January 2012

January 30, 2012

以下は、ESPNニューヨークの記事。
バレンタインいわく、「僕はヘスス・モンテーロがやがてヤンキースの正捕手になるだなんてこと、考えたことがない」そうだ。

どうだ(笑)
1月18日にアップしたダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年1月18日、打者より投手。そういう時代。で、「(ヤンキースが)ヘスス・モンテーロを放出したってことは、ヤンキースがモンテーロの将来性を既に見きわめ、見限ったのだ、ということくらい気づくべきだ。」と書いたが、まったく当たっていた。

もちろん、先日とりあげたESPNのジェイソン・スタークの記事(下記リンク)の内容とも見事に一致している。モンテーロは最初からヤンキースのトレード・ピースだったのである。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年1月20日、ESPNの主筆ジェイソン・スタークが、MLBにおけるピネダ放出を疑問視する声、ズレンシックのトレード手法の「狭量さ」に対する他チームGMの不快感、モンテーロの慢心ぶりへの関係者の不快感を記事にした。

そりゃそうだ。
下記の記事にもあるように、モンテーロは2011年9月に1ヶ月だけメジャーでプレーしているが、出場した18ゲームの大半(15ゲーム)は、DHとしての出場であり、マスクをかぶったのはわずか3ゲームにすぎない。
もしヤンキースがモンテーロを「シーズン通して」使う気があるなら、そして、「正捕手として」本当に使えるのなら、シーズン終了間際にこういう「チラ見せ」なんかせず、シーズン最初からキャッチャー兼DHとしてきちんと使う。それが「次期正捕手候補」としての正当な使い方だ。
Jesus Montero 2011 Batting Gamelogs - Baseball-Reference.com

おまけに、ヤンキースは去年のポストシーズンでも、モンテーロを1度しか使っていない。(ALDS Game 4 デトロイト戦 10-1でヤンキース勝利) しかもその出場は、デッドボールを受けたDHポサダの代打に過ぎず、単にDHとしての出場であって、キャッチャーとしては出場していない。ヤンキースはポサダにかわるキャッチャーとしてドジャースからラッセル・マーティンを獲っているのだから、当然の話だ。
守備に不安のある新米キャッチャーを、1試合1試合が真剣勝負のポストシーズンでマスクをかぶらせるわけがない。
New York Yankees at Detroit Tigers - October 4, 2011 | MLB.com Classic

下記の記事、もうちょっと捕捉が必要かもしれない。

ボビー・バレンタインは、ボストンの監督になる直前の2011年11月から、ニューヨーク生まれの往年の名投手オーレル・ハーシュハイザーなどとともに、ESPNのSunday Night Baseballという番組のコメンテイターをつとめていた。
下記の記事で、「1月中旬、こんなことを言っていた」という記述があるのは、番組を見たわけではないが、おそらく「1月中旬のSunday Night Baseballの番組中で、こんなコメントをしていた」という意味だろう。

ちなみにハーシュハイザーが引退したのは2000年のことだが、引退前年の1999年は地元ニューヨークのメッツでプレーしていて、そのときの監督がバレンタインだった。(バレンタインがメッツの監督だったのは、1996年から2002年まで)
バレンタインの故郷コネティカット州スタンフォードはニューヨーク中心部から北東へ約36マイル(およそ57km)で、ニューヨークの衛星都市、昔の言葉でいえばベッドタウンだから、同じニューヨーク郊外のバッファローで生まれているハーシュハイザーとは、出身地がほぼ同じという関係でもある。




Bobby V. not surprised by Montero trade - Yankees Blog - ESPN New York

Seeing the Yankees trade their young catcher, Jesus Montero, didn't come as a surprise to new Red Sox manager Bobby Valentine.
ヤンキースが若いキャッチャー、ヘスス・モンテーロをトレードするのがわかっても、レッドソックス新監督ボビー・バレンタインにとってそれは驚きではなかった。

"I thought that was kind of in their plans," Valentine said on Sunday at Rippowam Middle School in his hometown of Stamford, Conn. "He helped their plans come to fruition by the way he played that last month of the season. I didn't really ever think he was going to be their catcher of the future but maybe."
バレンタインは日曜に、故郷コネティカット州スタンフォードのRippowam Middle Schoolで語ってくれた。「モンテーロがシーズン最後の1ヶ月にプレーしたことは、ヤンキースのプランが実を結ぶのに一役買ったね。僕は、将来モンテーロがおそらくヤンキースのキャッチャーになるだろうなんてことを、まるで考えたことがない。

Valentine, who is never one to shy away from giving his opinion, previously didn't seem that impressed that the Yankees acquired touted rookie pitcher Michael Pineda from Seattle in exchange for Montero.
バレンタインは、自分の意見を言うのを尻込みしたりする人間ではない。ヤンキースがモンテーロと交換に有望ルーキー、マイケル・ピネダをシアトルから獲得したことにも、好印象を持っているわけではないらしい。

"Pineda, when I saw him in the first half (last season), he looked unhittable. In the second half, he looked OK," Valentine told reporters in mid-January. "I don't know. (Seattle) saw a lot of him, and they traded him."
1月中旬バレンタインはレポーターに、「ピネダは、昨シーズンの前半戦に見たときには、とても打てそうに思えなかった。だけど後半戦になったら、打てそうだったね。」と話していた。「シアトルがピネダの力量をどの程度確かめたのかわからないけど、彼らはピネダをトレードした。」

While Valentine said the trade didn't surprise him, he did not elaborate on why. The Yankees also traded away reliever Hector Noesi in the deal and received a minor league pitcher.
バレンタインは、このトレードに驚いてはいないと発言していたが、その一方で、このトレードが行われた理由については詳しいコメントをしていない。ヤンキースはこのトレードでリリーバーのヘクター・ノエシを放出し、マイナーのピッチャーを獲得している。


"I don't know," Valentine said when asked if he thought Montero was going to be used as a trade chip in the future. "I don't know what the Yankees are doing, I think Brian (Cashman) is a real smart guy, one of the great managers in the game of baseball, and I don't know what his plan was."
モンテーロが将来トレードのピースとして使われると思うかどうか尋ねたところ、バレンタインは「私にはわからない」と答えた。「僕にはヤンキースが何をしようとしているか、わからない。ブライアン(=ヤンキースGMキャッシュマン)は実に頭のいい男で、野球界の偉大なGMのひとりだけど、僕には彼がどんなプランを持っているのかなんてことまではわからない」


January 29, 2012

フィリーズから巨人に入団するらしいバンクーバー生まれのスコット・マシソンイチローファンだというのでうれしくなったという、たったそれだけの理由(笑)で、軽く調べてみることにした(笑)


カナダのバンクーバーは、シアトルからインターステイト5号線を120マイルちょっと北上してカナダ国境を越え、カナダの99号線(HWY-99)で約30マイル。所要時間は2時間40分から3時間ほど。シアトルとバンクーバーは「住みやすさ」という点で共通している。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年6月19日、野球大好きなパール・ジャムがデビューアルバムのセッションをしたLondon Bridge Studioは、セーフコから5号線を北に16マイル。


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彼のキャリアハイライトは今のところ、彼の公式ウェブサイトに書かれているとおり、2006年3月の第1回WBC予選第1ラウンドで、カナダ代表として1イニング登板し無失点だったアメリカ戦だろう。(2006年3月8日 WBC Pool B Game 3 CAN:USA アリゾナ チェースフィールド)
ScottMathieson.com • Biography

このゲームでカナダは、当時のMLBオールスタークラスの現役選手を揃えたアメリカチームを、8-6で破る金星を挙げている。(ちなみにカナダ先発Adam Loewenは、かつてボルチモアのトッププロスペクトだった左腕。3回2/3を投げ勝ち投手になったが、後に外野手に転向)
World Baseball Classic: Box Score: Canada vs USA March 08, 2006

