October 08, 2014

勝負って、怖いねぇ。ほんと。
怖い。

2014NLDSは、ドジャース不動のエース、クレイトン・カーショーが、4点リードで迎えた7回に大量8失点の原因を作って負けた第1戦に続き、第4戦でもまったく同じ「ドジャースの勝ちが見えた7回」に、カーズの若い一塁手マット・アダムスこの日多投していた「カーブ」を狙い打たれてしまい、逆転3ラン。この一投、この一発だけで、試合が決まってしまった。
大金かけてメンバーをズラリと揃え、ワールドシリーズ制覇を狙い続けるドジャースだが、今年もポストシーズン敗退。
Los Angeles Dodgers at St. Louis Cardinals - October 7, 2014 | MLB.com Box

カーショーがカーブを打たれたことの背景について、ブログ主がちんたらログを打っていたら、鬼のような光速で分析記事をアップロードしたのが、SB NationのGrant Brisbeeだ。
彼はハッキリ書いている。
"Adams watched him dominate with his curve all day long." 「アダムスは今日ずっとカーショーのカーブを狙い続けていた」
この長文記事、逆転3ラン発生直後に挙がっているところをみると、「マット・アダムスがカーショーのカーブを狙っている」という記事のエッセンス部分は、逆転3ランが生まれるよりずっと前から、既にGrant Brisbeeの頭にイメージされていたに違いない。そうでなければ、こんな超絶的なスピードで、これほど的確な長文は書けない。
たいしたスピードだ。拍手。


ブログ主がツイートに上げておいたのは、マット・アダムスの「2014年のカーブに関するHot Zone」だ。ゾーンが赤い部分が彼の「得意コース」、青い部分が「苦手コース」だ。

データから、たしかに彼は「左投手がまったく打てない打者」だ。
だが、同時に彼は、「カーブ(あるいはチェンジアップなど、「球速の遅い変化球」)を得意球種にしているバッター」でもある。


この逆転3ラン直後、いくつかのMLBアカウントが、「マット・アダムスはまったく左ピッチャーが打てない打者なのに、今年のサイ・ヤング賞をとることがほぼ決まっている名左腕カーショーからホームランを打った。世界の7不思議的事件だ」という意味のツイートを、マット・アダムスの貧弱な対左投手スタッツとともにアップしている。

しかし、「左打者は左投手を打てない」程度の、小学生でも言えそうなレベルの視点だけからプロスポーツの「局面」というものについて解説を加えようとすることは、あまりにも幼稚だし、根拠が薄すぎる。そもそも野球というゲームの複雑さをまるで説明できてない。


まずは大量失点した2014NLDS第1戦の7回に、カーショーがが打たれた球種を見てもらいたい。



第1戦でカーショーは、ランナーがいてもいなくてもスピードのある4シームでぐいぐい押すピッチングをしたが、ランナーがたまって得点圏にも進み、重大なピンチともなると、変化球、このゲームの場合は「スライダー」を多投して、セントルイスの粘り強い打者たちに連続タイムリーを浴びてしまっている。
この第1戦の大量失点のケースでは、マット・アダムスも無死満塁で登場し、左投手カーショーの「スライダー」をタイムリーしているのだから、「左打者マット・アダムスは、左投手をまったく打てない」などという過去のデータは、第1戦の時点で既に通用していないのである。


そして第4戦。
逆転3ランを打つ7回裏のひとつ前、5回裏の打席でマット・アダムスは、先頭打者として登場。初球カーブ(見逃しストライク)、2球目4シーム(ボール)のあと、3球目のカーブでセンターフライに倒れている。
つまり、アダムスは5回の打席で「2度にわたってカーショーのカーブの軌道を見ている」わけだ。
SB NationのGrant Brisbeeによれば、カーショーは第1戦でカーブを「13球」投げたが、第4戦では逆転される7回にたどり着く前、6回までに、既に「28球」も投げている。この「カーブ多投」は、もちろんBrisbee氏が「マット・アダムスはカーショーのカーブを狙っていた」と断定する根拠のひとつになっている。


たぶんカーショーは、第1戦で肝心なピンチの場面で「スライダー」に逃げて痛打されて試合を壊したために、疲労が抜けず球速が出ない可能性が高い中3日で臨んだ第4戦の登板では、あえてスライダーを封印したのだろう。
だが、こんどは「カーブを狙い打ちされて、ふたたび撃沈した」というわけだ。


カーショーがカーブを多投した原因は、ドジャース監督で元ヤンキースのドン・マッティングリーの起用にも原因がある。
なんといったって、第4戦でヤシエル・プイグをスタメンから外したのも、往年のキレのないカール・クロフォードを2番に起用して得点力を低下させたのも、中3日の「疲労が抜けていないカーショー」を第4戦で登板させ、6回まで無失点に抑えてくれたというのに、欲張って7回も引っ張って投げさせたのも、原因はこのマッティングリー、その人なのだ。
そりゃ、中3日の疲労で4シームの球速の出ないカーショーが、いつものような4シームで抑え込むピッチングができず、ゆるいカーブを多用したピッチングに切り替えざるをえなかったのも、うなづける、というものだ。
そのカーショーを「まだ7回もいける」と判断したのは、明らかに「欲張り過ぎ」だ。
マッティングリーは、左投手を苦手どころか、むしろ得意にしている左打者イチローをまったく左投手先発ゲームで起用しようとせず、2014年のポストシーズン進出をむざむざ逃した無能なジョー・ジラルディともども、「左打者は左投手を打てない」などという単純な図式、過去の古びたカビ臭い常識にとらわれた、頭の硬い監督ということもいえる。


投手が打たれる仕組み、それは
配球だけが全てなのではない。


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