October 21, 2014

以下の図は、90年代以降、各シーズンごとのホームラン数ランキング上位5人を図示したものだが、今シーズン限りで引退するらしいアダム・ダンが2000年代後半以降打ってきたホームラン数が「けして少なくない数だった」ことがわかる。

にもかかわらず、アダム・ダンの「評価」は低い。
理由を以下に示してみる。

90年代以降のホームランランキングとアダム・ダン

●(赤い丸印)
で示したのは「ステロイダーのランキング位置」だ。
マーク・マグワイア、サミー・ソーサ、バリー・ボンズ、アレックス・ロドリゲス。近年ではライアン・ブラウン、ネルソン・クルーズ、クリス・デービス。こうした「ステロイダー」のランキングの高さ、数の多さをみれば、「1990年代後半から、2000年代前半にかけてのMLB」が「どれほど酷いステロイド・ホームラン時代」だったか、一目瞭然にわかる。

他方、「2000年代後半以降、ランキング上位者のホームラン数そのものが右下がりに減少し続けていること」もわかる。ポスト・ステロイド時代にホームランを量産するのは、もはや簡単なことではないのだ。


ステロイダーは絶滅していないとはいえ、今のMLBがステロイド時代からポスト・ステロイド時代への変化の中にあることを考慮するなら、アダム・ダンが2000年代後半以降に残したホームラン数は、けして少なくない。
だが、それでも彼の評価はけして高くない。それはなぜか。


以下に近年の「アダム・ダン率」ランキングを上位7人分だけ挙げてみた。
「アダム・ダン率」というのは某巨大掲示板で語られている「ネタ」のことで、指標ではない(笑)「かの三振王アダム・ダンのごとく、ホームラン、三振、四球の占める割合が異常に高いホームランバッター」を意味する。(計算は簡単で、3つの数字を足して打席数で割るだけ)
近年の「アダム・ダン率」ランキング

「アダム・ダン率」のネタとしての面白さ自体は正直認めざるをえないが(笑)、ツッコミを入れさせてもらうと、これら「アダム・ダン率の高い打者」たち同士の間には、「ある歴然とした差」が存在する。
それはホームラン数と四球数の多さでは判定できない「差」であり、「その打者が、スラッガーとみなされるか、それとも、昔シアトルにいたリッチー・セクソンのようなフリースインガーのひとりという評価で終わるかの、分かれ目」でもある。(ちなみにマグワイアはただのステロイダーであって、マトモなスラッガーではないので評価など必要ない)

そこで、アダム・ダン率ランキング上位選手たち同士の比較のためのデータとして、wOBAWARをつけておいた。(参考までにあのお笑いデタラメ指標OPSも添付した)
たとえどんな視点から眺めようと、2010年マーク・レイノルズと2012年アダム・ダンの打撃は、彼らがどれほど多くのホームランや四球を生産したにしても、そのクオリティはあまりにも低いものだったことがハッキリわかる。


アダム・ダンの「超絶的なほどのアダム・ダンらしさ」の本当の原因は、彼の「打率の低さ」にあるのである。7人を打率順に並べかえた以下のグラフを見てもらいたい。

打率によって決定される
「アダム・ダン率上位者の打撃クオリティ」
「アダム・ダン率」と、打率、wOBA


アダム・ダン的な「低打率のホームランバッター」のバッティング・クオリティは、打ったホームラン数、選んだ四球数、三振数にほとんど関係なく、『打率の低さ』によって決まる。(こうしたバッターの場合、wOBAの高低も打率のみに比例して決まる)
マーク・レイノルズ、アダム・ダンの2人が、「アダム・ダン率チャンピオン」であるはずのジャック・カストより、はるかに『アダム・ダンらしく』見える本当の原因」は、2人のホームランの多さでも、四球や三振の多さでもない。


アダム・ダンの評価が、彼のホームラン数ほど高くはないのは当然だ。
彼は、全盛期のアルバート・プーホールズや、近年のミゲル・カブレラのような、パワーもクオリティも兼ね備えた超越的ホームランバッターではない。

