September 2011

September 30, 2011

2009年にロブ・ジョンソンが、1シーズンに3回、シアトルの投手をア・リーグ月間最優秀投手に押し上げたのをしみじみ思い出す。特にデトロイトに理不尽なトレードをされる直前の、7月に受賞したジャロッド・ウオッシュバーンを。今回の受賞は、ある意味でウオッシュバーンのリベンジでもある。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年6月7月9月、2010年6月 月間最優秀投手とロブ・ジョンソン効果


予想通り、9月に一度も負けなかったダグ・フィスターが、9月のア・リーグ月間最優秀投手に選ばれた。9月のERA0.53はもちろんメジャートップクラス。WHIPも0.529と文句のつけようがない。
そして被打率は.127。これは、フィスターと並んで9月のナ・リーグ月間最優秀投手に選ばれた、プエルトリコ出身でフロリダの奪三振王、ハビアー・バスケスと並んで、メジャートップの数値らしい。
また、34三振を奪いつつ、3四球しか与えなかったことで得られたK/BBの数値11.4も驚異的な数値だ。
Tigers right-hander Doug Fister named American League Pitcher of the Month. | MLB.com: News

たとえ1ヶ月の成績であっても、彼は、この地球上にたった2つしかないトップリーグであるア・リーグの投手の頂点に立ったのだ。そうそう簡単に達成できることではない。どんな名投手だってキャリアで何度達成できるかわからない快挙のひとつだ。

(とはいえ、クリフ・リーなどは、2008年にクリーブランドで2度(4月、8月)、2010年テキサスで1度(7月)、2011年フィリーズで2度(6月、8月)と、毎年のように受賞しているわけだが(笑) まぁ、フィスターをクリフ・リーと比べるのは、まだ可哀想だ)

あらためて、心から「おめでとう」と言いたい。
Players of the Month | MLB.com: News

この件に関しては、ただ事実を並べただけのMLB公式サイトを見るより、例えば以下のようなサイトを見るほうが面白い。このリンクはアメリカのCBSのサイトだが、ダグ・フィスターの今回の受賞をCBSのMLB担当者たちの一部がどれほど驚いているかがわかって、非常にオモロイ(笑) 「わかってないねぇ、CBSも(笑)」と、ニヤニヤしながら、思い切り楽しんで読むことができる(笑)

特に、4番目にピックアップしたコメントを、しっかり目に焼き付けておくといい(笑)
フィスターのトレードがWIN-WIN? 何を馬鹿なことを(笑) そんな馬鹿げたコメントは、全米担当の立場にあるためにロクに情報集めもせず書き散らす、時間に余裕の無い情報濃度の薄いメディアのアホが、フィスターの登板をまったく見もせず、成績の中身をまるで吟味もせず、ただシアトル時代のフィスターの勝ち負け程度しか見ずに、しかも、デトロイトでの登板結果が出る前、8月初旬あたりに。単なる思いつきをウェブに書き散らしただけの、ただの与太話(笑) ファーブッシュが今すぐ月間最優秀投手になれるかって? 絶対ありえない(笑) ザマミロ。

ついでに言えば、かつてのクリフ・リーとジャスティン・スモークのトレードもそう。
WIN-WIN? まさかっ(失笑) ありえない。ありえるわけがない(笑) どこをどう間違えると、そういう馬鹿げた与太話になるのか、教えてもらいたい(笑)

no one blinks twice when his name gets slotted behind Verlander at No. 2. in the postseason rotation.

It sounds like a joke, but it's not.

Many pitchers had great months, but Fister's symbolized how great the Tigers' chances to reach the World Series have become.

As long as the Tigers didn't give Seattle a future John Smoltz (they didn't), this is the best trade any contender made.
「タイガースはシアトルに『未来のジョン・スモルツ』 (と言えるような、若くて、将来性と実力のある有望株)を放出したわけでもなんでもないわけで (実際デトロイト側の出した投手をシアトルで登板させてみたら、「未来のスモルツ」でもなんでもなかった)、このトレードは (デトロイトの側が、フィスターという「未来のスモルツ」を得た、という意味で) 優勝候補チームのやったトレードの中で、ベストのトレードだ」
Players of the Month: Beltre, Fister - CBSSports.com


すぐにポストシーズンが始まる。ヤンキースの強力打線との対決がダグ・フィスターを待っているわけだが、できればワールドシリーズまで駆け上がって、かつての師匠であるフィリーズの二枚看板、クリフ・リー、あるいは、大投手ロイ・ハラデイとの投げ合いをぜひ見てみたいものだ。

ポストシーズンも頑張れ。ダグ・フィスター。
GO FISTER GO! DO IT!



September 29, 2011

3000本安打を達成する「3つのルート」のうち、まず、3000本安打達成者としては「低打率なグループ」である第1のグループ、「カール・ヤストレムスキー型」の中身を見てみる。(まるでUFOのタイプ分けのようなネーミングだ 笑)

(「3つのタイプ」の分類については、ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年9月28日、3000本安打を達成する方法(2) 3000本安打達成者の「3つのタイプ」を参照)

(1)「カール・ヤストレムスキー型」
カール・ヤストレムスキー (3419本)43歳
エディー・マレー (3255本)41歳
カル・リプケン (3184本)40歳
ロビン・ヨーント (3142本)37歳
デイブ・ウィンフィールド (3110本)43歳
クレイグ・ビジオ (3060本)41歳
リッキー・ヘンダーソン (3055本)44歳
(数字は、通算安打数と引退年齢)

この第1グループに属するプレーヤーの最大の特徴は、カル・リプケン的な身体の丈夫さと、(全員がそうだとはいえないが)「地元の声援を受けて長くプレーすることができたフランチャイズ・プレーヤーである」という点だろう。


第1グループの打者たちは、3000本安打達成者としてみた場合、通算打率が.285前後と、低い。(もちろん、3000本安打達成者としては低いというだけで、そんじょそこらの凡庸な打者よりは、ずっと高い) だから必然的に、通算打率.285あたりの打者が3000本安打を達成するには、大きな怪我が少なく、長いキャリアを実現できた選手であることは必須条件になる。

第1グループの引退年齢をみると、44歳までプレーできた伝説の盗塁王リッキー・ヘンダーソン、歴代連続試合出場記録、連続試合フルイニング出場記録をもつカル・リプケンをはじめ、ロビン・ヨーントを除く全員が、40代までプレーしている。
連続試合出場記録をもつカル・リプケンがこのグループに属していることからもわかるのは、やはり、何事か大きなことを成し遂げることのできる長いキャリアを実現するには、丈夫な身体が必要だというシンプルな話だ。
単純なようだが、やはり身体の頑健さは人並み外れた成果を残すには必要不可欠。大事なことだ。


さらに趣深い特徴は、彼らの多くが最初に入団した球団のみでキャリアを終えた、スペシャルなフランチャイズ・プレーヤーであることだ。

ヤストレムスキー(ボストン)、リプケン(ボルチモア)、ヨーント(ミルウォーキー)、ビジオ(ヒューストン)と、第1グループはまるでMLBの代表的なフランチャイズ・プレーヤーの優良見本市のような趣がある。彼らは「近年の代表的な有力フランチャイズ・プレーヤー」という話題になったら、間違いなく名前が挙がる選手たちばかりだ。(第2グループにも、カンザスシティ一筋でキャリアを終えたジョージ・ブレットなどの例があるが)


3000本安打達成者の中では比較的低打率なバッターである彼らが、「地元の声援があったから、長いキャリアを維持できた」のか、それとも逆に、「長いキャリアが可能なほど、高い才能に恵まれた選手だったからこそ、フランチャイズ・プレーヤーとしてひとつの球団にとどまり続けることが可能だった」のか。
この「長いキャリア」と「地元の声援」の、どちらかニワトリで、どちらがだったのか、さすがに明言できないのだが、少なくとも言えることは、彼らのケースでの3000本安打達成については、「地元の声援」も大きく貢献しただろう、ということだ。

これは野球というスポーツのスピリッツをこれから見たり考えたりする上で、とても深く考えさせられる。
逆にいうと、これから3000本安打という、途方もない大記録に挑もうとしているフランチャイズ・プレーヤーの「放出」を煽りたてているシアトル地元メディアなどは、あまりにも馬鹿で、まったくお話にならない。3000本安打の意味も重みもわかってない。ケン・バーンズのほうがよほど野球というものの本質をわかっている。
時間があれば以下の記事を参照するといい。ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年9月20日、シアトル・タイムズのスティーブ・ケリーが、"The Tenth Innning"のケン・バーンズと共同監督のリン・ノビックが行った「イチローインタビュー」について当人に取材して書いた記事の、なんとも哀れすぎる中身とタイトル。


3000本安打達成者の3つのグループの中では、低打率である第1グループの「ヤストレムスキー型」の達成プロセスが、彼らの「キャリアの長さ」に基づいているという話は、もちろん理にかなった話だ。打率が低いのだから、長いキャリアやらなければ、3000本安打達成には至らなかっただろう。
だが、そういうリクツ上の話はともかくとして、彼らの長いキャリアを支え、3000本安打達成に至らしめた原動力が、単に、彼らの恵まれた非凡な才能や身体の丈夫さだけではなかった、というのが、ヒューマン・ストーリーとして非常に面白い。「記録というものの、別の意味や重み」を考えさせられる。

野球選手に必要なものは、プレー技術だけではないのである。


イチローはこの第1グループに属すプレーヤーではなく、第3グループのプレーヤーだが、2011年9月まで、シーズン全体を棒に振るような長い休養もなく、11シーズンシアトルでプレーしてきて、イチローは、この第1グループの3000本安打達成者たちが発揮した「身体の頑丈さ」、「フランチャイズ・プレーヤー」という点からみても、申し分ない3000本安打達成者候補だ。



3000本安打達成者の打数と安打数の関係 3タイプ分類(修正)

X軸(横軸)=通算ヒット数(1目盛=500本)
Y軸(縦軸)=1本のヒットを打つのに必要な打数=通算打数÷通算ヒット数(1目盛=0.2)

四角=低打率グループ。通算打率.285以下。
三角=中位グループ。通算打率.300前後。
円形=高打率グループ。通算打率.320以上

黒い線はそれぞれのグループの線形近似曲線
資料:Career Leaders & Records for Hits - Baseball-Reference.com


前の記事で「なぜ4打数1安打では絶対に3000本安打を達成できないのか?」を書いた。4打数1安打というレートでのヒット生産では、3000本達成前に、確実に選手としてのキャリアが終わってしまうからだ。
3000本安打を達成には、「かなり若いうち、できればデビュー直後から」、最低でも「3.5打数に1安打くらいのパーセンテージでヒットを打ち続け」、それも「かなり長期間(実際には20シーズン前後)にわたって持続する」ことが、必須条件になる。これらの条件のどれが欠けても、達成は難しくなる。


上の図は、2011年9月段階でMLB歴代ヒット数ランキング110位近辺にいるイチローより多くのヒットを打ったMLB歴代100人ちょっとの打者全員の通算安打数と、それにかかった打数の関係をプロットしたものだ。(もちろんこれからもヒットを打つ現役打者も含まれるから、あくまで暫定的な図だ)

ちょっと複雑な感じがするかもしれないが、横軸はその打者の通算安打数、縦軸は「1本のヒットを打つのに必要だった打数」。
つまり、右にいくほど「通算安打数の多い打者」であり、下にいくほど「少ない打数でヒットを打っている優秀な打者」という意味になる。

また、縦に上下に並んだマーカーを見ていく場合、最も下にある打者が「最も優秀」ということになる。例えば、横軸の2400本のあたりをずっと上方向に見てもらうと、イチロー(MLBのみ)を含め、10数人の打者のデータが縦に並んでいるのを見ることになるわけだが、これは「現役と歴代あわせて、2400本ちょっとのヒットを打った打者のうち、イチローがもっとも少ない打数で2400本打った」ということを意味している。