このゲームのアメリカチーム、なかなかのメンバーだ。(よくWBCにおけるアメリカチームは辞退者続出のせいもあって手抜きをした、本気じゃないとワケ知り顔で語る人がいるが(笑)、どこをどう勘違いしているのだろう。調整不足はともかくとして、メンバー的には十分、本気だ)

1B マーク・テシェイラ
2B マイケル・ヤング(→チェイス・アトリー)
3B アレックス・ロドリゲス
SS デレク・ジーター
RF バーノン・ウェルズ(→ジェフ・フランコーア)
CF ケン・グリフィー・ジュニア
LF マット・ホリデイ
DH デレク・リー
C  ジェイソン・バリテック
P ドントレル・ウィリス、マーク・レスター、ゲイリー・マジュースキー、ブライアン・フエンテス、ジェイミー・シールズ、ヒューストン・ストリート
2006World Baseball Classic: United States: Rosters

2006年第1回WBC予選第1ラウンド カナダ対アメリカ


このゲームでマシソンは、カナダ2点リードの8回裏にリリーフし、なんとか無失点でイニングを終えて、いちおうチームの勝利に貢献したが、1イニングで四球を2つも出している。
20球投げて、ストライク11に対し、ボール9。どうやらマシソンというピッチャー、コントロールが悪いらしい。彼のメジャーでのWHIPは1.886と酷い数字なのだが、WBCでの登板も、残念ながら、まさにスタッツどおりの内容だ。
彼のコントロールの悪さは、フィリーズ在籍当時のスカウティングレポートでもかなり手厳しく指摘されている。(下記リンクはPECOTAのような専門シンクタンクの分析ではないことに注意。あくまで参考程度)
3rd & Longenhagen: MLB Prospect Scouting Report: Scott Mathieson
ストレート系
That velocity is great but the fastball is very flat. It has no sink.(速度自体は素晴らしいのだが、棒球。沈まない)
カーブ
Mathieson threw a handful of good ones but he doesn’t often know where it’s going and it’s flat.(数多く投げるものの、コントロールが悪いし、単調だ)
スプリッター
it sure looked nasty enough to be an effective major league pitch.(なかなか素晴らしい。十分メジャーで通用)


ストレート系を評価するときに、「ボールが微妙に動くかどうか」を問題にするあたりが、とてもMLBらしい。たとえストレート系であっても、2シームやカットボールのようにどれだけボールが打者の手元で動くかが、MLBでの投手評価のポイントになっていることが、よくわかる。単調なストレートしか投げられない投手ばかり生産したがるシアトルのマイナーのコーチに、この話を聞かせたいものだ。
スコット・マシソンの評価は他に、スロースターターだと言われていたのがブルペン投手としてどうなんだろうとは思うし、また、肘に故障を抱えているらしいのも気になる点だが、それなりに早い球が投げられて、スプリッターが切れるらしいし、まぁコントロールが多少マトモになって、イチローファンの彼に良い結果が残ることを一応期待しておきたい。


ちなみに、スコット・マシソンがかつてMLBにドラフトされる前に所属していたブリティッシュ・コロンビア州のユースチームLangley Blazeは、スコットの父親、ダグ・マシソン, Doug Mathiesonが作ったチーム。ダグ・マシソンは、カナダ球界でよく知られた存在で、「ブリティッシュ・コロンビア州で最も影響力のある野球人100人」にも選ばれている。
このユースチームには、かつて2009年12月のクリフ・リーがフィリーズに移籍した複数球団間トレードで、シアトルがPhillippe Aumontなどとともにフィラデルフィアに放出したTyson Gilliesも所属していた。
Baseball BC - Top 100 Influential Canadians in Baseball

Lawrie, Mathieson top Canucks in minors | Baseball | Sports | Toronto Sun

2011年Hutch賞受賞者が、カンザスシティ・ロイヤルズのフランチャイズプレーヤーで、愛くるしいオッサン顔(笑)のDH、ビリー・バトラーに決まった。(昨年の受賞者はアトランタ・ブレーブスの投手ティム・ハドソン
Billy Butler - Hutch Award Winner

Billy Butler humbled, thankful for Hutch Award | MLB.com: News

Hutch賞の歴史 ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:Hutch賞と、フレッド・ハッチンソン・ガン研究センター。野球と医学の架け橋。

Billy Butler

冗談さておき、弱冠25歳と若い彼がこの栄誉を授けられたということは、いかに彼が若い頃から他者への思いやりを持って生きてきているかという証である。(ビリー・バトラー自身は「チームの大先輩であるマイク・スウィニー積極的な慈善活動の姿勢から受けた薫陶のお蔭」と言っている)
心から彼の栄誉をたたえ、また、彼の名前がMLB史と医学史の一部となることを心から喜びたい。

本当におめでとう、ビリー・バトラー。

Royals DH Butler Named Hutch Award Winner | Baseball Digest

Billy Butler Statistics and History - Baseball-Reference.com

The Mike and Shara Sweeney Family Foundation - Mike Sweeney, Kansas City Royals 1B

Hutch Award Logo

以前Hutch賞について詳しく書いたように、Hutch賞受賞者は殿堂入りプレーヤーにエスコートされる形でシアトルにあるフレッド・ハッチンソン・ガン研究センターHutch Schoolを訪問することは、MLBとシアトルの、そして、野球と医学の2つの分野にまたがった歴史の上に成り立ったイベントである。
昨年のティム・ハドソンのシアトル訪問をエスコートしたのは、Big Red Machineの名二塁手ジョー・モーガンだったが、今年のビリー・バトラーをエスコートするのは、先日、来シーズンのイチローの打順について質問されて「彼は1番を打つプレーヤーだ。僕ならそうする」と答えたボルチモア・オリオールズの殿堂入りフランチャイズ・プレーヤー、名ショートのカル・リプケンである。
ビリー・バトラーは、リプケンにともなわれて2月1日にHutch Schoolを訪問する予定。

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カル・リプケン (今季イチローは何番を打つべきと思うか?と聞かれ)「イチローはリードオフマンだと思う。僕なら、そうする」 http://t.co/0tABwiWF

Hutch賞の由来と歴史についての記事:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:Hutch賞と、フレッド・ハッチンソン・ガン研究センター。野球と医学の架け橋。


OPSを批判するシリーズで書いていることだが、「低打率で、ホームランも20本程度のハンパなスラッガーのコストパフォーマンスの悪さ」は、OPSのような古くてデタラメな数値ではつかまえきれない。(とはいえ、これまでOPSに騙されてきた球団関係者の多くがこのことに気づきはじめているからこそ、多くのハンパなスタンスのDHがMLBをクビになりつつあるわけだが)

だが、ビリー・バトラーは、そういうOPS詐欺のバッターたちとは違う。

彼は2007年にデビュー後5年間たつわけだが、デビュー後5年間の平均打率は.297、フルシーズン出場するようになった最近3年間に限って言えば、平均打率.303と、3割を打っている。2009年から2011年の3年間に打ったホームランは平均18本だが、一方で年平均186本ものヒットを打ち、2011年には95打点を挙げている。
Billy Butler Statistics and History - Baseball-Reference.com
wOBAはキャリア通算.354で、これはイチローの通算wOBA.348並みの数字。最近3年間でいえば、.361、.372、.359と、数字をさらに押し上げてきている。同じようなホームラン数のバッターでも、例えば2011年に19本打ったミゲル・オリーボのwOBAが、たった.273しかないのと比べてみるといい。
Billy Butler » Statistics » Batting | FanGraphs Baseball

ビリー・バトラーは本当にシュアなバッターだ。
カンザスシティのチーム力を考えれば、このチームで95打点を挙げることの素晴らしさ、価値の高さは、NYYやボストンの中軸で同じ打点を挙げるのとは意味が違う。サンディエゴで活躍したエイドリアン・ゴンザレスがボストンに迎えられたように、ビリー・バトラーがFAになったときにはコンテンダーがほっておくはずはない。(それにしても、Aゴンザレスといい、バトラーといい、これからは「丸顔の時代」なのかもしれない 笑)
イチローがかつて「3シーズン通して活躍できてこそ、その選手はホンモノといえる」という意味の言葉を残しているが、ビリー・バトラーのバッティングスタッツのこの3年間の安定ぶりをみれば、今後の彼の成績にも大いに期待が持てると思う。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:指標のデタラメさ(OPS、SLG、パークファクターなど)

