October 16, 2013

ジャスティン・バーランダー登板時にみられる「左バッターのアウトコースの投手有利な判定」について、なんとなく調べ続けていたら、まぁ、どういう理由でこんなにたくさん書かれたのか知らないが、過去に、それもとりわけ「ポストシーズンでの判定」について書かれた記事が、あるわ、あるわ(笑)
どれもこれも、どこか怒りのこもった記事ばかりなのが困りものではあるが(苦笑)、それにしても、この数の多さ(笑)あんまり多いので、ついでだからコレクションしておくことにした(笑)


それにしても面白いのは、大半の記事が異口同音に「アウトコースの判定」を問題にしていることだ。どうやら、この「問題」の存在に気がついた人の数は、かなりの数にのぼるとみた。
この「ポストシーズンにおけるバーランダー優遇現象」が観測され続ける理由はなんだろう。バーランダーがよほど「左バッターのアウトコース」にばかりいい球を投げているのか、もしくは、「バーランダーにだけ好意的なアンパイア」が世の中に溢れかえっているのか、はたまた、「バーランダー嫌いのファン」が世の中に溢れているのか。どれが正解なのか、教えてもらいたいものだ(笑)


記事1
2011 ALDS Game 3 DET vs NYY
におけるバーランダー有利な判定(サバシアへの判定との比較)
Comparing strike zones for Sabathia and Verlander - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics
サバシアが5回1/3(7安打4失点)しかもたず、当時まだセットアッパーだったラファエル・ソリアーノが、デルモン・ヤングに決勝ホームランを打たれて敗戦投手になったゲームだ。
ちなみにヤンキースはデトロイト時代のデルモン・ヤングには煮え湯を飲まされ続けていて、2011ALDSで3本、2012ALCSでも2本、合計5本ものホームランを打たれ、36打数12安打9打点とさんざんな目にあわされ、2度敗退する原因となった。
記事によれば、このGame 3で 「ゾーン外の球がストライク判定された割合」は、サバシア7.3%に対し、バーランダーはその約2.7倍、19.6%もの数字になるという。

この試合の球審は、「ゾーンの狭さ」と「判定の確かさ」の2つで有名なMLBアンパイア界の巨匠Gerry Davis(第3回WBCの日本ラウンド 日本対中国戦の球審をつとめたアンパイア)なだけに、2人の先発投手の判定にそこまで差が出るものなのかどうか、ちょっと信じがたい部分もないではないが、記事に掲載されたデータで見るかぎり、たしかに左バッターの場合の判定が「バーランダーだけ」甘くなっている。
Damejima's HARDBALL:2013年3月3日、WBCファースト・ラウンドにみる「MLB球審のストライクゾーン」とゲーム内容との関係 (1)基礎知識編

October 3, 2011 American League Division Series (ALDS) Game 3, Yankees at Tigers - Baseball-Reference.com

ちなみに2011ALDSといえば、Game 5で、この年の7月末にデトロイトにトレードされたばかりのダグ・フィスターがNYY相手に5回1失点と好投したのが懐かしい。リーランドはこの試合でも、2013ALDSのOAK戦でやったようにシャーザーをリリーフ登板させ、必勝態勢をひいている。
かたや、ジョー・ジラルディも、当時のエース、サバシアをリリーフ登板させているが、サバシアはこの2011ALDSでヤンキース投手陣では最も多くの失点をしている投手であって、たとえリリーフといえど、負けられないGame 5で使う意味が全くわからない。おまけにジラルディは、5回の2死2塁でミゲル・カブレラを敬遠させる弱気な策をとって、勝負どころに強いのがわかりきっているビクター・マルチネスに無理な勝負を挑み、決勝タイムリーを打たれている。(おまけに、1失点しているサバシアを次の6回も投げさせた)
ま、振り返ってみれば、ジラルディはイチローが移籍する前から勝負どころではいつも「謎采配」をする監督ではあったのだ(笑)
Damejima's HARDBALL:2011年10月6日、フィスター5回1失点の好投で、ALDS Game 5の勝ち投手に。デトロイトがヤンキースを破って、テキサスとのALCS進出!

