June 2010

June 26, 2010

まだゲームは終わっていないのだが、
「すぐにいい気になって、要所でストレートを使って打者を切ってとるピッチングに戻りたがる」「脳内剛速球投手」ローランドスミスのワンパターンさには、ほとほとガッカリさせられる。
Seattle Mariners at Milwaukee Brewers - June 25, 2010 | MLB.com Gameday


ローランドスミスについては、4月に「ストレートを投げたくてしかたない病」とネーミングした。
そのときに指摘したかったのは、彼のストレートには打者を抑える球威が全く無いこと、それなのにローランドスミスが「俺はストレートで生きる投手なのだ」といわんばかりに、ストレートを投げたがること、だった。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年4月30日、「ストレートを投げたくてしかたない病」にかかったローランドスミス。

その後もローランドスミスのピッチングをずっと見守ってはきたが、最近多少変化球が増え出して、調子が多少はよくなりかけたのを見て、ブログ主としては、ローランドスミスは「ようやく自分のピッチングスタイルを変えるつもりになったのだ」とばかり思っていた。
つまり、「ようやく自分のストレートに対して見切りをつけたのか?」という意味だ。



そして今日。
ミルウォーキーとのインターリーグ最後のカード初戦だが、スローカーブチェンジアップ(特にスローカーブはよかった)で強打が売り物の打線を翻弄して、ノーヒットのまま4回を迎えた。
明らかに、「ストレート投手としての自分を一度捨ててみる」ことで、(それと、もちろん、バックの守備の良さに助けられて)強打で知られるミルウォーキーの打者を抑え込んでいたのである。


それがどうだ。
ちょっと3イニング打線を抑えただけなのに、どこをどう勘違いするのか知らないが、4回に突然ストレートを投げたがりはじめた。
それでも、2人ランナーを出した後に、今のローランドスミスが唯一頼ることのできる球、つまり、「オフ・スピードの変化球」でルーキーキャッチャーのルクロイを追い込んだ。
なのに、ここでストレートをド真ん中にストンと置きにいった。

同点3ラン。

もともとローランドスミスは気持ちを切り替えるのがヘタだ。3ランで明らかに目が泳いだ。その動揺した精神状態のまま、次の打者ゴメスにも漫然と「気の抜けたストレート(70マイル台のオフ・スピードの球だが、あれで本人はチェンジアップのつもりらしい)」を投げ、3ランを打ったルクロイがまだカーテンコールを受けている最中というのに、逆転のソロホームランを浴びた。


自分のコントロールミスと配球チョイスミスを認める
ローランドスミスの試合後のコメント

"The first time, I was just trying to get it up and in and I left it out over the plate," Rowland-Smith said of the pitch to Lucroy, which came on a 1-2 count. "Gomez I think was sitting [changeup], and I threw a changeup for a strike. That's two pitches that really cost me, obviously."
「最初のは・・、インハイに投げたかっただけなんだけど、外に行っちゃったね・・」と、カウント1-2からルクロイに投げた球についてローランドスミス。「(逆転のソロホームランを打たれた球について)ゴメスはチェンジアップは打ってこないと思ったんだよね・・だからストライクを取りにチェンジアップを投げた・・・・。この2球が明らかに非常に高くついたよ・・。」
Mariners' great start gives way to defeat | Mariners.com: News


まず、ルクロイに投げたストレートだが、過信もいいところだ。ローランドスミスは「脳内コントロールマシン」にでもなったつもりなのだろうか
ローランドスミスは「インハイに投げるつもりだった」と言っているが、そもそもこのゲームの初回、ローランドスミスはミルウォーキー先頭打者のウィークスをストレート2球で0-2と追い込んでおきながら、3球目に「インコースにストレートを投げようとして、膝の横にぶつけるデッドボールを与えて」いる。
4回の場面も全く同じ、打者を追い込んでからのインコース攻めのストレートという配球で、ローランドスミスは1回に既にこのパターンで一度コントロール・ミスしているのである。
先頭打者というランナーがいない場面(1回)打者を追い込んでいるのに、打者のカラダに近いところに投げるというストレスだけで手元が狂うような投手のストレートが、ましてやランナーが2人いるピンチの場面で「インハイ」にビタッと収まるわけがない。
そんな胸のすくようなストレートを投げられるコントロールがあるくらいなら、ローランドスミスがこれほどピッチングで苦労するわけがない。「インハイに投げるつもりだった」とか、真面目な彼には申し訳ないが、アホらしくて笑うしかない。


次に、ゴメスに浴びたソロホームランだが、いったいどういう屁理屈でローランドスミスは「ゴメスはチェンジアップは球を見てくる」と思うのか? それがむしろ不思議だ。
「前の打者に球威のまるで無いストレートを3ランホームランされている投手」が、「次の打者を攻めるのにあたって、またもやストレートを多用して、特に初球にストレート勝負してくる」とは、むしろ誰も思わない。
実際、ローランドスミスは3ランを打たれた直後、次打者ゴメスを迎えた初球に「外にはずれるチェンジアップ」を投げているのである。

2010年6月25日 4回裏2死 ゴメス ホームラン動画リンク
4回裏 ゴメス ソロホームラン
Baseball Video Highlights & Clips | SEA@MIL: Gomez goes yard to put the Brewers on top - Video | brewers.com: Multimedia

そりゃそうだ。
中には、チェンジアップではなく、3ランを打たれた直後ですら知らん顔してストレートをストライクゾーンに投げてこれるような気の強さを持つ投手もいるかもしれないが、そんな打者の裏をかく度胸、コントロールが、ローランドスミスにあるわけはない。

むしろローランドスミスはなぜあのシチュエーションで「打者は、むしろ自分のストレート以外の球種を待っている」くらいに思わないのか? 理解に苦しむ。
ダメ捕手城島がシアトル在籍時代に、よく見た光景を思い出す。外の球ばかり投げさせてホームランを打たれてしまい、直後にインコースに切り替えて再び長打をくらう、ストレートばっかり投げさせてタイムリーを浴びると、直後の初級が変化球でまたもやタイムリーをくらう、四球を出した直後にカウントを取りにいった球をホームラン、とか、そういうたぐいの「打たれて切り替えた直後にまた打たれる」低脳なパターンである。

それに球筋にしても、とても「チェンジアップ」とは呼べないヘロヘロの球だ。ビデオで見てもらえばわかる。
ローランドスミスが「チェンジアップ」と称している「76マイルの、ただノロいだけの棒球」は、ほとんど曲がりもせず、ストライクゾーンのド真ん中に吸い込まれていっている。
それにローランドスミスのチェンジアップは、ストレートを投げるときと投球リズムから腕の振りから何から何まで全く違うから、打者のリズムが狂わされにくいという点にも、そもそも問題があるだろう。


いったい、何を考えているのか。
ローランドスミスは自分がストラスバーグのようなストレートを投げられるとでも思っているのだろうか。

とてもじゃないが、今のローランドスミスの球威の無いストレートでは、ミルウォーキーあたりのブンブン振り回してくる打者を抑えられっこない。ローランドスミスは性格的に非常に動揺しやすく、変化球には多少コントロールがあるが、ストレートにはまったくない。


ローランドスミスには誰かがハッキリ宣告すべきだ。
「君のピッチングは、どこをどこから見たって、打者をのらくらかわしていく変化球投手にしかなれない。君はストレートの切れる剛速球投手でも、なんでもない。余計な見栄など、捨てるべきだ」

一発放り込まれたくらいですぐに気が抜けてしまうような弱い性格で、どうすると、度胸を決めストレート一本に全てを託してストライクを投げ込む投手になれるというのだ?
性格からして、どうみてもストレート勝負に向いていない。






June 24, 2010

本当に凄い投手だ。
鳥肌モノの9イニングだった。
Chicago Cubs at Seattle Mariners - June 23, 2010 | MLB.com Gameday


6月に入って5回目の登板だったが、これで4試合連続の無四球試合。4試合34イニングを投げて、ただのひとつも四球も出していない。クリフ・リーを見慣れてしまうと、あたかも無四球試合が簡単であるかのような錯覚に陥りそうになる。もちろんそれは大きな勘違いで、1ゲームやるだけで凄いことなのだが、それを4試合も続けてしまえるのが、クリフ・リーだ。
クリフ・リーのゲーム・ログ
Cliff Lee Game Log | Mariners.com: Stats

クリフ・リーはけっこうヒットを打たれる。今日なども、完投とはいえ、相手チームのシカゴに9安打も打たれている。無死2、3塁なんていうイニングすらある。なのに、シカゴはソロホームランの1点どまり。それがクリフ・リーである。

何度も何度も見てきて、何度も何度も書いたことだが、クリフ・リーは四球による無駄なランナーを出さないし、出したランナーをホームに帰さない。そして「ここで三振が欲しい」という場面では、ずばぁああああっと、目の覚めるような3球三振がとれてしまう。
こんな投手を見ていると、ある意味しかたないホームランやヒットによるランナーより、バッテリー(あるいは投手)が防ぐことのできる四球によるランナーのほうがずっとやっかいだし、失点の原因になりやすい、という当たり前のことを痛感するし、四球がゲームに与えるダメージの重さがよくわかる。
守備時間を長くしやすい四球乱発は野手の疲労をまねくために、打撃、ラン・サポートにも大きな影響がある、ということもある。

SO/BB(キャリア)
クリフ・リーは44位。現役投手第1位はダン・ヘイレン
Career Leaders & Records for Strikeouts / Base On Balls - Baseball-Reference.com
SO/BB(シングルシーズン)
1位は、サイ・ヤング賞2回のブレット・セイバーヘイゲンで、11.0000。ところが今シーズンのクリフ・リーは、なんと19.0000。もしもこのレベルでシーズンが終われば、とてつもない記録が出る。
ちなみに大投手ロイ・ハラデイはトロント在籍時代に3回、シングルシーズンのSO/BBトップに輝いていて、ナ・リーグに移籍した今年も、ナ・リーグトップを走っている。
Single-Season Leaders & Records for Strikeouts / Base On Balls - Baseball-Reference.com

SO/BB 19.0000。本当に素晴らしい数字だ。
これは今シーズン、クリフ・リーが投球術において、あの大投手ロイ・ハラデイと肩を並べるシーズンになることだろう。



今日クリフ・リーが投げたのは115球だが、そのうち、何球がストライクだったか。

90球

そう。90球である。

ストライク率にすると、78.3%
。もう、べらぼうに高いとか、そういう言葉すら追いつかない。ちょっと普通では考えられないくらいに、馬鹿みたいに、高い。

6月7日の登板のときにも、
「クリフ・リーが投げた107球のうち、84球もの投球がストライクだったことには驚かされた。」
と書いたわけだが、そのときのストライク率は78.5%で、今日6月23日とほとんど同じストライク率である。要は、相手がどこだろうと、まったくピッチング・スタイルが変わらない、それが今シーズンのクリフ・リーだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年6月7日、クリフ・リー、シアトルが苦手とするアーリントンのテキサス戦で貫禄の107球無四球完投、4勝目。フィギンズの打順降格で、次に着手すべきなのは「監督ワカマツの解雇」

2010年6月23日 6回表1死1、2塁 デレク・リー三球三振6回表1死1、2塁
デレク・リー三球三振

初球 インハイのカットボール
2球目 インコース低め一杯に決まるカットボール
3球目 ほぼ真ん中のストレート(空振り)


2010年6月23日 6回表2死1、2塁 ネイディ三球三振6回表2死1、2塁
ネイディ三球三振

初球 インコース ハーフハイトのカットボール
2球目 インコースのストレート
3球目 高め一杯のゾーン内にストンと落ちるスローカーブ


2010年6月23日 7回表1死2、3塁 カストロ三球三振7回表1死2、3塁
カストロ三球三振

初球
真ん中低めのチェンジアップ
2球目
高め一杯のカットボール
3球目
外から入ってくるカーブ
(見逃し三振)


つい先日の記事で(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年6月13日、「メジャーで最もストレートばかり投げる」シアトルのリリーフ陣。なんと「4球のうち、3球がストレート」。(ア・リーグ各地区ごとのピッチング・スタイルの差異についてのメモ))、ア・リーグ東地区の投手が、「ストレートを多用するかわりにカットボールを多投する」というピッチングスタイルを持つ、ということを書いた。
今日ランナーのたまったシチュエーションで3人のバッターを三球三振になで切りにしてみせたクリフ・リーのピッチングは、ちょっと見ると、まさに「東海岸風カットボール ピッチング」にみえる。

クリフ・リー2010年スタイルの要点1
カットボールでカウントを作るという戦略

クリフ・リーが長く所属していたクリーブランド・インディアンズは中地区のチームであって東地区ではない。だが、オハイオ州自体ほとんどアメリカの北東のはずれといってもいいくらいの位置にある州なわけで、インディアンズと東地区各チームとは非常に近いロケーションにある。

では、その地理的に近い意味もあって、クリーブランドは先発投手が非常にカットボールを多用する「東海岸風のチーム」で、それでクリフ・リーもカットボールを多用する、という仮説が成り立つのだろうか?


