September 12, 2014
ジャンカルロ・スタントンが5回表にミルウォーキーのマイク・ファイアーズ(「フィアーズ」と表記してもいいのだが、現地コメンタリーはファイアーズと発音している)から顎にデッドボールを受け、流血して起き上がれないままストレッチャーで退場したミラー・パークのマーリンズ対ブリュワーズ戦は、実はその後大荒れになった。
結局「デッドボールを受けた側」のマイアミに、合計4人もの退場者を出し、マイアミは監督どころか、監督退場後、臨時に指揮をとっていたベンチコーチ(=日本でいう『ヘッドコーチ』)まで退場になった。
Gameday:Miami Marlins at Milwaukee Brewers - September 11, 2014 | MLB.com Classic
MLB Ejections 181-184: Kellogg, Bellino (3-5, 7; Marlins x4) | Close Call Sports & Umpire Ejection Fantasy League
ブログ主の意見を最初に書いておくと、2つあって、ひとつは球審ジェフ・ケロッグが、ファイアーズがスタントンにぶつけた後、その代打で出てきたリード・ジョンソンへの初球にもインハイのスピードボールを投げた、その時点で、ファイアーズを即時退場処分にし、現行のMLBルールの範囲内で、マイアミ側の「激しい怒り」に一定の理解を示す「事態沈静化のための判断」をすべきだったんじゃないか、ということ。
2つ目に、MLBにも日本のような「危険球で一発退場」という制度を導入すべきなんじゃないか、ということを言いたい。
なんでもかんでも日本よりMLBのルールが正しいわけじゃないし、MLBのルールが変更になることに別に何の問題もない。例えばバスター・ポージーの大怪我によってMLBの本塁突入のスライディングが一部制限されるようになったような例があるように、スタントンの死球がルール改正につながってもいいと思う。
MLBの現行ルールの下では、球審が「頭部への危険球を投じた投手を一発退場させない」という判断を下すこと、それ自体は間違っていない。
というのも、MLBには日本のような「危険球で一発退場」というルールがないからだ。「危険球で一発退場」というのは、日本のプロ野球のローカルルールだ。
だが、ここでもう少し考えてもらわなくてはならない。
MLBには、「報復死球」(=デッドボールをぶつけられたチームが、その後のイニングで相手選手に故意に死球をぶつける報復行為)という考えがごく当たり前のようにある。しかも、「報復死球」はかなりの頻度で実行もされる。(もちろん報復死球を頭部めがけて投げるような、思慮の足りないことはしない)
その一方でMLBアンパイアは、この当然のように行われている「報復死球」に対して、まったく容赦しない。明らかな「報復死球」を行ったチームのピッチャー、監督は一発退場になる。
従って現行のMLBルールでは、「死球をぶつけた側」に退場者が出るのではなく、結果的に「死球をぶつけられた側」に「報復死球による退場者が出る」という仕組みになってしまっているといえる。
たしかに「程度の軽い死球」の場合なら、こうした現行ルールでも機能する。
投手に悪意はない。打者にもたいした怪我がない。それなら、一発退場させるほどの処分は必要ないし、また、アンパイアが報復死球を絶対的に抑止するという考えも間違ってない。
だが、今回のスタントンのような危険な死球の場合は、話が違っている。MLBの現行ルールは十分に機能せず、アンパイアによるゲームのコントロールが失われることが、スタントンの件で明らかになった、と思うのである。
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話をスタントンのケースに一度戻す。
試合では、MLB現行ルールどおり、スタントンの顎に危険なデッドボールをぶつけた投手ファイアーズは、退場にならず、そのまま投げ続けた。
