October 07, 2018
CLE対HOUのALDS Game 2がたいへん面白かった。
あとからデータだけを見た人は、12三振を奪ったヒューストン先発ゲリット・コールのピッチングのほうが圧倒的で、6安打を打たれたクリーブランドのカラスコはヨレヨレだった、と思うかもしれない。
だが、実際の「5回までの展開」はまったく異なる。
例えば、5回までの投球数。
毎回のようにシングルヒットを打たれるカラスコのほうが、むしろ三振をバカみたいにとったゲリット・コールよりたしか「15球ほど少ない」。
これは、ストライクを積極的に投げて三振をとろうとするコールと対照的に、この日のカラスコは打ち気にはやるヒューストンに、ボール球から入って、ヒットにできない球を振らせ、結果的に球数をセーブするピッチングができていたからだ。(ちなみに、カラスコは2017年に226三振を記録しているように、三振をとれないピッチャーではまったくない。なので、球威がないからこういう投球をしたわけではない)
5回までの四球数が両軍ゼロだったことをみても、同じことがいえる。
三振の山を築いたクリーブランドが四球どころではなかったのに対し、打ち気にはやるヒューストンが早いカウントからボール球をひっかけてカラスコを助けたために、結果的に、両方のチームに「四球を選ぶ余裕」がなかった。
ゲリット・コールが相手をチカラでねじふせたて圧倒したのに対して、カラスコは相手のはやる気持ちを利用したのである。
5回が終わっても、ヒューストンは、毎回のようにシングルヒットが出るものの、「ランナーを貯める場面」がまったくなく、長打も出ないまま、無得点に終わっていた。
他方、クリーブランドは、たった2安打で三振の山。だが3回、フランシスコ・リンドアが偶発的なソロホームランを打ち、この1点のリードを死守する。
投球数は、カラスコが60ちょっとで、コールが80球に近づきつつあり、5回終了時点では、圧巻のピッチングをしたゲリット・コールがむしろ先に降板し、ヒットを打たれ続けたカラスコが無失点のまま7回まで投げてしまうという逆転現象が起こる雰囲気にあった。
この日のカラスコのピッチングが最も効果的だったのは、次のシーン。
3回表に超劣勢のクリーブランドが1点勝ち越して、その裏にすぐヒューストンは1死1、3塁と、絶好のチャンスを作った。打席には、今年膝痛に悩まされたホセ・アルテューべ。
ここは外野フライでも、ボテボテの内野ゴロでも、同点になるはずの場面だが、アルテューべは最初の2つのボール球に手を出して追い込まれ、4球目のチェンジアップを引っかけてサードゴロ、ダブルプレーと最悪の展開。ヒューストンにとって、試合の流れは一気に悪くなった。
初球 Slider Foul
2球目 Changeup Foul Bant
3球目 4seam Ball
4球目 Changeup 併殺
ソース:Indians vs. Astros Play By Play | 10/07/18
流れが変わるのは、6回裏だ。
先頭アルテューべがまたもやアウトコースの変化球に手を出し続けた挙げ句、サード前にゆるいゴロ。これが内野安打になって、打者はアレックス・ブレグマン。
ここまでのパターンなら、ここでブレグマンがカラスコのボール球に我慢ができずに手を出して併殺とか、ランナーが入れ替わるだけの凡打に終わるところだっただろうが、ブレグマンは最初の2球のボールを見逃したのである。この「見逃し」が試合を変えた。
初球 2seam Ball
2球目 changeup Ball
3球目 4seam Called Strike
4球目 Slider Foul
5球目 Slider Ball
6球目 Slider Foul
7球目 4seam walk
このブレグマンの打席を少し詳しく見てみる。
初球。
右打者ブレグマンのインコースに2シーム。あとの球がすべてアウトコースだから、外で勝負することを最初から決めていて、初球だけ故意にインコースをえぐったことは明らか。
2球目。