答えは「 NO 」だ。
クリフ・リーがクリーブランドにいた時代の、クリーブランドの先発投手全体の「カットボール率」を見てみると、その数字はかなり低い。クリーブランドはカットボールを多用するチームカラーではなかったのである。
American League Teams » 2008 » Starters » Pitch Type Statistics | FanGraphs Baseball

チームを見るのではなく、クリフ・リー自身のピッチタイプ、つまり、ゲームで投げた球種の割合を年度別に見てみると、非常に面白いことがわかる。
クリフ・リーがカットボールを多用しだしたのは、フィラデルフィアに移籍して以降、つまり長年在籍したクリーブランドを出た以降のことで、さらにシアトルに移籍してからは、まるでトロント、ヤンキース、タンパベイといったア・リーグ東地区の投手たちのように「ますますカットボールの割合が増えている」のだ。
つまりクリフ・リーがピッチングのひとつの柱になるボールとしてカットボールを多用しだしたのは、ある意味、シアトルに来てから、なのだ
シアトル移籍以降のクリフ・リーのカットボール率はクリーブランド時代の3倍以上に跳ね上がっている。
Cliff Lee » Statistics » Pitching | FanGraphs Baseball

シーズン別 クリフ・リーのカットボールの割合
2004 5.2(%)
2005 2.8
2006 6.3
2007 4.9
2008 6.2 この年までクリーブランド
2009 12.4 フィラデルフィア移籍
2010 17.1 シアトル移籍


クリフ・リー2010年スタイルの要点2
〜0-2カウントから1球遊んで、それから勝負、などという回りくどいことをせず、打者に考える暇を与えない投球テンポの早さ

クリフ・リーは上に挙げた3人に対して、0-2と、カウントを追い込んでから、怖がらずに変化球をストライクゾーンに投げ込んでいる。使われるのは、高い軌道を描いてボールから大きく曲がってストライクになるカーブなどだ。


今シーズン絶好調のジェイソン・バルガスも、もともとチェンジアップを決め球にしているピッチャーだが、今シーズンに限っていえばカットボールをけっこう多めに使いだしているらしい。
そのバルガス、なんでも、クリフ・リーに「カットボールを使うピッチングの要点について質問した」らしい。
で、クリフ・リーがバルガスに答えた「ピッチングの要点」というのは、カットボールそのものの握りだの、使うカウントだのという話ではなくて、「ピッチングのテンポを早めることの大事さ」を強調したらしい。
クリフ・リーいわく、「打者に考える暇など与えず、ポンポンとテンポよく投げろ」と、そういうようなことを、クリフ・リーはバルガスにアドバイスしているらしいのだ。


正直、投手コーチのリック・アデアより、クリフ・リーのほうが、「投手コーチとして有能」なんじゃないか、という気がしてきた






June 21, 2010

No need Vuvuzel for MLB stadiumdamejmaブログは
MLBスタジアムでの
ブブゼラ使用に
断固反対
します。

June 20, 2010

セーフコとLondon Bridge Studio

ニルヴァーナと並ぶシアトル出身のオルタナティブ系バンドの雄、パール・ジャムのデビューアルバム「 Ten 」がレコーディングされたのは、London Bridge Studioだ。マリナーズの本拠地セーフコ・フィールドから、Interstate Highway 5 (インターステイト・ハイウェイ5号線)を真北に約16マイルのところにある。

シアトルで録音されたパール・ジャムのデビューアルバム TenTen

Recorded March 27 – April 26, 1991 at London Bridge Studios, Seattle, Washington

インターステイト・ハイウェイの「番号」は、「奇数」はアメリカ大陸を「南北」に走る道路、「偶数」は「東西」に走る道路、というふうになっていて、また、「5の倍数」は特に重要な道路につけられている。

だから、「5号線」といえば、「アメリカを南北に走る重要な高速道路のひとつ」という意味になる。(下の地図の赤線部分)
Interstate Highway 5>


Interstate Highway 5の標識トランスカナダ・ハイウェイ British Columbia Highway 1

インターステイト5号線は、南はメキシコ国境から、パドレスの本拠地カリフォルニア州サンディエゴ、エンゼルスのあるアナハイム、ドジャースのあるロサンゼルスを通り、さらに北上して、パドレスのマイナーのあるオレゴン州ポートランドやマリナーズのマイナーがあるタコマを通って、シアトル、さらにはカナダ国境にまで達する総全長1381.29マイル=約2200キロもの長い長い高速道路だ。

さらに、5号線はカナダ国境で終わりだが、道はその先もトランスカナダ・ハイウェイというカナダの大陸横断高速道路British Columbia Highway 1に繋がっていて、シアトルのすぐ北にある冬季オリンピックが開かれたバンクーバーを通る。この道は、はるか彼方の大西洋岸までカナダの大陸を横断する。

2つの高速道路は長大な道路だが、カナダ人はアメリカ人がフリーウェイを作るような熱心さはもたないらしく、トランスカナダ・ハイウェイ1号線は、ところどころが他の国道とダブっていたり、州ごとにナンバリングが変わったりしていて、アメリカのフリーウェイとはまた違う顔をしている。



パール・ジャムのヴォーカリスト、エディ・ヴェダー Eddie Vedderがシアトル・マリナーズの大ファンだ、という人がいるけれども、彼が熱心な野球ファンなのは間違いないにしても、一番お気に入りのチームは、たぶん生まれ故郷のシカゴ・カブスだ。
実際、カブスのための曲を書いたりしているし、リグレー・フィールドで7回裏のお約束の歌「私を野球に連れてって」(Take Me Out To The Ball Game)を熱唱してみせたり、何度もカブス関係の話題になっている。
Eddie Vedder writes song for baseball team | News | NME.COM



シアトルの有名バンドの一員とはいえ、エディ・ヴェダーはそもそもシアトルの生え抜きではないから、しかたない。彼の生まれはイリノイで、それからサンディエゴ、イリノイ、ロサンゼルスと住まいを移りながら、成功のチャンスをうかがっていたところに、シアトルのバンドがヴォーカルを探しているという話が舞い込み、元レッド・ホット・チリ・ペッパーズジャック・アイアンズの紹介でヴォーカリストに抜擢されたという経緯があってパール・ジャムに後から入っている。
いわば、エディ・ヴェダーは「インターハイウェイを北上して」成功をおさめたわけだ。

そこへいくと、同じパール・ジャムでも、ギタリストマイク・マクレディは、セーフコを訪れてユニフォームに袖を通したこともあるくらいで、れっきとしたシアトルファンだ。彼は生まれはフロリダ州ペンサコーラだが、育ったのはサンディエゴで、いまは奥さんと2人の子供とともにシアトルに住んでいる。
そういう意味でマイク・マクレディはいまやシアトルの「ローカル」なわけで、マリナーズに対する熱意だけでいうなら、マクレディのほうがよっぽど熱心だろう。

<b>パール・ジャム</b>のギタリスト マイク・マクレディ パール・ジャムのギタリスト
マイク・マクレディ

Mariners Blog | Mariners will try to "string'' some hits together, starting with Pearl Jam guitarist Mike McCready | Seattle Times Newspaper



とにもかくにも、上に書いたようなさまざまな経緯で集まったパール・ジャムのメンバーたちは、結成にあたって、それぞれの「思惑」を抱えて、車でインターステイト5号線を行ったり来たりしたのだろう。エディ・ヴェダーがヴォーカルのオーディションのために急遽当時住んでいたロサンゼルスからシアトルにやってきたり、パール・ジャム結成後セッションやレコーディングのためにセーフコの北にあるLondon Bridge Studioに通ったり。


逆に、元ガンズ・アンド・ローゼス(現ジェーンズ・アディクション、ヴェルヴェット・リヴォルヴァー)のベーシストダフ・マッケイガンは、シアトルの「生え抜き」だが、エディ・ヴェダーやマイク・マクレディと逆に、シアトルからロサンゼルスに出て成功を収めた。
シアトル出身のマッケイガンは、ダブル・ボブルヘッド・デーにわざわざVIP席ではなく、ごく普通のスタンドに座って観戦に来るくらいだから、マリナーズファンなのは間違いない。
彼は、エディ・ヴェダーと逆に、「インターハイウェイ5号線を南下して」成功を手にしたことになる

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年6月18日、イチローとグリフィーのダブル・ボブルヘッド・デーにふらりとやってきた元ガンズ・アンド・ローゼスのダフ・マッケイガンは「レイカーズが大嫌いなんだ」と言った。


インターステイト5号線、それは
90年代ロックの熱を運んだroot(道、根っこ)でもあるのだ。

前の記事で、トロント移籍後のブランドン・モローの投げるストレートの割合が下がり、かわりにカーブを投げる割合が2倍になった、というような「シアトルから移籍した投手の球種の大きな変化」の話を書いたが、シカゴ・カブスに移籍したカルロス・シルバの球種はなにか変わったのだろうか。ちょっと気になって数字を覗いてみることにした。

カルロス・シルバの球種
(シーズン別 % 数字は左から
ファスト・ボール スライダー カーブ チェンジアップ)

2002 82.9 12.7  0  4.4 フィラデルフィア
2003 81.2 15.4 0.9  2.5 ミネソタ
2004 79.3 3.7  10.3 6.7 ミネソタ
2005 83.9 5.0  6.6  4.5 ミネソタ
2006 73.6 10.2 3.0  13.1 ミネソタ
2007 68.3 8.7  0   23.0 ミネソタ
2008 69.1 9.3  0.3  21.3 シアトル
2009 83.1 5.7  0   11.2 シアトル
2010 55.7 14.5 0   29.8 カブス
Carlos Silva » Statistics » Pitching | FanGraphs Baseball

いやはや、なんだこれは。

記事を書いているブログ主自身ですら、2009年以前と2010年の数字があまりに違いすぎて、目の錯覚ではないかと何度もファングラフのページを見直したくらいだ。
言うまでもない。理由はよくわからないが
2009年以前のシルバと2010年のシルバは別人である。
別の面から言えば「投手は配球しだいで別人にもなれる」という言い方もできる。さらに言うなら「配球の違いは投手のアイデンティティに関わる一大事、生命線である」ともいえる。


2009年のシルバは、たった30イニングしか登板してないとはいえ、なんとストレート率が83.1%の超高率。なんと使う球種の5球に4球以上ストレートを投げる「ストレートの魔人」だったようだ。また、シアトルに移籍してきて153イニング投げた2008年のストレート率だって、シルバ自身の数値としては低いが、他の投手と比べればけして低くはない。むしろ2009年以前のストレート率はどれもこれも異常な高さである。
以前の記事で、シアトルのリリーフ陣が全体として73%もストレートを投げると批判したが、なんのことはない、シルバはそんな数字を遥かに超越していた(苦笑)

ところが、である。
2010年のシルバは、シアトルに来る以前からあれほど投げまくっていたストレートを異常に減らすと同時に、3球に1球チェンジアップを投げるという、ボストンの岡島ばりの「チェンジアップ・マシン」に変身している。
2009年は1勝3敗。防御率8.60。K/BBは0.91。2010年は、いま現在8勝2敗、防御率3.01。そしてK/BBは、なんと前年の0.91から4.07。
4.07? あまりの変身ぶりに本当にびっくりする。おまえは仮面ライダーか。


