July 2011

July 31, 2011

たとえばノートパソコン事業では黒字のコンピューターメーカーのCEOが、不動産投資で失敗し、巨額の赤字を出した、とする。
シアトル・マリナーズで「安売り王ズレンシック」が先発投手を次々に売り払おうとする行為は、無謀な不動産投資の失敗がまねいた大損を言い訳するために、本業である黒字のノートパソコン事業を外国に売却するのと、意味的にはかわりない。
他社や他国に対し、唯一優位に立っている事業を売り払ってしまった後で、その企業がどこをどうすると黒字転換できるというのか。



ここ数日、ベダードフィスターバルガスといったシアトルのローテーション・ピッチャーにトレードの噂が出ていたが、たぶんやらかすだろうと思っていた「安売り王ズレンシック」が、予想通り、やらかした。
ようやく今年モノになったダグ・フィスターと、ロングリリーフのできる唯一のブルペン投手デビッド・ポーリーの2人を、デトロイトにタダ同然でくれてやって、そのかわりに「バベシ時代の失敗で、セーフコにはまるで必要のないことがわかっている、右のフリースインガー」、それも「選手がダブついている外野手」を獲得してきたのである。
これはかつて2009年7月末にズレンシックがウオッシュバーンを安売りしたのと、まったく同じパターンだ。あのときも、投手陣は精神的支柱を失ってガタガタになり、シーズン100敗の主原因になった。


このGM、わざとシアトルの資産を他チームに流出させ続けて、他チームを潤す目的でシアトルにやってきた「スパイ」か?(笑)


事業経営になぞらえると、ズレンシックがやっているのは「失敗続きの野手買い」で、巨額の累積赤字を出し、なおかつ、その赤字事業を整理・清算もできないうちに、「自軍の黒字分野の売却、つまり、先発投手の放出によって、慌てて埋め合わせようとする背任行為」だ。

「守りをコンセプトにしたチーム」? 「育成」?
若い成長株の、それもギャラが安くてイニングを食ってくれる先発投手を安売りしといて、どこが「育成」だよ。馬鹿いうな。

人を育てている最中のチームだというなら、どうしてフィスターのような若くて安価な才能を売り払ったりするのか
投手有利なパークファクターをもつチームが持つべきチーム特性である「先発投手」を安売りするズレンシックは、ただの「経営能力の無い馬鹿」だ。

「安売り王ズレンシック」は、トレードにおける「買い」事業で、使い物にならないガラクタを高額で買い続けてきた。
そんなことをしていれば、そりゃ早晩チームは破産する。当然だ。

ブログ主は、「安売り王ズレンシック」のトレードは、企業活動で言えば、普通に「背任」にあたると思って見ている。(「背任」という言葉の意味がわからない人は、自分で調べてもらいたい)
「投手を含む、守りをコンセプトに選手を集め続けてきたはずのチーム」が、ガラクタ野手の能力不足という赤字事業の補填のために、自社のなけなしの資産である「先発投手」を安売りする、なんて行為が、組織マネジメントの上でどれほど背任行為か。


シアトルは今、芽が出た選手をバンバン売り飛ばし続けるトレードを繰り返してきたオークランドが、ファンから見放されて不人気球団になっていったプロセスとまったく「同じ轍(てつ)」を踏んでいる
だが、日米ともマスメディアはぬるくて馬鹿だから、きちんとそれを批判することすらしない。
シアトルの地元メディアごときは、もうどうでもいい。野球通のような顔をしたがる人間が多いが、結局のところ、物事を根底からきちんと理解して批判していく能力など、彼らには存在しない。まぁ、モノを見る目のない馬鹿は好きなだけ「チームの提灯持ち」をやっていればいい。


バベシ時代の負の遺産で、予算の硬直化をまねき、チーム再編成の足枷になっていた高額複数年契約のガラクタ、シルババティスタなどを何シーズンも我慢した末にようやく処分し終えたことで、チーム向上時代に向かうはずだったシアトルは、ズレンシックの政策的破綻を放置することで、ポジションのダブった大量の売れない不良在庫野手を抱え、結局また、高額複数年契約のガラクタがチームの予算とロスターを硬直化する「バベシ時代とまるで同じ、身動きのとれない時代」へと舞い戻ってしまった。
ガラクタをとっかえひっかえ使いながら、「守備専の野手」に気前よくくれてやった高額契約のツケを毎年負担し続けているのが、今の貧打のシアトルだ。

「ガラクタ野手買いでの失敗」「守備専用野手への無駄な高額投資」は、当然のことながら、「守備的なチームカラーのはずなのに、かえってガラクタ野手の守備のミスやポカが頻発する矛盾」と、「チームバッティングの数値の大幅な低下」をもたらした。特に後者は、チーム勝率の大幅な低下につながった。
その結果、チームの勝率は、投手の疲労がたまる時期に一気に低下し、毎年のようにペナントレースから脱落するハメになる。


「安売り王ズレンシック」の「悪いクセ」のひとつは、まるで100円ショップで買ってきた安物が所狭しと並んでいる家のように、自分の買ってきたガラクタをまったく手放すことができない、という点だ。
たとえばショートは、メジャー最低年俸のロニー・セデーニョをパイレーツに放出して得たジャック・ウィルソンを高額の複数年契約で抱え込んだまま、次のショート(ブレンダン・ライアン)を獲得してきた。
レフトにいたっては、バーンズブラッドリーと問題児ばかり買ってきたはいいが、続けて大失敗し、レフトにかけられる資金そのものが無くなってしまい、金がなくなったと言い訳するのがカッコ悪いので、こんどは「育成」と称して雑なプレーしかできあいペゲーロを執拗に起用し続けて、さらに大きく墓穴を掘った。
今は、これからどの程度やれるのかわからないカープに頼るありさまだったわけだが、カープがちょっと打ち出すと、こんどは実力がついてきた矢先の先発投手フィスターを放り出してまでして、ダブつきはじめている外野手をデトロイトくんだりから調達してくるのだから、始末に終えない。
無能にも程がある。問題児バーンズ、ブラッドリーを獲ってきて失敗した責任も、スカウティングされて打てなっているペゲーロをしつこく使い続けてチーム勝率を下げた責任も、カープを上げたり下げたりしている腰のすわらなさも、誰も、何も、責任をとっていない。

ヒゲの1本や2本剃ったくらいで、責任をとったつもりか。
愚かな。


予算に余裕がないために、「何かを買いたければ、何かを売るしかないハメに陥っている」のが、今のシアトル・マリナーズだ。メジャーで最も貧打のチームが「野手の穴」を埋めるべきなのは誰でもわかっているが、ズレンシックには金がない。
なぜなら、破綻したコンセプトであることがとっくに確定している「守備的チーム」とやらを作り上げるために、大金を払った守備専用野手フランクリン・グティエレスやジャック・ウィルソン、セーフコでは使いものにならないことが確定したショーン・フィギンズ、さらにはもはや大投手とはいえないフェリックス・ヘルナンデスに高額の長期契約を与えてしまって、とっくの昔に予算は硬直化してしまっているからだ。
彼らのような高額の守備系プレーヤーを処分するのが、予算の硬直化を解決する早道だが、ズレンシックには、自分の失敗を認めることになる彼らの処分に踏み切る考えがみられない。
だから、金のないズレンシックは、唯一の資産である先発投手を意味もなく売っぱらった後でさえ、予算に余裕を生み出せず、結局若手を使うしか他に手がない。
こんな堂々巡りは「再建」でも、「育成」でもない。


デトロイトから獲得したのは、主にライトを守っていた外野手のCasper Wellsという右打者をメインピースに、今年メジャーデビューしたばかりの左投手Charlie Furbush、メジャー経験の無い三塁手Francisco Martinez、だそうだ。
Casper Wells Statistics and History - Baseball-Reference.com

Charlie Furbush Statistics and History - Baseball-Reference.com

Francisco Martinez Minor League Statistics & History - Baseball-Reference.com

シアトルにはイチローグティエレスという複数年契約のある外野手が2人いるのだから、当然キャスパー・ウェルズはレフトを守るということになる。おまけに、キャスパー・ウェルズは、セーフコで不利なのがわかっている右のフリースインガーだ。
レフトは、ズレンシックがやってきてから、一度も安定したことがない。バーンズ、ブラッドリー、ペゲーロ、ホールマン、カープ、そして、キャスパー・ウェルズ。
レフトのポジションだけをみても、どれだけチームの勝率と資金を犠牲にして、くだらない模索ばかりきたことか。これが他にも、DH、セカンド、ショート、ファースト、センター、キャッチャーと、それぞれに問題点を抱えているのだから、笑っちまう。


これほど選手をいれかえても、まるでチーム力が向上しないのは、ひとえに「安売り王ズレンシック」が、チーム編成と、チームの連続的運営、チーム再建にまったく才の欠けた、無能なGMだからだ。






July 27, 2011

夕刊フジとかいうメディアが、こんなことを書いてくれたらしい。ありがたい。
「イチローを中心に進められてきた最近10年のマリナーズのチーム編成は、結果的に失敗といわざるをえない。」
イチロー怒られた!マ軍崩壊で強まる「放出論」 (夕刊フジ) - Yahoo!ニュース

「自分はマリナーズのことを何も知らないで書いています」という事実を、これだけハッキリとわからせてくれる記事というのも、そうはない(笑)

ありがたいねぇ(笑) こんなクチの悪いブログでも、今まで遠慮してあげてきたのに(笑)。まぁ、これをきっかけに、年がら年中よその国のドラマばかり垂れ流し続けている、他国の資本ばかり入ったおかしな某テレビ系列のメディアを、これからは心おきなく「名指し」で批判させてもらおう(笑)無能な記者さん、ありがとう。アンタはとても使える記者だ(笑)



あのチーム破壊王、ビル・バベシがシアトルのGMだった時代のチームコンセプトは、「右のフリースインガーを集める」というもので、日本から城島、キューバからベタンコート、そしてFA選手からセクソン、エイドリアン・ベルトレ、はえぬきからロペスを、スタメンに並べた。
守備マニア、ズレンシックがGMの現在のチームコンセプトは、「超守備重視と称して、守りに湯水のごとく金を注ぎ込む」というものだ。



右のフリースインガーを集める
守備に湯水のように金を注ぎ込む


バカかよ、2人とも(笑)


イチローは左バッターだ。バベシが来るよりずっと前、2001年からシアトルのスピードスターだったイチローには、2003年11月にシアトルGMになったバベシの敷いた「右のフリースインガー路線」は、まったく何の関係もない。

また、ズレンシックがシアトルに来たのは2009年だから、2008年から5年契約を結んでいるイチローは、ズレンシックの「投手を含め、守備にムダに金を注ぎ込こめるだけ注ぎ込む超守備的路線」とは、まったく何の関係もない。
もっと詳しくいえば、ズレンシックが、ジャック・ウィルソンやフランクリン・グティエレス、フェリックス・ヘルナンデス、ショーン・フィギンズに金を湯水のように注ぎこんだチーム編成戦略の破滅的崩壊は、2001年以来持続してきた高い実績により、たとえどこのチームと契約しようと長期高額契約が約束されていたイチローとは、まったくなんの関係もない。


今まで言わなかったが、
この際だから、ハッキリしておこう。


バベシとズレンシックの掲げた2つのチームコンセプトは、方向性が違うように見えるだけで、実は、まったく同じ性格のものだ
なぜなら、この2人が提案した2種類のチーム編成コンセプトはどちらも、「セーフコというホームスタジアムのパークファクター」はじめ、チーム編成の前提条件あるいは制約条件に、最初からまるでフィットしておらず、チームの問題点を、助長させるだけで何も解決しない「超ダメ・コンセプト」だからだ。

ビル・バベシは、「右打者に圧倒的不利で、ホームランの出にくい広いホームパークなのに、大金を大量の右打者を雇い入れることに投じる」という矛盾した投資戦略をとって大失敗し、クビになった。
ズレンシックは、フランクリン・グティエレスやジャック・ウェルソンに複数年契約をくれてやって、守備に大金を投資し、加えて「価格の安い投手でも、手の内がバレないうちなら、他のスタジアムよりもいいコストパフォーマンスが見込める投手に有利なスタジアム」なのに、フェリックス・ヘルナンデスに長期契約の大金をくれてやり、結果的に「守りに、金を湯水のように使った」ことで、貧打をより助長し、ペイロールの硬直化をまねいた。
それだけでなく、ズレンシックは、自分の発案したチームコンセプトの政策的破綻によって2年連続でチーム・バッティングの破滅的破綻を招いた責任があるにもかかわらず、破綻を糊塗する若手起用に走り、歴史的貧打と2年連続のチーム大破綻を引き起こした。


こうしてみると、誰でもわかるだろう。
フリースインガー右打者マニア、ビル・バベシ就任の2003年から、守りに金を湯水のように使う守備マニア、ズレンシックが2年連続で大崩壊した2011年まで、この「9年間」というもの、シアトル・マリナーズという、金はあるが肝心の球団経営は素人のチームがとってきたチーム編成戦略は「9年もの間、ずっと間違い続けている」


何度も言わないとわからない人もいるだろう。
もう一度言っておく。

この9年間というもの、シアトル・マリナーズというチームがとってきたチーム編成戦略は、イチローと無関係に、ずっと間違い続けてきている。


「コンセプトレベルから9年間ずっと間違え続けてきた」シアトル・マリナーズという野球チームは、「イチローと無縁のチーム編成ばかりしてきた球団」であると、何の迷いも無く断言できる。
イチローはシアトル・マリナーズにおいて、ともすると周囲の「パークファクターにあわない、間違った編成コンセプトで集められた 大勢の『本来、彼らのほうが場違いな選手たち』」から孤立し、その選手たちがやがて例外なく全滅していく中で、プライドと個人記録達成を心の支えにしながら、ひとりだけ違うレベルでプレーし続けてきて、その結果、毎年のようにゴールドグラブを受賞し、毎年200本のヒットを打ち、毎年オールスターに出場してきた。
こんな基本的なことすら、某フジ系列の、知識の欠けたマスメディアの記者は理解していない。


きちんとしておかないと、今後も間違える人が出てくるだろう。もう一度ハッキリ言っておく。

イチローはシアトル・マリナーズにおいて、多くのシーズンを「パークファクターや貧打など球団の課題を解決するどころか、まったく間違った編成コンセプトで集められた 大勢の『場違いな選手たち』」に囲まれたまま、野球してきた。「城島問題」は、その一角に過ぎない。


この際、断言させてもらっておく。

9年もの長きにわたって、チームづくりをコンセプト段階からして間違え続けながら、ミスばかりしてきたこの素人経営球団が、メジャー球団としての「メンツ」をどうにかかろうじて保ってこれたのは、イチローの存在があったおかげだ。

イチローという存在は、もともとこのチームの9年間のチームづくりの失敗とは何の関係もなく、高い実績を残してきたレジェンドであり、どこの国の、誰であろうと、そしりを受けるいわれなど、どこにもない。


イチローの2008年の契約更新にあたっての条件は、金額ではなく、むしろ「勝てるチームづくり」だったはずだ。
本来、メジャーのさまざまな記録更新がかかった記念すべきシーズンになるはずの2011年のシーズンを、チームにあわない編成コンセプトで2年も続けて破綻させ、果ては連敗記録まで作って意気消沈させるチームにして、レジェンドの記録達成の邪魔ばかりしている球団サイドのほうこそ、イチローと日本のファンに謝罪すべきだ。






雨の中断を挟んで、再開後、14三振を奪っていたCCサバシアから8回表に3人の打者が連続フォアボールを選んでつくった無死満塁のチャンスで、ヤンキースはサバシアをあきらめて右のリリーフ、デービッド・ロバートソンを出してきたために、「ミスター左右病」エリック・ウェッジは8番の右打者ホールマンにかえ、左打者アダム・ケネディを代打に出したのだが、カウント3-1から「押し出しのかかったアウトコースのボール球のストライク判定」で明暗が分かれた。

Seattle Mariners at New York Yankees - July 26, 2011 | MLB.com Classic

2011年7月26日8回表満塁カウント3-1でのボブ・デービッドソンの判定

2011年7月26日球審ボブ・デービッドソンの左打者アウトコース判定
Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool

今日の球審は、「あの」ボブ・デービッドソン
言わずと知れた、WBCで日本チームのホームランを二塁打と判定した、あのアンパイアである。

無死満塁でマウンドに上がったデービッド・ロバートソンは、アウトコース一辺倒のピッチングで、カウント3-1から、またもアウトコースにカットボールを投げたのだが、これは明らかにはずれていた。
だが、ボブ・デービッドソンは、このボール球をストライクと判定し、一気にゲームの流れを変えてしまった。ケネディは、フルカウントから、アウトコース低めにはずれるカットボールを空振り三振。
この場面を見ていた地元記者のツイッターが一斉にボブ・デービットソンの判定をなじるくらい、酷い判定だった。


この三振は、二重の意味で、ボブ・デービッドソンが「作為的につくりだした三振」だ
上の2つ目のBrooks Baseball Netから拝借した図でわかるように、そもそも、今日のボブ・デービッドソンの左打者のアウトコースの判定は異常に広すぎた

ただ、いちおうことわっておくと、この「広すぎる左バッターのアウトコース」の異常なゾーンの恩恵を受けたのは、主にシアトル先発ダグ・フィスターのほうだ。今日のサバシアのピッチングは、球審のゾーンの狭い広いにまったく関係なく、びっくりするほどコントロールがよく、ルールブック上のゾーンのコーナーいっぱい、コースいっぱいにビシビシと決めていく素晴らしい投球ぶりだった。貧打のシアトル打線では、とてもとても打ち崩すことはできない内容だった。そこは認めざるをえない。

しかし、8回表の満塁の場面で押し出しのかかった緊迫した場面での判定は、納得しない。サバシアのピッチングが、ゾーンに無関係に冴えていたことと、シアトルの唯一のチャンスの場面が、おかしな判定でゲームの流れが変えられてしまうことは、まったく別の問題だからだ。
もしここでケネディが押し出し四球を選んでいれば、さらに無死満塁から、ゲームの流れはまったく別のものになった。


アダム・ケネディは、彼がシアトルに来る以前から知っている。場面やカウントに応じたプレーのできる、頭のいい男だ。
普通なら、無死満塁で三振なんかしたプレーヤーには、「どうして球審がアウトコースを広くとっていることを頭にいれて、打席に立たないんだ!」と厳しく批判するところだが、ケネディに限っては、あの場面で「今日の球審のむちゃくちゃな判定傾向」を、まったく頭に入れないで打席に立った、とも思えない。
アダム・ケネディは、同じパターンで凡退し続けているオリーボカープペゲーログティエレスとは違う。
そもそも、ウェッジはこれだけ連敗したのだから、いい加減に「左右病のスタメン起用」をやめて、たとえ先発が左投手であっても、アダム・ケネディをスタメンで起用すべきだ。


ヤンキースのキャッチャー、フランシスコ・セルベリは、なんというか、相手の心理の動揺を見透かすような、非常にメンタルな、いやらしいリードをする。
まぁ、悔しいけれども、ボブ・デービッドソンの「疑惑の判定」で「押し出し」と思った球をストライクと言われ、心理的ダメージを受けているケネディに、フルカウントという切羽詰ったカウントで「直前の疑惑の判定と、まるで同じコース、同じ球種」を投げてくるのだから、「弱った動物相手にワナをしかけるような配球」としかいいようがない。やはり、ついバットが出て三振してしまうのも、しかたないといえば、しかたない。

今日はサバシアとセルベリのバッテリーに素直に脱帽しておくしかない。だが、絶好調のサバシアとアンパイアを相手に投げ合ったのだから、7回3失点でQSしたダグ・フィスターは、褒められてしかるべきだろう。


ブログ主は、ボブ・デービッドソンのああいう判定に、なぜエリック・ウェッジが抗議しないのか? と思う。カッコなんか気にせず抗議して退場したほうが、どれほどいいか。
LAA戦での「2度目の3ボール四球」ではないが、ああいう問題のある判定に毅然とした態度をとり続けないから、相手に舐められるのだ。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年7月24日、みずから牙を抜いて相手にさしだしてチームに「負け犬メンタリティ」をたっぷり塗りこめた「負け犬指導者」エリック・ウェッジの「3ボール四球黙認事件」を批判する。






July 25, 2011

育成中のチームなんだから、15連敗してもしかたがない。

くだらねぇ。何もわかっちゃいない。
それが「負け犬メンタリティ」であって、そういう負け犬メンタリティを植えつけることが、どれだけ人間の成長の妨げになるかってことにすら、まだ気づかないのかね?
負け犬が泣きながら満塁ホームラン打ったって、全然怖くない。そんなだから問題が何も解決しない。たとえ四球の押し出しの1点を守り抜いた勝ちでもいい。それが「勝つ」ということだし、「勝つ」ということを学ぶことは非常に大事だし、もっと大事なのは、同じ失敗を繰り返すプレーヤーを同じ失敗を繰りかえさないプレーヤーに変えていくことで、これこそが本当の育成で、同じ失敗を繰り返して負け続けるプロセスには何も学ぶものはない

この「負け犬メンタリティ」が元々どこからやってきたのか?
ハッキリ、誰でもわかるように書いておくから、耳の穴かっぽじって聞くといい。


あの「事件」が起きた日は、このところ続いている所用がやはりあって、ゲームを見ることができなかったのがとても残念だった。それは、オールスター直前のビジターLAA第4戦で起きた、今シーズン2度目の「3ボール四球事件」だ。
ブログ主は、この2度目の「3ボール四球事件」が、「負け犬メンタリティ」のルーツだと確信している。


