March 26, 2014

アナボリック・ステロイドのようなドーピング手法が、「筋肉だけを都合よく発達させてくれる魔法」かなにかだと思いこんでいる人もいるかもしれないが、そんなものは幻想に過ぎない。
アレックス・ロドリゲスやバリー・ボンズなどのステロイダーが股関節の手術を繰り返しているのは「偶然ではない」のである。


ステロイドの濫用にはとりかえしのつかない副作用がある
例えば、ドーピングのためのアナボリック・ステロイド多用による副作用のひとつに、「ステロイド性骨壊死症」がある。
多くの場合、大腿骨頭壊死(avascular necrosis of the femoral head)によって股関節の故障が引き起こされ、悪くすると選手生命に重大かつ致命的な影響を及ぼすることになる。(股関節を hip あるいは hip joint ということから、hip avascular necrosisという言い方もある)

ブログ注:
なお、くれぐれも、骨壊死が「スポーツにおけるドーピングのみ」に限って起きる病ではないことに細心の注意を払ってもらいたい。
例えば、「特発性」といわれるケースにおいては (注:これは誤字ではない。「突発性」ではなく「特発性」と書くのが正しい) 突然発症し、しかも原因がほとんどわからないまま、短期間に症状が進んでしまう。
また、膠原病やネフローゼ(かつて寺山修司がかかった病)のような病気の場合、治療目的でステロイドが使われるため、やむをえずステロイドを常用し続けなければならなくなる方がいる。その場合、ステロイドによる治療の副産物として、やむなく骨壊死を発症してしまうことがある、といわれている。
だから、ゆめゆめ、骨頭壊死症のすべてを、アスリートのドーピング不正と安易に結びつけてはならない。また、いうまでもないことだが、スポーツ選手の股関節の故障のすべてが、ステロイドによるドーピングによる悪質行為というわけではない。


ステロイドでなぜ大腿骨の骨頭(femoral head=大腿骨のてっぺんの丸い部分)が虚血壊死(AVN, avascular necrosis)を起こしてしまうのか、というと、「大腿骨頭には、もともと血管そのものが少ない」からだ。

femoral head(大腿骨頭)


ステロイドはコレステロールに似た脂質だ。短期の使用なら体外に排出される機能がはたらくが、長期に常用すると血流障害の原因になる。大腿骨頭はもともと血行の悪い場所だから、ステロイドの常用で血流障害が起きると、とたんに大腿骨頭で「虚血が原因の骨壊死」が起きやすくなる、というわけだ。(高脂血症で骨壊死が起きるのも、まったく同じプロセス)

大腿骨頭壊死
「特発性大腿骨頭壊死症」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる
より拝借

骨壊死自体は痛みをともなわない。だが、壊死した大腿骨頭に体重がかかって潰れ、さらに陥没してしまうと、痛みが出てくる。陥没が拡大すると股関節の動きが悪くなる程度の話では済まなくなっていき、体重を支えきれなくなるほどの激しい痛みをともなうようにもなる。そして最終的には大規模な手術などの対策が必要になってしまう。

例:「骨切り」と呼ばれる手術法
骨壊死によって陥没が起きている部分を含む大腿骨頭を、いちど切ってから、くるりと回転させ、壊死による陥没部分が荷重部分にかからならないよう、位置を変更して付け直すという、なかなか難易度の高い術法。

大腿骨頭壊死の手術例
民医連 | 股関節の骨折と病気/体重を支える大事な関節
より拝借

人工関節変形が進行しすぎている場合、人工骨頭や人工関節などへの置き換えが行われる。

かつて2006年にツール・ド・フランスで総合優勝を果たしたフロイド・ランディスも、大腿骨頭壊死によって人工股関節を入れていた。
ドーピング発覚する前のランディスは、あたかも「プロ根性のあるアスリート」であるかのような扱いを受けていたのだが、後にドーピングが発覚してツール・ド・フランス優勝を剥奪されたため、人工関節の逸話も「単なる自業自得でしょ」というオチになった。



「ステロイドが原因で起こる大腿骨頭壊死の特徴」を調べてみると、「股関節の両方に出やすい」、「壊死部分が広く、急速に進行することも多い」、「多発性骨壊死が多い」などといわれている。
多発性」というのは、骨壊死が大腿骨頭だけでなく、膝や肩など、さまざまな関節で同時多発的に起きる、という意味。骨壊死はもともと血行の悪い場所で起きる症状なわけだから、ステロイドによるドーピングの副作用は、なにも大腿骨頭だけでなく、他の血行の悪い関節部、膝や肩にまで及ぶ可能性がある、というわけだ。

多発性骨壊死の痛みの及ぶ範囲



Play Clean
日付表記はすべて
アメリカ現地時間です

Twitterボタン

アドレス短縮 http://bit.ly/
2020TOKYO
think different
 
  • 2014年10月31日、PARADE !
  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年6月1日、あまりにも不活性で地味な旧ヤンキースタジアム跡地利用。「スタジアム周辺の駐車場の採算悪化」は、駐車場の供給過剰と料金の高さの問題であり、観客動員の問題ではない。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年6月29日、『父親とベースボール』 (1)星一徹とケン・バーンズに学ぶ 『ベースボールにおける父親の重み』。
Categories
ブログ内検索 by Google
ブログ内検索 by livedoor
Thank you for visiting
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

free counters

by Month