October 2009

October 31, 2009

Woodsという、カナダのアウトドア用品メーカーがある。(宣伝ではない)
木をそのままデザインした、素朴だが品のいいデザインのロゴマークが昔から好きで、独特の発色のいいウェアや、カモフラージュ柄のバックなどを愛用してきた。Woodsは、カナダのオンタリオ州オタワで1885年創業で、アムンゼンの南極探検に資金や道具の提供するなど、極地を旅する冒険家のサポートもして、100数十年の歴史と信用を築いてきた。

このメーカーのジャケットに、自分は見たことがないが、襟にコヨーテの皮があしらわれたものがあるらしい。

コヨーテは、日本では動物園にしかいない生き物で、なじみがない。北アメリカに生息するイヌ科の動物で、イヌに似ているオオカミの近親。「歌う犬」を意味するアステカの言葉からその名がついた。「歌う」とは「遠吠えする」という意味。遠吠えは、釣りでいう朝夕の「マズメどき」に行われ、一頭が吠えはじめるとやがて他のコヨーテも加わるという。


カナダの国立公園で19歳のカナダ・オンタリオ州出身のシンガーソングライター、テイラー・ミッチェルが、ひとりで散策中、2頭のコヨーテに襲われて亡くなった。悲鳴を聞きつけた通りすがりの人の通報で、彼女はすぐ病院に運び込まれたが、10月28日朝3時30分に亡くなった。森林警備隊は2匹のコヨーテのうち1匹を撃ち殺したが、もう1匹は見つかっていない。
コヨーテは、冬場には弱ったシカを襲うが、人間を襲うことは非常に珍しいらしい。ただ、警察は襲撃したコヨーテが「非常に攻撃的だった」と話す。
19歳の彼女はちょうど10月23日から11月7日にかけてツアー中だったようで、彼女のサイトに掲げられたツアー・スケジュールが非常に哀しみを誘う。ツアー中で忙しい彼女がなぜ散策に出かけたのか記事には書かれていないが、おそらくツアーで疲れた自分を自然の中でリフレッシュしたかったのだろう。
彼女のサイトにはいま世界中からアクセスがあり、北米だけでなく世界中から追悼の言葉が書き込まれ続けている。
Coyotes kill female hiker in Nova Scotia - Canada - Canoe.ca

テイラー・ミッチェルのサイト
Taylor Mitchell :: So sad...

母エミリー・ミッチェルからの言葉
Taylor Mitchell :: From Taylor's Mom

Tragic, fatal coyote attack the exception, not the rule | Editorial | Comment | London Free Press


娘を失ったテイラーさんの母エミリーは、哀しみを堪えつつ、娘を襲ったコヨーテの駆除に反対してこう語っている。

“When the decision had been made to kill the pack of coyotes, I clearly heard Taylor’s voice say, ‘Please don’t, this is their space,”’ Mitchell said.“She wouldn’t have wanted their demise, especially as a result of her own.” She described her daughter as “a seasoned naturalist” who was experienced at wilderness camping.(中略)“She loved the woods and had a deep affinity for their beauty and serenity,” Mitchell said.
「コヨーテの群れを殺す決定がなされたと聞いて私は、『そんなことしないで。ここは彼らの場所よ』と娘が言うのがはっきりと聞こえました。」とミッチェルの母は言う。「もし彼女が生きていたら、自らの死の結果としてコヨーテが駆除されることなど望まないでしょう。」
彼女は娘を、荒野でのキャンプで経験を積んだ「熟練したナチュラリスト」と表現した。「彼女は森を愛していて、森の美しさ、平穏さに、深い親近感を持っていました。」
Coyote victim's mom thanks fans - Canada - Canoe.ca

母エミリーさんはWe take a calculated risk when spending time in nature's fold.(自然の深い懐で過ごすときはリスクをきちんと計算するものだ)とも言っている。彼女の言う「娘の荒野でのキャンプ経験」とは、おそらくコヨーテや熊も出る可能性のある場所でのキャンプ経験、という意味だろうし、日本で考えるよりもずっと高いリスクとキャンパーのスキルが想定されている。
日本ではキャンプというと、ほとんどの人は昆虫しかいない人里のキャンプ場でのバーベキュー程度をイメージする。日本でも、テントの真横に鹿が何頭もやってくるようなキャンプサイトもあることは、彼らは知らないし、夜通し火を焚いていなければ危険な荒野で野営する人々の存在もほとんど知られていない。日本ではコヨーテのいる荒野でのキャンプなど想像できない。
リスクがあるから近寄らないのでは、奥深い自然は体験できない。波は危険だが、乗ることができないのではサーファーになれない。北米で想定する自然は、日本で想定する穏やかな自然とは違い、よりワイルドなものになる。

日本とアメリカの野球の違いは、日本の守られてはいるが自然さのかけらも無いキャンプと、コヨーテの森でキャンプしてワイルドライフの一端を体験する北米キャンプの違いのような部分もある。
コネ契約で不自然にロスターの座を守られたMLBキャリアなど、星も見えない都会のマンションの屋上でやっている安っぽいバーベキューのようなもので、北米のウィルダネスどころか、日本レベルのキャンプ体験にすらなっていない。まして、メジャーのワイルドなベースボール環境で本物の体験をしたといえるわけがない。
リスクをおかす覚悟とそれを計算できる勇気やスキルがなければ、熟練したキャンパーですら命を落とすこともあるコヨーテの森にそもそも来るべきではない。



カナダといえば、シアトルの投手エリック・ベダードをすぐに思い出す。このコヨーテの事件を聞いたときもすぐに思い出した。エリックも、コヨーテの森で亡くなったテイラー・ミッチェルも、五大湖のほとりのオンタリオ州出身である。
釣りを趣味にしていることもよく知られているエリックだが、カナダ出身なだけに、オンタリオで創設されたアウトドアメーカーのWoodsを知らないわけがなく、アウトドアに出かけるときのために、おそらくウェアのひとつやふたつ、Woods製品を持って出かけているに違いない。

エリックは、釣りという共通の趣味があることもあって、同じ投手のウオッシュバーンと仲がよかったわけだが、エリックの出身地オンタリオはカナダ側で五大湖に接し、またウオッシュバーンの出身地ウィスコンシン州はアメリカ側で五大湖に接しているいくつかの州のひとつであり、2人は生まれた場所も近い。2人が仲がいいのについては、共通の趣味だけでなく、きっと生まれ育った環境が似ているせいもあるのだろう。

2人はよく連れ立って釣りに行っていたが、釣りに詳しい人はわかると思うが、北米の釣りのスタイルは、日本での伝統的なエサ釣りとはまったくスタイルが違う。
ウオッシュバーンは狩りも趣味にしているようだが、大掛かりな釣りの場合、釣りというより、むしろハンティングに近い。ターポンなどの大型魚をターゲットにするなら、ガイドを雇い、エンジンつきのボートをチャーターして、あちらのポイント、こちらのポイントと大移動しながら、大魚を狩りしていくことになる。
エリックとウオッシュバーンの2人も、オフに五大湖のどこかでボートを出して釣りを楽しみ、夜は冷えたビールでもしこたま飲んでジョークでも言い合ったに違いない。

そもそもオンタリオと、ウィスコンシンには風土的な共通点がいくつかある。五大湖に接し、コヨーテが住む自然があり、北米のネイティブ・アメリカンであるインディアンたちの「保留地」がある。
コヨーテは、インディアンにとってはただの動物ではなく、象徴的な動物のひとつであり、知性、賢さ、ずる賢さ、ペテンなど、さまざまな象徴的な意味がある。Coyote Tracks(コヨーテの足跡)はインディアン的なデザインモチーフのひとつでもある。


これら北米の土地が、はたしてテイラー・ミッチェルのいう「コヨーテの場所」なのか、インディアンと呼ばれ、いまはカジノで稼いでいる人々の土地なのかは、ブログごときが短文で軽々しく言及していい話題ではない。善悪だけで測ることのできることなど、たかがしれている。
人間はコヨーテの皮を剥いでジャケットの襟にしているが、このリアル・ファーを衣料にすることに対しても、日本でもいろいろと議論したがる人たちがいる。だが、少なくとも、人間は太古の昔から獣の皮を衣料にしてきたのは間違いない。
コヨーテは、普段は人間を襲うことはないようだ。ヒトを見れば逃げ、その性格は英語でも「shy シャイ」と表現されている。ブログ主はロードランナーを追いかけまわすコヨーテのルーニー・チューンを見て育ったが、そういえばあのコヨーテもそこそこシャイな性格だった。
だがシャイな彼らでも、森で人間に前触れなくばったり出くわせば、びっくりして襲うこともある。熊などと同じである。オンタリオでも、ウィスコンシンでも、コヨーテと人間との共存問題をめぐる議論を扱ったウェブサイトがある。

ワールドシリーズの映像をみていればわかるように、10月ともなれば北米の夜はとても冷える。ワールドシリーズが終われば、冬はもうすぐそこまで忍び寄って来ているわけで、コヨーテはワールドシリーズになど、かまってはいられない。北海道よりも厳しい冬の支度をせねばならないのである。
だからこそ冬の到来を前にした野生動物は気が立っている。


コヨーテのいる自然を愛し歌を歌う人が、歌う犬、コヨーテに襲われた。
あるハワイの海を愛するサーファーの少女は、サメに腕を食いちぎられ片腕になったが、サーフィンを引退したりはしなかった。19歳で人生を閉じたテイラー・ミッチェルも、もし今回のケガで命を落とさなかったなら、ケガが癒えた後、ふたたびコヨーテのいる森に散策に行ったことだろう。

少なくともいえるのは、
テイラー・ミッチェルも、彼女の母も、そしてベダードやウオッシュバーンも、
「自分たちの暮らしのすぐそばに森があり、そこにはコヨーテが住んでいる」と意識しながら、生まれ、育ち、歌を歌い、釣りをし、暮らしてきた、ということだ。

コヨーテの森は、アメリカ文化の精神的な源泉のひとつである。インディアン・カルチャーだけでなく、アメリカのカントリーミュージック、釣りや狩猟といったレジャー、フットボールなどの激しいアメリカンスポーツなど、さまざまな文化のバックグラウンドやシンボルになっている。

October 29, 2009

素晴らしい。
クリフ・リーという大輪が秋の大舞台に咲いた。

無四球。ヤンキースのクリンアップから7三振を奪い、合計10奪三振。しかも、122球、完投
まる左腕のロイ・ハラデイである。

2008年サイ・ヤング賞投手の苦労人クリフ・リーは、2009年サイ・ヤング賞候補フェリックス・ヘルナンデスに並ぶレギュラーシーズン19勝(ア・リーグ最多勝タイ)で、ア・リーグ優勝決定戦でも、あのLAAですらまったく寄せ付けなかったクリーブランド時代の同僚で2007年サイ・ヤング賞投手のCCサバシアとの新旧サイ・ヤング賞投手同士の白熱の投げあいにも、また、強打を誇るヤンキース打線にも、まったく動じなかった。
ゲーム後のインタビューを見てもわかるが、冷静そのもの。興奮などありえない、とでもいわんばかりの飄々とした喋り。なんともクールな男である。
クリフ・リーの10奪三振(動画)
Baseball Video Highlights & Clips | WS 2009 Gm 1: Lee dominates the Yankees - Video | MLB.com: Multimedia

このゲームの6回裏、ヤンキースのジョニー・デーモンのピッチャーフライをクリフ・リーが捕るシーンがあるのだが、これは、どんな忙しい人でも、今日これからデートがある人でも、野球好きなら、ぜひぜひお薦め。いや、絶対に見るべきだ。このゲームがどんなゲームだったか、ひとめでわかる

揺るがない男、クリフ・リー。
「ミスター・コンプリート」である。


クリフ・リーの
「クール・フライ・キャッチ」&背面ゴロ・キャッチ(動画)

Baseball Video Highlights & Clips | WS 2009 Gm 1: Lee makes two plays look easy - Video | MLB.com: Multimedia

Baseball Video Highlights & Clips | Cliff Lee on "cool" defensive plays in Game 1 - Video | MLB.com: Multimedia

クリフ・リーの動画検索(MLB公式)
Multimedia Search | MLB.com: Multimedia


また、この試合でイチローの元チームメイトのラウル・イバニェスは、6番DHで先発出場。
2-0と、フィリーズが2点リードして迎えた8回表の2死満塁で、セットアッパー、ロバートソンの6球目のカーブをライト前へ見事に2点タイムリー。フィラデルフィアのリードを4点に広げて、ゲームをほぼ決定づけた。
まさにシアトル時代そのままの、このクラッチぶり。ほんとうに嬉しい。このままイバニェスがチャンピオン・リングをゲットしてもらいたいものだ。
フィリーズ側の記事
Complete Lee: Phils ride gem over Yanks | phillies.com: News
ゲームログ
Game Wrapup | phillies.com: News


クリフ・リーが、シアトル出身のサイズモアなどと一緒に、メジャー出場の果たせなかったエクスポズからクリーブランドに移籍してきたのは、2002年。90年代にクリーブランド黄金時代を築き、LAA時代にはイチローとよく対戦したコロン投手とのトレードである。
コロンが活躍した90年代のクリーブランド黄金時代を築いた監督は、シアトルの監督を2005年から2007年7月までつとめ、シーズン途中で「情熱がなくなった」と辞任した、あのマイク・ハーグローヴそのひとである。

また、クリフ・リーがフィラデルフィアにやってきた2002年のクリーブランドの監督は、2000年に就任していた元ヤクルト・スワローズで、現フィラデルフィア監督のチャーリー・マニュエルだ。
クリーブランド監督時代のマニュエルは、2001年にクリーブランド新人時代のサバシアのメジャー昇格を強く推した人物で、サバシアは期待に応えて17勝を挙げる活躍をみせ、チームは地区優勝した。
だがプレイオフでクリーブランドは、イチローがメジャーデビューし最高勝率を上げていたシアトルにプレイオフで敗れ、また、新人王争いでは、天才イチローがサバシアに投じられた1票を除いて全票を得て新人王を受賞。クリーブランドとサバシアは、イチローに敗れた。
2002年にはシーズン途中に成績不振からマニュエル監督はクリーブランドを去った。
2005年以降はチャーリー・マニュエルはフィラデルフィアの監督なわけだから、クリフ・リーにとってのチャーリー・マニュエルは、クリーブランドでメジャーデビューした当時の監督でもあり、また、フィラデルフィア移籍後の監督でもあるという、奇妙な縁である。

移籍後のコロンは、2002年にモントリオールで20勝し、2005年にはLAAでサイ・ヤング賞受賞と、トレード後も大活躍したわけだが、交換相手のクリフ・リーも2008年にサイ・ヤング賞投手になり、またサイズモアはトリー・ハンター以降のア・リーグを代表するセンタープレーヤーに成長したわけで、このときのトレードは、結果的に、サイ・ヤング賞投手同士のトレードにサイズモアという、なんとも豪華なトレードであり、いったいどちらのチームが得をしたのか、わからないほど充実したトレードだったといえる。

クリーブランドは、2007年にプレイオフ進出を果たしているが、このときクリフ・リーは故障明けでロスターからはずされたため、登板していない。故障明けの2008年にサイ・ヤング賞と同時にカムバック賞も受賞しているのは、そのため。
だからクリフ・リーにとって強豪フィラデルフィアに移籍した今年が、彼の最初のプレイオフにおける登板であり、また、最初のワールドシリーズ登板だった。
彼はその初めての大舞台で、悠然とパーフェクトな結果を残したのであるからよけいに素晴らしい。

クリフ・リーは「本物」だった。
ランディ・ジョンソンマダックスハラデイといった投手たちがもつ「大投手」という称号をもつのにはひとつ足りなかった、大舞台での活躍という結果を加え、サイ・ヤング賞投手に続いて彼自身が大投手に一歩近づいた。

クリフ・リーのポスト・シーズンの成績
Cliff Lee Postseason Statistics | phillies.com: Stats
クリフ・リーのキャリアスタッツ
Cliff Lee Career Statistics | phillies.com: Stats
クリフ・リー略歴(日本語)
クリフ・リー - Wikipedia


その大舞台で、このピッチング。素晴らしいとしかいいようがない。
フィリーズ公式サイトの見出しはComplete Lee、「完璧なリー」。

かつてウオッシュバーンが1安打ピッチング、つまり準完全試合を達成したときにもブログからThe Pitchという称号を進呈したが、今日のクリフ・リーには、このブログからも「ミスター・コンプリート」という称号を贈りたい。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:"The Pitch " achieved by Washburn & Rob Johnson in 2009



こんな完璧なクリフ・リーだが、2002年9月15日のメジャー最初の登板では、初登板初先発で5回1/3を投げ、2安打自責点1と、まだマウアーがメジャーデビューする前のミネソタ・ツインズ打線を抑えた。
にもかかわらず、味方打線がボストン移籍前のココ・クリスプのヒットなどわずか3安打とまったく冴えず、そのたった1点の失点のために負け投手となっている。その後のクリフ・リーの、「投げても投げても、チームが弱いために、優勝はできない」という苦しい運命を暗示するようなゲームだった。
2002年9月15日のクリフ・リーのデビューゲーム、クリーブランドのスタメンは、こうなっている。かつてシアトルでイチローと一緒にプレーしたベン・ブルサードがクリフ・リーのメジャーデビューゲームに8番レフトで先発出場している。
このゲームでの先発メンバーのうち3人が2003年から2004年に引退していることや、残りの6人も現在は誰ひとりとしてクリーブランドに残っていないあたり、当時のクリーブランドというチームの戦力の先行きの下り坂ぶりを予感させている。
September 15, 2002 Minnesota Twins at Cleveland Indians Play by Play and Box Score - Baseball-Reference.com

C Crisp CF ボストン、カンザスシティに移籍
O Vizquel SS サンフランシスコ、テキサスに移籍
E Burks DH 2004年古巣ボストンで引退
J Thome 1B フィラデルフィア、シカゴ等を渡り歩く
K Garcia RF 2004年引退
B Selby 3B 2003年引退
J Bard C サンディエゴ、ナショナルズに移籍
B Broussard LF シアトル、テキサスに移籍
B Phillips 2B シンシナティに移籍


クリーブランド時代のクリフ・リーが、なかなかプレイオフに出場できないチームのなかでひとり輝きを放ちながら黙々とプレーし続けた時代は、どこか、さえないシアトルというチームでオールスターに出場しつづけながら頑張っているイチローの姿にダブる部分がある。

クリフ・リーは、ワールドシリーズの重圧に負けずに、初舞台で素晴らしい結果を残し、たとえ下位チームに属していても、「本物は、やはり本物であること」を証明してみせた。

孤高の天才イチローにも、早くこういう、ワールドシリーズで本物の本物たるゆえんを見せ付ける日が訪れてくれることを願ってやまない。






October 28, 2009

地方中枢都市であるカンザスシティにはプロスポーツもいくつかあり、MLBのロイヤルズ以外に、NFLではAFC西地区所属のチーフス (Kansas City Chiefs) があり、メジャーリーグサッカーのカンザスシティ・ウィザーズ(Kansas City Wizards)もある。
そのスポーツの大好きなカンザスのスポーツを扱うサイトKansascity City Star電子版Upon Further Reviewが、今年のサイ・ヤング賞を占った連載記事を載せている。
Greinke vs Hernandez: My Vote | Upon Further Review
Submitted by Martin Manley on October 9, 2009 - 3:43am.

元日本ハムの監督ヒルマン率いるカンザスシティ・ロイヤルズは、今シーズンのサイ・ヤング賞候補グレインキーの所属球団。このサイトでは今年のサイ・ヤング賞について、最有力候補のヘルナンデスとグレインキー以外にも、ヤンキースのサバシアなども含めていろいろと候補たちのデータを考慮した上で、「どうみても今年のサイ・ヤング賞はヘルナンデスとグレインキーの一騎打ちだろう」と熱弁をふるっている。


この記事をとりあげてみたのは、アメリカ人がプレーヤーの残す「数字」、つまり成績を評価するのに、どういう角度から見ているか、という点が多少なりともわかるからだ。

例えば、ヤンキースのサバシアについては「データでヘルナンデスと比べれば、サバシアにサイ・ヤング賞はありえないこと」と断定してるが、比較に使うデータは、例として次のような項目があがっている。
たしかに日本でも最近は、OBP(出塁率)やSLG(長打率)などもだいぶ気にするファンが増えたが、まだまだ日本にはないデータも多く、たくさんのデータが実際に活用され、毎年開発されてもいる。
下記にサバシアとヘルナンデスの比較に使われたデータ項目を列挙してみたが、どれも珍しいものではない。むしろライター氏に言わせれば、詳細なデータがもっと必要なら、いくらでも挙げられるよ?という気持ちがあるはずだ。

ERA 防御率
QS% Quality Start Percentage、QS率
平均スコア
勝率
SO 奪三振
SO/BB 三振/四球
HR/9 被ホームラン率
BA 被打率
OBP 被出塁率
SLG 被長打率
WHIP Walks plus Hits per Innings Pitched「投球回あたり与四球・被安打数合計」

Hernandez has a better ERA, Quality Start percentage, Average Game Score and Winning percentage. That’s a few miles more than enough.

However, Hernandez is also better in SO, SO/BB, HR/9, BA, OBP, SLG, and WHIP. In fact, there isn’t a single stat of any substance where Sabathia leads Hernandez. Hernandez is first or second in seven of the above categories. The best ranking for Sabathia in any of them is third!