どうしてまた、こういうことが起きるのだろう。
理解に苦しむ。

彼が最も良いスタッツを残したのは、200イニング以上を投げ、14勝8敗をあげたミネソタ在籍時の2004年あたりだと思うが、シルバがやたらとストレートを投げたがる投手であること自体は、けして「ストレート王国」のシアトルに来たというのが理由ではなく、シルバが昔からそういう投手だったからだ。
だからモローのケースとは違い、シルバについては「ストレート王国」シアトルでストレートをやたらと投げさせられてピッチングスタイルが安定しなかった、壊れた、などと批判をするつもりはない。


むしろシルバの場合に問題なのは、2008年に彼がシアトルに移籍して来るまでの間、シルバが投げるストレートが、量も割合も年々減りつつあったことにシアトルが気がつかなかったこと、のように思えてならない。
つまり、言いたいのは、近年のシルバは何かフィジカルな理由で昔のようにストレートをビュンビュンほうれるだけのコンディションではなくなりつつあったのではないかということだ。
まぁ、端的に言えば、「ミネソタ時代にストレートを馬鹿みたいに投げすぎたせいか何かで、シアトルに来たときにはもう、昔のようにストレートばかり投げるのを難しくさせる持病のような故障が、身体のどこかにあったのではないか」という推測だ。


この推測、別にたいして自信があるわけではないが、もし仮定の話とはいえ多少は真実味があるとすると、チーム運営上、問題が3つほどある。(というか、3つもある)

1 故障持ちを、なぜ大金払ってまで獲得してきてしまうのか
2 故障持ちで、年々ストレートの威力が落ちてきている投手なのに、
  なぜストレートばかり投げさせたのか
3 故障持ちの選手であるにしても、より負担のかからない球種を中心にしたピッチングスタイルへの変更などで復活させる工夫やアイデアも実行せず、なぜあっさり放出ばかり繰り返すのか

近年のシアトルはどういうものか知らないが、故障持ちの選手に大金を払って獲得してきてしまい、後でお払い箱にする傾向がある。それはGMが、あの劣悪最低なバベシからズレンシックに変わったからといって、特に改善されたわけではないようだ。
やっかいもののシルバの放出の駒になってくれたミルトン・ブラッドリーはともかく、グリフィー・ジュニアだって、ジャック・ウィルソンだって、マイク・スウィニーだって、シーズン通しては働けない立派なスペランカーではある。

結果論だが、カブスはカルロス・シルバのコンディションにあったピッチングをさせて、有効に使いまわしているが、シアトルはシルバに合わないキャッチャーを押し付け、コンディションに合わないピッチングをさせて、無駄に金を払ったとしか思えない。
どうも最近のブルペン全体のかかっている「ストレート病」といい、シアトルの投手管理能力にはどこかに問題がありそうだ。一度コンディションが落ちてしまうと、なかなかどころか、元に戻せなくなることが多すぎる。


ちなみに、もちろんカルロス・シルバが使う球種に関してだって、シルバと城島の間に確執があったことは、ここでも何度か書いたし、地元メディアでも話題になった。メジャーにしては珍しく監督が両者を監督室に呼び出してわざわざミーティングを行って、2人の間の認識の溝を埋めようとしたくらいだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2008年5月24日、城島はシルバについての認識不足を露呈した。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2008年6月10日、シルバは城島の悪影響から脱し本来の調子を取り戻す。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2008年6月28日、クレメント先発のこの日、シルバは7連敗を脱出した。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2008年8月15日、投手破壊の天才城島はついにシルバを強制DLにした。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年4月8日、城島はシルバに4番モーノーの外角低めにシンカーを6連投させ、逆転負けした。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年4月、同じ失敗に懲りずにシルバにアウトコースのシンカー連投を要求する城島の1年前を振り返る。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年4月25日、シルバは2008年6月28日にクレメントを捕手に勝って以来302日ぶりに、ロブ・ジョンソンを捕手に勝利した。






トロントに出されたブランドン・モローが最近4試合で連続してQS(クオリティ・スタート)を決めている。トロントでは既に13試合に投げているが、そのうち8試合でQSを決め、QS率は既に61.5%にも達している
61.5%のQS率というと、LAAのアーヴィン・サンタナや、カンザスシティのバニスター、タンパベイのマット・ガーザ(いずれも57%)より上で、今シーズンなかなかのボストンのバックホルツ(62%)に肩を並べつつある、という意味になる。
たいしたものだ。移籍直後にありがちな不安定さが消えていき、このところ立派に先発投手としてモノになりはじめたらしい。



モローが、移籍にあたってのインタビューで I was never really allowed to develop as a starter.「僕は(シアトルで)先発投手としての成長の機会をまるで与えられなかった」とチームの自分に対する間違った扱いをハッキリ非難したのをよく覚えている。
シアトル時代のモローの処遇はそれはそれは酷いものだった。
彼をマイナーから上げてきては、(彼だけでなく、どんな投手にでもそうだったが)投手の個性をより伸ばし生かす術などまるで持たないダメ捕手城島相手とばかりバッテリーを組まさせては(11ゲーム 29.2イニングで最多)、四球を出しては痛打され続けただけでなく、そうした一度や二度の失敗ですぐにマイナーに送り返す、というような、あまりにも馬鹿げた選手起用をとっていた。
(この辺のプロセスは2009年のバルガスもよく似ている。2009年にバルガスはローテに戻ってきてはダメ捕手のキロスとばかり組まされ、またマイナーに落とされたりしていたものだ)→参照:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:「城島コピー捕手」キロスと「キロス問題」

トロント移籍後のモローは不安定さがすぐに消えたわけではないが、きちんと試合に使われ続けているうちにピッチングの質が変わってきたようだ。
彼が移籍したばかりの不安定だった時期に彼のピッチングを冷笑していたモノを見る目の無い城島オタクやシアトルファンには「ダメな人はどこまでいってもダメなんですねぇ。また皆さんの低脳ぶりが証明されてしまいましたね」と申し上げておきたい。
Brandon Morrow Game Log | bluejays.com: Stats


シアトル時代にモローに対して日本に逃げ帰ったダメ捕手城島が行った最悪最低の所業というのは、シアトルファンの間ではたいへんに有名な話だ。
簡単にいえば、投手コーチのリック・アデアがストレート偏重で単調になりがちなモローのピッチングの「質」を変えるために「モローにカーブを投げさせてみる」という打ち合わせを試合前のミーティングでしていたにもかかわらず、ダメ捕手の城島がなんと、「自分だけの一存」で「モローにカーブのサインを一切出さなかった」というものである。
くだらないにも程がある話である。思い出したくもない。

こうしてモローはメジャーに上がるチャンスをもらうたびにダメ捕手を押し付けられ、先発投手としての結果がなかなか出せないまま、いたずらにマイナーとメジャーの間を行ったり来たりさせられ、そして挙句の果てにはチームから出されてしまった。
その不幸なブランドン・モローのキャリアに、今年絶好調のフィスターやバルガスと同様、ダメ捕手と縁が切れたことで、ようやく陽の目が当たろうとしている。めでたい、めでたい。

「城島打ち合わせ無視事件」の記録
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年12月22日、「投手コーチ・アデアとの打ち合わせを無視し、モローにカーブのサインを一切出さなかった城島」に関する記録。投手たち自身の「維新」による城島追放劇の舞台裏。

元データ:MyNorthwest.com シャノン・ドライアーのコラム
Joh Leaves the Mariners, What Now For Both - MyNorthwest.com
The real eye opener was in the game Brandon Morrow threw right before he was sent down. Don Wakamatsu had said in his post game press conference that it looked like Morrow's breaking ball was shaky the few times he threw it. When we asked Morrow about it he looked at us stunned and said that he didn't throw a breaking ball that game. The plan with Rick Adair and Joh going into the game was to incorporate the breaking ball, it was what he was working on but Joh never called one. His explanation, he couldn't get Brandon into a count where he could throw it.
本当にビックリしたのは、モローがマイナーに降格させられる直前のゲームである。監督ワカマツは試合後の記者会見で「今日のモローはブレーキング・ボールを何球か投げたが、どれも不安定に見えた」と話した。
私たち記者がモローにそれを尋ねると、彼は呆然と我々を見つめながら、「このゲームで僕はブレーキング・ボールなんて、1球も投げてないよ」と言ったのである。
なんでもリック・アデア投手コーチとジョーがゲーム前に立てたプランでは、ブレーキング・ボールを交えるはずだった。だが、ジョーはそれを一度もコールしなかったのである。ジョーの説明によると、モローがブレーキング・ボールを投げることのできるカウントに持ち込むことができなかったから、ということだった。



さてトロントに移籍してからのブランドン・モローのピッチングで何がいったい変わったのだろう。

結論は簡単だ。「カーブ」である。
細かい部分はさておき、下記のデータを見てもらおう。

モローの使った球種
(シーズン別 % 数字は左から、ファスト・ボール スライダー カーブ チェンジアップ スプリット)
Brandon Morrow » Statistics » Pitching | FanGraphs Baseball
2007年 80.0 10.5 0 3.3 6.2
2008年 70.7 16.2 1.9 0.9 10.3
2009年 70.5 15.0 4.8 9.8 0
2010年 62.9 16.6 10.8 9.7 0

2009年と2010年で最も大きく変わったことは、上の数値でまるわかりだろう。
「ストレートが大きく減り、そして、カーブを多用にするようになった」
実は、配球にバランスが出てきたことは、ストレート自体の効果も増している。というのは、ストレートの割合が減ったことで、ストレートを打たれるパーセンテージ自体が5%ほど下がったのである。打者にストレートに狙いを絞られずに済むことからくる、いい意味の相乗効果だろう。


2009年までモローのストレート率は「70%」を毎シーズンあたりまえのように越えていた。この「ストレート率 70%」という数値は「メジャーではよくある話」なのか、どうか。
先日書いた下記の記事でわかるとおり、個々の投手はともかく、チームごとに言うなら「ストレートを投げる割合が70%を越えるようなストレート偏重の投手陣など、メジャーのどこを探しても、シアトル・マリナーズくらいしかない」。つまり、2009年までのモローは「メジャーでもシアトルにしかいない、異常なストレート偏重投手」のひとりでしかなかった。

日頃メジャーを見ていればわかることだが、100マイルの超高速ストレートを誇る投手ですら、打たれるときにはやすやすとスタンドに放り込まれ、メッタ打ちにもあうのが、世界から非凡な才能だけを集めたメジャーという場所の恐ろしさで、基本的にストレートオンリーではメジャーでは長くは通用しない。
ステファン・ストラスバーグのような超例外もあることにはあるが、彼のストレートにしたって、かつてフェリックス・ヘルナンデスもそうであったように、やがては打者につかまる時期が来る、そういうものだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年6月13日、「メジャーで最もストレートばかり投げる」シアトルのリリーフ陣。なんと「4球のうち、3球がストレート」。



実はトロントの先発投手陣はシアトルのリリーフ投手の対極にあり、「メジャーにおいて、先発投手陣が最もストレートを投げないチーム」だ。トロントのSP(先発投手)がストレートを投げるパーセンテージはヘタをすると50%を切るため、70数%もストレートを投げるシアトルのリリーフに比べ、20%も低い。
先日も書いたことだが、ア・リーグ東地区では「ストレートの割合を減らすかわりに、カットボールの多用でそれを補う」傾向が強くあり、トロントでも配球の10%程度がカットボールと、西地区、中地区のチームよりずっと多くのカットボールを使う。
American League Teams » 2010 » Starters » Pitch Type Statistics | FanGraphs Baseball

そんな中でみると、2010年6月18日現在のモローのストレート率62%という数字は、メジャーの先発ローテ投手のチーム別の数字においてみると「非常に平均的な数字」で、多すぎもせず、少なすぎもしない。つまり、「バランスがとれてきている」。
つまり、「移籍後のモローは、ストレートだけに頼らず、多少カーブを混ぜつつ、ピッチングにバランスがとれはじめている」。これだけでも、失意で移籍していくモローにくだらない罵声を浴びせた心無いクセに無能なシアトルファンを見返すには十分だろう。

