February 12, 2020
2018年11月に以下のツイートをもとに記事を書いた。
また、同じ2018年10月には「チームのチカラ」について書いた。
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そもそもチームとは、どんな「存在」だろう。
そもそも何を目的に存在しているのか。
チームは「ひとつの生き物」と、よくいわれる。チームが、単なる「個人の能力の合算」であるなら、集合体としてのチームが存在する意味がない。
それは、言い換えれば、チームには、「選手個人の能力とは別種のチカラ」が備わっていなければならない、という意味になる。
だが、その「チームに求められるチカラ」は、これまで明確な言葉で語られてきたか。まったくそうは思えない。むしろ、曖昧な勘だけに基づいた、曖昧な世間話だけが幅をきかせてきたとしか思えない。
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その曖昧な話を、この際、ハッキリさせていきたい。
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まず、「チームの仕事」とは、何か。
野球というスポーツではよく、「ポストシーズンの戦い方は、レギュラーシーズンと同じではいけない」といわれるが、この点についても、これまでは具体性を欠く経験論しか語られてこなかったし、多くの指導者がレギュラーシーズンと同じ戦い方をして敗れ去ってきた。
レギュラーシーズンと同じではダメなら、では、どうあるべきなのか。
それについても(多少の極論を覚悟して)自分流に定義しておく。
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このように「チーム」「ポストシーズン」という2つを、「プラスアルファ」という単語でくくってみると、かつてデトロイトでジム・リーランドが、テキサスでロン・ワシントンが、ロサンゼルスでデーブ・ロバーツが、ワールドシリーズ優勝に手が届かなかったことに一定の説明がつく。
選手層の厚さにはまったく問題なかったが、
「チームとしてのプラスアルファを生み出す能力」が足りなかったのである。
プラスアルファの源泉がないままワールドシリーズに臨んだ彼らは、ロン・ワシントンやデーブ・ロバーツの継投ミスに代表される「マイナスアルファ」を表面化させ、大一番に負けた。
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では、チームが「プラスアルファを生み出せる場所」であるためには、何が必要なのか。言いかえると、チームがプラスアルファを生み出せない場所になっているとしたら、原因はどこにあるか。
2010年代後半の金満ドジャースを例にみてみる。
以下に近年のドジャースが「2012年以降あたりに獲得した有名選手と、その引退年度」を、引退年度順に示してみた。
まったく酷いものだ。よくも、まぁ、「引退間際の有名選手」をこれだけかき集めたものだ。どれだけ多くの選手がキャリアの最後にドジャースから大金をせしめたことか。感心するしかない。
だが、このリストすら、「つぎはぎドジャースのすべて」ではない。他にも、シーズンが終わればいなくなるのがわかりきっている選手、マニー・マチャドやジョシュ・レディック、ダルビッシュなどに手を出し、ヤシエル・プイグなどのキューバ系に手を焼き、セイバー系のファーハン・ザイディをGMにしたかと思えば、あっという間にいなくなり、こんどはムーキー・ベッツ獲得に必死になっている。
ヤンキースと同じ、この金満チームがどれほど「つぎはぎだらけの、統一性のない、趣味の悪い豪邸」か、よくわかる。
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少なくとも言えることは、「つぎはぎだらけの家」でプラスアルファは生まれない、ということだ。
たとえば、ヒューストンがワールドシリーズを勝てたのはサイン盗みをしていたからだ、という説明は当たっていない。それだけが「理由」ではないからだ。
彼らのプラスアルファの一部がたとえ「インチキなサイン盗み」であったとしても、彼らには少なくとも、ドラフトの成功とその育成の成功、トレードの成功によって、チームの土台となる選手層の厚さと一体感があった。
ドジャースがワールドシリーズを勝てないのはサイン盗みされていたせいだ、という説明も当たっていない。彼らがポストシーズンを最後まで勝ち抜けないのは、それだけが「理由」ではない。
これほど右往左往し続けているドジャースがポストシーズンに毎年顔を出せるのは、単に「カネがあるから」でしかない。「つぎはぎだらけ」の家に住む成金の彼らには、「育ちの良さ」と「知恵」、つまり、「チームとしてのプラスアルファを常に生み出せる体質」がない。カネだけでワールドシリーズが買えるなら、カンザスシティが勝てたりはしない。
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もちろん、この程度の言葉を連ねたからといって、ポストシーズンの真髄を垣間見ることができるわけはないのだが、少なくとも「チームのチカラ」の真髄にちょっとずつ近づいて言語化していく上で、自分として大事な最初の一歩と考える。
当たり前なのだが、野球に必要なチカラが、「個人のチカラ」と「チームのチカラ」の2つだということに、あらためて気づかされる。
— damejima (@damejima) 2018年10月28日
そして、データ、データと、もてはやすクセに、「チームのチカラ」の測定はほとんどされてないことに気づいた。たいていのデータは「個人のデータ」なのである。
野球ファンにとって、「データ」といえば、「個人データ」、つまり、選手のプレーを分析したデータに過ぎず、それはゲームを決めているすべての要素ではまったくない。
引用元:2018年11月3日、現状でいうデータとは「個人のチカラ」であり、「チームのチカラ」ではない。 〜 「チームのチカラ論」 序説 | Damejima's HARDBALL
また、同じ2018年10月には「チームのチカラ」について書いた。
いま思うに、ジム・リーランド時代のデトロイトがシャーザー、バーランダー、ポーセロと、3人ものサイ・ヤング級投手を揃え、ミゲル・カブレラやビクター・マルチネスなど強打者をそろえても、ワールドシリーズを勝てなかったのは、たとえ個人それぞれに類まれな才能があっても、「チームの強さ」がそれを支えなければ、ワールドシリーズを勝てないという、単純な理屈だった。
