September 10, 2018

年をとると、怒りっぽくなる人がいる。

想像だが、自分の体が若いときのように言うことをきいてくれなくなったり、周囲が自分のことを年寄り扱いすることで、周囲の自分への評価の低さと、まだまだ若いつもりでいる自分のセルフイメージが、実はまったく一致していないことに気づかされて、それが気にいらないのかもしれない。

とはいえ、自分の責任を認めたがらない人間、自分の衰えを認めようとしない人間には、厳しい言葉をちゃんと発しておかないと、モノゴトは真っ直ぐにならない。でないと、モノゴトは間違ったまま、曖昧なまま、固定され、歴史になってしまうのである。それは間違っている。

だから自分は、モノゴトをきちんとしておきたいから、あえて以下のような「四角い、尖った言葉」を書くことを自分に課してきた。



テニスの2018全米オープン女子決勝におけるセリーナ・ウィリアムズの行動は見苦しいものだった。
たとえ彼女が試合後の表彰式で、あまりにも礼儀をわきまえない、無礼な観客に勝者を讃えるよう訴えたとしても、だからといって、セリーナ自身の試合中の見苦しい態度を「帳消し」にできると、自分はまったく思わない。


この試合中にセリーナに行われた「3度の警告」は、
それぞれ以下の理由による。

禁止されているコーチによる試合中の選手への助言
ラケットの破壊
レフェリーへの暴言

警告それぞれに、合理的かつ明確な理由があったことは、明らかなのである。

参考
かつてテニス界のスターだったマルチナ・ナブラチロワの意見
Opinion | Martina Navratilova: What Serena Got Wrong - The New York Times

元女子プロテニス選手で現在はNBCリポーターのメアリー・カリロの意見
NBC Sports' Mary Carillo: Serena Williams Acts Like a Bully


アメリカの大手スポーツメディアのMLB担当記者たちなどは、「審判があまりにもクソ野郎だったから、自分たちのスターであるセリーナが負けた」という趣旨のツイートを試合直後からしていたが、それは根本的に間違った認識であり、審判にも、大坂なおみにも、謝罪が必要な無礼さである。


大坂なおみが全米オープンに勝った理由は単純だ。大坂なおみが、かつて女王だったセリーナを上回る、正確で、ゆるぎないプレーをしたからだ。言葉をかえれば、若い選手の理知的でクールなプレーが、ヴェテランの「慢心」に打ち勝ったといってもいい。

以下のゲームスタッツにみられるように、彼女の勝利には1点の曇りもない。大坂なおみは「勝つべくして勝った」のであり、「セリーナが審判に不利な判定を受けたから、勝つはずのない大坂なおみに勝利がころがりこんだ」のでは、まったくない。ありえない。




相手のチカラを凌駕することで合理的に得られた大坂なおみの順当な勝利のあと、不合理で不条理な罵声を浴びせる形となった会場の恥知らずな観客のブーイングには、なんの合理性もない。それどころか、それはある種のレイシズムですらある。


また、試合後のプレス・カンファレンスにおいても、数多くのハラスメントがあったことも忘れてはならない。

栄光ある勝者である大坂なおみに、自滅したセリーナ・ウィリアムズの乱れたふるまいについてコメントするよう、記者たちは執拗に求め、大坂なおみが答えに窮し涙まで流す事態となったことは、言うまでもなく「釣り竿の先にエサを垂らし、大坂なおみがうっかりセリーナに対して批判や暴言をするのを待っているような、悪質な行為」はスポーツマンシップとは完全に無縁のものだ。
また、大坂なおみの「名前」について故意に間違え、何度もゲームの内容と無縁な、愚鈍な質問を繰り返した「最前列の男性記者」などは、新たに誕生した若き女王を見下す尊大な態度、記者としてアスリートに対するリスペクトに欠けた無礼きわまりない態度を、謝罪すべきだ。


なお、今回の大坂なおみが発した sorry という単語について、sorry という単語には「残念です」という軽い意味の場合がある、などと、したり顔で解説しているハワイ大学教授(たぶん日本人)のコメントを見たが、まったく現場の空気をわかってないとしか言いようがない。

そんな辞書的な、進学塾とか高校の教員が中学生相手に受験英語を指導するような紋切り型の解説では、輝かしい勝利者であるはずの大坂なおみが「試合後に何度となく流した涙の説明がつかない」し、また、彼女が「セリーナがグランドスラムを24回勝つことをみんなが期待していたことは、わかってました」と発言したことの「辻褄」がまるであわない。

大事なのは彼女の発言が「どんな感情から発せられたか」、であって、辞書上の解釈など、どうでもいい。今回の勝利が自分の描いていた夢にはほど遠い「後味の悪い決着」をしたことで、心に傷を負った大坂なおみが、事態に一定の距離をおいて、「いやー、残念ですなぁ」などと、ババくさいコメントなど、するわけがない。

大坂なおみは「20歳」で、「当事者」なのである。

文脈と、事態の流れから判断して、sorry という単語の背景に流れている「感情」とは、「残念でした」などという大人びた態度ではなく、なんにでもすぐ謝ってしまう、なんとも「日本人的」な「ごめんなさい」の感情である。



この試合の後味の悪さをつくった原因は、セリーナ・ウィリアムズの間違ったふるまいと、ふるまいの間違いと自分自身が原因である敗北を素直に認めない態度であり、ブーイングした観客の無礼なふるまいであり、一部のメディアの尊大なふるまいだ。
実力はあるが、20歳の、まだナイーブな勝者にネガティブな感情を抱かせたことについて、衰えつつあるオバサンのセリーナ・ウィリアムズ、礼儀と程遠い行動をしておいて無反省な現場の観客、事態の全体像をまったく把握してないクセにセリーナを持ち上げてきたメディアの古い価値観にとらわれて審判批判をしたニューヨークあたりの頭の固いスポーツライターは、大坂なおみに謝罪すべきである。






米ボストン・グローブ
Rules are rules, and Serena Williams went too far this time - The Boston Globe

英タイムズ
Serena has joined the MeToo victims’ cult | Comment | The Times

ニュージーランド・ヘラルド
Peter Williams: Serena Williams' tantrum after Naomi Osaka loss was calculated, cynical and selfish - NZ Herald

英テレグラフ
Serena Williams is not just a bad loser – her dominance of tennis is over

英スカイ・スポーツ
Serena Williams' sexism claims in US Open final are 'unjustified', says Greg Rusedski | Tennis News | Sky Sports

米フェデラリスト
Why Serena Williams Would Probably Have Lost The U.S. Open Anyway


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