August 02, 2017
トレード期限寸前でダルビッシュを放出したテキサスだが、3000安打を達成したばかりのエイドリアン・ベルトレに言わせれば「なにやってんだよ、おまえらっ。俺はトレードを喜んでなんか、ないぜ?」ということらしい。
ブログ主としては、もし「ベルトレが言いたいこと」が、「優勝をあきらめているばかりか、チーム再建の方法について間違ったことをやりだしたチームにいなければならないのだとしたら、もっとマシで、マトモなチームに行きたい」ということなら、彼の意見に賛成だ。それは、無能なシアトルがやって大失敗した紋切り型の若手路線と、瓜二つだからだ。(もっとも、シアトルの場合はフェリックス・ヘルナンデスの能力低下を見抜いて、さっさと放出すべきだった)
いまやナ・リーグ東地区の常勝球団となったワシントン・ナショナルズだが、この球団が再建に成功した理由のひとつは、「MLB最低勝率を故意に記録することで、全米ドラフト1位選手を獲得するというチーム再建方式」が、スティーブン・ストラスバーグ(2009年全米1位)、ブライス・ハーパー(2010年全米1位)と、2年連続で「バカ当たり」したことで、投打の軸がしっかりしたからだ。(なお、2011年ドラフト1位のアンソニー・レンドンは全米6位で、1位ではない)
では、この旧来の再建方式は2010年代も通用するか。
ブログ主の考える答えは
No だ。
2012年にこんな記事を書いて、当時ドラフト1位が予想されたスタンフォード大学のマーク・アペルをこきおろしつつ、「アメリカ国内の大卒選手がMLBに占める相対的な比重は、ますます軽くなっていくと読んでいる」という意味のことを書いたことがある。(2017年現在、アペルはトリプルAでERA5点台のさえないピッチャーで、芽が出そうな気配はまったくない)
2012年6月4日、恒例の全米ドラフトは高校生が主役。 | Damejima's HARDBALL
ドラフトに限らず、2010年代以降のMLBは、それ以前のMLBと質的にまったく違うことがハッキリしてきた。
このことは、すでにバッターについて「三振の世紀」というテーマで既に書いた。2017年2月4日、「三振の世紀」到来か。2010年代MLBの意味するもの。 | Damejima's HARDBALL
この記事は後日「三振とホームランの2010年代」とテーマを広げて、続きを書く。
ピッチャーについていえば、2010年以降に1位指名されたピッチャーで「長く活躍できそうだったピッチャー」といえば、コカインで死んだホセ・フェルナンデス(キューバ出身の彼の最終学歴はフロリダ州タンパのBraulio Alonso High Schoolで、大卒ではない)、ソニー・グレイ、クリス・セールの3人が抜けていて、他にゲリット・コール、マーカス・ストローマン、マイケル・ワッカくらいがいるくらいで、勝ち数より負け数のほうが多いボルチモアのケビン・ゴーズマンでさえ、2011年以降の1位指名ピッチャーの中では「まだマシなほう」であることからわかるとおり、2010年代以降のドラフト1位指名ピッチャーの層はまるで薄い。
2010年代のドラフトの選手層の「薄さ」は、「2000年代の1位指名ピッチャー」と比べてみれば、すぐにわかる。
2000年代に1位指名だったピッチャーは、アダム・ウエインライト、マット・ケイン、ジェレミー・ギャスリー、コール・ハメルズ、スコット・カズミアー、ザック・グレインキー、ジョン・ダンクス、ヒューストン・ストリート、ジオ・ゴンザレス、フィル・ヒューズ、ジャスティン・バーランダー、クレイ・バックホルツ、マット・ガーザ、イアン・ケネディ、マックス・シャーザー、ティム・リンスカム、クレイトン・カーショー、リック・ポーセロ、マディソン・バムガーナー、デビッド・プライスなどなど。(指名年代順)
太字がサイ・ヤング賞投手だが、「なぜかサイ・ヤングを受賞してないバーランダー(笑)」を含め、2000年代ドラフト1位指名組は先発投手の層が分厚い。まさにキラ星のごとくのメンバーだ。(もちろん2位指名以下の選手層も厚い)
この単純な比較からもわかるのは、全米ドラフトに依存するようなチーム再建手法は、2010年代以降、通用しなくなるということだ。ドラフトはもはや「最も優れた才能の供給源」ではない。
例えば、つい最近まで「若手育成の上手さ」で知られてきたボストンが、2014年、2015年の低迷から「長期低迷期」を経験せず、スピーディーに復活しているわけだが、その手法は「ドラフト依存」や「生え抜きの若手育成」といった、無能なシアトル・マリナーズが大失敗した「あとさき考えない若手路線」ではなかった。