最初に言っておくと、ブログ主は戦闘の場である球技スポーツのグラウンドにおいて、ああした「みずから牙を抜いて相手に差し出すような、負け犬行為」を、単なるミスどころのレベルではなく、もしそれが社会や、災害や戦場といった限界状況でで起きた出来事なら、「背任行為や、犯罪にあたる」とまで思っている。
もし、自分の会社の社長が、他国のライバル企業に自社の特許技術を勝手使われ、さらにその他国で特許申請までされたにもかかわらず、社長がそれを「知ってたよ」なんて言って黙認したら、信頼なんか絶対に生まれない。

戦う人間には、ああいう行為は許されないと思う。



今シーズン2度あったこの「3ボール四球」という事件がエリック・ウェッジの負け犬メンタリティを生んだあらましをメモしておこう。

1度目の3ボール四球事件
ウェッジが「謝罪」した7月2日パドレス戦


2011年7月2日 パドレス戦における1度目の3ボール四球事件
San Diego Padres at Seattle Mariners - July 2, 2011 | MLB.com Classic
最初は、7月2日のパドレス戦5回裏、1アウト。外野手キャメロン・メイビンが、まだフルカウントなのに四球としてランナーに出た。だが、このことにシアトル側の誰も気がつかず、このランナーがタイムリーで生還し、このゲーム唯一の得点かつ決勝点になってしまい、シアトルは0-1の僅差で負けた。
この試合、投手はダグ・フィスター。この試合、ただの負けゲームではない。ダグ・フィスターは9イニングをひとりで投げ抜いたからだ。フィスターの貴重な力投を、チームは単なるベンチの注意不足で無駄にしたのだ。
フィスター自身は、試合後に「投げることに集中していたので分からなかった」とコメントしたが、監督エリック・ウェッジは「数えていなかった自分のミスだ」として、試合後クラブハウスで選手たちに「謝罪」して自分のメンツをとりつくろった。



ハンク・コンガー ハーフスイング誤判定事件
ウェッジが「退場」した7月9日のエンゼルス第3戦

Seattle Mariners at Los Angeles Angels - July 9, 2011 | MLB.com Classic
パドレス戦での「1度目の3ボール四球事件」から1週間たったアナハイムでの第3戦、3回裏無死1塁。
シアトルの先発マイケル・ピネダは8番ハンク・コンガーにストレートを投げ続けて、フルカウントの8球目、真ん中低めにスライダーを投げた。コンガーはハーフ・スイングして三振。ランナーのトランボはスタートを切っており、ミゲル・オリーボがセカンド送球して楽々アウト。
いわゆる三振ゲッツーのはずだったが、球審Todd Tichenorがスイングの判断を仰いだ三塁塁審Sam Holbrookが「スイングしてない」と誤判定を下して、無死1、2塁。その後、タイムリーとホームランで4点を失って、このゲームに3-9で敗れた。

このときの対応について、このブログでは「ここが負け犬になるかどうかの分かれ目になる」と判断して、こんなタイトルの記事を掲載した。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年7月9日、Sam Holbrookのミスジャッジで試合は台無しになったと、語ったエリック・ウェッジは、「気づいた」のか。それとも、「気づかない」のか。
「こんな「事件」、ほんの一部にすぎない。
このブログでは、シアトルの地元メディアが書きたがらないようなこと、エリック・ウェッジがコメントしそうもないことも書いてきた。もちろん、球審Sam Holbrookについては、ずっと前からその「おかしな挙動」をずっと追跡して記録してきている。

ウェッジはこの事件、どう思ったのだろう。
よくある単なるアンパイアの誤判定だと思うのか。よくある単なるアンパイアの誤判定だと思って、風呂にでも入ってビールでも飲んで忘れてしまうのか。
それとも、一時期多発していたイチローのアウトコースへのストライク判定、オールスター、バルガスを中心にしたさまざまな先発投手における判定の歪み。エリック・ウェッジは、さまざまな「設けられたハードル」の存在に気づいただろうか。
ハッキリ言って、監督エリック・ウェッジが抗議すべき判定、抗議して退場になるべき判定は、いままで、もっと数え切れないほどあった。選手は、そういうおかしな判定の中でずっとゲームをやらされている」

だが、結論からいうと、
エリック・ウェッジは「すべてのことに泣き寝入りする、負け犬の道を選んだ」



2度目の3ボール四球事件
ウェッジが「黙認」した7月10日の第4戦エンゼルス戦


2011年7月10日 エンゼルス戦における2度目の3ボール四球事件
Seattle Mariners at Los Angeles Angels - July 10, 2011 | MLB.com Classic
エリック・ウェッジが決定的に「負け犬メンタリティ」をシアトルに塗りこめたのは、2度目の「3ボール四球」が起こった7月10日のエンゼルス戦での「エリック・ウェッジの負け犬の対応ぶり」だ。
3回裏、1死1塁。ボビー・アブレイユが「カウント3-1」なのに、ファーストに歩いた。またしても「3ボール四球」である。

この試合後、監督ウェッジは、1週間前のパドレス戦とはまったく違う態度に出た。なんと「3ボールなのは、わかっていたが、黙認した」と言い出したのだ。

This time, the Mariners were aware of the count.
こんどは(パドレス戦のときとは違って)マリナーズはカウントのミスに気づいていた。

I knew it was only 3-1 to Abreu,” Wedge said, “but I told our coaches, I don’t want to pitch to him with a 3-1 count, anyway ? I think Abreu is their best hitter. I thought since it worked against us last time, maybe we can make it work for us this time.”
アブレイユのカウントが、まだ3-1なのは知ってたよ。でもコーチにはこう言ったんだ。『カウント3-1で(選球眼が良くリーグ屈指の数の四球を選ぶ)アブレイユに(彼に有利なのが見え見えのカウントで)投げたくなんかないよな?』って。アブレイユはエンゼルスのベストバッターのひとりだからな。前回パドレス戦での「3ボール四球」はウチのチームに不利な結果になったわけだから、こんどはウチに有利に働くんじゃないかな、と思ったんだ。」
Angels' Abreu walks on another 3-ball count - seattlepi.com


典型的「負け犬メンタリティ」だ。
このエリック・ウェッジの「負け犬メンタリティ」は、もちろんすぐに選手に伝染した
このゲームで、「3ボール四球」が起きたときにマウンドで投げていたのはフェリックス・ヘルナンデスだが、彼はもう「負け犬メンタリティ」丸出しにして、こんなコメントを言ってのけたのだ。
もし、自分の登板ゲームにプライドがあれば、こんなくだらないコメントはしないものだ。

On the mound, Hernandez knew, too.
マウンド上のヘルナンデスも(アブレイユがまだ3ボールで、四球ではないことを)知っていた。

“I thought, ‘That’s ball three,’ on the pitch when he walked, but I got the next two guys and it didn’t hurt us,
「彼が四球で歩いたとき、『まだ3ボールだ』と、わかってたよ。でも次の2人をうちとったんだし、俺たちには実害は無しさ」
Angels' Abreu walks on another 3-ball count - seattlepi.com



スポーツ選手でも、ビジネスマンでもいいが、これらのエピソードの流れを読んで、ウェッジのやった「3ボール四球の黙認」を「負け犬メンタリティ」と思わない人がいたら、ぜひ、お目にかかりたい。

たまに、ベースボールは、イニング交代のときにのんびりできるスポーツだと思っている人がいる。認識を今すぐ改めるべきだ。
野球は、相手が油断して均衡が破れたなら、相手のプライドを死滅させるまで得点しぬいて、容赦なく相手を潰しぬき、白旗を上げさせる「格闘技」そのものの厳しいスポーツだ。


将棋や囲碁、チェスのようなボードゲームをやったことのある人はわかると思うが、たとえプロもどきでも、本当に強い相手がなりふりかまわず本気で襲いかかってくるときの「相手に潰される感覚」というものは、「相手のプライドとやる気を死滅させるまで、とことん潰しにかかってくる、恐怖の戦闘感覚」であって、本気のボードゲームは格闘技そのものであり、ボクシングの殴り合いとどこも変わりない。
序盤は、相手にわずかなピンホールも見せないようにディフェンスを固めるか、相手のピンホールをこじ開けるために攻撃にパワーを傾注するか、天秤にかけながら戦闘は進むために、「均衡」と呼ばれる時間帯があるわけだが、ちょっとでも「明白な穴」が開けば、必ずそこは突かれ、傷は広げられ、均衡は破れ、勝敗は一気に決するのが普通だ。最後の寄せは上手い人間なら誰でもそれなりにできる。むしろ問題は、均衡を破られないで維持することだ。

エリック・ウェッジがやったことの意味は、シアトル・マリナーズという野球チームに、最初から穴の開いた、均衡の崩れた状態でゲームが始まるのを黙認することだ。

それを負け犬メンタリティといわずして、
何が負け犬メンタリティかっ。






なぜ、勝率5割から雪崩のような15連敗で最下位に転げ落ちた、貧打意で有名なチームなのに、満塁ホームランが毎日のように出るのか?、考えたことがあるだろうか?

わかりにくいなら、別の言い方をしてみよう。

なぜ、メジャーで最もチーム打率の低いチームで、満塁ホームランを毎日生産する必要があるのか?

まだわかりにくい?
それなら、もっと別の言い方をしてみよう。

満塁のシチュエーションで、シアトルの打率の低い打者たちは、「何を狙っている」のか?


さすがにもう答えはわかっただろう。
彼らは満塁や、1・2塁、2・3塁といった、ランナーが貯まった場面で、フルスイングすることを「許されている」のだ。(たぶん、許されているどころか、そうするよう指導すらされていると思う)
だから、彼らのバッティングの結果は、いつも「三振」「出合い頭の事故みたいなホームラン」「ポップフライ」になる。

相手チームのバッテリーにしてみれば、グティエレスペゲーロオリーボスモークのような、ミート技術が無く、ついていけない球種やコースがハッキリわかっている打者がフルスイングしてくるがわかったなら、アウトコース低目にスライダーでも連投しておけば済んでしまうのは、わかりきっている。追い込んだ後にストレートなど投げてこない。ホームラン事故を体験するのは、相手バッテリーが大量リードで気が緩んでいるときだけだ。

わかりやすい話だ。

では、「ランナーが貯まった場面では、必ずフルスイングする野球」を指導しているのは誰なのか。そりゃ、もちろん監督エリック・ウェッジである。これも誰でもわかる。
ブログ主は、ウェッジがどんなチャンスの場面でも、ほとんど細かい戦術をとらないのは、むしろ「ウェッジが打者にフルスイングするよう、強く命じている」のだろうと想像している。
(いま「想像する」と書いたのはソースがないから礼儀としていちおう遠慮して書いておいただけの話で、自分の中では、「想像」などという甘いしろものではなく、岩よりも硬く「確信」している。まちがいなく「フルスイングしろ」と「命じて」いるはず)
ソースがないのが残念だが、無能なウェッジは間違いなく、クラブハウスに鍵をかけた密室ミーティングで野手を集めて、「おまえら、何してんだ。ランナーを貯めたら、フルスイングしろと、あれほど言っただろ!」と大声で怒鳴りつけていると、ブログ主は確信しているのである。


だが、だ。
ちょっと待て。


このチームのベースは、GMズレンシックが昨シーズンに超守備的チーム編成をもくろんで集めた選手を並べた「守備的チーム」である。そして、監督エリック・ウェッジの指示は、守備はまぁまぁだが打撃はイマイチな「ズレンシック的プレーヤー」たちに、「フルスイングさせる野球」。

「超守備的貧打チーム」で、
「フルスイング野球」
だと?(笑)

こんな「矛盾したチームづくり」が、グラウンドで「噛み合って」機能するとでも思っているのか?(笑)

なぁ、おまえら。たいがいにしとよ(笑)


日本人を舐めるなよっての(笑)
あたかも野球を知ってるかのようなフリして、おまえらのやってる野球はトンチンカンな、何のまとまりもないことばかり。GM、監督、地元メディア、そして球団も。おまえらのやっていることは、まるで、どこも噛み合ってないぞ。わかってるのか?(笑)


かつて無能なエリック・ウェッジは、これまでチームを支え続けてきた投手陣の頑張りを「マグレ」呼ばわりした。
だが、「超貧打チームに、ランナーが貯まったらホームランをかっとばせ」なんてチーム運営こそ、草野球以下の「意味不明のマグレ野球」だ。

「マグレの満塁ホームラン」が続いたら、「打線は上向いてきた」とか言い出す、エリック・ウェッジよ。

おまえさ、ほんとは素人だろ?(笑)






July 23, 2011

どうも、黙っていられない性分なので困る(笑)
もう視聴率なんてくだらないものに触れるのはやめておこうと思っているのだが、勘違いして騒いで、イチイチ野球にからんでくるアホウを見かけると、どうも黙って見過ごせない性格なのである。

これは、例のサッカー女子ワールドカップの視聴率データで、元ソースはニールセンだ。決勝の視聴率の高さばかりもてはやされまくったわけだが、実は、決勝を除くセミ・ファイナルまでの全ゲームで、視聴率が1%(およそ150万世帯くらい)に達したのは、わずか5試合しかないことは、ほとんど誰も知らない。
アメリカのゲームが3試合(予選コロンビア戦、クオーターファイナル・ブラジル戦、準決勝・フランス戦)で2%ちょっと、そして、クオーターファイナル・日本対ドイツ、準決勝・日本対スウェーデンで、1%ちょっと。
それ以外のゲームの視聴率はすべて1%に満たない
2011 FIFA Women’s World Cup on ESPN & ESPN2 (June 26-July 13, 2011) « Son of the Bronx

2011女子ワールドカップ全視聴率(決勝のぞく)


勘違いしてもらっても困るが、別に日本の女子サッカーの快挙をこきおろす意図などない。ただ、ああいうニュースをネタにイチイチ野球にナンクセをつけようとする馬鹿や、きちんと現実を伝えようともせず、むしろ、ねじ曲げて意識操作するような記事や番組を作ってアブク銭を儲けようとするメディアのあさましさが気持ち悪いから書くだけのことだ。


話は簡単。
あのサッカー大会、アメリカで視聴率が高かったのは、優勝候補の自国アメリカの出場ゲームなのだ。
そりゃそうだ。自国のスポーツが出て勝ち進めば、どこの国の住民だって、たとえ普段はそのスポーツのファンでなかろうと、ルールさえわからくても、関心が集まるのは当たり前。
日本でもこれまで、カーリング、ソフトボール、同じような現象はいくらでもあった。ルールさえ知らない人でも、自国のスポーツの快進撃を見ればやはり胸が熱くなる。それはそれでかまわない。

また自国アメリカ以外で、最も高い視聴率を叩きだしている国(といっても、1%だが)が、「日本」であることは、アメリカのメディアでも決勝の前から十分に認識されていた。(記事例:Ratings: Sounders/Timbers, World Cup, San Francisco Giants | Sports Media Watch
だから、アメリカの視聴者にテレビの電源を入れさせたモチベーションは「今回の大会でそこそこ強敵といえる日本がいいゲームをするチームであることは既にわかっている。だが自国アメリカは、その日本に一度も負けたことがない。だから、世界大会の決勝という絶好の舞台で、強敵を軽く一蹴し、自国アメリカが優勝するドラマチックな展開をテレビで見たい」とかいうシンプルな話だったのは明らか。

だが、日本のマスメディアの書きっぷりは、例によって、まったく違う(笑)「なでしこジャパン、ESPNのサッカー中継の歴代史上最高視聴率!」(笑)
ESPNとESPN2の違いもわからないクセに、あたかも日本の出場試合が予選段階からずっと高視聴率が続いていたみたいに書くのが、こういう記事タイトルのミソ(笑)だが、上に挙げておいた全試合の全米視聴率資料を見てもらえばわかる。
決勝を除けば、予選の視聴率が1%を超えたことはほとんどない。自国アメリカのゲームですら3%を超えない。


そもそも全米視聴率1%レベルのスポーツというのは
どのくらいの規模のスポーツに相当するのか?

ちょうど近いのが、何度か記事を書いたカレッジ・ワールドシリーズ(CWS)だ。
2000年代後半以降、ESPNは、カレッジの野球をメジャースポーツイベントのひとつに育成していこうとしているらしく、プライムタイムでの放映に踏み切ったりなどして力をいれてきている。
資料によれば、今年のCWSの平均視聴率は「1.6%、およそ223万人」。これは一昨年から視聴率が下がってしまった昨年2010年の「1.2%、155万人」という数字から、43%急上昇したことになる。

ESPN and ESPN’2s coverage of the College World Series finals averaged a 1.6 rating with 2,233,000 total viewers in 1,618,000 households.
The network saw increases across the board in all three categories (1.2 rating, + 33 percent/1,558,000 viewers, +43 percent/1,220,000 households, +33 percent) over last year.
ESPN Posts Audience Growth During 2011 College World Series Coverage - SportsNewser


ちなみに、あえてソースは書かないが、2011年カレッジ・ワールドシリーズの視聴率について、以下のようなコメントをしているサイトを見たのだが、今のカレッジ・ベースボールのトレンドの変化を把握せずに書いていると思われるので、ちょっと欠陥を指摘しておきたい。
ちょっと的はずれな記述が生まれる原因はたぶん、「カレッジ・ベースボールの重心が、かつてのように、西の太平洋岸のカリフォルニア、アリゾナ、あるいはルイジアナ、テキサスといった大学から、サウス・アトランティック(アメリカ南部のうち大西洋岸の州)のノースカロライナ、サウスカロライナなどに移りつつある」という点を、きちんと意識して書いていないことだろう。

どのスポーツでもそうですが、出場チームの地元の人口規模が決勝シリーズには直接的に影響します。今回は両校ともSEC校ということで地域的に偏っている分不利だったかもしれませんが、その割には健闘という感じでしょう。(中略)GatorsはともかくGamecocks の方はカレッジスポーツでブランドアピールが強い学校とは言えません。それでも二年前の好カードのシリーズに近い数字を出したので健闘と評価したいところです。


この文中で「2年前の好カード」というのは、近年最も視聴率のよかった2009年決勝のLSU対Texasをさしている。Gatorsはフロリダ大学、Gamecocksはサウスカロライナ大学の愛称。
前にも一度書いたが、近年のルイジアナは、CWSを4回制覇した90年代の黄金時代ほど強くはない。日本語で「古豪」という言葉があるが、「かつての強豪」っぽくなったルイジアナ大学が9年ぶりに優勝したのが、2009年のCWSだ。
College World Series - Wikipedia, the free encyclopedia

また決勝での対戦カードについて「両校ともSEC校ということで地域的に偏っている分不利だったかもしれませんが、その割には健闘という感じでしょう」「Gamecocks の方はカレッジスポーツでブランドアピールが強い学校とは言えません。」という部分も、どうも寝ぼけた書き方だ。
この記事、まさかとは思うが、そもそも去年2010年の優勝校がサウスカロライナだということをわかってなくて書いているのではないかとさえ思える。
今年のセミファイナルに駒を進めたのが、ダニー・ハルツェンを擁して快進撃を続けるヴァージニア大学、近年の全米ドラフト2位ダスティン・アックリーの出身校で、今年もセミファイナルに上ってきたノースカロライナ大学と、ベスト4がサウス・アトランティックの大学ばかりで占められていることの意味も、あまりわかってなさそうな気がする。
資料記事:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年6月21日、今月末に決まる2011カレッジ・ワールドシリーズの行方と、近年のカレッジ・ベースボールの勢力地図の「大西洋岸シフト」。


今年のオールスターでサウス・アトランティックの州の視聴率が急激に跳ね上がったわけだが、こうしてカレッジ・ワールドシリーズの視聴率アップに貢献しているのも、当然のことながら、サウス・アトランティックの熱心な野球ファン、ということになるのだろう。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年7月18日、去年より低かった2011MLBオールスターの視聴率 (2)700万票以上集めた選手すら出現したオールスターの「視聴率が下がる」現象は、どう考えても納得などできない。






July 21, 2011

最近こんな記事を書いた。
某巨大掲示板にしても、スポーツ新聞の記者にしてもそうだが、MLBのオールスターの視聴率が「6.9%」とかいうだけで、野球に対するわけのわからないバッシングをやり続けている多くの馬鹿がいることを笑った記事だ
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年7月18日、去年より低かった2011MLBオールスターの視聴率 (1)6.9%だからMLBは衰退しているとかいう、くだらない議論。呆れた今の日本の「議論能力」の無さ。

彼らは、テレビ全盛時代が終わりを告げ、音楽がミリオンセラーにならなくなった今の時代に、全米視聴率「6.9%」がどういう重さをもつのか、まるでわかっていない。
彼らは、日本で人気ドラマの視聴率が20%を越えるのが当たり前だったバブル時代や、紅白歌合戦を日本の60%以上の人がテレビの前に座って、みかんの皮をむきながらコタツで見るのが当たり前だった昭和の時代の、「視聴率20%を越えて、はじめて人気番組」とかいう、古臭くて、カビの生えた「テレビ全盛時代」の感覚をもとに、「6.9%」という数字をわけもわからずに「MLBの衰退」とか野球バッシングをやり続けて、失笑を買い続けている。


そんな彼らの想定する「野球イメージ」は、「お年寄りだけが好むスポーツ」というものらしいが、この「年寄りの好む野球」という決めつけは、他のどんな決め付けや、どんな思い込みより、笑わせてくれる(笑)もう、たまらなくおかしい(笑)
なぜああいう「野球叩きのための古臭いロジック」が無意味なのか? について、以下に、少し説明しておく。これからはそういう人を見かけたら、腹を抱えて笑ってもらっていい(笑)
(なお、以下に書くことが、日本だけでなくアメリカでもまったく同じことが言える、というわけではないことは、ことわっておく)