January 21, 2012

かつて2008年に、ダメ捕手城島を「ア・リーグ年間ワーストプレーヤー」に選ぶことで「ダメ出し(笑)」してくれたESPNのシニアライター、ジェイソン・スターク, Jason Stark は、全米スポーツメディアでも一目置かれるポジションにあるライターだが、マイケル・ピネダヘスス・モンテーロのトレードについて、ピネダのような若い主戦投手をトレードしてしまうことへの他チーム関係者の疑問符、ズレンシックの市場原理に基づかない狭量なトレード手法に関する他チームGMの不快感などを紹介した、彼ならではの記事を書いてくれた。
(この記事の本題は、十字靭帯を痛めたビクター・マルチネスには代わりになる選手などいない、それほど優れた選手だよ、という話なわけだが、中段にマイケル・ピネダ放出について書かれた部分があり、ピネダとモンテーロ、2人のプレーヤーとしての今後の課題にも触れている。ちなみに、2011シーズン終盤に突如としてという感じでピネダの球速が落ちたことは、ブログ主も当時すぐに気付いた。ピネダには他にも、球種の少なさやスタミナなど、課題は多いことはわかりきっているが、これらの課題の存在は、日米のMLBファンはじめ、ブログ主にも既にわかっている話ばかりであり、ジェイソン・スタークが取り上げたからといって、とりたてて重い意味はない)

この記事でちょっと驚くのは、シアトルGMズレンシックが、ちょっと前にブログ主がTwitterで紹介したばかりの、マイアミのあの攻守に優れた若い強打者マイク・スタントンを獲りにいっていたことだ。
damejimadamejima
でも、どういうプレー結果か、なんとなくわかりきってるヴェテランより、今のマーリンズで最も興味深いのは、マイク・スタントン。高校卒業時にNFLシアトルシーホークスの現ヘッドコーチ、ピート・キャロルがUSCのコーチ時代にスカウトしようとしたほど、あらゆるスポーツができた逸材中の逸材。

もしピネダの交換相手がマイク・スタントンだったら、いくらズレンシック嫌いのブログ主だって、そりゃさすがに脱帽ものだが、そんなことはまったく起こりえないことなので、心配ない(笑)
それこそ、マイアミの将来を背負って立つマイク・スタントンをトレードの駒にしたりすれば、かえって他チームのGMたちが「よく、まぁ、あのクラスの選手を放出したもんだ」と、ひっくり返って驚く。

下記の記事でピネダ放出というズレンシックの判断が他チーム関係者に疑問符をつけられたり、冷笑されるのは、ピネダの価値が「マイアミがスタントンを放出するレベルのありえなさ」かどうかは別にして、ピネダのような主力投手を放出する行為が、他チームのGMにしてみれば「ありえない行動」だからだ。(ましてシアトルはイチローと投手力しか長所がない。かたやヤンキースには、モンテーロを放出しても痛くも痒くもないだけの豊富なチーム力と人材があり、無能なプロスペクトマニアから見れば有望なはずのモンテーロを、実はヤンキース自身は煙たがっていた理由もハッキリあったことは、下記の記事に書かれているとおり)
メジャー1000打席で56ホームランの強打者にして強肩外野手でもあるマイク・スタントンは、メジャーでまだ100打席も打っておらず、守備能力のない慢心が噂されるDHモンテーロとは、モノがまるで違う。(というか、以下の記事で、ヘスス・モンテーロが完全にDH扱いされていることも、よく目を凝らして読むべきことのひとつ)スタントンとモンテーロを比べること自体、まったく意味がない。


この記事によって、ピネダ放出が他チームのGMや幹部、スカウトに冷笑されているのが、哀れな無能GMズレンシックの実態だということに、ひとつ確証が得られた。
ジャック・ズレンシックの小心で、市場原理に基づかない無意味なトレードぶりは、実はMLBの内部で好感されていない。他球団からすればズレンシックが「いかに、おいしい選手を安売りしてくれる、ありがたい、見る目の無いジェネラル・マネージャーであるか」が、この記事からよくわかる。


このブログにおける過去のJason Starkに関する記事
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2008年7月12日、城島はESPNのMLB専門記者Jason Starkの選ぶ上半期ワーストプレーヤーに選ばれた。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2008年9月28日、ESPNのJason Starkは城島をア・リーグ年間ワーストプレーヤー、「LVP」に選んだ。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月3日、かつて2008年に城島が選ばれた「ESPN上半期LVP」と「年間LVP」をほぼ同時受賞したといえるショーン・フィギンズ。そして、「シーズン最悪の非貢献者」と名指しされたも同然のズレンシック。

(以下Jason Starkの記事と粗訳。
 太字はブログ側による。)

Detroit Tigers challenged with replacing Victor Martinez - ESPN

• Here's a question several teams asked this week: "How come we never knew that Michael Pineda was available?" Interesting issue.
今週、いくつかのチームからこんな質問を受けた。「マイケル・ピネダがトレード可能だってことが、なんで我々にはちっともわかんなかったんだ?」 興味深い話だ。

"I bet I've had a dozen conversations with [the Mariners] this winter," said an official of one club. "Never brought him up. I guess we didn't have what they were looking for."
「この冬(マリナーズ関係者とは)非常に頻繁に話したんだけどもね」と、あるクラブの関係者。「ピネダのトレードを議論の俎上にのせることはできなかったな。まぁ、たぶん、彼らの求めていたものを我々が持っていなかったからだろうけど。」

And that, it appears, is exactly what went on here. Mariners GM Jack Zduriencik clearly targeted a very select group of young, controllable, impact bats -- Jesus Montero, Mike Stanton, Logan Morrison, etc.-- and dangled Pineda only to those teams, for those hitters. Eventually, it turned out to be the Yankees who said yes.
たしかにその話はどうも当たっているようだ。マリナーズGMのジャック・ズレンシックは、ヘスス・モンテーロ、マイク・スタントン、ローガン・モリソンなど、若く、バットコントロールもいい強打者にはっきりターゲットを絞っていて、それらのチームやバッターに対してのみ、ピネダとのトレードをちらつかせていたらしい。話に応じたのが、結局ヤンキースだった、というわけだ。

But what if Zduriencik had made it more widely known that he'd talk about Pineda, the way the A's did with Gio Gonzalez and Trevor Cahill, the way the Padres did with Mat Latos? Would he, or could he, have gotten more than Montero and Hector Noesi?
しかし、アスレチックスがジオ・ゴンザレスやトレバー・ケイヒルに、もしくは、パドレスがマット・ラトスについてそうしたように、もしズレンシックが、ピネダがトレード可能であることを、もっとオープンにしていたらどうだっただろう? モンテーロやヘクター・ノエシ以上の獲物をゲットできただろうか?
=ブログ注:市場価値が高いとわかっている選手のトレードで最大限の収穫が得られるように、アスレチックスやパドレスが主戦クラスのローテ投手のトレードをオープンにしたように、ズレンシックがピネダのトレード話をオープンにしていれば、シアトルは、DHモンテーロなどではなくて、もっと大きな収穫を得られた可能性があったかもしれない、という意味

"We were blown away when this deal went down," said one GM. "I can't believe they would trade that kind of player. I'm not sure how you do that and not contact everybody. I'm sure Jack likes the deal he made. But even if you don't match up, you never know what you might be able to get if you open it up to start exploring three-team deals."
「我々はこのトレードの話を聞いて、ぶっ飛ぶんださ。」と、あるGM。
「私は、彼らがあのクラスのプレーヤーをトレードしたことにビックリしたんだ。なんでそうするのかわからないけど、他の全チームに接触することなくトレードしたんだからね。よくわからない話さ。たぶんジャックは、ああいうやり方が好きなんだろうな。
でも、たとえお互い求めてるものが一致してなくても、情報がオープンにされてれば、複数チーム間のトレードで欲しい選手が得られるかどうか模索できるわけだけど、情報がオープンじゃないんだから、欲しい選手が得られるかどうかなんて、あれじゃわかりっこないよ。」
=ブログ注:ピネダクラスの投手ならウチだって欲しいんだから、言ってさえくれれてれば、もし自分のチームにシアトルの欲しい選手がいなかったにしても、第3のチームを巻き込んで、シアトルがモンテーロ以上に欲しい選手を提示することができたかもしれないが、情報がオープンじゃないなら何もできっこない、という話

