June 17, 2016

ジョー・ポズナンスキーがこんなコラムを書いてるんだけどさ。
ダメだね。ダメ。計算がまるでなっちゃいない。




ポズナンスキーは、「ピート・ローズとイチローの27歳から42歳までの打撃数値(具体的には打率やヒット数)が似てることを挙げた上で、「仮にイチローがMLBでデビューしていて、なおかつ27歳になるまでの間に899本のヒットを打てるかどうか」について書いてる。

彼は「なんの疑いもない。イチローは899本打てただろう」といちおう書いた上で、こうも書いてる。
If you got to the Major Leagues at age 20 and got 200 hits a year for 21 consecutive years ― every year until you were 41 ― you STILL would not get to Pete Rose’s hit total.
もし20歳でMLBデビューして、41歳になるまで21年連続200安打打ったとしても、ピート・ローズの安打記録には届かない。

つまり、彼が「暗に」いわんとするところは、
もしイチローが「20歳」でMLBでデビューしていたとしても、「41歳まで21年連続200安打」なんてできてたかどうかわからないし、もし仮にできてたとしても、ピート・ローズには届いてない可能性だってある。それくらい、やっぱりピート・ローズの記録は凄い。
ってことでもあるわけだ。いやらしい書き方するもんだ。


おいおいおいおい。
ちょっと待てよ、ポズナンスキー。
と、ブログ主は即座に思った。


「21年連続200安打できるかどうか」なんて、
単なるレトリックに過ぎない。

なぜって、ポズナンスキーだけでなく「もしイチローがMLBでデビューしてたら」という議論のほとんどが、「日本での打数の少なさを、MLBでの打数の多さにアジャストするとどうなるか」って視点が完全に抜け落ちているからだ。ポズナンスキーも例外じゃない。


わからない人のために説明しようか。

イチローが日本でプレーしてた時代、「1シーズンの打数」は540をようやく越えたのが2度あるだけで、600越えたことなど、一度もない。

だけど、MLBでは余裕で690前後ある。

日米で打数が大きく異なるのはいうまでもなく「1シーズンの試合数の違い」が原因だ。日本とアメリカでは、1シーズンで最低でも「150打数」程度、うっかりすると「200打数」近いくらい違うこともある。


ここで、「もしイチローがメジャーでデビューしてて、1994年から2000年までの7シーズン、毎年690打数だった」と仮定してみる。
すると、7シーズンの打数は4830で、「1994年〜2000年の仮想ヒット数」は、「打率」によって以下のように変化することになる。

仮想打率 仮想ヒット数(小数点以下切り捨て)
.330   1593本
.320   1545本
.310   1497本
.300   1449本
.290   1409本
.280   1352本


上の表で、「.330」という打率を最初に挙げたのは、実際のイチローの2010年頃までのMLB通算打率がそのくらいだったからだ。だから、非現実的な数字ではないどころか、非常に現実的な数字であり、若い体力みなぎるイチローがむしろ.330より高い平均打率を残した可能性だって十分ある。
だが、ここではいちおう控えめに「.330」としたまでだ。

打率.270以下は計算しても意味がないので計算しない。
なぜなら、打率がたった.270しかない若い1番打者が、7シーズンもの間、年間690打数も与えられるわけがないからだ。

この計算から
27歳になるまでに、たった899本しかヒットを打てなかった若い凡才ピート・ローズ」と、「27歳までに7年連続首位打者になった20代の天才イチロー」が、同等に比べられなきゃならない理由なんて、どこにもない
ことがわからない人間は馬鹿だと思う。


だがまぁ、まだわからない人もいるだろう。
あえてもうひとつ計算して、わかりやすくしておこう。


もし仮に「イチローがMLBでデビューしてて、仮に1994年から2000年までの間に4830打数あったとして、ヒットを899本しか打たなかった」としたら、打率はどうなるか。

.186だ。

「イチローが最初からMLBでデビューして、27歳になるまでにヒットを899本打てたかどうか」なんてことを真面目ぶって議論に組み込んだようにみせかけてるようなヤツが、その実、いかに慇懃無礼な人間か、これでおわかりだろう。
こういう「非現実的な話」を自分の文章に散りばめる人間が、リアルな議論をしているなどと、ブログ主はまったく思わない。たとえそれがジョー・ポズナンスキーであろうと、Cut4であろうと、だ。