結論をあらかじめまとめて書いておく。

1)スポーツが商売として成り立つのは、政治経済がともに安定している先進国だが、そういう社会が安定している先進国では高齢化が進むのが常識。

2)だから、もしナショナル・スポーツ、国民的スポーツと呼ばれたいのなら、そのスポーツはむしろ「年齢層の高い人たちをも、ファン層としてコア層に抱え込めるスポーツ」でなければならない。
いやおうなく高齢化の進む先進国で、一定以上の資産や財産を常時キープしつつ、スポーツのシーズンシートを買う、というような消費行動で、そのスポーツの主要収入源になってくれるような世代は、明らかに「収入が乏しく、不安定な若年層」ではなく、一定以上の所得を既に得た層だ。
バブル崩壊後、若い人間に仕事もチャンスもほとんど与えてこなかった日本では特に、一定以上の所得を持つ層とは、一定以上の年齢層をほぼ意味する。

3)ゆえに「野球はオヤジ臭いスポーツ」という言い方は、実は、ほとんど何のマーケティング的な中身も意義も持たない。むしろ、あらゆるスポーツは「オヤジ臭くならなければならない」 というのが正しい。

4)広く安定した人気を確保し、財政的にも安定したスポーツになるために求められる条件は、正しくは、「オヤジ臭いスポーツになること」、つまり、「オヤジ世代、オバサン世代に愛好される文化」になることで、それが達成できなければ、そのスポーツは安定したマーケットには絶対にならない。日本の音楽でミリオンセラーが出なくなったのも、意味はまったく同じ。

5)たとえばサッカーだが、よく言われるように「サッカーは、野球とは対称的に、若い人の好むスポーツになった」のでは、まったくない。
サッカーという「商品」は、90年代に日本のサッカーがプロ化された当初から、マーケティング的な意味で、「団塊世代において野球が市場を形成した。であるなら、団塊の次の大きな人口ボリュームである団塊ジュニア世代に対して、新たに何を売れば、新たな市場として開拓できるのか?」というシーズ発想から考案された「団塊ジュニア世代向け商品」なのである。
短く言うと、「サッカーは最初から、特定世代をターゲットに考案された商品」なのである。

6)サッカーという商品は、「団塊ジュニア世代」という「団塊世代の次に大きな人口ボリューム」をターゲットに考案されたために、最初に売り込まれた「団塊ジュニアとともに、年老いていく」。スタジアムに足を運んでくれるコアなサッカーサポーターが「年々高齢化していく」というデータ的現実が、それを如実に示している。



上に書いたことを実感してもらうために、以下に2つの時代の人口ピラミッドを用意した。緑色が「団塊世代」赤色が「団塊ジュニア世代」
人口ピラミッドというものは、ある年のものだけを見ていては何の意味もない。時間とともに、これまでどう推移してきたか、これからどう推移するかが、最も重要だ。
たった2つの図を見るだけで、上に書いた「ナショナルスポーツは、オヤジ臭いスポーツでなければならない」「90年代に始まった日本のプロサッカーは、団塊ジュニア向け商品である」という文章の意味が、説明しなくても、実感できるはず。
団塊ジュニアは、1995年には20代前半だったが、2010年には30代後半になった。そしてこれから、ますます年齢を重ねていくわけだが、勘違いしてはいけないのは、「団塊ジュニア世代」に、「団塊世代とまったく同じ老後」が待っているわけではないということだ。
団塊世代は終身雇用の最後の輝きの中でキャリアを積み、資産を形成し、高い消費税もまぬがれ、やがて高額な年金をもらう世代だが、そのどれも期待できないのが、団塊ジュニア世代だからである。


よく、「団塊ジュニア世代は、『団塊世代の子供』を意味する」という前提で話す人がいるが、それは単なる勘違いであり、思い込みにすぎない。この2つの世代間に、必ずしも密接な親子関係が存在するとは限らない。
ただ、とはいうものの、「最初からサッカーを世代文化として売り込まれて20代、30代を通過した団塊ジュニア世代」が、「野球を文化的ベースとして戦後をのりきってきて、いまや年金をもらう時期にきた団塊世代」のことを、「オヤジ呼ばわり」することには、文化的にもマーケティング的にも、何の意味もないことは、この図から、明らかすぎるくらい、明らかだ。
なぜって、実際「団塊ジュニア」の親にあたる世代が「団塊」なのであって、金を握っている自分の親のことを、子供の側がいくら「オヤジ!」と罵倒してみせたところで、金が子供の財布に降ってくるわけでもなんでもないからだ。

1995年の人口ピラミッド

1995年の人口ピラミッド


2010年の人口ピラミッド

2010年の人口ピラミッド



不思議なもので、ある一定の年齢を過ぎると、人はたいてい新しい音楽を受け入れることができにくくなる。

まして「新しい音楽」を、「買う」「漁る」「踊る」「口コミする」というような、「音楽を全身全力で消費する行動」、もっと平たく言えば「音楽に命を賭けるような日々」は、普通はある一定の年齢でピタリと停止する。大人という生き物は、常に新しい音楽から距離を置いて生きるものだ。(もちろん世界的に、新しい音楽に良い音楽が少なくなってきていることも事実でもあるが)


世界のどこでもそうなのではないが、日本では一般的にいうなら、「音楽は、若い人間だけのための文化」と、思われていることが多い。
だからこそ、毎年のように同じような子供向けポップソングが、手を変え品を変え売り込まれ、だからこそ、その人の歌える歌、好きな歌で、その人の年齢をだいたい言い当てることができたりもするわけだが、そういう「若いうちだけしか聞かない音楽マーケット」は、放置しておけば、社会の高齢化とともにどんどん尻すぼみになっていくことは、誰にでもわかるはずだ。
日本で先進国特有の高齢化が進んだときに、日本の音楽からミリオンセラーがパタリと消え、ヒット曲は100万枚売れて当たり前という時代は、社会の高齢化とともに終わっていった。

テレビで人気番組というのは視聴率20%を越えるような番組だ、なんて常識が通用したのは、そういう古いメディア全盛期の昔話だが、MLBオールスターの視聴率6.9%という数字を「低い」と笑うようなタイプの人は、自分の基礎データのカビ臭さ、古さにまるで気づかないまま意見を言うクセがある。


「団塊ジュニア世代」だけが永遠に若者でいられるわけでもなんでもない。現に、日本にプロサッカーができた当初、「団塊ジュニア世代」は20代だったが、あれから15年ほどたったいま、彼らも「30代後半」の立派な「オヤジ」だ。
スタジアムにはいま、大人になりきれないまま、いまだに「自分の親世代のことをいまだに『オヤジ呼ばわり』して激しく嫌うくせに、自分自身も既にオッサンくささ満載の団塊ジュニア世代」が、わんさかいることだろう。スタジアムでの調査でも、実際そういう結果は出ている。



やれやれ。
たまにはスポーツを見るのを止めて、音楽でも聴いて一日を過ごすべきだ。

あなたが自分の好きなスポーツとともに年老いていくのは、あなたの勝手だ。だが、感覚はものすごく古くさいクセに、年齢、もしくは見た目だけは、どういうわけか、とても若い、そんな気味の悪い矛盾満載の人間たちの馬鹿げた主張に煩わされつつ、自分は年をとりたくなどない。






今のシアトルの勝ちパターンは、基本的に少ない得点を投手が必死に守りぬくというパターンしか無い。当然、勝てる見込みのあるゲームというのは、ほぼクロスゲームになると思わなければならない。
パークファクターから考えてみても、打力で相手チームを圧倒する野球を(スタジアムが現状のままなら)セーフコで実現するなど難しいわけだから、クロスゲームを確実にモノにしていくことが、セーフコでの不動の勝ちパターンだったはずだ。

こんなこと、子供でもわかる。
われわれ日本人が今まで何10年、野球に親しんできたと思ってるのか。
こんな単純なこと、わかるのが当たり前だ。わからないヤツは、どこの国の出身だろうと関係なく、馬鹿だ。


では、だ。

1点を争うようなクロスゲームの連続において必要な打撃面の工夫を
今の監督エリック・ウェッジはしているか? してきたか?
積極的にしているように見えるか?


してない。
勘違いしないでもらいたい。
選手が若いから工夫できないだけではない。
(要因として彼らの能力不足もあるにはある)
「監督が、方針として、あえて工夫せずに、バットを振り回すだけの雑な野球をやらせた」のだ。


10連敗しかねないというゲームの同点の終盤ですら、ノーアウトのランナーを進めようとするわけでもない。ただただヒッティング。それだけ。
バントするわけでもない。エンドランかけるわけでもない。進塁打を称揚するわけでもない。バントのできない打者に代打を出すわけでもない。といって、盗塁をからめて、相手を霍乱するわけでもない。
相手チームに3ボールなのに四球を選ばれても、文句すらつけない腰抜けぶり。

ただただヒッティング。それだけ。
不器用な打者たちはランナーが出ると、フライばかり。スモークグティエレスオリーボ。相手チームに弱点をスカウンティングされ切ったにもかかわらず、それを克服できない不器用なタイプの打者は、毎回、毎回、まるで同じパターンの配球で凡退するばかり。それでも彼らを中軸で使ったりするのだから、どうしようもない。


たとえば昨日のゲーム。
珍しくリードしていたのに追いつかれ、同点で迎えたゲーム終盤、せっかくノーアウトのランナーが出ても、相手チームに弱点(=アウトコースのスライダー系)のバレているオリーボ、マイナー番長のカープにヒッティングを強行させて、2回のダブルプレー。注意力の足りないカープフィギンズは、次々に牽制アウト。
そして延長戦に持ち込まれて、延長1死3塁で、ウェッジは満塁策もとらずにフルカウントで意味不明に勝負に行って、簡単に犠牲フライを打たれて、お約束のサヨナラ負け。

何度同じパターンを繰り返せばわかるのか?

たとえば今日のゲーム。
初回ノーアウト満塁で先制のチャンスに、ただただヒッティング。その結果、無得点。
こんな無策なバッティングを、何度やっても、何度くりかえしても、ウェッジは「無策」のまま。ただただヒッティング、ヒッティング。


イチローのせい?

おいおいおいおいおいおい。冗談はよせ。
アメリカの新聞記者たちよ。
スジ違いにナンクセつけるのも、たいがいにしろ。


エリック・ウェッジのやっている、コロコロ変える腰の据わらない打順。明らかにスカウティングされて打撃が止まっているペゲーロやスモークの中軸起用。きめ細かな指示も無く、雑で単調な攻め。

あらゆる面で、エリック・ウェッジの打撃に関する雑な指示は、貧打のチームに必要とされる粘り強いクロスゲームに、まったく向いてない。
それどころか、ウェッジは「雑なこと」ばかりやって、ランナーを殺し、チームの得点力を削ぎ続けている



結論は出た。

エリック・ウェッジの雑な野球センスは、クロスゲームに向いていない。
チームに向いた野球ができないのなら、
そういう指導者は必要ない。

ハッキリ言わせてもらう。
エリック・ウェッジは、雑だ。

毎日スタメンをコロコロ変えておいて、育成?
冗談はよせ。
そんなその場限りのやり方で、人間が育つなら誰も苦労しない。あんな雑なプレーばかりやらせて放置して、いい選手に育つわけがない。

むしろ
バッティングの弱点をほんの数週間でスカウティングされきってしまう「底の浅い若い打者たち」を、それも、腰くだけな起用法で多用し続けることで、負け続け、せっかく勝率5割を越して、登れつつあった坂を一気に転がり落ちた責任をとるべきなのは、ほかの誰でもない。

「おまえ」だ。







July 19, 2011

テレビがメディアの不動の中心だった時代が終わったことで、全米視聴率が簡単には10%を越えられなくなったのは普通のことだし、MLBのオールスターの6.9%という数字自体は、他の主要スポーツの大規模イベントや人気ドラマシリーズの最終回などと比べても、けして遜色ない数字であることを、前回書いた。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年7月18日、去年より低かったオールスターの視聴率について (1)6.9%だからMLBは衰退しているとかいう、くだらない議論。いまの日本人の「議論能力」の無さに呆れる


しかし、だ。

この記事 (ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年7月3日、「ここまでするか」と感じる、2011年オールスター投票の作為。) で、書いたとおり、
例年、250万票から、多くても400万票ちょっとで決まっていたオールスターの外野手の投票数が、700万を越えるような得票を得た選手が出現し、他にも何人か600万票を越える得票を得た選手が数人出現するようなシーズンのオールスターで、「視聴率が前年より下がる」などという事態は、どう考えてもおかしいとしか言いようがない。

2000年代MLBオールスター視聴率の推移
MLB All-Star Game Earns Record Low 7.9 Overnight | Sports Media Watch


あらためて書く。

例年の2倍もの得票を獲得したプレーヤーが出現したオールスターなら、本来なら視聴率が上がるはず。ガクンと下がるわけがない。どうみてもおかしい。
なにか投票結果に「歪み」があったとしか思えない



以下に、「今回のオールスターで、視聴率が伸びた都市」と、その年を含む州を、アメリカの地図にプロットしてみた。
わざわざこんなめんどくさい作業をした意味は、もちろん、「大量に投票があったにもかかわらず、全米で視聴率が下がった『歪んだオールスター』を、テレビで熱心に見たファン層は、どこの街に存在するのか?」を、ちょっと地図上に並べてみて、今回の投票が異常なのかどうか調べたい、ということだ。

もし、「視聴率が急激に上がった都市と、例年にはありえないほどの大量得票を得てオールスターに出場した選手の所属チームのフランチャイズが、一致する」のなら、それは明らかに、自分の応援したい地元のスターを応援するためにファンが大量投票し、その選手がオールスターに出られることになった後は、テレビにかじりついてオールスターを観戦した、という「まっとうな流れ」が確認できることになる。

2011年オールスターで視聴率の上がった地域・都市

都市別のオールスター視聴率
ミズーリ州セントルイス 17.8%
ペンシルベニア州フィラデルフィア +11% up(14.7←13.3)
アリゾナ州フェニックス        +45% (10.6 ←. 7.3)
オハイオ州クリーブランド      +42% (9.5 ← 6.7)
テネシー州ノックスビル       +42% (4.7 ← 3.3)
カリフォルニア州サンフランシスコ +28% (11.1 ← 8.7)
ヴァージニ州リッチモンド      +23% (7.5 ← 6.1)
ペンシルベニア州ピッツバーグ  +21% (8.6 ← 7.1)
サウスカロライナ州グリーンビル  +16% (8.6 ← 7.4)
テキサス州オースティン       +16% (5.7 ← 4.9)
ノースカロライナ州グリーンズボロ +14% (8.3 ← 7.3)


上の結果を見てもらうとわかるが、正直言って、いくつかのハッキリした特徴とともに、オールスターに選出された選手のフランチャイズと、高視聴率の地域がまるで一致しないことを指摘しないわけにはいかない。


数字上の特徴

1)オールスターの視聴率が伸びたのは、THe South Atlantic States(フロリダ州、ジョージア州、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、バージニア州、ウェストバージニア州 ワシントンD.C.など)のうち、北のエリアに位置する州(ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、バージニア州)で集中的な視聴率アップがみられる。これらはいずれも「アメリカ南部」と言われる地域の州。

2)ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、バージニア州には、メジャーの球団のフランチャイズはまったく無い。だが逆に、マイナーは非常にたくさんある。また、これらの州のカレッジベースボールは近年非常に盛んになっており、野球自体は非常に盛んな地域。

2)サウス・アトランティック以外で視聴率が上がった都市として、サンフランシスコと、テキサス州の州都オースティンがあるが、これらはいずれも去年ワールドシリーズ出場チーム(ジャイアンツ、レンジャーズ)の地元

4)たくさんのオールスター・プレーヤーを輩出した東地区のニューヨークやボストンには、オールスターの視聴率アップとかいう現象は見られない

5)同じく、ボティースタの所属するブルージェイズの地元トロントで大幅な視聴率アップがみられた、という報告は、今のところ発見できない。



数字から推定できること

1)セントルイスはこの9年ほどの間、オールスター視聴率が最も高い数値を示す都市であり続け、「全米で最もMLBオールスターが好きな都市」である。だからセントルイスについて「投票の歪みへの関与」を考慮する必要は全くない。また、サンフランシスコとテキサス州オースティンは、明らかに去年のワールドシリーズの影響から視聴率がアップしたのだと思われるので、これらの都市も考察から除外できる。

2)パイレーツが何シーズンかぶりの首位争いを演じているピッツバーグは、オールスター観戦もひさしぶりに盛り上がって当然のような気もするが、断言できるわけではない。

3)どうしてもオールスターで活躍するボティースタを見たいトロント市民が、オールスターの当日、テレビ中継をテレビにかじりついて見た、と断定できるような視聴率データは、今のところ見つからない。(といっても、カナダの視聴率データを見たわけではない。見たのはアメリカのニールセン程度)
だが、今のところ、トロント市民がオールスター出場がどうみても確定的なボティースタを、オールスターになんとしても出場させようという意図で大量投票するとは、考えにくい。そんな無駄な苦労などしなくても、今年のオールスターで彼は選ばれるだけの成績を残していた。

4)ボストン、ヤンキースファンの大量投票の可能性
大量のオールスター出場者を輩出したボストンやニューヨークはどうだろう。それらの州で「視聴率がハネ上がった」というデータは見られない。
考えられるのは、「彼ら大都市の住民は、大量投票を行って投票結果を左右した事実はあるものの、実際にテレビでオールスターを見ることはしなかった」、もしくは、「数百万票単位の大量投票自体、大都市の住民によるものではない」という可能性が考えられる。
なんせボストンやヤンキースのファンは全米にいるわけだし、なにもボストンやニューヨークの市民がシャカリキに大量投票をするとも思えない。

5)アメリカ南部での謎の視聴率アップ
メジャーの球団がないアメリカ南部のいくつかの都市(ノースカロライナ州、サウスカロライナ州、バージニア州など)で、視聴率がグンとアップしているのは、目を引く。
理由として思いつくことがあるとしたら、近年のカレッジ・ワールドシリーズにこれらの州がたくさんの有力校を送りだすようになってきていて、これらの州の野球熱がこれまでになく高まりつつある可能性があること。それと、サウス・アトランティックの大学同士の対戦になった今年のカレッジ・ワールドシリーズとオールスターの日程が近接していたことで、これらの州でMLBオールスターへの関心がより高まった、という可能性も考えられなくもない。
だが、その一方で、メジャー球団がある都市での近年のオールスター視聴率がけして改善されてない状況の下で、「メジャーの球団の無い州の視聴率だけが異常に改善される」というのも、違和感が残る。
簡単に言えば、「不自然」だ。

6)外国からの大量投票の可能性
オールスターの投票は大量にあった、にもかかわらず、全米視聴率は下がった、ということは、単純に、「オールスターへの大量投票が行われたのが、アメリカ国内からの投票ではない」という可能性もある。
オールスターの投票は、オンラインでできるために、アメリカ国内からではなく、中米のスペイン語圏はもちろん、中国や韓国、日本など、アジアからでもできる。(今年はMLBが中国マーケットの開拓のために中国国内からのMLBのネット中継を無料開放している、という事情もある)
もし、「アメリカ以外のどこかの国から異常な大量投票があった」という仮説は、「オールスターの投票は非常に多かったのに、アメリカ国内の視聴率は下がってしまう」という矛盾した現象を、スムーズに説明することができる。


まぁ、当然のことながら、何も断定できるわけではない。
だが、こうした邪推ととれないこともない推定は、マスメディアでハッキリ表明されることはない。それでは「自由」ではない。



ブログとしてあらためて言わせてもらう。

これだけ異常な量の票が集まったのに視聴率が下がるのは、納得できない。公開されることなどないだろうが、「州単位」、「国単位」でいいから、投票数を自分の目で確かめてみたいものだ。たぶん、ひと目で「歪み」がわかるんじゃないか。






July 18, 2011

多忙なためになかなかブログを更新できなかったので、扱う話題がしばらくはちょっと古い話になりそうだ。申し訳ない。


まずは、6.9%に下がったMLBオールスターの視聴率について。(去年は7.5%)

この件について、このブログ本来の意見を言う前に、まず「地ならし」のために言っておかなければならないことがある。(自分の意見だけ言い放って済ませるのがブログの快感なのに、世間には本当に馬鹿な人が多くて、自分の意見を言う前にまず整地して平らにしておかなくてはならないのだから、やれやれである)


某巨大掲示板がまさにそうだが、なんというか、テレビの視聴率についてよくもあれだけ馬鹿げた、根拠のない思い込みだけを元に、野球が終わっただのなんのと、くだらないバッシングをデッチ上げることができるものだ。
MLBオールスターの視聴率が6%台であること、ただそれだけを理由にあげつらって、野球人気だの、アメリカのスポーツ人気だのをあれこれ語るなど、あまりにも馬鹿らしい。くだらなさすぎて、語りたくもない。

だが、ああいう議論とはまるで呼べない低レベルの雑談ですら、きちんと馬鹿にできる人間、クズなものをクズと言い切れる人間が見当たらないのだから、しかたない。自分で書かざるをえない。


