November 01, 2014

2014シーズンのMLBアンパイアの「判定の正確さ」について、こんなランキングがあった。
引用元:Umpire Auditor - Businessweek

ヒトをランク付けしておいて、何を基準にランキング化したのか、説明がサイト内にみつからないのは、片手落ちというか、無礼きわまりない話だが、correct call%と表現しているところをみると、おそらく「ストライク・ボールの判定の正確さ」で並べたのだろう。
後で説明するが、このランキングにはちょっと「眉唾な部分」があって、すぐに鵜呑みにしてはいけない。だが、それなりに面白いのは確かだ。アンパイアの年齢に注目して読んでもらいたい。

左から、名前correct call%年齢と生年
2014 MLB umpire accuracy ranking best 10
注:2014年MLBデビューのHal Gibson 靴了駑舛ネット上に乏しく、生年が調査できなかった。

2014 MLB umpire accuracy ranking worst 10

ベストアンパイア10人のうち、
CB Backnor(50代)を除いた全員が30代40代

ワーストアンパイア10人のうち、
Doug Eddings(40代)を除いた全員が50代60代

MLB機構は、50代以上のアンパイアに「老眼鏡を買うための補助金」を出すことを検討すべきかもしれない(笑)
MLBでは、アンパイアもプレーヤーと同じで、ロスター、DLという言い方をするわけだが、上位10位までに入ったアンパイアのほとんどが、つい最近マイナーからメジャーのロスターに採用されたばかりのアンパイア、あるいは、DL中のMLBアンパイアの補充のため臨時にAAAから上がってきたアンパイア、もしくは比較的若いMLBアンパイアで占められている。


データ元のUmpire Auditorにはなんの解説もないのだが、ブログ主は「年齢の高いアンパイアほどパーセンテージが低くなっているのには、以下のような明確な理由があると推測した。
年齢の高いMLBアンパイアは「そのアンパイア独自のストライクゾーン」をもっていることが非常に多い。そのため、ルールブック上のストライクゾーンをもとに計測すると、年齢層の高いアンパイアほど、より多くの誤判定をしているかのような結果が出てしまう。

その一方で、臨時雇いの若いアンパイア、マイナーから昇格したばかりの若い新人アンパイアは、自分のスタイルを貫くことより、律儀にルールブックどおり判定することを選ぶ傾向があるのではないか。

例えば、Mike Wintersは1958年生まれの55歳、ヴェテランのひとりだが、彼のストライクゾーンはルールブックより「横長」にできているといわれている。こうした「横長のストライクゾーンで判定するアンパイア」は、過去の調査結果からして、けして少なくない。
他にも、ゾーンが他のアンパイアより極端に狭い、あるいは、極端に広いアンパイアも、MLBには実際に数多く存在する。

つまり、過去のMLBにおいては「アンパイアごとのストライクゾーンの個人差」が長い間許容されてきた文化的歴史があるのだ。

関連記事:2010年10月29日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (2)2007年の調査における「ルールブックのストライクゾーン」と、「現実の判定から逆測定したストライクゾーン」の大きな落差。 | Damejima's HARDBALL
Mike Wintersの横長なストライクゾーン青色の線=Mike WIntersの横長のストライクゾーン 
赤色の線
=ルールブック上のストライクゾーン

多くのヴェテランはこうした「個人差を許容するストライクゾーン文化」のど真ん中で育ってきているから、当然、彼らの判定結果を「ぎちぎちのルールブックどおりの基準」にあてはめて測定すると、「誤判定だらけ」という結果がでるに決まっている。だから、最初に挙げた「正確さのランキング」は、必ずしもそのアンパイアの能力を表現できていない



こうした個人差を許容してきた昔ながらのMLBアンパイア文化をこれからも認めるべきかどうかという議論はともかくとして、いまのMLBアンパイアが世代交代による「若返り」の方向に向かっていることは確かだ。
(ブログ主自身は、アンパイアの個人差はあっていいと思っている。早くヴェテランをMLBから追い出せなんて、まったく思わない)

アンパイア若返りの背景には「野球のスタイルがやたらとSelectiveになって、ボールを見逃したがるバッターが増えすぎたこと」があって、引退したTim Tschidaが「1試合の球数が300にも達した結果、アンパイアの仕事が昔よりもはるかに激務になった」と語ったように、生半可な体力ではもうやっていけなくなっていることが理由のひとつとして挙げられるだろう。
参考記事:2014年10月21日、1ゲームあたり投球数が両チーム合計300球に達するSelective野球時代であっても、「球数」は単なる「負担」ではなく、「ゲーム支配力」、「精度」であり、「面白さ」ですらある。 | Damejima's HARDBALL


さて、「アンパイアの若返りによる画一化傾向」は、これからのベースボールにとって、次のようなことを意味していくのかどうか。
1)ストライクゾーンが、より「ルールブックどおりのゾーン」に近いものに修正されていく

2)ストライク・ボールがこれまで以上に正確に判定される

これらは野球のクオリティに直接関係するかもしれないトレンドであり、推移や影響を見守っていく必要があるかもしれない。

スポーツマネジメントなどを研究しているフロリダ大学のBrian M. Mills氏が2014年8月に発表した、1988年以降のMLBについてのある研究によると、プレーの判定精度がより正確になればなるほど、野球というスポーツのオフェンスのアウトプットは縮小する傾向にあるという。つまり、判定が正確になればなるほどゲームがタイトになって、得点が減る、ということだ。
This paper examines the role of changes in monitoring, technological innovation, performance standards, and collective bargaining as they relate to performance improvements among Major League Baseball umpires from 1988 through 2013. I find structural changes in performance concurrent with known bargaining struggles, and substantial improvements in performance after implementation of incentive pay and new technological monitoring and training. Not only do umpires improve performance in expected ways, but the variability in umpire performance has also decreased substantially. These changes have reduced offensive output often attributed to a crackdown on performance enhancing drug use in MLB.
出典:Expert Workers, Performance Standards, and On-the-Job Training: Evaluating Major League Baseball Umpires by Brian M. Mills :: SSRN


この研究論文はかなりの長文で、まだ全文を読んだわけではないし、確実なことはまだ何もいえない。この記事自体が「風ふけば桶屋が儲かる」的な話でないとも限らない(笑)

ただ、「アンパイアの若返り」が、仮に「ストライクゾーンのルールブック回帰」や「より正確な判定結果」をもたらすとしたら、当然ながら、MLBの野球に多少なりとも質的変化をもたらす可能性があること、そして、アンパイアの若返りやインスタント・リプレイの拡大も含めた「プレーの判定精度の画期的な向上」が、近年のMLBのオフェンス面での得点低下傾向に拍車をかける可能性もあること、それくらいの程度の話は誰もがアタマの隅に入れて、これからの野球を検討していく材料のひとつにしていいんじゃないかと思う。


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