いまのボストンは「生え抜きをズラリと揃えた時代」とは違う。2011年以降のドラフトからモノになったのはムーキー・ベッツくらいで、投手陣などは、デビッド・プライス、クリス・セール、リック・ポーセロ、クレイグ・キンブレルと、FAのプライスを除く全員が「若手との交換で他球団から得た投手」ばかりだ。つまり、ボストンは「チームを完全解体してドラフトに依存して若手主体の球団に変える」という再建手法をとらなかったばかりか、むしろ「若手を放出してチームを再建した」ということだ。
無能なビリー・ビーンがジョシュ・ドナルドソンをトロントに無駄に放出したオークランドが、こんどは先発のソニー・グレイを放出したわけだが、信じられないことをするものだ。
予算の潤沢なチームならともかく、この予算の少ない球団が、上に書いておいたように、「ドラフトでこういうレベルの投手が獲得できる確率」はいまや非常に下がっているというのに、ソニー・グレイ同等レベルの先発投手を、どこから調達できるというのか。
テキサスは、オークランドのような貧乏球団ではないが、今の「やたらと打たれるダルビッシュ」がどのくらいの好投手かの判断はともかく、ローテーションの軸となる先発を手放したことで、3000安打の名誉を既に手にし、あとはワールドシリーズを味わいたいと考えている38歳ベルトレに「この球団じゃあ、ワールドシリーズはないな・・・」と思わせたとしたら、テキサスの住民だって同じことを考える。当然のことだ。
ダルビッシュ放出とベルトレ移籍で投打の軸を失って観客動員が下がり、収入が減ることくらいは、テキサスGMのジョン・ダニエルズも「アタマで」予想はして対策を練っているだろうが、彼はその「痛さ」が、アタマではわかっても、「カラダ」ではまるでわかっていない。
そしてベルトレはまさに、「アタマ」で考えるのではなく、「カラダ」がまっさきに反応するタイプそのものだ。
MLBのジェネラル・マネージャーには「MBA持ちの有名大学卒業生」とか「データマニア」とかが多くなっているわけだが、彼らは総じて、アタマはよくない。なぜって、「ドラフトという『仕入れ環境』の変化すら計算にいれられない」のだから、商売が上手いわけがない。ヴェテランから「若造、なにしやがる」と言われて殴られるのもしかたがない。
ブログ主としては、もし「ベルトレが言いたいこと」が、「優勝をあきらめているばかりか、チーム再建の方法について間違ったことをやりだしたチームにいなければならないのだとしたら、もっとマシで、マトモなチームに行きたい」ということなら、彼の意見に賛成だ。それは、無能なシアトルがやって大失敗した紋切り型の若手路線と、瓜二つだからだ。(もっとも、シアトルの場合はフェリックス・ヘルナンデスの能力低下を見抜いて、さっさと放出すべきだった)
いまやナ・リーグ東地区の常勝球団となったワシントン・ナショナルズだが、この球団が再建に成功した理由のひとつは、「MLB最低勝率を故意に記録することで、全米ドラフト1位選手を獲得するというチーム再建方式」が、スティーブン・ストラスバーグ(2009年全米1位)、ブライス・ハーパー(2010年全米1位)と、2年連続で「バカ当たり」したことで、投打の軸がしっかりしたからだ。(なお、2011年ドラフト1位のアンソニー・レンドンは全米6位で、1位ではない)
では、この旧来の再建方式は2010年代も通用するか。
ブログ主の考える答えは
No だ。
2012年にこんな記事を書いて、当時ドラフト1位が予想されたスタンフォード大学のマーク・アペルをこきおろしつつ、「アメリカ国内の大卒選手がMLBに占める相対的な比重は、ますます軽くなっていくと読んでいる」という意味のことを書いたことがある。(2017年現在、アペルはトリプルAでERA5点台のさえないピッチャーで、芽が出そうな気配はまったくない)
2012年6月4日、恒例の全米ドラフトは高校生が主役。 | Damejima's HARDBALL
ドラフトに限らず、2010年代以降のMLBは、それ以前のMLBと質的にまったく違うことがハッキリしてきた。
このことは、すでにバッターについて「三振の世紀」というテーマで既に書いた。2017年2月4日、「三振の世紀」到来か。2010年代MLBの意味するもの。 | Damejima's HARDBALL
この記事は後日「三振とホームランの2010年代」とテーマを広げて、続きを書く。