• After any trade like this, a swap of two young players who appear bound for stardom, people start reading all sorts of ulterior motives into it. So let's get to conspiracy theory No. 1 -- that something is up with Pineda.
こういう、これからスターダムに乗ってきそうな2人の若いプレーヤーのトレードの後では、そこに隠されたトレードの裏話が探られるものだ。ピネダに関する謎解きは、こうだ。

"I saw him in September, and he was throwing 87-91 [mph]," said one exec. "I'm sorry. You just don't trade [young, controllable] premium top-of-the-rotation starters unless something ain't right. I just find it strange [to] trade a front-line starter for a DH."
「僕は9月に彼を見てる。87マイルから91マイルを投げていたね。」と、あるチームの幹部。
「申し訳ない言い方になるけど、なにかよほどの問題があるのでもない限り、プレミアムのついた(つまり、若くて、コントロールもいい)主戦クラスのローテーションピッチャーをトレードするなんて、ありえない。まして、ローテの軸になる投手をDHとトレードだなんて、おかしなことをするもんだとしか言いようがないよ。」

Now the common wisdom on Pineda is that he just slammed into a wall after hitting his innings limit. And no one else we surveyed was alarmed by his fading velocity down the stretch. But it's something to watch, because the facts back this up. For the record, here are Pineda's four-seam fastball velocities through the season, according to Pitch F/X:
ピネダについては、彼がいわゆる「イニングの壁」にぶちあたって打たれる、ということが共通認識になっているが、我々が調べた範囲の関係者では、2011シーズン最後になって彼の球速が落ちたことに警鐘を鳴らす人は、誰ひとりいなかった。だが(ピネダの球速低下を)裏付ける事実もあるので、それは一応見ておくべきだろう。Pitch F/Xの記録によれば、ピネダの4シームの球速は、シーズン通して以下のようになっている。

April 5 (first start of the year): 94-98
June 1: 94-97
Aug. 9: 95-97
Sept. 21 (last start of the year): 91-93


• Now here's conspiracy theory No. 2 -- that there were below-the-surface issues with Montero that caused the Yankees to dangle him in several major deals over the last year and a half.
次に、2つめの謎解き。モンテーロにまつわる水面下の問題だ。それは、ヤンキースが1年半以上もの長きにわたって、いくつかの大きなトレード話にモンテーロ放出をちらつかせる原因になった。

The Yankees obviously insist otherwise. They're deep in catchers. And they just scored the second-most runs in baseball. So their take is simply that they dealt from strength, and the Mariners were doing exactly the same thing.
ヤンキース自身はきっと違う主張をするだろうが、彼らはキャッチャーを多数抱え込んでいる一方で、彼らはMLBで二番目に多い得点をできるチームでもある。だから彼らが望むのは、シンプルに彼らの(選手層の)強みを生かしたトレードであり、また(投手に強みをもつ)マリナーズもまた全く同じことをしようとした。
=ブログ注:つまり、スタークが言いたいのは、ヤンキースにはキャッチャーならいくらでもいて、得点力にも問題がないのだから、モンテーロくらい、いなくなっても別に痛くないんだよ、ということ

But we've written in Rumblings before that there are teams out there that have been wary of Montero despite his undeniable talents. And what turned them off was their perception that he showed signs of "big league-itis" before he ever reached the big leagues.
しかし我々は、以前、モンテーロには否定しようのない才能がある反面で、いくつかの不満からモンテーロ獲得に及び腰になるチームがあることを記事にした。それらのチームのモンテーロ獲得意欲を萎えさせたのは、モンテーロがメジャーに上がる前にみせた『大リーグ病』の兆候だ。

"I'm just not sure about his makeup," said one scout who covers the Yankees' system. "I don't like that he looked bored, at 21, playing professional baseball in Triple-A. Yeah, he'd had some success. But he acted like he'd won five batting titles in the big leagues. … I will say, though, that I saw signs of growth in the last year. I thought Jorge Posada had an effect on him last year in spring training. So hopefully, he got the message. And hopefully, it was just immaturity."
「彼の気質について、確かなことを言えるわけじゃないけど」と、ヤンキースの育成システムに精通する、あるスカウトは言う。
「まだ21歳の彼が、プロとしてトリプルAでプレーすることに飽き飽きしてるように見えたことが、気に入らないね。
たしかに、彼はちょっとばかり成功を納めたさ。でも、まるでメジャーの5つのバッティングタイトルを獲得したかのように振舞うって、ちょっとどうかと思うよ。言わせてもらえば、去年で今後の成長についての前兆を見た、とでもいうかさ・・・。
去年のスプリング・トレーニングではホルヘ・ポサダの存在が、彼に影響を与えてたと思う。だから、モンテーロがそこから何かメッセージを受け取っていることを願うばかりだね。単にまだ未熟だからだけなら、いいんだけどもね。」
=ブログ注:去年のスプリング・トレーニングでは、大先輩で、お目付け役でもあるホルヘ・ポサダの存在があって、モンテーロのわがままを抑制することもできたが、ポサダのような存在がなくなったら、どうなるかわからないよ? という意味


January 19, 2012

ちょっとした理由があって、奥歯にモノがはさまったような言い方をするのに飽きたから、何事もハッキリ書いておく。


ついさっきダルビッシュの契約がようやくまとまったニュースが野球関連のツイッターを駆け巡ったばかりだが、シアトルのローカルコラムニスト、デビッド・キャメロン
「もし、プリンス・フィルダー、ジョシュ・ハミルトン、ダルビッシュの3人のうち、2人をとっていいと言われたら、オレなら迷わずフィルダーとハミルトンを選ぶ」なんて回りくどいことをツイートしている。
d_a_cameronDavid Cameron
If someone told me I could pick two of three between Fielder, Hamilton, and Darvish, I'd pick the first two. Pretty easily, too.

シアトルが興味を示しているとかどうとか「飛ばし」くさい報道の続いているフィルダーを引き合いに出すのは、まぁご愛嬌だが、どこをどう話をねじ曲げるとハミルトンの話になるのか、わけがわからない。シアトルの話じゃなく、テキサスがフィルダーとハミルトン、両方獲れるかどうかなんて話題なら、もう話にならない。シアトルローカルが他チームの議論をして何になる。
この人、さっきからずっと、ダルビッシュのテキサスとの交渉を、チクチク、チクチクと、ツイッターでこねまわすような言い方の揶揄を続けているわけだが、なんてまわりくどい男なんだと思いつつ、ツイッターを読んでいた。

もしキャメロンが、いつ再建が軌道に乗るのかすら見えてこない今の白色矮星シアトルにフィルダーのような金額の打者が絶対に必要だと本気で思うのなら、ハッキリそう書いて恥をかけばいいだけのことだ。まぎらわしいことばかりグダグダ書いてないで、言いたいことがあるなら、ハッキリ書けばいい。
「金のあるチームの番記者がうらやましい」でも、「本当のことをいうと、夢のあるテキサスに引っ越したい」でもいいし、「本当のことを言うと、オレは野球をやったことはないけどホームランだけが死ぬほど好きなんだ」でも、「オレは日本人が嫌いだ」でも、「FOXのローゼンタールみたいな全米メディアのメジャーな記者より才能のあるオレが、なんでシアトルローカルに埋もれて人生を終わらなきゃいけないんだ」でも、なんでも、好きなことを好きなだけ書けばいいのだ。
別に意見を言うだけなら、タダだし、無害だ。こちらは痛くも痒くもない。なんとでも書けばいい。回りくどいことを、クドクド言う必要などない。