たとえば日本の新聞記者などは、数字の意味も頭に入れないまま、あたかもMLBがひどく低迷しているかのようなイメージで、思いつきで記事を書いていい気になっているのだから、これはもう、どうしようもない。彼らはもはやプロのモノ書きのレベルではない。
年老いた彼らの頭の中では、いまだにアイドルの出す黒い塩化ビニールのLPレコードが100万枚以上売れ、いまだに年末の紅白歌合戦を日本の60%以上の人がテレビの前に座って、みかんの皮をむきながら見ているのだろう。
マジに、脳のポンコツさ加減にも程がある。


日本のマスメディアのおめでたいガラクタと、掲示板で必死に野球をバッシングしているガラクタは、ちょっと考えただけも、2つの点で間違っている。
まず、いわゆる「テレビ視聴率で全てを把握できた時代」など、とっくの昔に終わっていること。そして、「全米6.9%という視聴率の意味」がまるでわかってないこと。


アメリカでは、Broadcast Programs、いわゆるオープンエアーで放送されるテレビの番組の人気、あるいは3大ネットワークだけがメディアを牛耳れた時代など、とっくの昔に終わっている。
ケーブルもインターネットもない1960年代に、ビートルズThe Ed Sullivan Show(エド・サリバン・ショー)に出て、全米で45.3%と、スーパーボウル並みの視聴率を集めることができた、そういう「テレビ全盛時代」はとっくに終わったのだ。
こんな誰でもわかっていることを書くだけで貴重な時間が潰れていくのが実に馬鹿らしくて嫌になる。
World Series television ratings - Wikipedia, the free encyclopedia

ケーブル、ネット上の違法ストリーミング、Youtube、Facebook、Twitterなど、メディアの役割は分散しながら、新しい時代を迎えている。最近の中近東の政治情勢の変化にFacebookが果たした役割はよく知られている。
アメリカでWWE(プロレスの一種)やNBAを見るのはケーブルテレビだが、ケーブルテレビは日本以上に発達している。アメリカを旅行してホテルでテレビを見たことのある人ならわかるだろうと思うが、旅行者ですら100を越えるプログラムから自分の見たいものを選択することができる。

また、テレビ全盛時代が終わったということは、視聴者の行動のすべてをニールセンなどの視聴率調査会社が完全把握できた時代も終わったということだ。
今は、テレビやケーブルだけが情報ソースではなく、インターネット上に違法なスポーツ観戦ストリーミングなども無数にあり、見たいスポーツイベントの大半は、ネット上で、しかも無料で見ることができる。こういう違法な視聴のあり方は、もちろん視聴率には現れてこない。
また、アメリカの人気テレビシリーズについて言えば、視聴率は低くとも、世界マーケットに展開した後でのDVDレンタルでの凄まじい収益や人気は、ニールセンの数字には表れてこない。(そのため、人気ドラマHeroesなどは、放送するNBC自身が、見逃しても無料で見られるネット上のストリーミングサイトを開設して、人気のキープに励んでいた。もちろん、放送終了後の世界展開での収益を見込んでいるのである http://www.nbc.com/Heroes/)
単に視聴率が下がったからといって、関心が下がったなどとは必ずしも言い切れないし、むしろ、そんな単純なことを言っているヤツは、ただの馬鹿だ。


あらためて歴代のテレビ視聴率のランキングを見ると、大半が1960年代から1990年代前半までの、しかも、ほとんどがNFLスーパーボウルのデータであり、いかにインターネットが普及する2000年前後以降にメディア環境が変わったか、よくわかる。
いくらスーパーボウルが人気があるとはいえ、2001年以降に視聴率45%を越えることができたのはセインツ対コルツの2010年しかないのだ。スーパーボウルがコンスタントに45%を稼ぎ出せたのは、1970年代後半から80年代にかけての「テレビ時代」の話だ。
その一方で、Britain's Got Talentで世界に知られたスーザン・ボイルの動画がそうであるように、Youtubeのちょっとした動画が億単位のアクセスを集める、そういう時代なのだ。
6.9%だから野球は終わったとかどうとか、くだらないにも程がある。

たとえば、今年の春から夏にかけてのスポーツイベントの視聴率を見てみる。
ケンタッキーダービー 6.7%
NCAAトーナメント 6.4%
FOX NASCAR SPRINT CUP-02/27/2011 5.9%
NHLスタンレーカップ ファイナル第7戦 4.8%
ゴルフ 全米オープンのファイナルラウンド 4.5%


野球を叩きたがる数字音痴が口癖のように言いたがるのは、アメリカで人気があるのはNFL、NBA、NHLで、MLBはその次だとかいう、お決まりの陳腐なセリフだが、例えばNHLは、MLBのワールドシリーズにあたるスタンレーカップの、それもファイナル第7戦ですら、全米視聴率は5%も無いのである。
また、詳しくは書かないが、ケーブルにおけるNBAの数字は、1%台から3%台であることが珍しくない。
当然のことだが、これらの低い数字は、それらのスポーツが人気低迷状態にあることを意味する数字ではなく、「テレビ視聴率で何か言えた時代など、とっくに終わっている」という単純な話だ。


スポーツ以外のテレビ番組にも目を向けてみる。

America's Got Talentは、携帯電話のセールスマンだったポール・ポッツや、ただのオバサンだったスーザン・ボイルをスターにしたイギリスのBritain's Got Talentの元ネタになったオーディション番組で、週間視聴率全米トップ5に入るほどの人気番組だが、この人気番組America's Got Talentですら、視聴率は7.2〜8.8にしかない。

2010年に終了した全米人気テレビシリーズで、
日本でもヒットした作品の最終回視聴率

Lost       7.5%
24         5.2%
Ugly Betty  4.2%
Heroes     2.8%


2000年〜2009年に終了した
全米人気テレビシリーズで、
日本でも大ヒットした作品の最終回視聴率

ER         10.4% 2009
The X-Files   7.9% 2002
Nash Bridges 6.3% 2001



視聴率7.5%で終了したLostや、視聴率5.2%で終了した24を「全米大ヒット」ともてはやす一方で、視聴率6.9%のMLBが低迷とか言っているヤツは、それが日本のスポーツメディアのガラクタ記者であれ、一般人であれ、根本的に馬鹿だ。
そもそも「インターネット時代に、テレビがどういう位置にあるか?」 という、今の時代には誰でもが頭に入れていなければならないことすら、まるでわかってない。
MLBのチームでも、白人の多いチームもあれば、多国籍なチームもあり、地域性がマーケティングに反映する。アメリカには、たくさんの人種がいて、それぞれがある種の文化的な意味のタコツボに入っていて、文化的なコミュニティを持っている。
いくら誰でも楽しむことができるのがスポーツの良さではある。だが、大半の人気ドラマシリーズの最終視聴率すら10%どころか5%にも満たずに終わってしまうこの時代に、特定のスポーツの特定のイベントが全米の人口の10%以上を確実に楽しませることは、もう昔のテレビ全盛時代のように簡単な話ではないのだ。


こんな当たり前のことすら、こうして時間を費やしてブログに書かなくてはならないのだから、日本のスポーツをめぐる言説のレベルも、本当にたかがしれている。

今の日本では、こんな、言わなくてもよさそうなことでさえ、きちんと言っておかなくてはならない。どうしてまた、こんなに言説のレベルが下がっているのか。
下がったのは、MLBのオールスターの視聴率以上に、日本の言葉と議論のレベルだ。






July 12, 2011

本の宣伝をするつもりはないのだが、ソースのありかを示す必要上、しかたがない。
以下の話のオリジナル・ソースは、スポーツ・イラストレイテッドのシニア・ライター、Jon Wertheimが今年2011年1月に出版した Scorecasting: The Hidden Influences Behind How Sports Are Played and Games Are Won である。残念ながらこの本、まだ中身を見ていない。


この本で元データとして使われているのが、このブログでも「アンパイアのコールがどのくらい正確か」を知るためにたびたび使わせてもらっているBrooksBaseball.netのデータだ。
このブログで利用させてもらっているのはStrikezone Mapsというツールのデータだが、この優れたサイトには他に、Pitch FXという凄いツールもある。あらゆるゲームのあらゆる投球について、とんでもなく詳細な設定ができて、びっくりするほど詳細な情報が得られるツールだが、あまりにも精密すぎてブログ主には扱いきれないのが残念だ(笑)
Pitch FXでは、たとえば「7月9日LAA戦で、マイケル・ピネダが、ファーストストライクを、どの球種で、どのコースに、どんな速度で決めたか」を特定することができる。

下記の記事は、WIRED MAGAZINEが、Pitch FXを基礎資料として書かれたJon Wertheimの本をネタに記事を書いたもの。(ただ、ブログ主は、Jon Wertheimが主に利用したのは、Pitch FXではなくて、むしろStrikezone Mapsだろうと考える)
Pitching Data Helps Quantify Umpire Mistakes | Playbook


記事によると、アンパイアのコール全体における「正しいコール」の割合は、85.6%という結果が出ているらしい。
これは、「20球のうち17球を正しいコールをする」というレートになる。MLBのピッチャーがひとりの打者に投げるボールはだいたい平均4球くらいなわけだから、20球投げて5人の打者と対戦すると、そのうち「不正確なコール」が3球程度発生することになる。

さらに、ストライクゾーンのコーナー周辺に決まったボールをアンパイアが正しく判断できる確率は、わずか49.9%しかない、という。
(ただし、これらの数値は、MLBやHardball Timesのような老舗サイトが調べた数値ではなく、あくまで彼ら独自の測定結果、計算結果であることに注意すべき。これらの数字を根拠に何かを発言する場合、必ず根拠としてソースを示さないことには、その発言の信頼性は怪しくなる)


カウント0-3と、カウント0-2の、ストライクゾーンの違い


上の図は、カウント3-0と、カウント0-2におけるストライク・ゾーンの広さの違いを表したもので、これがこの記事では最も面白い部分だ。
濃い青色の部分より内側がカウント3-0におけるゾーン、青い斜線部分がカウント0-2におけるゾーンだ。
なかなか面白い。要は、こういうことだ。

1)カウント3-0では、
  アンパイアはストライクゾーンを広げて、
  ストレートのフォアボールを避けようとする。
フォアボールになりかかっているカウント3-0では、アンパイアのストライクゾーンは非常に広くなる。特に「両サイドのゾーン」が広い。
ことカウント3-0では、たとえルールブック上のゾーンをはずれていても、アンパイアは「ストライク」とコールする可能性が高くなるという調査結果だ。

2)カウント0-2では、
  アンパイアはストライクゾーンを狭めて、
  3球三振を避けようとする。
投手が打者を追い込んだカウント0-2では逆に、アンパイアの想定するゾーンは、非常に狭くなる。
特に狭いのは「低めの全て」と、全ての「コーナー」。投手圧倒的有利の0-2カウントでは、「ピッチャーがどんなにきわどい球を低めやコーナーに投げたとしても、アンパイアはストライク・コールしてくれない」可能性がある、という調査結果になっている。


なお、WIREDの記事では、きちんと指摘されてないことがあるので指摘しておく。

上の記事では、「MLBのアンパイアは、コーナー周辺のボールを正しく判定できる確率は、約50%しかない」という指摘と、「カウントによってゾーンがかなり可変になっている」という別の指摘をしているわけだが、この2つの指摘は相互に無関係なのではなく、むしろ、前者は後者の影響を受けることを考慮すべきだ。

「打者を追い込んだ0-2カウントでは、きわどい球はボール判定されやすい」ということは、もしピッチャーが打者を追い込んだカウントで、コーナーいっぱいに素晴らしいストライクを投げたとしても、「ストライクとコールされず、むしろボールとコールされてしまうことがありうる」ということだ。

だから、「MLBのアンパイアが、コーナー周辺に決まるボールを正しく判定する確率は、約50%だ」という事象は、その全てが「アンパイアの能力が不足しているために起きる誤審」とは言えない。
むしろ、「0-2カウントでは、きわどい球は、たとえそれがストライクでも、ストライクと判定しない」という例のように、アンパイアは「コーナーに決まる素晴らしいストライクでも、故意にボールと判定している」ケースがあるのである。
しつこいようだが、だからこそ「MLBのアンパイアが、コーナー周辺に決まるボールを正しく判定する確率は、約50%である」というデータをたまたま見たからといって、それを根拠に「MLBのアンパイアは判定技術が低い。だから、コーナーに決まる球を、約50%しか正しく判定できないのだ」と断言していいことにはならないのである。
この部分が、WIREDの記事ではきちんと指摘されていない。

よく、「MLBのアンパイアは下手だ」とかネット上で公言している人を見かけるが、何を根拠にそういう発言をしているのか知らないが、単に「下手」なのと、「わかっていて、わざと判定を操作している」のは、意味がまったく違う。「MLBのアンパイアが、コーナーのボールを正しく判定する確率は、約50%」というのは、「MLBのアンパイアが下手だ」という意味で言っているのではない。


Jon Wertheimの著作で細かいパーセンテージがどこまで正しいかは別にどうでもいいが、このデータから明らかになることは、
アンパイアたちが「現実にやっている仕事」は、
「単なる判定」ではなく、むしろ「ゲームをつくること」であり、判定は「もともと意図的なゲームの操作行為」として行われている
ということだ。


彼らアンパイアは、カウント0-2になれば、意図的にゾーンを狭めて三球三振になるのを避け、逆に、カウント3-0になれば、意図的にゾーンを広げ、四球の発生を避ける。それらの「意図的な判定操作」の結果、彼らが目指す方向性というのはたぶん「打者と投手の対戦が継続されるほうが、ゲームとして面白かろう?」 というようなことではないか、と思う。
このことは、一見、ベースボールというゲームの本質は何か? という問いを含んではいるように見える。「四球でも三振でもなく、打者と投手の対決がベースボールの醍醐味なのだから、それを楽しみなさい」というわけだ。

だが、そんな「アンパイアの実態」についての、ブログ主の基本的な意見は、こうだ。

何を、どう楽しもうと、ファンの自由。余計なお世話だ。
アンパイアよ、余計なことはするな。
勝手にゲームを作るな。
他人の楽しみ方に、勝手に方向性をつけるな。


人間というのは、野生動物としてのナチュラルなルールを失った弱い動物であり、社会的権威を持ったとき、心の奥底まで権威にすっかり犯されて、秩序維持のためとか称して権威をふりかざすようになるものだ。
意図的にゾーンを狭めたり、広げたりして、三振や四球を「意図的に」避けてやり、打者と投手の対戦を継続させる、という判定ぶりは、一見すると、スポーツの鉄則にかない、スポーツの面白さを維持するのに一役買っているように聞こえがちだ。

だが、現実に起きていることは、そんな単純な話ではない。
恣意的な判定」は、なにも「アンパイアが、三振や四球を故意に減らして、ゲームをよりエキサイティングにする」という方向性だけで行われているわけではない。
むしろ、彼らは故意に三振や四球を作り出してもいる。気にいらない打者は強引に三振させ、気にいらない投手には無理矢理四球を出させる」ようにみえる行為は、実際に多発している。

アンパイアはけして、ゲームを面白くしてくれる演出家である必要など、ない。

アンパイアの「余計なゲーム・メイキング」は、むしろ、投手のコーナーに決まる精妙なコントロールの価値を損なっているし、コーナーぎりぎりのボールを見極めるバッターの精密な選球眼の価値も貶めている。
ゲームをエキサイティングにするのは、アンパイアの下手な演出ではない。また、プレーヤーの高度な技術を無駄にする歪んだ演出など、まったく必要ない。

カウント0-2に追い込まれた打者がアンパイアに嫌われていて、その結果「次の球がストライクでも、カウント0-2だから、アンパイアはボール判定してくれるさ」と安易に考えていたら、コーナーいっぱいのストレートをストライクコールされ、三球三振。
あるいは、カウント3-0にしてしまった投手が、アンパイアに嫌われた結果、「カウント3-0だし、次の球は、はずれていても、たぶんストライクコールしてくれる」とぬるい考えでいて、ストレートを置きにいったらボール判定で、ストレートのフォアボール。
そんなくだらないシーンを、ブログ主は見たくない。

もう一度書いておこう。
アンパイアよ、余計なことはするな。
勝手にゲームを作るな





July 11, 2011

別に実際にオークションサイトなどをあたって、チケット価格と残り枚数をいちいち確かめたわけではないが、「オールスターのチケットのプレミア価格が20%下がった上に、いまだに4000枚以上売られている」と報じるソースがある。
Tickets to see the 2011 MLB all-star game continue to decline. Ticket resell prices on Stubhub and Ticket Networks have dropped 20% over the past week. On July 1st, lower level infield seats were going for $439 per ticket and currently are listed for $350 per ticket. The cheapest MLB all-star ticket is listed for $92 per ticket, down from $112 last week. Currently there are over 4,222 tickets listed for sale on Stubhub and with only 5 days left to go, there will certainly be a sell-off as game time approaches.
My previous post on MLB all-star tickets details some of the prices paid over the past couple of months. The ticket resell trend is certainly downward
MLB All-star tickets drop 20% this week


今回のオールスターのチケット価値の下落を伝えている記事は他にもある。
Breacher Reportも、「オールスターのチケットの価値は47%下落した」と伝えつつ、価格下落の理由として、「ジーター、Aロッド、マリアーノ・リベラなど、たくさんの有名選手たちの出場辞退があり、魅力が失われていること」を挙げている。
Ticket values are already estimated to be down 47%.
2011 MLB All Star Game Matters, Just Not to the Players or Teams | Bleacher Report


今年のオールスターのチケット価格の下落は、MLBのレギュラーシーズンのチケットの市場価格の「市場動向」とは、全く何の関係もない。 これをいくつかのデータで立証しておこう。

あるレポートによれば、2009年から2011年上半期までのMLBのチケット市場価格は、こんな風に推移しているらしい。
2011年のMLB全体のチケット価格動向は、価格が大きく下がった2010年に比べると持ち直したものの、チケットが高かった2009年と比べると下がっているらしい。
2009年 74ドル
2010年 64ドル
2011年 67ドル

MLB ticket market prices are up in 2011 ($67) compared to 2010 ($64). But MLB ticket prices are still down compared to 2009 when baseball tickets averaged $74.
MLB Ticket Market Prices Higher in 2011

MLBのチケット市場価格が高かった2009年だが、同年4月にFOXの電子版は、同年7月にブッシュスタジアムで行われる予定の第80回オールスターのチケット価格の「下落」を予想した。
前年2008年にヤンキースタジアムで行われた第79回オールスターのチケットは、150ドルから725ドルと、高額だったのに対し、ブッシュスタジアムでのオールスターのチケット価格は、100ドルから360ドルと、3分の2から、半額というレンジに下がるだろうとする記事である。
つまり、オールスターのチケット市場価格は必ずしも定額ではない。
MLB All-Star game ticket prices drop

このように、2009年は、MLB全体のチケット価格が高かったにもかかわらず、オールスターのチケット価格は大きく下がっている。
このことからいえるのは、「オールスターのチケット価格は、そのシーズンのMLB全体のチケットの市場価格動向とはあまり関係しない」ということだ。

チケット価格が本番直前になって下がってきている今年のオールスターのチケット市場価格だが、今年のレギュラーシーズンのチケット価格はむしろ上昇傾向にある。
また、オールスターのチケット価格は、MLBのレギュラーシーズンのチケット価格動向とあまり関係なく決まる。
今年のオールスターのチケット市場価格の下落を、MLB全体のチケット価格の下落のせいにすることは、「二重の意味」でできないのである。


レギュラーシーズンとオールスターのチケット市場価格には、なんの関係もない。
ないとはいえ、チケット全体が高騰傾向にあるシーズンに、オールスターのチケット市場価格が本番直前になって大きく下がり、また数千枚も売れ残っている。こんな事態が異常でないわけがない。

何度も書くように、この10年、例年250万票から400万票の間のレンジで決まってきたア・リーグの外野手投票において、700万票をはるかに超える票数がトロントのボティースタに投じられるような事態が、もし「マトモな投票」なら、肝心のオールスター当日のスタジアムのチケットが4000枚も売れ残る、などという事態は起こりっこないし、また、数多くの投票を集めたはずのヤンキースのスター選手たちが続々と辞退していなくなっていく、なんて事態も起こりっこない。
資料:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年7月3日、「ここまでするか」と感じる、2011年オールスター投票の作為。


「マトモ」な投票でないから、こういうことが起こるのだ

本当に恥ずべきオールスターである。

もし、バリー・ボンズマーク・マグワイアのあの「恥ずべきステロイド・ホームラン時代」に回帰したくて異常投票した人間がいるとしたら、そいつらは恥ずべき行為の責任をとって、恥ずべきオールスターの残りチケットを全部買い占めるべきだろう。






July 10, 2011

その事件はSEA vs LAA第3戦、スコアレスで迎えた3回裏に起きた。

2011年7月9日 Sam Holbrook コンガーのハーフスイングを誤判定


先頭のマーク・トランボが四球で歩いた。
次打者はハンク・コンガー

シアトルの先発マイケル・ピネダはフルカウントまでストレートを投げ続けて、8球目に真ん中低めにスライダーを投げた。コンガーはハーフ・スイングして三振。ランナーのトランボはスタートを切っており、ミゲル・オリーボがセカンド送球して楽々アウト。

いわゆる三振ゲッツー。
の、はずだった。


ところが、球審Todd Tichenorがスイングの判断を仰いだ三塁塁審Sam Holbrookは、なんと「スイングしてない」と判断した。
このときのシアトルの選手、ベンチのとまどいは、以下の動画に収められている。MLBが故意に消さない限り、Sam Holbrookの、この恥ずべき判定の記録は永遠に残る。