ピッチャーについていえば、2010年以降に1位指名されたピッチャーで「長く活躍できそうだったピッチャー」といえば、コカインで死んだホセ・フェルナンデス(キューバ出身の彼の最終学歴はフロリダ州タンパのBraulio Alonso High Schoolで、大卒ではない)、ソニー・グレイ、クリス・セールの3人が抜けていて、他にゲリット・コール、マーカス・ストローマン、マイケル・ワッカくらいがいるくらいで、勝ち数より負け数のほうが多いボルチモアのケビン・ゴーズマンでさえ、2011年以降の1位指名ピッチャーの中では「まだマシなほう」であることからわかるとおり、2010年代以降のドラフト1位指名ピッチャーの層はまるで薄い。
2010年代のドラフトの選手層の「薄さ」は、「2000年代の1位指名ピッチャー」と比べてみれば、すぐにわかる。
2000年代に1位指名だったピッチャーは、アダム・ウエインライト、マット・ケイン、ジェレミー・ギャスリー、コール・ハメルズ、スコット・カズミアー、ザック・グレインキー、ジョン・ダンクス、ヒューストン・ストリート、ジオ・ゴンザレス、フィル・ヒューズ、ジャスティン・バーランダー、クレイ・バックホルツ、マット・ガーザ、イアン・ケネディ、マックス・シャーザー、ティム・リンスカム、クレイトン・カーショー、リック・ポーセロ、マディソン・バムガーナー、デビッド・プライスなどなど。(指名年代順)
太字がサイ・ヤング賞投手だが、「なぜかサイ・ヤングを受賞してないバーランダー(笑)」を含め、2000年代ドラフト1位指名組は先発投手の層が分厚い。まさにキラ星のごとくのメンバーだ。(もちろん2位指名以下の選手層も厚い)
この単純な比較からもわかるのは、全米ドラフトに依存するようなチーム再建手法は、2010年代以降、通用しなくなるということだ。ドラフトはもはや「最も優れた才能の供給源」ではない。
例えば、つい最近まで「若手育成の上手さ」で知られてきたボストンが、2014年、2015年の低迷から「長期低迷期」を経験せず、スピーディーに復活しているわけだが、その手法は「ドラフト依存」や「生え抜きの若手育成」といった、無能なシアトル・マリナーズが大失敗した「あとさき考えない若手路線」ではなかった。
いまのボストンは「生え抜きをズラリと揃えた時代」とは違う。2011年以降のドラフトからモノになったのはムーキー・ベッツくらいで、投手陣などは、デビッド・プライス、クリス・セール、リック・ポーセロ、クレイグ・キンブレルと、FAのプライスを除く全員が「若手との交換で他球団から得た投手」ばかりだ。つまり、ボストンは「チームを完全解体してドラフトに依存して若手主体の球団に変える」という再建手法をとらなかったばかりか、むしろ「若手を放出してチームを再建した」ということだ。
無能なビリー・ビーンがジョシュ・ドナルドソンをトロントに無駄に放出したオークランドが、こんどは先発のソニー・グレイを放出したわけだが、信じられないことをするものだ。
予算の潤沢なチームならともかく、この予算の少ない球団が、上に書いておいたように、「ドラフトでこういうレベルの投手が獲得できる確率」はいまや非常に下がっているというのに、ソニー・グレイ同等レベルの先発投手を、どこから調達できるというのか。
テキサスは、オークランドのような貧乏球団ではないが、今の「やたらと打たれるダルビッシュ」がどのくらいの好投手かの判断はともかく、ローテーションの軸となる先発を手放したことで、3000安打の名誉を既に手にし、あとはワールドシリーズを味わいたいと考えている38歳ベルトレに「この球団じゃあ、ワールドシリーズはないな・・・」と思わせたとしたら、テキサスの住民だって同じことを考える。当然のことだ。
ダルビッシュ放出とベルトレ移籍で投打の軸を失って観客動員が下がり、収入が減ることくらいは、テキサスGMのジョン・ダニエルズも「アタマで」予想はして対策を練っているだろうが、彼はその「痛さ」が、アタマではわかっても、「カラダ」ではまるでわかっていない。
そしてベルトレはまさに、「アタマ」で考えるのではなく、「カラダ」がまっさきに反応するタイプそのものだ。
MLBのジェネラル・マネージャーには「MBA持ちの有名大学卒業生」とか「データマニア」とかが多くなっているわけだが、彼らは総じて、アタマはよくない。なぜって、「ドラフトという『仕入れ環境』の変化すら計算にいれられない」のだから、商売が上手いわけがない。ヴェテランから「若造、なにしやがる」と言われて殴られるのもしかたがない。