November 2012

November 18, 2012

11月はMLB各賞の発表シーズンなわけだが、どういうものか、今年のア・リーグMVPを巡っては、「受賞すべきなのは、三冠王ミゲル・カブレラではなく、マイク・トラウト」と、執拗に主張したがる人たちがいて、細々と論争が行われた。(結果は、いうまでもなくカブレラが受賞)

ブログ主に言わせれば、こんな論争に意味などない。今年のア・リーグMVPは他の誰でもなく「ミゲル・カブレラ」で決まりであり、議論の余地など最初からなかったからだ。
2012年のヤンキースは、もしシーズン終盤のイチローラウル・イバニェスの貢献がなかったら地区優勝すら無かったわけだが、もしデトロイトにカブレラがいなかったら、たとえバーランダーがいても、地区優勝もワールドシリーズ進出も無かった。
こうした「印象度の強さ」に加えて、カブレラの打撃の穴の無さは、「主観を数字に置き換えただけの指標ごっこ」よりもずっと雄弁に、カブレラの仕事のスケールの大きさを物語ってくれた。

フィルダーとカブレラを比べるだけも、わかりそうなものだ。『オクトーバー・ブック』というブログ記事で書いたように、カブレラが今シーズン果たした仕事の大きさは、打撃の欠点が露呈したフィルダーとは比べものにならない。
もし仮に、守備負担の少ない一塁手であるフィルダーがカブレラを上回るホームラン数を残して、カブレラが三冠王達成を逃していたと仮定しても、ブログ主は、トラウトではなく、カブレラがMVPに選ばれるべきだと思う。


トラウトがア・リーグMVPを受賞すべきだという主張を頑として曲げたがらない人々が本当に主張したがっていたことは、実は「ア・リーグMVPを誰が受賞すべきか」という話ではなくて、しかも非常に手のこんだロジックが使われている。
彼らが主張したかったことは、本当は「トラウトがMVPを獲得すべきだ」という単純なことではなくて、「『WARの数値が最も高いトラウト』にMVPを受賞させるべきだ」ということであり、これはつまるところ「自分の信じている『WAR』という指標の価値を、もっと高く評価せよ」という意味になる。
つまり彼らは「指標で野球を語っている自分の『正当性』を、他人に押し付けようとしている」わけで、これではまるで宗教の押し売りのようなものだ。


最初にハッキリ言っておくと、「WARというシステムが、現状であまりにも不完全すぎるのが原因で、今シーズンのミゲル・カブレラの活躍度を正確に測定できない」としても、それを理由にカブレラのMVP受賞を執拗に批判するのは、完全に筋違いである。
カブレラの受賞はなにも、セイバー系でない野球記者の野球についての思考方法があまりに古いためではない(そういう印象を植え付けようとするネット上の言動も感心しない)。また、セイバーメトリクス関係者だけが数字の本質をわきまえていて、野球という謎の解読に有史以来はじめて初めて成功したわけでもない。


いつのまに、「数字を知っていることが、最も偉いことだ」などという勝手な思い込みがひとり歩きするようになったのか。

言わせてもらえば、今のWARの完成度の低さなら、その測定精度は、セイバーメトリクス派ライターたちが主張したがる「WARの正当性」より、ずっと、はるかに、低い。そしてWARには出来損ないの部分がいまだに多い。
なのに、どうしてまた「この完成度の低い指標を使う人間だけが、野球を正しく語っていることになる」と思いこめるのか、そこが理解しかねる。


数字になっていさえすれば、それがイコール客観的という意味になる、わけではないのである。
たとえ「ある事象を数字に還元して表現できた」としても、もしそれが未熟な測定システムなら、それは単に「『個人の主観』を『数字』に置き換えて、客観的にみせかけているだけの未完成品」に過ぎない。
「数字」が発達している(と思われがちな)MLBですら、実はこうした「主観を数字におきかえただけ」という指標が、いまだに掃いて捨てるほどある。それらの「未完成な数字」は、いつのまにか自分勝手に権威をふりかざすようになってきているわけだ。

つまりはこれ、「老化」が始まっているということなのだ。



WARという指標が、チーム貢献度をあますところなく数字におきかえて表現できている、とは、まったく思わない。(以下にいくつか理由を書く)

WARは、レギュラーシーズン中の活躍をシチュエーションを捨象して走攻守にわたってとらえ、量的に示そうとする数値なわけだが、ことMVPという賞に関しては、シチュエーション、つまり「その選手の活躍がどのくらい重要な場面で行われたか」という観点や、「その選手の活躍時期がどのくらい重要な時期にあたっていたか」という観点は重要だ。

いいかえると、「WARキング=シーズンMVP」とする観点には、もともと無理がある。というのも、WARはプレーそれぞれの重要度抜きに数値が決定されているからであり、そのWARをもとに決めるMVPこそが「本当の客観的なMVPだ」なんて、わけのわからないことを言われても、「まったくそうは思わない。アホか」としか言いようがない。
「WARキング=MVP」だと、どうしてもいいたい人は、自分で勝手に「WARキング」という賞でも作っておけば済む。ただそれだけの話だ。

そもそも、例えば併殺打をいくつか打つと、それで決勝タイムリーの数値すら消されてマイナスになるようなわけのわからない指標は、そもそもMVP選考に使うのには明らかに向いてない。

もし将来、WARがもっと発達して「レギュラーシーズンを通じた、走攻守のチーム貢献度を100パーセント示せる指標」なんてものが完成したとしても、だからといって、「数字を元に選ぶのが客観性というものであり、客観性に基づくのが本当のMVPというものだ」なんていう歪んだ発想を、全員が共有しなくてはならないなどとは、まったく思わない。

いや、むしろそういう「硬直しきった発想」に断固反対していきたい。
野球とは、必然と偶然のゲーム、カオス的な事象を含むゲームだ。ならば、野球のすべてがリニアかつ量的に表現される時代など、来るわけがない。



例えば、セイバーメトリクス系ライターのひとり、Joe Poznanskyは、このところこんな主旨の記事を書いている。
American League MVP vote was going to be close between Triple Crown winner Miguel Cabrera and WAR winner Mike Trout.
Joe Blogs: MVP (The Aftermath) 太字はブログ側で添付


Joe Poznanskyは好きなライターのひとりで、クレバーな人だと思っているが、こと「マイク・トラウトこそ、ア・リーグMVPにふさわしい」という執拗な主張の中身には、ちょっとこじつけが多すぎる。

たとえばPoznanskyはテッド・ウィリアムズの例を挙げて、こんなことを言っている。
1942年にボストンのテッド・ウィリアムズは三冠王になった。だが、この年のア・リーグMVPを獲得したのは、ヤンキースのジョー・ゴードンだった。MVPはテッド・ウィリアムズが受賞すべきだったし、もっと言わせてもらえば、1941年と1947年のMVPも彼が獲得するべきだった。
What's known about measuring value -- and what isn't. | SportsonEarth.com : Joe Posnanski Article
もうちょっと詳しく書くと、Poznanskyは、ボストンの打撃専門外野手で守備の上手くないテッド・ウィリアムズを、「三冠王を獲得したのにリーグMVPを受賞できなかったサンプル」として挙げておいて、さらに「テッド・ウィリアムズは三冠王達成シーズンの1942年にMVPを獲れなかったが、1942年のMVPは彼が獲るべきだったし、他の年度でも彼がMVPであるべきだったシーズンがある」と主張している。

ならば、Poznanskyは三冠王ミゲル・カブレラについても、「三冠王を獲ったカブレラは、テッド・ウィリアムズのケースと同じように、彼こそがリーグMVPにふさわしい」とでも主張するのか、と思えばそうではないのだから、困ったものだ。
Poznanskyが主張しているのは、こうだ。
2012年カブレラは、1942年三冠王のテッド・ウィリアムズとは違う。なぜならカブレラのWARはリーグ最高ではないからだ。1942年のテッド・ウィリアムズはMVP受賞にふさわしいが、2012年のカブレラはふさわしくない」という、ややこしい話になる。

Poznanskyがこのロジックにおいていかに巧妙に「WAR最高!」と主張しているか、理解できただろうか。非常に『ズルさ』を感じさせるやり方を彼はしている(以下に書く)。



WARは本来、走攻守を総合評価できる評価手法だったはずだが、そもそもたかが「フェンウェイのレフト」に過ぎなかった平凡な外野手テッド・ウィリアムズが、WARの数値が本当に高かった選手、つまり「走攻守揃った選手」だとは、とても思えない
「1942年のテッド・ウィリアムズのWARが高すぎる原因」はたぶん、WAR算出において、テッド・ウィリアムズの守備面のマイナス評価をあまりにも低く抑制し過ぎている、つまりテッド・ウィリアムズの守備が過大評価されていることにあるだろう。

要するにPoznanskyは、2002年以降にUZRがWAR算出に使われだす何十年も前の「算出手法が怪し過ぎるテッド・ウィリアムズの過大評価のWAR」を引き合いにして、ちゃっかり、カブレラのMVP受賞に反対し、裏ではWARの正当性を補強する材料として利用しているのだ。こういうのを「マッチポンプ」という。


かなり手のこんだギミックだが、まったく感心しない。
論理として、都合が良すぎる。



たしかに、1942年のテッド・ウィリアムズは三冠王であると同時に、WAR数値も高い。
Fangraph版では、テッド・ウィリアムズ12.1に対し、ジョー・ゴードン9.3。Baseball Reference版では、テッド・ウィリアムズ10.2で、ジョー・ゴードン7.8。
つまり、三冠王テッド・ウィリアムズは、打撃スタッツだけでなく、WARでもゴードンを上回っていた。だからこそ、Poznanskyはこの何十年も前の古いサンプルを持ち出してきて、「テッド・ウィリアムズはオッケーだが、ミゲル・カブレラはダメだ」と言っているのだ。


だが、三冠王テッド・ウィリアムズが1942年のリーグMVPを受賞できなかったのには、ジョー・ゴードンこそリーグMVPにふさわしく、テッド・ウィリアムズはふさわしくない、と多くの野球人が考えるに至る理由が、「数字以外にも存在した」からであり、それは打撃タイトルの数や、WARの数値とは関係ない。
ちなみに、テッド・ウィリアムズが高い打撃スタッツを残しながらもリーグMVPを受賞できなかった1940年代の数シーズンの原因は、打撃成績ではなく、野球記者との不仲が原因だったといわれている。他にも、もちろん、1942年にゴードンのヤンキースがボストンに9ゲームもの大差をつけてリーグ優勝したことや、ゴードンの守備ポジションが、「フェンウェイのレフト」程度の「楽なポジション」ではなく、苦労の多いセカンドであったことなども関係しているだろう。
いくら同じ「フェンウェイのレフト」だったカール・ヤストレムスキーが7回もゴールドグラブを受賞しているとはいえ(ヤストレムスキーの7回のゴールドグラブにしたって、補正を厳密に適用して測定しなおせば、必ずしもゴールドグラブに値する守備だったと言えるかどうかわからない)、大飛球を必死に追いかけてキャッチする必要もなく、外野手が試合を左右するミスを犯す可能性も非常に低い「フェンウェイの安易なレフト」で、それも平凡以下レベルの外野手といわれたテッド・ウィリアムズの「フェンウェイのレフト守備」を高く評価する人間などいない。


問題を絞ってみよう。
テッド・ウィリアムズとカブレラの違いがWARにあるとPoznanskyは暗に示唆しているわけだが、WARは本当にテッド・ウィリアムズの走攻守を正確に測定できているだろうか。
そして彼のWARは本当に高かったのか?



