November 28, 2014

古参サイトのHardball Timesで、Jon Roegeleという人が今年10月に昨今の投高打低現象の原因を、「この数シーズン、ストライクゾーンが広がり続けていること」で説明する記事を書いている。

投高打低をどう理由づけするかは、人それぞれ異なる意見があるだろうけれど、このブログとしては、最近書いた記事の信憑性をより高めてくれた「最新ストライクゾーンデータ」を提供してくれた点を評価したい(笑)

The Strike Zone Expansion is Out of Control – The Hardball Times author:Jon Roegele

右バッターのストライクゾーン比較2009vs2014右バッターのストライクゾーン比較2009vs2014
左バッターのストライクゾーン比較2009vs2014左バッターのストライクゾーン比較2009vs2014


見てのとおり、「2009年と2014年のストライクゾーンの違い」で最大のポイントは、「低めの広さ」だ。(従来は広いのが当たり前だった左バッターのアウトコースが狭くなっていることにも驚いた)

もう少し具体的にいえば、「低めのゾーンが、ほぼルールブックどおりの広さに近づいた」ことが、近年のストライクゾーン拡張の最大のポイントといえる。
(よく「MLBのゾーンは日本より低い」とか無造作に書く人がいるが、過去のMLBの平均的なストライクゾーンがどういう形をしていたか、もういちどこのブログを読んで人生をやり直してほしい(笑) 参考ページ:カテゴリー:MLBのストライクゾーンの揺らぎ │ Damejima's HARDBALL


このブログでも2014年10月の記事で、最近の投高打低現象について、「アンパイアの若返りによる、判定の正確さの向上」という視点から若干の解説を試みて、アンパイアの正確さの向上が投高打低につながるというフロリダ大学のBrian M. Mills氏の論文も紹介した。
2014年10月31日、「MLBアンパイアの若返り傾向」と、「得点減少傾向」の関係をさぐる。 | Damejima's HARDBALL
「世代交代によるアンパイアの若返り」にどういう意味があるかというと、短くまとめるなら、「若いアンパイアほど、几帳面で、従順だ」ということだ。アメリカでもオトコは「草食男子化」しているわけだ(笑)
若いアンパイアは、データから推察する限り、「ルールブックどおりのストライクゾーンで判定したがる傾向」が非常に強い。彼らのゾーンに個性はないが、「正確に判定する能力」だけは、とてつもなく高い。
したがって、従来の個性的なMLBアンパイアたちが維持してきた 『ストライクゾーンの大きな個人差を許容する』というアンパイア文化は、いま大きく揺らぎつつあるわけで、アンパイアの世代交代の影響は近年、MLBのストライクゾーンに「従来にはありえなかった2つの傾向」を生み落とした可能性が高い。
1)ストライクゾーンが、より「ルールブックどおりのゾーン」に近いものに軌道修正された
2)ストライク・ボールがこれまで以上に正確に判定されている

結果だけみると、このブログも、Hardball Timesも、「ストライクゾーンがルールブックどおりのサイズに近づくことによって、投高打低現象が引き起こされている」可能性を指摘したわけだから、指摘の方向性そのものは似ている。

だが、残念ながらHardball Timesの記事には、「なぜストライクゾーンがルールブックに軌道修正されつつあるのか?」、「なぜルールブックどおりのゾーンだと投高打低になるのか?」について、解説も示唆もない。
Hardball Timesの記事はたぶん「広いゾーンは、打者に不利だ」程度の平凡な野球常識をベースに書いていると思われるが、「ゾーンが広がったこと、たったそれだけ」で投高打低のすべてを説明できるとは、到底思えない。

もっと簡単に言うと、ストライクゾーンさえ昔のように狭くすれば、再びバッター有利な時代が来るのか? 再び1990年代のようにホームランが急増し、得点も急増するのか?ということだ。
データ分析とスカウティングが全盛で、ステロイド禁止の今のMLBでは、「そんなこと、ありえない」と考えるのが妥当だし、当然だと思う。

「ストライクゾーンの拡張」は、投高打低を説明するファクターのひとつではあっても、すべてではない。もちろんこのブログでは、アンパイアのストライクゾーンだけが投高打低の理由だなどと考えたことは、一度もない。


かつて蔓延していた薬物不正を少しでも減らしていこうとするMLBの対策強化によって、あからさまなステロイド依存のホームラン量産ができにくくなったために、バッター、とりわけ低打率のスラッガー系打者は、打撃成績をキープするひとつの方法論として、「自分の狙いを極端なまでに絞りこむこと」を思いついた。

