October 04, 2018
2018シーズンのMLB総観客動員数が、2004年以来はじめて「7000万人」を割り込んだ。
だが、このことはシーズン当初から予想されてはいた。というのも、シーズン最初の2ヶ月に天候があまりに悪すぎたことが、年間観客動員数に響くことが当時から懸念されていたからだ。
ただ、2018年5月にUSA Todayに掲載されたAP通信の記事は、観客動員数の減少がなにも天候のせいばかりでなく、「三振の激増も原因なのではないか」と、コミッショナーロブ・マンフレッドに疑念をぶつけている。
Attendance drop, strikeout rise has MLB concerned
マンフレッドは「シーズンは始まったばかり。あわててもしょうがない」と、例によって毒にも薬にもならない返事でお茶を濁したのだが、シーズンが終わってみると、観客動員数はAP通信が懸念したとおり、原因が「三振」かどうかはともかく、2018年は最も観客動員数が劇的に落ち込んだシーズンのひとつになった。
いち早く「MLBの三振激増」に気づいたブログ主の立場からいうと、USA Todayのようなマス・メディアが「三振増加のネガティブな影響」に着目したのはなかなか面白いことではあるのだが、少し仔細に点検してみると、ちょっと「違う話」がみえてくる。
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まず、どのくらい観客数が減ると「大幅な減少」といえるかを決めなくてはならない。
もちろん明確な基準などない。だが、たとえドジャースだろうと、どこだろうと、「20万人くらいの増減」は、どんな人気球団でもあることを考えると「1チームあたり、20万人」の増減では、基準値=マーカーにはならない。
今年は82試合ホームゲームを行った例外的なチームがあったが、通常のMLBのホームゲームは「81試合」なので、「1試合につき5000人観客が減少」すると、「年間約40万人の観客が減少」することになる。
この20年くらいでみると、この「40万人の減少」は、出現しても多くて1年に3チームほどが上限で、まったく出現しないシーズンも、数シーズンある。
だから「1チームあたり40万人」という数字なら、マーカーになりうる。
そこで、2000年以降の「40万人の減少チーム」を調べてみると、2000年以降に、8球団とか9球団がこの「40万人以上の観客減少」を同時に経験したシーズンが3シーズンあることがわかる。
「2002年、2009年、2018年」だ。
いいかえると、2000年以降のMLBで「観客動員数が激減したシーズン」は、実は2018年だけではなく、「3シーズン」あった。
その3シーズンには、ある「共通点」がある。
同じシーズンに8球団から9球団が、同時に大量の観客を失うという現象だ。
いいかえると、観客激減シーズンの原因は、1チームが一気に500万人もの観客を失うというような1点集中の現象ではなく、多くのチームが「一斉に」観客数を失う横並びの現象だ、ということだ。
こんどは、それら「3シーズン」において、観客数が激減したチーム名を列挙してみる。「不思議な現象」があることがわかる。
1シーズンに40万人以上の観客を減らしたチームのリスト
2002年 MIL PIT CLE TEX FLA COL DET BAL HOU
2009年 NYM DET NYY TOR SDP WSN CLE ARI
2018年 TOR MIA KCR DET BAL PIT TEX
左から「観客減少数」が多い順
太字は上のリストに複数回登場するチーム
「不思議な現象」とは、以下のような話だ。
たった3つしかないリストに、3回デトロイトが登場する。
PIT、CLE、TEX、MIA(=FLA)、BALの5球団が、2度ずつ登場する。
デトロイトの2000年以降の観客動員数を図示してみる。
次に、最初に挙げたMLBの図と、デトロイトの図を重ねてみる。
いやー。
作ってみて、ちょっと鳥肌たった(笑)
もちろん、30球団すべてを図示してみないと最終的に断言はできないが、上で指摘したように「2002、2009、2018シーズンすべてにおける観客数激減が、デトロイトタイガースのみにしか見られない現象」であることから、まず間違いなく、以下のことが言える。
デトロイト・タイガースの観客動員数というのは非常に特殊で、MLB全体の観客動員数の動向(特に減少する場合)を最も如実に反映する「鏡」であり、マーカーである。
もちろん、言うまでもないが、デトロイトが代表格であるにしても、2度登場する「PIT、CLE、TEX、MIA、BALの5球団」にも、おそらく「デトロイトに似た傾向」が見られるはずだ。
では、なぜデトロイトを代表格として、「特定の球団グループの観客動員数と、MLB全体の観客動員数とが密接に連動する傾向」がみられるのか。そして、それは「MLB全体の観客動員数の激減を直接左右するような要因」なのか。
そのことは「次の記事」に譲る。
少なくともここで言えることのひとつは、LAD、NYY、BOSなどの「大都市の人気球団の観客動員数の動向」と「MLB全体の観客動員数の増減」とは、あまり連動しない、ということだ。(ただし2009年の激減にはNYYが関係している)
「人気球団は、MLB全体の観客動員数と関係なく、人気が維持できる」という見方も、もちろんできるが、それは見方を変えれば「人気球団の観客動員はすでに天井、上限値であって、もうこれ以上なにをやろうと観客動員の増加が見込めない」という意味でもある。
また、MLB全体の観客動員数を7400万人前後に押し上げたようなパワーは、実は「人気球団以外の球団」をどれだけ底上げできるかに常にかかっている、ということもハッキリした。
この件については記事をあらためてさらに考える。