2018年10月10日、2018年MLBの「チーム三振数」概況 〜 もはや時間の問題の「1600三振」。 | Damejima's HARDBALL
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そもそもチームとは、どんな「存在」だろう。
そもそも何を目的に存在しているのか。
チームは「ひとつの生き物」と、よくいわれる。チームが、単なる「個人の能力の合算」であるなら、集合体としてのチームが存在する意味がない。
それは、言い換えれば、チームには、「選手個人の能力とは別種のチカラ」が備わっていなければならない、という意味になる。
だが、その「チームに求められるチカラ」は、これまで明確な言葉で語られてきたか。まったくそうは思えない。むしろ、曖昧な勘だけに基づいた、曖昧な世間話だけが幅をきかせてきたとしか思えない。
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その曖昧な話を、この際、ハッキリさせていきたい。
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まず、「チームの仕事」とは、何か。
チームを、選手個人それぞれがもつ能力値の合算を超え、
「プラスアルファ」を生みだせる組織にすること、だ。
野球というスポーツではよく、「ポストシーズンの戦い方は、レギュラーシーズンと同じではいけない」といわれるが、この点についても、これまでは具体性を欠く経験論しか語られてこなかったし、多くの指導者がレギュラーシーズンと同じ戦い方をして敗れ去ってきた。
レギュラーシーズンと同じではダメなら、では、どうあるべきなのか。
それについても(多少の極論を覚悟して)自分流に定義しておく。
レギュラーシーズンを「選手それぞれの能力の優劣によって行われる戦い」であるとするなら、ポストシーズンは、チームが創出する「プラスアルファのチカラ」の優劣が問われる戦いである。
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このように「チーム」「ポストシーズン」という2つを、「プラスアルファ」という単語でくくってみると、かつてデトロイトでジム・リーランドが、テキサスでロン・ワシントンが、ロサンゼルスでデーブ・ロバーツが、ワールドシリーズ優勝に手が届かなかったことに一定の説明がつく。
選手層の厚さにはまったく問題なかったが、
「チームとしてのプラスアルファを生み出す能力」が足りなかったのである。
プラスアルファの源泉がないままワールドシリーズに臨んだ彼らは、ロン・ワシントンやデーブ・ロバーツの継投ミスに代表される「マイナスアルファ」を表面化させ、大一番に負けた。
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では、チームが「プラスアルファを生み出せる場所」であるためには、何が必要なのか。言いかえると、チームがプラスアルファを生み出せない場所になっているとしたら、原因はどこにあるか。
2010年代後半の金満ドジャースを例にみてみる。
以下に近年のドジャースが「2012年以降あたりに獲得した有名選手と、その引退年度」を、引退年度順に示してみた。
ジョシュ・ベケット(2014年引退)
ダン・ヘイレン(2015年引退)
カール・クロフォード(2016年引退)
スコット・カズミアー(2016年引退)
アレックス・ゲレーロ(2016年自由契約)
エイドリアン・ゴンザレス(2018年引退)
ブランドン・マッカーシー(2018年引退)
チェイス・アトリー(2018年引退)
ハンリー・ラミレス(2019年時点で実質引退)
ジミー・ロリンズ(2019年引退)
マット・ケンプ(2019年実質引退)
カーティス・グランダーソン(2020年引退)
まったく酷いものだ。よくも、まぁ、「引退間際の有名選手」をこれだけかき集めたものだ。どれだけ多くの選手がキャリアの最後にドジャースから大金をせしめたことか。感心するしかない。
だが、このリストすら、「つぎはぎドジャースのすべて」ではない。他にも、シーズンが終わればいなくなるのがわかりきっている選手、マニー・マチャドやジョシュ・レディック、ダルビッシュなどに手を出し、ヤシエル・プイグなどのキューバ系に手を焼き、セイバー系のファーハン・ザイディをGMにしたかと思えば、あっという間にいなくなり、こんどはムーキー・ベッツ獲得に必死になっている。
ヤンキースと同じ、この金満チームがどれほど「つぎはぎだらけの、統一性のない、趣味の悪い豪邸」か、よくわかる。
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少なくとも言えることは、「つぎはぎだらけの家」でプラスアルファは生まれない、ということだ。
たとえば、ヒューストンがワールドシリーズを勝てたのはサイン盗みをしていたからだ、という説明は当たっていない。それだけが「理由」ではないからだ。
彼らのプラスアルファの一部がたとえ「インチキなサイン盗み」であったとしても、彼らには少なくとも、ドラフトの成功とその育成の成功、トレードの成功によって、チームの土台となる選手層の厚さと一体感があった。
ドジャースがワールドシリーズを勝てないのはサイン盗みされていたせいだ、という説明も当たっていない。彼らがポストシーズンを最後まで勝ち抜けないのは、それだけが「理由」ではない。
これほど右往左往し続けているドジャースがポストシーズンに毎年顔を出せるのは、単に「カネがあるから」でしかない。「つぎはぎだらけ」の家に住む成金の彼らには、「育ちの良さ」と「知恵」、つまり、「チームとしてのプラスアルファを常に生み出せる体質」がない。カネだけでワールドシリーズが買えるなら、カンザスシティが勝てたりはしない。
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もちろん、この程度の言葉を連ねたからといって、ポストシーズンの真髄を垣間見ることができるわけはないのだが、少なくとも「チームのチカラ」の真髄にちょっとずつ近づいて言語化していく上で、自分として大事な最初の一歩と考える。