得ない。だが、心苦しい言い方にはなってしまうが、今の年齢のジーターでは、短期的な復帰を繰り返しても、体調面や湿ったバッティングは元には戻らない。現実に2013年の彼の打撃成績は、彼の過去の実績にも、2番という打順にも、ふさわしいものではない。
だから、あえて直言すると、ジーターの「復帰と欠場の繰り返し」は、結果的には「チームの打撃力低下の原因のひとつ」を作ったといわざるえない。ジーターが自分の怪我と向き合って、「きちんと怪我を直してから復帰するという決断」を下さなかったことは、ハッキリ言えば「判断ミス」である。

アレックス・ロドリゲス
2012年29M 2013年28M 2014年以降、25M、21M、20M、20M(ホームラン数のボーナス次第で最高30M)
これだけの超高額サラリーにもかかわらず、2012年は死球による骨折(7月)、2013年は股関節手術(1月)で、この2シーズン、チームの好調期の大半を欠場している。加えて、ステロイドの処罰による長期欠場も確実。
2012年9月」、Aロッドの復帰は9月3日だが、9月全体でWPAはマイナス.209で、29Mという彼の莫大なサラリーに見合うような長打は皆無だった。
また、ポストシーズンのボルチモアとのALDS、デトロイトとのALCSでも、トータル打率.120、WPAマイナス.922の悲惨な結果に終わり、ALCSの行方を決める第5戦では、スタメン落ちを味わっている。

GMキャッシュマンは、Aロッドの穴埋めとしてエリック・チャベス以外に、2012年ケイシー・マギー、2013年ケビン・ユーキリスと、2年続けて「代役」を雇ったが、いずれも失敗に終わっている。特に、テシェイラと同様の怪我がちな選手であることがわかりきっているユーキリスをあえて雇ったことは、GMとして明らかに「大きなミス」であり、単年12Mという大金をかけた補強だったにもかかわらず、代役ユーキリスのDL入りで「代役の代役」を探すハメになった。

ケイシー・マギー
2012年トレード
7月にシアトルでヘルナンデスにぶつけられて骨折したAロッドの代役のひとり。ピッツバーグから2012年7月末に緊急補強されたが、22試合出場で打率.151に終わり、活躍できないまま、シーズン終盤のAロッド復帰によって出場機会を奪われた。
だが、その復帰したAロッドにしても、上で書いたように、その打撃成績は彼の超高額サラリーにみあうものでは、まったくなかった。

参考:ケビン・ユーキリス
2013年12M
ステロイドの処罰問題を抱える上に、怪我も多いAロッドの代役のひとりだが、当のユーキリス自身が、テシェイラ同様の「スペランカー」であることは、MLBファンならたいてい知っている。
実際ヤンキースでも、ユーキリスは4月30日、6月14日にDL入りした挙句に、手術を受けることになって、わずか28試合の出場、打率.219にとどまり、ユーキリスに払った「12M」もの大金は、虚空に消えることになった。


外野手

アンドリュー・ジョーンズ
2012年2M
主にレフトを守った外野のユーティリティだが、シーズン終わってみれば、打率.197の成績。問題の「2012年9月」を見ると、打率.133と、さらに酷い。シーズン終盤に驚異の活躍をみせた同じポジションのラウル・イバニェスがMLBに残って翌年29ホーマーを打ち、シーズン終盤にベンチを温めていたジョーンズが日本に都落ちしたのは、当然の結果。

その後ヤンキースは、「2013年はレフトを誰にまかせるのか」という問題の解決において、ミスを犯し続けた
ジョーンズに見切りをつけたのはいいとしても、イバニェスに再契約をオファーすることもしなかったために、「ヤンキースのレフトを誰にするのか」という問題は、そっくりそのまま2013年春まで残ってしまった。
そこでGMキャッシュマンが手を出したのは、エンゼルスの不良債権バーノン・ウェルズ。しかも2年契約という「奇策」だった。だが、結果的にウェルズの活躍期間は短く、奇策は失敗に終わり、2013シーズン終盤にウェルズはベンチウォーマー化した。
キャッシュマンは、2年契約を結んでしまったウェルズを処分できないまま、2013年7月に外野手アルフォンソ・ソリアーノを追加補強したため、「レフトの補強が二重に重なった状態」を招いてしまい、ヤンキースの「内野手は足りないのに、外野では選手がダブついている」という、わけのわからない状態に、さらに拍車がかかった。

カーティス・グランダーソン
2012年10M 2013年15M
「8月の打率.196、6HR」、「9月の打率.214、9HR」という数字が示す通り、「2012年9月」のグランダーソンは良くなかった。
当時の彼は、相変わらずストレートだけを狙い打つ打法を執拗に続けていたが、対戦相手のスカウティングが進んだことが原因で、それまでのシーズンのようにホームランを量産できなくなり、逆に、簡単に三振がとれるバッターと考えられていた。9月19日トロントとのダブルヘッダー以降のシーズン終盤の打率は「.203、4HR」。スラッガーでもなければ、かといってシュアな打撃とも言い難く、最終的にはベンチウォーマーに。