だが、これまでデータ分析に熱心でなかったチームも含め、MLB全体のデータ分析力が向上し続けていることによって、そうした「コースや球種に関する、打者の極端な絞りこみ」は、いとも簡単にスカウティングされてしまうようになってきている。
また打球コースの分析から、特にプルヒッターに対して極端な守備シフトをしくチームも増え、ヒット性の打球すらアウトにできてしまうようにもなってきた。


このブログでも、「狙いを絞りすぎのスラッガー」や、「得意なコースや球種が、あまりにもハッキリしすぎているバッター」について、何度となく書いてきた。
ジョシュ・ハミルトン。カーティス・グランダーソン、オースティン・ジャクソン。プリンス・フィルダー、BJアップトン、ケビン・ユーキリス(引退)。マニー・マチャド、ヤシエル・プイグ、サルバドール・ペレスなど。
彼らは、狙いを得意球種や得意コースに絞りこむことで打撃成績をキープしていると思われるタイプのバッターだが、彼らの「狙い」は、従来よりはるかに多くの投手、チームによって、より短期間で見抜かれるようになってきている。(だからこそブログ主は、彼らのようなバッターとの大型の長期契約に賛成しない)


投手が、スカウティングどおりに投げられない「コントロールの悪いパワーピッチャー」ばかりだった時代なら、引退したアダム・ダンが典型的だったように、投手のミスショットをひたすら「待って」フルスイングしていればよかった。
関連記事:2014年10月20日、やがて悲しきアダム・ダン。ポスト・ステロイド時代のホームランバッター評価の鍵は、やはり「打率」。 | Damejima's HARDBALL
彼らは、得意でない球は見向きもせず、ひたすら投手の甘いミスショットが来るのだけを待つ。たからこそ、見逃し傾向が非常に強く、打撃成績が四球と三振とホームランだけでできた「低打率のアダム・ダン型ホームランバッター」が量産された。(彼らの高出塁率で勘違いしている人間がほとんどなのだが、彼らの打撃は、けして効率的でも、「セイバーメトリクス的」でもない)

だが、日本人投手のように「コントロールがいい投手」が増え、その一方でストライクゾーンも広がるとなると、攻略方法がわかっている打者はスカウティングどおりの配球で簡単に封じ込められてしまう。
コントロールのいい日本人投手が近年のMLBで重宝される所以(ゆえん)である。(OPSのようなデタラメ指標と、四球の過大評価を、成績とサラリーの過大評価の「隠れ蓑」にしてきた「低打率のホームランバッター」が生きながらえられる時代はこうして終った)
投手としてパワーピッチに多少問題があっても、スカウティングとコントロールの良さの「合わせ技」でなんとか打者を料理できててしまうとしたら、「投手の時代」になるのは当然だ。

2012年10月6日、2012オクトーバー・ブック 「平凡と非凡の新定義」。 「苦手球種や苦手コースでも手を出してしまう」 ジョシュ・ハミルトンと、「苦手に手を出さず、四球を選べる」 三冠王ミゲル・カブレラ。 | Damejima's HARDBALL

2012年11月2日、2012オクトーバー・ブック 「スカウティング格差」が決め手だった2012ポストシーズン。グランダーソンをホームランバッターに押し上げた「極端なストレート狙い」が通用しなくなった理由。 | Damejima's HARDBALL

2012年11月6日、2012オクトーバー・ブック アウトコースのスカウティングで完璧に封じ込められたプリンス・フィルダー。キーワードは「バックドア」、「チェンジアップ」。 | Damejima's HARDBALL

2012年9月17日 アウトコースのスライダーで空振り三振するのがわかりきっているBJアップトンに、わざわざ真ん中の球を投げて3安打させるボストンの「甘さ」 | Damejima's HARDBALL

2012年8月20日、アウトコースの球で逃げようとする癖がついてしまっているヤンキースバッテリー。不器用な打者が「腕を伸ばしたままフルスイングできるアウトコース」だけ待っているホワイトソックス。 | Damejima's HARDBALL

2013年7月16日、ヤシエル・プイグは、これから経験するMLBの「スカウティング包囲網」をくぐりぬけられるか? | Damejima's HARDBALL

2013年7月5日、怖くないボルチモア打線 スカウティング教科書(1)マニー・マチャドには「アウトローを投げるな」 | Damejima's HARDBALL

2014年10月29日、2014オクトーバー・ブック 〜 ヴェネズエラの悪球打ち魔人サルバドール・ペレスにあえて「悪球勝負」を挑み、ワールドチャンピオンをもぎとったマディソン・"Mad Bum"・バムガーナーの宇宙レベルの「度胸」。 | Damejima's HARDBALL


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