初球が見せ球だったから、ここは当然ながら外の球。この日のカラスコの全体像からいえば、このチェンジアップは、ある意味で勝負球。3回にアルテューべを併殺打に仕留めたのも、この球。もしブレグマンがひっかけて内野ゴロ、併殺なら、この日のヒューストンの勝ちはなかった。
だが、ブレグマンは振らない。ブレグマン、かなり優勢。
3球目。
無死1塁で、カウント2-0。カラスコはどうしてもストライクが欲しい。高めに4シーム。ブレグマンは自重。この打席の7球のうち、ハッキリとしたストライクはこの1球のみ。
4球目〜6球目
カウント2-1から、3球つづけて外のスライダー。カラスコにしてみれば、5球目か6球目をひっかけて内野ゴロがベストだったが、そうはならなかった。フルカウントが続く。
7球目。
歩かせていい場面ではない。だがハッキリしたボール球が行って、フォアボール。
次打者グリエルがライナーを打ったのを見て、フランコーナは、カラスコをミラーにスイッチする。
だが、それこそがヒューストンにとって「最高の結果」ではあった。「打ち崩せそうなのに、打ち崩せないカラスコ」を、まだ100球いってもいないのに引きずり下せたからだ。ブレグマンの四球の功績である。ブレグマンは7回にもこの試合を決定づけるソロホームランを打っている。
マス・メディアはとかく2点タイムリーを打ったゴンザレスに注目するだろうが、実際にゲームを動かしたのはブレグマンだ。
試合後、なぜカラスコをあの場面でかえたのか、テリー・フランコーナに質問が殺到した。フランコーナは意外にも「4回とか、もっと早いイニングでかえようか、とも思っていた」らしい。
フランコーナにとって、この日のカラスコのピッチングが「意図的なボール球で、かわすピッチング」ではなく、単に「ハラハラするピッチング」に見えていたとしたら、それは監督としてどうなんだ、という気がする。
あとからデータだけを見た人は、12三振を奪ったヒューストン先発ゲリット・コールのピッチングのほうが圧倒的で、6安打を打たれたクリーブランドのカラスコはヨレヨレだった、と思うかもしれない。
だが、実際の「5回までの展開」はまったく異なる。
例えば、5回までの投球数。
毎回のようにシングルヒットを打たれるカラスコのほうが、むしろ三振をバカみたいにとったゲリット・コールよりたしか「15球ほど少ない」。
これは、ストライクを積極的に投げて三振をとろうとするコールと対照的に、この日のカラスコは打ち気にはやるヒューストンに、ボール球から入って、ヒットにできない球を振らせ、結果的に球数をセーブするピッチングができていたからだ。(ちなみに、カラスコは2017年に226三振を記録しているように、三振をとれないピッチャーではまったくない。なので、球威がないからこういう投球をしたわけではない)
5回までの四球数が両軍ゼロだったことをみても、同じことがいえる。
三振の山を築いたクリーブランドが四球どころではなかったのに対し、打ち気にはやるヒューストンが早いカウントからボール球をひっかけてカラスコを助けたために、結果的に、両方のチームに「四球を選ぶ余裕」がなかった。
ゲリット・コールが相手をチカラでねじふせたて圧倒したのに対して、カラスコは相手のはやる気持ちを利用したのである。
5回が終わっても、ヒューストンは、毎回のようにシングルヒットが出るものの、「ランナーを貯める場面」がまったくなく、長打も出ないまま、無得点に終わっていた。
他方、クリーブランドは、たった2安打で三振の山。だが3回、フランシスコ・リンドアが偶発的なソロホームランを打ち、この1点のリードを死守する。
投球数は、カラスコが60ちょっとで、コールが80球に近づきつつあり、5回終了時点では、圧巻のピッチングをしたゲリット・コールがむしろ先に降板し、ヒットを打たれ続けたカラスコが無失点のまま7回まで投げてしまうという逆転現象が起こる雰囲気にあった。
この日のカラスコのピッチングが最も効果的だったのは、次のシーン。