October 6, 2011 American League Division Series (ALDS) Game 5, Tigers at Yankees - Baseball-Reference.com

記事2
2012 ALDS Game 5 DET vs OAK
におけるバーランダー有利な判定
Strike-Zone Controversy During ALDS? | A Good Sports Hang
デトロイトがオークランドを6-0のシャットアウトで下し、2012ALDSの勝ち抜けを決めたゲーム。球審はWally Bell。オークランド先発はジャロッド・パーカー。
オークランドは、クリスプ、ドリュー、セス・スミス、レディックと、上位に左バッターを4人並べたが、その4人で合計9三振を喫するという惨憺たる結果に終わっている。
翌2013年のALDS Game 5でオークランドは、前年を上回る6人もの左バッターを並べてバーランダーに挑んだが、やはり0-3のスコアでシャットアウト負けし、シリーズ敗退している。
October 11, 2012 American League Division Series (ALDS) Game 5, Tigers at Athletics - Baseball-Reference.com


記事3
2012 ALCS Game 3 DET vs NYY
におるバーランダー有利な判定(フィル・ヒューズへの判定との比較)
Rejection By Zoubek: One of the Many Benefits of Being Justin Verlander
ヤンキースが1-2のクロスゲームで敗れ、シリーズ3連敗となったゲームだ。球審は、本来はゾーン全体が狭いというデータをもつが、気まぐれな判定ぶりで何をするかわからないSam Holbrook。結果的にヤンキースはそのまま次のゲームでも敗れ、スイープを食らった。
記事によれば、このゲームでバーランダーは、左バッターのアウトコースの判定で、ゾーン外の球を10球程度ストライクと判定されている。その一方、フィル・ヒューズは、5球程度のゾーン内の球を「ボール判定」されている、という。
Sam Holbrookに関する記事:Damejima's HARDBALL:2011年4月15日、Sam Holbrookの特殊なストライクゾーンに手こずったジェイソン・バルガス。バルガス、松阪、コーファクスのピッチングフォーム比較。

この2012 ALCS Game 3で、ヤンキースのチーム初ヒットを打ったのがイチローなら(4回 レフト前)、ただひとり2安打して気を吐いたのも、イチローだ。
だが、試合後のデータをみればわかるとおり、2人の左打者ガードナー、グランダーソンはノーヒットに終わり、左のカノー、左打席のテシェイラも精彩はなかったように、ヤンキースの左バッターは全体としてはバーランダーに抑え込まれた。
October 16, 2012 American League Championship Series (ALCS) Game 3, Yankees at Tigers - Baseball-Reference.com

記事4
年々縮小していく傾向にある「バーランダーの速球につきものの有利なアウトコース判定」
Verlander's Fastball Losing Favor with Umps - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics
かつて100マイルを誇ったバーランダーのストレートだが、その球速が最近になって低下していくのにしたがって、「バーランダーの投げるストライクゾーン外の速球がストライク判定されるパーセンテージ」も年々下がってきてますよ、という主旨の記事。
記事によれば、「ゾーン外の球がストライク判定される率」は、2011年にバーランダーが「16.4%」と高く、この数字より高いパーセンテージをもつ右投手は、リヴァン・ヘルナンデス、フィスター、マーカム、ボーグルソン、ダン・ヘイレン、コルビー・ルイス、ロイ・ハラデイくらいだという。


記事5
2013年に「ストライクゾーン外の球を、最も多くストライクとコールされた投手ランキング」(バーランダーは第3位)
Which Pitchers are Getting Calls, Getting Squeezed? - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics
この記事によれば、「ストライクゾーンを外れた球を、最もストライクとコールされやすい投手」は、どういうわけか、ほとんどが「右投手」ばかりらしい。(アレックス・コブ、カイル・ローシュ、バーランダー、デンプスター、ピービー、バックホルツ、マカリスター、ヘリクソン、ケビン・スロウウィー、マット・レートスの順。逆に、ゾーン外の球を「ボール判定」されてしまいやすいのは、マット・ハービーやジョー・ソーンダースらしい)