またヘルナンデスとグレインキーとの比較についても、見た目の勝ち数と防御率だけで比較するような単純なことはせず、いろいろ補正を加えた上で比較している。

例えば「シーズン勝敗」だが、見た目では19勝5敗のヘルナンデスに対して、グレインキー16勝8敗だから、ヘルナンデスに軍配が上がってしまうが、ライター氏は自分なりの補正を加え「両者21勝6敗」として、「両者甲乙つけがたい」と言っている。
もちろんグレインキーの地元メディアだけに、なんとか彼グレインキーに有利にしたいために数字に工夫するという心理がまったく働いていないかといえば嘘になるだろうが、それでも、無理な補正ではない。
たとえばヘルナンデス先発で負けていて、9回裏にイチローがリベラからサヨナラ2ランを打って勝ったあのゲームなども、まぁ、たしかに単純に投手力だけで勝ったゲームではないことはシアトルファンもわかっているわけで、無理矢理ではない補正を加えることについては、どちらのファンも納得できるわけだ。

記事では、そのほか、両投手の所属チームの強さ、RS(Run Support 味方チームが得点でどのくらいサポートしてくれているか)、守備力など、いくつかの項目をたてて、見た目の勝ち星、見た目の防御率だけではない統合的で補正をきかせた比較を試みている。
RSというのは、このブログでもこれまで何度もとりあげてきたように、その投手が登板したときに味方がどれくらい点をとって支援してくれたか、という数字。チームの打撃力には差があるし、また、投げる投手によっても、妙にRSの多い投手、少ない投手がある。(たとえばウオッシュバーンは、有名なRSの少ない投手)
ヘルナンデスは、あまりにも打撃力の無さすぎるシアトルのエースとして苦労しているが、そのヘルナンデスのRSよりカンザスのグレインキーのほうが、さらに1点くらいRSが少ない。つまりカンザスシティが点をまるでとってくれないままグレインキーは投げていることになる。
記者としては、RSの少なさを示して、グレインキーのサイ・ヤング賞を主張する材料にしたいわけだ。よく両投手とも、19勝だの16勝だのできたものである。


たとえば城島の打率を語る場合に、2007年にはシーズン通算打率これこれなどと、あまりにも大雑把な数字だけで能力を語ろうとする人は、いまだに多い。
だが、シーズン通算打率程度の粗っぽい数字には、プレイオフに進出できにくいシアトルの場合、プレイオフ進出の望みがまったく断たれた後の8月や9月に挙げた帳尻ヒットなども含まれている。
なぜプレイオフ進出の可能性のないプレーヤーの8月・9月あたりの成績を「帳尻」といいたくなるか、というと、メジャー特有のいろいろなシーズンシステムが関係してくる。

チーム間の戦力格差の非常に大きくなっているメジャーでは、7月過ぎに早くもプレイオフ進出できるチームの目星がだいたいついてきてしまうことはめずらしくない。
7月末にトレード期限がくるが、この期限までにプレイオフ進出確実な有力チームは「買い手」に回って、秋のプレイオフ戦線にむけて強化すべき戦力をトレードで集めるが、プレイオフの見込みのないチームは主に「売り手」としてふるまい、余剰戦力を交換に出したりするだけでなく、めぼしい主力を「買い手」に売ったりする。
たとえば、ワールドシリーズをめざすフィラデルフィア・フィリーズは、優勝見込みの全くないクリーブランド・インディアンズから、大投手クリフ・リーを獲得したのも、ポストシーズンの長いシリアスな戦いに備えるためである。

また9月になると、1軍登録できる人数が拡大される。
そのため、どのチームもマイナーから来シーズン使えるかもしれない選手を上げてきてテストするが、この場合も、プレイオフの見込みのないチームでは、ゲームの勝ち負けだけにこだわらずに(というか場合によっては度外視して)若手のテストを試みることも珍しくない。

だから総じていうと、リーグ全体が「フルチャージで戦っている」といえる状態は、7月末とかで一度区切りがついて終わってしまっている。そこからは長い消化試合を続けるチームもあり、若手のテストにむかうチームもありで、全チームでシリアスな戦いだけが続いているわけではない。だから「帳尻」という言い方ができてしまうのである。


ポータルサイトなどの日本のプロ野球についてのページをみても、いまだに打率や打点、ホームラン数といった粗いデータしか表示されておらず、「城島問題」においても、いまだに、城島の2007年の打撃の酷い中身を無視して「メジャー挑戦の最初の2年間に限れば、打撃はまぁまぁだった」などと、誤った理解がいまだにまかり通っている。
なんでもかんでも数字でモノを見ろというつもりはない。
だがたとえ打率が.265あろうと、四球がほとんどなく、併殺だらけで、その上、出塁率が.280くらいしかないようなお粗末すぎるバッティングは、メジャーでは評価されない、ということくらいは、もういい加減、たまに日本のプロ野球のナイターを見るだけのファンの間でも定着してほしいものだと思うのである。






よくよくこの九州のイモあんちゃんは「おかしな契約をするのが好き」なのだろう。


チームからいなくなってくれて清々したし、もう無関係な城島の日本での移籍先探しなど無視しようと決めてはいたのだが、元阪神監督の岡田氏から「その前に話しとったんやろ!」「城島がどこへ行きたいか、知っている」発言が飛び出したことで、このブログでも主観的にだが、軽くまとめておくことにした。やれやれ。面倒なことである。
2008年4月の、あの不自然で異常な「3年契約延長問題」は、やはり、この選手特有の「体質」がカラダの奥からにじみでたものだったのである。

岡田監督暴露!城島の阪神行き決まっていた(野球) ― スポニチ Sponichi Annex ニュース
2009年10月23日(日本時間)
オリックスの岡田監督が“爆弾発言”だ。城島の阪神移籍が決定的になっていることを受け、「何日から話し合い(交渉)になるという話じゃない。その前に話しとったんやろ!何年か前に、そんな話を聞いている。(オレも)阪神におったわけやから」と話した。
さらに「城島がどこへ行きたいか、知っている」とも。それだけに、オリックスの指揮官としては「絶対に獲りにいく発想は浮かばんかった」と本音を漏らした。



どうにも長すぎる前置き
どうにもシナリオ臭のする「城島の日本での入団先探し問題」は単に簡単にまとめておくだけのことだ。まとめ、というからには、ニュースや事実が増えたり変わったりすれば、この記載も更新され、または訂正されることになる。あらかじめご承知おき願いたい。また、真偽のほどは他のネット上のソース同様、各自が自分の能力において自主的に判断されたい。
シアトル・マリナーズの細かい話題やMLBには疎い、という人は、2008年4月に突然発表された「城島の3年契約」の異常さについてはよくわからない人が多いだろうとは思う。2008年の「契約延長問題」について、このブログの記事を読むのは歓迎するが、このサイトは、あくまでゲームでのプレイぶりや、チームの勝敗への影響等を含め「城島問題」全体を記述しているサイトであり、「契約延長問題」は「城島問題」にとって最大の話題のひとつではあるにしても、「城島問題」全体の一部でしかないとも考えており、「契約延長問題」に関するまとめやリンクが完全に仕上がっているとはとてもいいがたい。
だからこのブログの記事のみで信じ込むのではなく、ブログ記事からのリンク(=現地シアトルの新聞社のサイトやブログ、アメリカの総合スポーツサイト。あるいは日本流ではないメジャー特有の細かい各種のデータ)をたどるのは必須だと思うし、ネットなどを活用して情報集めすることで、全体像を自分で得る必要があると思う。日本での報道や日本のスポーツライターの記事を鵜呑みにするようなことなら、そもそも最初から「城島問題」は理解できないと思う。
ブログ側ではどんな情報活用をされようと自信はゆるがない。ゆらぐくらいなら、こうも何年も同じテーマを追い続けてこられない。数年をかけてコネと言い切り、城島を拒絶したヘルナンデスはサイ・ヤング賞候補にあがり、そしてメジャーのスカウティングにプレーの全てを見切られた城島は日本に帰ったのである。


2008年4月シアトル・マリナーズにおける
城島のあまりにも不自然すぎる「3年延長契約」

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:契約延長問題
「城島の3年契約延長」が発表されたのは、まだ城島のアメリカでの最初の契約である2006年からの3年契約が、まだあと1年残っていて、最終年度を迎えた2008年の春4月である。そもそも将来の正捕手候補が既に予定されていると考えられていたシアトルでは、その不自然すぎる発表時期や優遇すぎる契約内容に、当初から疑問の声が上がっていた。
4月という季節は、メジャーでは(もちろん日本でも)契約に関係する当事者たち、つまり選手や球団から、契約発表など契約に関する動きのない季節である。そもそもシーズン開始直後は選手をフィックスして戦いが始まる時期であって、選手を変動させる時期ではないのだから、こんな時期に発表する不自然さに、みんな疑問を持ったことは言うまでもない。
契約の最終年が終わってから判断するのが普通の契約を、シーズンが終わるどころか、まだ始まったばかりだというのに大型契約しました、なんていうヨタ話を誰も信じはしない。地元のメインのシアトル紙でさえ「なぜこんな内容の契約を、こんな時期にするのか」と徹底取材を行ったほどだ。

2008年5月になって、彼ら地元紙の取材の結果、この不自然すぎる3年契約が、本来はメジャー球団で選手の獲得や契約関係を取り仕切る役職であるGM(ジェネラル・マネージャー)がほとんど関与せず、球団オーナーサイドが決めた異様な契約であったことが明らかになった。(これが城島が「コネ島」と揶揄された所以)
記事はネット上で発表されたが、取材者自身の手により取材音声がデータとして記事に添付されており、よく日本のスポーツ紙で横行する、根も葉もない噂話や根拠のないゴシップとは、根本的に違っている。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2008年5月13日、地元記者ベイカーは長い重要な記事を書いた。

シアトル地元で「城島の契約延長」を疑問視する意味の取材がなされた背景のひとつは、城島がそもそも、単なる「つなぎの選手」として獲得された30代の伸びしろのない捕手なのに、なぜ3年もの長期契約延長をするのか? という意識がある。
シアトル・マリナーズの球団史上最高のキャッチャーは、ランディ・ジョンソンなどとともに黄金期を築いたダン・ウィルソンであり、彼は城島がシアトルに入団する2005年に引退しているが、チームは次世代の正捕手候補として、わざわざ2005年ドラフトで貴重な全米ドラフト1位指名権を使ってまでジェフ・クレメントを獲得しており、さらにはロブ・ジョンソン、アダム・ムーアなどのルーキーたちが将来のキャッチャー候補として名を連ねてもいて、城島はあくまでも次の時代への「つなぎの選手」として契約したにすぎないことは、GMなども公言し、また、地元紙や地元ファンにとっても完全に常識化していた。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:「ジェフ・クレメントのための短い夏」


3年契約に含まれた奇妙な「オプト・アウト条項」
もともと2008年4月に発表された3年延長契約には、「2009年シーズン終了以降、城島側から契約を破棄し、日本に帰ることができる」という特約的なオプション、オプト・アウト条項があった「らしい」。
「らしい」と、推測つきなのは、契約書の条項の現物は当然ながら公表されないためだが、おかしなことに、誰がリークしたのかわからないが、この条項の存在自体は、契約当初からUSメディアが書き、日本のシアトルファンの間でもよく知られ、契約上の秘密でもなんでもなかった。
城島の代理人アラン・ニーロ(Alan Nero)も、条項の存在を認めつつ記者と会話した例(下記の記事など)がいくつかある。他の多数のインタビュー例からも、オプト・アウト条項の存在はアメリカのメディアでは誰もが認めている。今回の城島シアトル退団についてもアメリカのメディアの多数がOpt Outという言葉を使って表現している。
アラン・ニーロの発言を収めた記事例
Mariners Blog | Johjima's agent: Mariners owe nothing | Seattle Times Newspaper
シアトル地元紙Seattle Timesの
アラン・ニーロにまつわる記事
Search Results: alan nero - Local Search

ブログ注:
城島の代理人、Alan Neroとは

ベテランのMLB代理人(Nero,pronounce "neee-row")。アメリカの大手広告代理店であるIPG(Interpublic Group of Companies)傘下のマネジメント会社で、北京国際マラソンなども手がけるOctagon所属。
シアトルとは縁が深く、また、どういうわけかキャッチャーも多く手がける。シアトル関連では、ランディ・ジョンソン、エドガー・マルティネス、元監督ルー・ピネラ、元監督マクラーレン、そしてフェリックス・ヘルナンデス、フランクリン・グティエレス、ウラディミール・バレンティン、ブライアン・ラヘアなど。
日本人では、城島のほか、黒田、福留、岩村、和田毅など多数。ほかにビクター・マルティネス、ジョン・ラッキー、ホセ・アルトゥーベなど。キャッチャーではベンジー・モリーナ、ジョシュ・バード、ジョニー・エストラーダなど。(ジョン・レスター、ダスティン・ペドロイアもかつてはオクタゴンを代理人にしていたが、後にACESに変わった)
Larry Stone | Agent Alan Nero looms large again in Mariners' fate | Seattle Times Newspaper

このオプト・アウト条項はよく誤解されている。
「家族の緊急事態に備えるため」などと、なにか生命保険のように説明されたり、他球団に移籍できる権利が得られるFAの権利と混同されて説明されたりしていることも少なくない。
だが、城島のオプトアウト条項は特殊で、10年契約のアレックス・ロドリゲスのように7年目以降いつでもFA宣言できるごとくの「他のメジャー球団に行きたい場合、自分から契約を破棄してFA宣言できますよ」という意味での「自分からFAする権利」ではない。
城島の場合のオプト・アウト条項というやつには「他のメジャー球団には移籍できない」という制限が含まれていて、まぁ簡単にいえば「イヤなら日本に帰りなさい」という意味にとれる条項であって、こんな条項が入っている選手、ほかに聞いたことがない。いかに城島の3年契約が特殊で、歪(いびつ)な契約かがわかる。
そして来年の出場機会激減をチームに言い渡されていたからか、なんなのか、裏の理由はわからないが、城島は出場機会を求めて、と、理由をつけて、このオプト・アウト条項を行使して退団し、日本に帰った。
帰国にあたっての会見は異例ずくめだった。城島は顔も出さない電話による会見を行い、また英語メディアを一切締め出したことも、まったく考えられない態度であり、穏健な論調で知られるマリナーズ公式サイトですら、「英語メディア排除」を退団記事冒頭にハッキリと明記して書いた。シアトルはこういう城島の帰国を遠慮なく歓迎した。
城島退団を伝えるマリナーズ公式サイトの記事
Playing time prompted Johjima's move | Mariners.com: News
During a conference call with Japanese-speaking media on Wednesday afternoon (English-speaking media were not allowed to be on the call), Johjima let the cat out of the bag when he told reporters the actual reason for his surprising departure. (太字はブログによる)
クリスマスプレゼントだと退団を喜ぶ地元記者
Mariners Blog | Kenji Johjima gives Mariners an early Christmas present | Seattle Times Newspaper

退団の予兆? 
シアトル2009最終戦での
サバサバしたような城島の表情

いまにして思えば、という話なのだが、アメリカ時間2009年10月4日に行われたシアトル最終戦は、見事にヘルナンデスのサイ・ヤング賞レースに残る勝ちという形で終わり、選手全員がハグしあった後でスタジアム一周、という感動っぽい終わり方になった。
イチローがシルバに肩車されたり、なかなか賑やかな最終戦だったが、ゲームを見ていない人はわからないかもしれないが、このシーンで城島の表情はゲッソリと冴えなかった。コアなシアトルファンの間には「もしかして城島は今年で退団するつもりか?」という囁きも一部掲示板にはあったほどだが、真偽は定かではない。
グラウンドでハグしあうプレーヤーたちをみつめる城島の「遠くを見る目」「醒めた目」が印象的だったが、日本のプロ野球ファンにはまったく伝わることはなかった。
シアトル最終戦(動画)
5分37秒あたりに城島の後ろ姿があるが、そもそも城島の姿はほとんど画面に出てこない。このチームのスターは、イチローであり、グリフィーであり、ヘルナンデスだからしょうがない。
Baseball Video Highlights & Clips | The Mariners take a lap and thank the fans - Video | MLB.com: Multimedia

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年10月4日、ロブ・ジョンソン、高めの球を効果的に使った好リードや8回の刺殺などでヘルナンデスに5連勝となる19勝目、ついにア・リーグ最多勝投手達成!!



日本時間10月14日付けスポニチ「スクープ」の
なんともいいようのない「シナリオ感」

正直、スポニチが城島退団をスクープしたとき、他の人と同じで「どうせよくある嘘記事、いわゆる『飛ばし記事』だろう」と思わないでもなかった。ブログでとりあげたものかどうか迷ったわけだが、結局、どうにも中途半端な形のとりあげ方になった。自分でみても「腰の座らない、中途半端なタイトルだな」と思う。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年10月14日、「城島はマリナーズとの契約を破棄し、日本時間20日にフリーエージェントに」 「日本のプロ野球球団、阪神が、年俸5億以上、複数年契約で城島獲得に本腰」と、日本国内で報道された。
とりあげておいた理由は、「20日退団発表」と、特定の日付が示してあったからだ。「飛ばし」にしては、いやに具体的すぎる。むしろ、具体的すぎて、かえって記事に取り上げるのをやめようかと思うほどだ。
この記事が出た当時、城島オタクはじめ、古巣ではなく阪神への移籍を信じられないソフトバンクファンなどは一斉に記事を冷笑したものだが、結果的に城島退団そのものは現実化し、城島帰国騒動が始まった。

スポニチ記事は、いま読んでみても、記事の内容がピタリと現実に沿い「すぎて」いる。むしろ問題はそこだろう。日本国内のホークス・ファンからはチームに戻るものと思われ続けている城島と、阪神が、予想を越えた急接近をみせ、スポニチの日本時間14日のスクープが想像だけで書ける記事内容ではないことは、ますますハッキリしてきている。
だからこそ、スクープの連発は、むしろ出来すぎた「シナリオ」を読んでいる感がしてくる。
理由は想像しかねるが、事前にスポニチだけに対して情報がリークされた可能性があるのではないか、と、当初から某巨大掲示板などでも考えた人は大勢いたようだし、ブログ主もその意見は理解できる。中にはタンパリングを疑う人すらいたほどである。


タンパリングとは?
日米の定義の温度差

「タンパリング」をアメリカのWikiでは
「所属チームの承認なしに、選手獲得のための交渉をすること」と定義している。いわば「無断交渉」はすべて「タンパリング」なのである。
In professional team sports, tapping up (British English) or tampering (American English) is an attempt to persuade a player contracted to one team to transfer to another team, without the knowledge or permission of the player's current team. This kind of approach is often made through the player's agent.
Tapping up - Wikipedia, the free encyclopedia

一方、日本のWikipediaでみると、野球協約第73条を引き合いに出して「事前交渉の禁止である」と説明している。「事前交渉」をタンパリングととらえているわけで、アメリカのWikiの言う「タンパリング」より、ずっと意味が狭い。

ただ、日本のWikipediaの「タンパリング」の項目は、2009年の新しい野球協約を知らない人が書いているせいで、間違いがあることは頭にいれておかなければならない。
日本のWikipediaでは、例えば、第73条違反を犯した球団と選手は「永久に」契約が禁止されると説明しているが、たしかに2008年版の野球協約では「永久に禁止」と強い文言で記載されているが、2009年版の新協約では、「永久に」という部分は削除され、「禁止」とだけ記されている。(下記に新旧の第73条を引用した。赤い色部分が2008年版と2009年版とが相違する点。ブログ側で添付した)
野球協約は、コミッショナー権限の強化などを掲げて2009年に大きく改正され、第73条も、2008年までの版と2009年版とでは、記述が違っている。1998年の改正から2008年まで1つの文章で書かれていたようだが、現在では2分割され、また文面が一部削除されているのである。
日本プロ野球選手会公式ホームページ/野球規約・統一契約書ほか

2008年版野球協約
第73条 (保留を侵す球団)

http://jpbpa.net/convention/15.pdf
全保留選手が、他の球団から契約にかんする交渉を受け、または契約を締結し、そのために保留球団との公式交渉を拒否する疑いのある場合、保留球団は他の球団およびその選手を相手とし、所属連盟会長に事実の調査を文書により請求を行った上で、コミッショナーへ提訴することができる。
連盟会長は事実を調査し、これにたいする意見をコミッショナーに送付しなければならない。違反の事実が確認されたとき、コミッショナーは違反球団ならびに違反選手にたいして制裁金を科し、かつ、その球団とその選手との契約を永久に禁止し、その交渉に関係した球団の役職員にたいして、その善意を挙証しない限り適当な期間その職務を停止させる。


2009年版野球協約
第73条 (保留を侵す球団)

http://jpbpa.net/convention/16.pdf
1 全保留選手が、他の球団から契約に関する交渉を受け、又は契約を締結し、そのために保留球団との公式交渉を拒否する疑いのある場合、保留球団は他の球団及びその選手を相手とし、コミッショナーへ提訴することができる。
2 違反の事実が確認されたとき、コミッショナーは違反球団及び違反選手に対して制裁金を科し、かつ、その球団とその選手との契約を禁止し、その交渉に関係した球団の役職員に対して、その善意を挙証しない限り適当な期間その職務を停止させる


それにしても、野球協約第73条は、文言の内容からして、主として「FA移籍を予定している選手と所属球団の、契約期間内における独占的交渉の保障」について規定した項目のように思うが、どうだろう。つまり「FA選手を今後も維持したい現在の所属球団は、誰にも邪魔されず、独占的に交渉できる権利をもつ。だから、他球団は絶対にFA前には交渉をもちかけたりするな」という規定の気がする。
だから、むしろ「所属球団の承諾なく支配下選手に契約をもちかけるな」という、アメリカのWiki的な意味で、広くタンパリング規定しているのは、日本の野球協約でいえば、第73条ではなく、むしろ第68条第2項などのような気がするわけで、第68条をつかってタンパリングを説明すれば日米合致するようなものだが、野球協約に詳しくないので明言は避けておく。いずれにしても日本のWikiはアテにはならない。
(なお「保留」という言葉は、野球協約では、この第68条だけでなく、頻繁に使用される。「保留選手」とは、その年度の支配下選手のうち、「次年度の選手契約締結の権利を保留する選手」のことをさす特別な用語で、「保有」選手という言葉の誤記ではもちろんないし、チームに所属する選手全員とかという意味でもない)

第68条 (保留の効力)の第2項
全保留選手は、外国のいかなるプロフェッショナル野球組織の球団をも含め、他の球団と選手契約に関する交渉を行い、又は他の球団のために試合あるいは合同練習等、全ての野球活動をすることは禁止される。なお、保留球団の同意のある場合、その選手の費用負担によりその球団の合同練習に参加することができる。

「球団に断りなく、無断交渉するな」と、「契約切れ前に、事前交渉するな」、どちらが正確なタンパリング定義なのかは別にして、いずれにしても他球団の契約支配下にある選手に対し、その球団側になんの断りもなく契約をもちかける行為は許さるはずがない。当然のことだ。まして、退団もしてないうちに、入団交渉がほぼ契約をとりつけるところにまで話が進んでいたとしたら、それは野球どころか、プロスポーツでは絶対に許されない重大な違反、タンパリング行為になる。
もし仮にだが、今回の城島と阪神の契約の交渉開始の時期が、マリナーズ退団以前であって、かつ、マリナーズ側の承諾なく無断で交渉が行われた、としたら、それはあきらかに「所属球団に断りなく退団前に『無断』かつ『事前』の交渉」をした、という意味において、「タンパリング」である。


城島の移籍報道スクープとタンパリング疑惑
日本時間20日の球団の退団発表より6日も早い日本時間14日のスポニチの独占スクープぶりは、今でも誰もが半信半疑のままだろう。
「城島退団、阪神確実」とか突然言われ、何度記事を読んでも、どうみても城島サイドと阪神との入団交渉がタンパリングだという匂いがしてならないのだが、実際には、さまざまな理由から、タンパリングだと言い切るのは難しいように思えた。


実際にはむつかしいと思われる
「タンパリング」適用

例えば「無断交渉」が「タンパリング」だという考え方をしてみるとする、としよう。上で書いたように、この場合城島を支配下におく球団は、アメリカのマリナーズなわけだから、マリナーズに交渉を知らせないで城島が交渉していれば、「無断交渉」なわけだ。
だが、仮にだが、マリナーズ側が、城島が日本球団と交渉するのを事前承諾していたとしたら、どうか。それは「タンパリング」にならない。
さらに、もし無断交渉だったとしても、城島に出ていってもらいたいマリナーズ側としては、責めはしないだろう。むしろ、「残念だ」という大人のコメントを出しまくって送り出すはずだ。実際、マリナーズ側の城島退団後のコメントは大半がそれだ。退団するな、戻って来い、とは誰も言わない。