2014年10月13日の記事で書いたことでもあるが、「低打率のホームランバッターの評価が低い」のは当然なのだ。
単にホームランを人より多く量産しただけの「低打率、低クオリティ打者」を過大評価しなければならない理由など、もはやどこにもない。それが「ポスト・ステロイド時代に求められるクールな評価基準」というものだ。
2014年10月14日の記事で書いたように、「パスカルの賭け」に毛が生えた程度の欠陥ロジックでホームランという神を捏造する時代は、とっくに終わっている。

そもそも彼のような「アダム・ダン的 低打率のホームランバッター」が生産されはじめた原因は、ステロイド規制の強化と、データ重視野球のまだ未成熟でデタラメな部分を理解しないで思いつきに導入しだした軽薄な流行にあるだろう
MLBのいくつかのチーム、多くの指導者、多くのマスメディアは、本格的にデータ野球を理解して運用しているわけではなくて、単に近年の流行にのっかっただけだ。たとえとして言うなら、「OPSのデタラメさすら理解せずに、OPSで打者を評価したりするような馬鹿なマネをしてきた」、ただそれだけだろう。
ときどき思い出したようにホームランを打って、あとは四球を待つだけのワンパターンなパワーヒッターであっても、デタラメ指標のOPS(と、そのバリエーション)でなら「そこそこ素晴らしいバッター」と評価されたのである。

関連記事:
2014年10月13日、「ホームラン20本の低打率打者A」と「高打率の打者B」をwOBAでイコールにしようとすると、「打者Aのホームラン以外のヒットは、全て二塁打でなければならなくなる」という計算結果。 | Damejima's HARDBALL

2014年10月14日、「パスカルの賭け」の欠陥の発見と、「ホームランという神」の出現。期待値において出現確率を考慮しない発想の源について考える。 | Damejima's HARDBALL


ただ、だからといって、アダム・ダンが、このホームラン量産がますます難しくなりつつあるポスト・ステロイド時代に多くのホームランを打ってくれた素晴らしいバッターだったことに変わりはない。
ミゲル・カブレラほどの才能に恵まれなかった彼は、「打率をとるか、ホームランをとるか」という選択において、いさぎよく打率を捨て、ホームランをとった、それだけのことだろう。彼の三振の多さは、彼ならではの「正直さ」の表われだ。
アダム・ダンがステロイダーではなかった場合、という条件つきではあるが、彼の引退に心からの拍手を送りたい。

Note:
近年の「四球」についての過剰な評価が嘘八百であることの考察は、「チーム視点からみたとき、『チーム四球数』と『チーム総得点』との間には、ほとんど何の関係もないこと」を明確化した2012年4月記事も参照のこと。
Damejima's HARDBALL:2012年4月8日、チームの「総得点」と「総四球数」の相関係数を調べた程度で、「四球は得点との相関が強い」とか断言する馬鹿げた笑い話。

2011ア・リーグ 打率と出塁率の比例関係(ホーム)
2011ア・リーグ 打率と出塁率の比例関係(ビジター)

2011ア・リーグ 打率と出塁率の比例関係(ビジター)
2011ア・リーグ 打率と出塁率の比例関係(ホーム)

これらのデータが意味するところは、こうだ。
そのチームが稼ぎ出す「総四球数」というものは、それが
得点の多い強豪チームであれ、得点の少ない貧打のチームであれ、ほとんど変わらない。

このことから、チームデータを観るかぎりにおいて、
次の事実が確定する。

チームという視点で見るとき、「四球数」は、チームの総得点数にまったく影響しない


ハワイ移民150周年
No Ichiro, No watch.

Play Clean
日付表記はすべて
アメリカ現地時間です




Twitterボタン

アドレス短縮 http://bit.ly/
2020TOKYO
think different
 
  • 2014年10月31日、PARADE !
  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年6月1日、あまりにも不活性で地味な旧ヤンキースタジアム跡地利用。「スタジアム周辺の駐車場の採算悪化」は、駐車場の供給過剰と料金の高さの問題であり、観客動員の問題ではない。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年6月29日、『父親とベースボール』 (1)星一徹とケン・バーンズに学ぶ 『ベースボールにおける父親の重み』。
Categories
ブログ内検索 by Google
Google

livedoorブログ内検索
Thank you for visiting
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

free counters

by Month