April 12, 2018

2010年代」を最も特徴づけるファクターのひとつが、「三振の急増」であることは、これまでも何度も書いている。
参考記事:2017年2月4日、「三振の世紀」到来か。2010年代MLBの意味するもの。 | Damejima's HARDBALL

2018年4月11日、意図的に「ホームランの世紀」をつくりだそうとした2010年代MLB。実際に起きたのは、「三振とホームランの世紀にさからったチーム」によるワールドシリーズ制覇。 | Damejima's HARDBALL


2010年代に三振急増をもたらした要因のひとつは、明らかに「ストライクゾーンの拡張」だが、それをデータとして明示する記事が、The Hardball Timesにある。
The 2017 Strike Zone | The Hardball Times (an article written by Jon Roegele, The Hardball Times)

詳しいことは記事を読んでもらえばいいが、この記事、残念なことにデータがグラフ化されていないために、「要素それぞれの関係」が把握しづらい。

なので、記事中にある「ストライクゾーンの拡大」「三振率」「四球率」の変化を「無理矢理に、ひとつのグラフに表示してみた」ところ、以下のようになった。

2010年代のストライクゾーン、三振率、四球率


この「図」をみたら、誰もが「ストライクゾーンの拡大は、三振率と四球率の変動に非常に大きな影響を与えている」などと思いこむことだろう。

だが、実は上のグラフには「ゴマカシ」がある。
以下にその「ゴマカシ手法」を説明して、「安易に数字を見ることの怖さ」の一例としようと思う。


わかる人はとっくに気づいているだろうが、上の折れ線グラフは「縦軸のつくり」が根本的におかしい。というのは、上の3本のグラフは、それぞれの縦軸の「数値の刻み」がまるで異なるデータなのだ。
上の「ゴマカシのグラフ」では、縦軸の数値の刻みを無理矢理に揃えることによって、3つのデータ」を無理矢理にひとつにまとめて図示し、「3つの数値があたかも常に連動して変化し、非常に深い関係にある」かのように、「みせかけている」のである。


ここまで書いてもまだわからない人がいることだろう。
もっと目にみえる形で説明してみる。


以下に、縦軸を共通の数値の刻みにして表現した、「ゴマカシのないグラフ」を図示した。赤い線が「三振率」、緑の線が「四球率」である。
わかるひとにはすぐ意味がわかるはずだ。三振率と四球率は、どちらも縦軸は「パーセント」だが、「縦軸の刻み」がまったく違うため、本当は「変化のレンジ」がまったく異なっていたのである。

縦軸を共通にした三振率と四球率のグラフ


図からわかることを端的に表現すれば
三振率のほうが、四球率よりはるかに鋭敏に「ストライクゾーンの変化」に反応している
のである。

同じことを、こんどは「数字」で表現しなおしてみる。
三振率の変化は「平均19.81、標準偏差1.23」、四球率の変化は「平均8.16、標準偏差0.42」であり(標準偏差は不偏分散からみたもの)、三振率の「分散」のほうが、四球率の「分散」よりずっと大きい。
平易な言葉でいいかえると、三振率の変化の「バラつき」のほうが四球率よりはるかに大きいのである。
三振率が±4%の範囲で「大きく変化している」のに対して、四球率の変化は±1%と「分散の1倍の範囲内での小規模な変化」にとどまっている。このことは、「ストライクゾーンの変化に対する三振率の変化」が有意である可能性があるのに対して、「ストライクゾーンの変化に対する四球率の変化」はむしろ単なる誤差でしかない可能性が高いことを意味する。



このブログでは、これまでずっと、
四球という現象の出現度は、他のプレー要素によってほとんど左右されることはない。
むしろ四球の出現度は、チームの強弱に関係なく、あらゆるチームにおいてほとんど一定であり、四球という現象があたかもチームの優劣を左右するかのような発想には、実はまったく意味がない。
出塁率にしても、その増減を決定づけているファクターは、そのほぼすべてが『打率』であり、四球数ではない」
という考え方を貫いてきた。

2015年2月に書いたように、たとえ「100年くらいの長期」でみても、四球というファクターは、得点や出塁率はもちろん、「他のあらゆるゲームファクターの増減とはまったく無縁」の「独立したゲーム要素」である可能性が高いのである。

今回の「2010年代のストライクゾーンの変化」による三振や四球への影響をみても、「ストライクゾーンの変化によって、三振率も四球率も、同じ割合で、平行して変化する」などと考えることが馬鹿げた錯覚に過ぎないことがわかる。

記事例:
2011年2月24日、四球数をヒット数に換算する発想はベースボールにとって意味が無い、と考えるいくつかの理由。 | Damejima's HARDBALL

2012年4月8日、チームの「総得点」と「総四球数」の相関係数を調べた程度で、「四球は得点との相関が強い」とか断言する馬鹿げた笑い話。 | Damejima's HARDBALL

2012年11月11日、いまだに「チーム総四球数とチーム総得点の間には、何の関係もない」ことの意味が理解できず、「すでに自分が死んでいること」に気づかないない人がいる、らしい。 | Damejima's HARDBALL

2013年10月9日、2013ポストシーズンにおける「待球型チーム vs 積極スイングチーム」の勝負のゆくえ。 | Damejima's HARDBALL

2015年2月8日、「MLBの得点力低下をもたらした四球・長打の過大評価」原論にむけて(3)100年もの長期でみても「四球数」は、「得点」や「出塁率」はもちろん、他のゲームファクターの増減と無縁の存在である可能性は高い。 | Damejima's HARDBALL


だが、もしこのデータを、ごまかしのないグラフではなく、「数字だけ」で見せられ、「ほら、な。ストライクゾーンが変化すると、三振も四球もこんなに変化するんだぜ?」などと主張する記事なり、ネットの書き込みなりを見たとしたら、あなたは即座にその「作為」「デタラメ」「ウソ」を見抜くことができるだろうか? というのが、この記事の本当の主旨である。

ブログ主が思うに、大半の人は「信じ込んでしまう」のではないか。

そして「ストライクゾーンが変化すんだからよぉ、三振も四球も大きく変化するに決まってんだろ!」などと信じ込む安易な人間に限って、他人に議論をふっかけたがる。本当に始末が悪いのである。

ハワイ移民150周年
No Ichiro, No watch.

Play Clean
日付表記はすべて
アメリカ現地時間です




Twitterボタン

アドレス短縮 http://bit.ly/
2020TOKYO
think different
 
  • 2014年10月31日、PARADE !
  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年6月1日、あまりにも不活性で地味な旧ヤンキースタジアム跡地利用。「スタジアム周辺の駐車場の採算悪化」は、駐車場の供給過剰と料金の高さの問題であり、観客動員の問題ではない。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年6月29日、『父親とベースボール』 (1)星一徹とケン・バーンズに学ぶ 『ベースボールにおける父親の重み』。



Categories
ブログ内検索 by Google
Google

livedoorブログ内検索
Thank you for visiting
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

free counters

by Month