テキサス・レンジャーズが、メジャー実績の全くない未知数の日本人投手ダルビッシュとの交渉を、満を持してFAになったメジャーを代表するホームランバッターのひとりプリンス・フィルダーとの交渉より優先したこと。これは事実であり、動かせない。
もしキャメロンが、テキサスがメジャー実績のない非アメリカ人選手との交渉を、メジャーで実績を積んできたメジャーの打者との交渉より優先したことがどうしても気にいらないのなら、「ツイッターでグダグダ言ってないで、テキサスの球団事務所に直接電話しろ」と言いたい。


だが実績主義を持ち出して議論する輩(やから)に限って、まだメジャーでたった18ゲームしかプレーしてない未知数のヘスス・モンテーロを持ち上げるダブルスタンダードだから、始末が悪い。69打席で17三振もした、守備のできない、狭いヤンキースタジアムの扇風機が広いセーフコでプレーしても、まるでアルバート・プーホールズジョー・マウアーにでもなれるかのように持ち上げたがる。

ウザいこと、このうえない。

そもそも、長年ヤンキースのキャッチャーをつとめてきて、最近はDHに退いていたホルヘ・ポサダが引退して、キャッチャーが手薄になったというのに、ヤンキースが同ポジションのトップ・プロスペクト、ヘスス・モンテーロを放出したってことは、ヤンキースがモンテーロの将来性を既に見限ったということだ、ということくらい、気づくべきだ。ヤンキースだって馬鹿じゃない。


そもそも、選手層の厚いテキサスにチーム力で大差がつけられただけでなく、高額な放映権を手にしたことで、今シーズン以降、好きなように選手層を分厚くできる予算が毎年得られることが確定したLAAにも覆しようのない大差をつけられた弱体化球団シアトル・マリナーズが、いまさらフィルダーを獲る意味なんてものは、「ジャック・ズレンシックが大失敗を続けて、今年さらに落ち込むのが確実の観客動員をなんとか食い止めるための客寄せパンダ」程度の意味しかない。
そんなものは「キングスコートとかいう、ヘルナンデスをダシにした悪ふざけ」と同じ程度の悪あがきだ。くだらないにも程がある。
そんな程度のマーケティングで、ズレンシックがあまりにも無能であることに気づいて逃げ出したシアトルの地元民がスタジアムに戻ってくるわけがない。



OPSのデタラメさを書いたシリーズ
(あれはこれからの野球を見る上で重要な記事だから、全ての人に目を通してもらいたい)で言いたかった裏の意図のひとつは、「もう指標詐欺のハンパ打者に大金をはたく時代は終わる」ということだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:指標のデタラメさ(OPS、SLG、パークファクターなど)
(ダメ捕手城島や引退寸前の松井はともかく、フィルダーの打撃スタッツはさすがに指標詐欺とは言わないが、フィルダーが果たしてライアン・ブラウンと同じようなドーピングをしてないとは、まだ言い切れない)

今年から始まるヒト成長ホルモン検出のための血液検査。去年の暮れに発覚したライアン・ブラウンのドーピング問題。メープルバットの規制問題。こんな時代なのに、まだ「当分は再建モードが続くチームに、プリンス・フィルダーが必要だ」とか、わけのわからないことを主張し続けている人間がいること自体、理解できない。

まして、セーフコは投手有利のピッチャーズパークだ。
ヤンキースタジアムやアーリントンのような打者有利のヒッターズパークで、それも100打席にも満たない少ないわずかな打席数で、ちょっと見栄えのする打撃スタッツを残したからといって、将来のあるローテ投手を放出する犠牲まで払って、バッターをピッチャーズパークに連れてくるくらい、馬鹿馬鹿しいトレードはない。
ヒッターズパークからピッチャーズパークに移籍しても、打撃成績がまったく落ちないくらい飛びぬけた天性に恵まれているのならともかく、セーフコに来る打者の打撃成績は、下がって当たり前。

クリフ・リーを出してまで獲ったジャスティン・スモークが、2011シーズンのプレー結果で、左打席では低めの変化球をまるで打てないばかりか、守備が下手(2011年のUZRマイナス0.8)なことまで確定して、守れるのは1BとDHくらいでモンテーロとかぶり、しかも、オリーボにまだ契約が残っているというのに、キャッチャーのジョン・ジェイソを獲ってしまい、ただでさえ、またもやキャッチャーがダブつき状態だというのに、ダグ・フィスターの安売りに続いてマイケル・ピネダまで出して、ほぼDHでしか使えないヘスス・モンテーロを獲り、それでも飽き足らず、スモークとも、モンテーロとも守備位置のかぶるフィルダー?


笑わせるなっての(笑)馬鹿。


コンテンダー、たとえばフィリーズが、大投手ロイ・ハラデイクリフ・リーを手中にしたことで、往年のブレーブスのように安定してポストシーズンに進出し続けていること。贅沢税に怯えているはずのヤンキースだが、それでも、単年ではあるにせよ黒田と高額で契約する一方で、マイケル・ピネダを確保したこと。テキサスがフィルダーより優先でメジャー実績のないダルビッシュに長期契約を提示し、契約したこと。覇権奪回を目指すLAAがライバルのテキサスから5年75Mの契約でCJウィルソンを奪いとったこと。

要は、「打者よりも投手」の時代なのである。

OPSのようなデタラメ指標に保護され、甘やかされてきた打者より、長い期間優れた成績を残せるホンモノの投手を優遇する時代なのである。OPSみたいなデタラメ数字を信じて野球をやっているのは、タンパベイくらいのものだ。


フィルダーですら実は売り先がみつからないで困っているというのに(たぶん彼はコンテンダーには行けないだろう)、守備のできないDH専用のハンパ打者に大金を与える(または手持ちの有望投手と交換する)などという行為は、これからの時代にはまるで無意味だ。
(もちろん、DHとはいえど、エドガー・マルチネスは別格。彼は殿堂入りしてもおかしくない。現役で言うならデトロイトのビクター・マルチネス。だが、2人のマルチネスのレベルの打者ででもない限り、DH専用打者と高額サラリーで契約などありえない。ビクター・マルチネスは先日靭帯を断裂して今シーズンは絶望らしいが、2011シーズンのクレバーなバッティングが素晴らしかっただけに、非常に残念だ)
サードピッチの習得、配球の単調さの改善、スタミナの上積みなど、課題は山積していたが、まだ伸びしろのあったマイケル・ピネダを、2011年7月のフィスター放出同様にトレードしてしまい、かわりに、海のものとも山のものともつかず、DHにしか使いようがないヘスス・モンテーロを獲ってきてしまうシアトルの「先の時代の見えてない野球」を議論するなんてことは、時間の無駄。


スティーブ・ジョブズは言っている。
今日やるべきことは、本当に心からやりたいことか
考えろよ。と。

ズレンシックの馬鹿げた「タイトルだけしか書かれておらず、肝心の中身は白紙の企画書」みたいな野球マネジメントや、シアトルの地元メディアのくだらない戯言(ざれごと)につきあわされるのは、まっぴら。シアトルが要りもしないフィルダーを獲るかどうかだの、どうせそのうちズレンシックが下手すぎるトレードを繰り返した挙句、手駒が足りなくなりトレードの駒にしてしまうのがオチのスモークやモンテーロの将来性だの、そんな無意味な議論で時間をムダにするくらいなら、来年に90年代の超大物ステロイダー(バリー・ボンズマーク・マクガイアサミー・ソーサラファエル・パルメイロロジャー・クレメンスなど)がズラリと顔を揃え、その一方で、ステロイドと無縁だった名選手たち(どうみても誰よりも先に殿堂入り当確のグレッグ・マダックスと、クレイグ・ビジオなど)が、一斉に投票にかけられる2013年の野球殿堂入り投票のことでも考えるか、野球を忘れて温泉にでも行ったほうが、はるかにマシ。
2013 Potential Hall of Fame Ballot - Baseball-Reference.com


