January 23, 2015

この記事グループ、「MLBの得点力低下をもたらした四球・長打の過大評価」原論の今後のターゲットは、「MLB全体での四球・長打の過大評価や、出塁率の過大評価による打者の過度の拘束が、かえってMLB全体での継続的な得点生産力低下をまねいた」ことを、データであれ、例証であれ、法則性であれ、なんらかの形で把握することにある。
それが、けして簡単な作業でなく、また、立証に至るかどうかもわからない作業であることは、百も承知だ。


まず考えてみたいのは、もし例えばOPS(OPSを改造したバリエーションを含む)のような「打者のバッティング評価の基準」が、かつて、ずっといわれていたように「得点に最も直結する」というのが本当ならば、「OPSで高く評価されるタイプのバッター」が増えれば増えるほど、そして、「OPSを獲得する選手の評価基準にして編成したチーム」や、「OPSを重視したゲーム戦術を採用するチーム」が増えれば増えるほど、「MLB全体の得点力は上昇を続けきていなければおかしい」だろう、ということだ。

実際、そうなったか。
事実は、まったく逆だ。

前記事でも掲出した以下のグラフでもわかるように、2000年代以降(特に2010年代)MLBの得点生産性は減退を続けてきている。
「得点との直結」をやたらと主張したがるデータ分析手法が導入され、普及したからといって、そのことによってMLBの得点生産能力が飛躍的に増進したという事実は、どこにもない
のである。

この25年間のホームラン数と得点総数の関係(1990-2014)


したがってブログ主が近年の「得点力デフレ」を説明していくための「出発点」は、まったく逆の立場からのものだ。
1)制度上の変更による得点力減退
MLB全体における「得点生産能力の低下」は、たくさんの要因からなる非常に複雑な現象なのは間違いなく、たったひとつの要因だけをとりだして、それを単独の原因として指摘することはできないし、明らかに間違ってもいる。
今のところある程度わかっている得点力低下の要因の多くは「MLBの制度上の変更」によるものだ。
ステロイド規制強化による長打の減少、ストライクゾーンの拡大、アンパイアの判定精度の急速な向上やアンパイアの世代交代、守備シフト、インスタントリプレイ導入など、さまざまな立場の人によって、さまざまな指摘が行われつつある。
参考記事:
2014年10月31日、「MLBアンパイアの若返り傾向」と、「得点減少傾向」の関係をさぐる。 | Damejima's HARDBALL

2014年11月28日、「低めのゾーン拡張」を明確に示すHardball Timesのデータによって、より補強された「ルールブックどおりのストライクゾーン化、アンパイアの判定精度向上」説。 | Damejima's HARDBALL

2)しかし、「MLB全体の得点能力の低下」の要因には、上記以外に、まだ指摘されていないものがあるだろう、とブログ主は考える。

3)打撃分析手法の誤りと束縛
近年、OPSとそのバリエーションに代表される打者のデータ的な評価手法や、出塁率重視のチーム戦略の普及など、新しい選手評価手法が普及したが、これらの普及が進んだ理由のひとつは「チームの得点力向上に直結する」と、「思われた」からだ。
もちろんデータ分析そのものの有効性は疑いのないところだが、しかしながら、OPSという指標が「算出手法自体に長打や四球の価値を過大に評価する根本的欠陥を持っている」という事実からもわかるように、データ分析による選手評価手法には今も「一定の構造的な誤り」が含まれており、その「誤り」はいまだ十分修正されていない。
関連記事:2014年10月14日、「パスカルの賭け」の欠陥の発見と、「ホームランという神」の出現。期待値において出現確率を考慮しない発想の源について考える。 | Damejima's HARDBALL
関連記事:2014年10月13日、「ホームラン20本の低打率打者A」と「高打率の打者B」をwOBAでイコールにしようとすると、「打者Aのホームラン以外のヒットは、全て二塁打でなければならなくなる」という計算結果。 | Damejima's HARDBALL
だが、こうした「誤り」は実際のチーム編成や実際のゲーム運営に「誤ったまま」適用されており、長打や四球、あるいは出塁率を過度に重視して選手をリクルートし、チームを構成する事例は増加し続けている。選手側でも、そうした「チーム側の好み」に合わせて自分のバッティングスタイルを作り上げる傾向にあり、メディアもそうした選手をほめちぎる。
だが、こうした傾向のもとにあるMLB全体で実際に起きている「事実」は、といえば、「得点力の向上」ではなく、まったく逆の「得点力の減退」でしかない。