単に「イチローよりたくさんのヒットを打った打者」を並べるだけだと、データは図の上にまんべんなく分布するだけで、なんの特徴もみられない。特に、3000本をまだ達成してないか、達成できず3000本を目前にキャリアを終えた選手たちには、ハッキリした特徴を抽出することができない。
だが、面白いことに、「3000本安打達成者のみ」と限定すると、とたんに「3つのグループ」にハッキリと分布が分かれるのである。
上の図でいうと、楕円で囲んだ、3つの部分がそうであり、それぞれのグループは、お互いに距離をとるかのように、離れて存在している。
結局3000本安打を達成できなかった選手たちと、これから達成を目指す選手たちは、ドングリの背比べでハッキリした特徴がないが、「3000本安打達成者」には、ハッキリ「3つのタイプ」に分かれる


図の分類によって、3000本安打という名山の登頂に成功するには、3つのルートがあることがわかった。
3000本安打という大記録において、「達成できた選手」には特徴がハッキリあり、「そうでない選手」にはハッキリした特徴がないのは、実は、「若いうちから『3000本安打を達成するための3つの特定ルートのどれか』を着実に歩みながら、長いキャリアを過ごせた選手」と、達成のためのルートを歩めなかった選手の「差」が存在するからだ。

(1)通算打率.285以下 「カール・ヤストレムスキー型」
1本のヒットを打つのに、3.5以上の打数が必要。通算打率に換算すると、.285以下。3000本安打達成者の中では、低打率グループといえる。

(2)通算打率.300前後 「ピート・ローズ型」
1本のヒットを打つのに、3.3くらいの打数が必要。通算打率に換算すると、ちょうど.300あたり。3000本安打達成者の中では中位の打率グループになる。

(3)通算打率.320以上 「スタン・ミュージアル型」
1本のヒットを打つのに、およそ3.1以下の打数でヒットを量産できる安打製造機。通算打率に換算すると、.320から.330以上が必要。3000本安打達成者の中では高打率グループ。





September 27, 2011

3000本安打達成者の打数と安打数

X軸(横軸)=通算ヒット数(1目盛=200本)
Y軸(縦軸)=通算打数(1目盛=1000打数)
黒い直線は線形近似曲線
赤い直線は、上が4打数1安打のライン、下が3打数1安打のライン。
資料:Career Leaders & Records for Hits - Baseball-Reference.com

これは、過去から現在にいたるまで、2011年9月時点で3000本安打を達成している全打者の安打数と通算打数を図にプロットしたもの。

見れば、ひと目でわかるように、3000本安打を達成するということは、イコール、「たいていの場合、3.5打数でヒットを1本打つ以上のパーセンテージで、ヒットを打つことが必要になる」ということを意味する。

数多くのヒットを打った記録なのだから当たり前といえば当たり前の話ではあるが、実は、これはこれでなかなか面白い。
なぜ4打数1安打では3000本安打は達成できないのか、考えてみよう。


仮に、4打数1安打を延々と継続していく、とする。
現実無視の計算では、12000打数で3000本安打を達成できる。それに必要な時間は、1シーズンの打数を仮に「フル出場162試合×4打数=648打数」とすると、12000÷648≒18.5で、約18シーズン半での達成になる計算だ。
つまり、のらりくらり、19シーズンほど野球選手をやっていれば、4打数1安打のバッターでも20年かからずに3000本安打を達成できてしまう、という「机上の」計算になる。

だが、もちろんそれは空論だ(笑)

当然、四球やデッドボール、犠牲バント、犠牲フライなどによって、打数は打席数より少なくなることを考慮に入れるべきだ。
例えば、キャリア20年で569本のホームランを打った「耳栓」スラッガー、ラファエル・パルメイロは、10472打数でヒット3020本と、ギリギリで3000本安打を達成した打者のひとりだが、通算打席数は12046。四球1353、死球87、犠牲フライ119などによって、全打席数のうち、約13%が打数にならなかった。
Rafael Palmeiro Statistics and History - Baseball-Reference.com
(なお、パルメイロはミッチェル報告書でステロイド使用を告発されたプレーヤーのひとり。3000本安打を達成者ではあるが、パルメイロと野球賭博で永久追放になったピート・ローズは野球殿堂入りすることはないだろう。 資料:The List of Players Named in the Mitchell Report - ABC News 資料:Palmeiro docked 10 days for steroids - MLB - ESPN

また、パルメイロと同じように3010本と、ギリギリで3000本安打を達成したアベレージ・ヒッター、ウェイド・ボッグスは、キャリア18シーズンの通算打席数10740に対し、通算打数は9180で、打席数の約14.5%が打数にならなかった。
Wade Boggs Statistics and History - Baseball-Reference.com


そんなわけで、いま仮に「打席数の10%が打数にならない」と仮定すると、12000打数を打つためには、13333以上の打席数が必要になる。
これは、「シーズン162ゲーム、1ゲームあたり4打数をフル出場する」と仮定しても、13333÷162÷4≒20.6で、4打数1安打で3000本安打を達成するには、約21シーズンもかかる計算になる。
これが10%の仮定をもう少し上げて「13%」にすると、必要な打席数は約13800に増加してしまい、記録達成に必要な年数は21.3と、10%の時より1年増えて、約22シーズンかかる計算になる。


もちろん本来は、打数減少の大きな原因であるこの「四死球、犠打などによる打数の減少」だけでなく、「打数を減少させてしまう3000本安打の阻害要素」は、他にも、現実の野球選手のキャリアにたくさんある。
例えば、怪我などによる休養期間は誰にでもありうる。骨折や靭帯損傷、筋肉の断裂などの大きな怪我なら長期の休養だろうし、デッドボールや捻挫などによる短期の休養もありうる。さらに誰しも経験するスランプもある。(4打数1安打程度の打者のスランプはおそろしく長いことだろう) また、キャリア晩年のベテランになってくれば、シーズンフル出場ともいかず、チーム側が選手のリフレッシュのために休養させるゲームをつくる。
だが、しばらくは机上の空論を楽しみたいので、それらすべては「無いこと」にしてしまおう(笑) 

だが、「怪我」も、「スランプ」も、「休養ゲーム」さえも無いことにしてしまうという、現実を徹底無視した仮定をしたとしても、それでもなお、3000本安打達成には20年どころか、21年とか、22年とか、かかる計算になるのである。
これらの「打数の減少をまねく、あらゆる条件」を、きちんと計算に組み込むなら、実際には4打数1安打による3000本安打達成には、最低でも23シーズン以上、実際にはもっとかかることだろう
いやはや、気が遠くなる(笑)

23年以上とか、簡単に書いてしまったが、これはメジャーの選手のキャリアとしては、おそろしく長い。
というのも、高卒投手がいきなり1軍で登板したりする日本の野球のように、18歳で1軍デビューできるのならともかく、メジャーでのデビュー年齢はたいていの場合、20代半ばになるのが普通だからだ。
たとえ、もし仮に、日本の大卒プレーヤーのように、22歳でメジャーデビューさせてもらえて、しかも、いきなりスタメンに定着し、それから20数年フルシーズン使ってもらえたと、殿堂入り選手レベルの無理矢理な仮定をしたとしても、それでも、4打数1安打で3000本安打を達成できるのは45歳以降、ということになる。
実際には22歳でデビューなんかできないし、デビューできたとしてもいきなりスタメンとか、なかなかありえないわけだから、達成年齢はもっともっと遅くなる。

現実を無視せず、多少なりとも現実的な計算をしていくと、25歳メジャーデビューの選手が4打数1安打をひたすら続けて3000本安打を達成できるのは、23年たった48歳以降、ということになってしまう(笑) 
これではどうみても、3000本安打を達成する前に引退しなくてはならなくなる。


つまり、言いたいのは、3000本安打という大記録の達成にとって、「年齢」という条件は、あまりにデカすぎて無視できないどころか、決定的条件ですらあるということだ。

別の言い方をすると、3000本安打という偉業を達成できるか否かは、実は、その選手のキャリア序盤に既に決まっている、と言い換えてもいい。
つまり、非常に長い期間に渡ってハイ・アベレージな安打生産を維持しなければならない過酷な記録だけに、もしもその選手が、MLBデビュー後のキャリア序盤にシーズン100安打くらいの低い成績が数シーズン続いたとすれば、もうその時点で既に3000本安打達成に必要なキャリアの長さ自体が足りなくなってしまっている、という意味で、その選手の3000本安打達成は難しくなってしまうのだ。
3000本安打という記録は、一見すると、ただただ長年にわたって安打数を積み重ねた記録のように思われがちだが、実はそうではない。むしろ「キャリア序盤にどれだけいきなりメジャートップクラスの成績を残せたか」という、瞬発力勝負である


やはり3000本安打は、4打数1安打のバッターが、ただただ長年野球をやっても達成できる記録ではないのだ。「ひたすら積み上げれば、いつか達成できる記録」ではなく、むしろ、3000本安打という記録は、「デビュー直後すぐに分かれ目がやってきて、デビュー直後の若いうちに幸福すぎるキャリアを実現することができた『約束された、ほんのひとにぎりの選手』のみがトライ可能な、未曾有の大記録」なのだ。


無限ではない選手寿命の範囲内で、3000本安打を「20年程度」で達成するためには、「四球などによる打数の減少」、「怪我」、「スランプ」、「休養」など、あらゆる障害物を含めて考えると、3.5打数でヒットを1本打つ以上のハイ・アベレージがどうしても必要だ。
そして、本当の問題は、ほんの数シーズン、3.5打数でヒット1本打ち続ければ達成できる記録ではなく、そういうハイ・アベレージ期間を最低でも20年近く継続しなければならない、ということだ。
それは、打率でいうと、最低でも.285以上を長期間継続しなければならないし、実際には達成者の大半の通算打率は、3割を超えている。
(次の記事で書くが、3000本安打達成者には3つくらいの達成パターンがあり、通算打率でいうと、(1).285あたりの達成者、(2).300あたりの達成者、(3).320以上の達成者ということになる。1番目のタイプの典型はカール・ヤストレムスキー、2番目のタイプの典型はピート・ローズ、3番目のタイプの典型はスタン・ミュージアル



だが、本当の話(笑)は、実はここからだ。


なぜなら、ここまで書いてきたことは、あくまで、「20年前後の長い長いキャリアで、3.5打数1安打以上をキープし、やっとの思いで3000本安打を達成する」という、「ごく野球常識的な3000本安打達成」の話でしかないからだ。

ハッキリいって、3000本安打自体は、並レベルのプレーヤーには絶対に達成不可能な大記録だし、たとえ名選手と呼ばれるプレーヤーであっても、なかなか達成できない超絶的な大記録ではあり、達成者は超のつく名選手、殿堂入り選手ばかりなのだが、言い方を変えれば、けしてわずか数人だけが達成できた記録ではなく、「20年にもわたる長い歳月をかけ、達成するような、地道な3000本安打達成のプロセス」という意味でなら、今まで両手両足では足りない数、つまり、それなりの数の選手たちが達成できてきた記録だ。

これまでの3000本安打達成者の大半は、20歳前後と、非常に若くしてMLBデビューしており、キャリア晩年まで「特別なプレーヤーだけに許された長い時間」をかけて3000本安打を達成している。
20年にもおよぶ長い時間をかけることを許されていた、という意味では、彼らは野球100数十年の常識を越えてはいないのである。
MLB歴代ヒット数ランキング上位打者
メジャーデビュー時の年齢

ピート・ローズ 22歳
タイ・カッブ 18歳
ハンク・アーロン 20歳
スタン・ミュージアル 20歳
トリス・スピーカー 19歳
キャップ・アンソン 19歳
ホーナス・ワグナー 23歳
カール・ヤストレムスキー 21歳
ポール・モリター 21歳
エディ・コリンズ 19歳


だが、である。
もしあなたが、野球の歴史も、常識も超え、28歳で、遅咲きのメジャーデビューを果たした後、12年か13年くらいの、「とてつもなく短いキャリア」の中で大記録3000本安打を達成しようと思ったら、選手としてのライフプランをどういう形に「設計」しておかなければらないか、考えたことがあるだろうか?