では、たとえ球団が承認していようと、「事前交渉」は「球界全体にとってタンパリングであり、禁止すべき」という考えをとるなら、どうだろう。
日本の球団への入団交渉がマリナーズ退団より前にあったとしたら、たとえ所属チームが事前承認していたとしても「それはタンパリング」である、と考えることも、できなくはないかもしれない。
ただ、日本のプロ野球協定は、新協約あたりでようやく外国の球団との関係を組み込んできているとはいえ、出発点は日本国内チーム同士の揉め事の規定が出発点である。
こういう、日米をまたいだ球団間の選手の移動の場合、タンパリング規定がどちらの国の考え方を元にするか、きちんと定義しきれるようには、到底思えない。今でもこれだけ日米間の選手の移籍でいろいろ問題になったり、抜け道があったりするわけだから、いま日本の野球協約で処理できるとは、とてもとても思えない。ほおっておくのが無難な気がした。


城島退団と岡田氏発言を両方スクープしてみせる
スポニチの動きの不可解さ

と、まぁ、ここまで書いたあたりだけのことなら、書かずにすまそうと思った理由の羅列ばかりだ。結局、なるようになるから項目を立てずにほっておけ、という判断である。

そこへきて、元阪神監督で、次のオリックス監督に内定している岡田氏が「前から決まっていたことやろ」「城島がどこへ行きたいか、知っている」、なんてことを言い出した。
彼はタンパリングという言葉こそ使ってないが「事前に交渉があった」という話をしているわけで、その意味では「タンパリング批判」に読める内容だ。しかも岡田氏は、ついこの間まで、城島獲得交渉に臨むと明言している、その阪神の監督だった人だ。

なぜ、スポニチ、そして岡田氏と、こうも城島の移籍について「事前に何かを知らされているとしか考えられない人々」が存在するのか?(某掲示板では、退団発表前に城島から手紙を受け取ったなどと自称している、阪神ではない某チーム応援団らしき姿もみかけたが、それはそれでなにか「事前交渉」があった裏づけになる)
こうした発言を先行報道し続けているのが、最初は誰もが眉唾ではないか疑うほどのスクープをモノにした、あのスポニチなのだから、よけい意図がわからない。
いったいスポニチの描く「シナリオ」というか、落としどころはどこにあるのだろう。いぶかしく思うが、今のところ、まったく想像が追いつかない。
どこよりも先に「城島退団、日本帰国」と書き、どこよりも先に「阪神入団決定的」と書いたメディアがこんどは「城島の阪神行き決まっていた」と批判めいた記事を書くのだから、わけがわからない。


2008年4月の異例ずくめの3年契約延長と同じ、
退団・日本帰国発表の妙なタイミング、後味の悪さ

すべてにおいて今回の城島の帰国発表のタイミングは、2008年4月の3年契約延長のときと似ている。唐突さ、奇妙さばかり感じる。
なぜ発表タイミングを、日本の野球を邪魔しない日本シリーズ終了以降とかにできないのか。また、これまで戻る戻ると言ってきた古巣ファンや関係者をはじめ、世の中を掻き回すくらいなら、事情をハッキリ言うなり、タイミングを選ぶなりするほうがよほどスッキリ帰国できるだろうに。あとから「あれはメディアが先走りまして」なんていう言い訳は、これでは通用しない。
誰がこの男をここまで甘やかしたのか。利用されやすいヤサ男ローランド・スミスには悪いのだが、誤解かどうかなど、この際、どうでもいい。この男はそもそも誤解されないように生きることなど、最初から選んでいない。最初から最後まで、スッキリした印象のカケラもない。
世間に対しても、こすっからいアウトコースのスライダーしか投げられない、そういう男だ。
ソフトB王会長は城島との交渉に出馬せず - 野球ニュース : nikkansports.com

コネ捕手城島の契約は、いつも悪い意味の「謎」ばかり。「2008年の3年契約の謎」の「謎解き」は「コネ」だったわけだが、今回の2009年の契約の「謎」はどういう「オチ」だろうか。



Bs岡田監督“ジョー舌”城島の阪神入りに太鼓判!? ― スポニチ Sponichi Annex 大阪
冒頭に挙げた記事と内容は似ているが、別記事。おそらく後から書き直したものだろう。

ノムさんは城島をボロカス「人間失格」/野球/デイリースポーツonline

鷹にイライラ!?王会長、役目「終わった」 (2/2ページ) - 野球 - SANSPO.COM

出遅れ響き 城島に思い届かず ― スポニチ Sponichi Annex ニュース


日本時間10月27日、城島、阪神入団決定
無礼きわまりない「福岡での」入団会見

結局、城島はソフトバンク側に入団条件の提示機会を一度たりとも与えることすらないまま、阪神入団会見を、それも、こともあろうにソフトバンクの本拠地・福岡で行った。会見には、イチローの「WBCは五輪のリベンジの場所ではない」発言が決定打となって、読売の渡辺氏との間で監督内定の密約をかわしていたにもかかわらず、第2回WBC監督の座から滑り落ちた阪神の星野SDも同席した。
「王さんに会って、心が決まった以上は、交渉の場で(ソフトバンク側から)金額を聞くつもりはなかった。」(カッコ内の補足と太字はブログによる)
(出展:【城島トーク】成績残すことしか頭にない (3/3ページ) - 野球 - SANSPO.COM

ソフトバンクの誠意が伝わったというコメントが、もし社交辞令でないなら、金額くらい聞くべき。それが交渉における礼儀というもの。
そして「金額を聞きたくない」くらい阪神入団を決意できているなら、もったいぶらず、もっと早く会見できただろうし、そもそも、なにもソフトバンクの本拠地・福岡で会見をやる必要はない。いや、福岡で会見など、やるべきではない。交渉相手に対する無礼にも程がある。
どんなスケジュール上の都合だの制約だのがあったにせよ、ソフトバンク側の提示を聞く必要がないと判断できるほど阪神入団の決意が固いのなら、鈍足の城島でも慌てることもないのだ、その足で新幹線に乗って阪神の本拠地・大阪へ急いで行って、緊急会見でもなんでも、何時間でも好きなだけやればいいのだ。
いくらスポーツ選手とはいえ、ネクタイをしめた大人のやることではない。Tシャツとサンダルでヒトに謝りにいく態度と、まったく変わりない。

asahi.com(朝日新聞社):城島、阪神入り決定 日本球界復帰は5季ぶり - スポーツ
【プロ野球】城島の阪神入りが決定 - MSN産経ニュース

Johjima signs for $21M in Japan; what next for M's?

追記
城島阪神入団後の関連ニュース

下柳投手
下柳 矢野とバッテリー組みたい!!(デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース
「気心が知れてる矢野と組んで投げたいという気持ちはある。もちろん城島とも組むんだろうけどね」
藤川投手
阪神・球児も越年!?現状維持かダウンも… - サンケイスポーツ - Yahoo!スポーツ
「(契約交渉の席で言いたいことは)選手を入れ替えるのも手段ですが、(球団)全体としての意見を聞きたい。赤星さんも今岡さんもいなくなったし、やめていった選手も多い。選手の立場もありますから。大事にしてもらいたいです」
鳥谷選手会長
阪神“ヤンキース化”?!選手会長・鳥谷が「待った」  - livedoor スポーツ
阪神の新選手会長、鳥谷敬内野手(28)が今オフの契約更改について、自身初の「越年」となることを明かした。「サインは来年です。もうちょっと話したい部分もあって…こっち側もいいたいことはあるし、向こう(球団側)もあるでしょうから。お金の話だけじゃなくて、選手と球団との関係をもっといい形にするために、話をもう少ししたいと思います」






October 27, 2009

このブログを始めた前後から現在に至るまで、まっとうな城島批判に対して、まるで蚊取り線香の煙にチカラ尽きて地に落ちる前のヤブ蚊の羽音のように、遠くから絶えず弱々しい罵声を浴びせ続けていた城島オタクのみなさんの得意ゼリフといえば、「九州」「王さんのため」「戻る場所は決まっている」「金じゃない」「背番号2を用意して」などなどだったりしたわけだが、コネ捕手城島マリナーズ退団以降の1週間の騒動のあまりにもみっともなさすぎる結果、もう、そういうたぐいの愚にもつかない寝言、薄っぺらなカッコつけの虚勢を耳にする機会も、もうなくなることになった。すべてがゴミ箱行き。

これで城島本人のみならず、いくら世間知らずのアホウな城島オタクといえど、今後、理由なく王さんの名を自分勝手に引き合いに出して思い上がりに満ちた虚言を操ることは、二度と許されない。ついでに、今後イチローを引き合いに偉そうに何か語るのも止めにしてもらえるとありがたい。

イチローのチームに土足で上がりこんで数年、滅茶苦茶に掻き回した挙句にコネ契約すら捨てて逃げ帰り、王さんの顔に泥を塗って他所に転がり込む。

美学の無さにも程がある。


コネ捕手城島、阪神入団発表。こんどはどこの誰が、「事前に」どんな「コネ」を使ったのか。

甲子園の大声援?
ぬるいねぇ・・・。どこまでぬるいの、あんた。シアトルのおとなしいファンと気性の荒い甲子園を一緒くたにしてるのかね。アホか。


10月15日(日本時間)スポニチによる「予告」報道
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年10月14日、「城島はマリナーズとの契約を破棄し、日本時間20日にフリーエージェントに」 「日本のプロ野球球団、阪神が、年俸5億以上、複数年契約で城島獲得に本腰」と、日本国内で報道された。

10月20日(日本時間)城島マリナーズ退団
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年10月19日、シアトル・マリナーズは城島の3年契約破棄・退団を発表した。

オリックス監督岡田氏
「城島がどこへ行きたいか、知っている」発言
「城島事前交渉契約疑惑」簡単まとめ

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年10月22日、元阪神監督岡田氏の指摘する「城島事前交渉契約疑惑」簡単まとめ(結果:まさにスポニチの「事前」報道と岡田氏の指摘どおり、城島、阪神に入団決定)

ブログからMLP、Most Lukewarm Player認定
「メジャーにトライした日本人選手の中で、最もぬるま湯につかった選手生活を送った選手」

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年10月25日、日本野球は「ぬるい」のか。少なくとも当ブログは自信をもって城島を、MLP(Most Lukewarm Player、「メジャーにトライした日本人選手の中で、最もぬるま湯につかった選手生活を送った選手」)に認定する。

王さんは撤退
鷹にイライラ!?王会長、役目「終わった」 (2/2ページ) - 野球 - SANSPO.COM

野村氏は苦言
ノムさんは城島をボロカス「人間失格」/野球/デイリースポーツonline

阪神入団決定
asahi.com(朝日新聞社):城島、阪神入り決定 日本球界復帰は5季ぶり - スポーツ

【プロ野球】城島の阪神入りが決定 - MSN産経ニュース

城島「阪神にお世話になると決めた」/主要ニュース速報/デイリースポーツonline



メジャーから逃げた城島は予想どおりの展開だからいいとして、それにしても、わが敬愛する昭和日本の至宝、王さんの顔に泥を塗ってくれるとは、な。よくもまぁ。いい度胸だ。

平成日本の至宝イチローの周囲からいなくなってくれて、ほんとうによかった。心の底から思う。

清々した。






October 26, 2009

城島帰国に好意的なコメントをしてくれそうな現シアトルあるいは元シアトルのプレーヤーくらい、ブログ主が考えたってわかるし、数名の名前を挙げるのも簡単だ。そういうところに行って社交辞令をもらってきたからといって、社交辞令以上の話や、城島がメジャーから逃げ帰った野球の上での厳しい経緯など、聞けるわけがない。厳しい意見の持ち主たちの本音を聞いてみろと言いたいところだ。他人の記事をまとめただけの記事でハッピーだのなんだの、ぬるい記事を書かれたんじゃ迷惑きわまりない。
それくらい、日本のメディア、スポーツライターというものは
「ぬるい」。

また、それと同じくらい「ぬるい」ことがわかったのが、城島の帰国が19日(日本時間20日)に発表になったあとの、日本の球界とファンの「メジャー最低ランクの選手の帰国」の「受け止め方」、である。



日米野球が存在したかつての時代は、あまりにも大きいメジャーとの差を毎年痛感させられ続けた時代だったが、実際にどうなのかはともかく、「日本とメジャーは、昔ほどは差はなくなった」と思っている、あるいは思い込んでいる人は多い。
メジャーは現実には、世界中から常に最も優秀な選手たちが凌ぎを削っている場所だから、日本とメジャーの差はけしてゼロにはならないのだが、それでも日本と世界最高レベルの差はそれほどなくなった、と考える人も増えた。どう考えようが、他人の考えだから、否定はできない。


だが城島は、コネを使ったにもかかわらず、メジャー下位球団ですらスタメンが維持できず、ルーキーにすら追い越されても居座り続けた、実績的にも道義的にも、ほぼ最低のランクづけのプレーヤーである。

城島は、2007年までは長期欠場がなかっただけのために見えない形でチームの足を引っ張り続け、シーズン100敗した2008年には目に見える形でメジャー最低成績を残し、2009年にはルーキーに完璧に追い越された挙句に、メジャーをすっかり自分で諦めた、そういう「低レベルのプレーヤー」である。

ごくたまに盗塁を刺せる程度の能力では、コネを使ってですら、メジャー下位チームのスタメンに居座ることさえできない。メジャーがそういう、ダメなものはダメという実力社会であることを、いい加減思い知ったらどうか。

そんなダメプレーヤーに、キャッチャーとしてのメジャー最高レベルの年俸を払っていたシアトルは、冷静に言えばメジャーの下位停滞球団のひとつであり、単に日本人オーナーサイドの「ぬるい」判断で、「ぬるい」高額年俸と「ぬるい」スタメンを「保障」してやっていたに過ぎない。城島がメジャーで実力で勝ち取った名声など何もない。
2007年にはチームの貯金の多くを控え捕手に挙げてもらっておきながら、2008年には、いけしゃあしゃあと正捕手の座に座ったくせに、2008年6月には正捕手をルーキーに明け渡してしまい、にもかかわらず、2009年シーズン開始時には再び正捕手に座りなおしたにもかかわらず、またしても2年連続してシーズン途中に正捕手の座をルーキーに明け渡してしまう。


新人王をとり、両リーグでノーヒット・ノーランを達成した野茂さんを挙げるまでもなく、生活と選手生命を賭しつつ苦労に苦労を重ねてメジャー生活を継続した選手たちもいることをふまえつつ、当ブログは、城島を「メジャーに移籍した日本人選手の中で最もぬるま湯につかった選手生活をした選手」である、といってはばからない。
悔し涙くらいプロなら流して当たり前。そんなことで誤魔化せる話ではない。


言うかどうか憚られたが、言わせてもらうことにした。そんな最低ランクの選手が、日本に帰ったら、どうだ。

3年だの4年だのの、シアトルがあやうく大失敗しかかった長期契約を、日本では改めて提示して、契約金がいくらだか知りたくもないが、またもや高額の年棒を手にするといい、マスメディアは連日報道し、2チームのファンが行き先をやきもきして毎日語り合っているという、この状態。と、いうか、この体たらく。


ぬるい。


ぬるいとしか言いようがない。


誤解されては困るのだが、「帰郷」という感情の暖かさを否定しようというのではない。楽天・野村氏ではないが、引退に拍手したり、引退間際になって古巣に戻るプレーヤーを暖かく迎える人を否定したりしない。(ただグリフィーが来シーズンも現役を続けるのは賛成しない)
だが、城島は現役プレーヤーである。

日本野球全体がいまどういう国際レベルにあるかを判断することは、もちろん軽々にはできない。よくWBCや五輪、W杯などの結果をもとにあれこれ言う人がいるが、そういう短期決戦の結果だけで判断など、できるわけがない。
だが、少なくとも、ブログ主にはプライドがある。城島を大金で出迎えるようなことで、上がりつつあると言われていた日本の、再びのレベル低下を自ら認めるような真似をするわけにはいかない。
メジャーでは最低の選手が日本に逃げ帰っただけのことを、あたかも凱旋帰国のように扱っているのは馬鹿らしいとしか言いようがない。情けないにも程がある。
大喜びし、大金を払って三顧の礼と最高待遇で出迎える、などということは、メジャーと日本との差、世界と日本の差が、ふたたび大きな差になったということを自ら認めるようなものである。くだらない騒動で、目を曇らせたくはない。



メジャーも11月後半になって、ワールドシリーズが終われば、今シーズンのいろいろなランキングが出てくるだろう。城島もかつて様々な不名誉きわまりない数々の賞に輝いたが、今シーズンも、ニューヨーク・デイリーニューズは「がつがつ食うクセに働かない選手、ベスト10」に城島を選ぶかもしれないし、不名誉さに新たな勲章が加わるかもしれない。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2008城島「シーズンLVP」・2009「LTV, Least Trade Value」
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2008年11月29日、二ューヨーク・デイリーニューズは城島を「がつがつ食うクセに働かない選手」9位に選出。
アメリカのメディアであれこれ言われる、その前に、少なくとも当ブログは、日本野球が「ぬるい」と思われないためにも、「ぬるい」スポーツメディアにかわって、自分の手で、自信をもって
城島を「メジャーにトライした日本人選手の中で、最もぬるま湯につかった選手生活を送った選手」、MLP(Most Lukewarm Player)に認定する。






October 25, 2009





2009年の早春にNHKで放送された第2回WBCでのイチローを扱ったアーカイブでよく知られているように、日本ハムの稲葉は、彼が最年長プレーヤーだった第2回WBCで、打撃不調に悩む孤高の男イチローに意を決して声をかけ、イチローのソックスを真似た数人の若手プレーヤーたちとともに、イチローの不振脱出のきっかけを作った。たいへんにキャンプテンシー溢れるプレーヤーである。

その稲葉、2009年秋には、どういうわけか、楽天監督を勇退する野村克也氏の「両チーム胴上げ」の輪の真下にいた。

野村率いる楽天は、最後にエース岩隈をセットアッパーとして投入することまでして、「力尽きるまで戦ったこと」は誰の目にも明らかだった。

だが、岩隈はホームランを打たれて最後の矢は尽き、このゲームを最後に野村はチームを去った。

日本ハム投手コーチで、野村氏がかつて監督を務めていたチームのひとつ、ヤクルトの出身で、メッツなどに在籍した元メジャーリーガー吉井が野村氏に握手を求めに足早に駆け寄る。野村氏と同じキャッチャー出身で、BSのMLB解説もつとめていた梨田氏が、勝利した日本ハム監督であるのに、負けた野村氏のもとに握手を求めに行った。

負けた監督は数度、宙に舞った。

胴上げが終わると74歳の老将は帽子をとりファンに挨拶を済ませ、ひとりダグアウト奥に消えていった。
選手たちはお互いを称えあい握手とハグをかわし続けたが、やがて彼らも両サイドのダグアウトに別れていった。

彼らがグラウンドでふたたび会うのは、
雌雄を決するこの場所に立った日、のみ、である。



力尽きるまで戦うのが彼らの幸せ。
まったく幸せな男たちである。

damejima at 07:14
WBC | 野村克也

October 20, 2009

誰の身にも長い歳月が流れた。

バークがその存在に気づかせてくれた「城島問題」であり、クレメントがハッキリさせてくれた「城島問題」であり、そして、ロブ・ジョンソンが体を張って最終証明してくれた「城島問題」であった。(記事下部に関連記事リンク集)

シアトル・マリナーズ公式サイト
Johjima opts out of contract | Mariners.com: News
Kenji Johjima, the only Japan-born catcher to test his skills at the Major League level, has decided to finish his career where it started -- in Japan.

His four-year career with the Mariners ended on Monday when it was announced that he was opting out of the final two years of his three-year, $24 million contract.


城島退団への最後の決定打になったのは、ヘルナンデスが城島とのバッテリーを拒絶し、ロブ・ジョンソンとの絶対的なバッテリーによって「サイ・ヤング イヤー」といっていい、シーズン通じた好投をみせ、「城島問題」を完全証明してみせたことだったと思うが、それはあくまで最後のダメ出しであって、むしろ「城島問題」に引導を渡したのは、2009シーズン通して、ヘルナンデス、ウオッシュバーン、ベダードの主力投手3人が揃って、勇気を持って城島とのバッテリーを拒絶し、ヘルナンデスの決断を投手陣全体で強力に後押ししたことだと思う。とてもヘルナンデスひとりの判断でできたことではないと思うからだ。アーズマも、シーズン途中で「サンデー・フェリックス発言」をしてくれて、先発投手陣を後押ししてくれた。「城島拒否」は、地元メディアの報道にもあった通り、シアトル投手陣全員の総意だっただろうと確信している。

彼ら捕手陣、投手陣の決断は、文字どおり、自分たちのキャリアと家族との生活を賭したものである。その勇気ある決断に心から敬意を表すとともに、彼らのキャリアが栄光あるものになることを祈りたい。

バーク、クレメント、ウオッシュバーンは放出あるいは移籍し、今はシアトルにいない。だが彼らのことを忘れない。これからも折にふれて書くつもりだ。もちろんついでながらセデーニョやクリフ・リーの今後も(笑)


ウオッシュバーンには、ぜひシアトルに戻ってきてもらいたい。ドルフィンの命名者でもあるロブ・ジョンソンとのバッテリーを復活させ、笑顔を取り戻してもらいたい。
気のいい男である。父の子であり、子の父である。いまでもときどき7月末の、まだポストシーズン争いの行方が定まらないとき、ウオッシュバーンが父親のことを語ったインタビューを読むが、何度読んでも目頭が熱くなる。


かつては「城島問題」の存在を証明する手がかりがなく、よくオカルトなどと言われ理由なきそしりを受けた時代もあった。そういう言いがかりが気になったことなど、一度たりともなかったが(笑)。今シーズンは城島の怪我によって、城島がいないア・リーグ防御率第1位のシアトルと、そうでないシアトルを明瞭に、誰の目にもわかるように比較できた。これで来シーズン以降ようやく、城島のいないシアトル、城島のいないイチローがみられるわけである。

「城島問題」が解消したらLAAが弱くなってくれるわけではないのであって、プレイオフに簡単に出られるわけではない。だが、これでプレイオフ進出へ向かって、ようやく明るい第一歩が築かれた。

スポニチ
この「城島シアトル退団」においては、日米を含め、どのメディアよりも先に嗅ぎつけ、2009年10月15日(日本時間)見事にスクープした。
城島、日本球界復帰へ!阪神入り、ソフトB復帰?(野球) ― スポニチ Sponichi Annex ニュース
マリナーズの城島健司捕手(33)の5年ぶり日本球界復帰が決定した。同球団は19日、城島が球団との残り2年の契約を破棄したことを発表した。城島は球団広報を通じ「難しい決断だったが、日本球界に復帰することを決意した」とコメントした。

時事通信
城島、日本球界復帰へ=マリナーズとの契約破棄−米大リーグ(時事通信) - Yahoo!ニュース
城島への対応「これから話し合う」=ソフトバンク球団代表 - 時事通信 - Yahoo!スポーツ

日刊スポーツ
城島「今が帰国する潮時と感じている」 - MLBニュース : nikkansports.com

Sports Illustrated電子版 (ソースはAP通信)
Seattle Mariners' Kenji Johjima opts out of lucrative contract - MLB - SI.com
"Veteran starters complained about how Johjima handled games."