たしかに、この「原論」の根拠を固めていく作業自体が、どこをどう調べるべきかもまだハッキリしないし、気長にやっていくしかない作業なのだが、今は例として「均質化」という現象を取り上げ、その説明を通して目指す場所をもう少し明らかにしておきたい。


打者の均質化


「得点に直結する」と強弁し続けてきたOPSなどの指標群にみられるように、MLBに浸透した「数字とデータに基づく野球」は、打者の「バッティングにおける行動パターン」を「著しい均質化」に向かわせてきた可能性があると、ゲームを見ながらいつも思ってきた。

いい例が、ビリー・ビーンのチームのバッターたちだ。彼らは「気味が悪いほど、相互にあまりにも似すぎている」
彼らが「お互いにソックリ」なのは、ひとつには、ビリー・ビーンが「似たタイプのバッター」ばかり獲得したがることに原因があるが、もうひとつ、「ビリー・ビーンが、どのバッターにも「同じ目的」しか与えないこと」にも原因がある。(そして、その目的は「その打者の能力をフルに発揮させることをあえて求めない目的」でもある)
関連記事:2014年12月4日、オークランドGMビリー・ビーンが重視する「野手の打撃能力の具体的な種類とレンジ」。打撃能力と「プラトーンシステム」との深い因果関係。 | Damejima's HARDBALL

簡単にいえば、
同じ目的をもたされた人間は、
「似たような行動をとりがち」になる。
ということだ。

人間という生き物は「個ではなく『群れ』として行動すべし、という原則」が本能というOS(=Operating System)に書き込まれたまま進化してきたために、本人の意思とは無関係に、とかく「群れが向かう方向にならって、群れと同じ行動をとりたがる」ようにできてしまっている。
なんとも哀しい生き物である。

こうした「バッティングにおける行動パターンの均質化」が過度に進めば、MLBにおける打者の質的低下を招くだけでなく、「他チームに簡単に分析されるバッターの急激な増加」をもたらす、と、ブログ主は考える。

何度か記事に書いたようにヤンキース時代のカーティス・グランダーソンや、テキサス時代のジョシュ・ハミルトンがインコースだけしか狙ってないことくらい、すぐに他チームにスカウティングされたように、投手側からみれば、「やることなすこと、すべてが大雑把なバッター」や「狙いがあまりにわかりやすいバッター」が、「対処しやすく、うちとりやすいバッター」なのは当然だ。
そうしたバッターが増えすぎたことは、リーグ全体の「投高打低」を助長し、「MLB全体のホームラン数の減少や、得点減少に導いた」のではないのか。

つまり、「四球による出塁と長打の組み合わせばかりを重視する傾向」が強くなりすぎることによって、「四球か、長打か、三振か」というような「ワンパターンなバッティング」ばかりするアダム・ダン的なバッターが増えすぎたことで、むしろ「MLB全体が得点デフレとでもいうような、長期的な得点減少傾向に陥って、抜け出せなっていった」のではないかと思うのである。
関連記事:
2014年10月20日、やがて悲しきアダム・ダン。ポスト・ステロイド時代のホームランバッター評価の鍵は、やはり「打率」。 | Damejima's HARDBALL


「原論」のターゲットのうち、「OPSとそのバリエーションの指標群のデタラメさ」については、それらが「得点に直結する数字で野球を分析すると称しながら、その実、四球や長打を過大に評価する構造的誤りをもつデータ分析手法」であり、野球というスポーツの選手評価において大量の「判断ミス」が生産され続ける原因にもなっていることは、これまで何度となく記事にしてきた。

こうした誤った評価手法は、例えば二流・三流のホームランバッターのサラリー高騰、GM・監督などのチーム運営責任者とマスメディアがそういうバッターを過大評価する傾向の拡大、打者自身がそういうバッターを目指したがる安易な傾向、プチ・ステロイド時代ともいえる「ステロイド回帰」、ホームランや出塁率に過度に依存する非効率的な得点戦術への傾倒、そして失敗、失敗を犯し続けるGMや監督の責任追及の甘さなど、数え切れないほど多くの悪弊を生んでいる。
得点力不足に悩み、得点が欲しくてたまらないチームに限って、間違ったゲーム戦術や間違った人材の起用等によって、かえって、さらなる得点力不足に悩むようになるのは、近年のシアトルやヤンキースを見ていれば(笑)誰でもわかることだ。


