November 20, 2014

ブログ主はアンパイア好きということもあって(笑)、アンパイアがストライク/ボールを判定するファクターとして、framing(フレーミング)が最も重要とまでは思わない。またキャッチャーの資質としても、フレーミングが上手いほうがいいに決まっているにしても、絶対不可欠な資質だ、とまでは思わない。以下にその理由の一端を書いてみる。

2010ALCS Game1 でボール判定をするGerry Davis


Baseball ProspectusでMike Fastという人がやたら推しまくっているせいか、このところMLBのキャッチャーの評価や能力比較について、フレーミングという指標をもとに話す人を見かける。
「フレーム」とは、この場合「ストライクゾーンの四角い仮想的な枠」のことで、要するに「ピッチャーが非常にきわどい球を投げたときに、キャッチャーがアンパイアの判定を『ストライク』に傾かせるキャッチング技術」を指している。(誰がみても明らかなボールをストライクにみせかけるためにミットをこれみよがしに大きく動かすテクニック、という意味ではない。そんなのはアンパイアの判断を惑わせようとする下劣な行為として、MLBアンパイアの心象を悪くするだけだ)

いうまでもなくフレーミングという技術そのものは昔からある。新しいのは技術そのものではなく、「ただでさえ数値化しにくかったキャッチャーの守備技術の一部を、可視化させたこと」だ。


この新しいアイデアをどう評価するかは、
まだそれぞれの判断にまかされている。

例えば、データサイトとして有名なFangraphは、今のところ「フレーミングについて詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ」と、Mike Fastの記事へのリンクなどを貼りつける程度で済ませている。つまり、いまのところFangraphとしては「まだマトモには扱うわけにはいかんけんね」的な立場なので、どこかよそよそしいのだ(笑)
Catcher Defense | FanGraphs Sabermetrics Library


最初に挙げた写真は、Mike Fast自身がBaseball Prospectusに書いた記事の冒頭に挙げているもの。出典:Baseball Prospectus | Spinning Yarn: How Accurate is PitchTrax?

NYY対TEXというカードで行われた2010年ALCS Game 1、NYYが1点リードで迎えた9回裏に、左投手マリアーノ・リベラが先頭の左打者ミッチ・モアランドのインコース低めに投げた初球を、球審Gerry Davisが「ボール」とコールした場面だ。
キャッチャーは、「フレーミングが下手」なことでで有名だったキャッチャーのひとり、ホルヘ・ポサダ
October 15, 2010 American League Championship Series (ALCS) Game 1, Yankees at Rangers | Baseball-Reference.com

この球、画面上では「きわどいコース」だったように「見える」。

まず先に、結論を書こう。
おそらくこの球は、「多くのアンパイアがボールとコールする、明らかなボール」であり、判定にキャッチャーのフレーミングはほとんど無関係だっただろう。そもそもこのゲームの球審は、ストライクゾーンがMLBで最も狭いことで有名なGerry Davisなのだから、ストライク判定になりようがない。他にも、初球というカウント、左バッターのインロー、あらゆる要素が、このボールをストライクとコールさせにくくしてもいる。

では、なぜ「ボール」とコールされたのか
以下に「とりあえず考えられる理由の候補」を10個ほど挙げてみる。

候補1)ポサダがフレーミングが下手だから。
候補2)ポサダがミットを動かし過ぎて、球審の反感を買った。
候補3)「初球」というカウントでは、フレーミングは効果がない。
候補4)よく見るとコースが低すぎる。フレーミングでなんとかなるような球ではなく、もともとボールとしか判定しようがない球だ。
候補5)MLBアンパイアは、普通あまり「左バッターのインローのきわどい球」をストライクコールしない。
候補6)MLBアンパイアは、「コーナーぎりぎりの球」をストライクコールしない。
候補7)球審Gerry Davisのストライクゾーンは、もともと「非常に狭い」。
候補8)このゲームに限って、Gerry Davisが低めをとらなかった。
候補9)このゲームに限って、Gerry Davisの左打者のゾーンが狭い。
候補10)投手不利のカウント、例えば3-0では、球審が投手寄りのコールをすることもある。だが初球ではそういうことは起こらない。
候補11)単にGerry Davisが正確に判定しただけ。