ダルビッシュについて語るノーラン・ライアン(動画)
今は球団社長とはいえ、もともと名投手のライアンだけに、ダルビッシュの投手としての特徴を、「低めに決まる変化球がいいね」とか、それはもう、明確に喋っている。
Baseball Video Highlights & Clips | Emily Jones talks with Nolan Ryan about Yu Darvish - Video | MLB.com: Multimedia

January 04, 2012

今まで考えてみたこともなかったが、インターネットには年齢は関係ない。ならば、このブログを、まだ分別のない子供が読むかもしれない。(ペアレント・コントロールで、このクチの悪いブログを親が読ませないかもしれないが)

だとしたら、子供たちの世の中に対するいらぬ誤解を避ける意味で、書いておかなければならない、気になることが、ひとつある。

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あなたはたぶん、虫歯になったことがあるだろう。
誰でも虫歯にはなる。

じゃ、虫歯を治療する方法は知っているだろうか?
そう。歯医者さんに行けばいい。それだけのこと。
(虫歯と発車しそうなバスを糸で結んでおくのも、
 ひとつの手だが、あまりすすめられない)



虫歯になったことがあるなら
次の話も理解できるはずだ。

「人間は虫歯になるものだ。」という話と、
「虫歯を、治せるか、治せないか」
「虫歯は、治すべきなのか、どうか」
「虫歯を治す方法は、あるのか、ないのか」
という話は、まるで違う話。


人間はたしかに虫歯になる。なるけれど、もし虫歯が痛ければ、治す方法はとっくにあるんだから、歯医者さんに行けばいい。
「人間は虫歯になるものだ」という言葉は、見た目は、みょうに立派だ。だけど実をいうと、中身はぜんぜん無いんだ。


オトナはよく、こういう「ヒトは虫歯になる」的な、「中身のぜんぜん無い決めつけ」から話をはじめたがる。そのことに、すこし注意を払うべきなんだ。



たとえばMLBで、ライアン・ブラウンのドーピング疑惑が明らかになったとき、FOXのローゼンタールさんは吐き捨てるように、こう書いた

「スポーツはクリーンには、ならない。」


そう。
もし虫歯の話が本当に理解できたなら
何が言いたいか、もうわかるはずだ。
(わからないなら、最初から読み返しなさい)

「スポーツは往々にしてクリーンではない」ということと、
「スポーツを、クリーンにできるか、できないか」
「スポーツを、クリーンにすべきか、どうか」
「スポーツをクリーンにする方法は、あるのか、ないのか」
という話は、同じじゃないんだ。


たぶん、ローゼンタールおじさんの心には、「ひどく悲しくて、取り除けない思い出」でも詰まってるんだろう。オジサン、時々ひどく口が悪いが、悪い人じゃない。たぶん、やりきれない気持ちを吐き出すための良い方法が他にみつからないだけなんだ。だからモノを書く仕事をして、気を紛らせている。


オトナは「人間は虫歯になるものだ」的なリクツで、みょうに雄弁になるときがある。子供はそれを、マトモにとっちゃいけない。

オトナがいくら「スポーツはクリーンじゃない」とか、自分のおかれた現実に絶望したフリをしてみせても、、たとえ「スポーツにはときどきクリーンじゃないときがある」としても、それでスポーツをクリーンにできる方法が無くなるわけじゃない。
そのことを、子供は間違えないで、覚えておいてほしいんだ。



ついでだから、言っとこう。
よくこんなことを言う、頭の悪い人がいる。

「野球は得点の多いほうが勝つスポーツだ」

うん。まぁ、そうだね。
で。だから、なに?


もうわかるだろ。

「野球は、たくさん点をとったほうが勝つスポーツだ」っていう話はみょうに立派だけど、実は現実の野球でどう勝つかっていう話とは、まるきり関係ないんだ。だから、そこから勝つためのゼッタイの方法なんて、導けたりしないんだ。



めんどくさくなるとオトナはよく、こういう「人間はいつか死ぬ」だの、「地球はどうした、こうした」だの、「電気が足りないから野球はやるな」だの、大げさなことを言う。そういうのを聞いても、子供は心を柔らかくして、一度やりすごすべきなんだ。

けしてオトナを真似て、絶望にとらわれちゃ、いけない。
虫歯があれば、治しておけばいいだけなんだ。



ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年12月10日、ライアン・ブラウン事件の衝撃で珍しく感情的で悲観的な記事を書いたFOXのローゼンタール。

このシリーズでは「OPSのデタラメぶり」を書き続けてきている。

「種類も数値レンジも違う率と期待値を、足し算する」という、OPSのデタラメなコンセプトそのものが、もともとお話にならないものであることについては、もはやコメントする必要もない。

OPSの基礎数値のひとつであるSLGは、「長打率」と誤訳されることが多いが、実際には、単なる「打数あたりの塁打期待値」を計算しているに過ぎず、長打力そのものを示す数字でないのはもちろん、打者の得点力を直接示す数値でもない。(例:「塁打数」を計算するだけの数字であるSLGにおいては、ホームランを「」と価値評価するが、打者の得点力の統合的な算出を目指すwOBAの計算においては、ホームランにSLGの約半分、「1.95」の価値しか与えていない)

さらにSLGには、打数減少によって数値が動く欠陥がある。これは、たとえ長打がまったく増えなくても、例えば四球増加によってSLGおよびOPSを「みせかけだけ増加させることができる」という意味であり、指標として致命的欠陥といえる。

また「四球によるOPSの多重加算」は、単にOBPとSLGに二重加算を行うばかりではなく、バッターのホームラン数や四球数によって加算率が勝手に変化し、打者のタイプごとに違う率で「水増し加算」が行われる。

これらのどれもが指標として致命的といえる欠陥だが、これらの欠陥の全てがOPSという1点に集積された結果、OPSにおいては「バッターごとに、異なる判定基準が適用される」という異常事態になっている。これは、モノを測定する基準であるはずの「指標」というものにあってはならない決定的な欠陥であり、もはや救いようがない。
単一で偏りの無いのモノサシを使って選手のプレーを測定し、選手相互を比較するのが「指標」というものの基本的役割だが、「判定に使うモノサシそのものが、打者ごとに偏る指標」など、指標として意味がなく、OPSのようなものを指標と呼ぶことすらおこがましい。

OPSの計算プロセスは、一見すると単純そうに見えるが、その実、裏側では、「SLGにおける単なる塁打数の計算結果を、それがあたかも打者の得点力の表現ででもあるかのように読みかえつつ、ホームランバッター(あるいは四球の極端に多い打者)など、特定打者に対してのみ、数値が、多重、かつ、水増しされて加算される悪質な仕組み」になっていて、「ヒットですらない四球と塁打数を、長打力にみせかけて」いる

見かけ倒しのデタラメ指標であるOPSは、得点力や長打力を示すと詐称されてきたわけだが、OPSが実際にやっていることは「数値詐欺」、「指標ドーピング」と呼んでも、なんらさしつかえない。OPSはまさしく「汚れた数字」である。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年12月20日、率と期待値を足し算している「OPSのデタラメさ」 (1)「OPSのデタラメさ」の基本を理解する

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年12月21日、率と期待値を足し算している「OPSのデタラメさ」 (2)小学生レベルの算数で証明する「OPS信仰のデタラメさ」

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年12月22日、率と期待値を足し算している「OPSのデタラメさ」 (3)OPSにおける四球の「二重加算」と「ホームランバッター優遇 水増し加算」のカラクリ