20歳の若さでメジャーデビューし、通算打率.331、キャリア22年で3630本ものヒットを打ってヒット数歴代4位になった中距離ヒッター、スタン・ミュージアルでさえ、3000本安打を達成したのは、彼が今のイチローと同じ37歳になった1958年5月であり、達成には17シーズンもの長いキャリアを要した。達成時前後の彼の通算打率は、なんとおよそ.345前後もあったのだが、そんなハイ・アベレージの選手でも3000本安打達成に17年もかかったのである。 (逆に言えば、20歳の若さでデビューして高打率を維持できた彼だからこそ、37歳で達成できた、ともいえる)
大打者スタン・ミュージアルでさえ17年もかかった記録を、イチローはそれをずっと短いシーズン数で達成しようとしている。この意味を、よく考えてもらいたい。


本来なら、イチローの3000本安打達成への道すじという話になるはずの3000本安打という話題に、わざわざ「4打数1安打ではなぜ達成できないのか?」という遠回りな入り方をしたのは、3000本安打という記録が、実は「デビュー当初から選ばれた選手のみがトライできる、偉大な記録であること」、そして日本の野球を経由した後でMLB3000本安打にトライするイチローの3000本安打への挑戦は「イチローだけしかなしえないとハッキリ言い切れるような、これまで3000本安打を達成してきたごく一般的な名選手レベルを、さらに超えた、超・超人的な道のり」であることを、あらかじめ理解してもらいたいからだ。

こういうことを何も考えもせずモノを語る人の、なんと多いことよ(笑)

では、次回。

クリーブランド戦に先発したダグ・フィスターが勝ち投手になるのはとっくにわかりきっているので、ゲーム終了を待たずに「無四球完封」という内容の記事で書いていたら、8回裏にデトロイトがあまりにも点を取りすぎてしまって大差がついてしまい、9回表にフィスターが登場してこなかった(笑)

前の登板で3イニングだけの登板でラッキーな10勝目を挙げていたダグ・フィスターだが、クリーブランドを109球(81ストライク)で散発3安打、無四球9奪三振で8回を無失点に抑えて、まったくあぶなげなく11勝目。
今日のストライク率74.3%はちょっと驚異的。これじゃ、まるでクリフ・リーだ。(笑)
これでERAは、2.83。タンパベイのジェームス・シールズに並んで、ア・リーグERAランキング3位に躍り出た。
2011 MLB Baseball Pitching Statistics and League Leaders - Major League Baseball - ESPN
これで9月は5勝0敗、自責点わずか2点。他の有力候補が誰かは見てないのだが、9月の月間最優秀投手賞受賞は固いと見た。
Cleveland Indians at Detroit Tigers - September 26, 2011 | MLB.com Classic


今日のフィスターは、なんといってもスライダーのキレが凄まじかったのに加えて、あらゆる球種をコントロールできていたのが素晴らしい。
7回表に、クリーブランドのクリーンアップを3者三振にしたイニングなどは実に圧巻のピッチングで、下に挙げたトラビス・ハフナーの三振などは、ちょっとロイ・ハラデイばりの「4球ピッチ」だった。

2011年9月26日 投手ダグ・フィスター トラビス・ハフナー 三振

初球が、アウトコース低め、コーナーにピタリと決まるカーブ。2球目が、アウトコース一杯のハーフハイトのチェンジアップ。3球目は、インコース一杯のスライダー。そして、最後に内寄りの低め一杯に決まるストレートで、ハフナーはまったく手が出ず、見逃し三振。
カーブチェンジアップスライダー、そして、ストレート。変幻自在のパターンだ。


同じパターンの配球を、8回表の1死2塁、得点圏にランナーを背負った場面から。打者は、エゼキエル・カレーラ

2011年9月26日 投手ダグ・フィスター エゼキエル・カレーラ 三振
外一杯のチェンジアップ、高め一杯のスライダー、ど真ん中のストレート、最後は低め一杯のカーブで、空振り三振。力で押すストレート以外、変化球がどれもこれも一杯に決まっている。
チェンジアップスライダー、そして、ストレートカーブ
上に挙げたハフナーの三振の配球順序と違うのは、ハフナーでは最初にカーブだったが、カレーラには最後にカーブだった、この1点だけ。最初に使ったカーブを、こんどは最後に付け替えたわけだ。
チェンジアップは外いっぱいに「カウントを稼ぐ」。スライダーとカーブは、低めいっぱいに使い、「決め球にも、カウント稼ぎにも使える」。そういった構造材としての変化球で、壁面ともいうべきストレートを効果的に演出して「見せ球」にして、何度もこのブログで書いてきた「4球ピッチング」を遂にモノにしたのがよくわかる。


今のダグ・フィスターなら、基本的に、どの球種でもゾーンぎりぎりに決められるし、どの球種でもストライクがとれて、どの球種でも三振がとれる。まさに、投手として理想的



September 22, 2011

いやー。イチローがアメリカで成功できた理由を見た。
あの空気の読めなさ加減、ハンパない(笑)
Seattle Mariners at Minnesota Twins - September 21, 2011 | MLB.com Classic

今日のミネソタの先発ピッチャー、ケビン・スローウィーは、6回2アウトまで、ノーヒットノーランにシアトルを見事に抑えていた。だが、そのあと出てきたバッターが、どうにもいけなかった(笑)

イチロー

イチローのこれまでの対スローウィーは9打数1安打5三振なのだが、もちろん、そこはイチロー、空気なんか読まない(笑) 遠慮なく、アウトコースのカーブをセンターに抜けそうな絶好のゴロにして、かろうじて内野手が追い付いての内野安打で見事にノーヒット・ノーランをぶち壊した(笑)
するとスローウィー、気落ちしたのだろう、その後二塁打を2本続けて打たれて2失点するわ、次のイニングには3失点するわで、ノーヒット・ノーランどころか、負け投手になってしまった(苦笑)
今シーズンここまで0勝6敗で、ようやくスローウィー初勝利と思われた勝ち星も泡のように消え、結局7連敗。ミネソタも11連敗(笑)
Kevin Slowey: From 2007 to 2011, Facing current players for Seattle Mariners, Bats LH or Both, Order by PA desc, then by Name asc

非常に今日は痛快だ。イチローが日本を飛び出し、アメリカで成功できた理由のひとつが、たぶんこの「空気の読めなさ」だろう。
誰がなんと言おうと、自分を貫く。メディアであれ、誰であれ、何か言われたからって、自分のやり方を曲げない。打席に入るときは名曲「天城越え」(笑)
そう。何か言いたいやつは言わせておけばいいのだ。


日本流の謙遜は通じない場所だが、自分を貫き通すことは、できるようで、なかなかできない。ついつい、相手の価値観というやつに身を委ねてしまう。
忘れている人が多いわけだが、イチローは「日本を飛び出して戦っている日本人」である。和をもって尊び、なんてことをモジモジいってるようじゃ、勝てない。

イチローにはいつまでも「元気のいいガイジン」でいてほしいものだ。



September 17, 2011

たしかつい先日、シアトル・マリナーズがGMジャック・ズレンシックと複数年で契約を更新したと聞いて、「やれやれ。よかった」と、胸を撫で下ろしたものだ。
なぜなら、「城島問題」をはじめ、「シアトル・マリナーズと自分の意見が一致する」ということは、間違いなく「自分の意見が間違っている」、もしくは「自分がまったくの見込み違いをしている」ことを意味するからだ(笑) このブログは、シアトル・マリナーズの馬鹿げたチーム運営と180度異なる意見を持っていることに、常に誇りをもっている。


さて、この数字が何を意味するか、わかるだろうか?

2011年9月(61勝85敗)
22,029 月曜日
18,306 火曜日
20,327 水曜日

資料:2011 Seattle Mariners Schedule, Box Scores and Splits - Baseball-Reference.com

酷いものだ。
これは2011年9月にセーフコで行われたヤンキース3連戦の観客動員数だ。

以下に、1999年から2011年までの間のセーフコで行われたヤンキース戦の観客動員数を、「曜日別のグラフ」として挙げ、また、それぞれのシーズンの「観客動員数」「何曜日から行われたゲーム」か、ヤンキース戦直前時点での「チーム勝敗数」を、それぞれ挙げておく。
今年の初戦の先発はヘルナンデスだったが、かつて一度説明したことだが、セーフコの動員数はヘルナンデスが登板したくらいで増えはしない。キングス・コートだの言い出したところを見ると、チームはなにか「ヘルナンデスをもっとスターにすれば観客増をはかれるかもしれない」とか勘違いしているようだが、ヘルナンデスにはもともと観客動員力など、ない
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年9月14日、平日月曜から木曜のスタジアムに陣取るコアな観客層が落胆し、拒絶した「2009年8月のシアトル野球」。(2)
あくまで対戦相手が人気球団であるとか、ロイ・ハラデイやクリフ・リーのクラスの大投手とのマッチアップだったりとかするのでないかぎり、観客は大幅には増えないのが、近年のセーフコだ。

そのセーフコで、ドル箱のはずのヤンキース戦に客が入らなくなる事態が、どういう意味か、わかるだろうか?

説明するまでもないだろう。
この、見るも無残な観客減少は、過去10数年の例からみてわかるように、「ア・リーグ西地区の優勝争いにシアトル・マリナーズがまるっきり関わっていないから」ではなく、「シアトル・マリナーズが、負けすぎているから」でもなく、「週末のゲームでないために、観客が集めにくいから」でも、「天気が悪かったせい」でも、「MLBの観客動員全体が減少しているせい」でもない。
(「イチローの成績に例年どおりの輝きがないために、シアトルのコアなファンがスタジアムに来る気が起きない」という理由なら、それは十分ありうる話だが)

ジャック・ズレンシックがGMになってからのセーフコの観客減少は、ついにここまで来たのだ。

来年の球団予算がどうなるか、考えるまでもない。どうせシアトルのチームマネジメントも、無邪気なマイナー好きもチームオタも、来年動かせる予算自体がこの観客動員減少でこの先どのくらい緊縮していくか、わかってないことだろう。

再建がいけないというのではない。むしろ、ズレンシックが就任した2009年からきちんと「建設的な徹底破壊に始まる再建」に手もつけないでおいて、勝手にクリフ・リーだ、ショーン・フィギンズだ、ジャック・ウィルソンだと中途半端に選手を連れてきて、ヘルナンデスにもグティエレスにも複数年契約をくれてやり、ズレンシックが好きなようにやった挙句に大失敗、次にはクリフ・リーも手放して「超守備的野球」とかぶちあげて、これまた大失敗。その挙句、無駄に金を使いすぎてペイロールが硬直化して身動きとれなくなると、こんどは手放すべきでないフィスターを手放しておいて、「若手中心」とか、ぬかす。

こいつはホンモノの馬鹿だ。

誰も、「GMが自分の好きな選手を見せびらかすだけの、安っぽい草野球」なんて、見たくない。

観客は「GMの好きな選手がプレーするのを見るために、スタジアムに足を運ぶ」わけがない。言うまでもなく、観客は「観客自身の好きな選手やプレーを見るために、金を払い、スタジアムに足を運ぶ」のだ。

こんなこと、そこらのガキでもわかる。


なのに、こんな単純で当たり前なことさえ理解できない無能なズレンシックは、フィスターを無意味に手放したのと同じように、チームの宝である「観客」を、自らの手で手放したのである。

自分から観客を手放す。
これ以上最悪かつ深刻な重罪は、野球ではありえない。


チームの活力の源であり、収入源である「観客」を、GMの度重なる大失態でこれだけ大量に手放しておいて、いまさら「若手主体」などという「その場をとりつくろうだけの、まやかしのコンセプト」など、誰も信用しないし、もう来シーズン以降、チームのペイロールがマトモに機能できるわけがない(笑)


観客はとっくに、自己の内側に向かって急速に収縮を続けるだけの白色矮星シアトル・マリナーズ、あたかもGMが自分のためだけに野球をやっているかのようなシアトル・マリナーズに背中を向けている。

ヤンキース戦観客動員数推移1999-2011

上のグラフの見方
丸い点が入った太線(5本)がすべてズレンシック就任以降のヤンキース戦観客動員数
太い黒線(実践、破線)が2011年
太い赤線(実践、破線、点線)が2009年と2010年

