October 10, 2013

Peter Gammonsの名前を冠したGammons Dailyと、Baseball Analyticsという2つのブログに、まったく同じ10月9日付けで、この2013シーズンにおいて「最も待球している打者ランキング」と、「最もスイングしてくる打者ランキング」が別々の2つの記事として掲載された。
これら2つのサイトは姉妹サイトみたいなものなわけだが、もし2つの記事が意図的に作成されたものなら、むしろ、2つのランキングをひとつの記事の中に併記し、それについて見解を述べる「ひとつの記事」を書くはずだから、たまたま2つのランキングが「別々の意図から、別々の記事に」作られたのだろう。

それにしても、この2つのランキング、並べて眺めると、なかなか面白い。なぜって、2つを同時に眺めることでしか気がつかない点がたくさんあるからだ。

2013年ポストシーズン
待球打者ランキング ベスト15
(数字は左から、打率、wOBA、P/PA)

Daniel Nava (BOS) .200 .334 6.14
Jon Jay (STL) .154 .248 5.25
Brian McCann (ATL) .000 .135 5.00
Josh Reddick (OAK) .200 .273 4.81
Brandon Moss (OAK) .133 .278 4.72
Stephen Vogt (OAK) .231 .291 4.57
Justin Upton (ATL) .143 .279 4.56
Jarrod Saltalamacchia (BOS) .300 .342 4.55
David DeJesus (TB) .231 .329 4.50
Wil Myers (TB) .100 .120 4.48
Carlos Beltran (STL) .286 .482 4.47
Yoenis Cespedes (OAK) .389 .464 4.44
Evan Gattis (ATL) .357 .371 4.44
Austin Jackson (DET) .133 .179 4.44
Seth Smith (OAK) .417 .462 4.38

元資料:Article by Daniel Bailey Patience in the postseason; Daniel Nava leads the way - GammonsDaily.com

2013年ポストシーズン
スイング率の高い打者ランキング ベスト15
(数字は左から、Swing%、打率)

Delmon Young (TB) 70.6% .333
Juan Uribe (LAD) 65.2% .333
Stephen Vogt (OAK) 63.9% .143
Prince Fielder (DET) 61.5% .125
Jose Iglesias (DET) 61.3% .538
Evan Gattis (ATL) 59.6% .500
Yoenis Cespedes (OAK) 58.8% .500
Torii Hunter (DET) 58.3% .143
Jacoby Ellsbury (BOS) 57.1% .556
Justin Morneau (PIT) 56.7% .294
Freddie Freeman (ATL) 56.4% .333
Marlon Byrd (PIT) 54.9% .333
Chris Johnson (ATL) 54.5% .333
Starling Marte (PIT) 53.9% .188

元資料:Article by Bill Chuck - Managing Editor | Baseball Analytics Postseason Batting - It's Hanley and Everyone Else - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics


2つのリストの比較
上の図で太字で示したのは、2013ポストシーズンにおいて「打率が.300を越えているバッター」だ。
明らかに、「スイング率ランキングの打者」のほうが、「待球打者ランキングの打者」より、打率において優れている
もちろん、短期決戦においては、たとえ打率が低くても、決定的な場面でピンポイントに出塁した打者や、決定的なタイムリーやホームランを打ってくれたバッターにも価値が認められるわけだが、2つのランキングを見ればわかるとおり、サヨナラホームランや逆転タイムリーを打ったような「劇的な打者」の数は、明らかに「待球する打者」より「スイングする打者」のほうが、はるかに多い。
まさに、このブログのスローガン通り、「スイングしなけりゃ意味がねぇ」といえそうなのが、2013ポストシーズンなのだ。

ひたすら待球するOAK
両方のリストに同時に名前が載っているのは、ステファン・ボグト、ヨエニス・セスペデス、エヴァン・ギャティスの3人だけだが、うち2人がオークランドの選手なのは、どうやら偶然ではなさそうだ。なぜなら、「待球打者ランキング」になんと全チーム最多の「5人」ものオークランドのプレーヤーの名前があるからだ。
2013ポストシーズンを戦うにあたって、オークランドが「待球する」というチーム方針を明確に打ち出しているかどうかは正確にはわからないが、少なくとも数字上からはそういう傾向がハッキリ垣間見える。
これだけチーム全体に待球傾向が強く出ているオークランドのバッターの中で、待球しながら高い打撃数字も残しているセスペデスの才能は、やはり並外れたものがある。
そうなると、ALDS第4戦、オークランド1点ビハインドの8回表、無死満塁のチャンスで、「待球打者ランキング第4位」であるはずのジョシュ・レディックが押し出しのかかったフルカウントで、リリーフ登板でコントロールが最悪だったマックス・シャーザーの投げた「インコースの明らかなボールの変化球」にうっかり手を出して空振り三振し、ゲームの流れをデトロイトに完全にもっていかれてしまったのは、明らかにチーム方針に反したミスだ、ということになる。