以上が「原論」のだいたいの見取り図で、あとは蛇足である(笑)「原論」としたことでおわかりのように、この論はまだまだ模索の域を出ない。これからも地味に資料収集して、少しずつ固めていくしかない。ただ、今までこのブログに書いてきた記事の中に、既に数多くの証拠やデータ、論理を提出してきたことも確かだ。


資料収集はまだどこで何を探したものかもわからないが、必要な情報は、例えば四球重視という風潮に打者がやたら束縛される時代になったことで、「打者の行動パターン」になにか変化があったのか、なかったのか、というようなことだ。
例えばだが、これまで「打者有利」とか「投手有利」とかいわれてきたカウントの「意味」は、15年前のホームラン狂騒時代と今とで、変化した可能性が、あるのか、ないのか。同じことを投手側からみれば、投手と打者の「かけひきのパターン」はこの15年で変化したのか、しないのか。(例えば、あるチームの投手陣は近年「打者と高めで勝負する」という戦術をとっている。これはもちろんローボールヒッター対策だ)


例:
以下の図は「カウント別ホームラン発生率」を、ステロイド・ホームラン時代の1999年と、そこからホームランが1400本も減った投高打低の2014年とを比べてみたグラフだ。
大きく変化しているものと期待して調べてはみたが、実際には、思ったほどは変化していなかった(笑)
ホームランが多く発生するカウント」は、今も昔も「17%前後を占める初球」が代表的であり、次に11%前後の「2球目」、そして「平行カウント」、あと、あえて付け加えれば「フルカウント」だ。

カウント別のホームラン% 1999年vs2014年

1999年のデータの出典:Major League 1999 Batting Splits | Baseball-Reference.com

2014年のデータの出典:Major League 2014 Batting Splits | Baseball-Reference.com


ただ、まぁ、細かい違いならある。

打者不利(投手有利)と思われがちな「ストライク先行カウント」、特に「2ストライクカウント」でのホームラン発生率が、むしろ上昇している。

その一方で、打者有利(投手不利)と思われがちな「ボール先行カウント」でのホームラン発生率は減少している

こうした変化が統計的にどのくらい有意なのかは調べてないが、たしかに細かい(笑)おまけに、なぜこうした現象が起きたのかは、まだ想像もつかない。

投手側の立場からすると、「2ストライクをとった後で、ホームランを打たれやすくなる」ということは、「追い込んだ打者をうちとるためのストライクを投げて、かえって長打を浴びた」とでもいうような意味になるかもしれない。
一方、「バッターが、ボール先行カウントなのに強振してこない率」は、どうやら15年前よりほんの少し高くなっているように見える。


ならば、とりあえずこういう仮説を立ててみる。

<打者のビヘイビア(behavior=行動パターン)の変化仮説>

ボール先行カウントでは
近年の打者は、無理なフルスイングを避け、四球を選んで出塁する方向への行動選択をしたがる。これは「フルカウント」においても、同じことがいえる。
つまり「ボール先行カウント」は今の打者にとって「かつてほど強振するカウントではない」傾向にある。

ストライク先行カウントでは
近年の打者は、投手が打者をうちとるために投げてくる「ストライク」をむしろ待ち受けて、長打狙いで強振してくる、ともいえる。
つまり「ストライク先行カウント」は、「投手が確実にストライクゾーンに投げこんで、打者を打ち取りにくるカウント」であるという意味において、近年では「打者にとっての重要なバッティングカウント」になりつつある。


こうした「ごくわずかな変化」を例として挙げたのは、数字そのものに大きな意味があると強弁したいからではなく、こういう地道な作業の積み重ねからそのうち意味が出てくるから待っててくれ、という意味だ(笑)ほんと、気長にやっていくしかない。
ただ少なくとも、景気刺激策のつもりでやった財政政策や金融政策がかえって景気後退を招いたり、家庭菜園をやっている人が作物のためと称して化学肥料をやりすぎて、かえって作物を枯らせてしまうことが多いように、「施策が、意図とは真逆の結果を生む」ことがけして少なくないのが、人間という生き物の困った点であることは、よく知っている(笑)それなりの結果につなげていく自信はある。


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