2011年5月(24勝25敗)
33,715 金曜日
37,354
37,290

2010年7月(34勝50敗)
37,432 火曜日
39,645
42,558
42,069

2009年8月(60勝54敗)
33,585 火曜日
36,769
44,272
45,210

2009年9月(76勝71敗)
28,395 金曜日
43,173
35,885

2008年9月(54勝85敗)
39,518 金曜日
44,473
42,677

2007年5月(15勝15敗)
44,214 金曜日
46,153
46,181

2006年8月(56勝68敗)
42,454 火曜日
41,634
40,817

2005年5月(15勝22敗)
37,814 月曜日
35,549
38,400

2005年8月(55勝74敗)
41,731 月曜日
37,773
46,240
39,986

2004年5月(12勝17敗)
46,491 金曜日
46,454
46,589

2004年8月(43勝71敗)
46,359 金曜日
46,530
46,335

2003年5月(20勝11敗)
44,979 火曜日
43,753
48,000

2002年4月(17勝5敗)
45,814 金曜日
46,047
46,115

2002年8月(74勝47敗)
46,033 金曜日
46,174
46,086

2001年5月(31勝9敗)
45,794 金曜日
45,880
45,953

2000年4月(2勝1敗)
40,827 金曜日
45,261
45,488

2000年8月(71勝59敗)
45,077 月曜日
44,105
44,962

1999年8月(53勝54敗)
45,190 木曜日
45,262
45,202
45,195



地区優勝おめでとう、ダグ・フィスター

デトロイト・タイガースは、24年ぶり4回目の地区優勝だが、1994年に「3地区制」が導入され、98年にア・リーグ東地区からア・リーグ中地区に所属が変わってからの話でいうと、悲願の初優勝ということになる。
というのも、デトロイトが前回地区優勝した1987年は、94年に「3地区制」が導入になる以前の優勝であり、87年優勝当時のデトロイトは、69年に導入された「東西制」のもとで、ア・リーグ東地区の所属だったからだ。

ちなみに、1970年にシアトル・パイロッツが、当時メジャーの球団が無くなってしまっていたミルウォーキーにフランチャイズを移して創設された「ミルウォーキー・ブリュワーズ」は、創設当初、東西制のもとでのア・リーグ東地区所属チームであり、94年に3地区制が導入されたときに、ア・リーグ中地区に移動している。
そして98年に、タンパベイがア・リーグ東地区に出来て、今日優勝が決まったデトロイトがア・リーグ東地区からア・リーグ中地区に移動になったことで、ブリュワーズはこんどはナ・リーグ中地区へ移動した。
(ちなみに、もともとミルウォーキーという街は、66年までブレーブスがフランチャイズにしていた街で、66年にブレーブスがアトランタに移動してしまったことで、数年はメジャーのチームが無かった。98年にデトロイトがア・リーグ中地区に来ることになったときに、「ア・リーグ中地区のどのチームをナ・リーグ中地区に移動させるか?」という議論になったが、ミルウォーキーはもともとナ・リーグのブレーブスがあった街だけに、当初候補に挙がっていたロイヤルズではなく、もともとナ・リーグの野球に親しみのあるミルウォーキーのチームをア・リーグからナ・リーグに移動させるという案にあまり抵抗がなかったのは、そのせいもあるらしい)

今年優勝しそうな勢いのミルウォーキー・ブリュワーズだが、1982年の唯一の地区優勝(同年リーグ優勝)は、1987年のデトロイト・タイガーズとまったく同様、「ア・リーグ東地区所属時代の優勝」であって、98年にナ・リーグ中地区に移動して以降は、一度も優勝していない
だから、今年デトロイトとミルウォーキーが優勝することになれば、両リーグとも中地区は、「デトロイト、ミルウォーキーが98年のエクパンジョンで現在の所属地区に移動してからは、揃って初の優勝を成し遂げる」という、なんとも珍しい現象が起きることになる。



フィスターが加入して以降、先発投手陣の柱がしっかりしたことによる無傷の12連勝が効いて、2位クリーブランドも3位ホワイトソックスも、むしろ引き離される一方の圧倒的優勝になった。外野手を補強したくらいでなんとかなると思ったクリーブランドはご愁傷様(笑)
24年ぶりの優勝を決めたデトロイト公式サイトのこのゲームのヘッドラインは、Fister leads the way as Tigers clinch Central。フィスターがこの優勝を導いたと、手放しで褒め称えた。

ポストシーズンにバッティングのいいヤンキース、ボストンあたりをバーランダー、フィスターでねじ伏せるのを見るのが非常に楽しみだ。
Detroit Tigers at Oakland Athletics - September 16, 2011 | MLB.com DET Recap

Detroit Tigers at Oakland Athletics - September 16, 2011 | MLB.com Classic


今日もダグ・フィスターは完璧。移籍後7勝目。91球で8回を投げ切ってしまい、ブルペンでいちおう肩を温めていたブルペン投手ホアキン・ベノワの出番はなかった。グラウンドアウトが9.フライアウトは5。いつものようにゴロアウトで非力なオークランドを翻弄した。
これでフィスターの登板イニング数は197.1。次の登板で200イニング登板達成は確実。9月に入って、ERA0.80、2勝負けなし。今月あと2回か3回登板し、もしもそれぞれのゲームを1失点以内で行けて勝ち投手なら、今月のア・リーグ月間最優秀投手もありうる
Doug Fister Stats, Bio, Photos, Highlights | tigers.com: Team

球種としては以下の通りで、いつもの球種だ。カーブがよかったのは前回通りだが、前回の登板と比べると、やや変化球の割合が多かった。これには理由がある。
4シーム 35%(前の登板 35%)
2シーム 25(33)
カーブ  15(19)
スライダー 12(5)
チェンジアップ 12(7)

ま、いっても、優勝自体は想定内。
むしろ期待はダグ・フィスターのポスト・シーズン。


今日の球審はEric Cooperだったが、このアンパイアはとにかくゾーンが高い。もともと通常のアンパイアより、ゾーンがボール2個くらい高いのだ。(下の図の青線がEric Cooperのゾーン)

Eric Cooperのストライク・ゾーン

Eric Cooperよりゾーンの高いところをとる球審といえば、MLBで最も高いところをストライクコールするGary DarlingDan Lassognaか、ゾーン全体が広大なことで知られるJeff Nelsonくらいで、約100人いるMLBのアンパイアのうち、ほんの数人しかいない。

この球審のゾーンが高いのは、突然今日のゲームでだけ広くなったわけではなく、あくまであらかじめわかっていたことだ。(ちなみに、普通はボール1個か2個分広い左バッターのアウトコースが、こんなに狭い球審も珍しいわけだが、これもこのアンパイアのクセ。よく知られていて、想定内)
だからこそ、身長の高いダグ・フィスターが打者を見おろすように投げる縦変化のカーブが非常に効果的になるし、変化球をいつもより多用したピッチングは実にクレバーだったといえる。
逆に、オークランド先発のトレバー・ケーヒルは低めにシンカーを集めるのが持ち味の投手なだけに、こういうゾーンの高い球審は合わない。もっと大量失点していてもおかしくなかった。
Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool



September 14, 2011

2005年のセ・リーグ最多勝投手、阪神タイガースのヴェテラン下柳剛投手が実質来季の戦力外と考えられているらしい、という記事を読んだ。
MLBでも日本でも、ダメ捕手城島の被害を直接受けるのは、やはり投手自身なのだと、あらためて痛感する。下柳投手の理不尽な処遇に同情を禁じ得ないのはもちろんだし、現場で起きている現象の根にある原因をきちんと見抜く目のない球団に呆れもする。
虎投支えた下柳…戦力外「まだまだ現役で」 (サンケイスポーツ) - Yahoo!ニュース

ダメ捕手城島とバッテリーを組まされる、ということは、投手にしてみれば、マイナス要素でしかない
シーズン成績を落とされる程度で済めば、まだいいほうだ。場合によっては、選手生活そのものを脅かしかねない。城島を嫌って他球団に移籍できる余裕のある投手は1年かそこら我慢すれば済むかもしれないが、そうでない投手にしてみれば死活問題だ。
ホームランを打って助けてくれるどころか、打率はスタメン最低レベル、併殺打だらけで、配球はダメ、キャッチングもダメ、セカンドにスローイングすれば暴投だらけで盗塁阻止もたいしたことはない。

だが、不幸なことに、野球の現場を知らない球団フロントやネクタイ族の人々、あるいはキャッチャーが投手成績に直接与える多大な影響に理解の乏しい監督やジェネラル・マネージャーには、「城島問題」の深刻さがまるで理解されず、ダメ捕手と無理につきあわされる投手だけが、長期間にわたって投手成績やメンタルに甚大な被害をこうむるハメになる。

シアトル・マリナーズで長年我慢させられてきた投手陣のうち2009年当時の主力3投手(ヘルナンデスウオッシュバーンベダード)が「城島とのバッテリーを一斉に拒否する」という思い切った行動に出たのも、「配球からなにから、ダメなのがわかりきっているキャッチャーに、自分のキャリアを台無しにされたくない」というシンプルな発想から、選手が自分から動いた結果だ。もしあのとき生ぬるいシアトル・マリナーズのチームサイドにまかせておいたら、ああいうおかしな事態は永遠に解決しなかっただろう。
その結果、城島がいなくなった翌年、ヘルナンデスがあっさりサイヤング賞に輝くことになった。こうした経緯は、ダメ捕手の阪神移籍後の体たらくを通じて、日本のプロ野球ファンの間でも明白な事実として知られるようになったので、もはや詳しく述べるつもりもない。
今年はともかく、2010年の阪神は、城島さえいなかったら優勝できる戦力が整っていたと断言できる。シーズン終盤からCSにかけての重要すぎるゲームでのヘボ・リードには、もはや憐みすら感じたものだ。
例:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年9月30日、逆転3ランを打った村田が「なぜ、あれほど勝負のかかった場面で、高めのクソボールを強振できるのか?」についてさえ、何も書かない日本のプロ野球メディア、野球ファンの低レベルぶり。


下柳投手は、誰にでもやってくる年齢による衰えもあるとはいえ、今シーズンの扱われ方には納得いかない部分が多々あるだろう。
長年なじんできて、今後もバッテリーを組む機会があればと願っていた矢野捕手が城島獲得をきっかけに引退に追い込まれたこと。新参の城島とバッテリーを組まされた不本意な成績。そして、シーズンもまだ終了してないというのに、「戦力外扱い」。
あらゆる点で、チームを支えてきた名選手のキャリア終盤の扱いとは思えない処遇の酷さには、同情を禁じ得ない。



下柳投手の今シーズンの登板は6回。うち4回が城島とのバッテリーで、初回と最後が藤井捕手だ。
開幕スタメンが危ぶまれた城島が、東日本大震災でプロ野球の開幕時期がズレこんだ偶然によって開幕に間に合った(もちろん、実際には「間に合って」など、いない。「間に合ったフリ」をし続けていただけ。故障は完治などしていなかったし、さらには、無理にプレーし続けることで故障をより悪化させたのは間違いない)
ちなみに、4月17日に下柳投手が、当時控え捕手だった藤井捕手とバッテリーを組んだ理由については、おそらく、今シーズンは怪我明けシーズンになる正捕手城島にチームが強制的に休養日を設定していたためだろう。(そうでもなければ、間違いなく城島は毎日マスクをかぶっていたはず)2009年にロブ・ジョンソンを指名捕手にしていたヘルナンデスのように、下柳投手が藤井捕手を指名したわけではないだろうとは思うが、情報を細かく追跡しているわけではないので、その辺はよくわからない。
4月17日 7回無失点 キャッチャー藤井
4月24日 7回自責点2 城島
5月4日  5回自責点2 城島
5月12日 2回2/3自責点2 城島
5月24日 4回自責点2 城島
6月6日 2回1/3自責点3 藤井
参考資料:阪神タイガースの先発投手とキャッチャー 全リスト - プロ野球データFreak