Sports Illustrated電子版 マリナーズ・ニュースページ
Seattle Mariners News, Schedule, Photos, Stats, Players, MLB Baseball - SI.com

Seattle Times
シアトルで最も有力な地元紙。「城島問題」の存在を地元紙として最も先に記事化した。
Mariners Blog | Johjima's agent: Mariners owe nothing | Seattle Times Newspaper
Seattle Times
Mariners Blog | Don Wakamatsu on Johjima, Hines | Seattle Times Newspaper

Seattle Post Intelligencer (ソースはAP通信)
Johjima opts out of last 2 years of contract

The News Tribune
Kenji Johjima opts out of final two years | Mariners Insider
More damaging was the philosophical difference between a Japanese catcher and big-league pitchers he handled. Johjima’s 11 seasons playing in Japan had locked him into pitch-calling that often flew in the face of the way his staff wanted him to work in Seattle.

Johjima liked to stay away from the fastball early in the count and rely upon it heavily when a pitcher fell behind. A number of Mariners veteran pitchers – from Jarrod Washburn and Felix Hernandez – went to their manager and asked to work with another catcher.

Pro Ball NW (旧 Bleeding Blue and Teal)
So Long, Joh-K | Pro Ball NW
When he was extended– a move reportedly made above then-GM Bill Bavasi’s head– everyone was shocked as Jeff Clement was just about MLB ready and Johjima was in the midst of a terrible slump that he never fully pulled out of.

My Northwest (ソースはAP通信)
Johjima opts out of last 2 years of contract - MyNorthwest.com

Mariners Blog by Shannon Drayer
Joh Leaves the Mariners, What Now For Both - MyNorthwest.com

Mariner Locker
Seattle Mariners » Kenji Johjima opts out of the final two years of his contract with the Seattle Mariners






城島のシアトル退団がハッキリしてから書こうと思っていたことが、ひとつあった。それを書く。
日本のプロ野球ソフトバンクで正捕手をつとめる田上(pronounce "Ta-no-wo-e")というキャッチャーのことだ。


先日、日本のパシフィック・リーグ王者決定戦、(メジャー風にいうとPLCS、Pacific League Championship Series)いわゆるクライマックス・シリーズ(Climax Series)で、シーズン3位のソフトバンクは2位楽天に敗れてペナント争いから去ったが、このゲームでは、2005年にドジャースでスターターだったホールトン投手が先発し、楽天・山崎に決勝3ランを打たれたのが敗因になった。

Yahoo!プロ野球 - 2009年10月17日 楽天vs.ソフトバンク

D.J. Houlton Statistics and History - Baseball-Reference.com

D.J.ホールトン - Wikipedia

この両チームの普段の野球を年に100ゲームくらいは見て、多少はチームの戦略やプレーヤーの個性がわかっているならともかく、ほとんど知らないので、ゲーム自体の勝敗の原因と結果どちらも、あれこれ言うつもりはない。

だが、気になる点がある。
ソフトバンクのホールトンが決勝ホームランを打たれた場面のことだ。

結論を先に言えば、この場面でのキャッチャー田上のリードぶりは「城島そっくりのアウトコースにかたよった配球」である。
城島が日本球界に復帰することになったことでソフトバンク・ファンの方々の一部は「城島がソフトバンクに復帰してくれれば、バッテリーのリード面が大きく改善され、チームはかつてのような常勝球団に復帰できる」と考える人もいらっしゃるようだが、それがわからない。

城島は日本人投手へのリードにおいても、WBCで繰り返しヘマをしていることは何度も記録にとどめてきた。ソフトバンクの投手でいえば、WBC壮行試合の巨人戦で、ソフトバンク杉内投手をリードしたゲームで、巨人アルフォンゾにチェンジアップをホームランされ、解説の古田にリードを批判されている。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:カテゴリー:WBC
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:カテゴリー:杉内


この山崎のホームランの場面、たまたま見かけただけだが、なかなかシチュエーションの前提が複雑だ。

このゲームは、負ければソフトバンク敗退というゲーム。背水の陣のはずであり、ランナーがサードに出た場面で、3番鉄平を敬遠してまで、4番との勝負に出た。絶対に打たれては困る場面だ。(だから敬遠後、投手を交代させる、という手段もあったはず)
なぜホールトンで強打者であるはずの楽天4番打者と勝負したかについては、理由がある。楽天の3番が小技もできて好調だというのもあるが、なにより、解説伊東氏によれば、ホールトン投手は打者山崎に対して、この打席の前の2打席は「インコースを攻めて凡退させている」というのだ。

ならば、だ。
ソフトバンク側は、敬遠までして勝負するのだから、山崎に対して三度目のインコース攻めにでもするのかと思ったが、どうしたものか、そうではなかった。

この場面でのホールトンの配球はこうだ。(日本にはGameDayのような便利な記録の道具がない。配球を画像化して資料として残せないのが残念だ)


アウトコース一杯 ストレート 見逃し。きわどいがボール判定
アウトコース    変化球   空振り
真ん中高め    ストレート ホームラン


初球は、ほんとうにきわどかった。ストライク判定してよかったように思うが、アンパイアはボールにした。おそらく投手ホールトンも、捕手田上も、判定には不服だったはず。顔にも出ていた。2球目は外のスライダーかなにかをうまく振らせ、空振り。問題は3球目だ。
ホームランを打たれた3球目は、キャッチャー田上はアウトコースにミットを構えており、田上は初球から続けて3球目のアウトコースを要求、アウトコース一辺倒の攻めであることが判明する。メジャーでも城島がよくみせた(過去形)、ピンチの場面特有のリード方法である。(城島の場合、セカンドへの送球に支障がないようにするためか、特に左バッターのケースで非常に多くアウトコースを使っていた。山崎は右バッター)


なぜまた、初球で外側の判定が非常に辛いことがわかっているにもかかわらず、3球目にも同じコースのストレートを要求したのか? ボール1個分かそこら内側に寄せてストライクにしたかったのか?
投手心理としては、弱気なタイプなら初球をボール判定されて「投げにくいな・・」とナーバスに考える投手もいるだろうし、強気なタイプなら「なんとしてでもアンパイアにストライクと言わせやる!」と意地になるタイプもいるだろう。いずれのタイプにせよ、この場面では投手の立場からは、カウントを悪くもしたくないし、コントロールが万全にはできにくいシチュエーションには違いない。
そして結局、投げたボールは真ん中に甘く入ってしまい、ホームラン。ゲームが決まってしまった。


「城島問題」について何度か書いたことだが、投手というものは同じコースを続けて投げたり、同じ球種を続けていると、だんだんコースが甘くなり、また内側にボールが寄っていくもの、である。
それにホールトンの得意球はカーブなどであって、ストレートは、球威・コントロールともに、それほど自信があるとは思えない。ならば、キャッチャーは、投手の得意な球を生かすことを考えずに、しかも、インコースで2度打ちとっている打者に対して、なぜワンパターンな「アウトコース一辺倒」にこだわる必要があるのか。
まったくピンチでの失点ぶりが城島に似ている。



ブログ主は常に、こういうホームランを「投手の失投」と馬鹿のひとつ覚えのように言って投手をけなしているだけでは「チームの不用意な失点はなくならない」、という考えのもとに野球というゲームを見ている。

投手という生き物は、失投して当たり前の生き物だ。コントロールミスしない投手など、いない。ミスはゼロにはできない。
だがチームの不用意な失点はなくしたい。だからこそ「失投しやすいシチュエーション」があることを理解し、分析して、そのシチュエーションにはまりこむのをできるだけ避けるのが、「配球」というタスクの意味のひとつだと考えている。
配球は、別にバッターをゴロだのフライだのと、小器用にアウトにさせるためだけにあるのではなく、「起こるべくして起こる失投」を回避する意味でも存在している。
例えば、先日のナ・リーグ優勝決定戦で登板したクリフ・リーは「ド真ん中に投げてもバッターがバットを振ってこれないような配球」をしている。そもそも「失投」そのものが起こりえない配球をしているのである。
メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(9)クリフ・リーのプレイオフ快刀乱麻からの研究例:「カーブとチェンジアップ、軌道をオーバーラップさせ、ド真ん中を見逃しさせるスーパーテクニック」

この田上のケースは「失投しやすいシチュエーション」にわざわざ変化球投手ホールトンを無理のある配球で追いつめてしまっているように見える。ホールトンは針の穴を通すコントロールの持ち主ではない。
例えばコントロールが甘く、球が真ん中に寄るのを避けるためには「同じコースを何度も何度も投げ続ける」、特に、「同じ球種を同じコースに何度となくキャッチャー側が要求しつづけること」を避ける必要があると思っているわけだが、その点で、田上も城島も、やっていることはほとんどかわりない。
投手の得意不得意おかまいなしに、アウトコースにばかりボールを要求し、球種だけかえることで「目先の味つけ」をかえて、打者の狙いをなんとかそらそうとしているだけのことだ。
リスクを回避している「つもり」になっているだけで、かえって「リスクを自分から招きいれて」いる。


この場面、もし城島がキャッチャーだったら、
ソフトバンクは楽天に勝てていたか?

まったくそうは思わない。


ちなみに、ソフトバンクの選手同士が似ている、という話は、守備の城島と田上ばかりではない。打撃面で、城島と井口も「そっくりさん」同士なのだ。

Baseball Reference
(http://www.baseball-reference.com/)は、MLBを扱うデータサイトの大御所中の大御所であり、MLB所属の各プレーヤーに関して膨大な古今東西のデータを有していて、もちろん城島の詳細なデータもある。

このサイトの城島ページに、年度別の打撃成績を、「古今のMLBプレーヤーと比較して、似ている打者をみつけだす」という項目があるのだが、この項目のトップ、つまり、最も似ているプレーヤーの2007年、2008年の1位が、なんと、元ソフトバンク、現ロッテの井口なのである。2009年も井口が2位である。

世界中から集まったあれほどの数の選手がプレーするMLBにおいて、データの豊富なことではどこにも負けないBaseball Referenceが選ぶ「城島のそっくりさん」が、元チームメイト井口だというのだから、どれだけ狭い話かがわかる。チームカラーというものは怖ろしいものだ。

Kenji Johjima Statistics and History - Baseball-Reference.com

Kenji Johjima Batting Similarity Comparison Age-Based - Baseball-Reference.com


企業にも社風という風土があるように、野球のチームにもチームカラーというものがある。その城島と、田上、井口がそっくりな理由は、ほかの言葉では説明できそうにない。ある意味、城島はそういう日本での自分のカラーが抜けないままメジャーに居座ろうとして結局失敗したわけだが、それも「チームカラーという風土病」のもつマイナス面ではある。

日本での野球が染み付く前にメジャーに行こうと考える若者はこれから増えるだろうと思う。こんどシアトルにかわって「城島問題」を抱えるのは、日本のプロ野球チームである。日本の野球しか見たことのないファンにも、そのうち「城島問題」の意味がわかるときが来ると思う。






October 19, 2009

ずっとこのブログで取り上げてきた、あのクリフ・リーがNLCS、ナ・リーグ優勝決定戦の第3戦に先発した。黒田には申し訳ないのだが、結果は最初からこうなる、つまり、大差がつくと思っていた。サイ・ヤング賞投手クリフ・リーと黒田では、モノがあまりにも違いすぎる。
まだゲームは続いているが、10奪三振、無四球。クリフ・リー快刀乱麻で、フィリーズの勝ちは間違いない。
Phils back Lee's gem in Game 3 rout | phillies.com: News

LA Dodgers vs. Philadelphia - October 18, 2009 | MLB.com: Gameday

クリフ・リーの素晴らしいピッチングで特に圧巻だったのは、7回の1死2塁から、マニー・ラミレス、マット・ケンプを連続三振にうちとったシーン。たいへんいいものを見せてもらった。

このゲームでクリフ・リーが7回までに打たれたヒットはわずか3本しかないが、うち2本がマニー・ラミレスである。だがマニーにはヒットを打たれた、というより、長打を許さず、ドジャース打線を調子づかせないピッチングを徹底したと言えるわけで、これはこれで成功である。たとえマニーにシングルを打たれても、次の打順のケンプさえ抑えておけば、フィリーズ側にとって何も問題はない。

しかしながら、こと、この7回の1死2塁に関してだけは、マニー・ラミレスに対するクリフ・リーの気合と気迫が違った。「絶対に三振させてやる!」という、なんとも激しいオーラがクリフ・リーから発せられていた。

案の定、ラミレス、ケンプ、2者連続三振。

2009年10月18日 5回無死1塁クリフ・リー ケンプをカーブで三振ナ・リーグ優勝決定戦 第3戦
5回表 無死1塁
マット・ケンプ 三振

これは5回のケンプの三振。最後はインローのカーブで三振していることに注目。この目に焼きついたカーブを、次の打席でこんどはボール球として有効に使い、ケンプを翻弄した。素晴らしい配球。


2009年10月18日 7回クリフ・リー マット・ケンプを三振ナ・リーグ優勝決定戦 第3戦
7回表 2死2塁
マット・ケンプ 三振

7回の2死2塁では、ケンプへの3球目にカーブを真ん中低めに落としておいて、4球目のチェンジアップを同じ軌道で投げて追い込んだ。4球目はド真ん中だったが、5回にカーブで三振している後では、この同じ軌道の球にケンプは手が出せない。クリフ・リーのスーパー・テクニックだ。


カーブはマット・ケンプにだけ投げたわけではなく、他の打者にも投げている。だが、上に挙げた画像からわかるようにを、5回表の無死1塁の打席でケンプは「高めの球で追い込まれ、最後は低めいっぱいのカーブで空振り三振」している。ここが重要。
きっとケンプの目とアタマには「カーブの軌道」が焼きついたことだろう。


7回のケンプの三振でも、3球目にカーブを投げたが、こんどは「真ん中低めに落ちてボールになるカーブ」。使い方が、あまりにも素晴らしい。
ほれぼれするとは、このこと。クリフ・リーの「ド真ん中を打者に振らせない配球」、コントロールの良さ、変化球のキレ、そしてなにより、マウンドでの落ち着きと気迫。全てが素晴らしい。

3球目カーブの次に、4球目としてチェンジアップを、ほぼド真ん中低めのホームランコースに投げているわけだが、打者ケンプはあっさり見逃して、カウントを追い込まれている。
4球目のド真ん中を打者に振らせないで、見逃させることができたのは、3球目のカーブがあるからだ。「5回に三振をとったカーブを、こんどはボール球として利用」して、こんどはチェンジアップを「同じボールの軌道からど真ん中にほうりこむこと」によって、打者にバットを振らせなかったのである。

3球目と4球目は、打者目線で、「ほぼ同じ軌道」で来る。そこがポイントだ
3球目のボールになるカーブが75マイル。そして、4球目の、ほぼド真ん中のチェンジアップが85マイルで、球速にさほど差がない。
「前の打席での三振、そしてこの打席での3球目・・この4球目も真ん中低めに落ちてボールになるのでは・・・?」と、打者ケンプがバットを出しかねて迷った瞬間に、すでにボールはすっぽりキャッチャーのミットに納まっている、という次第だ。

素晴らしい。

このブログで、メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」damejimaノートというシリーズで、「カーブを有効にするための高めのストレートの使い方」という研究例を挙げた。
これは、まず「高めのストレート」を投げておいて、次に「カーブを同じ軌道に投げ」、2つの球の軌道をかぶらせることで打者の目をくらませて、凡退させる、という「軌道のオーバーラッピング」の手法。
この記事はもともと、低めの球を最初から最後まで投げ続けるような低脳なリードを批判し、高めの球を有効に使う例として挙げたものだ。この記事だけでなく、シリーズ全体を読んで意図をしっかり読み取ってほしい。

上に挙げた5回表無死1塁で登場したケンプの三振でも、クリフ・リーはさんざん高めの球を使ってケンプを追い込んでおいて、それから決め球として、インローいっぱいにカーブを投げ、空振り三振させている。高目を有効に使って、最後のカーブに誘導したのである。
コネ捕手城島のごとく、「ピンチではアウトローに投げていれば打ち取れる、かもしれない」などという低脳リードは、意味のわからない迷信、ただの馬鹿リードだ。
今日の黒田にしても、初回1死から連打されたシングルはどちらも「アウトコース、コーナーいっぱいの球」。ハワードの三塁打が「真ん中低めの直球」。ワースの2ランが「アウトコース低めの直球」。臆病さと「低めという迷信」にとらわれている上に、工夫も知恵も足りない。

メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(4)「低め」とかいう迷信 研究例:カーブを有効にする「高めのストレート」

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:カテゴリー:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」damejimaノート

クリフ・リーの使った「投球の軌道を打者の目から見てダブらせるテクニック」は、カーブを真ん中低めに落としておいて、それから同じ軌道をつかって、こんどはチェンジアップ、つまり、カーブほど曲がらない変化球を「ド真ん中に投げて、しかも振らせないことに成功している」のである。

クリフ・リー。さすが名投手である。
アウトローのスライダーしか頭にないコネ捕手城島などに、これほどのハイレベルの配球ができる可能性は、まさに「ゼロ」である。

ちなみにクリフ・リー。114球投げて、ストライクは76球。ボールは、そのピッタリ半分の38球。つまり、「ストライク2に対して、ボール1」。ぴったり、セオリー通りのピッチングである。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年10月5日、ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係を解き明かす。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年10月6日、ヘルナンデスと松坂の近似曲線の違いから見た、ヘルナンデスの2009シーズンの抜群の安定感にみる「ロブ・ジョンソン効果」。

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October 16, 2009

Philadelphia vs. LA Dodgers - October 15, 2009 | MLB.com: Gameday

さすーが、ラウル。
満員のドジャーズ・スタジアムをすっかり静まり返らせてしまった(苦笑)
あれはわかってないと打てない球速だ。ぜひ彼には「投手が元同僚のシェリルだから、初球はスライダーとわかっていたのか?」と聞いてみたいものだ。


いま、まさにシアトルからワールドシリーズチャンピオン、フィリーズに移籍したラウル・イバニェスが、シアトルからボルチモアへ、さらにドジャースへと「栄転」移籍したジョージ・シェリルから、初球のゆるんゆるんのスライダーを、ライトスタンドへ3ランを打った。これでフィリーズのリードは4点。(そのあと、ドジャースが2点返した)
両方とも大好きな選手だけに、複雑な気分だ(苦笑)シェリルが緊迫していたゲームを壊してしまったのは残念だが、次の登板機会では本来の実力を見せてもらいたい。
イチローとのコンビでたくさんの打点を挙げてくれたイバニェスが活躍するのを見るのは、とても嬉しい。四球を出した後に打席に入った打者が初球ストライクをとりにくる球を強振する、まさしくセオリーどおりのプレーなのだが、こういう基本に忠実なプレーがとても大事なのであって、こういうセオリーどおりのプレーがきちんとできるのがラウル・イバニェスの素晴らしさだ。

もしこのゲームがフィリーズの勝ちで終わるなら、フィリーズの勝因は、攻撃ではもちろんイバニェスの決勝3ランだが、守りの面でも、大チャンスで二度打席に立ったマニー・ラミレスを徹底的にインコース攻めしたフィリーズのバッテリーワークが見逃せない。
全体にドジャーズ打線は、高めのボールになる96から97マイルのストレートを空振りしすぎる。貴重なチャンスを何度も潰した。この点は絶対に修正しないと、2戦目以降にも間違いなく同じ目にあう。


イバニェスがワールドシリーズに出られるような強豪チームで活躍できたのはうれしい。彼がシアトルに残らなかった、というより残れなかったのは、彼の複数年契約のための予算がシアトル側になかったため、というようなことらしい。コネ捕手城島に無駄な大金を使うくらいなら、なぜ技術だけでなくマインドも素晴らしいプレーヤーである彼に使わないのか。残って欲しかったプレーヤーのひとりである。まったく3年24M、無駄金を使ったものだ。


ちなみに、このシリーズ、第3戦のフィリーズ先発はサイ・ヤング賞投手クリフ・リー。楽しみである。クリフ・リーの嫌ったビクター・マルチネスを正捕手にしたボストンはほぼ無抵抗に敗退したが、クリフ・リーを獲得したフィリーズはリーグ優勝を争って戦っているのだから、クリフ・リーも移籍したかいがあったというもの。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:クリフ・リー関連(ビクター・マルチネス含む)






October 15, 2009

ニュースが飛び込んできた。


いくつか記事があるが、ソースはどれも日本の代表的なスポーツ新聞のひとつ、スポニチ。記事の初出は日本時間2009年10月15日12:00付けとなっている。
いわゆる「飛ばし記事」だと見るむきも多かったが、翌16日になって、阪神球団側が獲得希望を認める記事が追加された。(追加:10月16日付けの追加記事

なにぶん、このブログは現地時間を基準に日時を表記しているので、1日分、タイトルがズレる。理解しておいてほしい。
別にまだコネ捕手城島のマリナーズ退団と移籍報道が広くなされたわけでもなんでもない。だが、このブログに対する英語ブラウザからのアクセスは、割合を明らかにすることはできないが、けして少なくない。この日本国内で最初に流される「城島、マリナーズ退団」と「NPB阪神の城島獲得表明」記事を英語で読む人、あるいは英語ブラウザで読む人たちのために記事にしておかなければならないと考えて記事にしている。


article 1

城島、マ軍との契約は…イベント、PR撮影キャンセル(野球) ― スポニチ Sponichi Annex ニュース
2009年10月15日 12:00
(一部略)
城島は今オフのマ軍のイベントや来季のPR撮影などもすべてキャンセルし、既に日本に帰国。20日にも、マ軍との契約を破棄し、フリーエージェント(FA)となるとみられる。
阪神では電鉄本社を含めた球団内部で「マリナーズを退団してフリーとなれば獲得に向かう」との意見統一を終え、年俸5億円以上に加え、出来高払い、複数年契約など付帯条件にも応じるなど最大限の誠意を示していく。


以下は、英語圏のブログ読者のために報道内容の一部だけを機械英訳したもの。

Essence of the above-mentioned article

城島はシーズンオフに予定されていたマリナーズのイベントと来季のための写真撮影もすべてキャンセルし、既に日本に帰国している。20日にも、マリナーズとの契約を破棄し、フリーエージェント(FA)となるとみられる。
Johjima cancels all events of Mariners and shooting images for the next season scheduled at the offseason, and has already returned home to Japan. It is expected that the contract with Mariners is annulled, and he will become free agent on October 20 in Japan standard time.



article 2

阪神 城島獲得へ!特約条項あった!(野球) ― スポニチ Sponichi Annex ニュース
2009年10月15日 12:00
阪神が、大リーグのマリナーズ・城島健司捕手(33)の獲得に動く方針を固めたことが14日までに分かった。2009〜11年の3年契約をマ軍と結んでいる同捕手だが、同契約には日本球界復帰を認める特記事項があり、日本球界復帰に支障はない。5年ぶりにBクラスに沈んだ阪神は再建への目玉として、メジャー現役捕手で主砲としての働きも期待できる城島獲りを決断。年俸5億円以上、複数年契約を用意して、不退転の決意で臨む。(中略)
城島はマ軍と2009年から11年までの3年総額2400万ドル(約21億3600万円)の契約を結んでいるが、09年から各シーズン終了後に日本の球団でプレーする意思を示した場合、残りの契約を破棄できる特記条項を含んでいる。移籍先は日本の球団限定で、マ軍以外のメジャー球団への移籍は認められていない。このため、城島の5年ぶりの日本球界復帰に契約上の支障はない。


Essence of the above-mentioned article

日本のプロ野球球団、阪神が、マリナーズ城島の獲得を表明した。
The Japanese professional baseball team, Hanshin declared the acquisition of Mariners Johjima.

