December 03, 2014

2010年代のワールドシリーズで投げた先発投手で
シアトルGMズレンシックが放出した投手


クリフ・リー 2010年テキサス
ダグ・フィスター 2012年デトロイト
ジェイソン・バルガス 2014年カンザスシティ

この5年間、ア・リーグのワールドシリーズ進出チームのうち、それぞれの別々の3チームの主力投手が、「シアトルGMジャック・ズレンシックが放出した投手」なのは、もちろん偶然ではない(笑)
なんせ彼は、「最高クラスの先発投手を、びっくりするほどの安値で売り払う」ことにかけては、MLB史上最高の才能をもったジェネラル・マネージャーなのだから、当然の話だ(笑)
2013年にシアトルをクビになったデータ分析やスカウティングを担当のGM特別補佐Tony Blenginoも、クビになった後、こんなことを言っている。
“Jack never has understood one iota about statistical analysis. To this day, he evaluates hitters by homers, RBI and batting average and pitchers by wins and ERA. Statistical analysis was foreign to him. ”
「ジャック(ズレンシック)は、統計的な分析についてはこれっぽっちも理解してない。 今日に至るまで、彼は打者をホームランと打点と打率、投手を勝ち数と防御率で評価してるんだ。統計分析なんて彼には縁の無い存在だった」

もし来シーズン、どうしてもワールドシリーズに進出したいア・リーグチームのGMがいたら、絶対にこの人に「先発投手のトレード話」をもちかけるべきだ。
そう、ちょうど今なら、お買い得な「岩隈」という先発ピッチャーがいる。他チーム優勝請負人ジャック・ズレンシックなら、ほとんど数字を確かめることもなく、必ず最安値で取り引きしてくれるはずだ(笑)

ちなみにクリフ・リーは、テキサスでのワールドシリーズ終了後、5年120Mの大型契約でフィラデルフィアへ栄転。フィスターは、デトロイトでワールドシリーズを経験した後、ワシントンにトレードされ、コンテンダーを渡り歩く有名投手に成長した。バルガスはトレード先のアナハイムで2013年5月に月間最優秀投手賞を受賞する好成績を残した後、4年32Mの長期契約でカンザスシティに栄転、ワールドシリーズを経験した。


さて問題は、これらの投手放出によって「シアトルが得た選手たち」の「その後」だ(笑)

ジャスティン・スモーク
一塁手がダブつきまくっていた2010年7月に、ズレンシックがクリフ・リーとの交換でテキサスから獲得。一塁しか守れないにもかかわらず、打てない。またタテマエでは「スイッチヒッター」なのだが、左投手が全く打てないため、事実上スイッチではない。
シアトル移籍後の2010年夏は大振りばかりで空振り三振が多く、打撃不振からマイナー落ち。シーズン終盤に復帰するものの、2011年以降も打撃がモノになる気配はなく、2013年にもマイナー落ちを経験。2014年オフにウェイバーにかけられ、クレームされたトロントに移籍するも、ノンテンダーFA。
キャスパー・ウェルズ
2011年7月末のフィスター放出でデトロイトから移籍。2012年に93ゲームも出場したが、打率.228と低迷。2013年DFA。その後チームを転々とし、2014年独立リーグ行き。GMズレンシックの無能さと、フィスター放出の無意味さを、全シアトルファンに思い知らせた選手のひとり。
チャンス・ラフィン
2011年7月末のフィスター放出でデトロイトから移籍。同年WHIP1.571という最悪の成績を残した。その後、消息不明。
チャーリー・ファーブッシュ
2011年7月末のフィスター放出でデトロイトから移籍。あくまでフィスターのトレードが失敗でないと主張したいチーム側は、ファーブッシュをしつこく先発投手として起用し続けたが、1年目に3勝7敗と、フィスターのトレードがとてつもない失敗だったことを明らかにしただけに終わる。結局セットアッパーに転向。
ケンドリス・モラレス
バルガスとのトレードでアナハイムからシアトルに移籍。シアトルに2シーズンに2度入団した、非常に不可解な移籍経緯のある選手。以下に詳述。(なお、以前は「ケンドリー・モラレス」と表記されていたが、Kendrys Moralesと登録名が変更になり、日本語表記も変更になった)