だが単純なストレートを投げる割合を極端なまでに減らすトロントのローテーション投手としては、62%でもまだまだストレートの割合が高いほうだ。モローも今シーズンのオフにはカットボールでも覚えることになるかもしれない。
まぁ、いってみれば、トロントの投手コーチがやったことは
「ストレートに特徴のあるモローに、いきなりストレートを50%以上投げないように命じるのではなく、彼の個性を無理に壊さない範囲でカーブを混ぜさせていき、ピッチングの幅をゆるやかに広げていってやることに成功しはじめている」ということになる。


ダメ捕手の「壁」のないところでは、これほどスムーズに投手の改善がすすむのだから、ダメ捕手のいるシアトルから移籍した途端に活躍しはじめる投手が続出するのも無理はない






June 19, 2010

シアトルは、あの伝説のギタリスト、ジミ・ヘンドリックスの生まれた街で、彼の墓もシアトルにある。またニルヴァーナカート・コバーンが自殺したのも、彼のシアトルの自宅だった。シアトル出身バンドのひとつパール・ジャムがデビューアルバム「Ten」のためのセッションを行ったのは、セーフコ・フィールドから真北に16マイルほどのところにあるLondon Bridge Studio。シアトルは実はロックの歴史と切っても切れない街のひとつなのだ。

野球にしか興味のないマリナーズファンからはシアトルは保守的な街というイメージを持たれているが(保守的な街だからこそ、かもしれないが)パンクに影響を受けたグランジやオルターナティブ系のアーティストを続々と輩出した街でもある。
(一度ロックファンであることでも有名なランディ・ジョンソンが日本にプライベートでレコード漁りに来ることを書いたが、彼はたぶんオーソドックスなハードロック〜メタル系のファンで、グランジ、オルターナティブ系はあまり聴かないんじゃないかと想像する。ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年1月5日、ランディ・ジョンソン引退を喜ぶ。 理由:この冬の間に西新宿で見られる確率アップ(笑)
シアトルのバンド、ニルヴァーナが、ロサンゼルスのガンズ・アンド・ローゼスと対立関係にあったことは有名だが、イチローグリフィー・ジュニアのダブル・ボブルヘッド・デーのゲームが行われたシンシナティとの第1戦のスタンドに、その元ガンズ・アンド・ローゼスのベーシストで、アクセル・ローズと対立してバンドを辞めたベーシスト、ダフ・マッケイガンがスタンドに現れインタビューを受けていた。
Baseball Video Highlights & Clips | CIN@SEA: Former Guns N Roses star praises Mariners - Video | MLB.com: Multimedia

ゲームはクリフ・リーが先発し、110球79ストライク、7三振の力投でシンシナティを完封して、シアトルがひさびさの連勝。
ストライクを集めて打者をうちとるクリフ・リーらしいピッチングで、三振のほとんどは高めにはずれるストレート系と、ワンバウンドするくらい低いカーブの2種類で、打者に空振りさせて三振させる強引さがとてもクリフ・リーらしい。
Cincinnati Reds at Seattle Mariners - June 18, 2010 | MLB.com Gameday

シアトル生まれのベーシスト ダフ・マッケイガンダフ・マッケイガン(Duff "Rose" McKagan)は、1964年シアトル生まれ。ロサンゼルスに移り、ロスで結成されたガンズ・アンド・ローゼスのオリジナルメンバーになり10数年活動したが、やがてアクセル・ローズとのどうにもならない対立などを経て、1998年に脱退した。
Duff McKagan - Wikipedia, the free encyclopedia
ダフ・マッケイガンはトレイシー・ガンズが脱退する前からのガンズ最初のベーシストであり、ガンズ・アンド・ローゼスの文字通りのオリジナルメンバー。
ガンズは、そもそもバンド名の由来ともなったオリジナルメンバーのトレイシー・ガンズ(g)とロブ・ガードナー(ds)が全米デビュー前にあっさり脱退し、かわりにスラッシュスティーブ・トレイシーが加入して以降に全米デビューして、アルバム『アペタイト・フォー・ディストラクション Appetite For Destruction』発売後50週目で全米1位になっている。



ダフは今はseattleweekly.comのレギュラーコラムニストでもあり、ハワイのサーファーなどがいう「地元民」という意味で「ローカル」になったわけだが、クリフ・リー先発の今日のゲームをスタンド観戦しているところに現れたインタビュアーの質問に答えて
I am a huge Mariners fan.
I hate the Lakers.

俺は熱烈なマリナーズファンだよ。(中略)
 レイカーズなんて大嫌いさ
なーんて意味深なことを言っている(笑)

シアトル生まれのベーシスト ダフ・マッケイガン意味深というのは、もちろん、ダフが長年在籍したガンズ・アンド・ローゼスがマリナーズにとってはライバルチームの本拠地であるロサンゼルスで結成されたバンドであること、ダフがアクセル・ローズと対立してガンズから脱退したこと、ロサンゼルスにあるレイカーズがつい先日ファイナルの第7戦でボストン・セルティックスを下して連覇を果たして、コービー・ブライアントがMVPに輝いたばかりであることなどなどをまとめてひっかけて
「ロサンゼルス? しらねーよ、そんなの。だいっきらいだ」
なんて言っているわけだ。

まぁスタジアムにわざわざ足を運ぶくらいだから、ダフはイチローとグリフィーのダブル・ボブルヘッド人形は大事に家に持ち帰ったに違いない。
ただ最近の彼のseattleweekly.comのコラムには映画評はあってもスポーツ記事はなく、最近彼が加入したバンド、ジェーンズ・アディクション Jane's Addictionの記事ばかりで埋めつくされている。まぁ、それはそれでご愛嬌ということで。
Seattle Music - Reverb - "Duff McKagan" Archives


そんな「ロサンゼルスという街」に複雑な感情をもつダフだが、彼がもうひとつやっているコラムが、なんとあのPlayboy誌(日本版ではない)の「金融関連コラム」だ。
Duffonomics - Duff McKagan - Playboy Money Article
ダフは、カート・コバーンと同様に高校中退だが、アルコールやドラッグ乱用、さらには膵臓破裂という大病も経験した後に更生して、シアトル大学に入学して金融を専門的に学んだという異色の「金融系ロック・ベーシスト」だからである(笑)
ウォールストリートジャーナル電子版を購読し、ブラックベリーで金融情報を常にチェックしながら、投資信託を買い、を買い、不動産も買い、ロサンゼルスやシアトル、ハワイなどに不動産を持ち、グーグルには早い段階から投資して、ヴィンテージギター市場にも投資するというのだから、「不思議なベーシスト」ではある(笑)
彼がいうには、「バンドを食い物にされたくないから、金融のことを勉強するんだ」、とのことである。


ダフ・マッケイガンは、ジェーンズ・アディクション以外に、ヴェルヴェット・リヴォルヴァー Velvet Revolverのベーシストでもある。
いってみれば「アクセル・ローズと喧嘩別れしたガンズのメンバーばかりで作ったバンド」であるヴェルヴェット・リヴォルヴァーなのだが、どういうものか知らないが、ガンズの曲もやれば、ガンズと対立していたニルヴァーナの曲もやる。ヴェルヴェット・リヴォルヴァーのお金関連のことをやっているのは、もちろん、ダフ・マッケイガンである。



「ガンズ・アンド・ローゼスは金儲けのためにロックをやっている」と常々批判していたカート・コバーンが、(読む可能性はゼロだろうが)ダフの金融コラムを読んだら、なんと言うだろうか。また彼がヴェルヴェット・リヴォルヴァーが演奏するニルヴァーナのカバー曲を聞いたら、いったい何と言うだろう。

だからこそ、今日セーフコでダフ・マッケイガンに聞いてみてほしかったのは
「レイカーズが嫌いはわかったけどね、いったいどのくらいの本気度で、レイカーズが嫌いなの?」
ということだ(笑)

ニルヴァーナ






June 14, 2010

6月13日現在でシアトルの防御率は4.14で、ア・リーグ5位と、まぁ、なんとかみられる数字にはなってはいるが、それでも「打たれまくっている」とかなんとか、ケチをつけたがる人がいる。

先発投手   3.85 リーグ3位
リリーフ投手 4.82 ワースト2位

数字で明らかなように、打たれすぎているのは主にリリーフ陣であって先発投手たちではないし、さらに言えば、先発投手の中でも打たれているのはローランドスミスとかイアン・スネルであって、他の投手たちはそれぞれの実力相応の素晴らしい数字を残している。
こうした、いい投手とダメな投手でギャップの大きい投手陣、という構図はヘルナンデス、ウオッシュバーン、ベダードの3本柱の頑張りだけで勝ちを拾い続けた2009年とまるで変わってない。また、4番手投手、5番手投手でチームの借金を増やし続けるという悪い構図も、まったく代わり映えしない。


その打たれまくりのシアトルのリリーフ陣だが、投球の74.3%がストレートだというデータがある。なんと4球に3球ストレートを投げているわけだ。
もちろんデータなど見なくても、ストレートを投げる投手ばかり獲りたがるシアトルの歴史的なアホさ加減は十分知っているファンはたくさんいるわけだが、いくら速球投手大好き球団といったって、4球に3球の割合でストレートというのはいくらなんでも配球として多すぎると思うのは、ブログ主だけだろうか。
ちなみに、ストレートばかり投げたがるシアトル投手陣とはいえ、先発投手陣はここまでストレートばかり投げているわけではない。

チーム別スターターの球種
American League Teams » 2010 » Starters » Pitch Type Statistics | FanGraphs Baseball

チーム別リリーバーの球種
American League Teams » 2010 » Relievers » Pitch Type Statistics | FanGraphs Baseball


こういうことを言うと必ず「リリーフ投手の登板場面は走者のいる場面で投げることも多い。だから変化球は投げづらい」だの、なんだの、なんのことやらさっぱりわからない説明をする人が出てきそうなわけだが、数字をみてもらえばわかることだが、「リリーフ投手がこれほどストレートばっかり投げる球団」など、メジャーのどこにも見あたらない。
全30球団で、シアトルのリリーフが最も(というか、異常に)ストレートを投げる率が高いのである。

リリーフ投手がストレートを投げる率の低いベスト3
レイズ      50.2%
ブルージェイス  57.5%
ヤンキース    58.5%
ホワイトソックス 59.0%
エンジェルス   57.5%

リリーフ投手ストレート率の高いベスト3
マリナーズ    74.3%
インディアンス  67.9%
ロイヤルズ    66.8%
レンジャーズ   67.9%
レッドソックス  65.9%


「カットボール多用」のレイズおよび東地区
レイズのリリーバーは、他のチームにはない特徴がある。ストレートのかわりにカットボールを多用するといってもいいほどの極端なカットボール多用である。配球の24.8%がカットボールだから、4球投げたら「2球はストレート、1球がカットボール、残り1球が別の球」という配球ということになる。4球のうち3球がストレートのシアトルと比べると、その違いの大きさがわかる。
「カットボール多用」という傾向は、レイズほど極端ではないにしても、ストレートをあまり使わないチーム2位のブルージェイズ(11.9%)、3位のヤンキース(13.1%)にも同じようにある。つまり、いわば「カットボール多用は、ア・リーグ東地区のリリーバー共通のお約束配球」のようになっている。

「スライダー多用」のツインズ
レイズと東地区にカットボールをやたらと多用する傾向があるのと同じように、中地区のツインズには「スライダー多用」という特徴がある。
ツインズ以外のア・リーグ全球団が13〜16%におさまっているのに対し、ツインズだけが26.9%と、スライダーの割合がほぼ2倍になっている。多少ツインズに近い「スライダー多用リリーフ陣」は、他にオリオールズ(19.1%)くらいしかない。


西地区では、カットボールの多用される東地区と違って、チームごとにリリーバーの配球傾向が多少違う。

「カーブ多用」のエンジェルス ERA4.79
今シーズンは投手陣に難があるといわれていたエンジェルスだが、ストレート(59.2%)の比率が西地区で最も低い一方で、カーブ(16.3%)を多投してくる、という特徴がある。カーブ16.3%という数値はア・リーグでは飛びぬけて高い。また、メジャー30球団をみても、ナ・リーグに12%台のカージナルスやブレーブスがあるだけ。ア・リーグのチームはそもそも2桁パーセントにいかない球団がほとんどだ。
またカットボール9.3%で、西地区のリリーフで最もカットボールを使うのがこのエンジェルスだ。
本来なら、防御率を見るかぎりでは、こうした極端な配球が功を奏しているとは言えない・・・・・と、書きたいところだが、残念なことに、シアトルの貧打線には、ソーンダース、アルフォンゾ、不調時のグティエレス、ロペスなど、「縦に割れる外のカーブを非常に苦手にしている打者」が多く、ことマリナーズ戦に関してだけは「カーブ多用」が効果をあげているといわざるをえない。