動画:Wedge's ejection │ MLB.com

この判定結果に抗議したシアトル監督エリック・ウェッジは退場させられたわけだが、ゲーム後、こんな風にコメントしている。「酷いコールによって試合の流れは変わってしまった」。
"It changes the course of the entire ballgame,'' Wedge said of the call. "Two outs and nobody on, to first-and-second and nobody out. They score four runs. It's ridiculous. It was obvious to everybody in the ballpark, obviously, except for him that he did go (around). It was just a bad call. A bad call that changed the entire ballgame.''
Mariners Blog | Eric Wedge furious at umpire's call, saying it "changed the entire ballgame'' | Seattle Times Newspaper


スイングしているかどうかなど、議論する必要などない。
写真を見て、コンガーのグリップ位置、バットヘッドの位置、全体のピントなどを検討すれば、誰にでもわかるし、立証できるからだ。たぶん、バットのヘッドは、ホームプレートどころか、バッターボックスの先端まで突き出ているはずだ。


だが、こんな「事件」、ほんの一部にすぎない。

このブログでは、シアトルの地元メディアが書きたがらないようなこと、エリック・ウェッジがコメントしそうもないことも書いてきた。もちろん、球審Sam Holbrookについては、ずっと前からその「おかしな挙動」をずっと追跡して記録してきている。


ウェッジはこの事件、どう思ったのだろう。
よくある単なるアンパイアの誤判定だと思うのか。よくある単なるアンパイアの誤判定だと思って、風呂にでも入ってビールでも飲んで忘れてしまうのか。

それとも、一時期多発していたイチローのアウトコースへのストライク判定、オールスター、バルガスを中心にしたさまざまな先発投手における判定の歪み。エリック・ウェッジは、さまざまな「設けられたハードル」の存在に気づいただろうか。

ハッキリ言って、監督エリック・ウェッジが抗議すべき判定、抗議して退場になるべき判定は、いままで、もっと数え切れないほどあった。選手は、そういうおかしな判定の中でずっとゲームをやらされている。

このブログは、忘れない。なにもかも。
ピンときたことを、記録し、積み重ねる。
そうすることで、おかしな「流れ」の存在が見えてくる。


球審Todd Tichenorに関するブログ記事

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年5月27日、フランクリン・グティエレスのスーパー・キャッチ。イチローの変態ツーベース&決勝打点。タイムリー無しの4得点でヤンキースを撃破! 勝率5割復帰!!! ポーリー3勝目。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年5月28日、両軍先発に合計10個の四球を記録させた球審Todd Tichenorの、「あの記録」。


三塁塁審Sam Holbrookに関するブログ記事

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年4月15日、Sam Holbrookの特殊なストライクゾーンに手こずったジェイソン・バルガス。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年4月29日、4月8日にてこずったアンパイア Sam Holbrookにまたしても遭遇したジェイソン・バルガスの初勝利。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年5月28日、アダム・ケネディのサヨナラタイムリーを生んだマリアーノ・リベラ特有の「リベラ・左打者パターン」配球を読み解きつつ、イチローが初球サヨナラホームランできた理由に至る。






5勝0敗、ERA0.21、WHIP0.690の素晴らしい成績で、6月のPitcher of the Monthを受賞したばかりのクリフ・リーが、オールスターを前に同地区2位アトランタとの重要なゲームに先発したのだが、このゲームの3回裏に、なんとアトランタ先発、10勝4敗の新鋭トミー・ハンソンから、キャリア初となるホームランをかっとばした。
ベンチではキャッチャーのカルロス・ルイーズが小躍りして喜んでいた(笑)
Cliff Lee Is Awesome, Adds Home Run Hitter to Resume

Pitcher of the Month
Philadelphia Phillies starter Cliff Lee voted National League Pitcher of the Month for June | MLB.com: Official Info

Cliff Lee 2011 Pitching Splits - Baseball-Reference.com


トミー・ハンソンは今シーズンは既に2桁、10勝にのせ、防御率も2.52と素晴らしい。だが、その新鋭のボールをスタンドに叩き込んでしまうのだから、クリフ・リーのバット、おそるべし(笑)
FOXのケン・ローゼンタールなどは「彼がバッティングが好きなんだ。だから、ナ・リーグに移籍したんだ」などとツイートした。


そういえば、6月28日のシアトル対アトランタで、イチローが今シーズン初ホームランとなる先頭打者ホームランを打ったのも、このトミー・ハンソン。
まぁ、単なる偶然という以上のこの出来事。この2人、いまだに縁が繋がっているらしい。

トミー・ハンソンの打たれたホームラン全記録
Tommy Hanson Career Home Runs Allowed - Baseball-Reference.com


ちなみにゲームは、トミー・ハンソンを粘り強いフィリーズ打線がまったく打ち崩せず、フィリーズの得点はなんと「クリフ・リーのホームランの1点のみ」で、クリフ・リーは勝ち投手になれなかった(笑)
その後1−1で延長に入り、11回表に3点を入れたアトランタが逆転勝ち。勝ち投手はなんとアトランタのリリーフ、ジョージ・シェリル(笑)

なんというか、いろいろとシアトルに縁のあるゲームだった(笑)

Atlanta Braves at Philadelphia Phillies - July 9, 2011 | MLB.com Classic






July 09, 2011

わけのわからない投票の積み増しが、結果的に選手をオールスターから遠ざけた今年のオールスターには、本当に腹が立っている。放送を見るつもりもない。



彼個人は明らかに「いいヤツ」なのがわかっているのだから、よけいに困る。ブログ主はプレーヤーとして輝かしい道のりを歩んできた彼個人と、彼の残してきた素晴らしい実績を批判するつもりなど毛頭ない。全くない。むしろ、そういうことを絶対に避けたい。

だが、彼のもっている「全米的な人気」、「彼が長年の努力の末に築いてきたスター選手としてのステイタス」を、「外部から」利用して、「MLBの世代交代を印象づけるオールスター」「30代後半世代を代表するであり、最もアメリカ的スターでもあるデレク・ジーターの、『花道』のオールスター」とかいうマスメディアやマーケティングに都合のいいイメージを人為的に作りだして、ジーターの3000本安打達成の興奮もそこに折込みながら、MLBの次世代のスター作りへの橋渡しをしよう、とかなんとか、そういう流れを人為的に作りだそうとした今回の「歪んだオールスター」のマネージメントや印象操作には、本当に腹が立ってしかたがない。


ブログ主はオールスター投票の結果について以下の記事を書くことで、2011年のオールスター選出プロセスが「人為的な作為」に満ちたものではないか? と疑問に思う立場を提出した。
もちろんその立場に変更などありえない。この10年、例年250万票から400万票の間で決まってきたア・リーグ外野手投票の、どこをどういじくると、700万を越えるような異常な大量票が集まるというのか。教えてもらいたいものだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年7月3日、「ここまでするか」と感じる、2011年オールスター投票の作為。


デレク・ジーターだって、今シーズンの彼の成績だけを問題にするのなら、明らかに出場できるレベルにないことくらい、10回以上もオールスターに出場し、MLBの顔という重責を誰よりも長く背負ってきた人間なのだから、誰に言われなくてたって、彼自身が一番よくわかっている。

だが、今シーズンの成績が冴えない2人の選手、ジーターは出られて、イチローは出られないという差があるのは、明らかにおかしい。
これまでの実績で出られるというのなら、ジーターも、イチローも出られて当然のプレーヤーである。

だから、言いたいのは、「2つにひとつだ」ということだ。

ジーターもイチローも、「これまでの実績」で選ばれる。
ジーターもイチローも、「今シーズンの成績」で選ばれない。

だが、結果は、
アメリカ人であるジーターは大量得票で選ばれ、イチローは例年どおりの得票数を得たのに出られなかった。


誰かが作為的な結果をひねり出した結果、ジーターは喜んでオールスターに出れたか?
彼はむしろ、今年のオールスターをまるで「今年の自分はオールスターにはふさわしくないと、自ら辞退するかのように」出場を辞退してしまった。もったいないことだ。
これで今年のオールスターには、イチローも、ジーターも、ついでにいえば、Aロッドも、いない。そういう「しけった花火みたいなオールスター」を、誰が望んだというのか。


なんのための投票だったのだ?
そう言われてもしかたがないだろう。


改めて言いたい。
オールスターとは、そのシーズンに成績のいいプレーヤーを決める「統計的なランキング」などではない。もし、ランキングなのなら、ホームランと打率と打点の、それぞれ上位3人を優先出場させるとかなんとか、そういう規定でも作っておけばすむのだから、、さっさとそうすればいい。

オールスターが打撃ランキングで決まるなら
ファン投票など、まったく必要ないのだ。
そんなこともわからないのか。



オールスターは、
スターを選ぶ年に一度の夏祭り
だ。
わけのわからない人間が数百万票もの票を大量投票してまで、身勝手に結果を操作することなど、絶対に許されない。当然だ。


わけのわからない投票の積み増しが、
結果的にスター選手をオールスターから遠ざけた。






2010年春に、ベテランアンパイア、Joe Westが、ヤンキースvsボストン戦の「ゲーム進行の遅さ」を批判する発言をしたことで、さまざまな反響が沸き起こったことを紹介したが、その中のひとりに、Phil Birnbaumというセイバー系の人物がいた。(まぁ、ぶっちゃけ、アナリストというより「純粋な数字マニア」と思ったほうがいい人物のようだが 苦笑)

Phil Birnbaumの調査がものすごいのは、「ゲーム進行が遅いというのなら、具体的に試合進行を遅らせているのが、どの選手の、どんなプレーかを調べてしまおう」という発想のもとに、さまざまな選手のプレーを「秒単位」で調べてランキング化しているからだ。よくもまぁ、ここまで調べるものだと思う(笑)
Sabermetric Research: Why are Yankees/Red Sox games so slow?

例えば、彼が調べた数字のひとつに、「キャッチャーがピッチャーに返球する速度」というのがある。こんな数字を調べた人、初めて見た(笑)
彼の説明によれば、「キャッチャーの返球は、1試合につき140回くらいはある。だから、もしそれがトロトロしていれば、当然のことながらゲーム遅延の原因になる」というのである。

たしかに。
言われてみればそのとおりだ。非常に論理的である(笑)だが、そこにあえて着目してしつこく調べるあたりが、なんとも「数字オタク」っぽい(苦笑)

ともあれ、彼が(たぶん)苦労して調べた「ピッチャーへの返球の遅いキャッチャー、早いキャッチャー ランキング」をみてやってもらいたい。
ただ、気をつけなければいけないと思うのは、彼がMLBのあらゆるキャッチャーを調べた、とは思えないこと。かなりマイナーなキャッチャーもランキングに登場しているから、かなり調べているのだと思うが、それにしたってここまで詳細な数字は、一生かかっても全員分は調べきれないだろうと思う。
眉間に皺を寄せたりせず、「なるほど。返球といえども、キャッチャーによってこんなに違うんだな」くらいのゆったりした気分で気楽に眺めるべきだろう。
(トップ3の名前の後にある2つの数字は、キャリア打率と、キャリアCERA。オリジナル記事にはなく、後からブログ側で付け加えた)

slow catchers: ゆっくりタイプ

+6.01 Gary Bennett   .241 4.65
+5.63 Benito Santiago .263 3.92
+4.73 Einar Diaz      .259 4.88
+4.43 Tom Wilson
+4.12 Ryan Hanigan
+3.76 Doug Mirabelli
+3.05 Javier Valentin
+2.87 Eliezer Alfonzo
+2.44 Kelly Shoppach
+2.40 Mike Piazza

fast catchers: せかせかタイプ

-4.67 Eddie Perez  .253 3.81
-4.09 Josh Bard   .256 4.13
-3.88 Omir Santos  .253 4.44
-3.88 Chris Coste
-3.58 Jeff Clement
-3.35 Ken Huckaby
-3.33 Charles Johnson
-2.97 John Flaherty
-2.97 Tom Lampkin
-2.61 Ben Davis

このランキングに注目したのは、実は理由があって、いまシアトルで控え捕手になっているジョシュ・バードの名前があったからだ。

バードが今シーズンプレーしたゲームは数試合しか見ていないが、「せかせかしたテンポでゲームを進める、せっかちなキャッチャーだな・・・・」と、反射的に思ったのを覚えている。

実は、ジョシュ・バードの名前は昔から頭にあった。
というのも、ダメ捕手城島がシアトルに在籍していた2007年のCERAランキングで、常にトップにいたのが、当時サンディエゴに在籍していたジョシュ・バードだったからだ。

2007年6月30日時点のCERAランキング
(ソース:ブログ資料)
●2点台
バード    2.56 SD
アルフォンゾ 2.91 SFG
●3点台前半
ヒル    3.03 CHC
ケンドール 3.21 OAK
バーク   3.25 SEA
ミラー   3.27 MLW
ボーエン  3.46 SD
スナイダー 3.47 ARI
●3点台後半
マーティン  3.56 LAD
カストロ   3.58 NYM
マウアー   3.60 MIN
ロ・デューカ 3.67 NYM
バリテック  3.72 BOS
マッキャン  3.77 ATL
ミラベリ   3.82 BOS
フローレス  3.86 WSN
ナポリ    3.87 LAA
モリーナ   3.92 SFG
フィリップス 3.99 TOR

城島     4.98 SEA

バードのキャリアのCERAは4.56。同時期のMLB平均は4.69だから、特筆すべき数字でもなんでもない。だが、こと2007年に限ってだけいうと、3.40と、CERAランキングの常に上位につけていたドジャース時代のラッセル・マーティンを上回るような数字だったので、よく覚えているのである。
Josh Bard Fielding Statistics and History - Baseball-Reference.com


「返球テンポの非常に早いキャッチャー」が、ゲームにどういう影響を与えるかについては、想像では色々言えるものの、間違いなくそうだ、と言いきれるほどの確証はない。

投球テンポがいいことで知られているクリフ・リーはかつてシアトル在籍時代に、ピッチングのアドバイスを求めたジェイソン・バルガスに対して「投球テンポを早くして、打者に考える暇を与えるな」と言ったものだが、「ピッチャーがテンポよく投げる」ことと、「キャッチャーがせかせかとしたテンポでプレーする」のは、意味がまったく違うとしか思えない。

ピッチャーのテンポの良さには、キャッチャーがせっかちに見えるほど早く返球し、光速でサインを決め、即座に投げるとか、そういう投手と捕手のやりとりの物理的速度などより、「ストライクを初球からビシビシ投げこむことができる、コントロールとクソ度胸の2つ」が投手に備わっていなければ意味がない。

ボール球ばかり、テンポ早くどんどん投げていたのでは、それだけで大量失点してしまい、まったくゲームにならない。
また、ボルチモアのような打線全体が早打ちしてくるチームとの対戦の場合、「打者が打ってくる早いテンポ」に「バードの早いテンポ」が合ってしまうと、途方もない連打を食らう可能性は考えられる。


投球テンポの主導権はやはり、ピッチャーが握っていてもらいたい、と思う。だから、キャッチャーがあまりにもせかせか、せかせか返球していたのでは、中には「迷惑だ」と感じる投手がいてもおかしくないと思ってしまうのだが、どうだろう。

「せっかち」と「テンポの良さ」は、やはり違うと思う。






July 08, 2011

ほんと、気分の悪いゲームだった。

ジョナサン・パペルボンにGo Homeと罵倒されたアンパイア、ジョー・ウエストの話を、ジョー・ウエスト側に好意的な立場から記事を書いたばかりだが、今日のLAA初戦の球審が、そのジョー・ウエストとはまるで知らなかった。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年7月5日、ゲームの進行が遅いとクレームをつけた最年長ベテランアンパイアに、ジョナサン・パペルボンが放った"Go Home"の一言。

最近イチローに対する球審のアウトコースの「ゆがんだ判定」も多少マトモになってきたな、と思っていたところだったが、オールスターが近づいたせいか、球審ジョー・ウエストは、ダグ・フィスターがエンゼルスの右打者に投げるアウトコースを、「ど真ん中に近い球」すら含めて、ことごとくボール判定し、その一方で、オールスターでの登板が予想されているジェレッド・ウィーバーの判定と大きな差をつけて、アンパイアとしてゲームを「つくった」。
Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool

ジェレッド・ウィーバーは疑いなくオールスター出場にふさわしい素晴らしい投手のひとりであり、ほっておいてもシアトルの若い打者くらい軽くひねる能力がある。
だから、あえてゲームを「つくる」必要などないのに、なんでまた、こういう変なことをするのだろう。
これほど、片方のチームの投手だけを故意に不利な判定をする「エコヒイキのゾーン」は、見たことがない。少なくとも、今シーズンのシアトルのゲームでは、はじめて見た

ブログ主もパペルボンにならって言わせてもらおう。
Go Home, Joe West with extreme favoritism.
偏った球審など見たくない。家に帰りやがれ。



右打者への判定

三角がフィスターの投球、四角がウィーバー。
がストライク判定、がボール判定。

2011年7月7日 球審ジョー・ウエストの右打者のゾーン


データを見てもらうと、ゾーン内に緑色の三角形がやたらとたくさんあるのがわかるだろう。
それらは全てダグ・フィスターが右打者に対して投げたストライクで、球審ジョー・ウエストは全部「ボール」とコールした。中には「ほぼど真ん中に近いストライク」すら、ボール判定している。
酷いもんだ。



ジョー・ウエストというアンパイアは、球審としては、もともと「低目とファースト側のゾーンが、極端にではないが少し狭く、高めとサード側がわずかに広い」、そういうゾーンの特徴を持つアンパイアで、ゾーン全体はやや狭いほうに属する。
資料:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年11月6日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (3)アンパイアの個人差をグラフ化してみる
両チームの投手が「その球審独特のゾーン」で同じように判定され、同じように被害をこうむったというのなら、「まぁ、MLBではゾーンもアンパイアの個性のうち」と、肩をすくめて苦笑いすることもできなくもない。

だが、だ。
ジョー・ウエストは、ダグ・フィスターのストライクだけを、ボール判定」している。こればかりは許せない。監督エリック・ウェッジはなぜこんなおかしなアンパイアに抗議しないのか。


ついでに書くと、
今日最も被害を受けたのはフィスターだが、左打者イチローの、第3打席2球目のアウトコース低めの判定も酷い。
ダグ・フィスターの右打者のアウトコースへの判定がことごとくボール判定になったわけだが、左打者への投球で、これほど酷い判定を受けたのはイチローだけだ。
Seattle Mariners at Los Angeles Angels - July 7, 2011 | MLB.com Classic

左打者への判定
2011年7月7日 球審ジョー・ウエストの左打者のゾーン

2011年7月7日 イチロー第3打席2球目 投手ジェレッド・ウィーバー


もうすぐオールスターだが、オールスター出場選手だけを一方的に保護し、優れた選手だとアピールしてまでして、不自然な大量投票によって進んだマトモでないオールスターの体面をとりつくろい、演出しても、何の意味もない。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年7月3日、「ここまでするか」と感じる、2011年オールスター投票の作為。






July 07, 2011

MLBにはたくさんの不文律(unspoken rule, unwritten rule, "Baseball Code")が存在するが、ヤンキース対ボストン戦のいつもながらの試合展開の遅さにクレームをつけたアンパイア、ジョー・ウエストに対して、"Go Home"と口汚く罵倒したボストンのジョナサン・パペルボンではないけれど、「不文律」を破る例もまた、数多く存在する。
2011年7月5日、ゲームの進行が遅いとクレームをつけた最年長ベテランアンパイア、ジョー・ウエストに、ジョナサン・パペルボンが放った"Go Home"の一言。 | Damejima's HARDBALL

不文律は本当に存在するのか、しないのか。

この結論の出にくい疑問をあれこれ考え続ける人もいてもいいのだが、たぶんそれだけで一生が終わってしまう。それはさすがにもったいない。
それよりも、「自分の中で、これは不文律であり、絶対にゆずれない」と思うタブーを犯す人間が出てきたときに全力で怒りまくること、それと同時に、もし自分がタブーを破ったことがわかっても「絶対に簡単に謝ったりしないこと」、この両方のルールを同時に存在させることが、ある意味でアメリカはじめ欧米における「不文律」だ、ということが理解でき、自分でも実行できることのほうが大事だ(笑)
なんともややこしい話だ。


「相手投手のマウンドを横切った」アレックス・ロドリゲス
2010年4月22日
OAK vs NYY 6回表 スコア3対2
New York Yankees at Oakland Athletics - April 22, 2010 | MLB.com Gameday
1死ランナー無しの場面で、ヤンキースの4番Aロッドが、オークランド先発ダラス・ブレイデンからシングルヒット。次打者5番ロビンソン・カノーは、2球目のシンカーをレフト線へ長打性のファウルを打った。このとき、ランナーのAロッドは既にサードを回っていた。
ファウルだから、Aロッドはもちろんファーストベースに戻るわけだが、このときAロッドがサードからピッチャーズ・マウンドを横切ってファーストに帰ったことから、問題が起きた。
ブレイデンは、その次の3球目ストレートでカノーをファーストゴロに仕留め、ブレイデン自身でファーストにベースカバーに入ってダブルプレーを成立させ、イニングをリードしたまま終えることに成功したのだが、彼は既に「Aロッドに自分のマウンドを横切られたこと」で相当に激高していて、セカンドでアウトになり三塁側ダグアウト方向に戻りかけているAロッドとニアミス状態になったとき、声を荒げて“Get off my mound!” 「俺のマウンドだっ! 失せやがれっ!」と、怒鳴り散らした。
ブレイデンは1塁側ダグアウトに戻ったときも、ベンチに自分のグラブを叩きつけ、目の前にあるモノ全てを蹴りまくって、怒りを爆発させ続けた。(なお、この事件の起きた日付を日本のWikiは4月29日としているが、正しくは4月22日)