さて、ここまでOPSの「汚れた計算」を、主に「リクツ面」から説明してきたが、こんどは「ホームラン20本前後のハンパなスラッガーの打撃スタッツ」を例に、現実の打者において、OPSというデタラメ数字が、いかに四球数をみせかけの長打力に「すりかえているか」という実例をみてみる。
OPSという「打者によってモノサシの目盛りが変わる、デタラメな指標もどき」が多少マトモに機能するのは、ホームラン数の似た打者同士を相互比較するときくらいであることは、このシリーズの記事で書いてきたことをじっくり読み返してもらえば、誰でもわかると思うが、そのホームラン数が近いバッター同士の比較においてすら、OPSは現実にはまるで機能しない。以下に示すとおり、わかるのは単に、四球数をOPS数値にすりかえて長打力にみせかけるOPSのデタラメさだけだ。


以下の3グループは、2011シーズンのア・リーグの日本でもよく知られた打者のうち、OPSにおける四球の多重加算の恩恵を受けやすいホームラン数20本前後のバッターを取り出し、OPSの違いによってグルーピングしたもの。
(3つのOPSグループのスケール感をイメージしやすくする意味もあり、日本人打者から城島と松井を加えた。もちろんグループB以下に属する彼らの打撃成績の空疎さも、以下の記述から明確になる。また、以下では特に言及しないが、今回取り上げるホームラン20本前後のバッターにおける「四球によるOPS多重加算の率」と、ホームラン数の大きく異なるバッターのOPS加算率は、異なることに注意が必要だ。ホームラン数が多いほど加算率は高い一方、アベレージヒッターの加算率は低く抑え込まれている)

結果は見てのとおり。
いちいち説明しなくても意味はわかるだろう。

3つのOPSグループ間の「OPS格差」をもたらした要因は、OPSの特徴であると詐称されてきた長打の差ではない。「OPS格差」をもたらしたのは、「四球数」だ。

自分で計算してみれば誰でもわかることだが、例えば「二塁打数の差」程度では、これほどのOPS格差は生じない。(言うまでもなく三塁打の数の差も、さらにたかがしれている。二塁打については、詳しくは記事下部の計算例A、計算例Bをさらに参照されたい)
いいかえると、中途半端なスラッガーにおけるOPSなんてものは、打者ごとに大差のある「四球数」を、OPSのデタラメ計算を通じて、それがあたかも「長打力の差」ででもあるかのように「見せかけている」だけに過ぎないのである。


グループ A
〜OPS.600中盤まで
打率が極端に低く。四球も極端に少ないのが特徴
城島(2008)  7本 .227 19四球 19二塁打 OPS.609
リオス     27本 .227 27四球 22二塁打 OPS.613
オリーボ    19本 .224 20四球 19二塁打 OPS.641
ウェルズ    25本 .218 20四球 15二塁打 OPS.660
---------------------------------------------------
グループB
OPS.700〜.800あたり
四球50〜60個。二塁打20本〜30本
セクソン(2007)21本 .205 51四球 21二塁打 OPS.694
松井       12本 .251 56四球 28二塁打 OPS.696
スモーク     15本 .234 55四球 24二塁打 OPS.719
リンド       26本 .251 32四球 16二塁打 OPS.734
城島(2007)  14本 .287 15四球 29二塁打 OPS.755
アップトン    23本 .243 71四球 27二塁打 OPS.759
ハンター     23本 .262 62四球 24二塁打 OPS.765
城島(2006)  18本 .291 20四球 25二塁打 OPS.783
---------------------------------------------------
グループC
OPS.800以上
四球(60〜80)と二塁打(30〜40本)がともに多い
カダイアー    21本 .284 48四球 29二塁打 OPS.805
ゾブリスト    20本 .269 77四球 46二塁打 OPS.822
スウィッシャー 23本 .260 95四球 30二塁打 OPS.822
ユーキリス   17本 .258 68四球 32二塁打 OPS.833
クエンティン   24本 .254 34四球 31二塁打 OPS.838
ロンゴリア    31本 .244 80四球 26二塁打 OPS.850
アビラ      19本 .295 73四球 33二塁打 OPS.895



グループ間の「OPS格差」をもたらしたのが「二塁打数の差ではない」ことについて、ちょっと説明しておこう。

OPSのようなデタラメを信仰している人はいまだに多い。だから、こうして目の前に数字を見せつけられても、まだ「二塁打数に差があれば、OPSに差がつくのが当たり前だろが?」とか鼻息荒く怒鳴り散らしたがる頭の悪い人もいると思う(笑)「あらあら。残念でした」と言うほかない(笑)

なぜなら、
10本やそこらの二塁打の差くらいで、計算上、これほどのOPS格差は生まれようがない
からだ。

下記の計算例Aを見てもらってもわかることだが、「10本ちょっとの二塁打数の差」は、OPSにおいては「10を少し越える程度」の「塁打数の差」という意味にしかならない。この「10ちょっとの塁打数の増加」は、OPSの計算プロセスでいうと、「SLGを算出する割り算における分子である、総塁打数が10くらい増える」という意味なわけだが、10やそこら塁打数が増えたとしても、その程度の数字の変化では、3グループ間にこれほどの「OPS格差」がつく主原因にはならないのだ。



ここまで書いてもまだ納得がいかない人のための過剰サービスとして(笑)、以下に「OPSに影響するのが、二塁打数ではなく、四球数である」ことを示すための2つの計算例を挙げておく。

計算例Aは、二塁打の増加でSLGがどの程度の数字レンジで変化していくかを見るためのものであり、計算例Bは、四球数の増加でSLGがどう変化するかを見るためのものだ。
これら2つの計算例から、四球数の計算例Bで、OBPとSLGが同時加算され、しかもSLGが水増し加算されて増加することにより、結果的に「二塁打よりも、四球のほうが、OPS数値がはるかに大きく動くという、OPSのデタラメと異常さ」を、しっかり自分の目で確かめるといい。

計算例A 二塁打数増加にともなうSLGの変化
SLGの変化を見えやすくするため、四死球、三塁打、犠飛はゼロとし、打数600(=フルシーズン出場)、ヒット総数180、ホームラン20本の打者で、二塁打の数が、20本、30本、40本のときのSLGの変化を計算する。
現実の野球的に即して考えて、「二塁打数が増えても、ヒット総数自体は180本で、変わらない」ものとする。

二塁打20本のときのSLG
=(140+20×2+20×4)÷600
=塁打総数260÷打数600
=0.433
(このとき出塁率は180÷600=0.300だから)
OPS=OBP+SLG
   =0.300+0.433=0.733

二塁打30本のときのSLG
=(130+30×2+20×4)÷600
=270÷600
=0.450
(OBP=180÷600=0.300から)
OPS=0.300+0.450=0.750

二塁打40本のときのSLG
=(120+40×2+20×4)÷600
=280÷600
=0.466
(OBP=180÷600=0.300から)
OPS=0.300+0.466=0.766


計算例B 四球数増加にともなうSLGの変化
SLGの変化を見えやすくするため、三塁打、死球、犠飛はゼロとする。打数600、ヒット総数180、ホームラン20本、二塁打20本、シングルヒット140本の打者が、四球数ゼロ、20、40、60、80のときのSLGの変化を計算してみる。

四球数がゼロのとき
SLG=(塁打総数140+20×2+20×4)÷打数600
=260÷600
=0.433
(このときOBP=出塁数180÷打席数600=0.300)
 OPS=0.300+0.433=0.733

四球数が20のとき
SLG=(140+20×2+20×4)÷(600−20
=260÷580
=0.448
このときOBP=(180+20)÷600=0.333だから
OPS=0.333+0.448=0.781

四球数が40のとき
SLG=(140+20×2+20×4)÷(600−40
=260÷560
=0.464
このときOBP=(180+40)÷600=0.367だから
OPS=0.367+0.464=0.831

四球数が60のとき
SLG=(140+20×2+20×4)÷(600−60
=260÷540
=0.481
このときOBP=(180+60)÷600=0.400だから
OPS=0.400+0.481=0.881

四球数が80のとき
SLG=(140+20×2+20×4)÷(600−80
=260÷520
=0.500
このときOBP=(180+80)÷600=0.433だから
OPS=0.433+0.500=0.933


くどくど説明しなくても、もうわかるだろう(笑)