ケンドリス・モラレスの「2度にわたる獲得」で、シアトルが「ワールドシリーズ先発投手」と、「プロスペクト」と、「741万ドルの大金」と、「10数年ぶりのポストシーズン進出」を失った顛末

最近のシアトルになんの関心もないから、以下の衝撃的な事実をつい最近まで知らなかった(笑) よくこんな馬鹿なことを許したものだと、感心させられたのが、以下の「ケンドリス・モラレス、2年連続シアトル入団事件の顛末」だ。

モラレスは、当時FAまで1年となっていたシアトルの先発投手ジェイソン・バルガスとのトレードで、2013年にアナハイムからシアトルに移籍し、1年だけ在籍し、ホームラン23本、打率.277の成績を残して、オフにFAになった。
つまりバルガスは、彼自身もあと1シーズンでFAになってシアトル脱出予定だったとはいえ、あれほどの投手だというのに、「たった1シーズンでFAになるのがわかっている野手との交換でトレードされた」ということだ(笑)
「チーム再建」だの、「若返り」だのというお題目はどこ行ったのさ? と言いたくなる(笑)ブログ主に言わせれば、このトレードのみで、十分すぎる超絶的な大失態だが、コトはこれだけでは終わらない。


ズレンシックは、「1年しかチームにいない」ことがわかっているモラレスを、貴重な先発投手を無駄に放出してまで獲得した。それだけでも馬鹿だが、さらに、いざモラレスがチームを去るとなると、どうしても引き止めたくなったらしく、「どうせ移籍するだろうが、ドラフト指名権が欲しい」という意味ではなく、「チームに残ってもらいたい」という意味のクオリファイング・オファーを提示したのである。

だがシアトルにいたくないモラレスは拒否。
ズレンシックは赤恥をかいた。


ただそれでも、もし2013年オフにモラレスをリーグ上位チームが獲得してくれれば、クオリファイング・オファーの規定によって獲得チームのドラフト指名権がシアトルに移ることにはなる。

だがドラフト指名権移動は起こらなかった

というのも、モラレスがFA市場で売れ残ってしまい(契約が遅れた理由は代理人スコット・ボラスの提示金額が高すぎたためらしい)、ようやく2014年6月になって1年1200万ドルの単年契約にこぎつけたチームが、地区最下位のミネソタだったからだ。ミネソタの前年のリーグ順位は下から3番目。全体10位以内の指名権は保護されるため、ミネソタのドラフト指名権は移動しない。

クオリファイング・オファーの提示額の高さを考えれば、契約が難航して困っていたはずのモラレスが、再契約したくてたまらないシアトルとの契約を選択してもいいはずだが、モラレスは優勝する見込みが全く無いミネソタとの単年契約のほうを選んだ。モラレスが「シアトルに戻るのを、心底嫌がっていた」ことが非常によくわかる。


さて、2014シーズンのア・リーグのポストシーズン行き候補が決まりかけてきた初夏。モラレスは6月のミネソタで39ゲーム出場したが、ホームランはたった1本(AB/HRはキャリアワーストの154.0)で、打率.234と、酷い打撃成績に終わっており、ここが肝心だが、ミネソタファンのブーイングを浴びていた。

だがここで再び
「他チーム優勝請負人」ズレンシックが動いた(笑)

なんと、彼はまだ「モラレスにこだわった自分」にこだわり続けていたのだ。ズレンシックは「ミネソタでブーイングを浴びている、打てないモラレス」を獲るため、「シアトル側のサラリー全額負担+若手のスティーブン・プライヤー」という、わけのわからない破格の好条件を提示し、10数年ぶりにポストシーズンの可能性が見えてきたが、打撃の補強が急務だったシアトルに、打ててないモラレスを助っ人として再獲得してきてしまうのだ(笑)

よほどのことでもない限り他チームのやり方にクチをはさむことなどないMLBだが、この理解不能な「モラレス再獲得」については、他チームのエグゼクティブと称する人物がFOXのインタビューに応えて "curious" 、「奇妙なことをするもんだ」と真っ向から批判している。
Trader Jack? As Seattle's GM struggles to complete deals, some rival executives wonder | FOX Sports

