May 15, 2015

2015年4月10日朝、茨城県鉾田市の沿岸に100数十頭ものカズハゴンドウイルカ(Peponocephala electra)が打ち上げられているのが見つかった件では、イルカ救助への協力をあおぐ目的のツイートをした。
以前にも、中国漁船による小笠原諸島でのサンゴ密漁の件でツイート拡散をお願いしたことがあったわけだが、それを含めて、リツイートなどで協力してくださった方々にこの場を借りてあらためてお礼申し上げたい。

いらぬ不安を煽るのを避けたかったので当時あえて触れなかったが、あの時ネットではストランディングについてこんな「デマ」がまことしやかに語られていた。
(ブログ注:以下の「デマ」でいう「2011年にイルカが打ち上げられた件」とは、2011年3月4日に茨城県鹿嶋市海岸に52頭のカズハゴンドウイルカが打ち上げられたことを指している)

2011年の東日本大震災直前にもイルカが打ち上げられたことがあったが、これは「再び非常に大きな震災が起きる前兆」だ。某預言者も大きな震災の発生を、具体的な日付とともに予想している。

もちろん、その「予想された日付」とやらには、何も起きなかった(笑)


「なぜ茨城県の海岸で2011年と2015年にカズハゴンドウイルカのストランディングが起きたのか」については、ストランディング直後から既に研究者の間でデータ収集や議論が具体的に開始されていた模様で、例えば以下のサイトでは海洋研究開発機構の海水面温度データをもとに、ストランディングから約2週間後の4月23日には早くも以下の「仮説」が提示されている。(また、5月初旬に東京大学で行われたイベントではさらに詳細な議論も行われたらしい)
コラム:茨城県の海岸に打ち上げられた多数のイルカと海洋異変について│JAMSTEC

詳細は元サイトの記事を読んでもらうとして、仮説の概要をとりあえず示しておく。

1)カズハゴンドウイルカは「暖かい海」に生息する

2)2011年と2015年は、いずれも茨城県沖に「冷たい海水である親潮」が北から入り込んでいた事実がある (例えば2015年4月上旬の茨城沿岸には、例年より3度以上低い冷たい海域が広がっていた)

3)暖流・寒流の混合域ではイルカのエサとなる生物の密度が高いわけだが、暖かい海から北上してさかんにエサを捕食していたカズハゴンドウイルカは、茨城県沖で「冷たい海水」に突然遭遇し、そのことが原因でなんらかの混乱や変調をきたした可能性がある


2011年と2015年に共通する
「冷たい茨城沖」データ

暖かい黒潮」が大きく蛇行する一方で、茨城沖に北からの「冷たい親潮」が深く入り込んでいる。このため、茨城沖の海水面温度は例年に比べて非常に低いものになっている。
(2015年データ中にある赤い矢印がストランディングのあった茨城県鉾田市)
2011年の日本近海の海面水温

2015年の日本近海の海面水温


2011年と2015年とはまったく異なる
2013年の「暖かい茨城沖」データ

茨城沖に冷たい海流が入り込んでいた2011年春や2015年春とまったく違って、2013年には暖かい黒潮」が関東の沖でほとんど蛇行せず沿岸に接近して流れており、さらに黒潮は茨城沖から東北沿岸にかけて広く流れこんでいた。その結果、茨城沖の海水面温度は例年よりはるかに高いものだった。
2013年の日本近海の海面水温


どうだろう。

これらの仮説でストランディングのメカニズムのすべてが解明できているわけではないが、「何月何日に地震が起こる」などという「まことしやかなデマ」と違って、ストランディングの起きるトリガーのひとつについて非常に理路整然と「根拠を具体的に示した合理的説明」がなされている。
少なくとも「暖かい海に生息するイルカが、茨城沖で冷水塊に遭遇することによりストランディングが起きる可能性」について、2011年と2015年で高く、2013年については低いことをデータ上から十分に「科学的に」説明できている。


このことでよくわかることは、
デマは常に真実より見えやすい場所にある、ということだ。

残念なことだが、「もっともらしいデマ」、「いかがわしい話」、「真実っぽい嘘」は、常に真実や科学よりも「情報として目に触れやすい場所」に置かれていて、見えやすいがために話題にもなりやすい、のである。
慰安婦報道で30年にもわたって虚偽をあたかもそれが真実であるかのごとくに垂れ流してきた新聞メディアや、情報として根本から間違っているのにいまだにこれみよがしに垂れ流され続けているOPSのような野球データの例などでもわかるように、たとえマスメディアの記事だろうと、世の中の人が既に広く信じ込んでいるデータだろうと、例外ではないのだ。


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