エンジェルスにやや近い傾向のレンジャーズ ERA3.72
今シーズンのア・リーグ西地区で最もリリーフ陣が成功しているといえるレンジャーズの球種の傾向は比較的エンジェルスに近い。ストレート66.1%と、3球に2球がストレートで、残りがスライダー15.5、カーブ9.3などとなっている。
大きな特徴はないが、ややカーブの割合が多めな点に、エンジェルスに近いイメージがある。

「平均化して特徴を消している」アスレチックス ERA4.23
ストレート64.1、スライダー15.3、カットボール7.5、カーブ4.4、チェンジアップ8.7。どの球種の数字を見ても、リーグ平均に近い。打者に狙いを絞り込ませないように、あえて使う球種に際立った特徴をもたせないようにしているような感じがする。他の球団にみられない特徴をもつエンジェルスとは、全く逆のイメージである。


そんな西地区の中でマリナーズのリリーフ投手がカーブを投げる割合は、わずか2.6%しかない。その一方で、4球に3球ストレートを投げてくるのがわかっているのだから、打者としてはヤマを張りやすいのは間違いないだろう。
いくらなんでも、これでは打たれる。

もちろん、ロスター枠に野手が多すぎる問題などから投手の疲労度が高いことか、コントロールの悪さからカウントを悪くして、しかたなくストレートばかり投げてストライクを稼ぎに行く、という場面も多々あったとか、さまざまな理由が考えられることだろう。いずれにしても理由はどうでもあれ、打者にストレートにヤマを張られて打たれることに変わりはない。
例えば、まるでスカウティングが頭に入ってないアルフォンゾあたりのキャッチャーが、インコースのストレートくらいにしか強味のないバッター(例えば松井)あたりと対戦しているときに、いくらリリーフ投手が変化球のコントロールに自信がないから、疲れているからといって「ストレートのサイン」ばかり出し続けているようでは、いくらやってもダメなのである。

シアトルのリリーフ投手の極端なストレート偏重配球が、コントロールに自信のない投手側からの要求なのか、それとも、これまで速球派投手ばかり獲得してきたフロントの責任なのか、投手コーチのリック・アデアの戦略なのか、キャッチャーのリードのせいなのか、ピンチの場面ではベンチから投手に配球サインを出す監督ワカマツのミスなのかは、いまのところわからない。
年度別にみると、こうした「リリーフ投手のストレート偏重」傾向が始まったのはなにも今年が初めてではない。2006年までのシアトルのリリーフは、むしろア・リーグで最もストレートを投げない球団のひとつだった。転機になったのは2007年。いきなり急激にストレート偏重配球になり、さらに監督・投手コーチが変わった2009年以降にさらに拍車がかかった。
リリーフ投手がストレートを投げる率の
低い順に数えたシアトルの順位と、リリーフ陣のERA

2005年 61.7%(3番目)3.60
2006年 61.5%(3番目)4.04
2007年 65.3%(12番目)4.06
2008年 63.9%(7番目)4.14
2009年 73.4%(12番目)3.83
2010年 74.3%(12番目)4.96

だが誰の責任であれ、
もういい加減に方針転換しないとダメだと思う。






偉大なるバカボンの父も言っている。

「 これでいいのだ。 」

Seattle Mariners at San Diego Padres - June 13, 2010 | MLB.com Gameday

"I was fine, I was strong,"
「ピッカピカだったろ?俺って強ええからな、イェイ」

わざと意訳したが(笑)、ゲーム後のインタビューでヘルナンデスはひさしぶりに彼の年齢相応らしい感情の爆発のさせかたをした。これから長いメジャー生活を送るであろう彼の今後のピッチングスタイルを考える上で、たいへん意味のあるインタビューである。読む価値がある。
Mariners win finale behind Felix's gem | Mariners.com: News


結論を先に書いておこう。
6月7日のクリフ・リーが「ストライクの鬼神」であるとすれば、本来のヘルナンデスは、同じ神でも「バランスの鬼神」である。
つまり、こういうことだ。ヘルナンデスは「ストライク・ボールの適度な混ぜ具合」や「球種を適度に混ぜるバランスの良さ」がピッチングの鍵になって、打者をゴロの凡打に打ち取る投手であり、だからこそ「ピッチング全体の適度なストライク率」あるいは「その試合におけるコントロールの出来の良さ・悪さ」が、他の投手よりもずっと大きな意味をもつと考えるのである。
「バランスが命」であるからこそ、キャッチャーとの相性が大事で、ヘルナンデスが本来もっているコントロールの悪さや、ピッチングの単調さを、補う役割がキャッチャーに求められる。
クリフ・リーは6月7日の登板で「78.5%」などという驚異のストライク率を記録して、シアトルの鬼門であるアーリントンでレンジャーズ打線を沈黙させてみせた。(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年6月7日、クリフ・リー、貫禄の107球無四球完投で4勝目。フィギンズの打順降格で、次に着手すべきなのは「監督ワカマツの解雇」
あのときのクリフ・リーが「ストライクの鬼」であるとすれば、ヘルナンデスは「バランスの鬼」であり、クリフ・リーとヘルナンデスは求めるべき目標が違うのである。



個性は、それぞれに違う。
違うから面白く美しく、また自分だけの個性という貴重な宝石を誰もが探し求める。みんな同じでは、どこまでも続くどんよりした梅雨空のようになってしまい、つまらないこと、このうえないし、価値もない。
大投手ロイ・ハラデイにはハラデイの投球術があり、「ストライクの達人」クリフ・リーのとは違う。リンスカムにはリンスカムのピッチングフォームがあり、ヒメネスとも、クリス・カーペンターとも違う。

ゲーム後のインタビューで、サンディエゴの監督バド・ブラックが今日のヘルナンデスのピッチングを絶賛しているが、その要因として「ストライク・ボールの配分の良さ」と「カーブの切れ」を挙げている。
true No. 1 pitchers という言葉のtrueという部分に、重みがある。1シーズンだけ良い投手を、バド・ブラック監督だってtrueとは呼びたくないだろう。
"Felix has come into his own as a staff ace," said Padres manager Bud Black. "He's turned into one of the true No. 1 pitchers. His ball-strike ratio was great, and that's the best overhand curve I've seen him throw."

今日のヘルナンデスは128球を投げ、ストライクを85球。全投球のちょうど3分の2がストライクであり、配球セオリーどおりの配合である。
バド・ブラック監督はこの配球全体をコントロールするヘルナンデスの能力の高さを絶賛しているわけだが、もちろん間接的にはヘルナンデスの良き相棒であるロブ・ジョンソンの素晴らしいリードに向けられた賛辞でもある。投球の3分の2ストライクを投げれば誰でもサイ・ヤング候補になれるわけではない。


ヘルナンデスのピッチング内容とストライク率の関係の深さについては、すでに何度も何度もこのブログで指摘してきた。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年10月5日、ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係を解き明かす。(ヘルナンデスの2009ストライク率グラフつき)
今年2010年の4月21日にボルチモア戦で投げたときに、対戦相手のDHルーク・スコットもこんなことを言っている。球種をうまく混ぜたことが、あのゲームで9安打打たれながら自責点ゼロに抑えることができた要因になったというのである。
He did a good job of mixing up his pitches, hitting his spots, good sinker, good velocity on his fastball, hard curve, hard slider, good changeup.
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年4月21日、ヘルナンデス8イニングを無四球自責点ゼロの完投2勝目で、17連続QSのクラブレコード達成、シアトル同率首位!ロブ・ジョンソン、4回裏2死満塁の同点タイムリーと好走塁でヘルナンデスを強力バックアップ。


ヘルナンデスの四球が増えはじめるストライク率の臨界値は、この記事(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年10月5日、ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係を解き明かす。(ヘルナンデスの2009ストライク率グラフつき)を書いた時点では、四球数が3を越えるのを「ストライク率60%あたり」と推測した。
ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係

そのため、この1年くらいの登板で「ストライク率が60%前後以下になったゲーム」を太字にして表示してみた。

2009年後半ヘルナンデスのストライク率と四球数
8月1日  104球58ストライク 55.8% 四球4
8月7日  113球70ストライク 61.9% 四球6
8月12日 105球67ストライク 63.8% 四球4
8月18日 106球69ストライク 65.1% 四球1
8月23日 101球67ストライク 66.3% 四球ゼロ
8月28日 104球63ストライク 60.6% 四球1
9月2日  114球67ストライク 58.8% 四球3
9月8日  113球69ストライク 61.1% 四球4
9月13日 109球65ストライク 59.6% 四球1
9月18日 104球65ストライク 62.5% 四球1
9月24日 108球77ストライク 71.3% 四球2 11三振
9月29日 120球69ストライク 57.5% 四球4
10月4日 107球72ストライク 67.3% 四球1
2010年前半ヘルナンデスのストライク率と四球数
4月5日  101球58ストライク 57.4% 四球6
4月10日 110球74ストライク 67.2% 四球1
4月16日 105球63ストライク 60.0% 四球2
4月21日 113球82ストライク 72.6% 四球ゼロ
4月26日 114球74ストライク 64.9% 四球3 負
5月1日  96球53ストライク 55.2% 四球4 負
5月7日  84球48ストライク 57.1% 四球4 HR3 負
5月13日 105球66ストライク 62.9% 四球2
5月18日 118球72ストライク 61.0% 四球2
5月23日 110球73ストライク 66.4% 四球1 負
5月29日 111球71ストライク 64.0% 四球3
6月3日  116球79ストライク 68.1% 四球1
6月8日  107球65ストライク 60.7% 四球3 ER7 負
6月13日 128球85ストライク 66.4% 四球1
Felix Hernandez Game Log | Mariners.com: Stats

見てもらうとわかるが、2009年はヘルナンデスがサイ・ヤング賞候補になった素晴らしいシーズンだが、ストライクが60%以下しか入らないゲームなどいくらでもあった。特に8月末から9月前半にかけて、サイ・ヤング賞が目の前にあるのがわかっていた重要ないくつかのゲームで、ストライクをとれないゲームが続き、あの時期は本当に苦しかったものだ。
だがそれでも、結果だけみれば、面白いように勝てたのである。
当時のブログ記事ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:September 2009)を読んでもらえばわかるが、9月24日の24残塁のように、たとえヘルナンデスの調子の良くないゲームでも、ロブ・ジョンソンがバッテリーとしての工夫などをして、投手単独ではなく「バッテリーとして」勝ちを積み重ね続けたことが、ヘルナンデスのサイ・ヤング賞レースを支えたのである。
もしそういう「歴史」がなかったら、いまごろとっくにヘルナンデスはキャッチャーを変えるかなにかしている。

よくロブ・ジョンソンのことを「投手にとりいるのがうまい」とかなんとか無意味な揶揄をするみすぼらしい人間がいるが、自分の無知を自分で晒すような真似をして何が面白いのだろう。今日もロブ・ジョンソンは3本のヒットでヘルナンデスを支えた。


ヘルナンデスのストライク率は2010年に入って突然落ちたわけでは、けしてない。2010シーズンに突然コントロールが甘くなって、そのために今年のヘルナンデスの調子がいまひとつ上がらないわけではないのである。
メジャーのスカウンティング能力は非常に高いから、ヘルナンデス、ロブ・ジョンソンのバッテリーの配球パターンだって分析され対策されているのは明らかだし、また一度指摘したように、2ストライクをとって打者を追い込んでからの変化球のキレがどうも今シーズンはいまひとつよくないとか、微妙な修正すべき点はたくさんある。
今日のようにカーブが切れると、ヘルナンデスのピッチングは非常に組み立てやすいだろうと思う。逆にいうと、あまりシンカーに頼るより、カーブで緩急をつけるヘルナンデスのほうが、ブログ主としては見ていて小気味いいし、安心できる。