MLB公式サイト記事:A's Braden exchanges words with A-Rod | MLB.com: News

MLB公式サイト記事:Unwritten rules reflect baseball's protocol | MLB.com: News


この「Aロッド マウンド侵入事件」について、日本のWikiのような国内にある資料だけを読むことしかしないでいると、あたかも「不文律を厳格に遵守するMLBでは、この件については関係者全員が『Aロッドが絶対的な悪者』と考えている」かのように思ってしまうかもしれない。

だが、それは間違いだ。
この件についての判断は、さまざまな立場の意見が入り乱れて存在していて、必ずしも「AロッドはMLBの絶対的タブーを犯した! 罰するべき!」なんていう空気にはならなかった。

例えばNBC Sportsの以下の記事では、90年代に2度のワールドシリーズ優勝を経験し 239勝を挙げた左腕David Wellsの「まったくもってブレイデンが正しい」との意見を紹介する一方で、南カリフォルニア大学で1998年にカレッジ・ワールドシリーズに優勝し、ヒューストンでプレーした三塁手Morgan Ensbergの「ホームベースをカバーした投手がマウンドに戻るとき、『打席の中を絶対に踏むな』とは言われないだろ? ランナーはマウンドに絶対に入るなって話のほうがおかしいよ」という意見も紹介している。
(ちなみに、Morgan Ensbergは引退間際にほんのちょっとだけヤンキースでプレーして引退したというキャリアの選手だから、その「身贔屓な部分」を差し引いて考えないと判断を間違える)
A code to play by: Baseball's unwritten rules - Baseball- NBC Sports
この記事では、他に、ロブ・ジョンソントロイ・トゥロウィツキーライアン・ブラウンマット・ホリデーなどの意見を掲載しているが、彼らは現役選手だけに、けして歯切れのいい意見は聞こえてこない。トロイ・トゥロウィツキーなどは「まぁ、よくわからんけど、冷静にプレーすりゃいいんじゃないの?」などと、当たりさわりの無いことを言って、きわどい質問をかわしている。

だが、実際のゲームで「自分の思っているアンリトゥン・ルールを誰かに破られたとき」に、トゥロウィツキーが激高して殴りかかってこない保障はどこにもないのが、MLBである(笑)


もうひとつ例を挙げておこう。


「5点リードした8回に2連続盗塁した」カルロス・ゴメス
2011年4月9日
CHC vs MIL 8回裏 スコア0対5
Chicago Cubs at Milwaukee Brewers - April 9, 2011 | MLB.com Classic
5点リードで8回裏を迎えたミルウォーキーは、1死走者なしでマーク・コッツェイが四球を選び、代走として、1985年生まれの俊足の外野手カルロス・ゴメスを送った。
Carlos Gomez Statistics and History - Baseball-Reference.com
次打者ウィル・ニーブスの打席で、問題は起きた。
1塁ランナー、カルロス・ゴメスが二盗、三盗を決めたのである。これは明らかに「大量リードの終盤には、盗塁してはいけない」という不文律に反している。

おまけに、この2盗塁は、ただの盗塁ではない。
ゴメスは、1死1塁のニーブスの打席中に盗塁してセカンドに行っただけでなく、打者ニーブスが四球で歩いた瞬間に、2アウト・フルカウントの自動スタート状態でもないのにスタートを切って三盗まで実行し、1死1、3塁にしているのだ。これはさすがに、えげつない。
その後四球と三振で二死満塁になり、2番ナイジェル・モーガンが押し出し四球を選んだことで、三塁走者カルロス・ゴメスは生還を果たし、6-0。このスコアのままゲームは終わった。
動画(MLB公式):Baseball's wnwritten rules apparently open to interpretation | brewers.com: News


と、まぁ、ここまで書くと、よくある若い選手の不文律破りのエピソードのひとつに聞こえるかもしれないが、実はそうでもない。もう少し書く。

この「カルロス・ゴメスの5点差での2連続盗塁」について、彼を代走に出したミルウォーキーの監督Ron Roenickeは、こういう趣旨の発言をした。
20年前じゃあるまいし、5点差なんて、いまどきセフティ・リードとは言えない。満塁ホームランを打たれれば、すぐに追いつかれちまう。だから5点差で盗塁したって、問題ない
Ron Roenickeは、「不文律だって時代とともに変わるのさ」というロジックで、「8回5点リードでの2連続盗塁」を肯定したのである。
"Today's game is not 20 years ago. You can get five runs in one inning. ... People used to say you're not supposed to run in the seventh, eighth or ninth when you're up by more than a grand slam. That is completely out of this game today. It's not even close.
Brewers Late Baserunning Renews Questions About How Much is Too Much | The Baseball Codes



「11点差の場面で故意に2盗塁して乱闘を引き起こした」ナショナルズ時代のナイジェル・モーガン
2011年4月9日に、「不文律を破って2盗塁したカルロス・ゴメス」を生還させる四球を選んだミルウォーキーの外野手ナイジェル・モーガンについても書こう。
彼は今はミルウォーキーだが、前年2010年にはワシントン・ナショナルズの選手で、彼自身2010年9月1日、14-3の大差でリードされている4回表に、故意に2盗塁を決めて、その結果、6人が退場する乱闘騒ぎのトリガーを引いた。
要は血の気の多いモーガンは「不文律」を故意に破ることで「喧嘩のネタ」にしたわけで、これは不文律の悪用だ。
Washington Nationals at Florida Marlins - September 1, 2010 | MLB.com Wrap

2010年8月30日から、ナショナルズは、フロリダ・マーリンズ戦を迎えたのだが、外野手ナイジェル・モーガンが、マーリンズのキャッチャー、ブレット・ヘイズにタックルし、左肩を脱臼させた。



そして翌日。9月1日。
ナショナルズは、3回には既に3-14の大量リードを奪われていたが、4回表、マーリンズ先発クリス・ヴォルスタッドが、ナイジェル・モーガンにデッドボールを与えた。これは前日のゲームでキャッチャーの肩を脱臼させられたマーリンズ側のモーガンに対する「報復死球」とみられた。
ぶつけられたモーガンは、二盗、三盗を立て続けに決めた。もちろん「大量点差のゲームでは盗塁はしない」という「不文律」を故意に破ったわけで、モーガンの「報復死球への、報復盗塁」というわけだ。

ここまでされたらマーリンズも黙ってはいない。
6回に再び、モーガンが打席に立つと、マーリンズ先発ヴォルスタッドは再びモーガンの背中を通過する危険球を投げた。つまり、「報復死球への、報復盗塁への、報復」というわけだ。血相を変えたモーガンは一気にマウンドに駆け上がっていき、投手ヴォルスタッドをぶん殴り、あっという間に大乱闘に発展し、4人の退場者が出た。
この乱闘中、モーガンを地面に押さえつけたのは、マーリンズの一塁手ゲイビー・サンチェスだが、なんと7回にナショナルズのリリーフ投手ダグ・スレイトンは、このサンチェスにまで「報復死球」を与えたことで、ナショナルズ監督リグルマンなど、さらに2人の退場者が出た。
こうして報復が報復を呼ぶ遺恨試合の結果、6人が退場処分になった。



「不文律」は、なまじ「明文化されていないルール」だけに、たとえばメジャーとマイナーではルールが違うらしいし、また、選手の年齢によっても何を不文律と感じるかは異なる。「これは不文律だから守って当たり前、と、自分で思いこんでいるルール」は、実は、選手やシチュエーションによって異なっているのである。


少なくとも書きたかったのは、
「MLBでは不文律を絶対に破らない」という不文律、アンリトゥン・ルールだけは「無い」ということだ。

あらゆる選手、あらゆる監督が、いつでも「不文律を破る」可能性をもっている。

July 06, 2011

よくMLBについて、アンリトゥン・ルール (明文化されないルール。不文律。英語ではunspoken ruleとか、unwritten ruleと表現されることが多い。また"Baseball Code"と、「ダヴィンチ・コード」風の表現もある)がある、なんてことを言う人がいる。たとえば「審判を批判するのはタブー」とか、そういうたぐいの話だ。
また、MLBと日本のプロ野球の違いについても、「MLBは、これこれである」 とか、いつのまにかまかり通っている「日本でのMLB常識」みたいなものがある。たとえば「MLBの試合進行は、いつも速い」とか、そういう話だ。


だが、本当にそうなのか。


2010年春に、MLBの最年長アンパイアとしてよく知られている1952年生まれのベテラン ジョー・ウエスト が、ヤンキースとレッドソックスのゲームについて「試合進行が遅すぎる」という意味の発言をして物議をかもした。
Umpire Joe West blasts Boston Red Sox, New York Yankees for slow play - ESPN
この件に関してはMLBコミッショナー、セリグ氏もコメントを求められたりして対応に苦慮されたようで、ジョー・ウエストは制裁こそされなかったものの、後に機構側に発言の不用意さをたしなめられたらしい。
West was not fined by Major League Baseball for his comments, but was "admonished firmly",

Joe West (umpire) - Wikipedia, the free encyclopedia



いちおう注釈をつけておくと、MLBのゲーム進行のスピードには「さまざまなタイプ」がある。いつもゲームを見ている人には説明の必要はないだろうが、例えばボストンの松坂登板試合などは、それはもう、嫌になるほど長い(笑)。一方で、どんなチームであれ、ダブルヘッダーの第一試合は、信じられないほどの超高速でゲームが終わってしまう。
つまり、一概にMLBのゲームは早いとばかり言い切れない。中には遅いゲームもある。

ボストンだけについて言うと、ゲーム進行がノロいと感じるのは、別にヤンキース戦だけに限らない、という印象がある人が多いはず。ブログ主もボストンのゲームは、どんなカードであれ基本的に試合が「ゆっくりだ」とは感じる。また、ヤンキースよりボストンのほうがずっと「ゆっくりだ」と感じる。
以前何度か書いたように、ボストンの打者はア・リーグで最も待球してくる。なんせ、ア・リーグで唯一「P/PA=1打席あたりのピッチャーの平均投球数」が4球を越えるわけだし、またそれと同時に、よく打ち、よく走って、繋がる打線なわけだから、どうしても攻撃時間が長く感じるに決まっている。
ただ、まぁ、待球の多さとヒット数だけで「試合進行を遅いと感じる原因になるか?」というと、それは別問題で、それだけで説明がつくものでもない。そのくらい、ボストンのゲームには「スローには感じる部分」がある。


アメリカには、なんというか度はずれて熱心な人というのがいて、このジョー・ウエストの発言を受けて、ヤンキースとレッドソックスの実際のゲームを測定し、「実際のゲームで、どの選手の間が長いか?」を調べた人まで出現した(笑)
たぶんストップウオッチかなんかで細かく計測したのだろうが、なんという粘り強さだ。とても真似できない(苦笑)
ちなみに、その人の計測結果によると、野手ではヤンキースではデレク・ジーター、ボストンではダスティン・ペドロイアが、いわゆる「間の長いプレーヤー」らしい。
Sabermetric Research: Why are Yankees/Red Sox games so slow?


また、ヤンキースの試合進行のスピードについても言うと、100年くらい前、1905年6月の古いNew York Timesに、「ヤンキースとカブスの試合をブルックリンに見に行ったんだが、あれじゃ試合時間が長すぎる。もっと短くしてくれ」という意見を書いた記事があって、ヤンキースのゲームに「ノロい」とクレームがつくのは今に始まったことでもないようだ。
TOO SLOW BASEBALL. - Complaint of a Patron of the National Game. - Letter - NYTimes.com

ゲーム進行の遅さを嘆く1905年のニューヨーク・タイムズ紙記事

20世紀に入る前後の時代のベースボールは、まだルールを固めていっている最中なだけに、たぶん試合進行も今とはかなり違っていただろう。
例えば「フォアボール」だが、1876年にMLBが出来た当初はまだ「ナインボール」で、9つのボールを選ばないと打者は出塁できなかった。だが、試合のスピードアップが求められることで徐々に短くされ、1889年に「フォアボール」、日本でいう「四球」というルールになった。
だから1905年に試合を見た人ですら「試合進行が遅い」と感じたからには、九球が四球になった1900年代でも、まだ「ゲーム進行がテキパキしてない」と感じさせるさまざまなシークエンスが、当時のゲームにあったわけだ。


とにかくいえるのは、MLBにまるで関心のない日本の野球ファンは「MLBのゲームはなんでもかんでもスピーディーで、テキパキと展開するのが常識」とか思っているかもしれないが、現実はそうでもない、ということ。
最初に挙げたESPNの記事でも、2009年ワールドシリーズで、ヤンキースのキャッチャーホルヘ・ポサダが、「1イニングに8回」もマウンドのCCサバシアのところに行った、なんていう例を挙げている。
イチローがランナーに出た、というだけで、5回以上牽制球を投げてくる投手だっているくらいだ。「ノロいゲーム」は、実際ある。


話がひどく横道に逸れた。
ジョー・ウエストの「ヤンキースとレッドソックスは試合進行がノロい発言」に、当時、ヤンキースとボストンの選手たちは血相変えて噛み付いた。
例えば、当時ボストンにいたジョナサン・パペルボンは、こんな強烈なことを言っている。(ちなみに、パペルボンの名誉のためにいっておくと、この件についてはヤンキースのクローザーリベラも、彼なりの強い調子でコメントしている)
"Have you ever gone to watch a movie and thought, 'Man, this movie is so good I wish it would have never ended.' That's like a Red Sox-Yankees game. Why would you want it to end?"
He added: "If you don't want to be there, don't be there. Go home. Why are you complaining. I'm not going to sit somewhere I don't want to be. If you go to a movie or any entertainment event and you like it, you're going to stay and watch and you're not going to want it to end. If you don't, then you won't. Why is it such a big deal?"

意訳:「いい映画を見てると、『終わってほしくない』って思うだろ? ヤンキースとウチのゲームも、まさにそれだよ。嫌なら、スタジアムにいることない。とっとと家に帰れよ!
Umpire Joe West blasts Boston Red Sox, New York Yankees for slow play - ESPN


いやはや。
Go home発言ですよ。ダンナ。
ヤンキースとボストンは「特別だ」と思ってるわけですよ、彼ら。



もしも、ですね。仮定の話として。
日本人であるイチローが、これ、発言してたら
どういうことになるか。考えてみたら、怖い怖い(笑)
アンパイアに向かって、Go Home! だもん。

もしも、こういう発言をしても許されるような道理がイチロー側にあったとしても、また、仮にイチローがヤンキースかボストンの中心選手のひとりであったとしても、審判に向かって Go home なんて言い放ったりした日には、たぶん、もう、信じられないくらいアメリカでバッシングを受けると思う。(もちろん、聡明な彼はこういう汚い言葉を使って他人を罵倒したりするわけがない。当然です。ここでいっているのは、あくまで仮の話。)



つまり言いたいのは、
「審判を批判すること」は最終的なタブーではないってこと。
ほんとのタブーはですね、もっと別のところにあるわけです。はい。


ほんとの意味でアメリカの「メジャーな、メジャー記録」をゴボウ抜きしてくって仕事はね、大変な仕事なわけです。いろんな意味でね。

2011年7月5日 イチローのスライディングで決勝エラー誘発

動画:Seattle Mariners at Oakland Athletics - July 5, 2011 | MLB.com Video

Gameday: Seattle Mariners at Oakland Athletics - July 5, 2011 | MLB.com Classic


1点リードで9回裏を迎えながら、クローザーブランドン・リーグが2本のヒットを浴びて、リードを失った。2本目のヒットはレフトのカルロス・ペゲーロがほぼ捕れたポップフライ。記録はシングルヒットだが、ほぼエラー。

同点で、試合は延長へ。

10回表。
まるで当たっていないグティエレスがようやくシングルで出塁し、無死1塁のチャンス。だが、次のホールマンがバント失敗した挙句に、三振。いやな空気が流れた。
次は、トップにまわって、この日すでに2安打のイチロー。タイムリーの期待が高まったが、打席途中でグティエレスが盗塁。
こうなると、当然、敬遠。現在のオークランドの監督は、クビになったボブ・ゲレンの後を引き継いだ元マリナーズ監督のボブ・メルビンだ。彼はイチローのことを知り尽くしている。1死1、2塁で、バッターはブレンダン・ライアン
ライアンはこのところイチローがランナーにいるとほとんど打てない。この日は3回表にも、1死1塁でイチローを塁上に置いて併殺打を打っている。ここでも例によってセカンドゴロ。

ライアンのこの日2回目の併殺打で万事休す、と、思われたが、イチローがオークランドの若いショート、クリフ・ペニントンに強烈なダブルプレー阻止のスライディングをかましたところ、ペニントンの悪送球を誘って、セカンドランナーのグティエレスが一気に生還。これが決勝点となった。


ゲームの経緯というものは、たいていこうやって書き並べて、経緯をきちんと追わないとわからないものだ。
きちんと経緯を見てもらえばわかるが、この「イチローのスライディング」は、味方のミスを最低4つは一気に取り返している。ざっと数え上げただけで、最低4人の大きなミスをカバーしているのである。
たかがスライディング、ではない。

9回表のブランドン・リーグの失点
9回表のカルロス・ペゲーロの守備ミス
10回表のグレッグ・ホールマンのバントミスと三振
10回表のブレンダン・ライアンの併殺打


今日のイチローはDHで、ライトを守ったのは、最近ペゲーロと交代でレフトに入り、たまにはグティエレスの代わりにセンターも守ったりするホールマンだ。
シアトルは「マイナー番長」であることが明らかになった外野手のリザーブのマイク・カープをマイナーに送り返したため、今日のように、ホールマンとペゲーロ、2人を同時にスタメンで使うと、ベンチには外野手の控え選手がいなくなる
もし、どうしても緊急に外野を守らせるとしたら、かつてLAA時代に外野手だったショーン・フィギンズくらいしかいない。
1点リードした9回裏に、1死3塁、あわやサヨナラ負けというピンチを迎えたが、守備が下手なのがわかっているレフトのペゲーロに守備固めができなかったのは、今シーズンの「野手の手薄さ」が背景にある。


なぜ、シアトルはこんなに「野手が手薄」なのか。
というか、スタメンを毎日入れ替え続けられるほど、野手がロスターにあふれかえっているのに、なぜ「野手が手薄」なのか。

理由はハッキリしている。
GMズレンシックの不手際だ。


ズレンシックが去年もくろんだ「超守備的選手構成」は、既に取り返しがつかないほど破綻して、ペイロール、つまりチームの予算は今は身動きがとれない
だが、その収拾策としてズレンシックが開幕以降やったことといえば、去年の無駄な選手を整理することもせず、放置したまま、マイナーから「打てそうだが、守りのできない給料の安い若手選手」を大量に連れてきて、「若手育成シーズン」とか称してスタメンに名前を連ねさせることだった。

その結果、生まれたのが、ウェッジが毎日やっているとっかえひっかえの「二重スタメン」だ。

だからいまズレンシックとウェッジがやっていることは、「若手の育成」という名目の、実質「自分の失敗してできた莫大な借金の穴埋め」だ。
去年の借金の整理もできないズレンシックは、しかたなく若手育成という名目のもとにマイナーから若い選手を次々に上げてきて、床に開いたデカい穴を、若手という「値段の安いパテ」で塗り固めてふさいで、誤魔化そうとしているのである。


ズレンシックは、去年自分の肝いりでスタメンに名前を連ねさせたミルトン・ブラッドリー、ショーン・フィギンズ、ジャック・ウェイルソン、フランクリン・グティエレスに、気前よく契約をくれてやった。だが、すぐに彼らは基本的に打撃(あるいは打撃と守備の両方)に問題があることが既にわかった。

そのため、いまシアトルのロスターは、働かないのに給料の高い選手と、働けるが給料の安い選手、2種類の選手が、ダブついて存在している。そしてズレンシックは、一部の選手が新しいスターであるかのように意識的にファンを誘導して、スタジアムを満杯にしようとやっきになっている。
普通に活躍し続けていれば自然と抜きん出ていくのがスターというものなのに、不自然、かつ、迷惑きわまりない。

A群 「打てない。守備のみ。複数年契約のベテラン」
2Bジャック・ウィルソン、CFグティエレス、3Bフィギンズ、そしてかつてのLFミルトン・ブラッドリーなど。言うまでもなく、「去年のロスターの残骸」だ。無能なズレンシックの与えた無謀な複数年契約で、能力に見合わない給料を稼いでいる。彼らの能力不足を埋めているのは、給料の安いケネディ、アックリー、ライアンなど。ケネディは、アックリーのリザーブまでこなしている。

B群 「打てそうな期待感。守備はイマイチ。若手」
1Bスモーク、LFペゲーロ、LFカープなどの新人。メジャーに呼んだ当初は多少打てた。だが、時間が経つにつれ、守備が下手なことが判明しつつあり、打撃も湿ってきた。彼らの控え選手はホールマンくらいしかいないが、とても能力不足解消とは言いがたい。彼らの出場じたいが、控え選手をスタメンに出しているようなものだから、もし彼らが怪我でもすると、控え選手はすぐに不足する。ジメネスの怪我がいい例だ。