そもそも、WAR算出に使われる守備指標のひとつUZRは、レンジ・ファクターを改良する意味で2001年に提唱されたわけだから、それ以前の時代にはない。
例えば、FangraphのWARでは、2002年より前のWAR算出についてはUZRを適用していない。だから厳密にいうなら、UZRから算出することのできる近年のWARと、古い時代のプレーヤーについて計算したWARに、「完全なデータ連続性」が保証されているわけはないのだ。
Baseball Referenceにも、第二次大戦前のプレーヤーについてWARを掲載しているわけだが、テッド・ウィリアムズの1942年当時の守備データのかなりの部分は「空欄」になっている。つまり、この当時のWARは「詳細なデータが欠落しているのを承知したまま、仮のものとして算出している」のである。

ブログ主は、この10年間にUZRから算出されたWARでさえ、それが確かなものだとは思わないし、まして、1942年のWARが今のWARと同じ精度をもつ、なんて思わない。
それはそうだろう。昔のMLBプレーヤーの守備データなんてものについて、詳細かつ正確なデータが存在するわけはないのだ。当然のことだ。
言わせてもらえば、「1942年のテッド・ウィリアムズのWAR」なんてものが正確に計算できたわけがない。古い時代の選手のWARなんてものは、「後世の人間が、仮に計算した参考数値の域を出ない」のである。
にもかかわらず、WARを産出するにあたっては、正確な守備指標も必要なはずだが、各データサイトは、守備数値が必ずしも明確に算出できそうにない時代のプレーヤーについてもWARというやつを計算しているわけだ。
大昔のプレーヤーのWARとかいう「アテにならない数値」をもとに、テッド・ウィリアムズとミゲル・カブレラを比べてアレコレ言ってみても、何もはじまらない。


むしろ、UZRができて以降の例でいうなら、なぜPoznanskyはテッド・ウィリアムズなどではなく、イチローを挙げないのか、と思う。

イチローがシーズン最多安打記録を更新した2004年のWARは、Fangraph版で7.1だが、この年ア・リーグMVPになったウラジミール・ゲレーロのWARは、6.3しかない。「イチロー以下」だ。
もしPoznanskyのような人たちが「WARはリーグMVPを数字的に説明できる唯一の根拠だ」としつこく主張したいのなら、ステロイダーのミゲル・テハダはそもそも論外だという意味で2002年のミゲル・テハダ、WARが低い2004年のウラジミル・ゲレーロ、同じくWARが低い2006年ジャスティン・モーノーは「リーグMVPにふさわしくない」こと、そしてイチローはこれまで、まだUZRがWARの算出に適用されてなかった2001年のア・リーグMVPだけでなく、2002年、2004年、2006年と、合計で4回リーグMVPに選ばれていてもおかしくなかった、とでも、強く主張してもらわなければ困る。
Fangraph版 WAR
年度 イチロー リーグMVP受賞者
2001  6.1  6.1(イチロー 同じ年のAロッドは7.8)
2002  4.5  4.7(テハダ)
2003  5.6  9.3(Aロッド)
2004  7.1  6.3(ゲレーロ)
2005  3.4  9.1(Aロッド)
2006  5.4  4.0(モーノー)
2007  6.0  9.7(Aロッド)
2008  4.6  6.7(ペドロイア)
2009  5.4  7.9(マウアー)
2010  4.7  8.4(ハミルトン)
Ichiro Suzuki » Statistics » Batting | FanGraphs Baseball


この際だからハッキリしておきたいが、
そもそもWARという「未完成な指標」の算出方式には不備が多すぎる。

例えば、「ポジション補正」。

WARの算出においては、その選手の守備ポジションによって、数値をプラスしたりマイナスしたり、「補正」を行うわけだが、この「補正」は基本的に、どんな形状のボールパークであっても「同じ数値を補正する」のがスタートラインになっている。センターが「プラス2.5」、レフトとライトは「マイナス7.5」だ。

この補正手法にブログ主は納得してない。あらゆる外野手について同じ補正をして計算を開始する行為は、今となっては「あまりにも時代遅れ」だ。
あらゆる地域に、どれもこれも似たような形のボールパークが次々と建設されていった1970年代頃の「クッキーカッタースタジアム時代」ならいざ知らず、新古典主義以降のボールパークは、球場ごとに、「形状」も「広さ」も異なる
とりわけ、外野手に関して言えば、ボールパークの形状によって、守備の難易度は大きく変わる。ボールパークごとに、「守りの難易度」はまるで違ってくるのである。
レフトが広くて守りにくい球場もあれば、逆にライトが広大な球場もある。フェンスが固い電光掲示板になっていて非常に危険な球場もあれば、フェンス形状が複雑な球場、いろいろある。

にもかかわらず、WARは、算出のスタートラインとして、センター「プラス2.5」、レフトとライトは「マイナス7.5」と、一律に同じ補正数値を適用して算出を開始するのだが、これでは出発的からして、そもそもおかしい。いかにも野球をやったことがない人が考えそうなことだ。
補正設定が大きく間違っていれば、補正をさらに補正しても、修正しきれないケースが当然出てくる


実際、この「ポジション補正の基本的欠陥」を、どう後処理しているかというと、ポジション補正を、さらにシーズンごとに手を加えて再補正している。つまり「補正の補正」を加えている。
例えば外野手テッド・ウィリアムズの1942年の「ポジション補正」は、基本は「マイナス7.5」だが、「補正の補正」後は「マイナス6.5」になっている。つまり「補正の補正」で、プラス1ポイントを「こっそり加算」しているわけだ。

同じく、二塁手ジョー・ゴードンは、基本が「プラス2.5」で、「補正の補正」をプラス3.9ポイント受けて、「プラス6.4」になっている。いかにゴードンの守備が上手かったかが、わかる。
ゴードンの「補正の補正」の数値の大きさから、「ただ打てるだけの打撃専門レフト、テッド・ウィリアムズ」と違って、ゴードンが「打てて、守備もいいバランスのとれた選手だった」ことがわかるわけだ。


もしWARが走攻守を正確に判定できるのなら、本来はジョー・ゴードンのWARはもっと高いはずで、テッド・ウィリアムズより高くても妥当だと思う人がいても、まったく不思議ではない。
もし、仮にだが、詳細な守備データの存在しない古い時代のWARを算出した人間が、テッド・ウィリアムズの1942年の守備について「もっと大きなマイナス評価」を下していれば、「1942年のテッド・ウィリアムズとジョー・ゴードンのWARの差」なんてものは、やすやすと逆転するのである。
ここらへんがWARの「主観的な」ところだ。この程度のものを絶対視だなんて、とんでもない。


イチローに関しても、「あれだけ広大に広いセーフコでプレーし、しかも神業的守備を披露し続けてきたのだから、さぞかし守備の補正が効いてプラス補正されているだろう」と思うかもしれない。
だが、そんなことはない。Fangraph版WARをみればわかる。
WAR算出において、イチローの大半のシーズンの守備評価は、あれだけ守備で貢献したというのに、ライトの基本数値である「マイナス7.5」からほとんど「補正の補正」によるプラスはされていないのだから、腹が立つ。
2007年の補正値がプラス1.6になっているのは、このシーズンはセンターを守っていたからで(1339.1イニング)、センターの基本数値は「プラス2.5」なわけだから、2007年のイチローの守備補正値「プラス1.6」は、なんと基本数値「プラス2.5」から、0.9もの「マイナス評価」を受けていることになるのだ。(センターとライトを半々くらい守った2008年に関しても似たようなものだ)
ライトを守ったシーズンでも、イチローの守備に関する最終評価値は、ライトの基本数値「マイナス7.5」からほとんどプラス補正されていない。2004年、2005年などにいたっては、「マイナス7.5」と「マイナス7.6」であり、ライトの基本数値である「マイナス7.5」から、まったくプラス補正されていないのである。
これは数値上、名手イチローのこれまでの守備が、たかが「フェンウェイのレフト」でしかないテッド・ウィリアムズ以下だった、という評価になっているのだから、WARの守備評価なんてものがいかに馬鹿馬鹿しいかがわかる。まったくもって腹立たしいかぎりだ。

上のほうで、もし「WARでMVPを決めるべき」だというのなら、そもそも2002年、2004年、2006年にMVPを獲るべきだったのはイチローだ、という話をしたが、WARという指標がプレーヤーの「守備」について、いかにきちんと評価していないか、いかに誤った主観的な補正が行われているか、イチローの例でわかろうというものだ
たとえで言えば、イチローの強肩を頭にいれた対戦チームのランナーがホーム突入を最初からあきらめた(いわゆる「抑止力」というやつ)などという事象を、WARなんて曖昧で主観的なものが、きちんと算入できている、わけがない。

WARは、走攻守を総合的に評価している「フリをしている指標」だが、むしろ、WARで「走塁」や「守備」についての基本評価、あるいは「走塁」や「守備」の補正値があからさまに低く抑えこまれているのなら、WARという指標はかえって「単に打てるだけの選手」を高く評価する指標にしかならない。これでは、まったく意味がない。

そのくらいのこと、気づかいないで、どうする。

Fangraph版 WARにおける
イチローのポジション補正値

年度 イチロー
2001 -7.2
2002 -7.0 (WAR イチロー4.5 MVPテハダ4.7)
2003 -7.0
2004 -7.6 (WAR イチロー7.1 MVPゲレーロ6.3)
2005 -7.5
2006 -5.1 (WAR イチロー5.4 MVPモーノー4.0)
2007 1.6
2008 -3.2
2009 -6.7
2010 -7.5



さらに「パークファクター」という補正手法について書く。
「パークファクター」は非常にフェアな補正手段であり、指標算出には不可欠な存在、と思いこんでいる人が多いかもしれない。
だが、以前に書いたように、「パークファクター」というもの自体がいまだに対戦チームの影響なのか自軍の影響なのかが区別がつかないあやふやなものなのだから、これさえ補正に使っておけば、あらゆる数値がフェアにできる、などと言えるわけではない。そこを多くの指標が忘れている。
Damejima's HARDBALL:2011年11月10日、「パークファクター」という数字の、ある種の「デタラメさ」。


テッド・ウィリアムズの例、イチローの例からわかるのは、むしろ、「しょせん今の時点のWARの完成度は相当に低い」ということだ。


数値の構造全体にしても、WARが「走攻守をトータルに評価する」と標榜していながら、実際のところは、打撃に置かれている重心はいまだに重いものがあって、守備は補正が大きすぎて軽視されがちだ。

「補正」すること自体はいいとしても、バランスを大きく欠いた大きな数値を適用している「ポジション補正」の例からわかるように、数値レンジの大きすぎる補正行為は、WARの算出結果そのものを大きく左右する。

たとえば、WARの最大数値は大きくプラスに振れるMVPクラスの選手でも、「プラス10」程度くらいにしかならないが、その一方で「ポジション補正」は「プラス12.5」から「マイナス17.5」まで、「プラスマイナス30もの広い数値レンジ」を持っている。
本数値と補正値をくらべると、補正値のほうが振幅がずっと大きいわけだから、これは「選手の活躍そのものよりも、指標の補正行為のほうが、WARに対する影響が大きい」ということを意味しかねない。
これでは「いくら選手が1年間必死に活躍しても、その活躍の評価は、WARの構造そのものにある歪みと、補正計算にひそんでいる主観性によって、簡単に消されてきたのではないか?」ということになる。

長々と書いたが、いいたいことをまとめよう。
ミゲル・カブレラのMVPにグダグダ文句つける前に、
まず自分たちがWARの欠陥を直せ。

考える、という行為には、かなりのエネルギーを要する。
今セイバー・オヤジたちのやっていることは、まがりなりにエスタブリッシュに成功したが、いまだに指標は未完成なままなのに老化が始まってしまったという、奇妙な「未完成な子供の老化現象」だ。世間はいまだにOPSだのWARだのパークファクターだの言っているわけだが、数字で語りたいならグダグダ言ってないで、アタマ使って、もっとマトモなものを持って来い、と、言いたい。