それにしても不思議なのは、チーム方針として、2013シーズン以降は生え抜きのガードナーをセンターに定着させる方針をヤンキースがとったというなら、「余ってしまう外野手の筆頭」は、本来なら「ガードナーと同じセンターを守るグランダーソン」のはずだ、ということだ。つまり、2013ヤンキースでは、レフト(ウェルズとソリアーノ)がダブっているだけでなく、センター(ガードナーとグランダーソン)もダブっていたのである。
2013年以降のグランダーソンは、ジョシュ・ハミルトンがそうだったように、他チームのスカウティング能力の発達によって、2011年までのようなスラッガー的な長打力を発揮できなくなるのは確実だったのだから、2013年のグランダーソンの打撃成績が底を見ることで彼の市場価値が無くなってしまう前に、2012年オフに、足りない選手、例えば先発投手やキャッチャーを獲得するためのトレードの駒にすることだって不可能ではなかったわけだが、ヤンキースは結局のところいたずらにカネをかけては外野手を補強して、「ソリアーノとウェルズ」、「ガードナーとグランダーソン」を、両方とも宙ぶらりんなまま放置したため、「外野以外はどのポジションも人材が足りないのに、外野だけがダブつている」という「戦力の不均衡」を招いて、ポストシーズン進出を逃した。
2013年は、さぞかしグランダーソンにとって消化不良のシーズンだっただろう。センターにどうしても生え抜きのガードナーを定着させたいのなら、レフトにソリアーノを使うとすれば、本来必要な決断は、単に「ライトを誰にするか」ということだけなはずだが、もともとグランダーソンにはコンバートしてライトをまかせられるほどの強肩はない。だから、彼を宙ぶらりんにしておく必要は、最初からどこにも無かった。

参考:アルフォンソ・ソリアーノ
2013年18M(うち16.2Mはカブス) 2014年18M(うち13Mはカブス)
GMキャッシュマンは、外野手アンドリュー・ジョーンズの穴を埋めてくれたイバニェスに再契約を提示しなかった。そのかわりに彼が手を出したのは、エンゼルスで巨額の不良債権外野手バーノン・ウェルズで、サラリーは、一部がエンゼルス負担。キャッシュマンがさらにもうひとり手を出した外野手ソリアーノのサラリーも、残債36Mのうち、29.2Mがカブス負担になっている。
これらの事例を見て「やり手のジェネラル・マネージャーだ」と思うかもしれないが、選手をこうした複雑な負担の形で抱えこんだからには、ヤンキースはそう簡単には処分できないはずだ。つまり、「もういりませんから、どこへでも出ていってくれ」とは簡単に言えなくなる。
エンゼルスやカブスは「給料はこちらでほとんど負担するから、どうか早く持ってってくれたまえ」と、不利な条件であるのを承知で取引に応じているわけだから、もしヤンキース側が「やっぱりこの選手、使えないじゃん!」となったとしても、ヤンキースがどこかのチームに「エンゼルスやカブスのサラリー負担という取引条件を付帯したまま放出する」などという都合のいい取引は、契約上できないのである。
また、もしウェルズやソリアーノの契約に「ロスターを保障しますよ」という条項が含まれていたりしようものなら、ヤンキースはどんなに彼らの成績が下がろうと、必ずロスターに残さなくてはいけなくなる。

そして、当然ながら、バーゲン品には、「バーゲンされる理由」や「賞味期限」がある。野球選手の場合なら、時間をかけて弱点を分析されれば、必ず出てくる「弱点」があるからこそ、バーゲン品として市場に出てくるのであって、そういう選手は「賞味期限」が思いのほか早くやってくることを最初から覚悟しておかなければならない。
ア・リーグ東地区は近年分析的な野球が盛んになっているが、ウェルズやソリアーノがスカウティングされるのに、さほど時間はかからない。彼らの移籍直後のほんの2本や3本のホームランを見て、キャッシュマンを「有能な選手を安く買ってきてくれた、有能なジェネラル・マネージャー」と判断するのは、早計というよりほかない。


投手

A.J.バーネット
放出後も2012年11.5M+2013年8.5Mは「ヤンキース負担」
今年ひさしぶりにポストシーズンに進出したピッツバーグで投げているAJバーネットのサラリーについて、あまり意識してない人が多いようだが、いまだにヤンキースはその大半を払っている。2012年の11.5Mと、2013年の8.5Mはヤンキースもちなのである。もちろん、ヤンキースのペイロールを硬直化させる原因のひとつになっている。
そもそもこの投手に、2009年に年16.5Mの5年契約をくれてやって、合計69.5Mも投資して失敗したGMが、エンゼルスから不良債権ウェルズを買うギャンブルで失敗し、カブスからソリアーノを買うギャンブルで負け分を取り返そうとしたからといって、評価を上げる理由になどならない。



まだまだ書かなくてはならないことがあるにはある。
だが、ヤンキースが「2012年シーズン終盤」に表面化した長期的な問題のほとんどを何も解決できないまま先送りして、いってみれば壊れた窓をきちんと修理するのではなく、ガムテープで紙を貼りつけて急場をしのぐような、安易な対策ばかりやったことが、2013年にせっかく手の届きかけたポストシーズン進出をみすみす逃すような体たらくにつながったことを示すのには、これだけ書けば十分だろう。


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