そういう細かなことはプレーヤーにまかせておけばいいことであって、どうでもいいが、そんなことより大事なことは、「ヘルナンデスがどういう投手か」ということだ。
彼は、ストライク率が50%台の半ばに落ちるようなコントロールの甘いピッチングでは苦しい登板になるが、だからといって、クリフ・リーのようにストライクをむやみにとれる投手になる必要など、どこにもない。
ヘルナンデスは「バランスの鬼」。そのことがハッキリしたことが、このゲーム最大の収穫だと思う。

自分が誰なのかわからなくなっているローランドスミスにこそ、このゲームの深い意味をしっかりと噛み締めてもらいたいと思う。






June 10, 2010

今シーズンのシアトルは捕手の故障が多いこともあって、捕手のポジションは4人ものプレーヤーが入れ替わっている。そんな彼らのここまでの成績はどうなっているのだろう。
とりあえず先発投手たちについて、CERA(投手の捕手ごとの防御率)と、被打率をまとめてみた。元データはBaseball Reference

以下のプレーヤーの名前の順番は、CERAのいい順に並んでいる。さらに二次的には被打率の低い順に並べてある。
上に名前があるほどCERAが良いが、だからといって必ずしも被打率がいいとは限らない。例えば、ジョシュ・バードはスネル登板時のCERAが2.35と素晴らしいが、被打率は.303と、びっくりするほど酷い。
1イニングだけとか3イニングだけとか、ほんのわずかしか受けていない2人の捕手の3つのケースは、リストから除外してある。また、よく知られていることだが、Baseball ReferenceとESPNとでは、計算基準の細部に違いがあることから数値に多少の差異が生じることがあるので注意されたい。


詳しくは下記を読んでもらうとして、いま地区ダントツ最下位にあるシアトルの借金の大半は、ローランドスミスとスネルの登板ゲームで生まれている。つまり「先発5番手の投手の先発ゲーム」で生まれていることを知っておいてほしい。
例えばQS%(=6回3失点以内で登板を終えるパーセンテージ)だが、バルガスの83%を筆頭に、ヘルナンデス77%、クリフ・リー75%、フィスター70%と、この4人が高い率を誇るのに対し、イアン・スネルはわずか13%、ローランドスミスなどはたったの10%しかない(2010年6月12日現在)。

シアトルのロスター投手のリスト・スタッツ
2010 Seattle Mariners Batting, Pitching, & Fielding Statistics - Baseball-Reference.com
シアトルのロスター投手のスタッツ
Mariners » 2010 » Pitchers » Advanced Statistics | FanGraphs Baseball



クリフ・リー
(数値は左からCERA、被打率、先発ゲーム数)
Adam Moore 0.00 .130  1ゲーム
Rob Johnson 2.23 .218  5ゲーム
Josh Bard   5.65 .267  2ゲーム
Cliff Lee 2010 Pitching Splits - Baseball-Reference.com
4月30日のクリフ・リーのシアトルデビュー登板はアダム・ムーアが受けていた。これはクリフ・リーに限らず、開幕の時期に大半の先発投手はムーアが受けており、どうやらチームはムーアを正捕手に、と考えていたようだ。
5月に入ってロブ・ジョンソンが受けるようになった。5月16日と21日の2試合こそバードが受けたが、その後クリフ・リー側からロブ・ジョンソンを指名捕手にした形になって、現在に至っている。
いまシアトルの勝ち星の稼ぎ頭は、もちろんクリフ・リーである。現在登板ゲームは4連勝中。ゲームごとに立てる配球戦略の確かさ、抜群のコントロール、ピンチでも動じない心の強さ、さほど早くないストレートでも討ち取れ、打者に狙いを絞らせない配球バランス。素晴らしい投手である。
例えばK/BB(三振数を四球数で割ったもの)は、チームダントツの15.00だ。これは破格の数値だが、奪三振の多さというより、与える四球が極端に少ないという意味になる。またイニングあたりに走者を出した割合を示すWHIPも、チームベストの0.93をマークしている。
ただ彼を真似ようとするなら、それは間違った試みだ。天才イチローのバッティングも実績も、誰も真似などできないように、クリフ・リーの投球術は誰も真似などできはしないと思う。なぜなら、ひとつにはイチローやクリフ・リーにはオリジナリティがあることと、また「ヒトから学べること」はひとつの大きな天賦の才であって、シアトルのプレーヤーにはその才能に欠ける平凡な選手が多いからだ。
何年もイチローを見ていても学べない選手たちに、クリフ・リーが学べるわけがない。
Mariners' rotation could learn a lot from Lee | Mariners.com: News


フェリックス・ヘルナンデス
Rob Johnson   3.77 .256  13ゲーム
参考◆2009シーズン
Jamie Burke   0.86 .174  4ゲーム
Rob Johnson   2.01 .217  25ゲーム
城島         7.22 .328  5ゲーム
Felix Hernandez 2010 Pitching Splits - Baseball-Reference.com
2009シーズンは知っての通り、開幕から5月までは城島が受けたゲームもあったが、その大半を負け、2009シーズン途中にヘルナンデスはロブ・ジョンソンを指名捕手にした。
2010シーズンもその流れが続いており、ロブ・ジョンソン以外の捕手は一度もヘルナンデスの球を受けていない。
今シーズン彼がいまひとつ波に乗れないことは、チームの勝率に影響を及ぼしているのはたしかで、ブログ主も彼のピッチングについて気になっていることは多い。
ひとつ例をあげるとすると「せっかく打者を追い込みながら、そこで明らかにはずれるボール球を続けてしまう」ことがある。これはブログ主がずっと気になっていることのひとつ。豪腕ヘルナンデスはこんなに決め球の無い投手だったっけ? と、クビを傾げることが案外多いのはなぜだろう。


ダグ・フィスター
Rob Johnson 2.17 .204  6ゲーム
Josh Bard   3.00 .241  2ゲーム
Adam Moore 3.00 .278  2ゲーム
参考◆2009シーズン
Adam Moore 1.29 .200  1ゲーム
城島       4.58 .271  9ゲーム
Doug Fister 2010 Pitching Splits - Baseball-Reference.com
ダメ捕手が日本に逃げ帰ってくれたことで恩恵を受けた投手の1人が、フィスターだ。2010年6月12日現在、クリフ・リーをしのいで防御率チーム1位の2.45をマークしている。
またイニングあたりに走者を出した割合を示すWHIPで、クリフ・リーに次ぐ0.96をマークし、K/BBにおいてもこれまたクリフ・リーに次ぐ数字3.20を残している。
フィスターがメジャーデビューしたのは2009年だが、わずか1ゲームをムーア、さらにわずか1イニングをロブ・ジョンソンが受けた以外は、全てのゲームで城島がキャッチャーを務め、上に挙げたような防御率4点台なかばで、2流以下の数字を記録した
2010シーズンは、4月のシーズン初登板でムーアが受けた後、ジョンソンが3ゲーム受けた。5月はジョンソン2ゲーム、ムーア、バード2ゲーム、ロブ・ジョンソンと、フィスターの球を受けるキャッチャーは必ずしも一定していない。
誰が受けてもフィスターはかなりの好成績を挙げて安定しているが、被打率の良さという点で明らかにロブ・ジョンソンが抜けている。アダム・ムーアは3人の中では被打率が.278と悪く、評価できない。ムーア先発時の被打率は、2009年に城島の残した被打率.271よりもさらに悪い。


ジェイソン・バルガス
Adam Moore   2.54 .180  7ゲーム
Eliezer Alfonzo 2.77 .286  2ゲーム
Josh Bard     3.12 .281  2ゲーム
参考◆2009シーズン
Rob Johnson   3.31 .246  7ゲーム
Jamie Burke   4.76 .304  1ゲーム
城島         5.40 .272  13ゲーム
Guillermo Quiroz 13.50 .480 1ゲーム
Jason Vargas 2010 Pitching Splits - Baseball-Reference.com
フィスター同様、ダメ捕手が日本に逃げ帰ったことで恩恵を受けた投手の1人。
バルガスの2009シーズンは、キャッチャーに恵まれないまま終わった運の悪いシーズンだった。何度も書いたように、2Aから上がってきたキロスとの相性が悪くトラブルがあり、その後は相性の合わない城島を押し付けられた。
「城島問題」の意味を理解しない、目の悪いシアトルファンからは「冴えないピッチャー」というレッテルを張られたが、なんのことはない、ダメ捕手が日本に逃げ帰った2010年にあっさり復活した。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:「城島コピー捕手」キロスと「キロス問題」
開幕から7ゲーム続けてアダム・ムーアが受け、彼がケガをした後はジョシュ・バードが2ゲーム、バードがケガをした後はアルフォンソが2ゲーム受けている。バルガスについては、7ゲームも受けて被打率.180と抜群の数値のアダム・ムーアがひとり抜けた成績を収めている。


ローランドスミス
Adam Moore 5.02 .283  3ゲーム
Rob Johnson 5.90 .284  8ゲーム
Josh Bard   23.62 .625  1ゲーム
参考◆2009シーズン
Rob Johnson 2.57 .125  1ゲーム
城島       3.83 .247  14ゲーム
Ryan Rowland-Smith 2010 Pitching Splits - Baseball-Reference.com
4月 ロブ、ロブ、ムーア、ムーア、ロブ
5月 ロブ、ムーア、バード、ロブ、バード、ロブ
6月 ロブ
彼の球を受けるキャッチャーはゲームごとに変わる。そのランダムさは、シアトルの先発投手では一番だろう。ひとことで言って今シーズンのローランドスミスは、あらゆる点で「腰が座っていない」。
たとえキャッチャーが誰であろうと、CERAは5点を越え、被打率は2割8分を越えてしまう。彼が自分を見失った理由はよくわからない。
いま彼のホームラン被弾率は4.9%なのだが、これはチームワーストであり、HR/9(9イニングあたりの被ホームラン数)も、2.09と、チームワースト。。もちろん浴びたホームラン数も、12本で、これまたワースト被長打率.585、被OPS.973、どれもこれもワーストである。
また、LD%(Line Drive Percentage ライナーを打たれた割合)というデータがあるのだが、これまたローランドスミスが27%で、先発投手陣の中ではワースト。投手陣全体でみても、テシェイラの32%がワーストで、ローランドスミスはその次に悪い。バットの芯でとられられた打球をチームで最も多く打たれている(数字はいずれも2010年6月12日現在)。


イアン・スネル
Josh Bard     2.35 .303  2ゲーム
Adam Moore   4.84 .309  5ゲーム
Rob Johnson   5.40 .231  1ゲーム
Eliezer Alfonzo  5.79 .219  2ゲーム
参考◆2009シーズン
Adam Moore   2.50 .257  3ゲーム
城島         4.76 .261  6ゲーム
Rob Johnson   5.11 .186  3ゲーム
Ian Snell 2010 Pitching Splits - Baseball-Reference.com
イアン・スネルが先発したゲームは、1勝9敗である。要は、スネル先発ゲームがシアトルの最大の借金の元になっているのである。
4月は全てアダム・ムーアが受けたが、5月に入ってコロコロとキャッチャーが変わるようになった。
5月 ロブ、ムーア、バード、バード、アルフォンソ
6月 アルフォンソ
捕手別にみると、一見すると、珍しくジョシュ・バードが一歩抜けているようにみえる。だがバードがキャッチャーのときの被打率はなんと「3割」を超えている。だからバードのCERAの低さは単なる運の良さとしかいいようがない。逆に、被打率の低いロブ・ジョンソンやアルフォンソのゲームはCERAが高いという、おかしな現象がある。
このことから推測できるのは、被打率を低く抑えようとすると、ホームランを浴び、ホームランを避けようとすると集中打を浴びるという、スネルのピッチングの迷走ぶりである。このことは彼のピッチングを複数回見たことのある人なら「そういえば、そうだ」と、大きく頷いてもらえることと思う。
ちなみにスネルのホームラン被弾率は4.2%。これはローランドスミスに次いで、チームワースト2位の記録だ(2010年6月12日現在)。


