October 08, 2013

今年のポストシーズンで、SouthEastern Conference (SEC) のヴァンダービルド大学出身で、同校を初のカレッジ・ワールドシリーズ進出に導き、2011年ドラフトでオークランドに1位指名されたソニー・グレイがデトロイト相手に好投して名を上げたばかりだが、そういえば、最近のアメリカの大学野球のトレンドであり、ドラフトでたくさんの選手が指名され続けているSECACCなどの「大西洋岸の野球ブランド大学」の出身選手たちは、いまどんな状態にあるのだろう。

ちょっと気になって調べてみることにした。
2011 Vanderbilt University Commodores Statistics and Team Info - The Baseball Cube


最初に、これは何度も書いてきたことだが、近年のアメリカの大学野球の「勢力図の変化」を簡単におさえておこう。
(詳しくは以下の関連記事群を一読されたし。 Damejima's HARDBALL:カレッジ・ベースボール

全米大学選手権である「カレッジ・ワールドシリーズ」では長きに渡って、西海岸カリフォルニア州の有力大学を軸に、アリゾナ州、テキサス州、フロリダ州の有力校に、LSU(ルイジアナ州立)などの優勝経験校を加えた「常連校同士による優勝争い」が繰り広げられてきた。
だが、2000年代に入って状況が一変する。SECのサウスカロライナ、ACCのノースカロライナが急激に力をつけてCWS決勝の常連校になったのを筆頭に、ヴァージニア(2009年、2011年本戦出場)、ヴァンダービルド(2011年初出場)など、大西洋岸エリアに多くの有力校が誕生したことで、アメリカの大学野球の地図は「西の太平洋岸から、東の大西洋岸へ」と軸が大きくシフトした。

そのため、MLBのスカウトの関心も、自然とSECやACCに所属する大学のプレーヤーに注がれるようになった。

例えばシアトルの無能GMジャック・ズレンシックが、近年のドラフトで執拗に大西洋岸の大学生ばかり指名しているのも(アックリー、ハルツェン、ミラー、ズニーノ)、理由は単純だ(笑)選手を見る目がない彼は他人が注目する「大西洋岸の大学」というトレンドにのっかって、めぼしい選手を盲目的にかっさらってきた、ただそれだけの話だ。だが、シアトルのマイナーに選手を育てる能力など最初から全く無い。際限なく次から次へ選手をつぶしているのには、笑うしかない(笑)


ちなみに、2013年カレッジ・ワールドシリーズで初優勝を達成したUCLAのコーチ、John Savageは、「SECの選手たちのフィジカル」について次のようなコメントを残している。いかにフィジカル面で飛び抜けて優れた若いプレーヤーが大西洋岸に集結するようになったかが、よくわかる。(だが、野球はフィジカルが全てではない)
"We just don't have the physicalness, as I look at it, as the Southeastern Conference."
「サウスイースタン・カンファレンスのチームについて見た限り、彼らのような身体的優位性は、我々(=UCLAの選手)にはまったく無い」
UCLA formula a perfect fit for this era


だが、このところ、2012年アリゾナ、2013年UCLAと、2年続けて「SECでも、ACCでもないカンファレンスの大学」のカレッジ・ワールドシリーズ優勝が続いている。わずか2年の変化だが、アメリカの大学野球の風向きはふたたび変わりつつあるように感じる。

こうした最近のアメリカの大学野球のトレンドの「再変化」を、近年のドラフトにおける活躍選手のリストから確かめてみよう、という主旨で挙げたのが、下のリストだ。
リストにのせている選手の選考基準は、「カレッジ・ワールドシリーズでSEC所属大学が3連覇した2009年以降のMLBドラフトにおける1位指名選手」のうち、「現在MLBの40人ロスター入り」していて、「既にメジャーデビューし、優れた数字を挙げた選手」だ。参考までに、それぞれの年にシアトルの指名選手も横線入りで加えてみた(笑)

以下、太字で示したのが、SECまたはACCの所属大学の出身選手。名前の前の数字は、ドラフト全体での指名順位。

2009
1. Stephen Strasburg (WAS) 投手
2. Dustin Ackley (SEA) North Carolina, ACC
7. Mike Minor (ATL) 投手 13勝9敗 Vanderbilt, SEC
8. Mike Leake (CIN) 投手 14勝7敗
12. Aaron Crow (KC) 投手 7勝5敗
25. Mike Trout (LAA) 高卒
27. Nick Franklin (SEA) 高卒

2010
1. Bryce Harper (WAS)
3. Manny Machado (BAL) 高卒 怪我→手術
7. Matt Harvey (NYM) 投手 9勝5敗 North Carolina, ACC
13. Chris Sale (CHW) 投手 11勝14敗
23. Christian Yelich (FLA) 高卒
参考:2巡目 Drew Smyly (DET) 投手 Arkansas, SEC