もういちど書く。上に挙げた3つのOPSグループに存在する「OPS格差」をもたらした主原因は、長打力の差でなく、「四球数の大差」であり、四球数の差がみせかけの長打力の差にすりかえられているだけに過ぎない。


MLBで最も多く二塁打を打てるバッターでも二塁打を10本打つには一ヶ月半以上かかるわけだが、計算Aをみればわかるように、たとえ苦労の末に二塁打を10本増やしたとしても、OPSの数値上昇はわずか0.016程度に過ぎない。
それに対して、計算Bからわかるのは、四球が20増えるごとに、OPSは0.050も増加するという「異常な事態」である。これがデタラメでなくて、なにがデタラメか。

いかにOPSというデタラメ数字が、長打と無関係な原因で増加するか、そしてひいてはハンパなスラッガーたちが、いかに「数字で甘やかされているか」が、本当によくわかる。
もし、MLBの球団が単純にOPSに応じて選手の給料を査定しているとしたら、ブログ主が打者なら、苦労してヒットや二塁打を積み重ねるより、四球だけを狙ってOPS数値を稼ぎつつ、月にほんの数本程度のホームランで体裁だけ整えて、高い給料とレギュラーポジションを確保しようと考える。そりゃ、そうだ。苦労して二塁打を40本打つより、四球を増やすほうが楽に決まっている。

まったく、くだらない。


もう一度まとめる。
四球数を、多重加算、かつ、水増し加算する「OPS計算のカラクリ」は、長打数増加など「問題にしない」くらい、四球増加によって大きくOPSを動かす。このデタラメ数字の、どこが「長打力を示す数値」なのか。
例えば上に挙げたグループAのバーノン・ウェルズ、ミゲル・オリーボと、グループCのニック・スウィッシャーでは、四球数に60以上もの大差がある。ここまでの大差になると、OPSというデタラメ数字においては、二塁打数のほんのちょっとした差などまったく意味をなさない。OPSとは、そういう指標だ。(グループCの打者が全てたいした打者ではないという意味ではない。また、個人的な好みを言っておけば、31本ホームランを打った割に低打率で四球でOPSを稼いだだけのエヴァン・ロンゴリアは別にどうでもよく、アレックス・アビラ、ベン・ゾブリスト、ニック・スウィッシャーなどの残した数字のほうこそ優れたものだと思う)

また、「現実の野球」にとって重要なことは、グループAとグループBの間に、実は本質的な差はほとんどない、ということだ。
総合的にレベル以上のスタッツを残したグループCと違い、グループBの打者は、ちょっと打撃の歯車が狂うだけで、すぐにグループAに転落する可能性がある。原因はもちろん、AとB、2つのグループ間に本質的な長打力の差などないことだ。AグループとBグループの差を作っているのは、長打力ではなく、単に「一時的な打率」や「四球数」だ。Bグループの打者は、頼みの綱にしている四球がちょっと減少すれば、たとえホームラン数が減らなくても、すぐに劣悪なグループAに転落する。こうした実例は、野球をよく見ているファンなら、両手で足りないほどの選手を思い出せるはずだ。

OPSというのは、そもそもが「ホームランをほめちぎるために作られた」指標だと思われるが、このデタラメ数字は、実は「現実の野球」においてはまるで機能していないことが本当によくわかる。



さて、ここからは今回の余談。

こうした「数字で甘やかされたハンパなスラッガー」(特にグループAとB)について考えてみてもらいたいことは、他にもある。

これらの様々な「ホームラン20本前後のバッター」のシーズンごとの打撃成績に、上昇と下降をもらたす要因は、次の2つのうち、どちらか?
1)ホームラン数の増減
(つまり、20本のホームラン数が、40本とか50本に増える、あるいは10本以下に減ること)
2)四球の増減


ブログ主の意見は、当然、「後者」だ。


よく、今年20本のホームランを打った中堅スラッガーが、来年は40本のホームラン打つ可能性がある、などと、現実離れしたことを夢想したがる人をみかける。

だが、ブログ主はそんな風に現実の野球というスポーツを考えたことは、ただの一度もない。
ホームラン20本前後がキャリアの天井である中堅スラッガーなら、上に挙げた3つのグループの間を、ただただ行ったり来たりするだけでキャリアを終わるのが「現実の野球」というものだ、と思って野球を見ている。
ミゲル・オリーボやダメ捕手城島程度の打者が、突然ミゲル・カブレラや、アルバート・プーホールズといったホンモノのスラッガーになって、ホームラン40本、打率3割の打者に変身することなど、絶対ありえないのが「現実の野球」だ、というのが、ブログ主の意見だ。
(ついでに言うなら、ドーピングでもしない限り、打率.260のバッターが突如として打率.330を打つことなど、絶対ありえないし、シーズン8勝10敗の投手がいきなり20勝投手になったりはしないのが、現実の野球だ、と、ブログ主は思っている)


たしかに「(ドーピング無しに)40本以上のホームランを打った経験のある、天性に恵まれたホンモノのスラッガー」なら、いつの日か50本、60本を打てる可能性が秘められている、とは思う。それは間違いない。

だがブログ主がよく問題にする「低打率のホームランも20本程度の平凡なスラッガー」には、そんな可能性を微塵も感じない。
彼らはホンモノではない。彼らには「天井」があるからだ。天井が低いから、バットを振り回す。振り回す割に、当たらない。
実は、彼らのコストパフォーマンスは非常に悪いのだ。
そして始末が悪いことに、ハンパなスラッガーたちの得点効率の悪さ、コストパフォーマンスの悪さは、OPSのような古くてデタラメな数値ではつかまえきれない

平凡なスラッガーは、「もしかすると、という期待感」だけで分不相応な大金を稼ぎながら、全盛期にだけホームランを20本前後打ちつつ、四球で成績をもちこたえさせながら、やがて老化によって引退に向かっていく。それが「現実の野球」のハンパなスラッガーの実態だろう。

彼らハンパなスラッガーのOPSが「それなり」に見えるのは、単に「OPSそのものが、デタラメだから」であって、20本程度のホームラン数の打者のOPSは常に四球によって偽造されている。それは、「長打率と詐称しているが、実は得点力とは直接何の関係ない、塁打期待値SLG」と「デタラメそのもののOPS」が、まやかしの高い数値をはじきだすために、まるでシーズン中に長打ばかり打って大活躍していたように見せかける「数字によるスラッガーの甘やかし」に過ぎない。


こうした「OPSというデタラメ数字によって能力が高く見せかけられているだけに過ぎない、ハンパな中堅スラッガーの打撃能力の過大評価」という問題は、もちろん球団低迷にも深く関係する。
近年、日米を問わず「数字と効率とコストを重視した球団経営」が盛んだが、頼りにするべき数字を元から間違えることによって、かえって「コストパフォーマンスが悪く、弱い、不人気低迷チームが続出している」ように見える。

例えば、球団が、ハンパなスラッガーたちの「四球でOPS数値を稼いだだけの、みせかけだけのスラッガーイメージ」を過大評価して、彼らの「みせかけだけの打撃スタッツ」に過剰なサラリーを払えば、どうなるか
中軸打者への過剰投資はチームの予算を硬直化させる原因になるだけに、大金で獲得した割に、かえって得点力の無い、弱いチームが出来て、その無様さが古くからの地元の野球ファンを失望させ続けるという「数字重視とか称するチーム運営によって、かえって、チーム力が長期にわたって損なわれるという悪循環」が生まれる。

このところ野球の現場に、数字好きの人間、というより、数字に脳をやられている人間が増え過ぎた割には、やはり彼らは、結局のところ現実の野球には疎く、まして選手の能力評価に使う数字といえば、「シチュエーションのまったく違う他人が、思いつきで昔作ったが、今となってはガラクタになりつつあるデタラメなOPSのような数字」なのでは、どうしようもない。


そう。
元をただせばは、OPSも、単に、野球好きの素人が作った「そのオッサン好みの数字」に過ぎない。OPSなどというデタラメに大金を投資するのは、馬鹿げているを通り越して、もはや球団の自殺行為だ。

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