3回表に超劣勢のクリーブランドが1点勝ち越して、その裏にすぐヒューストンは1死1、3塁と、絶好のチャンスを作った。打席には、今年膝痛に悩まされたホセ・アルテューべ。
ここは外野フライでも、ボテボテの内野ゴロでも、同点になるはずの場面だが、アルテューべは最初の2つのボール球に手を出して追い込まれ、4球目のチェンジアップを引っかけてサードゴロ、ダブルプレーと最悪の展開。ヒューストンにとって、試合の流れは一気に悪くなった。
初球 Slider Foul
2球目 Changeup Foul Bant
3球目 4seam Ball
4球目 Changeup 併殺
ソース:Indians vs. Astros Play By Play | 10/07/18
流れが変わるのは、6回裏だ。
先頭アルテューべがまたもやアウトコースの変化球に手を出し続けた挙げ句、サード前にゆるいゴロ。これが内野安打になって、打者はアレックス・ブレグマン。
ここまでのパターンなら、ここでブレグマンがカラスコのボール球に我慢ができずに手を出して併殺とか、ランナーが入れ替わるだけの凡打に終わるところだっただろうが、ブレグマンは最初の2球のボールを見逃したのである。この「見逃し」が試合を変えた。
初球 2seam Ball
2球目 changeup Ball
3球目 4seam Called Strike
4球目 Slider Foul
5球目 Slider Ball
6球目 Slider Foul
7球目 4seam walk
カラスコは、ブレグマンに最初「2つボール」を投げてるわけね。無死1塁であるにもかかわらず、ね。てことは、クリーブランドバッテリーにブレグマンが振ってくれるとイメージがあったと思うわけ。
— damejima (@damejima) 2018年10月6日
でも、ブレグマンが振らなかった。これで計算が狂った。フランコーナにも焦りが出た。
このブレグマンの打席を少し詳しく見てみる。
初球。
右打者ブレグマンのインコースに2シーム。あとの球がすべてアウトコースだから、外で勝負することを最初から決めていて、初球だけ故意にインコースをえぐったことは明らか。
2球目。
初球が見せ球だったから、ここは当然ながら外の球。この日のカラスコの全体像からいえば、このチェンジアップは、ある意味で勝負球。3回にアルテューべを併殺打に仕留めたのも、この球。もしブレグマンがひっかけて内野ゴロ、併殺なら、この日のヒューストンの勝ちはなかった。
だが、ブレグマンは振らない。ブレグマン、かなり優勢。
3球目。
無死1塁で、カウント2-0。カラスコはどうしてもストライクが欲しい。高めに4シーム。ブレグマンは自重。この打席の7球のうち、ハッキリとしたストライクはこの1球のみ。
4球目〜6球目
カウント2-1から、3球つづけて外のスライダー。カラスコにしてみれば、5球目か6球目をひっかけて内野ゴロがベストだったが、そうはならなかった。フルカウントが続く。
7球目。
歩かせていい場面ではない。だがハッキリしたボール球が行って、フォアボール。
次打者グリエルがライナーを打ったのを見て、フランコーナは、カラスコをミラーにスイッチする。
だが、それこそがヒューストンにとって「最高の結果」ではあった。「打ち崩せそうなのに、打ち崩せないカラスコ」を、まだ100球いってもいないのに引きずり下せたからだ。ブレグマンの四球の功績である。ブレグマンは7回にもこの試合を決定づけるソロホームランを打っている。
マス・メディアはとかく2点タイムリーを打ったゴンザレスに注目するだろうが、実際にゲームを動かしたのはブレグマンだ。
試合後、なぜカラスコをあの場面でかえたのか、テリー・フランコーナに質問が殺到した。フランコーナは意外にも「4回とか、もっと早いイニングでかえようか、とも思っていた」らしい。
フランコーナにとって、この日のカラスコのピッチングが「意図的なボール球で、かわすピッチング」ではなく、単に「ハラハラするピッチング」に見えていたとしたら、それは監督としてどうなんだ、という気がする。