もっと厳しくいわせてもらうと、ヒットを大量生産すべき貴重な若い時期にやっとこさ「899本」しか打てなかったような、そんなヘボい打者が、「若い時期のピート・ローズ」だ、ということだが、ピート・ローズの「最晩年」についても、その間の「ヒット数」と「打率」をひきくらべてみるといい。
晩年、ローズはプレーイング・マネージャー(選手兼監督)という立場を利用し、400打席以上を自分自身に与えながら、100本程度しかヒットを打っていない。そういう「ひどい低打率」だったにもかかわらず、彼は自分をスタメン出場させ続けた。それが最晩年の彼の通算安打記録の実態だ。(そしてその最晩年にローズは現役選手であるとともに現役監督でありながら、野球と自分のチームをギャンブルの対象にしていた)
参考記事:
2015年8月24日、「ヒット1本あたりの打席数」ランキングでみれば、イチローの通算ヒット数の多さは「打順が1番だから」ではなく、むしろピート・ローズの安打数こそ単なる「打数の多さによるもの」に過ぎない。 | Damejima's HARDBALL


ロジックというものはきちんと点検しないと騙される。

ちょっと聞きかじって、「ああ、たしかに、いくらイチローでも21年連続200安打はちょっと無理だろうな」などと思ってはいけないのだ。

「21年間シーズン200安打を続けられるかどうか」などという仮定を設けること自体が、単なる「上から目線からの恫喝」に過ぎない。そんな仮説は単なる机上の空論に過ぎないのである。

話はむしろ逆だ。

もし
日本の野球がもっと試合数が多くて、「日本でのイチローの打数」が「MLB並みの多さ」だったなら、当然「27歳になるまでのイチロー」がもっと多くのヒットを打っていたはずであることは、疑いようがない。
したがって、それが日本であろうと、アメリカであろうと、「27歳になるまでのイチロー」が「MLB並みの打数」を与えられていたなら、とっくの昔にピート・ローズの記録など追い抜いて、42歳時点では既に日米通算5000本に接近していた、と考えるのが、「マトモな議論」というもの
だ。

いいかえれば、
「イチローは打数の限られた日本で何年も過ごしたが、21年連続200安打なんかしなくても、イチローはピート・ローズに届いた。つまり、そのくらいイチローはMLBで、誰よりも早い、ものすごいスピードでヒットを量産し続けてきた」というのが、正しい表現だ。


加えて、ポズナンスキーはじめ「もしもイチローがMLBでデビューしていたら議論」なんてものに手を染めたがる人間はたいてい、ピート・ローズがさまざまな手を使って4256本のヒットを達成したのが「ようやく45歳で達成して、引退」であり、イチローは「まだ42歳で、なおかつ現役で、これからもヒット数は増える」ことも忘れている。
「42歳までのピート・ローズのMLBヒット数」は、「42歳のイチローの日米通算」より260本以上も少ない
のである。
日米通算というアスタリスクはともかく、同じ数字を3年も早く達成できた人間と、3年余計にかかった人間を同等に扱いたがる人は、もっと礼儀というものをわきまえつつ現実を直視したらいいと思うが、どうだろう。

3000安打達成者の1安打あたりの打席数

タイ・カッブ 3.123
(ジョージ・シスラー 3.205 3000安打未達成)
ナップ・ラジョイ 3.226
トニー・グウィン 3.256
キャップ・アンソン 3.298
トリス・スピーカー 3.413
ポール・ワナー 3.416
ホーナス・ワグナー 3.435
イチロー 3.437
(2016年6月19日現在)
ロッド・カルー 3.456
スタン・ミュージアル 3.503
デレク・ジーター 3.637
ポール・モリター 3.666
ジョージ・ブレット 3.686
ハンク・アーロン 3.697
ピート・ローズ 3.727
ウィリー・メイズ 3.806
ロビン・ヨーント 3.848
エディー・マレー 3.936
デイブ・ウィンフィールド 3.974
カル・リプケン 4.046
クレイグ・ビジオ 4.086
カール・ヤストレムスキー 4.092
リッキー・ヘンダーソン 4.369



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