ジャック・ウィルソンは、すっかりブレンダン・ライアンとダスティン・アックリーの陰にかくれたコストの馬鹿高い控え選手で、ペイロールの硬直化を招いている。複数年契約をもらって以降のグティエレスは、アウトコースの変化球に弱いくせに引っ張りたがる「サードゴロ マシーン」で、肩も弱い。年900万ドルも稼ぐフィギンズは、とっくに攻守とも壊れ果てた。ここに、アウトコースの変化球が打てないことが相手チームにバレつつあるオリーボが加わりつつある。
ペゲーロは打てる球種とコースをスカウティングされて、さっぱり打てなくなり、さらに守備が上手くない。低めのワンバウンドするような釣り球のチェンジアップで簡単に三振することは、いまや誰でも知っている。スモークは低めの縦に動く変化球に釣られやすく、強い当たりのファーストゴロが苦手なことも判明しつつある。カープは今回のコールアップでも全く時間の無駄に終わり、マイナーに返品された。


シアトル・マリナーズの4番以降9番までの6人は、シンプルにいえば攻撃しかできない給料の安い若手6人と、守備しかできない給料の高いベテラン6人、合計12人でやっている「おそろしく非効率な会社」のようなものだ。

この「会社の本来の仕事」は、本来は6人分だ。6つの攻撃と、6つの守備だ。本来はこれを6人でこなして、6人分の給料を払う。
だがシアトルでは、いわば12人の野手で、この6人分の仕事をさせている。12人分の給料を払い、常に12人分の出場枠を順繰りに確保してやって、調子をキープし続ける。


となると、そこで始まるのが、毎試合のように繰り返される「スタメン組み替えごっこ」だ。

「相手の先発投手が左だから」とか名目をつけて、「新人のA、B、C。ベテランのa、b、c」を使ったかと思えば、その翌日は「相手の先発が右だから」と名目をつけて、「新人のD、E、F。ベテランのd、e、f」と、まったく違う6人を使う。



先発投手が左? だから何?
そんなの、どこにも合理性はない。






July 04, 2011

正直、人に負けるのが死ぬほど嫌いだ。

だから、10年MLBのトップを張ってきたイチローが今年のオールスターに出ないことについては、色々と書きたいことがある。
だが、まぁ、わかりやすいことから書いていかないと、時間もないことだし、整理している暇はない。思いつくことから書いていくことにする。


世間の反応を見ていると、「イチローが衰えて成績が下降したので、なんたら、かんたら」とか、「イチローの動態視力がどうたら、こーたら」とか、そういう、根拠もソースも無いことを言っては悦にいっている、ちょっとおかしな人間と、彼らの戯言(ざれごと)に影響されている気の弱い人間だらけなことに驚く。

正直、その程度の話では、ブログ主がへこたれる理由には、まるでならない。
もしかすると、どっかの誰かが今回のオールスター投票について、よほどシャープな意見でも書いてくれて、ブログ主をへこたれさせてくれるのかと思えば、誰もそんなこと書いてもくれない。

なんだか、世間のレベルの低さには、
いつもガッカリさせられる。


まぁ、まずは、このグラフでも見てもらおう。
いつものようにグラフをクリックすると別の窓が開いて、もっと大きくて鮮明にわかるグラフが現われるようになっているので、あらかじめ大きなグラフを開いておいてから記事を読むことをおススメする。

2001年〜2011年のMLBオールスター投票数の推移
2001年〜2011年のオールスター得票数推移


グラフで
赤色が、イチローの得票数。
緑色が、ア・リーグでトップなったの外野手の得票数。
青色が、ナ・リーグでトップになった外野手の得票数。

まず、イチローの得票数を、よく見てもらいたい。、
例年と比べて大きく減っている事実は、どこにもない」。

減るどころか、2011年の得票数は、イチローがMLBオールスターに連続出場してきたこの10年間と比べても、むしろ「やや高い得票数」に属している。
2011年の得票数を越えているのは、メジャーデビューしてセンセーションを巻き起こした2001年、シーズン最多安打記録を更新して感動を呼んだ翌年の2005年、そして2009年の、わずか3回しかない。
めんどくさいので計算してはいないが、おそらく2001年〜2011年のオールスター投票の平均値を計算すると、たぶん今年2011年くらいの数字になると思われる。

もう一度、きちんと書く。
2011年オールスター投票でのイチローの得票数は
まさに「例年並み」である。


イチローがファン投票で落選した最大の理由は簡単だ。
グラフをみてもらえばわかる。

ア・リーグの外野手への投票数が異常だった」からだ。


外野手トップの得票数に関していえば、2001年以降の10年間、MLBオールスターの投票数は、最高得票数は400万票を少し越えたあたりまでしかいったことがない。
加えて、
ア・リーグとナ・リーグの外野手のトップの得票数に、数百万もの大差がついたことなど、一度もない。

この10年で、両リーグの外野手の得票数に最大差がついたのは、イチローがデビューしていきなりその有り余る才能を見せつけてMLBを驚かせた2001年で、このときはナ・リーグ1位のバリー・ボンズに126万票もの差をつけたわけだが、これは当時のイチローデビューの衝撃の大きさを物語っているだけの数字で、なんの問題もない。
他には、2006年に、ボストンのマニー・ラミレスが、当時はピッツバーグの外野手だったジェイソン・ベイを36万票だか引き離したことがあるくらいだ。ボストンの選手がオールスターで異様に高い得票があるのはいつものことだ。


それが、今年に限っては、ハッキリ異常な投票結果になっている。
1位になったトロントのバティースタの数字は、700数十万票を越え、ナ・リーグとの差も、数百万票もの大差がついている。


ブログ主は、誰かに遠慮する気はさらさらない。遠慮しなければいけない理由もどこにもない。なので、何のためらいもなく「異常な投票結果」と言わせてもらう(笑)


こと、ア・リーグに関してだけ、こういう「異常な投票結果」が出たところを見ると、原因は、まぁ、おそらく、ア・リーグのどこか特定のチームの「組織票」だろう(笑)
たぶん、ホームランを量産しているバティースタを除外してまで、投票用紙を応援するチームの外野手だけで埋め尽くすと「なんか感じ悪いし、バレたときに困るような気もする」ので(笑)、「今年はどうみても選出されるはずで、はずそうにもはずせないバティースタをまず選び、外野手の残り2枠を、自分の応援するチームの外野手で埋める」とかいう小心者のチョイス(笑)で、何百万もの票が(たぶんオンラインで)投じられたとしか思えない。(もちろん、特定球団の外野手の票があまりに伸びるので、あわてて必死にバティースタの票を伸ばした心配症の北国のファンもいるだろう 笑)

まぁ、中間投票の推移からみて、ア・リーグ東地区の、「最近球場を建て替えた、あのチーム」か、「昔からある、ちっこいスタジアムをいまだに使っている、あのチーム」か、どちらかだろう(笑)どのチームのことを言っているかは、ご想像におまかせする(笑)各ポジションの選手たちの得票数と照らし合わせて、勝手に想像してくれていい。
そういえば、2005年にイチローがファン投票で4位になったときに、ジョニーなんたらいう選手を無理矢理3位に押し込んできた、赤いユニフォームのチームが、どこかにあったような気もする(笑)
この10年のオールスターで選ばれたア・リーグの外野手を眺めていると、どうしても外野手のスターターのひとり(できたら2人)はどうしても自分の応援チームから出さないと気がすまない、そういう集団が東海岸にいるようだ。


今年のオールスターでは、初めてイチローへの投票を呼びかける、なんていう、ガラにもないことをしてみた。最近イチローの打席でのアウトコースの球審の判定にクレームをつけているのにも、理由はある。

理由は簡単だ。
何か、上に書いたような「異常なこと」が次々に起きるのが、わかっているからだ。


ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年6月2日、まるで「記録達成」を阻止したいのかとでも疑りたくなるような、今シーズンのイチローに対するアウトコースのストライクゾーン。(1)

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年6月2日、まるで「記録達成」を阻止したいのかとでも疑りたくなるような、今シーズンのイチローに対するアウトコースのストライクゾーン。(2)

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年6月5日、今日も今日とてイチローと球審との戦い。従来と立ち位置を変え、バッターとキャッチャーの間の隙間「スロット」から判定する今の球審の「アウトコース判定の歪み」。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年6月10日、まるで「記録達成」を阻止したいのかとでも疑りたくなるような、今シーズンのイチローに対するアウトコースのストライクゾーン。(3)



端的にいうと、「MLBの『風向き』が変わった」ことが、その背景にある。(というか、もっと深くいえば、本当は「アメリカの風向き」なのだが)


その「変化」が「自然なもの」なら別に文句はつけない。
だが、「意図的なもの」なら、話は別だ。

ほかの人はどうか知らないが、
ブログ主は、そういう「人工の風」に負けるつもりなど、さらさら、ない。


そういえば、アメリカのメディアやファン・サイトでは、今回のオールスターについて、既に様々な「異論」が噴出している。そりゃそうだ。今回のオールスター投票は明らかに「ゆがんでいる」。

たとえばこれ。今回の選出がありえない選手をリスト化しているわけだが、栄えあるナンバーワンは、もちろんヤンキースのデレク・ジーターだ。
2011 MLB All-Star Voting: 5 Worst Selections in 2011 Midsummer Classic | Bleacher Report

こちらは、「選出されるべきだった選手」をリスト化した記事。
この記事にマイケル・ピネダの名前があるが、当然だろう。もしオールスターが、これまでの実績ではなく、シーズン開幕からの短期間の成績を重くみると「本当に言える」ものなら、選ばれるべきなのは今シーズン冴えないフェリックス・ヘルナンデスでなく、ヘルナンデスよりずっと成績のいいマイケル・ピネダが選ばれるべきだ。
なお、ブランドン・リーグも同じ。彼の防御率はオールスターに出るクローザーとしてはあまりにも冴えない。
2011 MLB All Star Game: 10 Notable Snubs and Manager Errors | Bleacher Report
snub : 「冷遇する」

マーケティング的にMLBの新しいスターが欲しいだけなら、若い選手を何人か実力だけで選出しておけばいいものを、ジーターだの、ヘルナンデスだの、あちこち選出の歪みばかり目立つから、おかしなことになる。
たとえば今シーズンのビクター・マルチネスなどは、なかなかクレバーな打撃を披露しているのに、ア・リーグ東地区の某球団から移籍しただけでファン投票から漏れてしまう。
こういうことでは、とても投票結果に納得などできるわけがない。






July 03, 2011

今日のセーフコのゲームで、サンディエゴは左投手を先発させてきたが、試合開始前から日本のファンに予想されていたとおりの「貧打」で、9回を1失点に抑えたダグ・フィスターが「完投負け」した。
これでダグの今シーズンの成績はとうとう3勝9敗という数字になってしまったわけだが、防御率は、なんと3.02のハイスコアだ、

いったいどこの世界に、防御率3.02で、9敗もする投手がいるというのか。監督エリック・ウェッジは、無意味な「左右病」のスタメン起用でどこまでダグ・フィスターに迷惑をかければ気がすむのだ。
San Diego Padres at Seattle Mariners - July 2, 2011 | MLB.com Classic


エリック・ウェッジのくだらない戦略のひとつに、「相手の先発投手が左か右かによって、使う選手、特に下位打線のプレーヤーの顔ぶれを大きく変更する」というのがある。
この愚策、「左右病スタメン」とでも呼んでおこう。

シーズン当初は、イチロー、フィギンズ以外は、ほとんどの打順が変更され続けたが、ようやく最近になって、イチロー、ライアン、アックリー、スモークあたりの野手が上位打線として固定されてきてはいる。

だがそれでも、いまもエリック・ウェッジの「左右病」は酷い。

特に酷いのは、相手先発が左投手の場合
日本のシアトルファンの間では、「左投手との対戦では、エリック・ウェッジは勝つつもりがないんじゃないか」とまで言われだしている。


こういう話題が出すとよく、データとはとても呼べない思い込み数字を頭に描きつつ、エリック・ウェッジが左投手に対して組む打線の酷さを擁護しようとする人、あるいは、自分の好きな選手をウェッジが好んで起用するのを擁護しようとするヒトをみかけるが、アホらしいにも程がある。

まぁ、ファンが、根拠になど到底ならない「データもどき」や、単なる自分の好みから、脳内思い込み打線を組むのなら笑って済まされもするが、まさかウェッジ本人も、そういうくだらない思い込みと、根拠のない好みだけで、現実にまったくそぐわない打線を毎回組んでいるのではないか? と心配になってきた。


いくつか、シアトルの打撃に関する「思い込み」の弊害を挙げてみよう。


「シアトルで、最も左投手を打っているのは、
右バッターではなく、左バッター」である

そもそも監督エリック・ウェッジのやりたがる「左右病打線」がおかしいというのは、「シアトルで、最も左投手を打っているのが、右バッターではなくて、左バッター」であることからして、明らかだ
右バッターも右投手を得意にしている打者が少なくない。右打者ミゲル・オリーボの12本のホームランのうち10本が右投手からのもの。右打者ブレンダン・ライアンの対右投手打率は.264で、左投手からの打率は.221しかなく、打点も大半が右投手からのものだ。

左投手を左バッターが打っているという、クリアな、誰の目にも明らかな現実があるにもかかわらず、ウェッジは、たとえば今日の打順でいうと3番に、クリーンアップで打てた試しがない右打者グティエレスを入れている。
これでは打線が機能するわけもない。
ウェッジは明らかに目の前の現実やデータでなく、古くさい野球常識にとらわれて采配している
対右投手の右打者 .227 .275 .317 .592
対右投手の左打者 .222 .308 .354 .662
対左投手の右打者 .225 .279 .336 .615
対左投手の左打者 .263 .314 .332 .646
(数字は順に、打率、出塁率、長打率、OPS)2011 Seattle Mariners Batting Splits - Baseball-Reference.com

左は得意で右が打てない左打者ダスティン・アックリー
40打数12安打
対右投手 32打数6安打 .188
左投手 8打数6安打 .750
Dustin Ackley 2011 Batting Splits - Baseball-Reference.com

問題の解決には、常にハッキリ、明瞭に物事を考えるクセをつけておくことが大事だ。「見えてない問題」というものは絶対に解決しない。だから、いちいちハッキリと定義しておく。
シアトル打線で左投手を打てるのは、むしろ左打者である。この例からも、相手先発投手が左だから、右だからと、打線を組み替え続ける行為は、ことシアトルにおいては、まったく無意味な行為。


「ジャスティン・スモークは左投手に強い、
 わけではない」

実践トレーニング中の有望プレーヤーをあげつらいたいために書くのではないが、くだらない誤解は撲滅しておかなくては気がすまない。
よく「ジャスティン・スモークは左投手に強い」などと、わけのわからないことを強弁したがる人を見る。
ジャスティン・スモークが左投手に強い?(笑)何を根拠に、そういうおかしなことも、したり顔で言い続ければ間違った意見も正しくなるとでも思っているのか。くだらない。実際のゲームで右打席のスモークの「しょっぱさ」を見ていれば誰でも「スモークが本当にパワフルなのは左打席」であることはわかる。
もし、掲示板かなにかで、「ジャスティン・スモークは、左投手に強い」とか公言して得意ぶっている人間を見ても、くれぐれも「そうなんだ」などと納得してはダメだ。くだらないアホウの言うことなど、信じないことだ。

スモークの投手別の打撃データは、打撃データをチラ見している程度だと、「.280打っている対左投手のバッティングのほうが、右投手よりもはるかに優れている」ように見える。
Justin Smoak 2011 Batting Splits - Baseball-Reference.com
だが、「対左投手の打率」という大雑把な数字は、先発投手を打った数字ではない。むしろ、MLBでよく「モップ」といわれる「敗戦処理投手」まで、あらゆるレベルの左投手を含んだ「雑な数字」だ。おまけに、スモークの場合、対左投手の打数が、対右投手よりはるかに少ない。
(これは、監督エリック・ウェッジが、スモークを「苦手にしているはずの右投手のときに、やたらと起用してきた」という意味でもある。ウェッジの先発起用がいかに合理性に沿っていないか、がわかる)

実際、もっと詳しいデータで、スモークの先発投手別の打率を見てみると、相手先発が左投手だろうと右投手だろうと、彼の打率はほぼ2割4分ちょっとしかない。
つまり、実は、スモークの打率は、先発投手に対する数字でいうと、それが左投手だろうと右投手だろうと、関係ない、のである。

くだらない思い込みをこれから聞かなくて済むように、あらためできちんと言い切って、定義しておく。
スイッチヒッター、スモークの現状のバッティングは、シアトル打線が苦手とする左投手先発のゲームで「特別な輝き」を期待できる、と言い切れるほどのデータ的根拠は、世界中どこを探しても存在しない。


「フランクリン・グティエレスは
 左の先発投手が打てる、わけではない」

エリック・ウェッジが何を期待してこの右打者をクリーンアップに入れたりするのか知らないが、彼は以前「クリーンアップのような、プレッシャーのかかる重たい打順は打ちたくない」という意味の発言をしたことでも知られる気の弱いバッターであり、今シーズンの彼の打順別データでもわかるとおり、彼が最も結果を残してきたのは「6番」などの下位の打順であって、「3番」は適任ではない。
Franklin Gutierrez 2011 Batting Splits - Baseball-Reference.com

たしかに彼の対左投手打率は.308で、対右投手の.162よりはるかにいい。
だが、グティエレスも、ジャスティン・スモークで話したこと同じだ。彼は左の先発投手に対しては.231しか打てていない。右の先発投手に対する.182と、たいした差はない。

グティエレスの守備はともかく、彼のバッティングにエリック・ウェッジがどういうレベルを期待しているのか知らないが、ここでハッキリと指摘しておこう。
先発投手を打ちこなせるレベルにないフランクリン・グティエレスの現状のバッティングに期待して、シアトル打線が苦手としている左投手先発ゲームで、彼をクリーンアップに抜擢するのは、明らかに愚かな策。左投手に対するバッティングで彼に期待していいのは、ゲーム終盤のブルペン投手との対戦など、限定されたシチュエーションのみ。


「アダム・ケネディは、左右どちらの投手も打てるのに、
 左投手先発ゲームでは起用されない」

スモークと比較する意味で、アダム・ケネディの「投手別」の打撃について触れておこう。というのも、アダム・ケネディはスモークと非常に対称的な数字が残っているからだ。
Adam Kennedy 2011 Batting Splits - Baseball-Reference.com
ケネディは、先発が右投手のゲームでの先発打率が.273あるのに対して、左投手先発ゲームでは、.222しか打てていない。こういう大雑把な数字だけ見ると、例によって軽率にも「ケネディは左バッターだけに、右投手が得意。右投手専用だ」と思い込む人間が出てくる。
本当に馬鹿につける薬がない。次のことを忘れてはダメだ。
エリック・ウェッジがケネディを先発起用したのは、ほとんど右投手の場合しかない。ケネディの起用ゲーム数と打席数は、対右投手が60ゲーム192打席、対左投手が33ゲームで42打席。つまり、右投手のゲームでは「先発フル出場させている」のに、対左投手のゲームではほとんど「守備固め」とか「代打」とかでしか使われていないのだ。

ウェッジがケネディを右投手のゲーム中心に先発させてきたにもかかわらず、ケネディの右投手全体、左投手全体、それぞれに対する打率そのものは、.270と.263で、ほとんど変わらない。これは素晴らしい。
ケネディのイニング別打率を見ると、ゲーム終盤になってもほとんど打率が下がらないのだが、それを見るかぎり、「ケネディは、右投手先発のゲームでは結果を残してきたのはもちろんだが、先発起用されなかった左投手先発のゲームの代打などでも、彼はブルペンレベルの左投手を、右の先発投手と同じレベルで打ちこなすように努力してきている」という意味にとらえることができる。

エリック・ウェッジのくだらない言い訳をこれからマトモに耳に入れずに済むように、あらためできちんと定義しておこう。
アダム・ケネディは右投手だけしか打てないのではない。右の先発投手はもちろん、マトモにスタメン起用されなかったゲームでも、左投手に対してそこそこの結果を残してきている。だから、先発投手が左だろうと、右だろうと、スタメン起用する価値がある。



今日のサンディエゴとのゲームでも、アダム・ケネディはゲーム終盤になって代打起用されているが、エリック・ウェッジは最近よくこういう中途半端な選手起用をする。
例えばナショナルズとのゲームでは、当時絶不調なのがわかっていたフィギンズを代走をやらせた後、守備にもつかせて、タイムリーエラーを誘発させ、逆転負けしている。
シュアなプレーのできるアダム・ケネディをこんな中途半端な起用で疲労させるくらいなら、なぜスタメン起用するか、最後までベンチに座らせるか、どちらかにすべきだ。(もちろん、本来はスタメン起用すべき)
おまけに今日の下位打線には、ジャック・ウィルソン、ショーン・フィギンズと打てない野手を並べ、おまけに、3番にグティエレスだ。打線が繋がるわけがない。

前の原稿で、「シアトルの打線は、エンジンのかかりが遅く、諦めるのが早い」「その原因は、ゲームになかなか入れない選手がいることだ」と書いたが、こんなハンパな選手起用ではゲームに入れっこない。当然だ。






July 02, 2011

今日のフィラデルフィア・フィリーズはローテの谷間的な日だったが、9回表に2点入れて逆転し、トロントに勝っている。ほんとうにこのチームは「負けないチーム」だ。


MLBファンは良く知っていることだが、フィリーズ打線はいつもゲーム終盤に得点を入れている印象がある。勝っていれば「追加点」「ダメ押し点」、負けていても「逆転」「サヨナラ」があるような気にさせられる。
気になったので、フィリーズのイニング別打率を調べてグラフにしてみた。いやー、予想はしていたが、いくつか他チームにはみられない特徴がある。

