April 04, 2014

2014MLBレギュラーシーズンが開幕して、適用範囲が大幅に拡大されたインスタント・リプレイ、いわゆるExpanded Replayが今シーズンから運用され始めているわけだが、いまだに、きちんとそのルールや運用方法をきちんと書いたサイトが見当たらないようだから(笑)、ちょっとまとめておくことにした。


例えば、新しいビデオ判定システムで「元の判定を覆すかどうか」について最終判断を下すのは、球場にいるクルー・チーフ(日本でいう「責任審判」)だと思っている人がいまだにいるのかもしれないが、(MLB発表の資料などで読む限り)実際にはそうではない。

判定が覆るかどうかについて最終判断を下すのは、Replay Official(リプレイ・オフィシャル)と呼ばれる「球場とは別の場所にいる、まったく別のアンパイア」だ。
また、細かくいえば、「監督がチャレンジしたプレイ」について、「ビデオ判定に入るかどうか」を決定するのも、あくまでReplay Officialの決定によるのであって、「Replay Officialがビデオ判定に移行すると決定するまで」は、元の判定は変更されることはない)

Replay Command Center
Replay Officialが判定を行うニューヨークのReplay Operations Center (Replay Command Centerと表記するメディアもある)
Major League Baseball Debuts Instant Replay Ops Center | Close Call Sports & Umpire Ejection Fantasy League

ブログ注
判定を覆すかどうかの最終判断者はReplay Officialである」という点の元資料だが、MLB公式サイトとシカゴ・トリビューン紙は以下のように書いている。

MLB公式サイト
If the Replay Official does not overturn any of the calls challenged by a Club, the Club will lose the ability to challenge any additional play or call in the game.
ソース:MLB公式サイトにおけるExpanded Replayのレギュレーション:Replay Review Regulations | MLB.com: Official info

シカゴ・トリビューン
The replay official will make the ultimate determination of whether to overturn the call.
ソース:MLB approves expanded instant replay | Chicago Tribune

以下に、新しい拡張されたMLBのビデオ判定、いわゆるExpanded Replayについて、メディア報道などをもとに箇条書きにまとめてみた。
(項目において、項目をたてる数、項目の順序、項目の分割等は、ブログ側判断によるもので、MLB機構の正式発表によるものではない。また、各種メディア資料をもとに再構成した記述であるため、記述内容が正確かどうかについては、MLBの正式発表のレギュレーションにてらして自己責任において確認してもらいたい)
資料;シカゴ・トリビューン MLB approves expanded instant replay - Chicago Tribune
資料:審判員の眼 Instant Replay starts from 2014 Official Games (インスタント・リプレーが始まるゾ!)
資料:ニューヨーク・デイリー・ニューズ Major League Baseball approves expanded instant replay, managers can challenge up to two calls a game - NY Daily News

2014シーズンからのExpanded Replayの概要

1) 「チャレンジ」できるイニング数と度数の制約
両軍監督は6イニング終了を意味する3アウトが宣告され、10秒が経過するまでの間に「1度だけチャレンジ」を行うことができる。
「2度目のチャレンジ」は、「1度目のチャレンジ」が成功した場合に限ってのみ許される。
なお、2度目のチャレンジが成功であるか失敗であるかにかかわらず、「3度目のチャレンジ」はできない

ブログ注:
チャレンジができるイニングを「6イニングまで」と書いているサイトが多いが、実際には「6イニングが終わった後でも、監督はチャレンジすることができる」から、厳密にいえば「6イニングまで」という表現は正確ではない。
というのも、Expanded Replayのレギュレーションに、「アンパイアが3アウトを宣言した後であっても、監督はチャレンジできる」という記述と、「3アウトの後でチャレンジする場合、10秒以内にチャレンジを宣言せねばならない」という細則が記述されているからだ。
("In the case of a play that results in a third–out call, a Manager must immediately run onto the field to notify the Umpire that the Club is contemplating challenging the play (and in all circumstances must be on the field in less than ten (10) seconds from the Umpire's third–out call)," via Replay Review Regulations | MLB.com: Official info
だから、非常に厳密に書けば、監督が「チャレンジ」できるのは、6イニングの3アウトの宣告まででもなければ、7イニングの開始まででもなく、「6イニング終了である3アウトが宣告された直後、10秒が経過するまで」となるわけだ。


2) 7イニング以降のアンパイア判断によるビデオ判定
両軍監督にチャレンジの権利がなくなるのは、厳密にいうなら「6イニングの3アウトが宣告されてから10秒が経過して以降」だが、それ以降は、審判団がビデオ判定が必要と認めた場合にのみ、ビデオ判定が行われる。