November 12, 2012

2011ア・リーグ 打率と出塁率の比例関係(ホーム)
2011ア・リーグ 打率と出塁率の比例関係(ビジター)

2011ア・リーグ 打率と出塁率の比例関係(ビジター)
2011ア・リーグ 打率と出塁率の比例関係(ホーム)

これは2012年4月に書いた以下の記事に挙げたデータである。
Damejima's HARDBALL:2012年4月8日、チームの「総得点」と「総四球数」の相関係数を調べた程度で、「四球は得点との相関が強い」とか断言する馬鹿げた笑い話。


これらのデータが意味するところは、こうだ。
そのチームが稼ぎ出す「総四球数」というものは、それが得点の多い強豪チームであれ、得点の少ない貧打のチームであれ、ほとんど変わらない。

このことから、チームデータを観るかぎりにおいて、
次の事実が確定する。

チームという視点で見るとき、「四球数」は、チームの総得点数にまったく影響しない



一方、打撃指標において「四球」が、いかに「誇大」に扱われてきたかについて、既に大量に書いてきた。
いまやMLBのいくつかのチームでは、OPSとかいうデタラメな基準を信じ込み、大金を注ぎ込んでフリースインガーを集めてきてしまい、ホームランと四球だけで点を取ろうとした結果、「深刻な得点力不足に悩むハメになっている」のだから、これはもう、腹を抱えて笑うしかない(笑)

「四球」を無理矢理にまぎれこませるどころか、二重にカウントしたり、どこかの国の自動車の燃費のように、水増しされてカウントされているOPSだの、SLGだのという指標は、ただのデタラメでしかない。

出典:Damejima's HARDBALL:指標のデタラメさ(OPS、SLG、パークファクターなど)など



最初に挙げたデータは、誰でも作れるグラフだ。当時さりげなく挙げておいたわけだが、大袈裟でなく、こうした簡単な指摘でも、「数字で野球を語っている『つもり』になっていた日本のウェブサイト」の90パーセント程度は死ぬ(つまり、その存在意味を失う)と、当時から考えていた
なぜって、多くの野球サイトは、「どこかで聞きかじってきた『モノゴトを見る視点』」を使って、その視点そのものの根底にある間違いにまるで気づかないまま、あれやこれや語っているに過ぎないからだ。

実際、数字で野球を語っていたあるウェブサイトが閉鎖したことを知っている。そのサイトは一時セイバー的視点からコラムをさかんに連載していたが、やがて更新が滞るようになり、停止し、今では某選手のファンサイトに鞍替えしてしまい、とっくにセイバーの影もカタチもない。

その一方で、いまだに「自分がすでに死んでいること」に気づいていないサイトもある。こんな単純な、小学生でもわかることを、あれだけわかりやすく説明したというのに、「自分の主張の根底がすでに死んだこと」をいまだに理解できない人がいる、というわけだ。


こうしたことから常々思っているのは、頭の悪い世間というものを相手するのは、最終的には無駄だということだ。

根底的な間違いが修正できにくい理由は、簡単だ。自分が「受け入れたくない」、だから「理解したくない」し、「理解できない」、たったそれだけだ。彼らは、根底では、正しいとか正しくないとかいうことに、まったく関心がない。
日本のどこかの不振にあえぐ大手電機メーカーではないが、周囲からいくら正しいことを言われても、それを受け入れ、「カイゼン」して自分を作り直し、進路を修正することなど到底できずに、たいていは間違ったプライドを死守して自分から滅ぶ。

まぁ、モノゴト間違えたまま死んでいくのも、その人間自身の責任だ。「根底にある間違い」だけ指摘しておけば、十分だろう。あとはそういう人々が勝手に滅びていくのを遠く眺めるのみだ。「根底の間違い」を最初に指摘するのは多少骨が折れるが、しかたがない。間違いに気づけない人間は、最後は無視するしかない。
誰が引退しようと、アホなチームが身売り、移転、縮小に追い込まれようと、なんの関係も関心もない。


最初に挙げた2つのグラフは、実は、そういう「ヒトの気づきたがらない『認識の根底にある間違い』の指摘」のひとつなのだが、そういうことをわざわざ指摘するようなムダな行為も、そろそろ最後にしたいと思っている。

OPSだの、四球だの、ここに書いたことの大半は、自分の中では、とっくの昔に「理由と証明つきの決着」がついている。


ロックが死んだって? ジャズも死んだって?
いやいや。死んでるのは、音楽じゃなく
「おまえ自身」さ。

damejima

Rock It !


November 11, 2012

2012シーズンのポストシーズンの「戦い方のチームごとの巧拙」をまとめると、以下のような言葉になる。

「自分の打ちたい球」「自分の投げたい球」しか考えられないチームが負け、「対戦相手が何をやりたがっているのか」を考える能力のあったチームが最後まで勝ち残った。



ワールドシリーズに出場した2チームにしても、その戦いぶりの巧拙には大差があった。それを如実に示す、2つの打席を以下に示す。それは「2012シーズン終盤のMLBのチームごとの戦い方の巧拙」を如実に現す鏡でもあった。
San Francisco Giants at Detroit Tigers - October 28, 2012 | MLB.com Classic

ひとつは、イチローの2ランホームランに端を発した4失点でホセ・バルベルデを破壊されて使えなくなったデトロイトの代役クローザー、フィル・コークが、サンフランシスコにシーズン途中ボストンから移籍してきたマルコ・スクータロに、決勝タイムリーを打たれたWS Game 4の10回表の打席。
もうひとつは、同じゲームの10回裏、サンフランシスコの髭のクローザー、セルジオ・ロモが、三冠王ミゲル・カブレラを快心の見逃し三振に切って取って、サンフランシスコのワールドシリーズ制覇が決まった打席である。


「読まれた」フィル・コークのストレート

2012年10月28日 WS Game 4 10回表 スクータロ タイムリー2012年10月28日
WS Game 4 10回表
スクータロ タイムリー


フィル・コークの持ち球は、93マイル前後の4シーム、80マイル前後のスライダー、83マイル前後のチェンジアップとあるが、そのなかで彼が自信をもって投げられるボール、といえば、「4シームのみ」であることは、ア・リーグでコークと対戦の多いバッターなら誰でも知っていると思う。
Phil Coke » Statistics » Pitching | FanGraphs Baseball


場面は、3-3で迎えた延長10回、2死2塁。

このタイムリーを許してはならない場面で、代役クローザー、フィル・コークは、平行カウント1-1から、ベースの真上に落ちる絶妙な低めのチェンジアップを投げた。これは本当に素晴らしいチェンジアップで、もしバッターがグランダーソンだったら間違いなく空振りしていたし、もしスクータロが「なんでもかんでもスイングするバッター」だったら、空振りしていただろう。

だが、打者マルコ・スクータロは、けしてチェンジアップを苦手とするバッターではないにもかかわらず、このきわどいチェンジアップを振らずに、見逃した
詳細は下に書くが、彼が見逃すことができた理由のひとつは、2012ポストシーズンにおけるスクータロが「やたらボールを見ようとするバッター」であり、さらには、アウトコースをセンターあるいはライトに流し打つことで、ALDSでの絶不調から抜け出しかかっていたからだ。

そして球審Brian O'Noraは、このきわどい低めのボールを「ボール」と判定した。低めの判定が怪しいという過去データのある球審(例:Brian O'Nora's Strike Zone Last Night - Royals Review)ではあるが、この判定に関しては正しかった。
この「ストライクゾーンから入って、結果的にボールになるチェンジアップ」が、バッターに見逃され、球審にも正確にボール判定されたことが、Game 4の分かれ目になった。


この「スクータロの見逃し」と「球審のボール判定」、野球の試合ではよくある偶然のように見えるが、どちらも偶然ではない


ワールドシリーズを前にBaseball Analysticsは、2012ポストシーズンでのマルコ・スクータロのバッティングについて、打率.150、20打数3安打と不調に終わったシンシナティとのNLDSでインコースを38球も見逃し、ストレートの大半を見逃していたこと、セントルイスとのNLDSでも同じように39球ものインコースを見逃したが、アウトコースの球をセンターおよびライト方向に7本のヒットを打つという手法で復調しつつあったことをふまえて、ワールドシリーズにおいてデトロイトがとるべき「スクータロ対策」について、次のように明確に述べていた。
If this pattern continues, and the Tigers are going to quiet Marco Scutaro, look for them to be working him on the inner half of the plate and up in the zone.
「もし(NLCSにおいてみられたスクータロのアウトコースを流し打つ)バッティングパターンが続き、そしてタイガースがスクータロを沈黙させたいなら、インコース、高めのゾーンにしか、活路はない」
Analyzing NLCS MVP Marco Scutaro - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics
Sergio Romo » Statistics » Pitching | FanGraphs Baseball

2012NLCSにおけるマルコ・スクータロの「アウトコース打ち」2012NLCSにおけるマルコ・スクータロの「アウトコース打ち」を示すHot Zoneデータ。(Baseball AnalysticsのHot Zoneは投手から見た図。一方、Brooks BaseballのPitchFX Toolは、球審から見た図で、左右が逆になっていることに注意)


球審Brian O'Noraの判定は以下の通り。3球目のチェンジアップの判定(=下記の図で「3」という数字のついた部分)は、非常にきわどい球だが、「ボール」とした球審ブライアン・オノーラの判定は、正しい。
Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - PitchFX Tool

2012年10月28日 WS Game 4 10回表 スクータロ 3球目の判定

このワールドシリーズを捌いたアンパイアには、過去にいろいろひと悶着あったアンパイア、経験が足りないのではと思われるアンパイアが多くいたと思うが、結果的にこのワールドシリーズの判定ぶりについては、クチうるさいサイトの多いアメリカの批評サイトのいくつかが「非常に素晴らしい判定ぶりだった」と高評価したように、判定に問題はなかった。(もちろん低評価を下したサイトがなかったわけではない)

Close Call Sports: Discussions: 2012 World Series

World Series: After Video Review, Umpire Crew Perfect in San Francisco Games | Bleacher Report

3球目のきわどいチェンジアップを見逃され、後がなくなったフィル・コークは、4球目の「振ってくれればもうけもの」といえる、アウトコースに外れる4シームもスクータロに見逃されて、カウントを3-1にしてしまい、5球目は、4球目とほぼ同じコースに、同じ4シームを投げた。
2死2塁で、1塁が空いていただけに、おそらくここは「フォアボールでもしかたがない」という気持ちで投げたボール球だったのかもしれない。
だが、よくこのブログでいっている「同じコースに、同じ球種を続けて投げ続けると、徐々に内側に寄っていく」という原則どおり、5球目の4シームは4球目より内側に寄ってしまい、アウトコースだけを待っていたスクータロに狙い通り流し打ちされてしまい、これが決勝タイムリーとなってしまう。




スクータロがこの「5球目のボール球のストレート」を打って右中間方向に打球を飛ばしたことが、ただの偶然か、そうでないかは、ここまで書いてきたことでわかるはずだ。
ワールドシリーズ前にBaseball Analysticsが指摘したように、アウトコースを狙っているスクータロに「あえてアウトコースを投げる」なら、「ヒットにできそうにないほど、遠いところに投げておくしかなかった」のである。

逆に、スクータロ側から言えば、代役クローザーのフィル・コークの「持ち球の少なさ」からして、3-1と打者有利なカウントにもちこんでから待つのは「ピッチャーの得意球種のストレート」あるいは「自分の得意コースのアウトコース」に絞っていたはずだ。