2011
1. Gerrit Cole (PIT) 投手 10勝7敗
2. Danny Hultzen (SEA) Virginia, ACC
6. Anthony Rendon (WAS)
18. Sonny Gray (OAK) 投手 Vanderbilt, SEC

2012
3. Mike Zunino (SEA) Florida, SEC
4. Kevin Gausman 投手 (BAL) LSU, SEC
19. Michael Wacha (STL) 投手
参考:Damejima's HARDBALL:2012年6月4日、恒例の全米ドラフトは高校生が主役。


マイク・マイナー、マット・ハービー、
ソニー・グレイ、ケビン・ガウスマン。

もう、おわかりだろう。
近年活躍しているSECとACCの出身選手は、投手ばかりなのである。そして、かつて記事にしたように、2012年ドラフトにいたっては、1位指名選手のかなりの数が「高校生」になってしまって、もはや「大学生」ですらないから、SECやACCの選手の出る幕そのものがない。
参考記事:Damejima's HARDBALL:2012年6月4日、恒例の全米ドラフトは高校生が主役。


なぜ近年のSECやACC出身の活躍選手が、「投手ばかり」だったのか。理由は簡単には特定できないが、自分なりの推論のひとつとして挙げておきたいと思うのは、アメリカの大学野球において「バットの規定」が近年変更されたことだ。


日本ではあまり知られていないが、2013年6月の以下の記事で書いたように、アメリカの大学野球では2011年以降にバットの規定が変わり、「従来より反発係数の低いBBCORバット」を使いだしている
Damejima's HARDBALL:2013年6月26日、UCLAカレッジ・ワールドシリーズ初優勝の意味。2011年に始まったBBCORバット規定の下のカレッジベースボール新時代。
このことは、逆に言えば「2010年までのカレッジベースボール」においては、「いまよりずっと反発係数の高いバットが使われていた」という意味になる。

「反発係数の高いバットを使いまくる環境」で育てられてきた「2010年前後までの大学野球のスラッガーたち」が、MLBに来て、「ただでさえ折れやすい材質の木製バット」を使い出せば、打撃成績が上がるか、下がるか、どちらの可能性が高いかは、言うまでもない。
参考記事:Damejima's HARDBALL:2011年11月25日、 どうやら、新しく結ばれたMLBの労使協定に、「低比重のメープルバットの使用禁止が盛り込まれている」らしい。

規定の変わった2011年以降も、さまざまな材料を組み合わせた優秀なコンポジットバットが出現しているから、「あらゆるバットで、昔と比べてまるで打球が飛ばなくなった」と断言するのは危険だが、それにしたって、「フィジカルの強さを最大の武器にして、カレッジ・ベースボールの地図と、MLBルーキーの出身地の地図を大きく塗り替えてきたSECやACCの大学」が、バットの規定変更による打撃力ダウンという影響をより強く受けたと考えるのは自然な話だろう。
SECの大学がカレッジ・ワールドシリーズを3連覇したのが「2009年以降の3年間」で、一方、バットの規定が変更になったのがちょうど「2011年」だから、「バットの反発係数が下げられた直後の2012年以降」から「SEC所属大学の優勝が急になくなった」と関連づけてみると、それなりに辻褄があうわけだ。

また、逆にいえば、「反発係数の高いバットを使う環境」で野球をやってきて、それでも優れた数字を残すことができた投手は、強打者揃いのMLBでも実力をそのまま発揮できる、という可能性もある。(また、この点は、いまだに金属バットを使っている日本の高校野球からプロになる日本の野球選手にも同じことがいえる可能性がある。つまり、日本からMLBに行って活躍できる選手に「やたらと投手が多い理由」の元をたどると、「高校野球の金属バット」に行き着く可能性があるわけだ)


こうして広い視野から眺めてみると、カレッジベースボールで優れた成績を残した選手のうち、「大西洋岸のバッター」にチームの虎の子である貴重なドラフトの1位指名権を投げ捨て続けてきたシアトルGMジャック・ズレンシックの行動がいかに浅はかものだったか、わかろうというものだ。

意味もなく試合に出して、ただ潰すだけなら、誰だってできる。
さきほど終わったSTL対PITでも、STLの新鋭Michael Wachaがあわやノーヒットノーランかという好投をみせたばかりだが、このポストシーズンに進出した各チームで、ほんのこの数年の間にドラフトされたばかりの若手がいったい何人、躍動しはじめているか。育成能力もないくせに選手をゲームで潰しまくってきたシアトルの関係者は、よく見ておくといい。





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