ちなみに、日本のメディアではきちんと触れられていないが、ファイアーズが投げたスタントンへの顎へのデッドボールを、球審ジェフ・ケロッグは「スイングストライク」と判定している。このため、スタントンが病院に運ばれた時点で、カウントは0-2になっている。(ブログ主はこのストライク判定自体も間違っていると考える。この間違った判定は、以下の騒動の伏線になった)
ここで投手ファイアーズはよせばいいのに、スタントンの代打で出てきたリード・ジョンソンへの初球に、またしても「インハイの危ないストレート」を投げたのである。
これがいけなかった。
カウント0−2で代打に出てきたリード・ジョンソンは、このインハイの明らかなボール球をのけぞるように避けた。のけぞったためか、「結果的に」バットが回ってしまい、「ハーフスイングした形」になっている。
さらにジョンソンは、「手に当たった」というジェスチャーをして痛がってみせた。つまり「デッドボールだ」とアピールした。(だが、ビデオで見ると実際には当たっていない)
この日の球審は、MLBアンパイアの重鎮のひとりで、正確なコールをすることで知られるジェフ・ケロッグだったが、動画を見るとわかるが、ケロッグは即座にファーストを指差している。彼は最初「デッドボール」とコールしたのだ。(ところが、後で判定が変わり、「チェックスイング」だったとしてジョンソンは三振になった)
ジョンソンが手に当たったジェスチャーをしたこともあり、マイアミ側にたまっていた「スタントンのデッドボールに対する怒り」に火がついた。マイアミベンチから選手がホームプレートに集まってきて、それに呼応してミルウォーキー側からも選手が次々と集まってくる。一触即発の事態だ。
動画:Video: Tempers flare in 5th | MLB.com
この騒動の責任をとらせる形で、球審ケロッグは、マイアミの監督マイク・レドモンドと、血相変えて大声で怒鳴りちらしていたマイアミの三塁手ケイシー・マギーを退場処分にした。
ケイシー・マギーは、死球で起き上がれないチームメイトの横にずっとしゃがんで心配していたから、チームメイトに瀕死の死球を投げつけた投手がその後も平然とインハイに投げてきたことがよほど腹にすえかねたのだろう。正義感の強い彼らしい行為ではあった。
球審が一度デッドボールと判定した打者リード・ジョンソンだが、後に判定が覆えり、「チェックスイング(=日本でいうハーフスイング)」だったとして、ジョンソンは空振り三振になった。
スタントンのデッドボール時点でのシチュエーションは、走者が2人いるマイアミ側のチャンスの場面だったのだが、2アウトでカウント0−2だった。
ケロッグによるジョンソンの判定が「デッドボールから、空振り」に変更されたことで、「デッドボールで満塁のチャンス」になるはずが、「ジョンソン空振り三振、チェンジ」になってしまい、マイアミ側のチャンスは騒動の末、潰されてしまった。
もちろん、主砲スタントンに大怪我させられただけでなく、その代打に出した打者にも「インハイの危ない球」を投げられ、さらには、その危ない球を避けたところ「チェックスイング」と判定され、三振でチェンジ、では、マイアミ側の激しい怒りがおさまるわけはない。
6回裏のミルウォーキーの攻撃で、カルロス・ゴメスに危険球を投じたとして、投手アンソニー・デスクラファニ、監督の退場処分後、指揮していたマイアミのベンチコーチ、ロブ・リアリーの2人が退場処分となった。いわゆる「報復死球」というやつで、これでマイアミのベンチには監督もベンチコーチもいなくなってしまった。
こうした経緯でわかるように、球審ジェフ・ケロッグが一時ゲームのコントロールを喪失していることは明らかであり、彼の一連の判断が「マイアミ側に一方的に不利だ」とマイアミ側に受け取られてもしかたがない。
たとえMLBに日本のような「危険球で一発退場」というルールがないにせよ、リード・ジョンソンへの初球にインハイを投げた時点で、ミルウォーキーの投手マイク・ファイアーズを退場処分にすることは、「MLBの現行ルールの範囲内で」できることなのだから、球審ジェフ・ケロッグはまずファイアーズを退場にすべきだった。
もしファイアーズが退場になっていれば、マイアミのベンチから選手が出てくることは防げたはずだ。
さらにいえば、スタントンへの危険球は選手生命に関わるレベルのものだけに、「危険球で一発退場」というルールをMLBでも導入してしかるべきだと思う。