こうしてみてもらうと、シアトルの先発投手の柱は、2009年にはヘルナンデス、ウオッシュバーン、ベダードの3人が柱だったのが、2010年にクリフ・リー、(本調子とはいえないが)ヘルナンデス、フィスター、バルガスに代わっただけだということがわかる。
つまり言いたいのは、ルーク・フレンチを獲得したウオッシュバーンのトレードも、スネルのトレードも、何の意味もなかった、ということだ。ズレンシックの手腕に対する批判という意味でもある。

その2010シーズンに柱になっている4人の先発投手の大半を受けて、なんとかゲームを作っているのは、もちろん上で見たようにロブ・ジョンソンである。
バード、アルフォンソではゲームにならない。特にアルフォンソは、LAA戦でインコースしか打てない松井に何度もインコースのサインを出してはホームランを献上したように、スカウティングもへったくれもないリードをするのが見ていてイライラする。


それにしても、だ。
この2年のシーズンの、どのキャッチャー、どの投手と比べても、2009年の城島の数値が最も酷い。大半の先発投手において、ほかのどのキャッチャーよりも打たれ、ほかのどのキャッチャーよりも点を取られている。

よくあんな酷いキャッチャーに高い給料を払っていたものだと思う。






June 09, 2010

今シーズンから元マリナーズ監督のリグルマンが指揮をとるワシントン・ナショナルズがスティーブン・ストラスバーグをメジャーデビューさせた。いまちょうどゲームが始まったところだ。

対戦するのは岩村セデーニョクレメントが在籍するピッツバーグ。5番打者のデルウィン・ヤングに対する4球目で、ストラスバーグはやすやすと100マイルのストレートを投げてみせた。
やはりドラフト史上最高額の全米1位、ただのルーキーではない。

始まって2イニングで、既に4三振を奪っているが、三振はもっともっと増えるだろう。デビュー戦でいきなり2桁奪三振もありそうだ。
Pittsburgh Pirates at Washington Nationals - June 8, 2010 | MLB.com Gameday


ワシントン・ナショナルズは今年、いろいろと話題が多い。監督が元マリナーズ監督のリグルマンで、ベンチコーチも元マリナーズ監督のマクラーレン
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年11月17日、元マリナーズ監督マクラーレン、リグルマン監督率いるナショナルズのベンチコーチとして、厄払いの終わったメジャーの現場に復帰。

キャッチャーにイヴァン・ロドリゲス。1塁手は、ずっとこのブログで注目してきているライアン・ジマーマンである。ジマーマンは既にこのゲームでホームランを打っている。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年11月12日、速報イチロー、3度目のシルバースラッガー賞受賞! 注目のアーロン・ヒル、ライアン・ジマーマンが初受賞。

イヴァン・ロドリゲスはもう終わった選手だとか思ってる人も多いのかもしれないが、それは間違いだ。今シーズンの彼は甦っている。OPSこそ.808と驚くほどの数字ではないが、打率.331と打ちまくっている。
要は、今シーズンの甦ったパッジはアベレージ・ヒッターになったのである。






June 08, 2010

無四球完封まであるかと思われたクリフ・リーだったが、さすがに最終回はちょっと力みが入ったようで、2点を失ったが、大きな問題はなく、107球、無四球のまま、4勝目を挙げた。
これまで鬼門といわれてきたアーリントンパークでのレンジャーズ戦にこれほど楽勝イメージで終わったゲームはほとんど記憶に無い。

さらにソーンダースが3ランを放ち、ロブ・ジョンソンがタイムリーと、下位打線の得点で同地区チームとの対戦をモノにしたのだから、このゲームの意味は小さくない。
シアトルの控え選手の力を信用しようとしないアタマの固いシアトルファンからずっと信用されなかった「ペーパーボーイ」(=新聞配達少年。マイク・スウィニーが命名したニックネームらしい) こと、ジョシュ・ウィルソンも、打撃好調をキープしている。
Seattle Mariners at Texas Rangers - June 7, 2010 | MLB.com Gameday


それにしてもクリフ・リーが投げた107球のうち、84球もの投球がストライクだったことには驚かされた。

前にヘルナンデスの例で書いたことだが(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年10月5日、ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係を解き明かす。(ヘルナンデスの2009ストライク率グラフつき))、ヘルナンデスの場合はあまりにもストライクを投げようとしすぎるゲームではかえって好投できない傾向にある。もちろんこれには、打者にかえって狙いを絞らやすいとか、いくつかの要因があることだろう。


ところが、クリフ・リーは違った。

107球というと、普通はストライクが70球ちょっとになる場合が多い。というのもバッテリーが「ストライク2に対して、ボール球が1」というメジャーの配球セオリーにならっているからだ。
ところが今日のクリフ・リーの場合は、107球中84ストライク。と、いうことは、およそ投球の78.5%がストライク、つまり、5球のうちほぼ4球はストライクを投げた勘定になる
だが、それでも彼はフォアボールを出さないだけでなく、打者に狙いを絞り込まさせず、大きな当たりを許ず、三振をもぎとってしまう。
三振、といっても、クリフ・リーのとる三振は、三球三振も多い。例えばボストンの松坂などが三振をとる場合と違って、ゲーム全体の球数を少なくできる。
ゲームをみていても、たとえシングルヒットを2本打たれようと、悠々と次の打者を3球で三振にうちとってしまう。本人が「野球において、緊張というものをしたことがない」と豪語するだけのことはある。
まったく素晴らしい投手である。
"I wish I could go through a game and throw eight or nine balls," Lee said. "That's hard to do."
Lee gives bullpen much-needed day off | Mariners.com: News

今日からショーン・フィギンズが9番に下がった。これはかつてユニスキー・ベタンコートが在籍時によく行われた策だが、打てないフィギンズの打順をいじるのは遅すぎたとしか言いようがない。
9番、というと、普通は打てない打者が座る打順だが、1番に打率がよく、ダブルプレー打の極端に少ないイチローのいるシアトルでは、9番打者の出塁は得点力アップの上で重要だということは、シアトルファンなら誰でもわかっている。
だが、頑固なワカマツは、常識にとらわれているのかなんなのか知らないが、監督に就任した2009シーズンからこのかた、そういう策をまるで試そうとしてこなかった。
だから、イチローが打席に入るときは、いつも先頭打者だったり、ランナー無しだったりして、イチローの打点が伸びない、という愚かな現象を招いていたのである。
ほかにも彼ワカマツはこのところ、ダブルプレーになるのがわかりきっている打者(グリフィーやコッチマン)をゲーム終盤の大事な場面で代打に出してダブルプレーになったり、準備のできていないブルペン投手をマウンドに上げてLAAに惨敗してみたり、ともかく采配ぶりがルンバしまくっている。


25人ロスターの枠を占領していたグリフィーが引退し、逆転負けゲームを量産したコロメ、テシェイラの2人のブルペン投手をクビにし、さらに得点力の足枷になっていたフィギンズを9番に降格させた。また、打撃コーチをクビにし、三塁コーチと一塁コーチを入れ替えた。

では、この次にチームがやるべき策はなんだ?
ということになる。

もちろん、個人的にはコッチマンも、ジャック・ウィルソンもスタメンには不要な選手と思っているが、それ以上に真っ先に処分すべき人がいる。

それは「監督ワカマツの解雇」
この最上の策を、なぜシアトルが着手しないのか。
これが最もふさわしい、真っ先に実行すべき「次の一手」である。






June 04, 2010

アムトラック シルバーサービスLynyrd Skynyrd レイナード・スキナードというフロリダ出身のサザン・ロックのバンドがある。フロリダ北東部のジャクソンビルで育った幼馴染が集まって1964年に結成された。創設メンバーの多くが1977年の不幸な飛行機事故で亡くなっていることでも音楽ファンの間では有名なバンドだが、一般にはあまり馴染みがないのかもしれない。


レイナード・スキナードの故郷ジャクソンビルは、マイアミタンパオーランドなどに次ぐフロリダの中核都市のひとつで、フットボールがさかんな街だ。

タンパはフロリダ第2の都市だが、タンバベイ・レイズの本拠スタジアムのトロピカーナ・フィールドはタンパにあるわけではなくて、タンパに近いセントピーターズバーグにある。タンパやセントピーターズバーグ、クリアウォーターといった街が形成する都市圏が「タンバ・ベイエリア」なのである。

レイナード・スキナードの先輩格のバンドに、1958年結成(バンド名は1968年から)のCreedence Clearwater Revival(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル 略称CCR)があるが、彼らのバンド名の「クリアウォーター」は、なにせサザンロックの先駆者でもあることだし、フロリダ出身のバンド、レイナード・スキナードと同じように、タンパ・ベイエリアの街のひとつフロリダ州クリアウォーターの出身であることに由来するのか、と思うと、彼らはサンフランシスコのバンドで、フロリダ州ではない。

どちらもちょっとややこしい。



オーランドは、フロリダ中央部の都市で、引退したケン・グリフィー・ジュニアの自宅がここにある。NBAオーランド・マジックの本拠地で、また長距離鉄道アムトラック Amtrakの駅がある。
フロリダ州のアムトラックというと、マイアミとニューヨークを結ぶシルバーサービスという路線以外に、かつてはオーランドとロサンゼルスを結ぶサンセット・リミテッドという路線があったのだが、今はハリケーンの影響のために路線が短縮され、オーランドまで来なくなってしまった。
Amtrak - Routes - Northeast - Auto Train
Amtrak - Routes - Northeast - Silver Service / Palmetto
ニューヨークを出発してフロリダを目指すアムトラックは、レイナード・スキナードの出身地、北東部のジャクソンビルを通り、ケン・グリフィー・ジュニアの自宅のある中央部のオーランドを経由して、マイアミを目指し、南へ南へと下る。
ジム・ジャームッシュの「ストレンジャー・ザン・パラダイス」は無鉄砲な若者3人がニューヨークから、クリーブランドを経てフロリダを目指すという素晴らしい出来栄えのロード・ムービーだが、彼らはアムトラックではなく、車を使って憧れのフロリダを目指した。


現役引退をチームに電話で知らせた後、グリフィーは、すぐにフロリダ州オーランドの自宅へ車で向かったらしい。
このドライブはアメリカの左の上、つまり北西の端から、右の下、南東の端まで斜めに大陸を横断するのだから、その距離はもう、果てしなく遠い。日本を北海道から九州まで走るのより遠い。
いったい彼がどういう気持ちでこの長い長いドライブのステアリングを握っていたのかはわからないが、とても音楽を聴きたいような気分ではなかったかもしれない。考えごとでもしながら家族の待つホームタウン、オーランドを目指したのだろうか。


やがて彼はシアトルに、選手としてではなく、別の立場で戻る日が来るという。シアトルに彼が戻る長い長いドライブのための音楽として、グリフィーの好きな音楽かどうかはわからないが、フロリダ出身のレイナード・スキナードの曲を、すすめておこうと思う。サザン・ロックの傑作だ。
この曲がかつて、アメリカ南部の文化というものについて物議をかもした曲だということは承知している。レイナード・スキナードがフロリダで生まれ、また、かつて人種差別で苦しんだグリフィーの自宅が、北のニューヨークや西のロサンゼルスといった都会にではなく、南部フロリダにあるのだから、アメリカ文化というものはなかなかこれで複雑で、けしてフラットではないのである。

レイナード・スキナード
Sweet Home Alabama(1974)
レイナード・スキナード Second Helping






June 03, 2010

胸が熱くなるゲーム。
野球ファンで本当によかった。

2010年6月2日 イチロー サヨナラヒット

珍しく1試合で3つも三振したイチロー。スイングを見るかぎり、第一打席からずっと明らかにホームラン狙いに見えた。そして延長に入ってドラマが待っていた。まるでWBCの決勝のように。
やはり、イチローは「持ってる」。

MLB公式動画
Baseball Video Highlights & Clips | MIN@SEA: Lee hustles to field a bunt perfectly - Video | MLB.com: Multimedia

Junior moment: Ichiro wins one for Griffey
Minnesota Twins at Seattle Mariners - June 2, 2010 | MLB.com Wrap

MLB公式サイトの今日のゲームの記事タイトルは、Junior moment: Ichiro wins one for Griffey 「グリフィーの花道:グリフィーのためにイチローが勝利をもたらした」と、そのドラマチックなゲームを形容した。

Mariners win on Ichiro's walk-off single | Mariners.com: News
Seattle lost one of its icons Wednesday, but another delivered.
「水曜シアトルはシンボルのひとつを失った。だが、もうひとつのシンボルがもたらされた。」