2011 Philadelphia Phillies Batting Splits - Baseball-Reference.com

フィラデルフィア
2011 Philadelphia Philliesのイニング別打率(2011年7月1日)


イニング別の打率で特に特徴的な点を挙げてみた。
これを読む上で気をつけてほしいのは、リーグ全体のイニング別打率なんていうものは1日ごとに大きく変化することがある、ということ。だから、あくまで今シーズンに限った話題だ、くらいに読んだほうがいいだろう。

1)普通は、9回の打率は、他のイニングに比べて下がるが、フィリーズはむしろ「打率が上がる」
2)3回、6回、9回と、「3の倍数のイニング」の打率が高い
3)普通2回の打率はどこのチームでも下がるが、フィリーズでは落ち込みが激しい。

イニング別の打率について、いくつか頭にいれておくべきことをメモしておこう。

まず、リーグ間の比較について。
いくつか勘違いしてはいけないポイントがある。

DH制のあるア・リーグのバッティングはいかにも「どのイニングでも穴が少なく、どのイニングにも打率が高そう」に思え、また、ナ・リーグは「投手に打順が回るのだから、イニング間の得点力にかなり凸凹がある」と思いがちだ。
だが、2つのリーグにそれほど差はない。
DH制の有無は、イニングごとの攻撃力についてだけ言えば、思ったほど影響を与えているように見えない。両リーグとも、全体の傾向は似ていて、「2回に打率が下がり、試合中盤は2割6分程度の打率で横ばいに推移し、ゲーム終盤には.240程度に下降する」。


両リーグのイニング別打率で、違いが出る可能性があるのは、「7回以降の打率」だろう。
ア・リーグでは、7回を過ぎるとチーム打率は明らかにガクンと降下していく。対してナ・リーグでは、9回に大きく下がりはするものの、7回、8回は、ア・リーグほど急激に降下しない。
いいかえると、「ゲーム終盤の打率では、ナ・リーグがわずかながら優勢」なのである。
そういえば、去年のワールドシリーズでテキサスがゲーム終盤でサンフランシスコに毎試合のように逆転負けをくらっていたのを、まざまざと思い出す。


次にフィラデルフィア独自のイニング別の打率傾向の特徴を見てみる。

どういうわけか「3の倍数のイニング」、3回、6回、9回に、打率が高いイニングが繰り返し現れる。
必ずしも「3の倍数のイニング」にだけ上位打線に打順が回ってくるとは限らないわけで、理由は他にあるだろう。
3イニングごと、という点から考えると、打順が一巡するたびに相手投手の傾向を把握して、しっかりと「バッターの狙い」が定まっていっているのではないかと推測するのだが、どうだろう。
あとで、ア・リーグのシアトルとボストンのイニング別打率データを挙げてみるので、比較してみてもらいたい。

フィラデルフィアのイニング別打率の最も強い特徴のひとつは「9回の打率の異常な高さ」だ。
ア・リーグであれ、ナ・リーグであれ、2回がそうであるように、「9回は、チーム打率が下がるのが普通というイニング」だが、フィリーズは違う。9回のイニング打率は.271もある。
いま、ナ・リーグで最もチーム打率が高いのはチーム打率.270を誇る中地区2位のセントルイス・カージナルスだが、セントルイスもやはり9回の打率が.281もある。
セントルイス
2011 St. Louis Cardinalsのイニング別打率(2011年7月1日)


強いチーム、といっても、いろいろな強さがある。
フィリーズの「3の倍数のイニングの打撃力、特に9回の粘り強さ」は、ヤンキースのような「破壊力」とは違う。
たぶん彼らの日頃のスカウティング能力の高さ、研究心は、チームとして相当鍛えられているのではないだろうか。「試合序盤のエンジンのかかりの早さ」、「ゲーム中にでも相手投手を研究する探究心」、「ゲーム中でも相手投手に対応していく即応力」、「ゲーム終盤でも得点を諦めない、しつこさ」。

よくまぁ、ジェイソン・バルガスはこんなねばっこいチームを完封できたものだ。


ナ・リーグの強豪のゲーム終盤の粘り強さには、「代打の起用度、活躍度の差」もあるかもしれない。
ナ・リーグでは、ゲーム終盤に投手や、ヒットの期待できない打者に打順が回った場合、監督は躊躇なく代打を起用するため、ゲーム終盤になっても打率改善が期待できる。
ア・リーグでは、ゲーム終盤に打てない打者に打順が回ってきてしまっても、監督はほとんど代打を出さない。
この「代打の活用度の違い」は結果的に、「ア・リーグの監督は、どういうわけかゲーム終盤に低打率の打者が自動的に凡退するのを放置している」と言えなくもないような気がする。


比較の意味で、最後にシアトルとボストン、ア・リーグの2チームを挙げておこう。たぶんシアトルのグラフを見て、驚かれる人が多いと思う。

シアトル
2011 Seattle Marinersのイニング別打率

ボストン
2011 Boston Red Soxのイニング別打率(2011年6月30日)


あれこれ説明する必要はないだろうが、シアトルのグラフの形状が、あまりにも他のチームと異なっている。特に違っている点を列挙しておく。

1)シアトルの打者は、試合序盤の打率が低すぎる
2)シアトルの打者は、試合終盤の諦めが早すぎる


シアトルの打者の打撃成績があまりにも低く、チームの打撃成績が全体としても悲惨であることは誰でもわかっていることだが、どこが悪いのかがわかっていないことが多い。
このイニング別打率データでわかることのひとつは、シアトルの打者はけして「才能が無いから、バッティングが悪いのではない」ということだろう。

フィラデルフィアやセントルイス、ボストンといったチームは、初回や3回といった「早いイニング」からチームの打撃力の「地力」が出せる
対して、シアトルの打線は、明らかに、エンジンのかかりがあまりにも遅く、諦めが早い
このことの原因はいくつもあるだろうが、打率が低いとか、ホームランが少ないとか、そういう漠然としたことばかり言っているだけでは、いつまでたっても対策は立たない。

エンジンのかかりの遅さ」は、つまり、相手投手の傾向をつかまえるタイミングが他のチームよりかなり遅くて、打順の3巡目くらいにならないと、相手投手をつかまえることができないために、相手チームに先取点をとられてゲームの主導権を失いやすいということだ。
これは、打者として才能がある」とか、ないとか、そういう問題とは別の問題もあるのではないか。

よく、球技では「ゲームに入れる」とか「ゲームに入れない」という言い方をするわけだが、シアトルの野手は、どういうわけか、「なかなかゲームに入れない選手が多い」のではないだろうか。
もしもその原因が、スタメンをコロコロ変えることにあるのだとしたら、監督エリック・ウェッジは、対策として、意味もなくスタメンを変え続けるのをそろそろ止めて、スタメン固定を考えるべきだ。
また、相手チームの投手を早くつかまえるために、野手はスカウティングをもっと打席に生かすべきかもしれない。さらに、自分の得意な球ばかり打っているようでは、早いイニングで相手投手をつかまえることなどできない、ということも言えるかもしれない。
また、ゲーム終盤の打率の低さを補う意味では、「代打」をもっと活用して、打てない選手をゲーム終盤で打席に無意味に送り出すのを止めるべきかもしれない。


とにかく言いたいのは、頭を使わず、ただ漠然と嘆いているだけでは、解決の糸口はつかめてこない、ということだ。






July 01, 2011

野球選手の数字、というのは、ちょっとした数字のマジックみたいなところがある。


たとえば、防御率3.00のエリック・ベダードと、防御率3.35のフェリックス・ヘルナンデス。試合を見ないで、「防御率」しか見ないようなおかしな人にしてみると、この2人が似たような投手に見えてしまうだろう。

だが、防御率というのは、9イニングでの自責点数に換算している数字であることに注意しなければならない。
防御率3.00で6回しか投げられない球数の多い今シーズンのベダードの失点は、だいたい「2点」。対して、防御率3.35で毎試合7回程度を投げるフェリックス・ヘルナンデスの失点は、ほぼ「3点」に近くなる。
2011 MLB Baseball Pitching Statistics and League Leaders - Major League Baseball - ESPNa>


打線が貧弱で、1試合あたり3点ちょっとの得点しか期待できないなシアトルの野球においては、先発投手の失点が「6イニング2失点」なのか、それとも「7イニング3失点」なのかで、勝ちゲームなのか負けゲームなのか、終盤のゲーム展開やブルペンの使い方など、ゲームの様相がまったく違ってしまう
「6イニング2失点」なら勝ちゲームのリリーフを注ぎ込んで勝ちを拾いにいくゲームになる可能性があるが、「7イニング3失点」だと、もしかすると同点か負けている可能性がある。
なぜ、試合終盤の野手のエラーが致命傷になってしまうのか。なぜリリーフ投手のわずかな気のゆるみが、これほどダメージが大きいのか。なぜクローザーにかかる負担がこれほど大きく、簡単に負けてしまうのか。
数字を並べてみると、よくわかると思う。

ベダードとヘルナンデスの、どちらが優れたイニングイーターか? といえば、当然、ヘルナンデスがベダードを圧倒するに決まっている。
だが、実際のゲームでは、打線の貧弱すぎるシアトルが得意とする投手戦のクロスゲームに持ち込んでギリギリの勝ちを拾うという目的においては、単にイニングイーターであるというだけでは、試合に勝てないのだ。
本来、ヘルナンデスだけに責任があるのではなく、打線に責任があるのだが、今シーズンのレベルのヘルナンデスに好きなようにピッチングさせているだけでは、チームの勝率は5割を越えることはできない。これも事実だ。


シアトルの勝ち負けを決めているのは、常に「ほんのわずかな差」だ。
「ほんのわずかなこと」が、実はシアトルの先発投手の「評価」や、ブルペンの使い方、代打や代走などゲーム終盤の野手の使い方を「大きく間違えるポイント」になっている。
例えば、ナショナルズとの3連戦などは、監督エリック・ウェッジが「自分たちが、なぜ勝ち、なぜ負けているのかというゲームパターン」を把握しないままゲームを進めているために、スタメン、代打、代走、守備交代など、野手の適切な選択を間違えまくって、スイープされた。

シアトルで大事な「ほんのわずかな差」とは何だろう?
簡単な数字で示しつつ、2011年上半期のシアトル先発投手たちについて通知表をつけてみる。



エリック・ベダード
ERA 3.00
QS率 0.60
Erik Bedard Game By Game Stats and Performance - Seattle Mariners - ESPN
隠れエース。
6月30日時点では、アトランタ戦で怪我をした2人のキャッチャーを補充しなければならず、40人枠を開けるためにDL入りしてしまったが、エリック・ベダードの防御率は、3.00。これはア・リーグ12位で、これはCCサバシアや、CJウィルソンよりいい。素晴らしい数字だ。
15登板で90イニングだから、1試合あたりちょうど6イニング投げている。「6イニング投げて、2失点で降板」というのが、ベダードの標準的な登板だ。

だが、最近の彼はもっと素晴らしい。
5月6月は、10登板して、自責点16。1回の登板あたり、わずか1.60しか失点していない。特に5月の月間ERAは5登板、1.39で、本当に素晴らしい数字を残した。

チームがすべき仕事は、「イニングは食えないが、防御率がいいエリック・ベダード」に、勝ちをつけてやるには、どうしたらいいか、この設問に解決策を見つけてやることだ。相手投手にあわせて野手を組み替えまくっているだけでは無意味だ。
投手ごとこういう課題にひとつひとつ丁寧に解決策を見つけて、チームの「仕入れたモノを、同じ金額で売るような、無意味な自転車操業体質」を直していくことこそが、最近ブログ主が力説している「シアトルの監督、GMの、やるべき工夫であり、仕事」だ。
イニングが食えないが、防御率は素晴らしいベダードに、「4点以上の得点」あるいは、優秀なセットアッパーの援助さえあれば、彼の登板日に勝ちを拾える可能性は常にある。もったいなさすぎる。

シアトルの「1試合あたり3点ちょっと」という貧しい得点力を考えると、ベダードが6イニング2失点で降板した後の「残り3イニング」を、3人、あるいは2人の投手が「1失点以内」で乗り切ればいい。それが実現できたゲームは、シアトルの3得点に対して、対戦相手の得点は2から3で、勝てるか、同点であることになる。
非常にあやうい話だが、シアトルの勝ちパターンは「投手戦のクロスゲーム」なのだから、しかたがない。


フェリックス・ヘルナンデス
ERA 3.35
QS率 0.67
Felix Hernandez Game By Game Stats and Performance - Seattle Mariners - ESPN
今シーズンのヘルナンデスのピッチングは、あきらかにエースのそれではない。今の彼はむしろ「中堅のイニング・イーター」である。去年までの活躍で他チームのスカウティングが進んだことで、手の内を相手バッターにかなり読まれている。
今シーズンは18登板で129イニングを投げている。1登板あたり、7.17イニング。防御率から7イニングあたりの失点を求めると、だいたい2.60という計算になる。
特に、5月6月の12登板は、自責点33。1登板あたり2.75失点で、ほぼ常に「3失点は覚悟しなけばならない」という結果になっている。6月の6登板だけ見ても、自責点は18。やはり「1登板あたり、常に3失点」という結果は、6月になっても変わっていない。

イニングが食えるが、ほぼ3失点するフェリックス・ヘルナンデス」に勝ちをつけてやるには、どうしたらいいか。
シアトルの「1試合あたり3点ちょっと」という貧しい得点力を考えると、ゲーム終盤2イニングを、セットアッパー1人とクローザーが、「必ず無失点」で乗り切らなくてはならない。これは結構きつい。
もちろん、3失点がお約束という今の状態のヘルナンデスを勝たせるには、
打線が毎試合4得点すればいいわけだが、残念なことに、今のシアトルでは、彼に4得点を約束する能力がない。
だから、ヘルナンデスが降板する7回の時点で、もし相手チームにリードを許している状況のゲームでは、試合終盤に1点か2点失うことで、ほぼチームの負けが決定してしまう。
いまヘルナンデスに必要なのは、彼の足りない部分を補ってくれる「冷静な智恵袋」だが、ヘルナンデス自身の自分の能力への過信からチームは「智恵袋の」ロブ・ジョンソンを手放ししてしまっているし、また、ミゲル・オリーボのリード能力はロブ・ジョンソンほどは高くない。オリーボは、「打者を追い込むところまでは構成できるキャッチャー」だが、「うちとるところまで、全てを構成できるキャッチャー」ではない。バッターにファウルで粘られて手詰まりになると、同じような配球に終始する。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年5月13日、「打者を追い込むところまで」で終わりの投球術と、「打者を最終的にうちとる」投球術の落差  (1)打者を追い込んだ後のヘルナンデスの不可思議な「逆追い込まれ現象」

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年5月13日、「打者を追い込むところまで」で終わりの投球術と、「打者を最終的にうちとる」投球術の落差  (2)「ストレートを投げる恐怖感」と「アウトコースの変化球への逃げ」が修正できないヘルナンデスの弱さ。


ここまで書いたことで、シアトルの貧弱な打線を前提に考えると、チームがそれぞれのゲームに勝つ可能性は、「6イニング2失点のベダードは、7イニング3失点のヘルナンデスより勝てない」とは、必ずしも言い切れないことがわかってもらえるはずだ。
この失点の2とか3とかいう細かい話をベースに、残り3人の先発投手を評価してみよう。


マイケル・ピネダ
ERA 2.65
QS率 0.75
Michael Pineda Game By Game Stats and Performance - Seattle Mariners - ESPN
相手チームに手の内を読まれ始めるまではエース格と言えた。
16登板で、102イニング、33失点。1登板あたりでは、6.38イニング、2.06失点だ。「6回か7回を投げて、ほぼ2失点で終えてくれるピネダ」は、だいたい好調時のエリック・ベダードと同じことがいえる。これは、逆にいうと、「最近好調だったエリック・ベダードは、開幕当初のピネダに匹敵する快投ぶりだ」という意味でもある。
6回か7回を投げて、ほぼ2失点で降板するピネダ」を勝たせてやるには、ベダードと同じで、ピネダが2失点で降板した後の「残り3イニング または 2イニング」を、3人、あるいは2人の投手が「無失点」で乗り切ることで、かなりのパーセンテージで勝てるのは間違いない。
だが、たとえ1失点でもすると「延長戦」になってしまう可能性を考えなくてはならないので、リリーフ投手の責任はかなり重く、ブルペン投手の疲労はどうしても深くなる。
開幕当初とは違い、相手チームはピネダの投球パターンを厳しくチェックしてきているわけだが、それに対してピネダは、チェンジアップを持ち球に加えることで「壁」を乗り越えようとしている。
若いが、ピッチングに対する情熱のある投手である。


ジェイソン・バルガス
ERA 3.88
QS率 0.56
Jason Vargas Game By Game Stats and Performance - Seattle Mariners - ESPN
いわば精密機械のような天才肌の投手。
3ヶ月でみると、16登板で、104.1イニング、45失点と冴えない。だが、ようやく相性の悪いジメネスから解放された最近の10登板は、69.2イニング 24失点。1登板あたりでは、6.92イニング、2.40失点と、輝いている。イニング数でみても、ヘルナンデスにも負けていない。かなりしっかりしてきている。

要は、バルガスという投手は、他の投手と基準が違うのだ。数字だけで追いかけてはいけない天才ぶりがいつも垣間見える。
好調時と、打たれるときの差が激しい。調子がいいと、完封ベースで投げることさえできる。これは、彼が気分屋だからではなく、何度も書いているように、球審、キャッチャーとの相性の問題だ。相性が悪いと、3から5イニングで、5点前後失点し、簡単に降板してしまうこともある
要は、バルガスは、ピッチングが「精密すぎる」のだ。

とにかく「精密機械のバルガス」の場合、単に気持ち良く投げさせることだけに気をつかうだけで、びっくりするくらいいいピッチングをしてくれる。むしろ、これほどわかりやすいピッチャーはいないだろう。
彼の実力を低く勘違いしている人が多いが、最低でも「月間5登板で3勝2敗」という計算の成り立つ、シュアな先発投手だと思う。
チームが彼に「月間6登板、4勝2敗」を、1シーズン2度くらい実現させたいと思うのなら、チームがバルガスに、キロスやジメネスのようなおかしなキャッチャーをあてがうのを絶対に止めるべきだ。、


ダグ・フィスター
ERA 3.18
QS率 0.56
Doug Fister Game By Game Stats and Performance - Seattle Mariners - ESPN
成長して、一皮剥けたダグ・フィスター」。
単なる5番手投手だと思っている人もいまだに少なくないが、それはまったくの間違い。どこを見ているのだ、と、言いたい。バルガスと同様に、本当に勘違いした人が多い。
16登板で、110.1イニング、自責点39。1登板あたりでみると、6.88イニング、244失点。
防御率3.18は、ア・リーグ17位。オークランドのトレバー・ケイヒルと肩をならべ、テキサスの期待の若手ザック・ブリットンや、あの「ちっこい球場」で打線の援護をもらいまくって10勝もあげているジョン・レスター、完全男マーク・バーリー、タンパベイの好投手デビッド・プライスより、ぜんぜんいい数字だ。

打線の貧弱なシアトルの先発投手というものは、平均投球イニングと自責点が、「6回2失点」なのか、「7回3失点」なのかで、まったく違ってくる、ということを長々と書いているわけだが、今シーズンのフィスターは「ほぼ毎試合7イニング投げられる、堂々たる若手投手」である。これは言うまでもなく、絶賛に値する。
フィスターの欠点は、WHIP(Walks plus Hits per Inning Pitched)が良くないことでわかるように、ランナーを簡単に出してしまうことであり、この悪いクセはまだまだ直っていないのは確かだが、一方では、彼なりのピッチングスタイルが固まりつつあり、ランナーを出した後に粘り強く投げ、ピンチを切り抜けていける手腕がだんだん身についてきている。

「7回を粘り強く投げられる実力の備わってきた若い投手」に勝ちをつけてやる手段など、グダグダ書く必要などない。チームがもっと細かい野球でもなんでも、やれることをやり、十分な点をとってやるだけのことだ。
そんなことも思い浮かばないような監督やGMなら、さっさとクビにしたほうがマシだ。


1登板あたりの投球イニング数
フェリックス・ヘルナンデス 7.17
(5月6月のバルガス 6.92)
ダグ・フィスター 6.88
バルガス 6.51
ピネダ 6.38
ベダード 6.00

1登板あたりの自責点
ベダード    2.00
ピネダ     2.26
(5月6月のバルガス 2.40)
フィスター   244
ヘルナンデス 2.60
バルガス    2.81

7イニング換算の自責点
ピネダ     2.06
ベダード    2.33
(6月のピネダ 2.38)
(5月6月のバルガス 2.43)
フィスター   248
ヘルナンデス 2.75
バルガス    3.03


最後に挙げたいくつかの数字は、シアトルの先発投手にとって、いかに「率」ではなく、グロスの失点数が少ないままマウンドを降りることが大事か、ということを表現したいために挙げてみた。
けしてヘルナンデスがア・リーグで成績の悪いほうに属する投手だ、などと、わけのわからないことを言うつもりではない。

だが、6回か7回、2失点くらいでマウンドを降りるヘルナンデス以外の4人の投手が、長く投げてはくれるものの、ほぼ毎試合3失点しているヘルナンデスより劣っているとでも勘違いして、「キング」だの、「キングスコート」だのと、もてはやしているような、お粗末でショボい野球意識では、いつまでたっても、「このチームが、貧打なりに勝ち続けていくための方法論」に辿り着けない、ということを言いたいのである。







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