阪神は城島に対して年俸5億円以上の複数年契約を用意しており、獲得の決意は堅いようだ。
Hanshin prepares the multiyear contract for Johjima for the annual salary 500 million yen or more, and the decision of acquisition seems to be firm.

阪神には矢野というベテランキャッチャーがいるが肘の怪我に悩まされ、若いキャッチャー狩野はリード面に不安があるといわれている。
Hanshin has a veteran catcher Yano. However, he is annoyed by the injury of the elbow. Moreover, a younger catcher Kano is said that there is still deficiency of ability to propose sequence of pitches to pitcher.


article 3

城島 どうなる「復帰するならホークス」の約束(野球) ― スポニチ Sponichi Annex ニュース


article 4  追加記事 

阪神オーナー 城島獲りへお金は「惜しみなく使う」(野球) ― スポニチ Sponichi Annex ニュース






October 13, 2009

ちょっと時間があいてしまったが、ヘルナンデスとロブ・ジョンソンの「サイ・ヤング バッテリー」が19勝目を飾った最終テキサス戦のことを書いてみる。
Texas vs. Seattle - October 4, 2009 | MLB.com: Gameday


このゲームについては、すでに初出の記事で「高めの球を効果的に使った好リード」と、明確に書いておいた。もちろん、ちゃんと理由があってのことだ。
2009年10月4日、ロブ・ジョンソン、高めの球を効果的に使った好リードや8回の刺殺などでヘルナンデスに5連勝となる19勝目、ついにア・リーグ最多勝投手達成!!

ロブ・ジョンソンの今シーズンの英雄的な勝率の高さについては、馬鹿な城島オタや、データも無しに「気分」でモノを言ったり書いたりする評論家やライター、あまりバッテリーワークの細部を見ずにモノを言うアホウが、雁首そろえ、しかもジェラシー丸出しにして(笑)、「勝てるヘルナンデスを担当しているんだから、勝率が高くて当たり前」みたいな、理にあわないことを言う場面を何度となく見せてもらって、いつも腹を抱えて笑わせてもらっていたものだ。こんな馬鹿丸出しの話はない。
ヘルナンデスを担当するだけでサイ・ヤング賞がとれるなら、コネ捕手城島だって去年まで3年連続でサイ・ヤング賞とはいわないまでも、ヘルナンデスやウオッシュバーンに月間最優秀投手くらい受賞させていなければおかしいわけで、理屈にあわない。
いい大人が子供でもわかるヒガミをクチにして得意げになっていては、恥をかくだけだ。

今シーズンのロブ・ジョンソンとヘルナンデスのバッテリーについては、何度も記事を書いたが、思うのは、「彼らはすべてのゲームで成功してきたわけではない」ということだ。
ときには、ストレートにキレがないために、なかなかストライクがとれないゲームもあった。また、初回から相手チームにヘルナンデスの配球の基本であるストレートに狙いを絞りこまれ、対応に苦しんだゲームもあった。特に8月は、対戦相手が思い切って狙い球を絞るゲーム運びをしてきたケースが続き、相手打線の狙いをはぐらかすのに苦労したものだ。
だが、たとえ対戦相手から研究され、スカウティングされようと、それを乗り越え、相手を研究し返し、苦しいゲームを乗り切ったときに、はじめて、「ア・リーグ最多勝」「月間最優秀投手2回」「サイ・ヤング賞有力候補」というような、栄冠が得られるものだ。

名誉がなんの苦労もなく手に入るわけはない。
勘違いしてもらっては困る。



まぁシーズンも終わったことだし、そんな苦労の多かったロブ・ジョンソンにとって、名誉あるシーズンの締めくくり、集大成になった最終テキサス戦をサンプルに、今シーズンのバッテリーとしての工夫ぶりや、ロブ・ジョンソンの「引き出し」の多さについてのメモを書きとめておこうと思う。


このテキサス最終戦で、ヘルナンデスが対戦した打者は25人。
ゲームを見ていても「高めの球をうまく使っている」と感じたわけだが、後で調べてみると、ヘルナンデスが「初球に高めのボールを投げた打者」が9人ほどいる。対戦したバッターの3分の1程度には、だいたい同じ球を高めに投げていることになる。
この「3分の1」、というのが、いかにもロブ・ジョンソンらしさである。これが2分の1になって、相手に読まれてはいけないのである。

2回 ティーガーデン 三振
2回 キンズラー   レフトフライ
3回 ジェントリー  サードゴロ
3回 ジャーマン   ライトフライ
4回 マーフィー   レフトライナー 左打者
4回 ブレイロック  三振 左打者
5回 ジェントリー  ショートゴロ
7回 ブレイロック  四球 左打者
7回 ティーガーデン サードゴロ
(7回 ジェントリー レフトライナー 投手メッセンジャー)

初球、右打者には(1人をのぞいて)「インハイ」、左打者には「アウトハイ」に投げている。球種はほとんどがストレート。
要するに、投手ヘルナンデス側からみれば、「9人に、初球をまったく同じコースに投げた」ということだ。投手にしてみれば、同じコースに投げればいいわけで、たいへん投げやすいはずで、余計な気を使う必要がなく、精神的な疲労感が軽減できる。


なぜ、これら9人のバッターに「高めの球から入ったか」といえば、理由は簡単だ。
テキサス打線の大半が「高めの球、特にインハイが苦手だから」だ。

だからこそ、これらのバッターはのべ9人が9人とも、ヘルナンデスとロブ・ジョンソンのバッテリーの「高めの初球」をヒットすることはできなかった。4人がストライクを見逃している。

初球の高めの球を打てないテキサス打線
2回 ティーガーデン ボール
2回 キンズラー   見逃しストライク
3回 ジェントリー  見逃しストライク
3回 ジャーマン   見逃しストライク
4回 マーフィー   空振り
4回 ブレイロック  見逃しストライク
5回 ジェントリー  ファウル
7回 ブレイロック  ボール
7回 ティーガーデン ボール

FOX SportsのMLBページでは、Hot Zoneといって、打者のコース別の打率を、上下左右に9分割したコース別に公開してくれている。
それをみると、テキサスの打者はかなりの数、というか、大半の打者が「高め」を苦手にしていることがわかる。あの巧打で知られる右打者キンズラーでさえ、インハイは苦手なのだ。

ボーボン インハイとアウトローが苦手
Julio Borbon, Center Field, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
マーフィー 典型的にハイボールヒッター
David Murphy, Left Field, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
ブレイロック  インハイとインローが苦手
Hank Blalock, Designated Hitter, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
キンズラー インハイとアウターハーフが苦手
Ian Kinsler, Second Base, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
ティーガーデン インハイが苦手
Taylor Teagarden, Catcher, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
ジェントリー アウトコース低めしか打てない
Craig Gentry, Center Field, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
ジャーマン 高めがまったくダメ。逆に低め、インコースは強い
Esteban German, Second Base, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN

では、
Hot Zoneの示すような「データ的に打率の低いコースに投げてさえいれば打たれない」のか? 打者全員に「初球は打率の低いコースを投げていれば、初球だけは打たれないですむ」のか?

いやいや。そんなわけがない。
それでは打者に配球を読まれてしまう。読まれたら終わりだ。だから「3分の1」の打者にしか、「初球 高めストレート」を使わない。

それに、インハイの打率が低いからといって、それが本当に苦手コースかどうかは正確にはわからない、ということもある。インハイに投げてくる投手が少なかったとか、インハイのサンプル数が少ないだけ、という可能性だってある。



プロの打者というものは、たとえそれが苦手なコースや球種のボールであっても、あらかじめ「来る」とわかっていれば打ててしまう。まして、160キロの速球であろうと、超高速のブレる球、ナックルであろうと、どんな球でも打ちこなしてしまうのがメジャーだ。

余談になるが、どうも「ボールが投手の指を離れ、ボールがホームプレートに到達するまでのリーチ時間」と、「通常の人間の反射スピード」を単純に比較すると、「ボールのスピードや変化のほうが早すぎて、とても打てるはずはない」らしい。
では、なぜプロのバッターがバットにボールを捉えられるのかといえば、トレーニングによって反射スピード(「カラダが反応する」というやつ)を上げている以外に、異常なほどの天性の動体視力、投手のフォームのクセに対する「読み」、配球から次の球種やコースを予測する「読み」など、さまざまな能力がからむことで、それではじめて「打てる」ということらしい。


「初球にテキサス打線の苦手な高め」はいいが、
2球目だって問題だ。

以前に「メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」damejimaノート」というシリーズで紹介した「メジャー捕手と城島の『対角パターン』の正反対ともいえる違い」を思い出してもらいたい。
もしこれがコネ捕手城島なら、「インハイにストレート」を投げたからには、次の球は「アウトコース低めいっぱいの変化球」、とくにスライダーを投げそうなものだ。
城島のよく使う「対角パターン」というやつだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」damejimaノート

だが、しかし、今回とりあげた9人の打者に、ロブ・ジョンソン、ヘルナンデスのバッテリーは、一度も「2球目に、アウトコース低めコーナーいっぱいにスライダーを投げる」ような、無駄に力が入って神経質なだけで、労力のかかる無駄なことをしていない。

たしかに初球に高めを投げた9人のうち、2球目に変化球を投げるケースは半数ほどある。だが、どのケースでも2球目に投げたのは「真ん中低め」(数人は「真ん中」に投げてしまっているが、これはおそらくコントロールミスの可能性が高いだろう)であって、カーブ、スライダー、チェンジアップを投げわけている。もちろん、「真ん中低め」を決め球に使うのは、メジャーの配球のパターンのひとつである。
この結果、何人かの打者は2球目で打ちとっている。また、こうした組み立てをしたのは、2回から5回と、7回の5イニングだけで、1回と6回は組み立てをまったく変えている。

要は、ロブ・ジョンソンとヘルナンデスは「高めから入る組み立て」においては、「2球目で打ち取れるものなら打ち取って、さっさとイニングをすませたい」のであって、ひとりに6球も7球も使って無理矢理三振をとりたいと最初から考えて、意味不明な苦労をみずから背負い込んで投げているわけではないということ。
そもそも「2球目に素晴らしい変化球をアウトコースコーナーいっぱい、いっぱいに使って、絶対に打者のバットを振らせない、きわどいピッチング」をしなければならない必要性など、どこにもない。
気楽にやればいいいのだ。それが、2009年5月にアーズマの言った「サンデー・フェリックス」だ。

カテゴリー.:「サンデー・フェリックス」byアーズマ

2009年5月24日、デイビッド・アーズマが「ヘルナンデスがロブ・ジョンソンと組むゲームと、城島と組むゲームの大きな違い」を初めて証言した。

一応いっておくと、ロブ・ジョンソンバッテリーに「三振を最初から獲りにいく配球戦略」がないのではない。実際、このゲームの6回には、突然、「低めから入る配球」に切り替えて、テキサス打線をズバズバと3者三振に切ってとっている。

そのことについては、また後のほうで書く。






October 07, 2009

19勝を達成したヘルナンデスとロブ・ジョンソンのバッテリー
シーズン最終戦を勝ち、ハグする
ヘルナンデスとロブ・ジョンソン


予想どおり、9月のア・リーグ最優秀投手にヘルナンデスが選ばれた。おめでとう、フェリックス。あとはサイ・ヤング賞の発表を待つのみだ。
サイ・ヤング賞が獲れるとこを心から祈っている。

9月は6登板。5勝0敗、防御率1.35。46回2/3と、9月は途方もないイニング数を投げたが、自責点はわずかに7だった。

Hernandez named AL Pitcher of the Month | Mariners.com: News

ヘルナンデス関連の動画(MLB公式)
Multimedia Search | MLB.com: Multimedia


ロブ・ジョンソンはこれで、6月のヘルナンデス、7月のウオッシュバーンに続き、担当する投手が3度目の月間最優秀投手受賞となった。彼の優れた資質を表現しきったシーズン、キャッチャーとしての名誉ある最高の2009シーズンに、立ち上がってスタンディング・オベイションし、心からの拍手を送る。

おめでとう、ロブ・ジョンソン。


2009年7月3日、ヘルナンデス、6月のア・リーグPitcher of Monthを受賞。6月に彼の球を受けたバーク&ロブ・ジョンソンにとっても名誉の受賞となる。

2009年7月5日、城島のいない6月を過ごすことができたフェリックス・ヘルナンデスは、6月の3勝ERA0.94で月間最優秀投手を獲得、ようやくオールスター出場を手にいれた。

2009年8月4日、ウオッシュバーン、7月のア・リーグPitcher of Month受賞!ロブ・ジョンソンは6月ヘルナンデスに続き2ヶ月連続で月間最優秀投手を輩出、キャッチャーとしての揺るぎない優秀さを証明した。

Players of the Month | MLB.com: News



シアトル公式サイトの受賞記事によれば、今シーズンのヘルナンデスは、まさに記録づくめ。

サバシアと並んでア・リーグ最多勝タイだが、勝率も.792で、これもア・リーグトップ。ロードゲームでの防御率1.99は、メジャートップ。奪三振217は、ア・リーグ4位。

またヘルナンデスは、球団史上200奪三振以上を達成した5人目のピッチャーとなった。さらに、ひとつのシーズンで、200イニング以上の登板、奪三振200以上、15勝以上の勝ち星、3.00以下の防御率を同時達成したのは、将来の殿堂入り確実の名投手ランディ・ジョンソン以来の快挙。


ヘルナンデスの全登板
Felix Hernandez Stats, News, Photos - Seattle Mariners - ESPN

4月6日  6回自責点1  城島 QS
4月11日 5回自責点5  城島
4月17日 6回自責点3  ジョンソン QS
4月23日 7回自責点0  ジョンソン QS 完封リレー
4月28日 8回自責点0  バーク QS 9三振
5月4日  6回自責点6  城島 負け  9三振
5月9日  4回自責点5  城島 負け
5月14日 7回自責点0  ジョンソン QS
5月19日 5回2/3自責点6 城島 負け
5月24日 8回自責点1  ジョンソン QS 10三振
5月30日 6回2/3自責点0  ジョンソン QS
6月5日  7回自責点1    ジョンソン QS
6月10日 7回自責点1    バーク QS
6月16日 9回自責点0    バーク QS
6月21日 7回1/3自責点0 バーク QS 8三振
6月27日 8回自責点0    ジョンソン QS 9三振
7月3日  7回自責点3    ジョンソン QS
7月9日  8回自責点1    ジョンソン QS
7月17日 8回自責点2    ジョンソン QS 8三振
7月22日 7回自責点1    ジョンソン QS 8三振
7月27日 5回2/3自責点7 ジョンソン
8月1日  7回自責点2    ジョンソン QS
8月7日  6回自責点3    ジョンソン QS
8月12日 7回自責点0    ジョンソン QS 10三振
8月18日 7回自責点1    ジョンソン QS 9三振
8月23日 6回自責点3    ジョンソン QS
8月28日 7回自責点3    ジョンソン QS
9月2日  8回自責点0    ジョンソン QS
9月8日  7回自責点1 ジョンソン→城島 QSサヨナラ負け
9月13日 7回自責点0    ジョンソン QS
9月18日 9回自責点1    ジョンソン QS
9月24日 8回自責点3    ジョンソン QS 11三振
9月29日 7回2/3自責点2 ジョンソン QS
10月4日 6回2/3自責点2 ジョンソン QS






前の記事(2009年10月5日、ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係を解き明かす。)で、近似曲線を使ってヘルナンデスのストライク率と四球数の関係を考えてみた。
かつてはストレートばかり投げたがったり、三振をやたらと取りたがったりしたヘルナンデスだが、ロブ・ジョンソンという最高のパートナーをみつけた今シーズンは、ひとことでいって「動じないピッチング」ができるようになったことが、データからもわかった。

どうなんだろう、
他の投手でも同じようなことは言えるのか?
四球数が変化をおこすストライク率の臨界数値は変わらないものなのか。

ちょっとイタズラ心が沸いて、今シーズン絶好調だったヘルナンデスとロブ・ジョンソンのバッテリーの抜群の安定感を、たいへん松坂君には恐縮だが、四球で崩れることが多いといわれ続けているボストンの松坂を引き合いにして、比較してみることにした。
下記のグラフで、黒い近似直線がヘルナンデス赤い近似曲線が松坂、である。(「近似曲線」とは何か、については、前の記事を参照)

ヘルナンデスと松坂 「ストライク率・四球数」近似曲線の違いクリックすると拡大します
©2009 damejima


なぜ、ヘルナンデスが直線で、松坂が曲線なのか。

見てもらうとわかるとおり、投手によって特性はまったく違っていた。
まず、ヘルナンデスだが、彼の近似曲線を「直線」で表現してあるのには、ハッキリした理由がある。ヘルナンデスの近似曲線が、2次式でも4次式でもたいした変化がなく、ほぼ直線になってしまうのである。
これは、彼のストライク率と四球数の関係が非常に単純で強靭な関係にあることを推測させる。単純に言えば、「ストライクが増えれば、非常に単純に正比例して四球が減る(逆に言えば、ボールが増えれば単純に四球が増える)」という関係にある、ということだ。
だから四球の計算式も、こんな簡単な計算式でほぼあてはまってしまう。
(四球数) = -0.2332 ×(ストライク率) + 17.024
calculating formula made by damejima
©2009 damejima


それに対し、ボストンの松坂の場合は、コトはまったく簡単ではない。
Daisuke Matsuzaka 2009 Pitching Gamelogs - Baseball-Reference.com
近似曲線の形は、設定する関数の次元を上げていくほど、複雑な形状に変わっていく。だいたい5次式くらいの表現が、穏当な意味で実態にあてはまる感じがしたが、その計算式は、エクセルのいうところによれば、こんな複雑な式になるらしい。
とても複雑すぎて表示が手に負えないから画像にしておく。
松坂用の計算式
calculating formula made by damejima
©2009 damejima


ともかく松坂の場合、ヘルナンデスとの比較でいえることは、
(1)ストライク率が65%を越えると四球が急減
(2)逆に、65%を切ると、四球が急速に増える


なぜ松坂にこういう「ストライク率によって、ピッチングの状態が急激に変わる手のひら返し的な現象」が起きるのかは、正直、理由はよくわからない。
おそらく世間で言う「よい松坂」とは(1)の状態を指し、「悪い松坂」は(2)の状態を指しているのだろう。いずれにしても好不調の波が非常に激しく出るタイプなのは間違いない。

ただ、問題はこのデータから見えないところにある。
松坂のストライク率が65%を越えると急激に四球を出さなくなるといっても、そういう「やたらとストライクをとったゲーム」で果たして松坂の自責点が少なくなっているとはいえないからである。
例1)6月7日 テキサス戦 ストライク率69.6%
   5回2/3 自責点5 被安打10 四球なし
例2)6月13日 フィリーズ戦 ストライク率67.0%
   4回 自責点4 被安打7 被ホームラン2 四球1
Daisuke Matsuzaka Stats, News, Photos - Boston Red Sox - ESPN

これだけストライクが増えると急激に四球が急に少なくなる投手の場合、四球をほとんど出さない快投をみせたという可能性より、むしろ、例えばカウントを悪くしてから四球を出すのでなく、ストライクをとりにいってホームランをガツンと打たれている可能性も考えなければならない。
実際、松坂にはそういうゲーム例は多く、簡単なデータからではわからない、なんともいいようのないピッチングの解析しにくさ、複雑さがある。


この点、今シーズンのヘルナンデスの場合は、松坂のような複雑な事態はまったくない。ストライクが増えれば自然と三振が増え、相手打線は沈黙する。ただそれだけ。シンプルな話だ。
好不調の波がほとんどなく、悪いときでも勝てる。
このことが、今年のア・リーグ最多勝につながった。あきらかにこれは「ロブ・ジョンソン効果」である。



ちょっと抽象的になってしまった。具体例を一つだけ示しておこう。
四球数がちょうど3になるストライク率は、縦軸の3の部分を横に見ていけばいいのだが、ヘルナンデスがほぼ60%くらいなのに対し、松坂は62%から63%くらいになる。
つまり、松坂はストライク率がほんのちょっと悪くなるだけで、四球が増え、ピッチングが乱れてくる。
一方、ヘルナンデスは、松坂より低いストライク率のゲームでも、四球を出さない。それだけ、ヘルナンデスのほうが粘れて、ドッシリ構えたピッチングができているはず、ということになる。これが「ロブ・ジョンソン効果」だ。



今年のヘルナンデスは6月のア・リーグ月間最優秀投手初受賞にはじまり、オールスター初選出、ア・リーグ最多勝投手が決定、これに、まだ確定してはいないが、9月の最優秀投手とサイ・ヤング賞が加われば、もう何も言うことはない素晴らしいシーズンになる。
Players of the Month | MLB.com: News

こうした安定感のあるシーズンになった理由は、この近似曲線が示すとおり、調子の良いときも悪いときも大きな波を起こさず、淡々とシーズンを送ってきたことが最も寄与していると思う。

October 06, 2009

ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係クリックすると拡大します
���2009 damejima


これは、今シーズンの8月以降のヘルナンデスの「ストライク率」と「四球数」をグラフ化したもの。データ数は13。
点は、ゲームで実際に記録された数値で、X軸、つまり横軸がストライク率、Y軸、つまり縦軸は四球数。

13の点々の羅列の中に、「右下がりの直線」があるが、これは「近似曲線」である。
たくさんの点々、つまり個々のデータのもっている「法則性」を抽象化してまとめ、データ全体の傾向を見るためのもので、この場合は「右下がり」というのが、「ヘルナンデスのストライク率と四球数」というデータのもつ「傾向」だ、ということを示している。

近似曲線をつくるのは、まったく難しくない。
エクセルのグラフ機能に、近似曲線を加える機能があらかじめ備わっているので、エクセルに面倒なデータ入力さえできてしまえば、あとは散布データのグラフにいつでも近似曲線を追加できる。操作も簡単で、誰でもできる。
参考Excel:近似曲線を描く
近似曲線にはいくつか種類があり、ここで挙げたような直線だけでなく、対数や曲線でも表現できる。
だが「ヘルナンデスのストライク率と四球数」の場合、曲線にしてみたが近似曲線にはたいして変化がないので、いっそ面倒な二次式ではなく、1次式の直線でということで、シンプルに直線で表現しておいた。

この便利な近似曲線の機能によれば、ヘルナンデスのゲームでの四球数を求める数式はこうなった。

(四球数) = -0.2332 ×(ストライク率) + 17.024
calculating formula made by damejima
���2009 damejima


