April 06, 2014

Neighborhood Playは、たとえ大幅に適用範囲が拡大されたInstant Replayといえども、こればかりはビデオ判定が適用されない例外であり、両軍監督はチャレンジできない」ことになっている、という話は、日米のメディアやこの手の話題に詳しいブログに書かれている定番の話題のひとつなわけだが、実際には、4月2日のカブス対パイレーツ戦でダブルプレーの成否について、ビデオ判定が行われ、判定が覆っている。

この件が果たして、
「本来ならチャレンジできないはずのNeighborhood Playを、インスタントリプレイで判定したことになる」のかどうか。

Chicago Cubs at Pittsburgh Pirates - April 2, 2014 | MLB.com Classic

パイレーツの2点リードで迎えた8回表、1死満塁で打者ネイト・シャーホルツはセカンドゴロ。アンパイアは、4-6-3のダブルプレーが成立したとして、3アウトを宣告。二塁塁審は John Tumpaine、パイレーツのセカンドはニール・ウォーカー、ショートはジョーディー・マーサー
だが、カブス監督のリック・レンテリアがビデオ判定を要求、結果的に判定が覆ってセカンドでのフォースアウトが取り消されたために、同時にサードランナーの生還も認められ、スコアは1-2と1点差になった。


このプレー、動画で確認してみると、捕球したとき、パイレーツの遊撃手ジョーディー・マーサーの足は明らかにセカンドベースから離れている
だから、問題になるのは、このプレーがいわゆる Neighborhood Play にあたるかどうかという点だ。

ビデオ判定で「セーフ」になったダブルプレー(4月2日CHC対PIT)


Neighborhood Playというのは、「ダブルプレーの際に、守備側野手(セカンドまたはショート)が、ランナーにスパイクされるのを防ぐため、捕球時に足がセカンドベースに触れていない状態で、捕球・送球すること」で、実際には、まったく足が振れないままプレーすることもあれば、送球を捕球する前に足でベースをタッチしておいて、足を離し、それから捕球・送球してダブルプレーを成立させることも多い。
こうしたNeighborhood Playに「2つのアウトの成立」を認めることは、「ベースボールにおける暗黙の了解」のひとつとして認められている。

ただ、これには注釈がある。

「ベースに触れないダブルプレー」が Neighborhood Play と認められるのは、あくまで「セカンドでランナーがアウトにできることが明白な場合だけ」だ。

もう少し具体的にいえば、「送球をキャッチした瞬間に足がセカンドベースに触れていないダブルプレー」がNeighborhood Playとして許容されるのは、「セカンドでランナーをアウトにはできる状況だったのは明らかだが、同時に、ランナーにスパイクされるのを避ける必要があったため、足をベースから離してプレーした、という場合だけ」なのだ。

だから例えば「セカンド送球が大きくそれていた」というような場合には、Neighborhood Playと認められず、ダブルプレーとして成立しない(ことがある)のだ。

そして実際、動画をみてもらうとわかるが、パイレーツの二塁手ニール・ウォーカーの送球はセンター方向にそれており、遊撃手ジョーディー・マーサーは「足をベースから離さないと、送球を捕球することができない状況」にあった。


こうした事例に非常に詳しいClose Call Sportsでは、以下のように注釈をつけて、この件の顛末を明快に説明している。

This is a reviewable play pursuant to MLB's Replay Review Regulations.
MLBのインスタント・リプレイのレギュレーションに照らせば、このプレーはビデオ判定していいプレーである。
Not reviewable is the umpire's judgment that a runner is clearly out on a force play at second base under the circumstances in which the defensive player may or may not have touched second base in his attempt to complete a double play and avoid a collision with the runner.
ビデオ判定にもちこめないのは、「アンパイアが、『二塁において走者をフォースアウトにできる状況なのが明らかだ』と判断した場合」である。そうした状況(=確実に二塁フォースアウトにできる状況)ならば、ダブルプレーを完成させつつ、ランナーとの激突を回避しようと試みる守備側プレーヤーが、セカンドベースに触塁していたかどうかは不問になる。
All other elements of the call shall be subject to review, including whether the fielder caught the ball, had control of the ball, was drawn off the bag, or tagged the runner.
それ以外はすべて「ビデオ判定の対象」になる。野手がボールをきちんと捕球できていたか、送球がそれていないか、足がベースから離れていないか、ランナーに対するタッチ等、すべてが含まれる。
Close Call Sports & Umpire Ejection Fantasy League: Neighborhood Play

要するに、「カブス対パイレーツ戦のダブルプレーでは、ゴロを捕った二塁手の遊撃手への送球が「横にそれている」。だから、二塁でのフォースアウトが成立する状況ではないのが明らかである以上、このプレーは、いわゆる "Neighborhood Play" にはあたらない。だから、この『Neighborhood Playではないプレー』をビデオ判定の対象にすることは、新しいビデオ判定のレギュレーション上も、まったく問題ない」といっているわけだ。


Close Call Sportsの説明にはもう何もつけ加える点はないほど明快だが、ブログ主としては、あえて以下の点をさらに明確にしておかないと、気が済まない。


審判関係者などでこの件について、「セカンド送球がそれているケースでは、 "Neighborhood play" にはあたらない」なんてことを書いていることがあるが、そんなことを、今のいま、「したり顔」で言われても困るのである。
まして、「昔からそうだった」とか、「そういうルール運用は昔からあった」みたいに言われるのは、もっと困るし、腹も立つ。

たくさんのゲームを見てきた人ならわかると思う。
このカブス対パイレーツ戦のダブルプレー判定は、かつての判定システムにおけるMLBアンパイアなら、判定は間違いなく「ダブルプレー成立」だったのであり、たとえ守備側の監督や選手がどんなに判定に抗議しようと、その抗議が認められるなんてことは、まずありえなかったタイプのプレーなのだ。

つまり、いいかえるなら、
これまでのMLBアンパイアは、たとえダブルプレーで送球が大きくそれようが、なんだろうが、ほとんどのダブルプレーを "Neighborhood play" とみなし、ダブルプレー成立を安易に認めてきた、と、言いたいのである。

こうしたケースで、アンパイアの酷い判定に抗議した監督・選手もいた。だが、その大半は認められることなく、むしろ、アンパイアによって数多くの「退場者」が無意味に生産されてきたのである。


ブログ主の考えでは、今回のビデオ判定の拡張によって、初めて、(それがベースボールの面白さを増すのか減じるのかという議論は別にして)かつてなんでもかんでも広大に適用され続けてきた 「広すぎるNeighborhood Play」 というunwritten rules (またはunwritten codes)が、初めて限定され、狭められて、「間違いなくフォースアウトにできると思われるケースのみを、Neighborhood Playとみなす」 という「狭い定義」に限定されたのだと思う。

もちろん、これからも個々のケースでアンパイアの判断は右往左往することになるとは思うが、このことは「ルールの厳正化」をよしとする立場の人にとって、大きな前進のひとつだ。


ダブルプレーのとき、適当にセカンドに送球し、適当にファーストに投げていればいい時代は、ある意味もう終わった。これからの時代の二塁手、遊撃手には、これまで以上に正確なプレーが求められることになる。


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