もし、スタントンのデッドボールの時点でファイアーズが一発退場になっていれば、マイアミ側の怒りに油をそそぐような事態にはなっていなかった。
結局「デッドボールを受けた側」のマイアミに、合計4人もの退場者を出し、マイアミは監督どころか、監督退場後、臨時に指揮をとっていたベンチコーチ(=日本でいう『ヘッドコーチ』)まで退場になった。
Gameday:Miami Marlins at Milwaukee Brewers - September 11, 2014 | MLB.com Classic
MLB Ejections 181-184: Kellogg, Bellino (3-5, 7; Marlins x4) | Close Call Sports & Umpire Ejection Fantasy League
ブログ主の意見を最初に書いておくと、2つあって、ひとつは球審ジェフ・ケロッグが、ファイアーズがスタントンにぶつけた後、その代打で出てきたリード・ジョンソンへの初球にもインハイのスピードボールを投げた、その時点で、ファイアーズを即時退場処分にし、現行のMLBルールの範囲内で、マイアミ側の「激しい怒り」に一定の理解を示す「事態沈静化のための判断」をすべきだったんじゃないか、ということ。
2つ目に、MLBにも日本のような「危険球で一発退場」という制度を導入すべきなんじゃないか、ということを言いたい。
なんでもかんでも日本よりMLBのルールが正しいわけじゃないし、MLBのルールが変更になることに別に何の問題もない。例えばバスター・ポージーの大怪我によってMLBの本塁突入のスライディングが一部制限されるようになったような例があるように、スタントンの死球がルール改正につながってもいいと思う。
MLBの現行ルールの下では、球審が「頭部への危険球を投じた投手を一発退場させない」という判断を下すこと、それ自体は間違っていない。
というのも、MLBには日本のような「危険球で一発退場」というルールがないからだ。「危険球で一発退場」というのは、日本のプロ野球のローカルルールだ。
だが、ここでもう少し考えてもらわなくてはならない。
MLBには、「報復死球」(=デッドボールをぶつけられたチームが、その後のイニングで相手選手に故意に死球をぶつける報復行為)という考えがごく当たり前のようにある。しかも、「報復死球」はかなりの頻度で実行もされる。(もちろん報復死球を頭部めがけて投げるような、思慮の足りないことはしない)
その一方でMLBアンパイアは、この当然のように行われている「報復死球」に対して、まったく容赦しない。明らかな「報復死球」を行ったチームのピッチャー、監督は一発退場になる。
従って現行のMLBルールでは、「死球をぶつけた側」に退場者が出るのではなく、結果的に「死球をぶつけられた側」に「報復死球による退場者が出る」という仕組みになってしまっているといえる。
たしかに「程度の軽い死球」の場合なら、こうした現行ルールでも機能する。
投手に悪意はない。打者にもたいした怪我がない。それなら、一発退場させるほどの処分は必要ないし、また、アンパイアが報復死球を絶対的に抑止するという考えも間違ってない。
だが、今回のスタントンのような危険な死球の場合は、話が違っている。MLBの現行ルールは十分に機能せず、アンパイアによるゲームのコントロールが失われることが、スタントンの件で明らかになった、と思うのである。
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話をスタントンのケースに一度戻す。
試合では、MLB現行ルールどおり、スタントンの顎に危険なデッドボールをぶつけた投手ファイアーズは、退場にならず、そのまま投げ続けた。
ちなみに、日本のメディアではきちんと触れられていないが、ファイアーズが投げたスタントンへの顎へのデッドボールを、球審ジェフ・ケロッグは「スイングストライク」と判定している。このため、スタントンが病院に運ばれた時点で、カウントは0-2になっている。(ブログ主はこのストライク判定自体も間違っていると考える。この間違った判定は、以下の騒動の伏線になった)