結局シアトルは、「2度のモラレス獲得」に、「先発ジェイソン・バルガス、741万ドル、プロスペクトひとり、2年の歳月」を費やした。(注:この場合の金銭負担は「1シーズンを通じてプレーした」場合の「1200万ドル」ではなく、「日割り計算」の「741万ドル」になる)
かたやミネソタは「結局モラレスに1円も払わないまま、ドラフト指名権も手放すことなく、お払い箱にできた」のである。どちらが損せずに済んだか。いうまでもない。


こうしてモラレスは、たぶん嫌々だったと思うが、シアトルに「2年続けて」入団することになった。(たぶんFA後にようやく契約できたミネソタに足元を見られ、契約に拒否権が入れられなかったのだろう)モラレスがミネソタからシアトルに移ったのは2014年7月24日以降だが、結果はどうだったか。
59ゲーム出場 239打席
ホームラン7本 打率.207
AB/HR 30.4(キャリア23.5を大きく下回る)


2014年7月以降のシアトルは、ヤンキース、カンザスシティ、オークランドとともにワイルドカード争いをしていた。カンザスシティの好調さから、単に勝率を維持している程度ではポストシーズン進出はダメで、「勝ちをさらに積み上げ、勝率を上げ続ける必要」があった。

シアトルが「勝率が上昇しない原因」は、
いうまでもなくチーム伝統の「得点力不足」にあった。

ズレンシックが6年もの歳月をかけ、自分の手で得点力を極限まで低下させてきたのだから(笑)このチームの得点力の無さは、ロビンソン・カノーひとり獲得したところで、なんとかなるような代物ではないのだ。

そこでズレンシックは、「ミネソタでブーイングされていたモラレス」を再獲得しただけにとどまらず、さらにニック・フランクリンをエサにした三角トレードで、「対戦相手にとっくにスカウティングされまくって、所属するデトロイトからも見放されつつあったオースティン・ジャクソン」まで獲得してしまう。当然、ジャクソンも打てるわけがない。(54ゲーム出場、打率.229)

こうしてシアトルは、またもやズレンシックがやらかしたトレード失敗の数々によって、オールスター後に得点力を伸ばすことができず、10数年ぶりのポストシーズン進出をみすみす逃すハメになった(笑)
シーズン終盤失速した2014シアトルの成績
First Half    51勝44敗 貯金7 378得点321失点 勝率.537
Second Half  36勝31敗 貯金5 256得点233失点 勝率.537


バルガスがトレードされた2012年当時ズレンシックは、自分自身の契約更新を目前にしていた。
おそらく彼は、「守備重視の大失敗」、「若手路線の大失敗」、「トレードでの数々の大失敗」、「イチロー追い出しという歴史的ミス」、「観客激減」など、これまでの不手際の数々によって消えかかっていた自分の契約延長を可能にするために、それまで主張し続けてきた「チーム再建」や「若返り」などという「まやかしのコンセプト」ですら、すっかり全部引っ込めて、「目先の勝利を優先」する方向に方針を変え、「1年先にいなくなるのがわかっているFA野手」であっても、ステロイダーであっても、なりふりかまわず手を出す一方で、若手をトレードの駒にしはじめている。

もしバルガスのトレードが、そういう「目先の利益を追いかけるためだけのトレード」ではなく、「課題だったはずのチーム再建をきちんと優先した、有望な若手数人を手に入れるトレード」だったら、あるいは、「モラレスにとって、シアトルがわずか1年いただけでも在籍したくなくなるような、イヤな球団」でなかったら、シアトルはモラレス獲得で失った「741万ドルの無駄なカネと、プロスペクト」を失わずに済んだはずだ。

いずれにしても、ケンドリス・モラレスを執拗に追いかけたズレンシックの度重なるドタバタが、シアトルを2014年のポストシーズン進出から遠ざける大失態を招いた原因のひとつであることは間違いない。
課題の得点力不足を解消できないままシーズンに突入しただけでも、GMとして大失態だが、それだけでなく、ポストシーズン進出の可能性があるチームにとって必須条件の「夏の戦力補強」に失敗したのだ。
(だからこそ、ふたたび後がなくなった彼はボルチモアでブーイングされまくっているステロイダー、ネルソン・クルーズにも2014年オフに手を出した。そのうちメルキー・カブレラにすら手を出す可能性がある)


よく、こんな「売るのも、買うのも下手なGM」に、
チームをまかせる気になるものだ。


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