October 31, 2014

6フィート5インチ(約196センチ)もある大柄なマイク・モースは、動作の感じからしても、かつてのシアトル時代、ナッツ時代の印象からしても、不器用なタイプだったはずだが、その彼が2014ワールドシリーズ第7戦でみせた「2度にわたる流し打ち」、特に、2回表無死満塁での犠牲フライが、後続打者の打点にもつながる「ライトへのフライ」だったことには、正直痺れた。既にツイッターには書いたことだが、記録として残したいので、もう一度書く。


「無死満塁でのライトへの犠牲フライ」は、サードランナー生還はもとより、セカンドランナーもタッチアップできるため、「1死1、3塁」となって、次打者が続けて犠牲フライを打てば2点目追加も期待できる。これが「レフト犠牲フライ」なら、残るシチュエーションは「1死1、2塁」だから、話が違ってくる。
そんな理屈くらい、誰でもアタマではわかっていても、とかくパワーで押したがる打者の多いMLBだ、簡単には実現できない。フルスイングで変化球をひっかけて内野ゴロ、ダブルプレー食らっている間に1点だけ入って2死3塁、点が入らないよりはマシ、そういう大雑把さがMLBにはある。

無死満塁だからこそホームランを狙っていいという豪快な考え方、無死満塁だからこそ最低でも1点はとるバッティングをすべきというタイトな考え方、野球にはいろいろな考え方がある。貯蓄指向が国によって大きく違うのと同じで、案外国民性がでやすい。


マイク・モースは、得点効率の良さ、相手に与えるプレッシャーの大きさでレフトフライとは比較にならない「ライト犠牲フライ」を打つことを選んだ。(ちなみに彼は「右投手のほうが得意な右打者」であり、ジェレミー・ガスリーも、ケルビン・ヘレラも、右投手だ)

こういうことを細かい野球と呼ぶか、高い得点効率と呼ぶか、ラベルはどうでもいいのだが、少なくとも、マイク・モースのようなタイプの選手にさえ、見栄を捨ててチームに貢献しようと思わせる「空気」がチームにあることが(移籍当時のモース自身も「フィールドにいる選手の誰もが、いつもなにかしている」と新天地の空気を語っている)、サンフランシスコ・ジャイアンツの5年で3度のワールドシリーズ優勝に繋がっていることは間違いない。

ワールドシリーズ優勝という収穫。その大きさを考えるなら、「ライト犠牲フライ」はけしてスモールでなく、むしろ「ビッグプレー」だ。その「大きさ」に気づかないのは、その人間の小ささのせいであって、野球の大小の問題ではない。


2014WS第7戦2回表 モース 犠牲フライ2014WS第7戦2回表
マイク・モース
ライトへの犠牲フライ
投手:ジェレミー・ガスリー(右腕)
San Francisco Giants at Kansas City Royals - October 29, 2014 | MLB.com Classic

2014WS第7戦4回表 モース ライト前タイムリー2014WS第7戦4回表
マイク・モース
ライト前タイムリー
投手:ケルビン・ヘレラ(右腕)

ちなみに、あくまで蛇足なのだが
カンザスシティの右の速球派リリーバー、ドミニカのケルビン・ヘレラは、今シーズンのRISP(得点圏)場面で、93人の打者に被打率.172と、十分すぎるほどのスタッツを残しており、また70イニング投げてホームランを1本も打たれていない。
ところが、RISPシチュエーションをもっと詳しく調べてみると、ヘレラは「満塁」と「1、3塁」が非常に苦手で、場合によっては被打率が3割を越えてしまっているのだ。

大雑把にスタッツを眺めていると、「ケルビン・ヘレラは得点圏にランナーがいてもまったく動じないリリーバー」とだけ、みなしてしまう。だが彼が得意なRISPシチュエーションというのは、あくまで、「1、2塁」、「2塁」といった「よくある場面」だけであって、どういうわけか「サードにランナーがいる場面」を非常に苦手にしているのだ。


野球において発生数の多いRISPシチュエーションといえば「1、2塁」「2塁」だから、問題ないといえば問題ないと思われるかもしれない。

だが、2014ワールドシリーズ第7戦の4回表にカンザスシティ監督ネッド・ヨーストがピッチャーを先発ジェレミー・ガスリーからケルビン・ヘレラに変え、そのヘレラがマイク・モースに決勝タイムリーを浴びてしまった場面というのは、ヘレラが苦手としている1、3塁の場面だった。

また、マイク・モースは右打者だが、右投手を得意にしている右打者なのだ。キャリア通算でも右のほうが打率がいいし、2014年に至っては右.293に対して左.248と、右投手との対戦のほうがはるかに打率がいい。
カンザスシティは綿密で機動力のある野球をしていると思われがちだが、こうした細かい点を考慮しているわけではないのだ。


正直、このワールドシリーズでのネッド・ヨーストの采配の動揺ぶりには首をかしげる点がいくつか感じられた。例えば打順がそうで、アレックス・ゴードンを上位に固定するとか、打てる選手をもっと上位に固めて起用していたらシリーズの結果は違っていたかもしれない。
数年前のテキサスのワールドシリーズで、ピンチの場面でのリリーフ起用の酷さにみられた「ロン・ワシントンのうろたえぶり」と、ある意味同じ失態といってもいい。
ワールドシリーズでのテキサスについては、ロン・ワシントンさえいなかったら結果は違っただろうにと何度も思ったものだが(苦笑)、ネッド・ヨーストがこれからカンザスシティでどういう存在になるかはわからないが、最近テキサスを辞めたロン・ワシントンに一度会って、なにかアドバイスをもらったほうがいいかもしれないとすら思うのである(笑)


Play Clean
日付表記はすべて
アメリカ現地時間です

Twitterボタン

アドレス短縮 http://bit.ly/
2020TOKYO
think different
 
  • 2014年10月31日、PARADE !
  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年6月1日、あまりにも不活性で地味な旧ヤンキースタジアム跡地利用。「スタジアム周辺の駐車場の採算悪化」は、駐車場の供給過剰と料金の高さの問題であり、観客動員の問題ではない。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年6月29日、『父親とベースボール』 (1)星一徹とケン・バーンズに学ぶ 『ベースボールにおける父親の重み』。
Categories
ブログ内検索 by Google
ブログ内検索 by livedoor
Thank you for visiting
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

free counters

by Month