September 22, 2014

今はミネソタのエースになっているフィル・ヒューズがまだヤンキースにいた2013年に、こんな記事を書いて彼の才能の無駄遣いを惜しんだ。

フィル・ヒューズはア・リーグで「最も初球ストライク率の高いピッチャー」で、同時にまた「カウント0-2に追い込む率が最も高い投手」である。
にもかかわらず、どういうわけか「打者ひとりあたり、最も多くの球数を投げるピッチャーのひとり」でもある。(2013年6月14日現在)

要するにフィル・ヒューズは、「初球に必ずといっていいほどストライクを投げる」し、「バッターを追い込むのが、誰よりも上手い」が、同時に、「どんなバッターにも、必ず4球以上投げてしまう」という、勝負どころで真っ向勝負に行けない、典型的な「ひとり相撲」タイプのピッチャーだということだ。

ヒューズは打者を追い込んむところまではいいが、そこからがダラダラ、だらだら、やたらと長い。バッターを追い込んだら、彼は、必ずといっていいほどアウトコース低めあたりに「釣り球のつもりの変化球」、シンカーやスライダーを投げたがる。
ところが、この釣り球、まるで効果がなくて、バッターは余裕で見逃してくる。だから、せっかくカウント0-2にしたのにボールばかり増えて、うっかりすると、0-2からフルカウントにしてしまうことも、けして少なくない。

引用元:2013年6月15日、本当に「初球はストライクがいい」のか。打者を追い込むだけで決めきれないフィル・ヒューズの例で知る「初球ストライク率が高いからといって、 必ずしも防御率は下がらず、好投手にはなれない」という事実。 | Damejima's HARDBALL


そのフィル・ヒューズ、ミネソタに移籍してからは見違えるようにピッチング内容が良くなっているわけだが、その「変身理由」を彼自身がFangraphに語っている。
Phil Hughes Finally Found the Right Breaking Balls | FanGraphs Baseball

非常に面白い記事なので具体的な部分は元記事を読んでもらうとして、要点を箇条書きにしてみる。
●「ストライクゾーンで勝負する」と、自分に言い聞かせて投げている
●投げ方を変えた4シームが垂れなくなったことによって、ライジング・ファストボールともいうべき、威力あるストレートに変わった
●しっくりいってなかったスライダーを投げるのをやめた
●カーブのリリースポイントを変えて威力を高め、試合で多用
●カットボールを使うカウントを変え、決め球に使う

記事を見たらビックリすると思う。ボールの握り方から、球種を使うカウントに至るまで、「自分の手の内」をかなり具体的にさらけだしたインタビューだからだ。
MLBの先発投手が、まだシーズンが終わったわけでもないのにこれほどまでに自分のピッチングの具体的な部分を喋るのは、とても珍しい。ヒューズはよほど今の自分に自信があるのだろう。


2013年に書いた記事で最も重要な指摘は、「フィル・ヒューズは、初球からストライクを積極的に投げ込んで打者を2ストライクの状態に追い込むという点だけは、ア・リーグトップの才能のある先発投手だが、同時に、彼は残念ながら『せっかく追い込んだ打者をまるでアウトにできないダメ投手』でもある」という点だった。

こうした意味不明なことが起きていた原因は主に、「2ストライクと追い込んだ後に、最初からボールとわかっている球(特にスライダー)を連投して、自分でカウントを悪くすること」にあった。ヤンキース時代のヒューズのアウトコースの釣り球は、打者に常に余裕で見逃されていた。

ちょっと2013年、2014年のカウント別データ(被打率、与四球数、K/BB)を見て比較してもらおう。

まず、2013年。本来フルカウントというのは投手有利、打者不利のカウントのひとつだが、2013年のフィル・ヒューズは、2ストライク後の被打率がどれもこれも高すぎた。フルカウントでの被打率などは「3割」に届きそうな、ありえない数字になっている。
フィル・ヒューズ 2013年
After 0-2 .245 8四球 K/BB 8.63
After 1-2 .276 15四球 K/BB 4.87
After 2-2 .273 22四球 K/BB 2.36
full count .292 26四球 K/BB 0.58
Phil Hughes 2013 Pitching Splits | Baseball-Reference.com

こんどは同じデータを、ミネソタ移籍後の2014年でみてみる。あらゆる点で、2014年のフィル・ヒューズが「2013年とは別人」なのがわかる(笑)

フィル・ヒューズ 2014年9月21日現在
After 0-2 .175 2四球 K/BB 53.00
After 1-2 .197 5四球 K/BB 21.80
After 2-2 .197 8四球 K/BB 6.13
full count .143 10四球 K/BB 1.30
Phil Hughes 2014 Pitching Splits | Baseball-Reference.com


次に、ヒューズの使っている球種を2013年と2014年で比べてみる。以下のごとく、今年のヒューズはスライダーをまったく投げなくなり、チェンジアップも減り、かわりにカットボールが増えていて、まさに彼がFangraphのインタビューで語ったとおりの内容になっている。
かつてシアトル時代のダメ捕手城島もそうだったが、「打者を追い込んで、後は、アウトコース低めのスライダーをボールゾーンに投げてさえいれば打者はうちとれる、などというような低脳でワンパターンな配球など、MLBでは通用しないのである。
Pitch Type(球種)
2013 FB 61.5% SL 23.8% CU 8.6% CH 5.4%
2014 FB 64.2% CT 21.0% CU 14.6%

Pitch Value(球種ごとの効果)
2013 FB -13.4 SL -4.8 CH -5.1
2014 FB 11.6 CT 1.3 CB -2.3 -2.2
Phil Hughes » Statistics » Pitching | FanGraphs Baseball


フィル・ヒューズの使う球種を過去にさかのぼると、彼がスライダーを多投するようになったのは2013年のことだが、「スライダー多投」は彼のピッチングを悪化させただけに終わっている。
2014年のヒューズを変身に導いたピッチングの改善が、果たして彼単独の判断によるものなのか、それとも、ミネソタのピッチングコーチの助力によるよるものなのかは、このインタビューだけではわからない。

ただ、まぎれもない事実としていえることは、ヤンキース時代にフィル・ヒューズが長年抱えてきたピッチングの『あからさまな欠点』を、ヤンキースのスタッフではいつまでたっても修正できなかったのに、他チームに移籍したら、1シーズンもかからずに修正できた、ということだ。
このことからわかるのは、2010年11月からヤンキースのピッチングコーチをつとめてきたラリー・ロスチャイルドがどれほど「無能な投手コーチ」であるか、そして、ただでさえ数が少ないヤンキースはえぬきのプロスペクトの才能も欠点も、その修正方法も見抜けないまま、安易に他チームに放り出してしまうGMブライアン・キャッシュマンが「見る目のないマヌケなGM」だ、ということだ。


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