August 11, 2016

マーク・テシェイラプリンス・フィルダーという2人の一塁手が引退することになった。彼らが「高額サラリーの不良債権一塁手」であることは偶然ではない

(実は、この記事、2016年6月に書き始めていたものだ。だから、この2人の引退を前提に書いたわけではない。なんとも象徴的な8月だ。
また最初にことわっておきたいが、以下の文章は「マーク・テシェイラが一塁手として二流の役立たずだった」と言っているのでは、まったくない。むしろ彼は、怪我に悩まされなければ、2000年代以降で最も優秀な一塁手だったと思うし、ブログ主は今でも彼のファンだ)

一塁手とかDHに得点力を依存する時代は終わっていることに気づきもせず、常識にとらわれたままチーム編成をしているような馬鹿なチームは終わっていくのだ。

2016ナ・リーグのポジション別WAA
2016ナ・リーグ ポジション別WAA
2016 National League Season Summary | Baseball-Reference.com

2016ア・リーグのポジション別WAA
2016ア・リーグ ポジション別WAA
2016 American League Season Summary | Baseball-Reference.com

2つのグラフは2016年6月時点でのポジション別WAA(=勝利貢献度を表わすWARの算出のための数値)を表している。データが少し古いのはとりもなおさずこの記事を2016年6月に書き始めたなによりの証拠だ(笑)

青色の円は「プラス」赤色の円は「マイナス」を示し、また、円の「大きさ」が平均をどれだけ上回っているかという値を示している。
注:評価は打撃だけでなく「守備」も含めたものになっている。だから、例えばDH制のないナ・リーグでは投手の評価に「打撃を含む」し、一方、DH制のア・リーグでのDHの評価は「打撃のみ」で決まってくる。


見た目から、まず以下のようなことがわかる。

●両リーグ共通の「貢献度の高いポジション」は
 先発ピッチャーセンターサードセカンドなど

●逆に、両リーグ共通の「貢献度の低いポジション」は
 キャッチャーファーストレフト

●ナ・リーグのゲームはほとんどが先発投手の出来に左右される

「頼れるDH」なんてものはいまや、ほんのわずかしかいない

一塁手は、もはや「スラッガーの定番ポジション」とはいえない


項目の中で、ブログ主が最も印象深いと思うのが
一塁手とDHの「地位の低下」だ。


今のMLBは、センター中心に外野手の活躍が目立つ。

ブライス・ハーパーマイク・トラウトジャンカルロ・スタントンだけでなく、売り出し中のデクスター・ファウラージョージ・スプリンガーマーセル・オズーナムーキー・ベッツジェイソン・ヘイワードも外野手だし、既存のヴェテランにも、ホセ・バティースタアダム・ジョーンズユニエス・セスペデスアンドリュー・マッカチェン、そしてもちろんいうまでもない天才イチローと、沢山の人材がいる。


他方、ファースト、サードなど、「従来スラッガーの定番と考えられてきたポジション」の選手層はもはやペラペラに薄くなっている

例えば一塁手だが、ポール・ゴールドシュミットジョーイ・ヴォットーとか、中身の濃いスターが全くいないわけではないにしても、外野手と比べると層の薄さは歴然としている。(サードが本職と思われがちなミゲル・カブレラはメジャーデビューは外野手で、もともとショート出身。サードやファーストが本職ではない)
今の時代の一塁手は、例えば打線の強力なトロントでは1軍半クラスのハンパ選手でしかないジャスティン・スモークがファーストを守らせてもらえるように、「他に与えるポジションがないからファースト」とか、「多少打てるが、守備が下手だから、しょうがなく一塁手」とかいう「とりあえず一塁手」が増えている。

三塁手の選手層にしても、エイドリアン・ベルトレ、ジョシュ・ドナルドソン、マニー・マチャド、カイル・シーガーなどがいるとはいえ、選手層はもはやイメージほど厚くはない。(そういえば、引退するアレックス・ロドリゲスなんていう名前のクズ野郎もサードだった)


では、もともと守備意識の強いポジションである「セカンド、ショート、キャッチャー」はどうだろう。「攻守に秀でた選手」はどのくらいいるか。

セカンド、というと、ロビンソン・カノーやベン・ゾブリスト、チェイス・アトリーなどが思い浮かぶ人がいまだに多いわけだが、いまの時代のMLBで「二塁手のWAA」を引き上げているのは、ジェイソン・キップニスディー・ゴードンホセ・アルトゥーベなど、20代の若手二塁手であって、けしてロビンソン・カノーが彼の巨額サラリーに見合った貢献をしているわけではない。

ショートにしても、デレク・ジーターが引退し、トロイ・トゥロウィツキーなどにも精彩がなくなったことで、打てるのはクロフォードとかボガーツくらいだし、「攻守に秀でたショート」なんてものをだんだんみかけなくなってきた。

キャッチャーにしても、ジョニー・ベンチマイク・ピアッツァイヴァン・ロドリゲスジョー・マウアーとか、「打撃にも守備にも秀でた名キャッチャー時代」がかつては存在した。
だが今となっては、マウアーの後継者ともいうべき存在だったバスター・ポージーが一塁手に転向してしまって、すっかりキャッチャーは「守備専用ポジション」として定着してしまった感のほうが強い。
今キャッチャーはどこのチームでも「別に打てなくていいから、とりあえず球をしっかり受けといてくれ」という「とりあえずキャッチャー」が当たり前になった感じがある。