ここで投手ファイアーズはよせばいいのに、スタントンの代打で出てきたリード・ジョンソンへの初球に、またしても「インハイの危ないストレート」を投げたのである。
これがいけなかった。
カウント0−2で代打に出てきたリード・ジョンソンは、このインハイの明らかなボール球をのけぞるように避けた。のけぞったためか、「結果的に」バットが回ってしまい、「ハーフスイングした形」になっている。
さらにジョンソンは、「手に当たった」というジェスチャーをして痛がってみせた。つまり「デッドボールだ」とアピールした。(だが、ビデオで見ると実際には当たっていない)
この日の球審は、MLBアンパイアの重鎮のひとりで、正確なコールをすることで知られるジェフ・ケロッグだったが、動画を見るとわかるが、ケロッグは即座にファーストを指差している。彼は最初「デッドボール」とコールしたのだ。(ところが、後で判定が変わり、「チェックスイング」だったとしてジョンソンは三振になった)
ジョンソンが手に当たったジェスチャーをしたこともあり、マイアミ側にたまっていた「スタントンのデッドボールに対する怒り」に火がついた。マイアミベンチから選手がホームプレートに集まってきて、それに呼応してミルウォーキー側からも選手が次々と集まってくる。一触即発の事態だ。
動画:Video: Tempers flare in 5th | MLB.com
この騒動の責任をとらせる形で、球審ケロッグは、マイアミの監督マイク・レドモンドと、血相変えて大声で怒鳴りちらしていたマイアミの三塁手ケイシー・マギーを退場処分にした。
ケイシー・マギーは、死球で起き上がれないチームメイトの横にずっとしゃがんで心配していたから、チームメイトに瀕死の死球を投げつけた投手がその後も平然とインハイに投げてきたことがよほど腹にすえかねたのだろう。正義感の強い彼らしい行為ではあった。
球審が一度デッドボールと判定した打者リード・ジョンソンだが、後に判定が覆えり、「チェックスイング(=日本でいうハーフスイング)」だったとして、ジョンソンは空振り三振になった。
スタントンのデッドボール時点でのシチュエーションは、走者が2人いるマイアミ側のチャンスの場面だったのだが、2アウトでカウント0−2だった。
ケロッグによるジョンソンの判定が「デッドボールから、空振り」に変更されたことで、「デッドボールで満塁のチャンス」になるはずが、「ジョンソン空振り三振、チェンジ」になってしまい、マイアミ側のチャンスは騒動の末、潰されてしまった。
もちろん、主砲スタントンに大怪我させられただけでなく、その代打に出した打者にも「インハイの危ない球」を投げられ、さらには、その危ない球を避けたところ「チェックスイング」と判定され、三振でチェンジ、では、マイアミ側の激しい怒りがおさまるわけはない。
6回裏のミルウォーキーの攻撃で、カルロス・ゴメスに危険球を投じたとして、投手アンソニー・デスクラファニ、監督の退場処分後、指揮していたマイアミのベンチコーチ、ロブ・リアリーの2人が退場処分となった。いわゆる「報復死球」というやつで、これでマイアミのベンチには監督もベンチコーチもいなくなってしまった。
こうした経緯でわかるように、球審ジェフ・ケロッグが一時ゲームのコントロールを喪失していることは明らかであり、彼の一連の判断が「マイアミ側に一方的に不利だ」とマイアミ側に受け取られてもしかたがない。
たとえMLBに日本のような「危険球で一発退場」というルールがないにせよ、リード・ジョンソンへの初球にインハイを投げた時点で、ミルウォーキーの投手マイク・ファイアーズを退場処分にすることは、「MLBの現行ルールの範囲内で」できることなのだから、球審ジェフ・ケロッグはまずファイアーズを退場にすべきだった。
もしファイアーズが退場になっていれば、マイアミのベンチから選手が出てくることは防げたはずだ。
さらにいえば、スタントンへの危険球は選手生命に関わるレベルのものだけに、「危険球で一発退場」というルールをMLBでも導入してしかるべきだと思う。
もし、スタントンのデッドボールの時点でファイアーズが一発退場になっていれば、マイアミ側の怒りに油をそそぐような事態にはなっていなかった。