特徴のないSTL
「待球打者ランキング」にのみ、ジョン・ジェイ、カルロス・ベルトランの2人の選手の名前があり、「スイング率ランキング」には誰の名前もない。よくいえば、普段どおりの野球をやっている、といえるし、悪くいうと、戦略面での驚きがみられない。いつも通りのカーズである。

やたらとスイングしたがるDETPIT
「待球傾向」の強いオークランドとまったく逆で、「フリースインガー傾向」が明確なのが、デトロイトとピッツバーグだ。特に、デトロイトのギャップは酷い。
デトロイトでは、「待球ランキング」にはオースティン・ジャクソンの名前だけしかないが、「スイング率ランキング」の上位には、フィルダー、イグレシアス、ハンターと3人もの名前が挙がっている。いかにデトロイト打線がやみくもに空振りし続けているか、そして、いかに上位打線のバットが湿っているか、数字の上からもハッキリわかる。
それに、やたらと待球しているらしいジャクソンにしても、そもそも待球型打者ではなく、早いカウントからインコースを狙い打って数字を残してきたバッターなのだし、このポストシーズンに限ってあえて待球を増やさせるような指示をしたことで大スランプに陥っているフシがある。
ピッツバーグも、デトロイト同様の傾向がある。「待球ランキング」には誰も載っていないが、「スイング率ランキング」にはモーノー、バード、マルテと、3人の名前がある。モーノーがやたらとスイングしたがる打者だった記憶はないわけが、ピッツバーグは今後も彼を4番で使い続けるだろうから、彼のバッティングが浮上するか沈没するかは、チームの明暗を分けることになる。

予想外にも待球しないBOS
ア・リーグで、「チーム方針として、最も待球を野手全員に徹底しているチーム」といえば、いうまでもなくボストンだ。チーム全体のP/PAが4を越えるようなチームは、ボストン以外にありえない。
だが、2013ポストシーズンにおける「待球打者ランキング」では、ダニエル・ナバを除けば、ボストンの主軸打者たちの名前は全くない。
これは非常に面白い。なぜなら、あれだけレギュラーシーズンで待球しているチームなわけだし、「2013ポストシーズンで、これほど早いカウントからでも打ってきている」という事実は、ボストンの内部に対戦相手に関するよほどのデータ的な裏付けと確信がなければやらない戦略だろう、と思うからだ。

イラついて自分を見失ったATL
例年どおり、地区シリーズで早くも敗退したアトランタだが、「待球打者ランキング」に、ブライアン・マッキャン、ジャスティン・アップトン、ギャティス、3人の名前がある一方、「スイング率ランキング」に、ギャティス、クリス・ジョンソンの名前がある。
マッキャンとアップトンのポストシーズンでの不振は、明らかにアトランタ敗退を招いた原因のひとつだが、ポストシーズンのゲーム中のマッキャンの「イライラぶり」を思い出してみると、マッキャンとアップトンがポストシーズンでの球審の「ゾーン」や「判定」に納得できず、イラついてばかりいたことが想像できる。
だが、ゾーンに納得がいかないからといって自分のバッティングを見失ってしまっては、元も子もない。来季に向けたヤンキースの獲得リストにマッキャンを入れたがる人が多いが、同意しない。そんなに打てるバッターとも思えないし、そもそもリードにもキャッチングにも冴えがない。

勢いを殺さないのが秘訣のLAD
LADでは、「スイング率ランキング」第2位に、たったひとり、NLDS第4戦で逆転2ランを打ったホアン・ウリーベの名前があるだけだ。
彼がどれだけ「打ちたがりな性格」なのか考えると、アトランタとのNLDS第4戦、1点リードされた8回の無死2塁の打席で、監督ドン・マッティングリーはウリーベに2度も送りバントさせようとしたわけだが(2度とも失敗)、この采配がどれだけウリーベの「性格と適性」にあっていないかが、彼のスイング率データの高さからわかる。
2度バントをミスったウリーベがヒッティングに切り替えて、カウント2-2から高めのストレートを思いっきりひっぱたいたときの姿は、明らかに「無死2塁のチャンスだというのに、むいてないのがわかりきってるバントなんてものをやらされたウリーベが『鬱憤』を晴らす鼻息の荒さと大量のアドレナリン」が見てとれた(笑)





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