フィル・コークは、4球目か5球目で、Baseball Analysticsがスクータロについてスカウティングしたとおり、インコースにストレートを投げこんでいれば、それが多少甘いコースであっても、「インコースとストレートを見逃す癖のあるスクータロ」は、スイングしてこなかったのではないか、と思う。また、4球目に、3球目に続けてチェンジアップを投げていたとしても、たぶんスクータロはスイングしてこなかったように思う。
いずれにしても、フィル・コークはスクータロを追い込むチャンスを「自分から逃した」のである。

結局のところ、スクータロに決勝タイムリーを打たれたフィル・コークの配球の何がいけなかったのかといえば、フィル・コークの配球が、「自分本位」であり、「相手が何を待っているかで、次の球を決めている」のではないからだ。
彼は基本的に、他の大多数のピッチャーと同じように、「自分の投げたい球を投げているだけ」だ。

これが、後で書くミゲル・カブレラを見逃し三振に切ってとれたセルジオ・ロモとの大きな違いだ。
サンフランシスコのピッチャーは、「相手バッターが何を待って打席に入っているか」を基本的に頭に入れて投げていて、そのことがサンフランシスコをワールドチャンピオンにした



「裏をかいた」セルジオ・ロモのストレート

2012年10月28日 WS Game 4 10回裏 ミゲル・カブレラ 三振2012年10月28日
WS Game 4 10回裏
ミゲル・カブレラ 三振


見ればわかることなので、簡単に書く。

セルジオ・ロモは、スライダーを中心に配球してくるタイプのクローザーであることは、誰でもわかっている。
3球のうち2球が、77マイルちょっとの遅いスライダーで、あとは、87マイルのシンカーと、同じ87マイルの4シーム。チェンジアップも投げられないこともないが、スライダー以外の球種といえば、基本的にはストレートで、シンカーを少し混ぜる程度だ。(とはいえ、シンカーと4シームの球速が同じであることは、ロモのピッチングの要点のひとつなのだが)
Sergio Romo » Statistics » Pitching | FanGraphs Baseball


10回表。

先頭はインコースしか待っていないのがわかりきっているワンパターンな右打者、オースティン・ジャクソン
ロモは、ジャクソンの苦手なアウトコースへ、得意のスライダー4連投。軽々と空振り三振。
ALCSでヤンキースがあれほど手こずったジャクソンは、実はこんなに簡単に三振がとれる「スカウティングしやすいバッター」なのである。サンフランシスコにとって、ジャクソンはまったくの「安全パイ」だったわけだが、むしろこの程度のバッターに手こずってしまうヤンキースの「スカウティングの無さ」が悪い。

2人目は、左のドン・ケリー。アウトコース低めに4シームとスライダーを集めるだけの「簡単なお仕事」で、空振り三振。


問題は、3人目のミゲル・カブレラだ。
右のスライダーピッチャー、ロモが右バッターを攻める定番の配球で、アウトコース低めのスライダーばかり5連投して、カウント2-2。
5球目のスライダーをファウルできるあたりが、カブレラだ。やはりアウトコースが穴だらけのオースティン・ジャクソンと違って、コースにほとんど穴がなく、右にもホームランが打てるミゲル・カブレラは、スライダー連投だけで空振り三振してくれるほど、甘くない。

ここで、ロモが投げたのが、
ハーフハイトの4シーム



球速はたったの89マイル。
データ的にはややアウトコース寄りだが、見た目の印象としては「真ん中」に投げているに見える。度胸が据わっているとしかいいようがない。



カブレラ、なんと見逃し三振。
彼はスライダーが来ると思っていたのだ。
ゲームセット。


いうまでもなくカブレラは
セルジオ・ロモの得意球種である「スライダー」に備えていた。


もう一度書いておこう。

2012年のシーズンは、「自分の打ちたい球」「自分の投げたい球」しか考えられないチームがなすすべもなく負け、「対戦相手が何をやりたがっているのか」を考える能力のあったチームが最後までしぶとく勝ち残った。


November 10, 2012


Baseball Video Highlights & Clips | ALCS Gm1: Ichiro's two-run shot puts Yanks on board - Video | MLB.com: Multimedia

2012ALCS Game 1 9回裏 イチロー 2ランHR



2012ALCS(=American League Championship)で、いいところなくデトロイトにスイープされ敗退したヤンキースだが、結局のところ、ALCSの命運を分けた分岐点は、やはり4点リードされた9回裏、あの2本の劇的な2ランホームランで追いついたにもかかわらず負けたことにあった、と思う。



まぁ、このGame 1の10回以降の延長イニングは、いってみれば、バタフライ効果でいうところの『後々の結果を大きく左右する微細な初期値』だったのだろう。
イチローラウル・イバニェスの2本の2ランは、まさに文字通り値千金だったが、「試合結果が固定されかかっていた」ゲームをせっかく振り出しに戻す、つまり、『カオス状態』に持ち込んだのだから、このゲームだけはなにがなんでも勝ち切って、シリーズの流れそのものを引き寄せておくべきだった。



9月の記事で、「なにか特別なことのあったゲームは勝つ」という意味のことを書いた。
Damejima's HARDBALL:2012年9月20日、『イチロー・ミラクル・セプテンバー』全記録(1)トロント戦全ヒット 東海岸が初体験する「ゲップが出るほどのイチロー体験」のはじまり、はじまり。

近年のヤンキースは、とかく「常識」にとらわれ過ぎる。
かつて『動物園』と呼ばれたこともあるヤンキースは、いい意味の野蛮さと天衣無縫さを持ったチームだったと思うが、今は、「ヤンキースとはこれこれ、こういう感じの爆発力を売りにするチームである」という、他人に期待される「ヤンキース像」、他人が作った「ヤンキース常識」に縛られているだけで、本当の意味の『カオス』が感じられないし、相手を制圧して生きている野蛮な肌感覚がない。

このポストシーズンにAロッドが試合中にナンパしただの、なんだのという話があったが、あれもそうだ。そんなこと、正直「どうでもいい」。ナンパなんか好きなだけすればいい。好きなだけネーちゃんに声をかけて、打ちたいだけホームランを打ておけば、それでいいのだ。誰にも文句など言わせないで済む。
本当の荒々しさの消えたヤンキースには、「野蛮さ」が備わらない。結局のところAロッドも「小さくて真面目なヤンキース」でしかない。ちょっとスカウティングされると、軽くひねられるようではダメだ。
家庭と子供のために、ゲームの空気をまるで読まずにホームランを打ちまくったイバニェスのほうが、よっぽどいい意味で「野蛮」な選手だ。
(常識にとらわれるな、といっても、大昔のヤンキースのようにもっと破天荒に生きろ、ハメをはずせ、という意味ではない。『ハメをはずす』なんて行動パターンは、いまどき「ひと昔前の常識」そのものだ。若い頃はやんちゃで、なんて調子でいい気になってしゃべる腹の出たオヤジの若い頃の思い出話がつまらないのと同じだ。面白くもクソもない)

短期決戦の『カオス』を自分のものにする野蛮さは、それこそ天性というべき能力だが、そういう天性をサブリミナルな内面に蓄えたプレーヤーは、結局のところ、ALCS Game 1の9回裏にホームランを打ったイチローとイバニェスくらいしかいなかった。



数学だけしかわからない数字馬鹿が、本当は、『生きた現象』、『現実というものの怒涛のごとくの野蛮さ』をわかってないと思うのは、こういうところだ。

セイバーを聞きかじった数字馬鹿の野球ファンに多いのだが、野球を数字で見ている「つもり」になっている人間に限って、すぐに「これこれは誤差の範囲であり、長期的には収束する。細かい差異に存在しない」なんて聞いたふうな意味のことを、しきりに言いたがる。
つまり、彼らは、どんな事象であっても、サンプル数さえ多くなれば、必ず一定の結果に収束する、と、なんの疑いも持たずに信じ込んでいる。


だが、野球というゲームは「生きている」。

いいかえると、野球は、「カオス的でない事象」、つまり、「初期の小さな差異が、かならず一定の結果に収束するような、予定調和な事象」だけで出来上がっているわけではないのだ。


日本の偉大な詩人宮沢賢治は『春と修羅』の序文でこう言っている。

わたくしといふ現象は
假定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといっしょに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です

『万物がせわしく明滅する』のは、何故か。

それは、我々自身、そして我々を取り巻く事象が、単に非カオス的な予定調和だけで出来ているわけではないからだ。

あらゆる現象は、「いちど点灯したら、放置しておいても点灯しっぱなし、何の面白みも変化もない裸電球」なのではない。むしろ、「カオス的な事象と非カオス的な事象が、交互に明滅する電燈」なのだ。世界の「点滅ぶり」は、最新の数学によっても証明されている。



野球という現象についても、もちろん、「非カオス的事象とカオス的事象が、交互に明滅する」、そういう複雑なゲームとみるべきであって、非カオスだけしか扱えない三流の古くさい統計数字ごときで語り尽くせるわけがない。
実際、野球には、小さな差異がやがて大きな差異へ拡大し、最終的にはゲーム結果を決定する、そういう『バタフライ効果的事例』にことかかない。
Lorenz AttractorThe Lorenz Attractor



ALCS Game 1 9回裏のイチローの打席を、もういちど見てみよう。

ピッチャーは、デトロイトの「劇場型」クローザー、ホセ・バルベルデ。90マイル台後半の速球とスプリッターが持ち球だ。


ホセ・バルベルデが99マイルを記録したのは、2008年から2009年あたりのアストロズ時代らしい。だが、このところのバルベルデの速球には、それほどの伸びを感じない。

1)2008年4月29日チェースフィールド
アストロズ対ダイヤモンドバックス戦 9回裏
2ベースを挟んで3三振
April 29, 2008 Houston Astros at Arizona Diamondbacks Play by Play and Box Score - Baseball-Reference.com

2)2009年4月25日 ミニッツメイドパーク
アストロズ対ブリュワーズ戦 9回表
ミルウォーキー時代のフィルダーに2ランホームランを打たれる
April 25, 2009 Milwaukee Brewers at Houston Astros Box Score and Play by Play - Baseball-Reference.com

左右の打者を交互に並べた「ジグザグ打線」なんていう、いかにも戦略的にやっているように見えるが、実は、わけのわからない、何の戦略的根拠もない手法で戦っている各チームを尻目に、2012年終盤のボルチモア・オリオールズはユニークな打線の組み方を行って、ヤンキースの地区優勝を最後まで苦しめた。という話を、以下に書く。

左 マクラウス
右 ハーディ
右 ジョーンズ
両 ウィータース
右 レイノルズ
右 マチャド
左 デービス
右 フォード
右 アンディーノ

これは2012ディヴィジョン・シリーズ中盤あたりのボルチモア打線。ボルチモアの本拠地カムデンヤーズは、ヤンキースタジアムと逆で、右打者有利だから、右打者が多いわけだが、それよりなにより、明らかに監督バック・ショーウォルターは「左右の打者を交互に並べること」にそれほどこだわってはいない。では、ボルチモア打線は、打率の高い打者から順に上位に置いていく、といった、無造作な打線だったのか?