こうして眺めてみると、ブライアン・マッキャンとかマーク・テシェイラ、アレックス・ロドリゲスなど「中古のヴェテラン」に大金を注ぎ込んでチーム編成をしてきたヤンキースの選手編成コンセプトが、どれだけ「時代遅れで、馬鹿げたものか」が、よくわかる。
たとえで言うなら、「本人は最先端ファッションを大金出して買い集めたつもり」だが、実際にやっていることといえば、「他人が着たおしてヨレヨレになった古着を買い集めて、おまけに、それを滅茶苦茶なコーディネートで着てみせて、毎日街を鼻高々に歩きまわっている、壊滅的に時代感覚が衰えた、センス皆無な老人」そのものだ。ダサいこと、このうえない(笑)

ヤンキースにおけるマーク・テシェイラの劣化は何年も前からわかっていたことだが、プリンス・フィルダーにしても、今のテキサスにフィルダーとチュ・シンスとハミルトンがいなければもっと早く首位奪還できていたはずであって、ノーラン・ライアンなきあとのジョン・ダニエルズの大型補強はことごとく失敗だ。


「成長の止まった分野」に資源を集中していたら、企業は消滅してしまう。当たり前の話だ。
投資の最適化のルールというものは、「限りある投資を、事業を構成する分野それぞれにおいて見込まれる収益やサービスに見合った割合において実行すること」だ。もちろん、将来の収益確保のために、まだ利益を生み出してはいない新分野に投資することがあるにしても、それは先行投資という意味なだけであり、長期的な収支は「最適化ルール」から外れない。
例えばIT企業が、卓球台を購入したり、オフィスでペットを飼ったりすることにしても、それが許されているのは「社員のリフレッシュのアイデアとして一定の意味はあるから」であり、なにも2017年シーズンにアレックス・ロドリゲスが野球をまるでやらなくても20Mもらえるのと同じように、「毎日卓球だけやって帰宅するアホ社員でも、高額なサラリーがもらえる」という意味ではない。
同じように、新聞のような印刷メディアを買わなくなってきた、そんな時代に、新聞広告に大量の広告費を投資するようなことをしても、なんの意味もない。人の目に触れない広告にカネを払う価値など無いからだ。

こんなこと子供でもわかる。わかるはずだが、そういうことをいまだにやっているマネジメントは確実存在する。
野球という「世界で最も巨大かつ数値化によるデータ管理が進みつつあるスポーツビジネス」においても、あいかわらず「ミスとしかいいようがない投資」「凡庸なマネジメントによるミス」が横行している。


確かに、プレーひとつひとつの「価値」が数値化・可視化され、細かく評価されだしている、それは事実だ。
だが、OPSのようなデタラメな指標、パークファクター、守備補正の根本にある「いい加減さ」でもわかるように、その「価値判断をする人間の判断力そのもの」は実はいまだに正確になど、なっていない。


ブログ主はむしろ「野球におけるスポーツ数値化の流れは、いまや停滞し、それどころか頭打ちになっている」と考える。

プレーを数字で分析する行為が流行したせいで、今の野球ではあらゆる点がきちんと合理的に価値判断されている、などと思っている人がいるかもしれないが、ブログ主に言わせれば、そんなものは「真っ赤な嘘」だ。
実際にやっていることといえば、「ニセモノで、出来損ないの数字」を使い、ひとつひとつのプレーに「間違った価値判断」を下し、ビリー・ビーンがそうであるように「プレーヤーの評価を大きく間違え」、ジョシュ・ハミルトンやプリンス・フィルダーのような「ウィークポイントがすでに全球団に知れ渡っている有名選手」に大金を投資するようなミスを犯して、チームを弱体化するような間違った行為が日常的に行われている。


他方、これは困ったことなのだが、「商品の質と価格が必ずしも比例せず、質の悪いものの価格がむしろ高騰する」というような事態は、たしかにある。

例えばだが、アイク・デービスがそうであるように、「ロクな一塁手がいなくなってきたことによって、かえって、平凡な一塁手にすら希少価値が出てきてしまい、二流のプレーしかできない平凡な一塁手やDHの価格までもが高騰する」というような悪例が少なからず見受けられるのだ。
MLBのようなスポーツマーケットでは「限られた人材を多数のチームが取り合う売り手市場」なので、質がまるで見合わないのに、希少価値のみが理由で質の悪い選手の価格が高騰する例は少なくない。


だが例えば、突然の地震でびっくりした人がミネラルウォーターやガソリンを買い占めることで一時的にそれらの小売価格が暴騰したとしても、やがて事態が落ち着けば、高値で買い占めた人間は損をこうむることになる。
つまり、希少価値のせいで二流の一塁手が大金を稼ぐなんて事態は、長続きしない、ということだ。


それでも、近い将来ヤンキースはどこかの一塁手とか三塁手に大金を払うことだろう(笑)そうなったとき、彼らにはどこかのブログ主が冷笑しながら眺めていることを必ず思い出してもらいたいものだ(笑)


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