3) 拡張されたビデオ判定の具体的方法
監督が「チャレンジ」をすると、そのゲームにおけるアンパイアのクルー・チーフに加え、最低ひとりのアンパイアが、ビデオを見て判定を確認する。
さらに審判団は、ニューヨークにあるMLB Advanced Mediaの "Replay Operations Center" (Replay Command Centerと表記しているメディアもある)に連絡をとる。センターには Replay Official (リプレイ・オフィシャル)という肩書の 「ボールパークにいるのとは別のMLBアンパイア」が待機している
このReplay Officialが、「チャレンジ」について、「元の判定を覆すかどうかの最終判断」を行い、それをボールパークにいるアンパイアに伝える。
こうして「複数のプロセス」が実施された後、ボールパークにいるクルー・チーフはボールパークでビデオ判定の結果を両チームと観客に示す。


4) Expanded Replayが適用されるプレイ
Home Run
ホームラン以外のBoundary Calls
ボールがグラウンドとスタンドとの境界(boundary)を越えたプレイに関する判定。例「野手の悪送球でボールがベンチやカメラマン席に入り、アウト・オブ・プレイ」 (またFan InterferenceやGround-rule Doubleも、ジャンルとしては、このBoundary Callsに含まれる)
Ground-rule Double
日本でいう「エンタイトル・ツーベース」
Fan Interference
フェンス際のフライやゴロを、ファンが触れたり捕球することで、守備側野手のプレーが阻害されたようなケースの判定
Force play Neighborhood playを除く
Tag Play
盗塁や牽制を含むタッチプレー全般
Fair/Foul in the Outfield
Catch Plays in The Outfield.
外野手の捕球の成否に関する判定。例えば、スライディングキャッチやダイビングキャッチを試みた場合に、「ボールがワンバウンドしているかどうか」を判定する
Hit by Pitch
Timing Play
例:ランナー生還が三塁でのアウトより前だったかどうか
Touching a Base
例:走者のベースの踏み忘れ。アピールプレイであるため、ビデオ判定以前の問題として、守備チーム側からアピールがあったことが前提になる
Passing Runners
走者の追い越し
Record Keeping
例:打者のカウント、アウトカウント、スコア、選手交代に関する訂正
Collisions At Home Plate
ホームプレート付近での、ランナーとキャッチャー(あるいはベースカバーに入った守備側選手)との接触に関するプレイ。今シーズンからルール改正され、ホームインを狙うランナーは、ホームプレートへの直線的な走路から外れてキャッチャー(またはベースカバーした選手)に接触しようとすることが禁じられた。


5) 「チャレンジ」できないプレー
「チャレンジ」が許されないプレイが設けられている。
代表的なのは「球審のストライク/ボールの判定」で、これは「チャレンジ」できない。他に、例えばボールが大きくホップしたり、バウンドしたことで、一塁ベースあるいは三塁ベースの上を越えていく場合、それがフェアか、ファウルだったかの判定については、チャレンジすることはできない。

ブログ注
この2つの例以外に「チャレンジできないプレイ」が存在するのかどうかについては、いまのところ不明。


6) チーム側のチャレンジ以外の諸権利
ビデオを見る権利
両チームは、チャレンジ中にビデオのリプレイを見ることができる
ビデオルームと連絡をとる権利
ダグアウトには「ビデオルームと連絡をとるための電話」が設置され、ビデオルームと連絡をとることが許される
ビデオリプレイを流す権利
両チームは、クロスプレーのリプレイを、スコアボードに設置された大型スクリーンなどのようなビデオ再生装置で球場内に流すことができる(via Chicago Tribune)
アンパイアルームにある「リプレイのみられるモニターと電話」アンパイアルームにある「ビデオルームに連絡できる電話と、リプレイのみられるモニターの入ったボックス」 Why I’m against baseball’s instant replay - Salon.com


MLB初のExpanded Replayの「チャレンジ」
2014年3月31日カブス対パイレーツ戦
カブス監督リック・レンテリア、塁審ボブ・デービッドソン



記念すべき「初めてのExpanded Replayによる判定」と「1試合に2度のチャレンジ」が行われたのは、2014年3月31日のカブス対パイレーツ開幕戦。初チャレンジを行ったのは、カブスの新監督リック・レンテリア

MLB最初のチャレンジ対象となるコールを行ったアンパイアは、なんと、いわくつきのアンパイア、ボブ・デービッドソンだった(笑)

5回表の無死1、2塁、カブス先発Jeff Samardzijaが送りバント、結果は1-5-3のダブルプレーだったが、この1塁でのクロスプレーについて、今年からカブスの監督になったリック・レンテリアがチャレンジ。これが「MLB最初のExpanded Replay」になった。
ちなみに判定は覆らなかった(笑)
Cubs fall on walk-off HR in Renteria's debut - March 31, 2014 | MLB.com Wrap