いやいや、そんなこと、全くない。むしろ、これほど非常に計算された打線はなかった。
この打線、左右のバッターを並べるという方法論をとっていないだけで、実は「まったく別のコンセプト」で打線をジグザグにしていた、のである。

左 マクラウス
右 ハーディー
右 ジョーンズ
両 ウィータース
右 レイノルズ
右 マチャド
左 デービス
右 フォード
右 アンディーノ

黒い太字で書いたのは
ストレートに非常に強いバッター
赤い太字で書いたのは
どちらかというと変化球に強いバッター

ひとめでわかるように、この打線は、「まるでオセロの盤のように、ストレートに強いバッターと、変化球に強いバッターを、交互にならべて作られている」のである。(各打者の球種ごとの得意不得意は、各自Fangraphでも調べてもらいたい)ボルチモア打線のコンセプトが、他に類を見ないコンセプトでできていたからこそ、バッテリーが相手チームのスカウティングをきちんと利用できないまま大雑把なゲームしかできないヤンキースバッテリーの投手、特に、持ち球の種類の少なすぎるブルペン投手を攻略することに成功していたのである。


この2012シーズン終盤のボルチモア独特の打線の組み方を、仮に『ボルチモア・オセロ打線』と呼ぶことにする。



ハンパに聞きかじった数字好きの野球ファンが馬鹿のひとつ覚えで言いたがる言葉が、「確率」というやつだ。

野球というゲームにおいては実現確率の高い方法を常に選択すべきだ、なんてことを何の前提もなく思い込んで、それが金科玉条だと思いこんで鼻高々に公言し続けるから、本当に始末が悪い。確率計算そのものに、いったいどのくらい嘘や欺瞞が隠されているか、検証しもしない。

古くは「ジグザグ打線」なんて方法論も、そのひとつだ。
コンピューターがこれだけ発達した世の中になったというのに、いまも日米の監督の多くが、その効果を疑いもせず、頑なに採用し続けている。


左投手に強いのは右打者、右投手に強いのは左打者、というのは、
一般論としてはその通りだが、逆にいえば、それはただの一般論に過ぎない。

何事にも例外は存在する。左バッターだからといって、必ずしも左投手が苦手、とは限らない。むしろ、左投手を苦にしない、得意にしている左バッターもいる。(右バッターも同様) 

例えば、左投手が先発のゲームで、」「対右投手の打率が1割、対左投手を1割5分しか打てない貧打低打率の右バッター」をスタメンで使うくらいなら、「対右投手は3割、対左投手は2割5分の左バッター」を使うほうが、ヒットの出る確率ははるかに上がる。チームに左投手をそれほど苦にしない左バッターがいるなら、その打者をジグザグ打線に無理に組みこむ必然性はないはずだが、ジグザグ打線好きの監督は往々にして、なんのデータ的な根拠もないまま、左右左右とバッターを並べている。得点効率を上げるための戦略だったはずが、いつのまにか自己目的化して、ジグザグにすること自体が目的になってしまっているわけだ。


左右のバッターを並べることと関連して、最近気になることのひとつが、スイッチヒッターの起用法。

スイッチヒッターだからといって、左右両方のピッチャーを同じように打てる、という意味にはならない。スイッチヒッターだからという理由から、あらゆる先発投手のゲームに使うことには、実は何の根拠もない。

例えば、シアトルのショーン・フィギンズは、スイッチヒッターとは名ばかりの打者で、打撃スタッツで多少マトモなのは左打席だけだ。だから、フィギンズをスイッチヒッターとして扱っても、チーム打率は上がりっこない。こういう「左か右のどちらかの打席でしかマトモに打てないスイッチヒッター」は、「左バッター」、あるいは「右バッター」だと思って、限定して使うべきだ。
(ちなみに、スイッチヒッターでも、マーク・テシェイラ、ニック・スイッシャー、マット・ウィータースは、左でも右でもキャリア通算で打っている。ただ、その彼らでも、左と右とでは、バッターとしてのキャラクターが違ってくる。ホームランや長打を打っているのは、主に左打席。そして、打率がいいのは右打席だ)



話を2012ボルチモア打線に戻す。

ボルチモア・オセロ打線』のメリットは何だろう。

バッテリーというものは、スキルや考え方によってチームごと、投手ごとに事情は異なるだろうが、必ずしも打者ごとに攻め方を変えないバッテリーは非常に多く存在する

例えば、ヤンキースのラッセル・マーティンだ。
このキャッチャーは、かなりのゲーム数を集中してみさせてもらったが、相手チームのスカウティングをほとんど頭に入れず、ワンパターンの配球しかしない。例えば、ランナーが出ればアウトコースの低めに球を集めることしか考えていない。ゲームの中での組み立ても、最初の2巡目くらいまではアウトコースを使って、3巡目からはインコースを混ぜる、とか、2巡目まではストレートを中心にして、3巡目から変化球を混ぜる程度のことしかしない。
だから、例えばアウトコースがアホみたいに得意なバッターが揃っているホワイトソックスとか、トロントなどとのゲームでは、何も考えずにアウトコースのサインばかり出して、打たれまくって負けてしまう。


こういう「打者ひとりひとりに対応することを全く考えないバッテリー」が、『ボルチモア・オセロ打線』と対戦すると、どういう目に遭うだろう。たとえば、配球の単調なラッセル・マーティンがボルチモアと対戦したときのことを想像してもらいたい。

ストレートに強い打者に打たれる序盤
ゲーム開始前、たいていのチームの先発投手がそうであるように、ゲーム序盤は「ストレート」で押していくぞ、と決め、まずは、とことんストレート系で勝負する。
そうすると、どうなるか。
1番マクラウスにストレートを打たれ、2番ハーディーはうちとったものの、ランナーがセカンドに進む。ストレートに鬼のように強い3番アダム・ジョーンズにストレートで勝負して、タイムリーを打たれる。スライダー打ちのうまい4番ウィータースは凡退してくれたものの、インハイの好きな5番レイノルズに、インハイのストレートでのけぞらせるつもりが、逆にホームラン。6番マチャドはインコースを打ち損じてくれるが、ストレートに強い7番クリス・デービスにまたもや痛打されてノックアウト。

変化球に強い打者に打たれるゲーム中盤以降
ストレートを打たれまくって困り果てたラッセル・マーティンは、その後どうするか。ゲーム終盤、打者の3巡目以降に、「変化球中心の組み立て」に変えてくる。こんどはどうなるか。
1番マクラウスは凡退させたのに、2番ハーディーに低めのカットボールをヒットされ、3番アダム・ジョーンズはアウトコースのスライダーで泳がせて空振り三振をとったが、4番ウィータースには「アダム・ジョーンズと同じように投げたはずのスライダー」をタイムリーされてしまう。スライダーを投げさせることにもビビってしまったマーティンは、ゲーム序盤にインハイのストレートをホームランされている5番レイノルズに、こんどは「アウトコースのカーブ」を投げるが、空振りさせるつもりのカーブをまたもやヒットにされて、ゲームは完全に劣勢。

相手チームの投手交代への制約
この『オセロ打線』は、持ち球の少ないタイプが多いブルペンピッチャーには、特に効果的だ。「ストレートを打てる打者」と「変化球を打てる打者」と交互に対戦し続けていれば、どこかで「そのピッチャーの得意球種を、得意とするバッターが登場する」ことになる。
例えば、ヤンキースのブルペンピッチャーは、持ち球の種類が極端に少ないタイプが多い。例えばカットボールだけしか投げないローバートソン、スライダーしか投げないコディ・エプリー、ストレートばかり投げるローガンなど、。だから、ボルチモア戦ではブルペン投手が2人か3人の打者に投げると、ほぼ必ずつかまってしまう。
さらには、たとえヤンキースが、この『オセロ打線』の仕組みに気づいたとしても、こんどは「あらゆるブルペンピッチャーを、ワンポイントで使うほかなくなる」。それはそうだ。得意球種がひとりおきに違うのが『オセロ打線』だから、ストレートしかマトモな球のないブルペン投手、あるいはスライダーしかマトモに投げられないブルペン投手を、2人以上続けてバッターと対戦させるわけにはいかなくなるのである。これではブルペン投手が足りなくなるのも、無理はない。


どうだろう。
得意球種の異なる打者を交互に並べた打線の効果と面白さが、わかってもらえると思う。

たとえ打率のあまり高くない打者ばかり集めたチームでも、十分に得点圏シチュエーションで得点を生みだせることを証明してみせたのが、2012年のボルチモア・オリオールズだ。左右の打者を交互に並べるのが「ジグザグ打線」だが、それだけが打線の組み方としてベストなのではないことを、ボルチモアGMダン・デュケットと監督バック・ショーウォルターは証明してみせたのである。


こうした打線を組むに至った「理由」は、何だろう。
あくまで想像でしかないが、『ボルチモア・オセロ打線』が組まれた根本的なモティベーションは、「ストレートに滅法強いアダム・ジョーンズと、一見ストレートに強いように見えるが実は変化球を打つバッターであるマット・ウィータースを、3番、4番に並べて固定する」、そのことだけのために考え出された、と見る。(もちろん、シーズン終盤になって左の好打者ニック・マーケイキスを怪我で欠いたが、他に1番を打たせる適任の右バッターがいなかったことも関係はしているだろう)

もし、チームのメインピースであるジョーンズとウィータースを、3番・4番として固定して地区優勝を飾りたいボルチモアが、「ジグザグ打線」にこだわろうとすると、どうなるか。

もし、ジョーンズとウィータースの3番4番固定と「ジグザグ打線」の両立にこだわるなら、「1番を打てる右打者」が必要になるが、ボルチモアに1番のバッティングのできるシュアな右バッターはいない。右のアンディーノやライモールドを1番に置いてテストしてみたこともあったが、この右バッター2人は、左のマーケイキスのバッティングには遠く及ばないことはハッキリしているし、そもそもバッティングが雑すぎて1番には向かない。左右を気にせずに考えると、ボルチモアで1番に最もふさわしいマーケイキスだが、その彼が怪我で戦列を離れてしまい、ポストシーズンで1番を任されたのは、やはり左バッターのマクラウスで、右バッターではなかった。

どうしてもボルチモア打線をジグザグ化するために打率のいい右バッターを1番に据えようと思うと、他のチームから調達してこなくてはならなくなる。だが、そんな都合のいいバッターは、価格は安くないし、市場にいつも出回ってもいない。それに、そもそも予算面でかなりの無理をして打線をジグザグ化してみたところで、ペイロールが打者偏重になって投手陣が薄くなってしまえば、ボルチモアの長年の課題である「投手陣立て直し」という最重要課題の達成に支障をきたしてしまう。

そこで、オリオールズは、価格の高くないストレートに強いパワー系打者を獲って(テキサスのクリス・デービス、Dバックスのマーク・レイノルズ、アトランタのネイト・マクラウス)アダム・ジョーンズと一緒に並べて、「打線の骨」にし、その太い骨と骨の間に、変化球には強いが小粒なバッターの多い生え抜き選手を挟みこんで「打線の肉」として(ミネソタから獲ったJJハーディー、生え抜きのウィータース、マチャド、アンディーノなど)、「骨と肉」が交互に組み合わさった、立体的な『オセロ打線』を組み上げた、と考える。(もちろん、左のマーケイキス1番、スイッチのウィータース3番、右のジョーンズ4番でもいいわけだが、ニック・マーケイキスが怪我で戦列を離れてしまったことによって、シーズン終盤の打線が維持できなくなったことで、『オセロ打線』を考案することで、タンパベイを蹴落とし、ヤンキースを苦しめて、地区優勝にあと一息のところまで迫った)


投手攻略のために、左右のバッターを交互に並べるのではなく、得意球種の異なるバッターを交互に並べる。
これは、打線戦略として新しいし、単調な配球しかしないバッテリーを抱えるチームとの対戦するのには非常にリーズナブルだ。




ちなみに、ボルチモアの打線が「ストレートに強いアダム・ジョーンズと、変化球に強いマット・ウィータースを軸に、ストレートに強い打者、変化球に強い打者を交互に並べて、相手チームの投手のあらゆる配球に対応した」とするなら、デトロイト・タイガースの打線は、「インコースに強いミゲル・カブレラと、アウトコースに強いプリンス・フィルダーを軸に、インコースに強い打者を並べている」ことに特徴がある。