下柳投手とのバッテリー
藤井 9回1/3 自責点3 被安打12 与四球4 ERA 2.89
城島 18回2/3 自責点8 被安打17 与四球8 ERA 3.86



阪神が今年最も月間ERAが悪かった月は、城島が正捕手だった5月の3.41だ。城島は6月5日のオリックス戦までプレーして、リタイヤしている。9月はさすがに猛暑の夏を越した阪神投手陣全体の疲労ぶりが目立つが、藤井捕手に変わってから8月までの阪神のチーム防御率は右肩下がりに改善し続けた。
プロ野球 ヌルデータ置き場 阪神 - 投手成績一覧(月別) -

5月の3.41というチーム防御率が、高いか低いかについては、論じるまでもない。今年から「飛ばない統一球」を採用したセ・リーグで、チーム防御率2点台のチーム、ERA2点台の投手が続出している。3点台なかばなんていう防御率では首位に立てないに決まっているのが、超守備的シーズンといえる2011年のセ・リーグだ。
2011年は、マートンとブラゼルを中心にチーム全体で馬鹿みたいに打てたことで、城島がいくらチーム防御率を崩壊させていても、それを覆い隠して勝てた2010年とでは、野球そのものが違う。(もちろん、そのツケは、シーズン最後に城島のヘボリードで優勝を逃すという形で阪神球団自身が払うことになった)

2011年阪神チーム月別ERA

2011阪神の主な先発投手の月別防御率
(数字は左から、3・4月、5月、6月、7月、8月)
能見 4.05 2.87 2.17 3.24 1.43
岩田 3.79 1.71 2.05 2.36 1.88
久保 2.25 4.10 36.00 6.23 1.65
メッセンジャー 2.53 2.25 3.24 1.50 2.63
スタンリッジ  1.38 5.06 1.24 0.55 3.52
阪神タイガース投手成績 - プロ野球データFreak


防御率だけを見ると、先発投手のうち、正捕手が城島から藤井捕手に変わった恩恵が最も大きかったのは、能見投手岩田投手といえるかもしれない。たしかに、月別防御率だけを見るかぎり、この2人の防御率は、(実数でみても、近似曲線でみても)右下がりに良化し続けている。
月別の浮き沈みがけっこう激しいスタンリッジメッセンジャーの2人の外国人投手は、防御率だけでは、藤井捕手との相性は明確にはならない。だが、近似曲線が水平に近いグラフになることから、少なくとも正捕手が変わったことで「悪化」はしていない。

2011阪神 能見投手 月別防御率能見ERA

2011阪神 岩田投手 月別防御率岩田ERA



だが、今シーズンのダメ捕手城島とバッテリーを組まされるデメリットは、本来は防御率を見ているだけでは絶対にわからない
次のような要素が、防御率の数字にはきちんと反映されてこないからだ。

身体の故障を隠したままプレーを続行した城島の重要な場面でのパスボールの多さ
→チームのワイルドピッチ数の激増
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年4月21日、阪神ファンから罵声を浴びつつある城島の「パスボール癖」。後逸の責任回避のための「ストレートのみの勝負強要」でタイムリー多発。そして、マリナーズ時代同様の城島スタメン落ちへ。

故障から左右へシャープに動けない城島がパスボールを避けるようと、落ちるボールなど、「捕球しにくい球種」を使わないで配球しようとすることで生まれる、配球の制約
→フォークを決め球にする投手が、フォークを投げられない現象
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年5月26日、25日の阪神・ロッテ戦7回表の「ストレートしか投げる球がなくなっていっていく現象」を暇つぶしに考える。

「たとえ追い込まれても、城島がキャッチャーなかぎり、落ちる球は投げて来ない」と、バッターに配球を読まれることで生まれる無駄なヒット、タイムリー、四球


シーズン序盤よく阪神ファンの間から聞こえてきたのは、たとえ、キャッチャーの股間を抜けていくような明らかなトンネルを城島がやらかしたとしても、どういうわけか記録上はピッチャーのワイルドピッチになってしまう、というようなことが何度となくあった、という話だ。
もちろん、そういうプレーによって自責点が発生すれば、結果的に投手の責任にされてしまう。
また、城島が1塁ランナーのセカンドへの盗塁を刺したいがために、打者のアウトコースにピッチアウトするサイン出したがる、という話もシアトル時代からよくあった話だが、これが原因で四球を出してしまったケースも多々あったことだろう。


単に、相変わらずのマズい配球でチームの自責点を無駄に増やすだけにとどまらず、怪我を無理して出場し続けてマトモにキャッチングすらできず、配球にすら支障が出ている半人前のキャッチャーを相手に投げた、ほんのわずかな期間のピッチングで、「もう下柳もダメだ」なんて言われ、結婚したばかりのヴェテラン投手が働く場所を失うんじゃ、あまりにも可哀想というものだ。



September 12, 2011

前回9月5日のクリーブランド戦では、13奪三振とキャリアハイの奪三振数を記録したダグ・フィスターが、こんどは同地区のミネソタ戦で好投。108球74ストライクの安定したピッチングを披露して、移籍後6勝目を挙げた。デトロイトはミネソタのスイープに成功、9連勝。
9月に入って、同地区のクリーブランド、ミネソタとの対戦が続いたが、9月に入ってからの2ゲームでフィスターの被打率はわずか.132、WHIPもわずか0.67。2チームを完全に沈黙させ、デトロイトの首位の座を確保したのだから、この2勝は非常に高い価値がある。

ゲームをクローズしたのは、いつものホセ・バルベルデだが、ゲームセットの瞬間、獣のように数秒間吼え続けたシーンは、必見(笑)
Minnesota Twins at Detroit Tigers - September 11, 2011 | MLB.com Classic


今日の登板、グラウンドアウトが9、フライアウトが4で、いかにもグラウンドボール・ピッチャーのフィスターらしい内容。

フィスターの登板イニング数は、186.2。いま登板イニング数トップは、同じデトロイトで、今年のサイヤング賞間違いなしのジャスティン・バーランダーの229.0で、2位がCCサバシアの224.1、3位がタンパベイのジェームズ・シールズの218.0だが、今年のフィスターはこのままでいけば、MLBの一流先発投手の目安であるシーズン200イニング登板に到達するのは、ほぼ間違いない。酷い成績のままの200イニングなら意味はないが、この好成績での200イニングには非常に高い価値がある。

また、ア・リーグWHIPランキングでも、今日のゲームの前までが1.140で10位だったが、ゲーム後には1.13を切ってきた。ランキング10位以内キープは間違いない。
WHIPの良さの背景にあるのは与四球の少なさだ。今日のゲームの前までで、ア・リーグ与四球ランキングでも1.655で4位。K/BBランキングでも3.573でア・リーグ8位に入り、HR/9ランキングは0.473でア・リーグ2位(更新前)だから、これらのランキング順位もさらに良化することだろう。

まだゲームが終わって間もないのでBaseball Referenceはじめ、スタッツサイトのデータが更新されていないわけだが、フィスターの防御率はついに3.06まで下がった。これはア・リーグERAランキング10位のダン・ヘイレンについに肩を並べたことになる。
2011 American League Pitching Leaders - Baseball-Reference.com

フィスターといえば、大半のシアトルファンは「ランナーはかなり出すが、粘りのピッチングで得点を許さない」というイメージを持っているわけだが、そういうイメージはもう古くさい。
というか、フィスターに失礼

フィスターはいまや、「イニングが食えて、四球を出さず、ホームランも打たれず、ランナーを出さず、防御率も最高レベルで、ア・リーグ最高の先発ピッチャーのひとり」である。

たいしたものだ。


前回9月5日の登板では、記憶では4シーム、チェンジアップ、カーブ程度のシンプルな球種だけを使ってクリーブランドから13三振を奪ったような記憶があるが、今日はストレート系では2シーム(33%)と4シーム(35%)を同じくらいのパーセンテージ使い分けて、あとはカーブ(19%)、スライダー(5%)、チェンジアップ(7%)という感じの配球で、2シームを多用した点に特徴がある。
クリフ・リーエリック・ベダードジャロッド・ウオッシュバーンと、シアトルには「カーブ使い」に長けたヴェテラン投手がたくさんいた。フィスターもどうやら、こうした「カーブ使いの名手」の仲間入りができそうだ。

逆にいうと、そういう「身近にいてくれて若手が学ぶことのできるヴェテラン投手を次から次へトレードし、さらには彼らから何かを学んだ中堅投手さえもトレードしてしまうズレンシック無能の極みということでもある。
学ぶべきヴェテランもいないキャリア不足の投手陣で、何をどう再建するというのだ。馬鹿か、と、言いたい。



日本の自称マリナーズファンというかチームオタの一部に、フィスターについてどういう評価があったかを知るには、次のリンクをクリック(笑)→続きを読む

September 08, 2011

限られた局面における判断である戦術のミスについては、
根本的な責任を問う必要はない。

だが、戦略の失敗は違う。

戦略は、個人にひとつ、そして固有のものだ。
そして、その失敗はクビを意味しなくてはならない。

ひとつの戦略が失敗したからといって、
別の戦略をとるような指揮官には
そもそも「自分固有の戦略」というものを持っていないのだ。

自分の戦略を持っていない人間、
戦略に責任を持たない人間に、
自分の城が建てられるわけがない。



September 06, 2011

デトロイト対クリーブランドのア・リーグ中地区首位決戦第1戦は、ダグ・フィスターの素晴らしいピッチングと、今季素晴らしいバッティングを披露しているビクター・マルチネスの3ランで、デトロイトが先勝した。
優勝にわずかな望みを託すクリーブランド先発は、好投手ウバルド・ヒメネスで、しかもデトロイトはビジターだから、この勝利には非常に高い価値があるのは言うまでもない。
Detroit Tigers at Cleveland Indians - September 5, 2011 | MLB.com Classic


ダグ・フィスターは、キャリアハイとなる13三振を奪った。特に上位打線の1番から4番まで4人の打者から2つずつ三振を奪い、クリーブランド打線を封じ込めた。
3回裏には2死満塁のピンチがあったが、ここで3番カブレラを簡単に追い込んでおいて、クリフ・リーばりのカープで三振に仕留めるのだから、たいしたものだ。
フィスター13奪三振 動画(MLB公式):
Baseball Video Highlights & Clips | DET@CLE: Fister fans 13 over eight dominant frames - Video | MLB.com: Multimedia

デトロイト公式サイトのトップ記事のタイトルも、3ランを打ったビクター・マルチネスではなく、Fister's 13 K's help Tigers pad division lead と、フィスターが主役だ。

松坂を(あるいはヘルナンデスでもいいが)思い出してもらうとよくわかると思うが、三振をとろうとすると、早いカウントから打たせてとるわけではないわけだから、どうしても球数というのは増えてしまう傾向がある。
だが、今日のフィスターは、13三振を奪いながら、8イニングを、わずか101球(72ストライク)で投げ切ってしまったのだ。少ない球数でたくさんの三振をとるのは、よほどの実力がないとできるものではない。まったく文句のつけようがない。


この日、クリーブランドの先発ヒメネスも、打たれたヒットは、4回に打たれたわずか2本のみ。彼の絶好調とまではいえないにしても、ピッチング全体はそれほど悪くはなかった。だが、その2本が致命傷になってしまった。
デルモン・ヤングにヒットを打たれた後、ミゲル・カブレラはフルカウントから四球。1死1,2塁となって、5番ビクター・マルチネスに、2-2から甘く入ったストレートをライトスタンドの奥深くに放り込まれた。

何度も書いてきたことだが、今シーズンのビクター・マルチネスはほんとうに素晴らしいバッティングを披露していると思う。この3ランも、「甘く入ったボールだから、ホームランにできて当たり前」なんて、まったく思わない。そんなことを言う人がいたら、逆に聞いてみたい。
「ここぞという大一番で、もしど真ん中にボールがきたとして、確実にホームランにできますか?」
中地区優勝をまだ諦めてないクリーブランドの最後の望みを断ち切るような、素晴らしいホームランだ。
ビクター・マルチネス3ラン 動画(MLB公式)
Baseball Video Highlights & Clips | DET@CLE: Martinez belts a three-run shot to right - Video | MLB.com: Multimedia