ヘルナンデスのストライク率と四球数

8月1日  104球58ストライク 55.8% 四球4
8月7日  113球70ストライク 61.9% 四球6
8月12日 105球67ストライク 63.8% 四球4
8月18日 106球69ストライク 65.1% 四球1
8月23日 101球67ストライク 66.3% 四球0
8月28日 104球63ストライク 60.6% 四球1
9月2日  114球67ストライク 58.9% 四球3
9月8日  113球69ストライク 61.1% 四球4
9月13日 109球65ストライク 59.6% 四球1
9月18日 104球65ストライク 62.5% 四球1
9月24日 108球77ストライク 71.3% 四球2 11三振
9月29日 120球69ストライク 57.5% 四球4
10月4日 107球72ストライク 67.3% 四球1



無限にストライク率を上げても意味がない
〜「3球に2球ストライクを投げる」セオリーの意味


メジャーでは、「投球全体の3分の2をストライク、3分の1をボール」として配球する、という話がある。つまりストライク率でいうと、ちょうどいいのが66.7%程度だ、とかいうセオリーだ。(注:2つストライクを投げたら1球はずせ、などというくだらない話ではない)

この話を、ヘルナンデスの近似曲線を見てたしかめてみる。

y = -0.2332x + 17.024という直線をみてもらうとわかるのだが、四球数が1を切るのが、ちょうどストライク率68%あたりになっている。

数式から計算で求めると、こうなる。
1.0000= -0.2332x + 17.024
x = 68.71355

ストライク率68.7%が分かれ目、つまり、見かたをかえれば、ストライク率(X軸、つまり、グラフの横軸)をセオリーの66.7からドンドン高めていったところで、ある数値から先は四球数は1以下になる、つまり、ほとんど変わらなくなる、という意味になる。
具体的に言えば、理論的にはストライク率が69%とか70%くらいでも、十分に四球がゼロになる可能性がある、ということだ。
それどころか、もし実際の投球場面でストライク率が75%とかになれば、バッターのストライクゾーンにやたらとストライクばかり来ることになるわけだから、かえってバッター側からすれば狙い球を絞りやすくなって、打ち込まれるかもしれない。

だから、ヘルナンデスの場合、(もちろん、彼に限らず、投手全般に言えるわけだが)、ストライク率を異常に高めたとしても、あるパーセンテージから先は、四球を減らす効果はないのはもちろん、それどころか、かえって打たれやすくもなる可能性さえ出てくる、という話になる。

それにしても、ヘルナンデス限定のこのグラフを作ってみての結果だが、だいたいセオリーどおりになった。あらためて、「投球の3分の2をストライク」というセオリーはほんとうによくできている、と感心した。



ヘルナンデスの四球が増えだすストライク率の臨界値を
発見してみる


では、ヘルナンデスの場合、四球が増えだすのは、ストライク率でいうと、どのあたりだろう。近似曲線でみるかぎり、四球数が2を越えるのは、だいたいストライク率が65%あたり、四球数が3になるはストライク率60%あたりのようだ。

四球数が2になるのは、ストライク率65%あたり
2.0000= -0.2332x + 17.024
x = 64.425385

四球数が3になるのは、ストライク率60%あたり
3.0000= -0.2332x + 17.024
x = 60.137221

四球数4を数えるのは、ストライク率56%あたり
4.0000= -0.2332x + 17.024
x = 55.840956


実際のゲームでも、ヘルナンデスのストライク率が60%を切った4ゲームのうち3ゲームで、四球を4つずつ出しているので、この「ストライク率が60%を切ると、四球数は理論値の上では、3を越えてくる」という話は実態に即している。
だから、ことヘルナンデスの場合、ストライク率が60%を切ってきたときには、四球を3つ、あるいは4つは覚悟しないといけなくなる、という計算になる。

ヘルナンデスは、1試合に投げるイニング数は最低でも6とか7で、毎試合長いイニングを投げてくれる投手だが、その彼でも1試合で4四球を出してしまうことになると、ゲーム展開としては毎回走者が溜まり、やっかいな展開になる。

だからヘルナンデスの適正なストライク率場合は、できれば60%の後半、64%から68%の間、高くても70%までくらいまでという感じになる。


「ストライク率がよくないのに、四球をほとんど出していない」という意味での、ヘルナンデス登板ゲーム・ベスト3

以上の話から、ゲームでの四球数が、理論値である近似曲線を大きく下回ったゲームのベスト3を選びだしてみた。
これらのゲームはどれも、けして四球がゼロとか、1にできるようなストライク率ではなかったわけだが、実際のゲームでは四球をほとんど出していない。失点がけしてゼロだったわけではないが、四球数という面では好ゲームだった、ということになる。


8月23日 101球67ストライク 66.3% 四球0
8月28日 104球63ストライク 60.6% 四球1
2009年8月28日、ヘルナンデス7回3失点QS達成で、13勝目。ア・リーグの「QS数」「QSパーセンテージ」、2つのランキング」のトップに立つ。
9月13日 109球65ストライク 59.6% 四球1
2009年9月13日、ダブルヘッダー第二試合、祝・イチロー9年連続200安打達成! ヘルナンデスとロブ・ジョンソンのバッテリー快勝! 7回を4安打1四球でテキサスを零封して15勝目。

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October 05, 2009

負けられないゲームでよくやった、ロブ・ジョンソン。
ヘルナンデスは107球で6回2/3と、球数の割にはいつもより多少短いイニングの登板になったが、3安打1四球という結果からわかるとおり、打たれたわけではないどころか、テキサス打線をほぼ完璧に抑えていた。
要は、不調だったのではなくて慎重に投げた結果なのである。

本当に、本当に、いいゲームだった。

ヘルナンデスのピッチング(動画)
Baseball Video Highlights & Clips | TEX@SEA: Hernandez wins his 19th of the year - Video | MLB.com: Multimedia

8回にみせたロブ・ジョンソンの強肩(動画)
Baseball Video Highlights & Clips | TEX@SEA: Johnson catches Borbon stealing second base - Video | MLB.com: Multimedia

ゲーム後、シーズン終了を祝福しあい、
ファンに感謝しつつグラウンド一周する選手たち(動画)

Baseball Video Highlights & Clips | The Mariners take a lap and thank the fans - Video | MLB.com: Multimedia

19勝を達成したヘルナンデスとロブ・ジョンソンのバッテリー
ゲーム後、ロブ・ジョンソンとハグするヘルナンデス


ロブ・ジョンソンがヘルナンデスとバッテリーを組んでいる理由、バッテリーとは何か、自分が野球を好きな理由、配球の鮮やかさに感嘆しながら色々なことを考え、試合の全打席の組み立てをじっくり眺めつつ、ひさしぶりに細部までゲームを堪能した。

つくづく思ったが、今日の勝因は、そして今シーズンの好調の理由は、例えば6回の3者連続三振のようなヘルナンデスの元々もっている「実力」に、1回から5回までの配球のような、考え抜かれ、ヘルナンデスの溢れ出る実力を上手にコントロールするロブ・ジョンソンの「引き出しの多さ」が、ガッチリと組み合わさった結果だ。
ロブ・ジョンソンは本当にたくさんの、いい引き出しをもっていることが今日のゲームでつくづくよくわかった。それはあとでたっぷり書く。

本当にいいゲームだった。ナイスゲーム、ロブ・ジョンソン。君は、間違いなく、キャッチャーをやるために生まれてきた男である。
19勝目、本当におめでとう。フェリックス。君は、どうみても、ピッチャーをやるために生まれてきた男である。


イチローがリベラから打った逆転サヨナラ2ランがなかったら、この最多勝はなかった。他にもたくさんの力に支えられた19勝だということを、フェリックス自身、感じていると思う。
フェリックス、まずはア・リーグ最多勝投手、おめでとう!

Texas vs. Seattle - October 4, 2009 | MLB.com: Gameday

アーズマ、キンズラーを三振 キャッチャー ロブ・ジョンソン
シーズン最終戦の最後を締めたアーズマとロブ・ジョンソン
イチローとズレンシック


イルカ







エース ヘルナンデスがサイ・ヤング賞とア・リーグ最多勝をかけて先発するシアトルの最終戦が、あと数時間後に始まる。もちろんキャッチャーはロブ・ジョンソンだ。
暇なので、こんどはヘルナンデスと城島の関係についての解説の決定版を書いてみることにした。こんなのは別にむつかしくない。3分とかからずにアイデアができた。


8枚の絵を用意した。
今シーズン、ヘルナンデスの唯一の汚点である、城島と組んだ5月の3連敗のうち、5月9日ミネソタ戦のデータである。主要左バッターへの、4人の投手たちの投球を8打者分集めた。5人にヘルナンデスが投げている。
あらかじめ言っておくが「たったこの8枚だけが、このゲームでの城島さんの素晴らしいミネソタ打線攻略配球(笑)のすべてではない」。そんなわけない。(笑)
あまりにも素晴らしい配球が多すぎて、これだけしかのせられないのだ(笑)興味があるひとは右打者への配球なども、たいへんに素晴らしいから、2009年5月9日のGameDayをじっくり見てみるといい。


特に3番マウアー、4番モーノーに対する配球は見事としかいいようがない。
この日マウアーは、3打数2安打2四球3打点2得点、ホームラン1本、2塁打1本。モーノーは、2打数2安打2四球1打点2得点、ホームラン1本。
モーノーは、「コネ捕手城島さんの『まったく配球しないで多額の給料をもらう』捕手としての天才ぶりを、メジャーで最も詳細に語れるであろうプレーヤー」として、メディア各社にブログから推薦しておく。

このゲームでミネソタ打線は、サイ・ヤング賞候補ヘルナンデスに、6安打3四球2ホームランを浴びせて自責点5を喫しさせ、全体としては、シアトルの5投手に8安打7四球3ホームラン、8点をとった。
もし今年ヘルナンデスがサイ・ヤング賞を取り逃がすようなことがあれば、このミネソタ戦をはじめ城島と組まされた3ゲームが原因である。ハッキリしている。

Seattle vs. Minnesota - May 9, 2009 | MLB.com: Gameday

この8枚、自分でいうのもなんだが、たいへん便利にできている。

ただ目を通すだけで、「シアトルのエース、ヘルナンデスが、なぜ城島を拒否しているか」「シアトルの有力投手たちは、なぜ城島とはバッテリーを組む必要がないか」「城島がチームにいないほうが勝率が上がるのはなぜか」、なにもかもが、誰にでも簡単に、手にとるようにわかるようになっている。
便利すぎる。おかげでこのブログさえ、いらなくなるだろう(笑)困ったもんだ(笑)
5月に最悪に見えたヘルナンデスが、「なぜロブ・ジョンソンと組んで今年サイ・ヤング賞目前というところまで力を伸ばせたか」、そして、今年のシアトルの「シーズン勝率回復がそもそも誰と誰のおかげか」、についても、誰でも答えが簡単に出せるようになる。

よく、ウェブ検索サイトの質問コーナーで「ヘルナンデスはなぜ城島と組まないのですか」とかいう質問と答えが書いてあって、日本とメジャーの野球のシステムの違いだの、なんだの、こむつかしく、トンチンカンな説明をするアホウがいる。
だが、そんなややこしい説明、まったくあたってないし、必要もない。

2009年5月9日 ミネソタ戦 1回トルバート 四球1回 無死2塁
2番トルバート 四球

投手:ヘルナンデス
先頭の1番スパンに2塁打を打たれると、2番トルバートにすかさず「アウトコース攻め」で四球(笑)

2009年5月9日 ミネソタ戦 1回 マウアー タイムリー二塁打1回 無死1、2塁
3番マウアー
2点タイムリーツーベース

投手:ヘルナンデス

2009年5月9日 ミネソタ戦 1回 モーノー 四球1回 無死2塁
4番モーノー 四球

投手:ヘルナンデス
2点タイムリーのマウアーがセカンド走者。モーノーにも気恥ずかしくなるほどの「アウトコース攻め」で四球。またも無死1、2塁。

2009年5月9日 ミネソタ戦 3回 マウアー ホームラン 3回 2死走者なし
3番マウアー ホームラン

投手:ヘルナンデス
マウアー、モーノーに連続ホームランを打たれ、スコアは0-4。

2009年5月9日 ミネソタ戦 4回 スパン 犠牲フライ4回 1死2,3塁
1番スパン 犠牲フライシングル

投手:ヘルナンデス
犠牲フライを打たれたくないはずの場面での「高め攻め」(笑)。あっさり犠牲フライで失点

2009年5月9日 ミネソタ戦 5回 モーノー シングル5回 無死1塁
4番モーノー シングル

投手:ホワイト
マウアー四球、モーノーのシングルで無死1、2塁。このあと6番カダイアーに3ランを打たれる

2009年5月9日 ミネソタ戦 6回 モーノー 四球6回 2死1、2塁
4番モーノー 四球

投手:スターク


2009年5月9日 ミネソタ戦 7回 ブッシャー 四球7回 1死走者なし
7番ブッシャー 四球

投手:アーズマ


のべ8人の左打者に対して、4人の投手の投げたインコースの球は、総計で3球だけ。コネ捕手さん、たいへんすばらしい「アウトコース攻め」でいらっしゃる(笑)
この素晴らしい「攻め」(笑)を実際のゲームで実行したのは、メジャー4年目のキャッチャーさんで、年収は800万ドルと聞いている。



冗談さておき。
「打者が左なら、なんでもいいから、アウトコースに投げとけ」、などという配球法は、プロフェッショナルのベースボールには「ない」。

冗談でいうのではない。
そんなのは配球では「ない」。

だからコネ捕手城島は、ヘルナンデスに対して、実は「配球してない」し、配球論は「ない」。
配球とは一定の戦略と戦術に基づいた組み立てやシステム、マトリクスであり、また、見方を変えれば、「個」や「アイデンティティ」、「プライド」や「歴史」でもある。

配球せず、アイデンティティも歴史もシステムも戦術も、何もない捕手と、ヘルナンデスは組みたくない。
当然だ。

以上、証明終わり。
簡単だったな。



英会話のレベルがどうとかこうとか、巨額のサラリー、不器用なバッティング、文化論も、キャッチングの技術論も、実は「城島問題」の真髄部分には、そういう雑多な議論はまったく関係がない。

「配球しないキャッチャー」というのは、いってみれば、「英語がまったく喋れないまま、英語圏の国に滞在している」ようなものだ。
なぜなら、配球は「ピッチャーとキャッチャーのコミュニケーション」における「共通言語」だからだ。
「何を投げたい?これか?」
これは会話そのものだし、何気ないやりとりの背景には、膨大な情報量や文化、戦略や戦術、トレーニング、スラングや方言、スタイルやアイデンティティ、プライドや歴史などの「言語様式」が存在していることも、言語とまったく同じである。


その「共通言語」が「ない」のに、しゃべれはしない。それは英会話レベルの問題ではない。

メジャー流の配球論の基礎があるとか無いとかなんたらいう無駄な分析をする前に、そもそも配球という仕事そのものが「マトモになされない」どころか、「配球してない」のだから、新人さん、お子様はともかく、メジャーのマトモな投手とコミュニケーションが成り立つわけがない。

もちろん「配球しないキャッチャー」とかいう気味の悪い人に、「日本式リード」とか「自称」されても大いに困る。

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October 04, 2009

サイ・ヤング賞をヘルナンデスと争っているグレインキーが先発したカンザスシティと、ア・リーグ中地区の優勝がかかったミネソタとの熱いゲームで、ちょっと笑い話のような決勝ホームランがあったので、ちょっと記事をつくってみる。


誰にでもわかりやすいパターンだ、という理由で、このシリーズでずっと取り上げてきている「アウトハイ・インローの対角パターン」だが、このパターン、結論から先に言うと、あまりにも単純な形でピッチングに使うのは、たいへんに危険でもある。
つまり、まぁ、それだけバッター側にも十分わかりすぎるほどわかってバレている典型的配球だ、ということなのだろう。

2つ例を挙げる。
2例とも、初球から3球続けて対角パターンを使い、3球目で「初球の球種・コースにリバース」して、あっさりホームランを打たれた。
ひとつが、今日のグレインキー先発ゲームの、8回裏カダイアー決勝ホームラン。もうひとつは、このシリーズの(1)でとりあげたイヴァン・ロドリゲスのケース。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(2)「外角低め」「ストレート」という迷信 実例:「アウトハイ・インロー」の対角を使うメジャーのバッテリー


この2例にはひと目でわかる共通点がある。

・初球、2球目で、あきらかにそれとわかる「対角パターン」
「3球目で、初球とまったく同じ球」を投げて、打者に見切られれ、ホームラン。いうなれば「3球目対角リバース」


2009年10月3日 ミネソタvsカンザス戦 カダイヤー決勝ホームラン2009年10月3日
ミネソタvsカンザス戦
8回裏同点から
カダイヤー決勝ホームラン

初球  インロー  2シーム
2球目 アウトハイ ストレート
3球目 インロー  2シーム(ホームラン)

ピッチャー:ヒューズ
キャッチャー:オリーボ

ごく普通の「アウトハイ・インロー」パターンなら、ストレートはインコース、変化球はアウトコース専用、という場合が多い。変化球は、チェンジアップ、カーブ、スライダーなどが使われたりすることを何度も説明してきた。
シリーズ(2)イヴァン・ロドリゲスの例 チェンジアップ
シリーズ(5)ロブ・ジョンソンの例 チェンジアップ
シリーズ(6)アダム・ムーアの例 カーブ


だが、同点で迎えたゲーム終盤のこの打席、カンザスシティパッテリーの「対角パターン」ではストレートを、イン側ではなく、アウト側の球として使い、イン側には2シームを使っている。
これはまぁ、たぶん、「チェンジアップとストレート」の組み合わせのようにスピード面の緩急はつかない「2シームと4シーム」のミクスチュアなだけに、バッテリーがちょっと工夫したかったのではないかと想像する。

2球目に外の高めにストレートを投げたのを見て、「次の3球目、初球と同じコースに同じ2シームを投げなければいいが・・・」と直感的に思ったわけだが、結局、初球と同じ球を投げて、カダイアーに決勝ホームランを打たれてカンザスシティは負けてしまった。


次に、イヴァン・ロドリゲスのケース。

2009年9月28日 テキサスvsLAA戦 1回 モラレス 2ラン2009年9月28日
テキサスvsLAA 1回
モラレス 2ランホームラン

ピッチャー:ハンター
キャッチャー:イヴァン・ロドリゲス

初球  アウトハイ チェンジアップ
2球目 インロー  ストレート
3球目 アウトハイ チェンジアップ(ホームラン)
Texas vs. LA Angels - September 28, 2009 | MLB.com: Gameday

やはり、上に紹介したカダイアーの決勝ホームランの「3球目対角リバース」と同様で、初球2球目で「対角」に大きくふっておいて、3球目に初球と同じ球を投げた、つまり「リバース」したことで、打者モラレスに配球を読まれ、スタンドに放り込まれている。


なぜまた配球の教科書の最初のページにのっかっているようなパターンを「誰にでもわかる形で」使ってしまうのか。理由はわからないが、こういう「3球目リバース」の形で対角パターンが使われるケースは、ゲームの中でけして少なくない。ケースが多いだけに、いちいち探して挙げているとキリがない。自分で探してみてほしい。
少なくともわかっていなければならないのは、バッテリーの側だけでなく、メジャーの打者の側は、こういう配球パターンがあることなど、熟知していると思わなければダメだということだ。なにごとも打者に見え見えではダメだということだろう。



アタマが疲れてくれば誰でもミスを犯す。それはそうなのだが、誰も彼も同じようにミスを犯すのかどうか。ネイサンの例を見てみる。
上に挙げたカダイアーのホームランで1点リードしたミネソタは、9回表にクローザーのネイサンが登場して、3人でピシャリと抑え、優勝がかかった大事なゲームに勝った。
そのネイサンの、先頭打者ジェイコブズに対する、非常にしつこい配球プロセスを見てもらいたい。

2009年10月3日 ミネソタvsカンザス戦 9回表 ネイサンの配球2009年10月3日
ミネソタvsカンザス戦 9回表
先頭打者ジェイコブズ 三振

ピッチャー:ネイサン
キャッチャー:マウアー

初球  アウトハイ ストレート ストライク
2球目 インハイ  ストレート ボール
3球目 アウトロー ストレート ストライク
4球目 真ん中低め スライダー ファウル
5球目 アウトハイ ストレート ボール
6球目 インロー  スライダー ボール
7球目 インロー  スライダー ファウル
8球目 アウトハイ ストレート 空振り三振

この打者にネイサンは3度も「対角パターン」を使って、しつこく打者のバットを振らせようとしているが、単純なリバースは一度もしていない。

最初の対角は、2球目から3球目。ストレートだけを対角に投げ分けた。両方同じストレートなだけに、4球目でのリバースはないと予想できる。
だからこそカウント1-2になった4球目に何を投げるのかが面白い。
ネイサンは「3球目リバース」
の失敗例のようにインハイに戻ったりせず、真ん中低めスライダーを選び、明らかに決めにかかった。決め球が「真ん中低め」というところが、いかにもメジャーらしい。

ところがファウルされて粘られた。2球目3球目の対角パターンがストレート連投だっただけに、ここはさすがに打者に「そろそろ変化球だな」と先を読まれた。

そのため、ネイサンは新たな対角を企てる。カウントに余裕があるからこそできる2度目の対角の企てだ。5球目で外に1球ストレートをはずしておいて、それから、インコース低めの「対角」にスライダーを投げた。典型的な「アウトハイ・インローの対角パターン」で打ち取りにかかったわけだ。

だが6球目は打者が振らず、ボール判定。

たがネイサンは、この項目で何度も触れてきた「3球目リバース」の失敗例のように、すぐにリバースせずに、同じ球をもう1球インローに投げておいてファウルさせておいてから、つまりひと呼吸おいて、3度目の対角パターンとして、アウトハイに予定どおりストレートをほおる。
ついに空振り三振。
そして残り2人も打ち取って、ゲームセット。

一度企てが失敗しても、しつこく、しつこく攻めてくるネイサン。球数減らしの名手ハラデイの配球芸術とは対極にあるような、ベテランクローザー、ネイサンならではの素晴らしくネチネチした配球術だ(笑)

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October 03, 2009

いままで「城島問題」の重要さに気づいて何か批判を加えたり、あまりにも酷い成績に不釣合いなサラリーを嘲笑したアメリカのメディアは数多い。というか、シアトル・マリナーズに関わるメディアは、全米メディアであれ、地元メディアであれ、ほとんどのところがやっている。
全米メディアの、ESPN、FOX、スポーツ・イラストレイテッド。ローカル紙では、Seattle Times、U.S.S.Mariner、SPI、そしてMariners Insider、Pro Ball NW(旧 Bleeding Blue and Teal)など。また無駄にサラリーをもらうプレーヤーに敏感な二ューヨークの二大紙であるニューヨーク・デイリーニューズのようなメディア。

アメリカメディアでは、メインの担当記者がひとりいて、たいていブログをやっているものだ。ブログでの批判記事はあっという間にファンに浸透して広がっていく。


ちなみに、100敗した2008年に数多くの批判があることはともかく、2009年にもメディアによる城島批判が7月に集中している。理由はなんとなくわかる。7月末にトレード期限があることもあって、7月はメディアにとって、選手のトレードなど移籍話で紙面を賑わす季節だからだろう。
要は、根底にあるのは「城島をシアトルから出せ」という、全米各メディアに共通の基本的意見だ。