以上のどれが最も適切な解答だろうか。

なにより、まず最初に確認しておきたいのは、球審がGerry Davisであることだ。このブログで何度となく書いてきたことだが、Gerry DavisはMLBで最もストライクゾーンの狭いアンパイアのひとりであり、その事実を抜きに、この判定の是非について語ることはできないし、意味がない。

この日の球審Gerry Davisの判定ゾーンを見てみると、このゲームでのGerry Davisのゾーンは、彼にしては「低めをとり、アウトコースもとり、珍しく広め」になっている。(以下は左打者のデータだが、右も同じく広い)
BrooksBaseball.net: PITCHf/x Tool | Strikezone Maps
2010年ALCS Game1 球審Gerry Davisの左打者判定傾向


続いて、ミッチ・モアランドの打席データをPitchF/Xで調べてみる。
Mike Fastの挙げた画像では、初球のインコース低めの球は「ストライクゾーンに入っている」ように「見える」。
だが、これは、地上波のテレビ画面によくある精度のよくないマトリクスであり、Gamedayでみると「ストライクゾーン内」でも、実際には「ボール」だったりするのと同じ現象だ。実際、この球はPitchF/Xでみると、「明らかに低い」
BrooksBaseball.net: PITCHf/x Tool
2010 ALCS Game1 9回裏 モアランド初球判定 球審Gerry Davis


さらに、かつて2011年7月11日の記事で書いたように、MLBアンパイアは「打者有利なカウント、例えば3-0では、投手有利に判定し、逆に投手有利なカウント、例えば0-2では、打者有利に判定する傾向」がある。
また、「ストライクゾーンは必ずしも四角い形をしておらず、むしろ『下膨れの円形』に近いこと」、したがって、「コーナーぎりぎりの球は、ストライク判定されにくい傾向にあること」が知られている。
したがって、この初球はカウントにしても、コースにしても、ストライク判定されにくい状況にある。
(なお、Mike Fast自身も、2014年3月の記事のカウント別データで、「初球」が「最もフレーミングの効果が期待できないカウントである」ことを書いている Baseball Prospectus | Framing and Blocking Pitches: A Regressed, Probabilistic Model
記事:2011年7月11日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (5)カウント3-0ではゾーンを広げて四球を避け、カウント0-2ではゾーンを狭めて三振を避ける。あらためて明らかになったアンパイアの「故意にゲームをつくる行為」。 | Damejima's HARDBALL
カウント0-3と、カウント0-2の、ストライクゾーンの違い


こうした簡単な検証例でも、わかることは数多くある。
短くいうなら、「球審の判定に影響しているファクター」は、なにもフレーミングだけではなく、非常に多くのファクターがからんでいること、そして、いったい、どの『きわどいストライク』が、フレーミングの効果によってストライクになったのかは、よほど膨大なファクターを仔細に点検しないかぎり、正確にはわからないということだ。

言いかえると、きわどいストライクがストライクになった理由なんてものは、数え上げれば両手では足りないかもしれないというのに、フレーミングの元データの収集自体がそんな簡単な作業なはずはない。


Mike Fastが2010年ALCSの写真を得意気に挙げた記事は、確かにフレーミングについての記事ではないわけだが、ブログ主には、彼がPitchF/X以外にどのくらいの数のファクターを考慮して、フレーミングの効果を調べあげたのかが見えてこない。つまり、球審がGerry Davisだったことや、投球が初球だったことなど、「フレーミング以外のファクター」をどの程度考慮して書いているかも見えてこないこの人を、あまり信用できていないのである。

ひとつひとつの判定には、アンパイアの個人差を中心に、これまでのMLBの慣習など、数多くのファクターが絡みつきあって判定されている。
だからこそ、このブログの意見では、たしかに面白い視点だとは思うが、だからといって数値を鵜呑みにして、フレーミングの数値で「このキャッチャーは、この人より上だ、下だ」と論じてしまうわけにはいかないと思うし、将来的にもそれは無理だろうと考える。

(まぁ、それでも、シアトルの近年の歴代キャッチャーが、ほぼ例外なくフレーミングがマイナスというのには思わず笑った(笑)探せば、2008-2013で最もフレーミング数値が悪いワースト10に城島はじめ、ムーア、ジョンソン、ジェイソ、モンテーロと、5人が入ったとする記事、あるいは城島を2007年のワーストとした記事などがみつかるはず。例:Baseball Prospectus | Spinning Yarn: Removing the Mask Encore Presentation


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