ALCS Game 1と、Game 2では、ヤンキースバッテリーは、2巡目まではデトロイト打線のアウトコースを攻めて沈黙させたにもかかわらず、ゲーム終盤になって、自分からインコースを突く配球に変えて、自滅するという失態を、2ゲーム続けた。デトロイト打線がインコースに強い打者が揃ってる、くらいのこともわからないで、自分からインコース攻めに切り替えて打たれているラッセル・マーティンには、つける薬がない。
このキャッチャーは、ボルチモアの『オセロ打線』にさんざんやられまくったクセに、「自分たちがなぜこれほどまでに、ボルチモア打線につかまるのか」をちっとも研究せず、こんどはデトロイト打線、例えば、オースティン・ジャクソンやデルモン・ヤングに、インコース勝負を挑んでは、打たれまくっているのである。


こういう「頭を使わないバッテリーを、カモにする」のが、ボルチモア・オセロ打線のコンセプトである。

damejima at 00:49

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2012ALCS Game 1 9回裏 イチロー 2ランHR



2012ALCS(=American League Championship)で結局いいところなくデトロイトにスイープされ、敗退したヤンキースだが、結局のところ、ALCSの命運を分けたターニングポイントは、Game 1でヤンキースが4点リードされた9回裏にイチローラウル・イバニェスの2本の素晴らしい2ランホームランで劇的に追いついたにもかかわらず、負けたことにあった、と思う。


野球というゲームにおいて、小さな差異は、ときとして大きな差異を生み、結果を左右する

まぁ、このGame 1の10回以降の延長イニングは、いってみれば、バタフライ効果でいうところの『シリーズそのものの結果を大きく左右する初期値』だった、というわけだ。
まさに値千金の2本の2ランで、「非カオス的状態に固定されかかった」ゲームをせっかく『カオス状態』に持ち込んだのだから、このゲームだけはなにがなんでも死ぬ気で勝ち切って、その後の流れをモノにするべきだった。


日本の偉大な詩人宮沢賢治は、『春と修羅』の序文でこう言っている。

わたくしといふ現象は
假定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといっしょに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です


いったい『万物がせわしく明滅する』のは、何故か。

それは、我々と、我々を取り巻く事象が、「最初から結論ありきの予定調和」だけで出来ているのではない、からだ。
数学でいうところの「カオス的な事象」と「非カオス的な事象」は、あらゆる事象において交互に姿を現し、互いの位置を換え続ける。それは我々の眼には、偶然と必然がせわしなく明滅を繰り返しているように見える。

世界というものが持っているカオスと非カオス、2つの性質のうち、「カオス的性質」は、論理的には、非線形科学の登場によってようやくロジカルに語られるようになったわけだが、そもそも現実というものが「点灯しっぱなしの白熱電球のように、いちどスイッチが入ったら、あとは故障して切れて捨てられるのを待つだけの哀れな存在」ではないことに、ヒトは太古から気づいており、詩人は世界のカオス的な性質を「直観」から記述し続けてきた。


野球というゲームは「生きている」。
それだけに、野球という系は「非カオス的事象とカオス的事象が、交互にせわしなく明滅する複雑な系」とみるべき事象なのであって、非カオス的な予定調和事象の、それも初歩の現象程度しか取り扱うことができない三流の古くさいうえに幼稚な初歩の統計数字ごときで語り尽くせるわけがない。

実際、野球において『バタフライ・イフェクト』といえる事例はことかかない。小さな差異が、必ずしも常に小異を捨てて、ありきたりの平均的な結論に結びつくわけではなく、野球における小異は、ときとして大きな差異へ拡大して、やがてゲーム、シリーズ、シーズンを決定することがある。

いいかえると、そうしたカオス的展開をけして無視できないのが、野球という「必然と偶然のゲーム」の面白さのひとつ、なのだ。

Lorenz AttractorThe Lorenz Attractor



ALCS Game 1 9回裏のイチローの打席を
もういちどよく見てみよう。


ピッチャーは、デトロイトの「劇場型」クローザー、ホセ・バルベルデ。90マイル台の速球とスプリッターが持ち球だ。

ホセ・バルベルデのストレートが99マイルを記録できた時代は、どうも2008年から2009年あたりのアストロズ在籍時らしい。だがデトロイトでのバルベルデのスピードボールには、かつてほどの輝きはない。

バルベルデの99マイル記録

1)2008年4月29日チェースフィールド
アストロズ対ダイヤモンドバックス戦 9回裏
2ベースを挟んで3三振
April 29, 2008 Houston Astros at Arizona Diamondbacks Play by Play and Box Score - Baseball-Reference.com

2)2009年4月25日 ミニッツメイドパーク
アストロズ対ブリュワーズ戦 9回表
ミルウォーキー時代のフィルダーに2ランホームランを打たれる
April 25, 2009 Milwaukee Brewers at Houston Astros Box Score and Play by Play - Baseball-Reference.com


イチローの打席に話を戻そう。

初球。

イチローは「ど真ん中の92マイルのストレート」を見逃した。
92マイルという球速は、いくら最近のバルベルデの4シームにかつてほどのスピードがないとはいえ、いくらなんでも遅い

バルベルデは速球で押しておいてスプリットを混ぜるタイプのクローザーだが、初球に92マイルなんていう「ハンパな速度」の球を、それも「ど真ん中」に投げるということは、バルベルデが、『イチローは初球は絶対に振ってこない』と確信していたことを意味している。
「単に早めにストライクが欲しいから初球を置きにいった」、「イチローはあまり初球を振ってこないというスカウティングに倣った」、「疲労から球威がなかった」、「2球目にスプリットを投げて空振りさせるつもりだった」、初球に92マイルの4シームを投げた理由がどれなのかは正確にはわからないが、少なくともイチローが「初球のど真ん中を見逃した」ことで、バルベルデがイチローを「舐めた」ことだけは間違いない。

そして第2回WBC決勝韓国戦を例に出すまでもなく、これまでどれだけのバッテリーがイチローを舐めてかかって泣いたことか。



イチロー側の視点からも見てみる。

ブログ主は、この「初球見逃し」を、「イチローが最初からホームランを打つつもりで打席に入り、あらかじめ初球のストレートのタイミングを体感で測定した結果、『打てる』と確信して、2球目を待った」、と見る。
かねてからイチローは、「ホームランは狙って打つ」と公言している。バルベルデというピッチャーが速球で押してくるタイプであることはわかっている。ゲームは4点リードされている9回裏。速度とタイミングは把握した。あとは、ホームランを打てるインコースにボールが来るのを待つだけだった。

初球で、バルベルデのストレートの速度、タイミングを測定していたからこそ、2球目のインコースのストレートを、イチローは、「待ちかまえて」、「狙い打ち」した。快心の一打だったはずだ。
いつぞやマリナーズ時代に、NYYのクローザー、マリアーノ・リベラの初球、インコースのカットボールをサヨナラ2ランしたことがあったが、あれと同じコースの球だ。
マリアーノ・リベラから打ったサヨナラ2ラン(2009/09/18)


ホセ・バルベルデの速球をとらえた打球は
ライトスタンドに鮮やかに消えていった。


この後のラウル・イバニェスの2ランホームランもイチローと同じで2球目だったが、この2球、両方ともスプリットだった。
そう。イチローにストレートを打たれたバルベルデはスプリットに逃げたわけなのである。イバニェスはそれを見逃さなかった。

2012ALCS Game 1 9回裏 イバニェス 2ランHRラウル・イバニェスの
素晴らしい2ラン


この例でもわかるとおり、ほんとうにイバニェスはクレバーなバッターなのだ。素晴らしい。

イバニェスは『イチローに速球をやられたバルベルデがスプリットに逃げるのを見逃さず、スプリットを狙い打ちした』というわけだ。
いいかえると、イチローのホームランがバルベルデの速球を封じ、イバニェスの2ランの呼び水となった、ということになる。
バッテリー(あるいはキャッチャー)というものは、失点するまでは、たとえランナーが出ようと打者のインコースを攻め続けるくせに、失点したとたんにアウトコース一辺倒に切り替えてさらに墓穴を掘ったりするものだ。


ALCS Game 1でクローザーのホセ・バルベルデをイチローに破壊されたデトロイトは、代役クローザーに、ストレート中心にピッチングを組み立てるフィル・コークをたてた。
そのフィル・コークは、WS Game 4の延長10回、マルコ・スクータロにストレートを狙われて決勝タイムリーを打たれ、デトロイトはサンフランシスコにスイープされ、悲願のワールドシリーズ制覇に失敗することになる。

つまり、ワールドシリーズの舞台装置を用意したのは、イチローによる『バルベルデ潰しの速度測定後ホームラン』だったわけである。

November 07, 2012

プリンス・フィルダーが2012ポストシーズンで完璧に抑えこまれたこと(そして打順を変更しなかったこと)は、デトロイトの得点力を著しく下げ、ワールドシリーズ制覇を逃す主原因のひとつになったわけだが、ブログ主はフィルダーがまったく打てなかった原因を、「単なる一時的な不調のせい」だとは、まったく思わない。

フィルダーが打てなかった原因は、ハッキリしている。
スカウティングだ。

もっと言うなら、
「アウトコースにおけるフィルダー攻略パターンの発見」、具体的には「バックドアの変化球、特にチェンジアップの使い方」だ。

問題なのは、フィルダー攻略パターンをすべてのチームが発見できたわけではないことだ。実際のゲームで活用できたのは、あくまで「オークランド、サンフランシスコなど、ごく一部のチームだけ」だ。
(この攻略パターンは、来年のレギュラーシーズンでもまだ多少は有効だろうから、やがて他チームにも拡散していくだろう。来年のフィルダーの打撃成績に少なからず影響を及ぼすのは間違いない)



2012ポストシーズンのフィルダーがアウトコースのボール球に手を出しまくって大失敗したことは、例のBaseball Analysticsも指摘している。
Prince Fielder's Tough World Series - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics

いつものことだが、彼らの指摘は、基本的な着眼点はいい。
だが、残念ながら彼らの記事の指摘は、単純に「フィルダーがポストシーズンにアウトコースのボール球に手を出し続けていた」という単純な事実の指摘であって、「ディテール」と「ストーリー」と「配球についての具体性な指摘」のどれもが欠けている。それだけに、内容がなく、つまらない。また、配球のディテールが全く語られていないのも、いただけない。
いったい、この「フィルダーへの徹底したアウトコース攻め」が、いつ、どのチームで始まってたのか、そして、それが他のチームにどういう形で受け継がれ、修正されたのか、そういう「流れ」がまったく明らかになっていないから、面白くない。

また、正確さにも欠けている。フィルダーのスイングした球のデータだけ見ると、あたかもフィルダーが「外にはずれたボール球ばかり手を出しまくった」かのように思えてしまうと思うが、実際には、必ずしもボールになる球ばかり振り回したわけではない。

考えてもみてほしい。
配球として、あのフィルダーに、ただただアウトコースだけを連続して投げ続けていれば、うちとれるだろうか?
いやいや。ヤンキースのラッセル・マーティンの「アウトコース・オンリー・ビビりまくり配球」じゃあるまいし、そんな子供だましの単純なアウトコース攻めだけで、フィルダーのバッティングの調子を根底から崩壊させるところまで追い込めるわけがない。



レギュラーシーズンのフィルダーの得意球種、得意コースを具体的に調べてもらうと、面白いことがわかると思う。
なぜなら、フィルダーはそもそもアウトコースが苦手どころか、むしろ「アウトコース、特に『高め』が大得意なバッター」であること、そして、むしろ過去のデータでみるかぎり、ポストシーズンにあれほど凡退しまくった「チェンジアップが最も得意な球種のひとつ」であることがわかるからだ。
例えば「チェンジアップ」だが、フィルダーは2012レギュラーシーズンに、SLG.563と打ちこなしている。(注:SLG=長打率という指標は根本的な誤りのあるデータだ。だが元資料である下記の記事が使っているために、しかたなく使った)
Prince's Power Outage - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics


フィルダーの得意コースであるはずのアウトコース、得意球種のチェンジアップなのに、なぜオークランドやサンフランシスコは彼を抑え込むことができたのか。ここが明確にならないと、野球を観る本当の楽しみは無い。

このブログの経験値として言えば、「フィルダーが、他チームの巧妙なアウトコース攻めに屈した」という話についてはもちろん賛成するが、だからといってフィルダー攻略のディテールについては、「単純なアウトコース配球で攻略できたわけではない」ことを指摘しておきたい。



最初に「フィルダー攻略パターン」を見つけたのは、たぶんレギュラーシーズン終盤に躍進を遂げ、ついに地区優勝にまで成功した知将ボブ・メルビン率いるオークランド・アスレティックスだろう、と思っている。

今シーズンからア・リーグに移籍してきたフィルダーには、ア・リーグのチームとの対戦データが多くないし、大半のチームが打率.280以上打たれているわけだが、それでも、フィルダーを完璧に抑えこむことに成功したチームが、ひとつだけある。

オークランド・アスレティックスだ。

対戦したほとんどのチームに対する打率が.280以上あるフィルダーが、1割を切るほど徹底的に抑えこまれた対戦相手は、このオークランド以外にない。

対オークランド戦(7ゲームの打率)
.074
Prince Fielder 2012 Batting Splits - Baseball-Reference.com


10月初旬のオークランド×デトロイト戦。
オークランド先発のジャロッド・パーカーが、フィルダーの好きなアウトコース高め、おまけに彼の好きなチェンジアップを投げて、セカンドポップフライに凡退させることに成功した。しつこく言うが、フィルダーは、「アウトコース高め」も、「チェンジアップ」も得意なバッターだ。

2012年10月6日レギュラーシーズン OAKパーカーvsDETフィルダー


ミゲル・カブレラは、たとえ好きなコースや好きな球種が来ても、それがボールならスイングせずに我慢できるし、また、苦手コースや苦手球種でもライト方向にヒットやホームランにできるとか、とにかく柔軟な対応力をもった天才だ。
だが、ジョシュ・ハミルトンカーティス・グランダーソンには、それができない。自分の好きなコース、好きな球種を待っているだけ。だからスカウティングされやすい。
Damejima's HARDBALL:2012年10月6日、オクトーバー・ブック 「平凡と非凡の新定義」。 「苦手球種や苦手コースでも手を出してしまう」 ジョシュ・ハミルトンと、「苦手に手を出さず、四球を選べる」 三冠王ミゲル・カブレラ。

Damejima's HARDBALL:2012年11月2日、2012オクトーバー・ブック 「スカウティング格差」が決め手だった2012ポストシーズン。グランダーソンをホームランバッターに押し上げた「極端なストレート狙い」が通用しなくなった理由。



フィルダーのバッティングは、あらゆる方向に打球を打てるミゲル・カブレラとは、まったく違う。
フィルダーはむしろ、「好きなインコースにボールが来ると、それがたとえ狙い続けているストレートではなく変化球であっても、必ず手を出してしまい、空振り三振しまくるカーティス・グランダーソン」に、よっぽど近い。フィルダーは、好きな食べ物を出されれば、思わず手を出してしまう、そういうバッターだ。
「アウトコース」「チェンジアップ」と、目の前に好物を並べられたフィルダーは、それがたとえボール球のアウトコースでも、ボール球のチェンジアップでも、やすやすと振り回してしまう
フィルダーが、アウトコース、チェンジアップに我慢できるバッターではないこと」、これが「オークランドの発見したフィルダーの弱点のひとつ」だ。(弱点は他にもある)


この「フィルダーが思わず手を出してしまう配球パターン」は、ポストシーズンでフル活用された。まずは以下のALDSオークランド×デトロイト戦の3打席の凡退ぶりを見てもらおう。

2012年10月10日ALDS Game4 AJグリフィンvsフィルダー2012年10月10日
ALDS Game4
AJグリフィンvsフィルダー

2012年10月10日ALDS Game5 スクリブナーvsフィルダー2012年10月10日
ALDS Game5
スクリブナーvsフィルダー

2012年10月11日ALDS Game5 パーカーvsフィルダー2012年10月11日
ALDS Game5
パーカーvsフィルダー


オークランドのフィルダー対策をまとめると、基本的には以下のとおり。まずインコースを「見せて」おいて、のちのちのアウトコース攻めを効果的にするあたりが、石橋を叩いて渡る「慎重派」のオークランドらしさを感じさせる
慎重なオークランド流フィルダー対策

1)まずインコースを見せる。アウトコースを待っているフィルダーは、振ってこない。(フィニッシュのアウトコースの球をより効果的するための布石)
2)外に、ストライクになる「バックドア・チェンジアップ」。カウントを追い込む。(フィルダーはカウント0-2からの打率が他のスラッガーと比べても極端に悪い。追い込まれるとまったく打てなくなるタイプ)
3)フィニッシュ


このオークランド流に始まったフィルダー攻略は、サンフランシスコが進化させ、ワールドシリーズでの遠慮のないサンフランシスコ流のアウトコース攻めとして完成する。
下記に見るように、サンフランシスコ流のフィルダー対策では、慎重なオークランド流の配球では存在していた「インコースの見せ球」すら消えて、コントロールのいい右投手がズラリと揃ったサンフランシスコらしく、徹底したアウトコース攻めのみによって、フィルダーを軽々と空振り三振させてしまうことができるようになった。
サンフランシスコの攻略パターンが成功をおさめたについては、もちろんオークランドに抑え込まれたというフィルダーのトラウマが背景にある。オークランドがフィルダーにある種の「アウトコース・トラウマ」を植え付けることに成功したことで、サンフランシスコはオークランドの攻略パターンをバージョンアップし、さらに深いトラウマに上書きした。

それにしてもサンフランシスコのバッテリーは、まったくたいしたコントロールと度胸を兼ね備えている。なんというか、バッテリーの「格」が、他チームと何ランクか違っている。
だからこそ、ワールドシリーズ終了時に、ポストシーズンのMVPはバスター・ポージーだ、とツイートしたのである。



サンフランシスコ流フィルダー対策

1)アウトコースの同じコースに、ストレートと「バックドア・スライダー」を連投、ストライクを容赦なく続けて2つとる。
この「同じコースへのストレート・スライダー連投パターン」は、以前指摘した「ストレートとカーブを同じコースに続けて投げる配球パターン」のバリエーションだ。
Damejima's HARDBALL:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(4)「低め」とかいう迷信 研究例:カーブを有効にする「高めのストレート」

2)アウトコース低めに、ボールになるチェンジアップを、「見せ球として」投げる。
オークランドの投手はこの球をフィルダーのアウトコースいっぱいに投げこんでいたが、サンフランシスコはボールゾーンで見せ球として使った。もちろん、この球にフィルダーが手を出して空振り三振することも多々ある。(下記に挙げたWS Game 3でリンスカムが奪った空振り三球三振が典型例)

3)アウトコース一杯のストレートで勝負。
外のチェンジアップを我慢したフィルダーの筋肉は、既に硬直してしまっており、アウトコースと「頭では」わかっていても、「カラダは動かない」。あっさり見逃し三振。
これこそ『硬い筋肉』、『硬いカラダ』が裏目に出る瞬間だ。


2012年10月27日 WS Game3 ボーグルソンvsフィルダー2012年10月27日
WS Game3
ボーグルソンvsフィルダー


2012年10月27日 WS Game3 リンスカムvsフィルダー2012年10月27日
WS Game3
リンスカムvsフィルダー


2012年10月28日 WS Game4 マット・ケインvsフィルダー2012年10月28日
WS Game4
マット・ケインvsフィルダー



「インコースのストレート」をただひたすら待っているグランダーソンに、インコースの変化球を投げて。スイングを誘って空振り三振させまくるのが、「グランダーソン・パターン」だったわけだが、アウトコースを待っているフィルダーの場合は、好きなチェンジアップを、好きなアウトコース高めよりも低く、なおかつ、ちょっとだけ外のボールゾーンにわざと投げることで空振りさせることができる。(フィルダーにはアウトコース高めのボールゾーンに投げても、同じ効果がある)
「フィルダー・パターン」のほうが、ちょっとだけグランダーソン・パターンより手がこんでいる。だが、基本発想はほとんど変わらない。

ヤンキースがポストシーズンで手を焼いたデトロイトの1番打者オースティン・ジャクソンも、好きなインコースをひたすら待っているだけのワンパターンなバッターなのはわかりきっていた。だから、ワールドシリーズでサンフランシスコは、ジャクソンのアウトコースだけをひたすら攻めまくって、ジャクソンにまったく活躍の場所を与えなかった。簡単なことだ。

いずれにしても、自分の好きなコース、自分の好きな球種だけをひたすら待ってホームラン、長打にしようとする「フリースインガー系スラッガー」にこそ、攻略パターンの発見は容易だし、効果もびっくりするほど絶大で、しかも長続きする、ということだ。

November 03, 2012

インターネット全盛のこの時代、MLB関係のメディアやウェブサイトには、どこもデータがてんこもりだ。そして、MLBのチーム運営においても、実際のゲームにおいても、あらゆるデータが「どこのチームでも」「正確に」生かされ、役に立っている、と、思われがちだ。(それでも日本よりはるかにマシなのは確かだが)

だが実際には、「MLBではデータが十二分に活用されている」というのは、全体としては正しいが、細部では間違っている
例えば、「チーム間のスカウティング格差」は確実に存在する。


データ全盛時代だからこそ、かえって必要になることがある。
例えば、どこの誰が本当に信頼できるデータを提示してくれていて、どこの誰がそれを有効に活用できているかを、正確に知ることも、そのひとつだ。

ファンの利用するデータサイトですら、信頼できないデータを平然と掲げているサイトなど、いくらでもある。
また、たとえMLBであっても、実際のプレーにデータがまるで生かされていないチームが、いくらでもある。それは、そのチームがセイバーメトリクスを採用しているかどうかとは、まったく関係ない。それに、セイバーだけがデータ活用手法ではない。


例えば、ファン向けのデータサイトで、データがてんこもりになっていたとしても、そのデータが必ずしも信用できるとは限らない。「サイトごとのデータの精度」には、いまや大きな「格差」が生まれていると思わなければならない。

例えば先日の記事で検証した「Hot Zone」。
Damejima's HARDBALL:2012年10月6日、オクトーバー・ブック 「平凡と非凡の新定義」。 「苦手球種や苦手コースでも手を出してしまう」 ジョシュ・ハミルトンと、「苦手に手を出さず、四球を選べる」 三冠王ミゲル・カブレラ。
ジョシュ・ハミルトンに関する自分の経験値を判断基準に記事を書いて、いくつかのサイトを検証してみたが、あの例でもわかるとおり、FoxやGamedayのHot Zoneはアテにはできない。そして、Baseball AnalyticsのHot Zoneは、「自分の経験値に非常に近い」という意味で、信頼性が高い。
ハミルトンの実際のバッティング結果とデータを照らし合わせてみても、どのコースを攻めたバッテリーがハミルトンを抑え込むことに成功し、どのコースを攻めたバッテリーが打たれているか、ちょっと確かめれば、この「自分の経験値を元にしたHot Zoneの精度の判定」がほぼ間違っていないことは確かめられている。

ハミルトンはこのオフにFAになるわけだが、ブログ主が「もしスカウティングが得意なチームなら、この選手に超高額の長期契約オファーを出すわけがない」「この選手に超高額オファーを出すのは、ポストシーズンに弱い勝負弱いチームだけ」と判断する理由は簡単だ。この選手が「穴のハッキリしている打者」であり、また「打席で抑え込むのは、それほど難しくない打者」であることは、Hot Zoneのようなささいなデータから見ても、ハッキリしているからだ。