2011年9月5日 ビクター・マルチネス 3ラン 投手ヒメネス



日本の自称マリナーズファンというかチームオタの一部に、フィスターについてどういう評価があったかを知るには、次のリンクをクリック(笑)→続きを読む

September 05, 2011

キャスパー・ウェルズ


典型的ローボールヒッター
マトモな選手なら全員が持っているべき、「腕をたたんでインコースをスイングする技術」そのものがない。よくこんな選手を獲得してくるものだ。
当然のことながらインコースが苦手。メジャーのバッターがシーズン通してプレーできる選手になるには、「ひと目でわかる欠点があること自体が致命的だ。この選手はメジャーのバッターにはなれない。断言できる
ヒッティング・カウントについては、典型的なMLBの早打ちタイプ。2球目、3球目に勝負をかけてくる。0-2、1-2、2-2、フルカウントと、2ストライクをとられたあらゆるカウントでのバッティングで、スタッツがガクンと下がる。
P/PAは4.04なのに、BB/PAが去年より悪化していることからわかるように、基本的には3球目までに勝負が決着する典型的早打ち打者。四球を選ぶタイプではない。

高めが苦手。速球に強いカイル・シーガーと違って、高めの早い球についていけなさそうだ。マイク・カープと違って、チェンジアップは得意。
投手は、インコース、高めが苦手なこと、早いカウントから打ってくること、きわどいコーナーの球でも器用に打てる打者だが同時にボール球でも振ってくる打者でもあることなどを頭に入れて対戦すればいい。

得意球種はチェンジアップ、カットボール、苦手球種はシンカー、スライダー、カーブ。
持ち球の関係で、どうしてもウェルズの得意なカットボールを投げたいのなら、苦手なのが明白なインコースに投げるべきだし、同じように、ウェルズの得意なチェンジアップを投げたいなら、ストライクにせず、ボールにする球として投げることで、安全性が高まる。
ローボールヒッターのウェルズへのフィニッシュとして、苦手な高めにストレートで押して三振でもさせるか、ボールになる外の変化球を空振りか凡退させるか、迷うところだが、無理せず、低めの、それもボールになる変化球を投げて凡打させておけばすむ。
ただ、8月末のホワイトソックス戦のデータから、苦手意識があるのは球種よりも「コース」らしいので、球種はそれほど気にしなくていいかもしれない。

ローボールヒッター
2ストライクをとられると、打てない
インコース、高めが苦手
シンカーがまったく打てない
たとえ得意球種でもインコースに投げられると打てない
追い込まれると、ボール球に手を出すクセ


得意カウント 1-0、0-1、1-1、2-1(特に1-1)
苦手カウント 0-2、1-2、2-2、3-2
得意球種 チェンジアップ、カットボール
苦手球種 スライダー、カーブ、(8/27追記 シンカー
得意コース アウトロー、インロー
苦手コース 高め、インコース
得意チーム BOS,MIN,OAK.TEX
苦手チーム LAA,CLE
Casper Wells Hot Zone | Seattle Mariners | Player Hot Zone | MLB Baseball | FOX Sports on MSN

クリーブランド戦でのデータ
第1戦
第1打席 インコース シンカー 死球
第2打席 アウトロー ストレート シングルヒット
第3打席 アウトロー ボール球シンカー ライトフライ
第4打席 アウトコース ハーフハイト ボール球のストレート セカンドゴロ
Seattle Mariners at Cleveland Indians - August 22, 2011 | MLB.com Classic

第2戦
第1打席 インコース高め シンカー サードゴロ
第2打席 ど真ん中 シンカー ファーストゴロ
第3打席 インコース真ん中 ボール球シンカー 空振り三振
第4打席 真ん中高めのストレート 空振り三振
Seattle Mariners at Cleveland Indians - August 23, 2011 | MLB.com Classic

第4戦
第1打席 アウトロー ボール球のカットボール 空振り三振
第2打席 ややインコースより ど真ん中のシンカー ファーストフライ
第3打席 アウトコース ボール球のカットボール セカンドフライ
第4打席 アウトロー スライダー サードフライ
第5打席 インコース カーブ 見逃し三振
Seattle Mariners at Cleveland Indians - August 24, 2011 | MLB.com Classic

対ホワイトソックス ジョン・ダンクス
第2戦
第1打席 外のチェンジアップ 空振り三振
第2打席 インコース低め ボール球のカットボール 空振り三振
第3打席 インコース低め ストライクになるカットボール 空振り三振
Chicago White Sox at Seattle Mariners - August 27, 2011 | MLB.com Classic

クリーブランドの「シンカー」パターン
インコースのカットボールで追い込み、
高めからシンカーを落として空振りさせる

配球の細かい部分は省略させてもらったが、クリーブランドの投手たちは、インコースのカットボールで追い込んでおいてから、シンカーを投げて凡退させるパターンを多用している。持ち球にスプリッターのある投手なら、シンカーのところをスプリッターでも代用できるだろう。
カットボール自体はウェルズの得意球種のはずだが、苦手なインコースに投げられると、とたんにミートできなくなる。ウェルズは球種の得意不得意よりも、よほどインコースに苦手意識があるとみた。
逆にいうと、「苦手なコースのあるバッターとの対戦」においては、球種がたとえそのバッターの得意な球であっても、苦手コースにさえ投げられるなら、なにも怖がる必要はなく、むしろ、凡退させるのに絶好な切り札にできるということ。勉強になる(笑)

ホワイトソックス ジョン・ダンクスの
「カットボール」パターン

高めの球で追い込み
インローのボールになるカットボールで三振

ウェルズを3打席3三振させたホワイトソックスのジョン・ダンクスも、ウェルズの弱点である「高め」「インコース」といった「コースの弱点」を徹底的に突いている。最初に高めを多投して追い込んでおき、最後はインコース低めの完全にボールになるカットボールを振らせるのが、ダンクスのパターン。クリーブランドも使っていた「インコースのカットボール」がここでも使われている。


打席例

2011年8月30日 エンゼルス戦 5回裏
三振
インコースのストレート。彼がインコースが苦手らしいのは、もう、よーくわかっているが、0-2、1-2、2-2、3-2、あらゆる2ストライク後のバッティングが苦手なバッターでもある。
1-2と追い込んだ後は、何も考えず漫然とピッチングしている投手なら、よくありがちな「追い込んだら、アウトコースの低め」とかいう知恵のない、紋切型の配球をしてしまう典型的なシチュエーションなわけだが、きっちりインコースに厳しい配球をしてくるところに、今日のソーシアの「絶対に勝つんだ」という「やる気」を感じた。
2011年8月30日 5回裏 ウェルズ三振


2011年9月9日 カンザスシティ戦 2回裏
三振
アウトコースのシンカーで3球三振。「シンカーがまるっきり打てない」というスカウティング通りで、驚くにはあたらない。
むしろ、見てもらいたいのは2球目アウトローのチェンジアップ。キャスパー・ウェルズの得意な球種とコースであり、ストライクをとろうと思っていたらヒットになっていた球だ。空振りをとれたのは、たまたま低めに外れたため。投手はジェフ・フランシス。シアトル打線に痛打されまくって自責点5で3回もたなかったが、この2球目の不用意さから、ピッチングの幼さがよくわかる。
2011年9月9日 ロイヤルズ戦 2回表 キャスパー・ウェルズ 三振



カイル・シーガー

典型的なストレート系ヒッター
けして、カープのようなローボールヒッターではないにもかかわらず、なぜかカープと並んでシアトルで最もフライアウト率が高い打者でもある。たぶんスイングそのものにフライになる原因があるのだろう。

スライダーへの苦手意識
いかんせん低めが苦手なのが、メジャーのプレーヤーとしてやっていく上で致命的なのは明らか。ハーフハイトの甘い球を仕留めるのは得意。スライダーへの苦手意識は相当なものがありそうだが、その元をたどると「低めの球への苦手意識」に辿り着く。
対戦する投手は、球が浮かないようにコントロールに気をつけつつ、低めの変化球で勝負しておけばいいだけ。このことが、対戦チーム全体に浸透するのに、そう時間はかからないはず。
同地区のライバルとしてこれから数多く対戦しなければならないア・リーグ同地区のエンゼルス、テキサスには、既に低スタッツが既に残されている。同地区だけに、新人といえども既にある程度スカウティングされてしまった、とみなければならない。

得意カウント 初球、1-1、2-0、2-1、3-1、0-2、
苦手カウント 1-2、2-2
得意球種 カットボール、ストレート
苦手球種 スライダー
得意コース インロー、ハーフハイト、
苦手コース アウトロー、真ん中低め
苦手投手 しいて言えばフライボール・ピッチャー
苦手チーム LAA,TEX
Kyle Seager Hot Zone | Seattle Mariners | Player Hot Zone | MLB Baseball | FOX Sports on MSN


打席例

2011年8月26日 ホワイトソックス戦 第1打席
センターフライ
外低めのチェンジアップ。
2011年8月26日 カイル・シーガー 第1打席


2011年8月26日 ホワイトソックス戦 第2打席
二塁打
真ん中のストレート。ストレートの強いバッターに、ストレート3連投、しかもど真ん中では打たれて当然
2011年8月26日 カイル・シーガー 第2打席


2011年8月26日 ホワイトソックス戦 第3打席
センターフライ
真ん中低めのカーブ。スカウティングどおり。
2011年8月26日 カイル・シーガー 第3打席


2011年8月26日 ホワイトソックス戦 第4打席
空振り三振
外低めにはずれるチェンジアップ。初球、2球目と、得意なはずのインコース、ハーフハイトの球を連続して見逃しているあたり、やはり、スライダーによほどの苦手意識があるのだろう。早いカウントでは得意なストレート系に絞って待っていることが、よくわかる。
2011年8月26日 カイル・シーガー 第4打席


2011年8月29日 エンゼルス戦 8回裏
三振
アウトコースのスライダー。オリーボにヒットを許し、ソーシアは次のキャスパーを敬遠させて、1死1、2塁にしてまでキャスパーと勝負し、ダブルプレーをとりにきた。つまり、それだけ「打ちとる自信があった」ことになる。
この場面で高橋尚は「ストレート系ヒッター」カイル・シーガーに、ストレートを初球、3球目と投げているのだが、これはちょっと危ない。3球目のストレートは少し浮いていて、タイムリーを打たれても不思議ではなかった。
この打席、最後は、このブログのスカウティングどおり、シーガーが大の苦手にしている「アウトローのスライダー」で三振させているのだが、どうも高橋尚投手は、きちんと相手打者のスカウティングをきちんと反映して投げていると思えない投球をする。
2011年8月29日 8回裏 シーガー三振 投手 高橋尚


2011年8月30日 エンゼルス戦 4回裏
ダブルプレー
初球のアウトローのストレート。ストレートは得意球種のはずだが、「いくら好きな球種でも、それが苦手なアウトローに来たときには、凡退する」、それくらい、シーガーのアウトローへの苦手意識は強い。あえて打者の好きな球種を、その打者の苦手なコースに投げることは、コントロールさえ気をつければ非常に効果がある。
2011年8月30日 4回裏 シーガー ダブルプレー


2011年8月31日 エンゼルス戦 2回裏
二塁打
インコースのカットボール。
このバッターが最も苦手にする「アウトコースのスライダー」に翻弄され続ける様子は、既に一度書いた。この打席でも、2球目のど真ん中のカーブを見逃している理由は、非常によくわかる。このバッターはゆっくり大きな動きをする変化球についていけないので、こういうボールを最初から諦めているからだ。
このバッターは、ストレートかカットボールが自分の得意コースのインローやハーフハイトに来るのだけをひたすら待ち受けているような、「定置網の漁師」みたいな打者なのだから、「インコースのストレート系」はもちろんタブーだ。
このヒットを打たれたのは2回裏だが、試合終盤になって集中力が切れてきたときに、結局ダン・ヘイレンのピッチングはどんどん緩んでしまい、打者のスカウティングを無視して、自分の好きな球を漫然と投げ込んでしまうことになって失点した。
2011年8月31日 カイル・シーガー 二塁打 SEAvs.LAA





若手打者の打撃傾向についてあれこれ書いているうちに、複数の記事に書き散らして内容が散逸してしまっているので、「打者ごと」にまとめなおして保存しておくことにした。過去の記事と内容がダブるのだが、ご容赦願いたい。