2008年5月13日、地元記者ベイカーは長い重要な記事を書いた。

2008年6月17日、FOXローゼンタールは城島をオーナーだけのご贔屓捕手と皮肉った。

2008年7月9日、タコマ地元紙は「城島問題」が将来の禍根となると予言した。

2008年8月27日、U.S.S.Marinerは2008ワーストプレーヤー投票5人のトップに城島をあげた。

2008年9月28日、ESPNは城島をア・リーグ年間ワーストプレーヤーに選んだ。

2008年11月29日、二ューヨーク・デイリーニューズは城島を「がつがつ食うクセに働かない選手」9位に選出。

2009年4月6日付、SI.comは2009スカウティングレポートで「負け続ければトレード期限に城島はじめ不良債権全員クビにすべき」と発表した。

2009年7月12日、SPIのコラムニスト、アート・ティールは「城島を正捕手に戻すべきではない」「敏腕なワカマツはこれからも自分の方針を貫くべき」と主張するコラムを書いた。

2009年7月19日、Pro Ball NWのジョン・シールズは「城島をチームから去らせる方法」を繰り返し模索しつつ、このシーズンオフ、なんとしてでも「城島問題」を完全解消すべき、と強く述べた。

2009年7月27日、ESPNは「LTV 最もトレード価値のなさそうなプレーヤー ベスト15」で、第14位に城島を選んだ。


Game 161: Kenji Johjima's last start?
Mariners Insider - » Game 161: Kenji Johjima’s last start? The News Tribune Blogs, Tacoma, WA

Every season there are farewells to be said to the players we've watched, whether they ride off into their own sunset or are traded away.
どんなシーズンでも、見守り続けてきた選手に対する別れが来る。それが彼の日没(=引退)であるにせよ、トレードであるにせよ。

This season is no different and the focus has been on veterans like Ken Griffey Jr. and Mike Sweeney - but three good catchers is one too many for most teams.
今シーズンもなんら変わりない。(ブログ補足:チームを去ると予想される選手として)焦点があてられてきたのは、グリフィー・ジュニアや、スウィニーといったベテランだったが、キャッチャー3人はどんなチームでも多すぎる。

The Mariners have rookie Adam Moore, Rob Johnson and Kenji Johjima, and Johjima has two more years left on his contract. Still, there is some thought that the Mariners might try to buy him out gracefully and send him home to Japan.
マリナーズには新人アダム・ムーアと、ロブ・ジョンソン、城島健司がいる。城島の契約はあと2年残っているが、それでもなお「マリナーズは潔く彼の契約を買い取って(=バイアウト、契約を買い取ること)、彼を日本に返したほうがいい」と考える人たちがいる。

That's a long shot, but anything is possible, so tonight could be Joh's last game as a Mariner. If so, he's going out on a roll - batting .309 over his last 16 games with five doubles and three home runs.
それは大胆な試みになるが、何事にも不可能ということはない。だから今夜はもしかすると、ジョーのマリナーズの選手として最後の夜かもしれない。もしそうであるなら、過去16ゲーム、打率.309、二塁打5、ホームラン3と打っている彼は、勢いをつけて終わってくれることだろう。(=最後にバットでひと花咲かしてくれるだろう)

October 02, 2009

数字は順に、打率、OBP、SLG、OPS。

2009

.228 .279 .360 .638 セーフコ
.194 .266 .327 .593 ランナーズ・オン
.196 .269 .304 .573 得点圏


なんですか。これ。
これでサラリー8Mとか、聞き間違いですよね?(笑)
あなた、何が目的で野球やってるんですか?
お金ですか?(笑)


セーフコでの打率
(以下すべて2009年10月1日付け。10月3日付け)
もちろん、9月恒例のコネ捕手の帳尻打撃も「お情け」で含めてあるが、そういうことまでしてさえ、コレである。今年の帳尻前のリアルな打撃がどれほど酷いものだったか。それはそのうち、まとめてデータを残す予定。
また、アダム・ムーアの打撃について、やたらと打てる、打てると吹聴したい人がいるようだが、彼のセーフコでの打席数はまだ19やそこらである。アダム・ムーアを持ち上げることでコネ捕手城島の延命を図るのは、最も底の浅い、見え透いた、恥ずかしい行為のひとつだと思い知るのは、来年の話だ。
Seattle Mariners Batting Stats - ESPN

トゥイアソソポ  .111 新人
ビル・ホール   .138
セデーニョ    .154 放出
Jaウイルソン   .157 
アダム・ムーア  .158 新人 出塁率.158 
Joウイルソン   .167 新人
ロブ・ジョンソン .183 新人 出塁率.272
ランガーハンズ  .196
ソーンダース   .203 新人
ミスター8M・城島 .228 出塁率.279
ロペス      .228
バーク      .231 放出
ハナハン     .232
バレンティン   .234 放出


ランナーズ・オン打率
Seattle Mariners Batting Stats - ESPN

バーク      .111 放出
セデーニョ    .149 放出
チャベス     .161 ケガ
トゥイアソソポ  .167 新人
キロス      .167 新人
Joウイルソン   .170 新人
バレンティン   .183 放出
ミスター8M・城島 .194
ビル・ホール   .200
カープ      .200 新人
ロブ・ジョンソン .207 新人
ランガーハンズ  .209
Jaウイルソン   .213
ハナハン     .217
グリフィー    .223


得点圏打率
Seattle Mariners Batting Stats - ESPN

ランガーハンズ  .083
Joウイルソン   .125 新人
セデーニョ    .150 放出
チャベス     .162 ケガ
カープ      .167 新人
ハナハン     .171
ビル・ホール   .179
バレンティン   .189 放出
ミスター8M・城島 .196
グリフィー    .208
ソーンダース   .211 新人
Jaウイルソン   .227 
ロブ・ジョンソン .229 新人
ブラニヤン    .234






消化試合なのであまり気合が入らない。
フィスターとアダム・ムーアのバッテリーなので、暇つぶしにアダム・ムーアについても書いてみる。
Oakland vs. Seattle - October 1, 2009 | MLB.com: Gameday

結論から先に言うと、ムーアは「どこか教科書っぽい欠点があるが、上手いし、手際がいい」「カウントを追い込むのに長けていて、フィニッシュはワンパターン化しやすい」

しかし、まぁ、なんにしても、来年になって、全てのチームにやる気がある春から夏の季節に、パターンを読む力に優れた強豪チームと当たってみないと実力はわからない
消化試合のオークランドは、まったくだらしがない(苦笑)



ともあれ。
まずは次の3つの画像。

このシリーズをしつこく読んできた人なら、アダム・ムーアは典型的なというか、むしろ「教科書どおり」といったほうがいいようなメジャーらしいキャッチャーだとわかるはず。

逆転されかねなかった4回の大ピンチを1点で切り抜ける上で、たいへんに役に立ったのが、ピーターソンとカストを三振にとれたことだが、この2人の左打者をカウント的に追い込んでから使ったのが、このパターン。
「アウトコース高めに、カーブをボールになるように投げこんておいて、次のストレートをイン寄りに投げて、空振りさせる」

要するに、いままでいくつもの例で説明してきたが、メジャーのキャッチャーがよくやる「メジャーバージョンの対角パターン」、つまり「アウトローではなく、アウトハイの変化球とインローのストレートで、対角線上に攻める」という基本パターンなわけだ。
この「対角」パターンを、左打者のカウントを追い込んだ場面で、同じイニングで何度も繰り返し使った、という話だ。(ムーアはどうも、効果がなくなるまで同じパターンを繰り返し使うリード癖はあるようには思う。好きな数パターンを使いたがることも垣間見える)

「教科書的」と言ったのはもちろん、今日は成功したとはいえ、正直ものすごく「ベタ」なパターンだからだ。「追い込んだカウントだから通用する」「右投手が左打者に使うから通用する」と、いろいろ限定条件がつくこともある。だから、シーズンの行方が決まってしまった消化試合での成功に、手放しに喜ぶような話でもない。

むしろ、多少苦笑してしまうのは、左バッターの2−2の平行カウントでアウトコースのボールにするカーブを投げることで、「ああ、次はインコースに、たぶんストレートが来るな」と、予想がついてしまう、ということだ。
けして若いムーアをけなす意味でなく言うと、LAAのアブレイユやハンターあたりのような野球をよく知っている打者に、こういう小細工が通用するとは思わない。
トロントやホワイトソックス同様、今年のオークランドは、かつてセイバーメトリクス、分析的野球の総本山だったことなど、微塵も感じられない。それほど、何の分析力も、粘り強さも感じられない。ただただ来た球を振り、自分の前の打席や、自分の前の打者への配球など、きちんと見て考えてもないように見える。
だから、バーノン・ウェルズやオーバーベイの打席をみるかのように、オークランドは何度でも「同じパターン」にひっかかってくれる。

2009年10月1日 1回 ケネディ 四球2009年10月1日
1回表 先頭
ケネディ 四球

4球目に外高めのカーブで、次が外高めのストレートなので、ここは典型的な「アウトハイを使った対角」ではないのだが、外高めカーブの直後にストレートを使うパターンは初回からあったことを示すために収録。


2009年10月1日 4回 カスト 三振2009年10月1日
4回表 無死3塁
カスト 三振
球が全体にはストライクゾーンに集中しているわりに、「5球目のカーブ」だけは大きくはずれたように「見せて」いるのは上手い。直後ストレートのコースは結構甘いのだが、それでも三振してくれるのは、やはり打者が、外のカーブが大きくボールになるのを見て多少気が抜けたこともあるかもしれない。


2009年10月1日 4回 ピーターソン 三振2009年10月1日
4回表 2死2塁
ピーターソン 三振

この三振も、カストの三振と非常に似ている。カウントを追い込んだストライクはどれもけっこう真ん中よりに決まっていて、コースは甘い。それでも、アウトコースのボールになるカーブの後に、ズバっとストレートを真ん中に放り込む。度胸だけで乗り切ったという感じもある。



さて、「教科書的」と思った理由を、もうひとパターン挙げてみる。5回のケネディのシングルヒットの場面。

2009年10月1日 5回 ケネディ シングルヒット2009年10月1日
5回 ケネディ
シングルヒット

初球  アウターハーフ 2シーム ストライク
2球目 アウトコース高め ストレート ボール
3球目 インナーハーフ ストレート ストライク
4球目 アウターハーフ チェンジアップ ヒット

ここまでとりあげてきたメジャーの基本パターンの「アウトハイ・インローの対角パターン」や、コネ捕手の小汚い「3拍子幕の内弁当」(「3拍子幕の内弁当配球」とは何か?についてはこちらを参照:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(5)実証:ロブ・ジョンソンと城島との違い 「1死1塁のケース」)のどちらとも違って、ブログ主好みのいわゆる「ハーフハイトのボールを使った配球パターン」で、無駄が少なく、それだけに美しい。

ただし、3球目までは、だ(笑)

いけないのは4球目。
メジャーの打者の誰もがここは、「ああ、4球目はアウトコースにチェンジアップが来るな。そう教科書に書いてあるよな?(笑)」とか(笑)、予測できてしまう、そういう典型的配球になっていると思う。
打者ケネディは、第一打席でも四球を選んでいるとおり、カストやピーターソンのように、捕手ムーアの得意とする教科書的な典型的配球パターンにハマってはくれない。この打席でも、ムーアの流れるような配球にはまりこむことなく、予想どおりのチェンジアップをレフト方向へ綺麗にシングルヒットを見舞った。
ケネディ、いい打者である。ジャック・ウイルソンやビル・ホールなどではなくて、こういう「賢い打者」こそ、本当はトレードで獲得すべきだ。

だからこそ、4球目がもったいない。この4球目だけは、教科書的な配球ではなく、ベテランクローザー、ネイサンの配球でも見習って、何かひとひねりがあればパーフェクトだったと思うのだ。
打者によって技量は違うわけで、ケネディはカストよりパワーはないが、アタマがいい。打者ごとの技量の差を読むことまでは、まだムーアにはできていない。つまり「若い」と感じるわけである。

暇な人は、この配球パターンと、このシリーズの序論ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』 序論:2009年9月30日、大投手ハラデイの「配球芸術」)でとりあげた大投手ハラデイのシンプルさの極致をいく「ハーフハイトのボールを使った芸術的3球三振」を、ぜひ比べてみて欲しい。

寿司を握る職人は、経験を積めば積むほど、「手数が減っていく」というけれども、たった3手でオルティーズを3球三振させるハラデイと、ボールを挟みながら、4球目で相手に読まれてしまうムーアでは、まだまだ大差があるのである。


とはいえ、ムーア独特の感じ、というものもある。
6回のバートンの打席。非常にカウントの追い込みかたが美しい。

2009年10月1日 6回 バートン 1塁ゴロ

初球  インナーハーフ ストレート ストライク
2球目 インロー カーブ 空振りストライク
3球目 インナーハーフ チェンジアップ ボール
4球目 真ん中低め チェンジアップ ボール
5球目 真ん中低め 2シーム 1塁ゴロ

結局ムーアが良さを見せる最も得意パターンは、「カウントを追い込むプロセスの手際の良さ」だと思う。(まぁ、理論的でもあるだろうし、悪く言えば、教科書的でもあるだろうし。評価は来シーズン以降だ)
最後のフィニッシュは、ここまで書いたとおり、けっこうワンパターンだったりもする。

この打席も4球目までは完璧な気がする。
初球にまっすぐをハーフハイトに放り込んでおいて、2球目に同じ場所にカーブを落として振らせる。3球目はインコースにチェンジアップで腰を引かせておいて、4球目に真ん中低めのチェンジアップを振らせにかかった。
もし、4球目のチェンジアップがもう少し高くて、きわどいコースに来ていれば、バッターはここで凡退させられただろう。
そういう自分のプロセスに自信があるからこそ、4球目で決まらなかった同じコースに、5球目の2シームを自信をもってコールできるわけである。
非常にわかりやすい。

最後の決め球に、日本のように「アウトコース低め」ではなくて、メジャーでは「真ん中低め」を使うことも多いともいわれている。そのことについては、なにか機会と実例があるときに、また。

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書きたいことを書きつらねているうちに、いつのまにかシリーズ化してしまっている「メジャーと日本の配球論の差異から考える城島問題」 『damejimaノート』だが、ロブ・ジョンソンというキャッチャーがどういうキャッチャーなのか、城島と比べてみるのにわかりやすい例がないか、探してみた。

このシリーズの(2)では、イヴァン・ロドリゲスと城島を比べてみたわけだが、せっかくだから同じシアトルのロブ・ジョンソンと城島を比べてみようというわけだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(2)「外角低め」「ストレート」という迷信 実例:「アウトハイ・インロー」の対角を使うメジャーのバッテリー


比較条件は「投手モロー、四球直後の打者、テキサス」
できるだけ似たシチュエーションで、しかも、両者の特徴を際立たせる例となると、探しだすのに苦労した。両方のキャッチャーがマスクをかぶっている投手となると、シアトルではヘルナンデスやフィスターではなく、モローやスネルくらいしかいないからである。
結局、「モローが四球を出して、ランナー1塁になった直後の打者への配球」「同じテキサス・レンジャーズ相手」という同じ条件で、キャッチャーだけが違う2つの打席を選びだしてみた。
ランナーがいるシチュエーションを選んだのは、そういう場面ほど、両者の配球に対する考え方の違いが際立つ、と考えたからだ。

また「城島が四球を出しやすいキャッチャー」であることはデータからもよく知られていて、このブログでも何度も指摘してきた。だが、さらにいけないのは城島が「ランナーがいるシチュエーションで四球を出しやすい、つまり、ランナーを貯めて、大量失点につながる非常に痛い四球を出しやすいキャッチャー」でもあることだ。
ここでは、どうして城島がそういう、出してはならない四球を出してランナーを貯めて傷口を広げやすいのかという点について、あまり語られてこなかった「ランナーのいる場面での、城島の配球プロセスのもたつき」についても、多少説明になればとも思った。

1 ロブ・ジョンソン

2009年9月12日 アウェイ・テキサス戦 4回裏
先頭打者の5番ネルソン・クルーズを四球で歩かせた後の、
無死1塁 6番マーフィーの打席
結果:1塁ゴロ ダブルプレー
Seattle vs. Texas - September 12, 2009 | MLB.com: Gameday

2009年9月12日 投手モロー テキサス戦 マーフィー ダブルプレー

配球
アウトコース高め チェンジアップ ボール
アウトコース高め チェンジアップ ボール
インコース低め  ストレート   ストライク
真ん中低め    チェンジアップ(1塁ゴロ ダブルプレー)

特徴
ひと目みれば、(2)の記事(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(2)「外角低め」「ストレート」という迷信 実例:「アウトハイ・インロー」の対角を使うメジャーのバッテリー)で書いたパッジこと、イヴァン・ロドリゲスの「対角」パターン(2009年9月27日レンジャーズ対エンゼルス戦)と似ていることがわかるだろう。
3球目と4球目のコースは甘く見えるわけだが、結局のところ、1,2球目の高めにはずれるチェンジアップが効いた。というか、むしろ、1、2球目の「はずれるチェンジアップ」が効いているからこそ、こういう場合3球目では、神経質な城島が投手に細かすぎるコントロールを要求して無駄なプレッシャーを与えるような、あまり細部のナーバスさは、実は、まったく必要ない。
これはなかなか重要な点で、かつてアーズマがヘルナンデスについて指摘した「サンデー・フェリックス」という話(カテゴリー:「サンデー・フェリックス」byアーズマ)に通じるものがあるし、アダム・ムーアの例でも同じような、多少コントロールが甘くても打ち取れる実例がある。(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.: メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(6)実証:アダム・ムーアの場合


ロブ・ジョンソンのこの配球の特徴は、メジャーのキャッチャーに共通した基本的なものだ。

・城島のようなインハイとアウトローではなく、
 「インローとアウトハイとの対角線」を使っている
・ 外に変化球、内にストレート(参照:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(1)「外角低め」「ストレート」という迷信
・ 入りの球は変化球から入り、ストレートでカウントをとる
・ 決め球は変化球で、ゴロを打たせることに成功

ほかにも、結果的に決め球になった4球目のチェンジアップのコースが城島の固執する「外角低め一杯」ではなくて、「真ん中低め」というのも、いかにもメジャーらしいし、4球目と「少ない球数で勝負がついた」ことも、球数の節約を重視し、早いカウントで勝負することを尊ぶメジャーらしい。
素晴らしいダブルプレーだ。

日本での配球での考え方が、「配球の基本はアウトコースのストレート」という考え方に固執しがちだ、という話は、以下のリンクを参照ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』 序論:2009年9月30日、大投手ハラデイの「配球芸術」

日本では「決め球をストレートと想定して全体を組み立てがちだ」という話は、以下のリンクの話題を参照ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(3)「低め」とかいう迷信

今までいろいろ説明してきたことから、この打席に関していえば、ロブ・ジョンソンは非常にメジャーっぽい攻めをするキャッチャーであること、城島の配球パターンとはまったく異なるリードをしたこと、がわかってもらえると思う。


2 城島

2009年7月10日 ホーム・テキサス戦 3回表
1死後、9番ビスケールを四球で歩かせた後の、
1死1塁 1番イアン・キンズラーの打席
結果:このキンズラーの四球で傷口を広げて、1死1、2塁。直後に、2番マイケル・ヤングに3ランホームランという致命傷を負うことになる。
Texas vs. Seattle - July 10, 2009 | MLB.com: Gameday

2009年7月10日 投手モロー テキサス戦 キンズラー四球

配球
アウトコース低め  スライダー   ボール
アウトコース低め  スライダー   ボール
インコース低め   チェンジアップ ボール
インコース高め   ストレート   ストライク
アウトコース真ん中 ストレート   ボール(四球)

特徴
インハイのストレートと、アウトローのスライダー、お約束の組み合わせである。7月10日のキンズラーの四球といい、9月23日のタンパベイ戦でアップトンに2点タイムリーを打たれたのケースといい、同じパターンで何度打たれれば気がすむのだろう。
2009年9月24日 8回アップトン 2点タイムリー2009年9月24日
8回アップトン
2点タイムリー

初球と3球目が
インハイのストレート
2、4、5球目が
アウトローのスライダー


以下の特徴を、ロブ・ジョンソンのケースとの間で比較してみてもらいたい。違いがよくわかるはずだ。
・ イヴァン・ロドリゲスやロブ・ジョンソンのケースと違い、
  「インハイとアウトローとの対角線」に固執しがち
・ ピンチになった後の打者に対する入りの2球は
  「アウトコース低め」「スライダー」に固執しがち
  決め球もアウトコース低めに固執する傾向
・ カウントを悪くした後はストレートに頼り、
  必死にきわどいコースを神経質に突こうとするが、
  結局四球を出して、傷口を広げる
・ 3球目ごとにリズムを変えようとする、いわゆる「3拍子配球」

初球2球目を同じコース同じ球種で行き、3球目にリズムを変えて、インコースを突いた。そして3球目4球目と、内に2球投げておいて、3つ目(全体として見れば5球目)に、こんどはアウトコース。
つまり2度、同じパターンでリズム変更をやっているわけだ。

こういう「3球目ごとにリズムを変えようとする」というリード癖については、楽天の監督さんが「3拍子配球」とか命名して指摘している話と同じ話ではあるが、ここは別に野村氏の受け売りではない。野村氏の発言を知りたいなら、いちおうリンクだけ挙げておくので、そっちを読むといい。
“読まれた”3拍子配球…ノムさん理論的中(野球) ― スポニチ Sponichi Annex ニュース

実際、コネ捕手城島の「3拍子配球」(ゲーム後半になると「4拍子」になることが多いが、たいしてかわりばえしない)が最も典型的に多く見られるのは、こういう「対角パターン」においてではなく、ストレートを中心に、変化球をオカズに混ぜて配球する場合に多い。
つまり初球から言えば、ストレート、ストレート、チェンジアップ、というパターンだ。(ゲーム後半になると、ストレートの数を増やして、3球ストレートの後で変化球というパターンにしたりもする。また、混ぜる変化球はチェンジアップだけでなく、スライダー、またはカーブに変更することもある)
ともかくこのパターンでは、ストレートと、1種類の変化球の、合計2球種だけを使って打者を攻めることに特徴がある。いわば「ストレートが白米のごはんで、おかずに変化球」という、「幕の内弁当」パターンである。

わかってしまえば、単純すぎるパターンだが、それでも例えばトロントのバーノン・ウェルズなどは、何度も何度も、この「3拍子幕の内弁当」にひっかかっている。情けないバッターだ。
このブログが、ホワイトソックスやトロントのことを、「LAAなどと違って、相手バッテリーの配球パターンに対応する速度が遅すぎる」と常に批判的に言うのは、そのへんに理由がある。

2009年9月16日、今日のコネ捕手、リードは「ストレートは基本インコース、変化球はアウトコース」 たった、それだけ(笑)被安打9、8回にはホームラン被弾。ホワイトソックス打線の知恵の無さに助けられただけのゲーム。

2009年9月27日、コネ捕手城島、先発マスク3連敗。「1球ごとに外、内。左右に投げ分ける」ただそれだけの素晴らしく寒いリードで、トロント戦8回裏、期待どおりの逆転負け(笑)ローランド・スミス、自責点5。