また「打者に対するスカウティング格差」を例にとれば、すべてのチームが、同レベル、同じように高いレベルで、打者をスカウティングし、ピッチャーの配球が決定されているわけではない

ひとつには、あらゆる投手に、スカウティングどおり投げられるだけの能力が存在するわけがない、ということもある。(むしろ、大半のピッチャーは、主にコントロールが悪いせいで、行き当たりばったりに、パワーまかせの投球をする。パワーだけのピッチャーなど、MLBには掃いて捨てるほどいる)
ただ、そういう既に誰もがわかっている投手のコントロールの無さという問題より重要なのは、チームごとに存在する「スカウティング格差」の問題だ。


「チームごとのスカウティング格差」は、2012年ポストシーズンでは特にハッキリした。
たくさんのチームを分析しなければならないレギュラーシーズンと違って、ポストシーズンはスカウティング対象が狭いわけだから、より細かく分析できるし、短期決戦はスカウティングの重要度は高い。スカウティングが勝敗を決するといっても過言ではない。
あっけなく敗れ去ったチーム(ヤンキースなど)と、シーズン終盤に躍進したチーム(オークランド、ボルチモアなど)や、最終的にワールドシリーズに勝ったサンフランシスコの間には、びっくりするほどの情報利用の上手下手、つまり「スカウティング格差」があるはずだ。(そのことはこの『オクトーバー・ブック』でさらに書いていく予定)



カーティス・グランダーソンを例に挙げてみよう。

ブログ注:以下、誤解しないでもらいたいのは、ブログ主にとってグランダーソンは今もブログ主のお気に入りの選手である。なにもこの記事で彼をおとしめたいと思っているわけではない。イチローやミゲル・カブレラにも不得意な球種やコースというものは存在する。ただ、バッティングが単調で、スカウティングされやすく、バッティングの「穴」が既に分析されてしまっているグランダーソンに高額契約を提示することには、まったく賛成できない。


グランダーソンは、自分の経験値として言うと、常に「インハイのストレート」を狙ってフルスイングしているバッターだ。アウトコースを狙っている、というイメージは無い。


この「グランダーソンの執拗なインコースのストレート狙い」は、例のBaseball Analyticsを調べてみると、やはり予想どおり2011年8月19日に記事として取り上げられていて、内容はブログ主の「経験値」とまったく一致している。
Curtis Granderson Dominating the Fastball - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics

グランダーソンのストレート打撃成績(2009-2011)

グランダーソンの年度別得意コース



ただ、念のため指摘しておきたい点が、ひとつある。
Baseball Analyticsは、同じ年、2011年5月14日付で書いた以下の記事において、グランダーソンは、「インコース狙い」ではなくて、「アウトコース高めの球を引っ張ることでホームランにしている」と、分析していることだ。

2011年5月時点のグランダーソンのホームランゾーン2011年5月時点でBaseball Analyticsの指摘したグランダーソンのホームランゾーンは「アウトコース高め」
Granderson's Home Run Surge - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics


こういう「不整合」が起きる原因は、たぶん簡単なことだろう。それは、Baseball Analyticsが、「データのみに依拠して記事を書いているから」だ。それは、この優れたサイトの「良さ」であると同時に、決定的な欠点でもある。

おそらくグランダーソンは、2011シーズン当初の1ヶ月くらいの間に限って「アウトコース高め」を何本かホームランにしたのだろう。
だから、優れた観察眼と見識を持っているBaseball Analyticsといえども、彼らに「データのみに従う」というポリシーがあるだけに、かえって、「アウトコース高めを事実打っている」という、わずか1ヶ月間の短期間の「未確定の事実」にとらわれてしまうことになるわけだ。
1ヶ月程度の短いデータをもとに書かれた記事に、信憑性はない。優秀なBaseball Analyticsですら、あたかもグランダーソンが「アウトコースが得意である」というような「必ずしも正確でない記事」を書いてしまうのだから、いくら優秀なサイトといえど、そのすべてが信用できるわけではない。

短期間のデータをもとに記事を書いたことで判断ミスが起きたといえる証拠に、Baseball Analyticsは、2011シーズンが半分ほど過ぎた2011年8月中頃の記事では、グランダーソンが狙っているのは「アウトコース」ではなく、「インコースのストレート」と、判断を変更している。(もちろん判断の変更は潔し、といえる)


2012年のレギュラーシーズンとポストシーズンにおけるグランダーソンの「狙い」は、データで全てを確かめたわけでもなんでもないが、自分の経験値として言えば、2011シーズンとまったく同じで、「なにがなんでもインコースのストレートをホームランにすること」だった、と考えている。


このグランダーソンの「徹底したストレート狙い」が始まったのは、どうやら2011年のようだ。
グランダーソンのバッティングがデトロイト時代とはまるで違うものになった理由については、ヤンキースのバッティング・コーチ、ケビン・ロングの指導によるものという解説が、2011年を中心にESPNやNY Timesをはじめとする数多くのアメリカのメディアでなされてきた。
New York Yankees' Curtis Granderson using lessons learned from Kevin Long - ESPN New York

Curtis Granderson made a wise choice by approaching hitting coach Kevin Long in 2010 - MLB - Yahoo! Sports

Curtis Granderson's thank you to Kevin Long - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics

Baseball-All-Starlytics: Curtis Granderson: What a difference a year makes - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics

ちなみに、2012ポストシーズンが終わって、当のKevin Longが、シーズン終盤のグランダーソンの絶不調について何と説明したかというと、"Yankees batting coach Kevin Long said Curtis Granderson’s feeble postseason might have been because of a lack of confidence." (Kevin Long, New York Yankees batting coach, says Curtis Granderson bad postseason might have been because of a lack of confidence - NYPOST.com)、つまり「自信喪失」だと言っていうのだから、説明になってないし、無責任な話だと思う。


さて、このグランダーソンの「執拗なストレート狙い」だが、2012年後半にはすっかり大半の対戦チームのバッテリーに知れ渡っていた

それが証拠に、2012年シーズン終盤にヤンキース対戦チームのほとんどのバッテリーは、グランダーソンを外の変化球などで追い込んでおいて(というのも、インコース狙いに徹しているグランダーソンには外のストライクをマトモにヒットできるわけがないからだ)、最期は「インコース低め」に縦に変化する球を投げて、グランダーソンをそれこそ「好きなだけ」空振り三振させることに成功していた。
そんなわけでグランダーソンは、このブログでさんざん批判してきた「低打率のホームランバッター」に成り下がっていった。



だが、逆にいえば、なぜこれだけあからさまな「ストレート狙い」のグランダーソンが、たとえ一時的にせよ大成功してホームランを量産し、ヤンキースでの生き残りに成功したのか?
それは、グランダーソンがこれほどあからさますぎるストレート狙いに徹しているというのに、グランダーソンに、その「ストレート」を投げまくってくれる、ありがたい無能なバッテリーが数多く存在するからだ。単純な話だ。


その「グランダーソンにストレートを投げまくってくれる、ありがたいチーム」のひとつ、それが、ボストンだ。
今季のボストンは本当に「甘ったれた、なまぬるい」チームだった。
このグランダーソンに限らず、そのバッターの得意コース、得意球種をわざわざ投げてくれるくらいのことは、朝飯前だった。不振だったタンパベイのアップトンにヒットを供給しまくったのも、ボストンだ。(以下の記事参照)
Damejima's HARDBALL:2012年9月17日 アウトコースのスライダーで空振り三振するのがわかりきっているBJアップトンに、わざわざ真ん中の球を投げて3安打させるボストンの「甘さ」


グランダーソンは地区優勝とポストシーズン争いの両方がかかった9月以降のあの大事な時期に、9本のホームランを打っていながら、8月の打率.196に続いて打率.214という極端な低打率の状態で、それでもしつこくホームランだけを狙い続けていたわけだが、その9本のホームランのうち、5本ものホームランをボストンから打っている
というか、セイバーメトリクスの総本山だかなんだか知らないが、他のチームが楽々空振り三振させまくっているグランダーソンに、「5本ものホームランを供給したチーム」のスカウティング能力が高いわけがない。(ホームラン供給源は他に、ミネソタ、タンパベイなど) 今シーズンのボストンが、いかに大雑把で気の抜けた野球をしていたか、この事実からハッキリわかる。


典型的な例を挙げておこう。
10月1日のNYY×BOSのクレイ・バックホルツだ。

カットボール、カーブ、スプリッターと、変化球を続けて、カウント1-2と、典型的な形でグランダーソンを追い込んだにもかかわらず、バックホルツはここでグランダーソンに「インコースのストレート」を投げて、2ランホームランを浴びている。

呆れるほど頭を使っていない。
ここは右投手のバックホルツなら、グランダーソンのインコース低めにスライダーかカーブでも投げこんでおけば、キャッチャーがスプリッターを後逸するような心配もなく、いとも簡単に空振り三振がとれている。間違いない。

ちなみに、ボストンでは、アーロン・クック松坂などが、9月のグランダーソンに鬼門のストレートを投げてホームランを打たれている。

2012年10月1日2回裏バックホルツのグランダーソンへのストレート失投Boston Red Sox at New York Yankees - October 1, 2012 | MLB.com Classic


このグランダーソンの「ストレート狙い」だけでなく、自分の狙い球だけを狙って打席に入っている「低打率のホームランバッター」は、他にもたくさんいる。(ハミルトンの「インコース狙い」、ケビン・ユーキリスの「アウトコース狙い」)
Damejima's HARDBALL:2012年8月20日、アウトコースの球で逃げようとする癖がついてしまっているヤンキースバッテリー。不器用な打者が「腕を伸ばしたままフルスイングできるアウトコース」だけ待っているホワイトソックス。

そしてそういう「狙い球を決め打ちしてくる打者」に対してすら、何も考えずに、その打者の得意球種、得意コースを投げてしまう、馬鹿げたバッテリー、馬鹿げたチームというのもまた、馬鹿馬鹿しいほど多く存在している
また、ピンチになると、アウトコース低めさえ投げておけばなんとかなると思いこんでいるラッセル・マーティンのように、スカウティング能力も無ければ、度胸も無いバッテリー、そういう、このブログで分析する価値のまったく無いバッテリーも、数多く存在している。

かたや、その打者の得意球種、得意コースをしっかり頭に入れ、デトロイトはじめ、対戦相手を好きなように牛耳ることに成功したサンフランシスコのようなチームもある。

これが、2012年のポストシーズンのコントラストを決めた「スカウティング格差」だ。


ちなみに、スカウティング上手のサンフランシスコだが、そのサンフランシスコですら、スカウティングミスといえる失投が複数ある。

2012年10月28日3回裏マットケイン ミゲル・カブレラへの失投2012WS Game 4
カブレラの最も得意とするのは、「インロー」。ミゲル・カブレラが2012ワールドシリーズで打った唯一のホームランも、「インロー」で、マット・ケインの失投。この天才バッターにインコース低めを投げるのは、ある種の自殺行為だ。Game 1でバリー・ジトがカブレラに打たれたタイムリーも、「インロー」。


ここから『オクトーバー・ブック』では、ポストシーズンのプリンス・フィルダーの不振の原因、イチローがデトロイトのクローザー、ホセ・バルベルデから打った2ランホームラン、WS Game 4でマルコ・スクータロフィル・コークから打った決勝タイムリー、同じくWS Game 4でセルジオ・ロモミゲル・カブレラから奪った三振の素晴らしい配球などについて、それぞれの現象と現象の繋がりをつけながら書いていく予定。


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