まずは、マイク・カープから。


マイク・カープ

典型的なローボールヒッター、それも「インコースのローボール」に限られる。この打者が典型的なフライボールヒッターなのは、そのためだ。
スタッツを稼ぐのは、大半が「得意コースであるインコースの低い球を打ったフライかライナー」によるもの。ゴロさえ打たせておけば、まったくノーチャンスだ。
三振させる配球パターンが非常にハッキリしている打者でもあり、三振は非常にとりやすい。追い込んでおいて、外の高めのストレート、アウトローの変化球、インローのボールになる変化球、3つのうちどれかを投げておけばいいだけだ。逆にいうと、こんなわかりやすいバッターに長打を打たれてしまうような投手は、スカウティングに関心がない知恵の足りない投手だ。
メジャーに上がった直後に数字を残したが、BABIPの異常に高い打者であることからわかるように、「まだスカウティングされていなかった」のに加えて、単に「運がよかっただけ」

フライボール・ピッチャー(それもスカウティングに関心の低い投手)にとっては非常に嫌なバッターだが、グラウンドボール・ピッチャーにしてみれば、これほどダブルプレーをとりやすいバッターはいない。ランナーが1塁にいるケースでは、アウトコースの変化球でゴロを打たせてダブルプレーに仕留めるのを狙うべき典型的なバッターだ。

ランナーズ・オンでの初球打ち
ランナーズ・オンと、そうでないときでスイングするカウントを変えるという、独特のカウント感覚を持っている。
なんとなくだが、「投手の油断やスキの出るカウントで強振してくる変則的な傾向」をもっていると思われる。「ここはスイングしてこない」と投手が油断しがちなカウントで、不意打ちをくらわせるように強振してスタッツを稼ぐバッターだ。
ランナーが得点圏にいるケースでの初球打ちが、異常に得意。チャンスの場面でけして待球せず、初球から思い切って打ちに出る奇襲策でタイムリーを稼いできた。8月末のエンゼルス戦までの「初球打率」は、なんと6割を超え、OPSが1.455もあった。(AVE.636 OBP.636 SLG.818 OPS1.455)
投手は、ランナーが二塁にいるは、ストライクをとりたいだけのために、初球に低めのスライダーやカットボールを不用意に投げないことだ。
ランナーが出たからといって、マリアーノ・リベラがよくやる手を使って、カットボール、あるいはインコースのボールを詰まらせてセカンドゴロを打たせ、ダブルプレーに仕留めよう、などとカッコつけると、むしろ投手のほうが墓穴を掘ることになる。それはカープの最も得意な球種とコースなのだ。結構な数の投手がこの「ランナーを出した直後の初球に、インロー」のパターンで失敗している。
ここはむしろ、例えばランナーを十分に牽制しておいて、盗塁される危険性も覚悟で、カープの苦手なチェンジアップやカーブを勇気をもって投げることで、ダブルプレーという最良の結果を手にすべき。もし、ゴロでなく、空振り三振に仕留めたい満塁のようなケースでは、外の球で追い込んでおいて、カープの得意コースであるインローに、苦手球種のカーブかチェンジアップを「ボールになるように」投げるのが最適。
ちなみに、ア・リーグ東地区の投手との相性がいいのは、カープの得意なカットボールを多用したがる投手が多いためではないか。

ランナーのいないケースでは、逆にボール先行カウントになるまで待つ傾向もあるので、必ずしも早打ち打者というわけではない。あくまで、ヒッティングするカウントは、ランナーの有無によって変わる。
また、初球打ちが大得意な反面で、早打ち打者の多いMLBにあって誰もがヒッティングカウントにしている「カウント0-1」を苦手にしているのは、非常に珍しい。投手側の計算としては、初球さえファウルを打たせることに成功したら、2球目を振ってこないカープが見逃すような変化球で追い込んでおけば、あとは投手の勝ちだろう。
カイル・シーガーと非常に対照的なバッティング傾向をもつため、この2人の打席が連続するスタメンでは、どちらかが打ち、どちらかが凡退する光景が非常によくみられる。

得意カウント 初球、2-0、1-1、3-1、3-2
特に初球打ち AVE.636 OBP.636 SLG.818 OPS1.455 BABIP.636
苦手カウント 0-1、1-2、2-2
得意球種 スライダー、カットボール
苦手球種 チェンジアップ(特にアウトロー)、外高めのストレート
得意コース インロー(典型的なローボールヒッター)
苦手コース 高め
苦手投手 グラウンドボール・ピッチャー
得意チーム NYY,BOS,TOR
Mike Carp Hot Zone | Seattle Mariners | Player Hot Zone | MLB Baseball | FOX Sports on MSN


打席例

2011年8月26日 ホワイトソックス戦 1回表
ダブルプレー
苦手球種のチェンジアップ。下に挙げた9月2日 オークランド戦のキャッチャーフライと同じボール。典型的なローボールヒッターだが、アウトローのチェンジアップは、低めでも打てていない。たぶん球種が問題なのだろう。
2011年8月26日 ホワイトソックス戦 1回表 カープ ダブルプレー 


2011年8月29日 エンゼルス戦 8回裏
2ランホームラン
得点圏にランナーがいるケースのカープに「初球、インコース、スライダー」だけは、絶対に投げてはならない球だ。そのコースだけ、その球種だけを待ち受けているところに、指定どおりのコース、球種を投げれば、飛んで火にいる夏の虫、そりゃ打たれるに決まってる。
2011年8月29日 8回裏 カープ 2ラン 投手 高橋尚


2011年8月31日 エンゼルス戦 7回裏
シングルヒット
インローのカットボール」は、カープの最も得意な球のひとつ。スカウティングにピッタリあてはまる。
投手はダン・ヘイレンだが、初球、2球目と、カープの得意な「インローのカットボール」を連投してヒットを打たれているのだから、どうみても「不用意な配球」としかいいようがない。
2011年8月31日 マイク・カープ シングル


2011年9月2日 オークランド戦 3回表
キャッチャーフライ
苦手球種のチェンジアップ。。典型的なローボールヒッターで、インローのスライダーやカットボールは非常に得意だが、チェンジアップは、いくら低めでも打てていない。
2011年9月2日 SEAvsOAK カープ キャッチャーフライ


2011年9月3日 オークランド戦 4回表
空振り三振
苦手な高めのボール球を振って、三振。このゲームでは3三振しているが、三振した球は全部が「高めのストレート」。
2011年9月3日 ホワイトソックス戦 4回表 カープ 三振


2011年9月3日 オークランド戦 7回表
空振り三振
高めを苦手とするカープが高めのストレートについていけず、空振り三振すること自体は、別に驚くようなことでもない。だが、初球の「インローのスライダー」を見送ったのには、ビックリした。「初球、インロー、スライダー」とくれば、このローボール・ヒッターの黄金パターンのはず。だが、カープはスイングしなかった。
と、なれば、考えられる理由はひとつしかない。「ランナーがいないイニングの先頭打者だったから」だ。得点圏にランナーがいるときのカープなら、間違いなくこの球をフルスイングしていたはず。
やはりこのバッターは「ランナーの有無によって、スイングするカウントと、待つ球種が変わるバッター」なのは、たぶん間違いない。
2011年9月3日 ホワイトソックス戦 7回表 カープ 三振


2011年9月3日 オークランド戦 9回表
見逃し三振
やはり「高めのストレート」はは苦手なのだろう。この打席では全球ストレートを投げられて、2球のストライクを見逃して三振している。
2011年9月3日 ホワイトソックス戦 9回表 カープ 三振


2011年9月4日 オークランド戦 3回表
ダブルプレー
1死1塁の場面。インローのシンカーでダブルプレー。本来はインローの得意なバッターだが、チェンジアップが苦手なのと同様、シンカーも苦手らしい。3球目のカーブも空振りしている。
2011年9月4日 アスレチックス戦3回表 カープ ダブルプレー


2011年9月4日 オークランド戦 5回表
2死1,2塁 ピッチャーゴロ
アウトローのシンカー得点圏にランナーがいる打席だから、カープが初球をスイングしてくる典型的なパターンだ。ピッチャーは、シンカー投手のトレバー・ケイヒル
もしここで不用意に「インローのスライダー」なんかを投げてしまうと、確実にタイムリーを食らうわけだが、投手ケーヒルのチョイスは「アウトロー」。ゴロを打ったら、典型的なフライボールヒッターのカープはノーチャンスだ。
2011年9月4日 オークランド戦 5回表 カープ 投ゴロ


2011年9月11日 カンザスシティ戦 7回裏
先頭打者 三振
アウトローのチェンジアップは、最もカープを三振させやすい球(他には、外高めのストレートも有効)。スカウティングに熱心でないエンゼルスと違って、カンザスシティはもともと分析好きの土地柄なせいか、カープにインコースの球をほとんど投げない。この打席も、苦手なアウトコース、そしてチェンジアップと、スカウティングどおりの攻めで3球三振。
2011年9月11日 ロイヤルズ戦 7回表 カープ 三振


2011年9月12日 ヤンキース戦 8回裏
無死1塁 ダブルプレー
カープがダブルプレー打を打つときのお約束の「アウトロー」。ランナーが1塁にいるときに、カープにアウトローに投げない投手は、スカウティングしてないと思うくらい、当たり前の配球。そろそろアウトローを苦手コースに加えてもいいかもしれない。
2011年9月12日 ヤンキース戦 8回裏 カープ ダブルプレー





September 04, 2011

経済学にはミクロ経済学とマクロ経済学があって、それぞれに固有のロジックがあることはよく知られているわけだが、野球のスタッツの評価方法やチームマネジメントのロジックについても、「プレーヤー個人」から見る場合と、「チーム」や「リーグ」など鳥瞰的、俯瞰的な視点から見る場合とでは、大きく違うわけだが、実際にはどうかというと、常に非常に混同されたまま、さまざまな話題が混乱のうちに語られて続けている。

たとえば出塁率がそうだ。

プレーヤー個人だけで見ると、あたかも、大から小から、さまざまなタイプがいるように思われている。
例えば、2007年のリッチー・セクソン(打率.201 出塁率.295)や、2011年のジャック・カスト(打率.213 出塁率.344)のように、打率がわずか2割ちょっとしかないにもかかわらず、四球数が多いために、出塁率が.300を越えているバッター、つまり、出塁率と打率に大きなギャップのあるバッターがいる。
一方で、2011年のウラジミール・ゲレーロ(打率.280 出塁率.311)のように、打率がいちおう.280あるのに、出塁率が.311と、出塁率と打率の差が小さいバッターもいる。
(前者のケースの打者は、打率が低すぎることも多いわけであって、本来はスタメンにいられるレベルじゃないのに加えて、「出塁率と打率に大きなギャップのある打者」が必ずしも長打力があるという意味にはならないし、そういう打者の長打力がサラリーや打順にみあうなんて意味にはならないのに、そこを無視して、出塁率、つまり四球数を評価すべきだのなんだの、自分の思い込みのみで主観的に語る人があまりにも多い。
個人で同じ出塁率なら、打率の高い人のほうを評価すべきだが、その理由の一端は以下にも書くので読み取ってもらいたい)


こういうプレーヤーごとのバラつきのようなミクロ的な差異を、チーム全体、リーグ全体からマクロ的に見ると、ようやく「プレーヤー個人の良し悪し」をファンやアナリストが自分の好き嫌いを自分勝手に織り交ぜながら混乱した評価を下すのではなくて、チームとしての法則性からきちんと評価できる視点も見えてくる。
以下に簡単な例で示してみる。


以下に、とりあえず2011年ア・リーグのチーム別出塁率とチーム打率の関係を、ホームゲームとビジターに分けて示してみた。(他の年度や、ナ・リーグのデータ、日本のデータなども調べてみないと、以下の話はまだ「常に、そうだ」と断言できる段階ではないことには注意してもらいたい)
元資料:American League 2011 Batting Splits - Baseball-Reference.com