だが、確かにALDS Game 5で、有利な判定を受けたとされるバーランダーは「右投手」だが、対戦相手のソニー・グレイだって「同じ右投手」だ。
だから、この程度の「寄せ集めのデータ」では、「右投手が左打者に投げるアウトコースのゾーンは一般に広い」と断言することなど、もちろんできない相談だし、ましてや、「バーランダーのアウトコースのストライクゾーンが、ソニー・グレイに比べてやたらと広かったこと」を、「バーランダーが右投手だから」と説明して済ますことはできない。
こういう記事だけ読んで、「MLBのアンパイアには、右投手が左打者のアウトコースに投げた場合、ストライクゾーンが広く判定されやすくなる傾向がある」と思い込んでも、それはまったく意味がない。



さて、こうしてポストシーズンでのバーランダーのことを書いていると、2012ALCSにおけるイチローの活躍を、あらためて書き起こしたくなってくる。

2012 ALCS Game 1
0-4と、4点リードされて迎えた絶体絶命の9回裏、当時のデトロイトの守護神ホセ・バルベルデから打った起死回生の2ランは忘れられない。初球のど真ん中の速球を見逃した後、バルベルデが投じたインコースいっぱいの速球を振り抜いた。この試合、イチローは2ランを含む4安打。爽快な試合だった。

Damejima's HARDBALL:2012年11月9日、2012オクトーバー・ブック WS Game 4でフィル・コークが打たれた決勝タイムリーを準備した、イチローの『球速測定後ホームラン』 による『バルベルデ潰し』。

October 13, 2012 American League Championship Series (ALCS) Game 1, Tigers at Yankees - Baseball-Reference.com



2012 ALCS Game 3
左バッターにとって、「ポストシーズンで対戦するのは鬼門」とさえいえる右腕バーランダーから、イチローが2安打したゲーム。
速球の衰えがささやかれるバーランダーが、打者を追い込んでから投げる最近の勝負球のひとつが、独特の握りから投げる「チェンジアップ」であることはよく知られているわけだが、イチローの4回のチーム初ヒットは、フルカウントからその「チェンジアップ」を打ったもの。
この記事で書いてきたことでわかるように、「バーランダーがポストシーズンで左バッターに投げるアウトコースの球」は、たとえストライクゾーンから外れていても、ストライク判定されやすい。それをしっかりヒットにしたのだから、たいしたものだ。
左バッターにとって非常にやっかいな「バーランダーのアウトコースの球」を、それもバーランダー有利な判定が頻発するポストシーズンにヒットにするのがいかに難しいかを知れば、このGame 3におけるイチローの2安打の奮闘ぶりが理解できるはず。
October 16, 2012 American League Championship Series (ALCS) Game 3, Yankees at Tigers - Baseball-Reference.com


やはり、どこをどうみても、シアトルから移籍してシーズンの半分だけ過ごした2012年ヤンキースで、ポストシーズン終了まで粘り強く活躍しつづけたイチローが、翌2013シーズンの開幕を「下位打線から再度始めなければならない理由」など、まったく、1ミリも、見つからない。

そもそも、上に挙げたイチローのヤンキース移籍前の、NYY対DETの2011ALDSでのヤンキースの打撃スタッツをみればわかることだが、2011年のポストシーズンの時点で既に、ヤンキースが「勝負どころになると全く打てないチーム」であることは明確になりつつあった。
2011ALDSでいえば、打線全体で5試合で50三振、1試合あたり10三振を喫して、シリーズ敗退。テシェイラ、Aロッド、ラッセル・マーティンの3人は打率1割台でまるでアテにならず、その打てない3人に、ニック・スイッシャー、ジーター、グランダーソンを入れた6人でも、ホームランはたった2本しか打ててない。

つまり、2013年は怪我人が多かったから打てない、のではなく、「怪我人が出まくる前から、見た目ほど打ててはいなかった」というのが正しいわけだ。

近年のビッグネームを並べただけのヤンキース打線の中身がスカスカになってきていたことに誰ひとり気がつかなかったのは、単に、ヤンキースにカネはあっても、分析力は無い、ただそれだけのことである。ジラルディとの4年契約をみても、「ヤンキースの分析力の無さ」ははっきりしている。


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