Minnesota Twins at Seattle Mariners - June 2, 2010 | MLB.com Gameday

06/02 2010 イチロー サヨナラヒット‐ニコニコ動画(9)


2010年6月2日 イチローサヨナラヒット グリフィー引退ゲームイチロー サヨナラヒット
全11球


初球から4球目まで
ストレートはすべて見逃して、スライダーのみを2球スイングしている。あきらかに変化球狙い。

5球目から10球目まで
ミネソタバッテリーがイチローが狙いを絞って打席に立っていることに気づいたのだろう、6球続けてストレートばかり投げてきた。それに対してイチローは、全ての球を三塁側スタンドにファウルしてカットしてみせた。かなりバットが遅れて出ているのは、明らかに変化球にあわせてスイングのタイミングを遅らせているためだろう。素晴らしい技術。

11球目
イチローにあまりにもストレートをカットされ続けたので、ついに痺れを切らしたミネソタバッテリーが投げてきた運命の11球目が、「スライダー」。イチロー、すかさずピッチャー返し、打球はセンター方向に。セカンドがかろうじて追いついて、膝をついたままトスするが、セーフ。イチロー、4度目のサヨナラ打。
まるであのWBC決勝の再現のようだった。

「(気持ちの)整理もできないまま、混乱した状態でゲームしていました」「去年の春(第2回WBC)の最後の打席は僕の野球人生で最も雑念の多かった打席と言いましたが、その次に雑念の多い打席と言えるでしょうね」
イチロー「いろんなことがよぎった」 - MLB - SANSPO.COM



それにしても今日のヒーローは、イチローの神バッティングもさることながら、ミルトン・ブラッドリーを忘れてはならない。

彼はかねてからグリフィーJr.が自分にとっての憧れのアイドルと公言してきたわけで、今日のゲーム前、スタジアムにグリフィーの映像が流されると、ブラッドリーはこらえきれず、ダグアウトのベンチでタオルで目をぬぐいつつ、人目をはばからず泣いた。

今日のゲームはスコアからわかるように投手戦で、シアトル先発クリフ・リーが本当に素晴らしいピッチングをみせたが、ミネソタの先発スローウィーも好投で打ちあぐねた。

5回表、先頭打者ブラッドリーがシングルヒットで出塁する。
ここで彼の驚くべきファイトが炸裂する。ロペスの打席で2盗、コッチマンの打席で3盗と、2つの盗塁を続けて成功させてみせて、さらにコッチマンの外野フライで生還してみせたのである。
Baseball Video Highlights & Clips | MIN@SEA: Kotchman plates Bradley with a sac fly - Video | MLB.com: Multimedia

9回までにシアトルの得点はこの得点のみ。まさに、ブラッドリーがこの特別な日のために、まるで乾ききった雑巾を絞るように搾り出してくれた得点だった。

"I hit left-handed because of Griffey. I wanted to play baseball, be an outfielder, make diving catches, style on a home run, because of Griffey. Guys like him don't come around every day. He's just as magical off the field as on it."
-----Milton Bradley






ケン・グリフィー・ジュニアが引退を表明した。


たまたまツイッターをいじっていたのだが、Griffey is retiring とあまりにも短いコメントを書いた人(シャノン・ドライアー)がいた。本当かな?と、ちょっとスルー気味に思いつつ、ツイッターの編集作業を続けていたら、グリフィー引退がメディアに流れはじめて、それが事実なのだとわかった。
既にシアトルのアクティブ・ロスターにはグリフィーの名前はない。25人いるべきアクティブ・ロスターのリストに、今は24人分の名前しかない。ちなみにこの「24」という数字はグリフィーの背番号と同じだ。
Active Roster | Mariners.com: Team
スタジアムではいま試合前のウオームアップ中だ。マイク・スウィニーが悲痛な表情でインタビューに応えている。ブラッドリーはスタジアムに流されているグリフィーのビデオを見ながらダグアウトでタオルで涙をぬぐっている。有名な「イチ・メーターの人」も今日はグリフィーに対するメッセージボードを持っている。セカンドベースの後ろ側には、「24」の文字が書かれている。
以下は球団を通じて発表されたグリフィーのステートメント。

"I've come to a decision today to retire from Major League Baseball as an active player.

This has been on my mind recently, but it's not an easy decision to come by. I am extremely thankful for the opportunity to have played Major League Baseball for so long and thankful for all of the friendships I have made, while also being proud of my accomplishments.

I'd like to thank my family for all of the sacrifices they have made all of these years for me. I'd like to thank the Seattle Mariners organization for allowing me to finish my playing career where it started. I look forward to a continued, meaningful relationship with them for many years to come.

While I feel I am still able to make a contribution on the field, and nobody in the Mariners front office has asked me to retire, I told the Mariners when I met with them prior to the 2009 season and was invited back, that I will never allow myself to become a distraction. I feel that without enough occasional starts to be sharper coming off the bench, my continued presence as a player would be an unfair distraction to my teammates, and their success as team is what the ultimate goal should be.

My hope is that my teammates can focus on baseball and win a championship for themselves and for the great fans of Seattle, who so very much deserve one. Thanks to all of you for welcoming me back, and thanks again to everyone over the years who has played a part in the success of my career."


MLB Trade Rumors
Ken Griffey Jr. Announces Retirement: MLB Rumors - MLBTradeRumors.com

ABC News
Ken Griffey Jr. Retiring at Age 40 - ABC News

USA Today
Ken Griffey Jr. announces retirement - Daily Pitch: MLB News, Standings, Schedules & More - USATODAY.com

ロイター通信
Mariners' Griffey retires after 22 seasons | Reuters

TSN
Ken Griffey Jr. announces his retirement

SI.com
Ken Griffey Jr. retiring at age 40 - MLB - SI.com

Seattle Times
Mariners Blog | Griffey announces retirement --- Read Griffey's statement | Seattle Times Newspaper

The News Tribune
Griffey retires: He's the best we've ever had | Seattle Mariners - The News Tribune

MLB公式
Griffey Jr. announces his retirement from game | Mariners.com: Official Info

グリフィー引退について語るズレンシック
Baseball Video Highlights & Clips | MIN@SEA: Kotchman plates Bradley with a sac fly - Video | MLB.com: Multimedia


ブログ主が最初にグリフィー引退のソースを見たのはシャノン・ドライアーのツイッター。それから10分ほどしてシアトルタイムズのベイカーのツイッターにも出た。

Shannon Drayer (shannondrayer) on Twitter
Griffey is retiring

Geoff Baker (gbakermariners) on Twitter
Ken Griffey Jr. has retired.


そして今日もゲームが始まった。

(6月3日追記)
Seattle Mariners Insider - The News Tribune






June 02, 2010

やればできる。
それがわかって嬉しい限り。

2009シーズンにあれほどキャッチャーとの相性に悩まされて結果を出せなかったジェイソン・バルガスが、新キャッチャーのアルフォンソをパートナーに、ランナーを出しながらも要所を締めるピッチングで、7回104球を投げた。バルガスは4勝目
また一方で、グリフィーをスタメンから完全にはずしたことでようやく活性化してきた打線が繋がって、ア・リーグ中地区首位の好調ミネソタ・ツインズに圧勝できた。
いま絶好調のジャスティン・モウノーにソロホーマーを浴びたが、今の彼は手がつけられないほど当たっている。こればかりはしかたがない。
Minnesota Twins at Seattle Mariners - June 1, 2010 | MLB.com Gameday

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:「城島コピー捕手」キロスと「キロス問題」



5月30日のサヨナラ負けの後の記事
でシアトルの25人枠、いわゆるアクティブ・ロスターの選手構成の酷さ、つまり「ブルペン投手が不足しているのに、使えない野手を無駄にベンチに入れすぎていること」を指摘したが、シアトルはようやくロスターの改善に乗り出した。
翌31日にコロメテシェイラ、2人のブルペン投手をDFAにしたのである。
Mariners Blog | M's DFA Texeira, Colome, recall Garrett Olson, Sean White | Seattle Times Newspaper

Designated For Assignment(DFA)とは、5月30日の記事で説明した40人ロスターの外に出されてしまうことを意味する。日本でいう戦力外通告だが、解雇という意味ではない。

いちど説明したことの繰り返しになってしまうが、開幕時にベンチに入れるのは25人限定のアクティブ・ロスターの選手であり、また9月のセプテンバー・コールアップでベンチに入るには、メジャー契約の40人枠に入っている必要がある。
だから、選手にとってDFAされて40人枠からはずされるということの意味は、ただマイナーに落とされたというだけではなく、「たとえ秋になって出場選手枠が40人に拡大されても、メジャーのゲームには出られない立場に落ちる」というたいへん厳しい意味になる。


ちなみに、このDFAになった2人の投手たちの行き先だが、どうもかなりややこしい手続きを経て決まるらしい。

まず、この2人、そもそも5月30日の記事で説明したマイナー・オプションが切れている。そのため、シアトルは彼ら2人をメジャーから下に落とすためには、ウェーバーを通さなくてはならない。
ちなみにこの2人の投手たちがいくら不調でも、彼らのオプション切れのため、うかつにはマイナーに落とせなかった。このことが、いままでずっとシアトルのベンチ入り投手たちの健全な入れ替えを阻害してきた主原因のひとつでもある。
さらにテシェイラはルール5ドラフトで獲得した選手であるため、マイナーに落とすといっても、さらに手続きがややこしい。

DFA後の手続き
(1)ウェーバーにかけられる
5月30日の記事でも説明したが、オプションの切れた選手を25人枠の外に移動する場合、ウェーバーにかける、つまり、他球団の獲得意思を確かめなければならない。(オプションがある選手ならば、25人枠と40人枠の間を自由に行き来できる)
ここで、もしクレーム(Claim)する(=獲得したいと意思表明する)球団があれば、その球団に行けることになるが、ただ、このケースの場合は、指名球団は25人枠、アクティブ・ロスターに入れる、というのが獲得の前提条件として付帯する。

(2)元の所属チームに返却
レンタル選手のテシェイラは、もしウェーバーでクレームする球団がなかった場合、レンタル元であるヤンキースが自軍に復帰させるどうか決める段階に移行することになる。もしヤンキースが「ウチで使うから、テシェイラを返してくれ」という選択をした場合、2万5000ドルの支払い義務が生じるらしい。

(3)シアトルのマイナーに所属する
ウェーバーでクレームしてくれる球団がなく、しかも、レンタル元も「もうウチでは必要ないよ」と言ってきた場合に、初めてシアトルとの間でマイナー契約を結ぶかどうか、という段階になる。通常DFAでは、メジャー在籍5年以上の選手は、このマイナー契約の申し出を拒否することもできる。拒否した場合は自由契約となる。



今日テシェイラ、コロメにかわってひさびさにメジャーに上がったオルソンのピッチングは、外の低めの球のコントロールがちょっとびっくりするほど良くなっていた。リック・アデア以外に、優秀な投手コーチでもいるのだろうか。


それにしても、今回のブルペン改造は、調子の悪すぎるブルペン投手2人を実質クビにして、マイナーにいる投手を上げてきて、急場をしのいでいるわけだが、これは本来とるべき手法ではない。
なぜなら本来やるべきなのは、25人枠の野手の無駄を無くし、ロスターの投手たちの人数自体を増やすことだ。それによってブルペン投手にかかる負担を軽くしてやることができる。

そうもしないと、メジャーに上げてきたオルソン、ホワイトの2投手も、今は調子がよくても、やがては人手の足りないブルペン投手陣において酷使され、疲労とストレスが重なるるうちに、コロメ、テシェイラのように何度もメッタ打ちにあってしまいかねない。


ちゃんとマトモな人数のブルペン投手が揃っている、という意味で、もっとマトモなブルペン投手管理のできるチームにコロメとテシェイラが行って、活躍する可能性はある。もしそうなったときは、シアトルファンは、自軍のチームマネジメントの失態を苦々しく思い出しながら、拍手するしかないだろう。

MLB.Liberties 出張所:ページ内で良く使う用語 - livedoor Blog(ブログ)
戦力外通告 - Wikipedia
Cot's Baseball Contracts: Transactions Glossary







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