2009年9月25日 トロント戦 2回裏 オーバーベイ セカンドゴロ 3拍子パターンの典型例 1
おかずにカーブを混ぜる「幕の内弁当」パターン


2009年9月25日 トロント戦
2回裏 オーバーベイ
セカンドゴロ
ストレート、ストレートで、3球目にカーブ。単純で馬鹿っぽいパターンだが、このゲーム序盤では効いていた。


2009年9月25日 7回 バティスタ 2点タイムリー3拍子パターンの典型例 2
おかずにカーブを混ぜる「幕の内弁当」パターン

2009年9月25日 トロント戦
7回裏 バティスタ
2点タイムリー
ゲーム終盤になると、ストレート、ストレート、カーブという、単純な3拍子パターンが効かなくなり、このザマ。最後は逆転負け。


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October 01, 2009

ここでメジャー流の「見せ球としての高めのストレート」を使った配球論というか、変化球を決め球にするためのストレートの使い方として、ひとつ「カーブを決め球にするために、高めのストレートを投げる」実例を挙げてみよう。

これは、アメリカの有名な野球サイトのHardball Times(The Hardball Times)にあった研究記事だ。

Pitch sequence: High fastball then curveball

記事全文をここに載せるわけにはいかないので、あらましだけを書けば、こういうことらしい。(言葉で書くと難しいが、リンク先にはグラフやアニメーションGIFなどでも説明されている。直接読んだほうがわかりやすいと思う)

「カーブの落差を有効に使いたいなら、低めのストレートではなく、高めのストレートを投げておいてからカーブを投げるほうが有効だ
なぜなら、高めのストレートは、ホームベースに到達する途中まで、軌道がカーブと多少かぶるために、打者の球種の判別を遅らせることができる。
だから、高めのストレートの直後にカーブを投げることによって、カーブだとわかるのが遅れて、落差がより効果になり、打者をうちとれる。」

なお、この記事では、「高めのストレートの後で、カーブ」という使い方をする実在の投手について研究して書いているのであって、なにも空想で書かれているわけではない。



まぁ、仮にこの記事の言うとおりだとして、落差のあるカーブをより有効にするために「高めのストレート」も必要だとしよう。



もし、カーブを決め球にしているシアトルのベダードや、大きなスローカーブである「ドルフィン」を持ち球のひとつにしているウオッシュバーンではないが、この記事で書かれているような「ストレートにはさほど球威はないが、落差のあるカーブを決め球にしている変化球投手」が、「外角低めのストレートに固執する日本人キャッチャー」と組んだ、としたら、どういうことになるか。

例えば「投手の配球としてはたいした意味のない『低めのストレート』を何度も何度も、一杯のコースに投げさせられ」「ストレートをボールにしてしまって、カウントが悪くなった後」でようやく、「低めのストレートとはまったく軌道の違う得意球のカーブ」を打者に投げなければならない。
もしそんなことになれば、打者は一瞬にして「ストレートでない球が来たことを見抜ける」ために、本来彼らの決め球のはずのカーブは、まったくもって台無しになる。

また、投げる球種の順番も、投手がクビを振らない限りは、「カーブを投げてから、決め球のストレートをアウトコース低め」という、投手本来の投げたいのとは逆の順序になってしまい、カーブが決め球どころか、慣れない配球を強要されて、ストレートで押すタイプのピッチャーではない彼らがストレートで勝負させられて、球威のそれほどないストレートを滅多打ちにあうかもしれない。



また、同じように、チェンジアップを決め球のひとつにするバルガスではないが、「配球の一部として、カウントを整えたり見せ球にしたりする意味で、高めのストレートを頻繁に使い、配球全体が他のピッチャーより高めに設定している組み立てで長年トレーニングしてきているアメリカの投手が、「外角低めのストレートに固執する日本人キャッチャー」と組んだら、どうなるか。

低めに決まる変化球を決め球として、それをより効果的にするために、見せ球として内角高めのストレートも混ぜておかなければならないはずが、外角低めのストレートばかり要求されて、打者の目をそらすことができないまま、軌道の全く違うチェンジアップを外角に投げさせられることになる。
投手は決め球を失うばかりか、「自分らしい配球スタイル」そのものがまったく失われて、自滅を繰り返すかもしれない。




メジャーでは、投手が長年の教育とトレーニングから、自分なりのピッチングの全体像をプランし、組み立てる。投手は、長年日本とは異なる「配球論」の基礎を教育され、自分の得意な球種などとてらして、自分なりの配球術をひとりひとり、マトリクス化して組み上げてきているわけだ。
「低めなら、とにかく素晴らしい」「最後は低めのストレート」などという、ワンパターンで、わけのわからない抽象論は、全くなんの役にも立たない。



まして、投げる投手が誰であっても、全員に全く同じ配球、たとえば「外角の低めにストレートを最後に決め球として要求するような単細胞の組み立てのためだけのサイン」を投手に強要するようなことは言語道断。

そんなのは、もはや「キャッチャー」とすら呼べない。


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前の記事ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(2)「外角低め」「ストレート」という迷信 実例:「アウトハイ・インロー」の対角を使うメジャーのバッテリー)で挙げたような「わざと高めを多用する配球パターン」が、メジャーでの配球論の基礎にすでに存在していることに、違和感を感じる野球ファンは、日本には多いとは思う。

よく日本の野球解説者が、「今日は球がよく低めに集まっていますね」とか言って、「ホメ言葉」として「低め」を使う。そういう言い方が定着しているのは

「球は低いほうがいい」
という日本的なkey thoughts


が、日本野球の背景にあるからである。

これは、160キロの速球でも軽々と打ちこなすバッターや、ローボールヒッターの揃ったメジャーでは、ある意味、key thoughtsなどという耳ざわりのいい言葉ではなく、ただの田舎モノの迷信とでもいっていい話でもある。

この2つ前の記事(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(1)「外角低め」「ストレート」という迷信)であげた「基礎的な6つの配球パターン例」を見てもらってもわかるとおり、「なんでもかんでも低い球を投げ続ければ打者はうちとれる」なんて馬鹿なことは、アメリカの配球の基礎論のどこにも書いてない。

むしろ、インハイの球を効果的な見せ球に使ってからアウトコースで決める3RD SEQUENCEや、外外と打者を攻めておいて最後にインハイにストレートを投げて詰まらせて打ち取る4TH SEQUENCEなどの実例を見てもらえばわかることだが、「高めのストレート」を有効に使うパターンはいくつもあり、特に「インハイのストレートの有用性」については、基礎編にすら、その有効性がとくとくと説明されている。

3RD SEQUENCE
See-Saw

1. Fastball up and in
2. Change-up down
3. Fastball up and in
4. Curveball down


4TH SEQUENCE
Away, away and in

1. Fastball lower outer half
2. Repeat fastball lower outer half
3. Curveball away
4. Fastball up and in


こうした「ストレートの使い方」「高めのボールの有効性」についての見解の相違に、メジャーと日本でこれほど大きな差異が出てくる背景というか、主因になっているのは、あきらかに
「決め球をストレートと想定して全体を組み立てている」のか、そうではなくて、「変化球を決め球にするための組み立てなのか」という、文化的ともいえる差異が影響している。

少なくともメジャーで野球をしたいなら、決め球を「アウトロー」とか「ストレート」とか、自分勝手に一義的に決め付けていては、キャッチャーとして、160ゲームもある長いシーズンをコントロールできる自由な発想は絶対に生まれてこない。

城島がチームにつれこんだ身内のチームトレーナーで、城島をスタメンで使わないからといって不平を言っている(というより、メジャーではタブーの「関係者によるチーム批判」)スタッフがいるそうだが、どれほどの馬鹿なのか? ほんとうに顔を見てやりたいものだ。

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前の記事(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(1)「外角低め」「ストレート」という迷信)で、アメリカでの野球の基礎や初歩を学ぶときに与えられる基本的な考え、key thoughtsのひとつとして、
・ストレートはインコースに
・変化球はアウトコースに

という考え方が教えられているという話を書いた。あまり屁理屈ばかりでも、面白くないので、ちょっと実例を見てみる。打者を「対角 opposing corner」に攻めた場合のサンプルを、コネ捕手城島でない場合と、日本人キャッチャー、コネ捕手城島の場合、2つあげてみる。


1 レンジャーズバッテリーの「対角」


これは9月28日のレンジャーズ対エンゼルスのゲームでの、モラレスの2ランの場面。ピッチャーはハンター、キャッチャーはイヴァン・ロドリゲス。

2009年9月28日 1回 モラレス 2ラン2009年9月28日
レンジャーズ対エンゼルス
1回 モラレス 2ラン


キャッチャー:
イヴァン・ロドリゲス


レンジャーズバッテリーの配球
初球  アウトコース高め チェンジアップ
2球目 インコース低め  ストレート
3球目 アウトコース高め チェンジアップ
Texas vs. LA Angels - September 28, 2009 | MLB.com: Gameday

ここで基調になっているのは、前の記事でいうkey thoughts 1の、「ストレートはインコースに、変化球はアウトコースに」ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 (1))、だということは、ひと目でわかると思う。

それにしても「対角に攻める」とはいうものの、日本でよくある「インハイとアウトローの組み合わせ」ではなく、「インローとアウトハイの組み合わせ」が使われていることにぜひ注目してもらいたい。
また、入りの球種も違う。ありがちな「ストレート」から入るのではなく、変化球からはいって、次がストレート、3球目を再び変化球にしている。

つまり、簡単に言えば、すべてが「日本的な考え」の「逆」をいっていることになる。ここが大事。後で挙げる城島の実例と比較して、日米の違い、ベースボールと野球の違いを考えるきっかけにしてみてほしい。



2 コネ捕手城島の「対角」

上に挙げたレンジャーズバッテリーの「対角」の攻めの実例に対し、もしこれが「日本人キャッチャー」なら、どう配球するだろう。
日本人キャッチャーが「対角」に攻めるなら、インハイとアウトローを使うだろうし、入りの球は変化球ではなく、ストレートになるだろう。すると、こうなる。

初球  インコース高め  ストレート
2球目 アウトコース低め チェンジアップ
3球目 インコース高め  ストレート

となるのではないか。最初のレンジャーズの例と比べてみれば、なにもかもが逆になっている。

予測ばかりでもつまらない。最近のゲームでの城島の実例も挙げてみる。2009年9月23日のタンパベイ戦8回、アップトンに打たれた2点タイムリーの打席である。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年9月23日、打てば三振ばかりのコネ捕手城島のワンパターンリードで四球連発。先発モローのリードもままならず、ブルペン投手を大量消費した挙句に、BJアップトンに同じ外角スライダーで2打席連続レフト前タイムリーを浴び、8回裏の逆転2点タイムリーで逆転負け。

2009年9月24日 8回アップトン 2点タイムリー2009年9月23日
タンパベイ戦 8回
アップトン 2点タイムリー


キャッチャー:
コネ捕手城島


初球  インハイ  ストレート
2球目 アウトロー スライダー
3球目 インハイ  ストレート
4球目 アウトロー スライダー
5球目 アウトロー スライダー(2点タイムリー)

要は、城島の場合、インコースは全部が全部、インハイのストレートで、アウトコースは全部アウトローのスライダーなわけである。単純な話だ。



この、あまりにも違う2つの例を分けている差異は、単にサインがあう、あわないという小さな話ではない。たまたまカーブを投げたいか、ストレートを投げたいかどころの、小さな意見のくい違いではない。

それどころか、一番深い部分に横たわる「深すぎる溝」は、配球や投球術そのものの根本にある、考え方の違いだし、さらにいえば、打者が何を狙ってバットを振り、投手はどう攻めるかを考えるにあたって出てくる「ベースボール」と「野球」の違い、そのもの、である。

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ハラデイの絶妙な3球三振の配球を見たことだし、消化試合のこの時期、暇つぶしにちょっと配球の話でも書いてみる。



配球という言葉は、英語だと、pitch sequence(またはsequence of pitches)という表現になる。

ウェブでのアメリカでの配球についての記述はけして多くはないが、例えば代表的なもののひとつとして、Pitching Professor Home Pageを主催するJohn Bagonziによって、ストレート、カーブ、チェンジアップ、3つの球種だけを使った典型的な6つの配球パターンというのがウェブに発表されている。
彼自身のサイトだけでなく他のサイトにも転載されているので、下記に孫引きさせてもらおうかと思う。問題があればTwitterにでもご連絡をしてきてもらいたい。
WebBall.com - Pitch Sequence & Selection

この6つの配球パターンをどう評価するかは読む人の自由だから、どうとでも勝手に評価すればいいが、読む前にアタマに入れておかないとダメなことがある。
それは「城島問題」を知る上でもたいへん重要なことなので、指摘しておきたいし、ぜひアタマに入れておくべきことだと思う。

前の記事2009年9月30日、ハラデイの配球芸術。(おまけ コネ捕手城島との比較 笑))でも、ハラデイの素晴らしい3球三振における投球術の根本と、日本での配球についての考え方の違いについてk軽く指摘した。

下記に挙げた6つのの基本配球パターンにしても、こういうことを考える前提になっているkey thoughts、つまり基調思考があって、それが日本でのkey thoughtsと、だいぶ異なっている。これは大きい。
このkey thoughts 1が前提になって話が進んでいることをアタマにいれてリンク先の6つのパターンを眺めないと、それぞれの配球の意図がよくわからなくなると思う。

アメリカ的 key thoughts 1
・ストレートはインコースに
・変化球はアウトコースに



例えば、もし、このkey thoughts 1が「まるっきり逆」だったらどうだ? 配球パターンがまったく違ってくるのは、誰でもわかるはずだ。
もし下の6つのパターンのkey thoughtsが、1ではなくて2だとしたら、下に挙げた6つのパターンは大半が成立しなくなってしまう。

日本的 key thoughts 2
・変化球はカウント球として使い
・ストレートはアウトコースに決め球




だから、仮に例えばの話として、「アウトコースのストレートを決め球にしよう」と最初から決めてかかっているアタマの硬い日本人キャッチャーが、アウトコースの変化球を決め球にする野球教育やトレーニングを長年積んできたアメリカのピッチャーとバッテリーを組んでも、あるいはアメリカのコーチと意見をかわしても、意見があうわけがない。

それは、単に「決め球の1球のみを、どの球種にするか、どのコースに投げるか」について投手とキャッチャーの意見があわなくて、キャッチャーのサインに投手が首を振るとかいう、単純な問題ではぜんぜんない。
そもそものkey thoughtsの違いが根本原因としてあり、配球や組み立てといわれるバッテリーワーク全体に及ぶ意見の違いであり、投球術のあらゆる詳細な点においてストレスを生む。
それはもう、文化の相違といっていい違いであって、ピッチャーとキャッチャーがちょこちょこっとダグアウトの片隅で話をすれば変われる、というような簡単な話ではない。


(以下、次の記事へ続く)


FIRST SEQUENCE
Pure Location


1. Fastball low
2. Fastball high
3. Fastball out of strike zone
4. Fastball down

2ND SEQUENCE
Challenge and Fade


1. Fastball in
2. Repeat fastball in
3. Fastball up and in
4. Curveball outer part

3RD SEQUENCE
See-Saw


1. Fastball up and in
2. Change-up down
3. Fastball up and in
4. Curveball down

4TH SEQUENCE
Away, away and in


1. Fastball lower outer half
2. Repeat fastball lower outer half
3. Curveball away
4. Fastball up and in

5TH SEQUENCE
Living on the outside


1. Fastball outer half
2. Curveball low and away
3. Fastball in
4. Change-up low and away

6th SEQUENCE
Down and out


1. Curveball low
2. Fastball outside
3. Fastball in
4. Change-up low outside

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いやはや。
芸術的な三振だった。

2009年9月30日 7回 ハラデイ、オルティスを3球三振

Toronto vs. Boston - September 30, 2009 | MLB.com: Gameday
上の画像は、さきほどボストンの大敗に終わったトロント対ボストンのゲームで、7回に大投手ロイ・ハラデイが、DHデビッド・オルティースを3球三振にとった場面である。
このゲームで大投手ハラデイは、ポストシーズン進出が決まって2軍を出してきたボストンとはいえ、わずか100球で完封してしまったわけだが、ストライクはまったくセオリーどおりの68球(つまり、ピッタリ3球に2球がストライク)。

この三振を見るだけで、「少ない球数で相手を討ち取る技術にかけてはメジャー屈指の大投手」として名を馳せるハラデイの配球術が、いかに素晴らしく、レベルが高いか、わかろうというもの。

ここまでくると、もう一種の配球芸術ですらある。



初球、チェンジアップをアウター・ハーフに
ストライク


ここでいうハーフというのは、ハーフハイト、つまり「中ほどの高さ」ということ。
ピッチング、というと、コネ捕手城島(笑)ではないが、なんでもかんでも「コーナーいっぱい」に決めるものと思っている馬鹿がいる。あまりにも馬鹿馬鹿しすぎて話にならない。
ハーフハイト(中間の高さの球)をメインに使った配球パターンくらい、アメリカの初歩の教科書といわず、どこにでも普通に書かれている(例:WebBall.com - Pitch Sequence & Selection)わけだが、コネ捕手さんは、いつまでたっても「ストライクゾーンのコーナーいっぱいにストレートをズバっと決める」みたいな、日本の高校野球みたいなことばかり考えている。(コネ捕手の追従者の馬鹿なライター、新聞記者、ファンも同様だ。だが、いまどき日本の高校野球でもそんな配球ばかりしていたら勝てない。下記の日米比較リンク等を参照)


日米の配球に対する考え方の違いの例
下記のリンクをまとめて言えば、アメリカで最初に教える基本配球パターンは「インコースにストレート、アウトコースに変化球」。また、決め球に変化球が使われることも多い。
ひるがえって、日本の野球では、「アウトコースのストレートがピッチングの基本であり、勝負球でもある」と考えることが多い。(もちろん、その「日本では通用するストレート」がメジャーに来たら通用しないことが後からわかるからこそ、メジャーに来る日本の投手は誰も彼も苦労する。)

(1)コースと球種
アメリカの配球についての記事:6つの初歩の配球パターン
「基本はインコースにストレート、アウトコースに変化球」
WebBall.com - Pitch Sequence & Selection
日本での配球での考え方の例
「配球の基本はアウトコースのストレート」という昔ながらの考え
配球の基本 | 今関勝の野球はやっぱり面白い | スポーツナビ+

(2)特定カウントで使う球種
日本野球での配球の違いに関する発言例:阪神ブラゼル
「昨年はメジャー流の考え方が頭に染み付いていて、日本の配球になじめなかった。例えば、カウント0―2や0―3になれば、メジャーでは間違いなく直球が来るので狙い球が絞りやすい。でも、日本はフォークなどの変化球を投げてくる。しかも、日本の左腕はカーブやスライダーを投げる投手が多い。右に打球を引っ張りたいボクには合わなかった。」
ゲンダイネット

日本野球での配球の違いに関する発言例2:阪神メンチ
「アメリカと配球が逆だ。アメリカは基本的には変化球を決め球で使うことが多い。でも日本は初球から変化球が来て、ストレートを決め球にする。
阪神・メンチ「配球分かってきた」…きょう中日戦 ― スポニチ Sponichi Annex 大阪

高校野球での配球についての記事:
あまりにも極端な配球! 日本文理が仕掛けていた大胆な策。[詳説日本野球研究] - 高校野球コラム - Number Web - ナンバー


2球目、カットボールをインナー・ハーフに
2ストライク


さて、ハラデイの配球芸術の話に戻ろう。
2球目はカットボールをインコースに投げて、速度とコースを変えた。
だが、2球目で最も大事なことは、1球目同様に「ハーフハイト」、つまり「中ほどの高さ」に決まったことだ。
これはもちろん偶然そうなったのではなく、3球目への「布石」だ。ハーフハイトへの投球は、「意図的」にそうしているのであり、コントロールのいい投手でなければ投げられない。
初球にハーフハイトの球で配球を開始するパターンの場合、多くは2球目を低め一杯に決めたりはしない。むしろ、1球目、2球目と続けてハーフハイトに決めて、3球目に(沈む変化球などで)変化をつけることが多い。

もしもこの2球目が、日本のキャッチャーがよくやりたがるように「インロー、内角低め一杯に決まるストレート」だったら、3球目はまるで違った球にしないといけなくなるだろう。
また、たまたま投手ハラデイがコントロールをミスして、2球目のカットボールが「うっかり低め一杯にに決まってしまった」場合も、3球目は、別の球になっていた可能性があるし、3球目を勝負球にしなかった可能性もある。
それくらい、2球目の「ハーフハイト」の高さは大事なのである。


3球目、カーブをインローに
空振り三振


3球目は、インコースの低めいっぱいに、カーブ。打者オルティースのバットが空を切って、見事に3球三振。
この低めへの3球目のカーブをみればこそ、2球目で投げるカットボールは、かえって「低め一杯に決めるべきではない」ということはわかってもらえるはずだ。
3球目をみれば、1、2球目を「中ほどの高さ」にしていること、特に「2球目で低めいっぱいをついてはならないこと」の大きな意味がわかるだろう。「勝負は2球目でおおよそついている」のである。だから3球目が生きてくる。

もし2球目で「低め一杯のストレート」を投げていれば、どうだろう。もし3球目にこのカーブを投げていたとしても、2球目と3球目で球道、つまりマウンドからホームプレートまでの中間のボールの軌道が、まったく違う球が同じコースに来る以上、バッター側にしてみれば、3球目を見切るのはむつかしくない。バットを振ってこない可能性が高い。

同じ球道に、まずストレート系(この場合のハラデイはカットボール)を投げておいて、次にカーブを投げるのは、アメリカでたいへんによく研究されているテクニックである。ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(4)「低め」とかいう迷信 研究例:カーブを有効にする「高めのストレート」
2球目に低めいっぱいのストレートを投げてしまっては、打者に3球目の変化球を見切られやすく、カーブを投げる効果がなくなってしまう。

「高めのストレートを使って打者を凡退させるテクニック」もある
例:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:最終テキサス戦にみるロブ・ジョンソンの「引き出し」の豊かさ (1)初球に高めストレートから入る)その場合は、入りの球からして、別の球になる。
ハラデイがここで使ったのは「ハーフハイトの球を有効に使う配球パターン」であって、「高めの球からわざと入るパターン」ではない。ハーフハイトにきっちり決めるコントロール、変化球のキレ、配球パターン、打者の好みやクセに対する対応。あらゆる点でハラデイの素晴らしい投球術である。



ちなみに、インコースとアウトコースにボールを交互に投げわけた先日のコネ捕手城島の「あまりにも不細工な、醜い配球」を、比較のために挙げておく。アウトコースとインコースにストレートを投げわけただけ(爆笑)こういうのはEast-west pitchingとは、とても呼べない(笑)

ハラデイの芸術と、コネ捕手、両者を比べてみれば、コネ捕手のリードぶりにいかに鮮やかさや芸術性がなく、脳の中身がいかに不細工で知恵がないか、わかると思う(笑)


2009年9月27日 8回 バーノン・ウェルズ 三振2009年9月27日 8回
打者バーノン・ウェルズ


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