April 06, 2018

1959年から1965年にかけての南海ホークスは、三冠王野村克也を中心にした重量打線が売りで、1959年と1964年の2度、日本シリーズを制している。その重量打線のネーミングが「400フィート打線」で、この「400フィート(=約122メートル)」という数字はいうまでもなく「打球がホームランになるのに十分な飛距離」を意味している。


先日、大谷翔平がサイ・ヤング賞投手コーリー・クルーバーからセンターに打ったメジャー2号がやはり「400フィート」というので話題になったが、MLBのボールパークの大半でセンターの最深部は400フィートちょっとだから、大谷はとりあえず南海の400フィート打線でもやっていけるはずだ(笑)



2007年のオールスターでイチローが打ったランニングホームランの飛距離も、飛距離はだいたい「400フィート」だった。




2007年オールスターの会場はサンフランシスコのAT&Tパークだ。

このスタジアムの右中間の「最深部」は、421フィート(=約128.3メートル)もある。(以下の写真で、Aと書かれた円形の中に「421」という数字が書いてある部分)
センターの最深部は「399フィート」(=121.6メートル)だから、AT&Tは「センター最深部より、右中間奥のほうがはるかに広い、特殊なスタジアム」なのだ。

イチローの打球が直撃したフェンスは下記の写真のB、つまり「オレンジ色の広告」の部分だが、写真のCの部分、つまり右中間の中間部は「365フィート」(=111.2メートル)だから、この打球の飛距離はだいたい「400フィート」ということになる。

2007年オールスターのイチロー ランニングHR

2007年オールスター イチローのランニングHRAT&T Park

ソース:
Clem's Baseball ~ AT&T Park


右中間、左中間がまっすぐ平らになっていて、右中間がたった370フィート(約112メートル)しかないアナハイムと比べると、AT&Tの右中間の「異常さ」(笑)がよくわかる。

アナハイムAngel Stadium of Anaheim

ソース:
Clem's Baseball ~ Angel Stadium of Anaheim



いまだにイチローのランニングホームランを「偶然の産物」だと思っている人がいるかもしれないが、それは間違いだ。

たいていのボールパークはどこも右中間、左中間が潰れたカタチをしていてホームランが出やすくなっているから、「右中間が400フィート以上もあるボールパーク」なんてものは、普通はありえない。
だからイチローの打った「400フィートという飛距離」は、「普通のボールパークの右中間」なら、スタンド最前列に飛び込むどころか、フェンスから10メートルほど奥に届いている。

つまり、イチローのランニングホームランは、「本来はホームランになるべき、十分すぎる飛距離の打球」だったのだが、打った場所がたまたま「AT&T」だったためにスタンドに届かなかった、ただそれだけのことなのである。
当時の外野手ケン・グリフィーJRが、頭上を越えていく打球に心の備えがないまま前進守備していて、あわてふためいて送球が遅れたのも、AT&Tならばこそだ。



ちなみに、センターが広大なので有名なのは、デトロイトのコメリカパークだ。センター最奥は、AT&Tの右中間の奥と同じ、「420フィート」もある。
大谷がアナハイムでセンターに打った400フィートのホームランも、コメリカパークでなら、よくて三塁打、普通は二塁打で、ホームランにはならない。もし大谷の打撃データをもとにシフトが敷かれていた場合なら、ホームランどころか、下手すると外野フライだった可能性だって、ないわけではないのである。


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