September 30, 2014

2013年2月沖縄、ヤクルト春季キャンプ。愛弟子復活を願う元ヤクルト監督若松勉岩村明憲にこう言った。
「フリー打撃では左中間に打て」
師からみた彼の長所は「左中間への強い打球」だった。師として、そして、彼らしいバッティングの状態になんとか戻してやりたいと願う親心からのアドバイスだった。



2008年10月3日、タンパベイ時代、トロピカーナ・フィールドでのALDS(ア・リーグ地区シリーズ)第2戦。カウント1-1からのストレート系を左中間へ運んだ値千金の逆転2ラン。5回裏に1-2と負けていたタンパベイが、この2ランで逆転してそのまま逃げ切り、対戦成績を2勝0敗としてALDS勝ち抜けに王手をかけたという、価値ある一発。
ピッチャーは、当時ホワイトソックス(現在はトロント)のエースだったオールスター5回出場の名左腕、マーク・バーリー
Game data:October 3, 2008 American League Division Series (ALDS) Game 2, White Sox at Rays - Baseball-Reference.com



2009年8月30日、これもタンパベイ時代、コメリカパーク。初球の92マイルのストレート系を打ったソロホームラン。ピッチャーはデトロイトの不動のエース、オールスター6回出場の剛腕右腕ジャスティン・バーランダー
バーランダーはこのゲームに勝って15勝目。19勝9敗という素晴らしい成績でシーズンを終え、同年のサイ・ヤング賞はザック・グレインキーに譲ったものの、サイ・ヤング賞投票3位に入った。
Game data:August 30, 2009 Tampa Bay Rays at Detroit Tigers Box Score and Play by Play | Baseball-Reference.com



2010年4月13日、ピッツバーグ時代のAT&Tパークでのホームラン。カウント2-1からの4球目、ストレート系。ピッチャーは、サンフランシスコの2002年ドラフト1位、オールスター3回出場の好投手、右腕マット・ケイン
Game data:April 13, 2010 Pittsburgh Pirates at San Francisco Giants Play by Play and Box Score | Baseball-Reference.com

岩村のMLB時代の動画リスト:Search Results | MLB.com Multimedia | MLB.com


2010年ピッツバーグに移籍した岩村は、同年4月付けの記事でこんなことを言っている。
ツーシーム対策のために、グリップ位置を変えた」
出典:岩村明憲語る「弱いチームは小差で負ける」 [メジャーリーグ] All About
このインタビュー、正直にいうなら、前向きな印象よりむしろ、「MLB投手の2シームに手を焼いている」という「動く球に対する岩村の苦手意識」のほうが伝わってくる。

そこでFangraphのデータをみてみる。案の定、ピッツバーグ移籍後の岩村に対してピッチャーが投げた球種は、タンパベイ時代に多かったシンプルな速球が大きく減り、かわりに、シンカー2シームが急増している。
Akinori Iwamura » Statistics » Batting | FanGraphs Baseball


彼の出場ゲームを年間100試合とか見た上での判断ならともかく、彼の試合をちゃんと見ていないブログ主が偉そうにモノを言うわけにはいかないのだが、上の3つの動画がどれも「ストレート系を打ったホームラン」であることからも推察できるように、各種データから普通に判断するなら、MLB時代の彼の「狙い」は、「得意な4シーム」、特にアウトコースに狙いを絞っていたこと、「外にボールを呼び込んで、柄の長い鎌で遠くの雑草を刈りとるようなイメージで、バットでボールを強烈にひっぱたいて、強い打球をレフト方向に打つ」という彼独特の狙いがあったこと、そのために「スイングスピードの速さ」や「強いスイング」に非常にこだわっていたこと、などがうかがえるように思える。

ただ、カーティス・グランダーソンやプリンス・フィルダーなどについて何度も書いてきたように、スカウティングの発達している近年のMLBでは、「打席に入る前に狙いを絞り切っているタイプの打者の意図」は、遠からず投手側にバレる。
おそらく岩村明憲も、MLBを経験して数シーズンたってから、「ストレートに滅法強い」という彼のバッティングの長所がスカウティングされ、それ以降、急速に増えた2シームや高速シンカーなどの「球速があって、ストレートに見えるが、最後に鋭く動く球種」に悩まされるようになり、強いライナー性のフライを打ちたい彼自身の意図に反して、数多くのゴロを打って悪戦苦闘する日々があったに違いない。


しかし、だ。

そんな細かいこと、どうでもいい。
なぜなら、こんな個性ある選手を嫌いになんかなれないからだ。

「左中間」にこだわりぬいた打者人生。
それが岩村という個性だ。ヤクルトが彼と再契約しないと発表したからには、彼の今後がどうなるか、たしかに予断を許さない。だが、来シーズン、彼がどこでプレーしようと、彼らしい野球人生の成功と成就を願っている。

2009年3月23日、ドジャースタジアムでの第2回WBC決勝、延長10回表の1死2塁の場面で、この試合8番にいた岩村が放ったレフト前ヒット(次打者イチローが決勝の2点タイムリー)が忘れられない。
あれがライト前でなく、『レフト前』だったのは、ずっと『左中間』にこだわりぬいてきた彼独特のスイングの賜物だったのさ。偶然なんかじゃないんだぜ?」と、遠い将来、岩村のことを知らない若い野球ファンが増えた時代になったら教えてやりたいと思っている。


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