MLB初の「1試合に2度のチャレンジ
2014年3月31日カブス対パイレーツ戦
ピッツバーグ監督クリント・ハーディー、塁審ボブ・デービッドソン



なおMLB初のExpanded Replayの行われたカブスvsパイレーツ戦で、10回表に、こんどはピッツバーグ監督のクリント・ハーディーがチャレンジを行ったために、このゲームは「MLB初の1試合に、2度のチャレンジが行われたゲーム」にもなった。
初の「同一ゲーム2度目のチャレンジ」だったが、対象は、またしても1塁塁審ボブ・デービッドソン(笑) いかにこのアンパイアがMLBで「心証の悪いアンパイア」であるかが、よーーーくわかる(笑)

10回表、ピッツバーグのリリーフ、ブライアン・モリスが、1塁に牽制球を投げた。ランナーは、エミリオ・ボニファシオ。
塁審ボブ・デービッドソンは「セーフ」とコールしたが、ピッツバーグ監督のクリント・ハーディーがチャレンジ。結果的に判定は「覆った」。
First of two Cubs-Bucs challenges is MLB's first | cubs.com: News


初のExpanded Replayによる「判定のターンオーバー」
2014年3月31日ミルウォーキー対アトランタ戦
アトランタ監督フレディ・ゴンザレス、塁審グレッグ・ギブソン



「チャレンジによって初めて判定が覆った」のは、これもいわくつきのバッター、去年ドーピングがバレて出場停止処分を食らっているライアン・ブラウンの1塁でのクロスプレー。

6回裏のライアン・ブラウンのファーストでのクロスプレーについて、1塁塁審のグレッグ・ギブソンは「セーフ」とコール。だが、アトランタの監督フレディ・ゴンザレスのチャレンジが通って、判定は「覆った」ため、これがMLBにおける初のExpanded Replayによる判定のターンオーバーとなった。


初の「1試合で同じチーム2度のターンオーバー」
2014年4月2日カンザスシティ対デトロイト戦
デトロイト監督ブラッド・アスムス
1塁塁審Chris Conroy



「1試合で同じチームによる2度のチャレンジに初めて成功」したのは、勇退したジム・リーランドにかわってデトロイトの新監督になったブラッド・アスムスだった。

1度目は、6回裏の無死1、2塁。デトロイトのタイラー・コリンズがオフに長期契約を結んだカンザスシティの先発ジェイソン・バルガスからセカンドゴロ。
1塁塁審Chris Conroyがアウトをコールし、いったんダブルプレーが成立したが、コメリカパークの場内のスクリーンに映し出されたリプレイは、明らかに「ファーストはセーフ」。
結局デトロイトの新監督ブラッド・アスムスのチャレンジが通って、判定は覆り、ダブルプレーによる2死3塁ではなく、1死1、3塁になった。

上で書いたように、MLBのビデオ判定のレギュレーション上、このような「1度目のチャレンジが成功した」場合では、「2度目のチャレンジ」をすることができる

2度目は、1対1の同点で迎えた延長10回表の2死2塁。打者青木宣親が、デトロイトのリリーバー、アル・アルバカーキからピッチャーゴロを打ち、ファーストでクロスプレーになった。1塁塁審Chris Conroyの判定は「セーフ」。
だが、ここでも、デトロイトの新監督ブラッド・アスムスのチャレンジが通って判定が覆り、3アウト。もし、このクロスプレーが最初の判定通り「セーフ」になっていたら、同点の2死2塁でのボテボテのゴロだっただけに、セカンドランナーは生還し、カンザスシティが1点リードして9回裏になっていたはず。
試合は、その直後の9回裏に、デトロイトが新加入イアン・キンズラーのサヨナラヒットで勝利したのだが、10回表のチャレンジ成功が効果をあげた結果になった。
Tigers win both replay challenges vs. Royals | tigers.com: News

Kansas City Royals at Detroit Tigers - April 2, 2014 | MLB.com Classic


それにしても、こうしてまとめてみると、ここで挙げてみた「Expanded Replayのチャレンジ成功の実例」の全てが、1塁でのプレーなのだが、これを「単なる偶然」と片付けていいとは、到底思えない。

2013年5月に書いた記事で、「ファーストでの誤審の多さ」について書いたことがあった。思えば、アーマンド・ガララーガの完全試合が塁審ジム・ジョイスの誤審で幻の完全試合として葬られてしまったのも、「1塁での誤審」だったのだ。
2013年5月27日、日米ファーストでの誤審3題。このところのアンパイアの「雑な判定ぶり」は、もう何らかの対策が必要なレベルにきている。 | Damejima's HARDBALL


これからもっともっと「チャレンジ成功の実例」が出てくると思うけれど、おそらくその多くが「1塁での判定」になるような気がする。
それだけに、1塁塁審をつとめるアンパイアのふるまいについて、例えばポジショニングなどを根本的に再考すべきときが来るような気がする。


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