August 05, 2015

coastal upwelling


「海岸に沿って強風が吹くと、沿岸の海水温が下がる」、coastal upwelling(沿岸湧昇)という現象がある。上のイラストは、そのメカニズムを「北半球の東向きの海岸」を例に書いてみたものだ。イラスト内の数字は、以下の説明文の数字にそれぞれ対応している。

) 北半球の東向きの海岸で、南西あるいは南から強風が吹く
) 「コリオリの力」の作用で、沿岸にあった表層の「暖かい海水」が、沖に向かって流され、沿岸の海水が減る
) 減った沿岸の海水を補給するために、より深い場所にあった「冷たい海水」が沿岸の表層に向かって湧き上がってくる


日本の有名サーフィンスポットというと、宮崎や外房のように「東向きの海岸」も少なくないわけだが、こうした「東向きの海岸」で南風が吹くと(=岸から見て「強い風が右から左に吹く」と)海水温が非常に下がって、夏なのにフルスーツ(手首、足首まである寒いとき用のスーツ)でないと寒くてサーフィンできないようなことすらある。

こうしたcoastal upwelling(沿岸湧昇)という現象を起こす元になっているのは、地球の自転からくる「コリオリの力」というやつだ。


「コリオリの力」の作用方向は知っての通り、北半球と南半球とでは真逆になる。だから、「upwellingが起きる条件」は、東向きの海岸と西向きの海岸でまったく逆になり、また北半球と南半球でも真逆になる。
例えば、カリフォルニアのような「北半球の西向きの海岸」では、東向きの海岸である日本の外房とは真逆で、「北風」でupwellingが起きる。また、カリフォルニアと同じ西向きでも、南半球のペルーの海岸では、北風ではなく「南風」によってupwellingが起きる。


upwelling zone
画像出典:Upwelling - Wikipedia, the free encyclopedia

世界にある湧昇域を地図で見てみると、日本を含めた漁業が盛んな国にはたいてい広大な湧昇域がある。これは、upwellingによって深い海の栄養やミネラルが海の表層に湧き上がることでプランクトンが繁殖するために、海の生態系が非常に活発になって、漁獲量が増大するからだ。


長すぎる前置きだったが(笑)、こんなことを書いたのは、今年4月に茨城県鉾田市で起きたカズハゴンドウイルカのストランディングの原因のひとつが、もしかすると、この「coastal upwelling(沿岸湧昇)」かもしれないなどと、ふと思ったからだ。


upwellingは、深層の栄養の豊富な海水を表層に持ち上げる。
そのため、それにつれて植物プランクトンが爆発的に増え、動物プランクトン、プランクトンを食べるアジやイワシなどの小魚、小魚を狙う海の鳥たち、小魚を食べるマグロ、カツオ、カジキ、サメ、イルカ、果てはクジラまでが沿岸域に集まって、沿岸に広大な生態系が一気に形成されるらしい。

今年4月にストランディングの起きた茨城の海岸は、もともと強い南風でcoastal upwelling(沿岸湧昇)が起きやすい東向きの海岸線なわけだが、もし4月に「季節外れの強い南風」が吹いたときがあったとすると、時期外れなcoastal upwelling(沿岸湧昇)が起き、イルカのエサとなるような海の小さな生物たちが急激に増えて、イルカがエサを求めて茨城沖に集まったのかもしれない、などと思ったのだ。

加えて、下記記事で書いたように、今年の春は、茨城沖に冷たい海流である親潮が入り込んでいる年だったわけだから、春先の茨城沖で数年に一度しかないイワシ祭りがあったとしてもおかしくないような気がしたのである(笑)
参考データ:2015年5月14日、「デマ」は常に「真実」よりも目に触れやすい場所に置かれ、見えやすい、という事例。 〜 カズハゴンドウイルカのストランディングに関するデマと科学の差 | Damejima's HARDBALL

まぁ、素人が想像で書いていることだから、真偽はあまり気にしないでもらいたい(笑)
ともかく言えるのは、茨城や千葉など外房のサーファーが「今年の夏は海水がやけに冷たい」などと愚痴をこぼしているのをネットで見かけたら、その年は寿司屋で安いイワシやアジを死ぬほど食うべき年だ、ということだろう(笑)


つまらない冗談はともかく、このupwelling(湧昇)という現象は、世界の気候に大きな影響をもたらしているので、知っておいて損はない。

例えば、赤道付近では、東寄りの風である貿易風によってequatorial upwelling(赤道湧昇)という現象が起きている。
コリオリの力によって赤道の北半球寄り海域では「北に向かう海流」、南半球寄りでは「南に向かう海流」が発生して、一方で表層の海水が減ったしまった赤道付近では、深い海から冷たい海水が湧き上がってくる、というわけだ。赤道だから海水が暖かいわけでもないのだ。

エルニーニョ現象やラニーニョ現象という言葉をよく聞くわけだが、その年のエルニーニョがどのくらい強く発生するかも、「風の強さ」が関係している。これも風の強さがupwellingの強さに関係しているからなのだ。

追記
この記事を書いてからネットを見ていたら、こんなニュースがあった。4月にカズハゴンドウのストランディングがあった茨城県鉾田市の沖で4mを超える大型のサメが確認され、近隣の海水浴場が遊泳禁止になっているという記事だ。
茨城県沖にサメ2匹を確認 鉾田市などは海水浴場を遊泳禁止に - ライブドアニュース
もちろんこのニュースも、upwellingによって説明できる部分がある。つまり、茨城の沿岸でcoastal upwelling(沿岸湧昇)が起きると、プランクトンと小魚が多くなる。そのため、小魚を食べる大型魚、さらには普段なら見られないイルカや大型のサメが沿岸周辺に集まることになるわけだ。


Play Clean
日付表記はすべて
アメリカ現地時間です

Twitterボタン

アドレス短縮 http://bit.ly/
2020TOKYO
think different
 
  • 2014年10月31日、PARADE !
  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年6月1日、あまりにも不活性で地味な旧ヤンキースタジアム跡地利用。「スタジアム周辺の駐車場の採算悪化」は、駐車場の供給過剰と料金の高さの問題であり、観客動員の問題ではない。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年6月29日、『父親とベースボール』 (1)星一徹とケン・バーンズに学ぶ 『ベースボールにおける父親の重み』。
Categories
ブログ内検索 by Google
ブログ内検索 by livedoor
Thank you for visiting
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

free counters

by Month