ホームとビジターで比例関係の強さにわずかな差はあるものの、ひと目で、「出塁率と打率とが、非常に綺麗な比例関係にある」ことがわかる。つまり上のグラフは「チーム出塁率は、チーム打率のみによって決定されている」ということを示している。2つの数字の関係は、相関を計算する必要がまったく無いほど、強い。
「チーム出塁率」は、「チーム打率」に、「定数」として、6分から7分、数字でいうと0.06から0.07を加えた数字になっている。「チーム出塁率」と「チーム打率」の比例関係を数式にすると、こうなる。
「チーム出塁率」=「チーム打率」+「定数」
(定数=0.06〜0.07 四球や犠飛を意味する)

定数部分をもう少し詳しく言うと、チームバッティングにおいて、四球や犠飛の占める割合(チームのIsoDといいかえてもいいが)は、どんなチームでも常に一定の割合、すなわち、全体の6から7%であって、ほとんど変動しない、という意味。
このチームバッティングにおける四球率が一定になる現象は、打席全体に占めるホームラン率における現象に似ている。ホームラン率も、個人でみるとバラバラだが、チームでみるとほぼ一定になる。ホームランや四球は「十分たくさんの打席を検証すると、一定割合で出現する事象」というわけだ。
簡単なたとえ話で言うなら、「むやみやたらとフライばかり打っていると、一定の割合のフライは必ずホームランになる」ということだ(笑)

チーム出塁率の定数部分の中身は、実際のゲームでは四球や犠飛なわけだが、この定数部分は、2011ア・リーグの数字を見る限り、チームごとの打撃力の差や、そのチーム戦力のタイプの違い、あるいはパークファクターに、まったく左右されない。
だからこそ「チーム出塁率は、チーム打率に完全に比例する」なんて大胆なことが言える(笑)

2011 ア・リーグ
チーム別「出塁率と打率の比例関係」(ホーム)

2011ア・リーグ 打率と出塁率の比例関係(ホーム)

2011 ア・リーグ
チーム別「出塁率と打率の比例関係」(ビジター)

2011ア・リーグ 打率と出塁率の比例関係(ビジター)


様々なタイプのパークファクターをもったたくさんの球場でのゲームデータを集計した「ビジター」データは、当然のことながら、単一球場のデータである「ホーム」のデータより、チーム間格差が平準化、平らに均(なら)されるわけだから、ホームよりもビジターのほうが、グラフの右下がりの傾斜はより緩くなって、より平らなグラフになる。
別の言い方をすると、データの「右下がりの傾き」が強い「ホームゲームのデータ」は、「各チームのチーム出塁率の絶対値は、それぞれのチームのホームスタジアムのパークファクターに大きく影響される」ことを示している。四球率はパークファクターには左右されないが、出塁率はパークファクターに大きく左右される。

それはそうだろう。
前提として「チーム出塁率が、チーム打率にほぼ完全に比例する」として話をしているのだから、「ヒットの出やすいホームスタジアムのチームほど、チーム出塁率が高くなる」、「ヒットの出にくいホームスタジアムのチームほど、出塁率が低くなる」のは当然だ。
この説明手法を使うと、例えば、ボストンのチーム出塁率がア・リーグトップなのは、ボストンの打者たちが待球ができて、選球眼もよく、たくさんの四球が選べるから、なんて、もっともらしい理由(笑)では全くなくて、単に「フェンウェイパークが、あまりにもヒットが生まれやすいヒッターズ・パークだから、打者の打率が高く、その結果、チーム出塁率が良いというだけ」、ということになる(笑)


ただ、問題はこれだけでは済まない。
チーム運営という視点から、あるいは選手の評価という面からも、これまでの指導常識を疑う疑問が数多く派生してくるからだ。


●もし「チームの出塁率がチーム打率によってほぼ決まる」としたら、チームの監督が四球増加を目的に、自分のチームのプレーヤーに待球を強制する戦略は、実は「まるで無意味」なのではないか?

●もし「チームの出塁率がチーム打率によってほぼ決まる」としたら、出塁率向上のために最も意味のあるチーム方針とは、「打率を上げることのみだけしかない」のではないか?(実際には、もうひとつ、パークファクターを変えるためにスタジアムを改装する、という手もあるが 笑)

●よく、四球を積極的に選ばないアベレージタイプの打者をむやみに批判する人がいるが、「チームの出塁率がチーム打率によってほぼ決まってしまう」としたら、チームの打率を向上させないと話にならないのだから、そうした批判は「根本的に的外れ」なのではないか?

●もし「チーム出塁率からチーム打率を引いた数字が、ほぼ0.06から0.07の間で一定」なのだとしたら、チームの総打席数に占める四球や犠飛の割合は、どんな戦力のチームであっても一定割合になるのだから、「GMが、四球増加を目的に、四球を選べるプレーヤーを獲得してきた」としても、そのことでチームの出塁率が劇的に上昇することは、全くありえないのではないか?

●チームを支配しているマクロの論理は、どのくらいプレーヤー個人に影響を与えているものなのか。マクロ的野球とミクロ的野球との、接点、違い、お互いの影響力はどうなっているのか。


こうして書いてても、湧き起ってくる疑問点は実は非常に多くて、シアトル・マリナーズってチームはホントにチームマネジメントの失敗だらけなのがよくわかって、書いていて疲れるほどなのだ(笑)
なんかこう、難しいことを書いているように見えるかもしれないが、実はそうではない。言いたいことは、ひとつしかない。

「チームというマクロ的視点から見ると
 ヒットを打てない打者をいくら揃えても、
 出塁率は向上したりはしない」


イチロー
天才に決まってるじゃん。議論なんか必要あるわけない。

前に書いたように、「ヒット」っていう事象は、ベースボールが出来た創世記からもともとあったプレー要素で、それは「アウトにならないこと」を指す、最も重要で根源的なプレーであったわけで、なにもセイバーの数字オタクたちがまるで自分たちが見つけた新発見みたいに自慢しなくたって、もともと野球というゲームでは「アウトにならないこと」は「最重要プレー」だったわけね。
その一方で、もともと「四球」が4ボールではなく、9ボールだったように、四球ってものは歴史的に重要視なんかされてこなかった「サブ的なゲーム要素」だった。
「ヒット」はプレーの目的そのものだけど、「四球」はプレー結果のひとつなだけであって、野球をやる目的じゃない。
四球が無意味だと言いたいわけじゃなくて、正確にいうと、「出塁率、出塁率って、いちいち、うっさいよ。100年も前からある野球ってゲームで、100年後にあらためて『アウトにならないこと』を重視したいと思ったんなら、歴史的にもデータ的にも重要なのは、四球じゃなくて「ヒット」なんだから、なぜヒット絶対主義にならないのか、不思議でたまらない。ヒット絶対主義で、まったく問題ないでしょ。あんたら、アホなの? 」ということ、なんだな。
イチローが四球を選ぶとか選ばないとか、重箱の隅つついてんじゃねぇよ。くだらない。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年8月18日、『アウトでないもの』〜ヒットの副次性。

まぁ、読んだ人が自分なりに自分の問題意識に照らして読んだらいいと思うが、この指摘、単純なように見えて、けっこう噛めば噛むほど味のでる指摘なのだ、よく読んでもらいたい(笑)



September 02, 2011

夏になって西地区首位のテキサスを猛追していたはずの8月のエンゼルスだが、もうひとつ追い上げムードの波に乗り切れていない理由が、なんとなくシアトルの4連戦でみえてきた。どうも、こう、鉄壁の緻密さでゲームに臨んでいるはずのマイク・ソーシアらしからぬ「雑さ」が、特に投手に見えるのである。
4連戦初戦に決勝2ランを許した高橋尚といい、自責点2ながら若いバッターに不用意なヒットを許してしまうダン・ヘイレンといい、マイク・カープにシンカーを4連投して決勝2点タイムリーを打たれたスコット・ダウンズといい、こう言ってはなんだが、エンゼルスの野球も大雑把というか、緩くなったものだと思う。
さしもの闘将マイク・ソーシアも、ちょっと年をとったのかもしれない。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年8月29日、高橋尚投手の「打たれるべくして打たれた」決勝2ラン。

Los Angeles Angels at Seattle Mariners - August 31, 2011 | MLB.com Classic


7回裏 マイク・カープ
シングル
打ったのは「インローのカットボール」。マイク・カープは何度も書いたように、典型的ローボールヒッターだ。得意球種はスライダーカットボール。苦手球種はチェンジアップ。特に得点圏シチュエーションでの初球打ちなどにも強い特徴がある。
「インローのカットボール」はスカウティングにピッタリあてはまるカープの最も得意な球のひとつだ。投手はダン・ヘイレンだが、初球、2球目と、同じ「インローのカットボール」を続けて投げて打たれたヒットだから、不用意な配球としかいいようがない。

2011年8月31日 マイク・カープ シングル


左打者へのインコースのカットボールといえば、ヤンキースのマリアーノ・リベラがすぐに思い出されるが、前にも書いたことを引用すると、同じ左打者のインコースのカットボールによる配球でも、マリアーノ・リベラなら、こういうふうには攻めない。

リベラの典型的な「カットボール・パターン」は、カットボールを2球連投したりしない。まずカットボールをインコースに投げてえぐっておいたなら、次のボールに選択するのは、カットボールではなくて、「ストレート」だ。
この配球を打者側からみると、インコースをえぐるカットボールで腰を引いた直後に、同じようなコースに同じような球速のボールが来るわけだから、自分では十分に踏み込んで打っているつもりなのに、実際には無意識に腰を引きながらスイングしてしまっている、とか、自分ではストレートをスイングしているつもりなのに、無意識にカットボールにあわせるスイングをしてしまって、ひっかけるようなバッティングになったりしてしまう。
リベラの配球の妙は、100マイル近い豪速球を投げておいてからスプリットで空振りさせるような「大げさな変化」ではなくて、カットボールとストレートの「ほんのわずかな違い」を使って、プロの打者の「素人にはない反射神経」や、「動くカットボールにさえ反射的に対応ができてしまう、プロのバットコントロール」を逆に利用している点だ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年5月28日、アダム・ケネディのサヨナラタイムリーを生んだマリアーノ・リベラ特有の「リベラ・左打者パターン」配球を読み解きつつ、イチローが初球サヨナラホームランできた理由に至る。


カイル・シーガー
2回裏 二塁打
打ったのは、上のカープと同じ「インコースのカットボール」。ストレート系ヒッター、シーガーが最も得意とする球種であり、コースだ。得意球種がストレート、カットボール、苦手がスライダー。得意コースは、インローとハーフハイト、苦手が、真ん中低めとアウトロー。
このバッターが最も苦手にする「アウトコースのスライダー」に翻弄され続ける様子は、既に一度書いた。
この打席でも、2球目のど真ん中のカーブを見逃している理由は、非常によくわかる。このバッターはゆっくり大きな動きをする変化球についていけないので、こういうボールを最初から諦めているからだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年8月27日、予想通り1ヶ月で燃え尽きたズレンシックとエリック・ウェッジ演出による8月の線香花火大会。1ヶ月で擦り切れるのがわかっているドアマットの取り換えみたいな「マンスリー・リサイクル」の馬鹿馬鹿しさ。

このバッターは、ストレートかカットボールが自分の得意コースのインローやハーフハイトに来るのだけをひたすら待ち受けているような、「定置網の漁師」みたいな打者なのだから、「インコースのストレート系」はもちろんタブーだ。
このヒットを打たれたのは2回裏だが、試合終盤になって集中力が切れてきたときに、結局ダン・ヘイレンのピッチングはどんどん緩んでしまい、打者のスカウティングを無視して、自分の好きな球を漫然と投げ込んでしまうことになって失点した。

2011年8月31日 カイル・シーガー 二塁打 SEAvs.LAA


ダン・ヘイレンについてこうして書いていると、スカウティング関係なくピッチングしているように見えるタンパベイのジェームズ・シールズを思い出した。
いいピッチャーなんだけどな。ジェームズ・シールズ、ダン・ヘイレン。彼らには、クリフ・リーロイ・ハラデイを見ているときに感じる「ピッチング芸術」を感じない。

だから彼らのファンになるところまでいかない。
残念だ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年6月3日、打者のスカウティングを全く頭に入れてなさそうに見えるタンパベイのJames Shields。



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