March 2013

March 24, 2013

イチローがこの年齢にしてヤンキースのレギュラーであり、2度のWBCで結果を残してきた理由。それは、彼がMLBのレジェンドだから、でも、10年超MLBで活躍してきたから、でもない。

イチローが、ほかの誰よりも必死にグラウンドに立とうとしてきたから」だ。

他の誰よりも。
そう。誰よりも、だ。
必死。死ぬほど必死に、だ。

移籍当初、どんな打順でも打ち、レフトでも、センターでも、ライトでも守った。グラウンドに立って野球をやるためだ。その必死さの意味が、2013年春のWBCで、初めて昔のパンクを聴いたときのように、あらためて心にグサリと刺さった。



誰もがわかったつもりになっていた。わかっていたはずの、誰の眼にも見えていたはずの、彼の必死さは、実はまだ伝わりきっていなかった。

勝つ、ということに本当の本当に必死になったら、スモール・ボールも、ビッグ・ボールも、へったくれもない。勝たなければならない。勝ち続けたければ、いまのいま勝たなければ、明日がない。
そのためにいま、いま何ができるか。何なら、できるのか。何をして時を過ごしていなければならないのか。そういうシンプルなこと。それを、あれほど死ぬほど必死になってやってこれた人間が他にいない。必死になってやってきた。だから鈴木一朗はイチローになれた。


2013シーズンのMLBがもうすぐ始まる。
楽しみでならない。

イチローも年をとった。年とったからこそ、彼はまた怖いくらい真剣に野球をやるだろう。びっくりするほどの数の才能が、世界中から集まるMLBで。

March 23, 2013

国際大会を経験するとか、海外でプレーするとか、野球の国際化についてファン同士が語るのを見かけるわけだが、なにやらお互いの「ものさし」の違いが漠然としたまま話していることが多い。
なので、国際化のステップをもっと具体的に示して「ものさし」を見えやすくするために、段階を細分化し、順序をつけてみる。身勝手におおまかに分けただけだが、段階はかなりの数ある。
このステップの可視化という作業は、いろんなことを一気に見えやすくしてくれる。

野球の海外経験における簡易グレード表
© 2013 damejima

0)海外の野球のゲームをテレビや動画で観戦する
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1)ボールが変わる
2)国内での外国チームとのゲーム経験
3)国内での外国人アンパイアのゲーム経験
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4)海外の球場でのゲーム経験
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5)海外で継続的に生活する
6)海外の野球チームに所属する
7)海外チームのレギュラーになる
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8)MLBチームとマイナー契約
9)MLBチームとメジャー契約
10)MLBチームのロスター入り
11)MLBチームのレギュラーになる
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12)MLBで3年以上連続してレギュラーを経験
13)MLBで3年以上活躍
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14)MLBで10年超の活躍
15)レジェンド化。または野球殿堂入り

この野球の海外経験における簡易グレード表は、同時に、「野球選手のキャリア設計図」を示してもいる。つまり、「その選手がどれだけ国際化できたか」という「国際化グレード」は、同時に、その選手のピーク時のキャリアの高さにほぼ比例する、ということだ。
この図の特徴は、選別基準を海外経験のみに特化したことで、その選手が投手か野手か、プレースタイルの違い、体格の違い、優勝経験の有無など、雑多な差異が捨象される
そんな雑多な細部などにとらわれず、それぞれの選手の海外でのキャリアだけを上の図に照らせば、かえって、過去に、どの選手が、どのレベルのキャリアグレードに到達していたかが、ひとめでわかる。(また同時に、野球の場合、「オリンピックやWBCがゴールではない」ことも、非常によくわかる)
やっているのは誰しも同じ「野球」というスポーツではあるが、キャリアのグレードをひとつでも上に押し上げるためには、ステップアップごとに毎回違う、新たな情報、新たな経験値が必要とされる
もし、新たな情報や経験を身につけて、自分を変えることができなければ、そこでその選手のキャリアのピークは終わる

どうだ。わかりやすいだろう。


この身勝手に分類した図を見ると、2013WBCの「国内の監督コーチ選手だけで構成された日本代表チーム」に関して次のことがわかる。
2013WBC日本代表チームは、海外の球場で行われるという意味での「国際試合」を、わずか1試合しか経験していない。決勝ラウンドは、上の図でいう「グレード4」なわけだが、1次ラウンド、2次ラウンドはアンパイアと対戦相手は外国人だが、国内の球場、国内のファンに応援されての試合だから、上の図でいう「グレード3」なのだ。

そして彼らはその「初めて海外でやる国際試合」で負けた。

非常にもったいない。なぜなら、技術上の実力を発揮できないまま、負けているからだ。(日本の工業製品が、技術は世界最高なのに、海外で販売戦略で負けているのと似ている)
では、なぜ技術上の実力を発揮することなく負けるのか。野球におけるステップアップとは、イコール、技術の高さが海外で認められることだ、と自分勝手に思いこんでしまう人が多いわけだが、そうではない。
2013WBC日本代表は、相手チームや球審の分析に失敗し、相手チームの日本チームに対する分析にしてやられ、ゲーム中の戦略修正スピードがあまりにも遅く、最後は、間違ったギャンブル戦術を採用したことからもわかるように、チーム全体が経験したことのないアメリカの球場のもつ独特の雰囲気に「のまれた」。だから負けた。技術の上手い下手は、この際、関係ない。
もっと圧縮した言い方をするなら、明らかに、情報不足、経験不足、そして、ゲーム中の修正の遅さが原因だ。

(ことわっておくが、日本を代表して戦ってくれた監督コーチ選手スタッフの多大な苦労をねぎらい、彼らをリスペクトする気持ちに変わりはない。だが、だからといって、WBC解説をつとめた野球評論家やマスメディアのライターまでも含めた日本国内の野球関係者の、海外経験の不足、その割にビッグマウスで厚顔無恥な不遜な態度、情報不足と海外経験の不足を補ってくれるスタッフを用意しないまま本番に臨む慢心ぶりなど、あらゆる「マーケティング不足」を指摘しないわけにはいかない。指摘しないで放置すれば、日本野球は進歩していかないし、国際化もしない)


2013WBC日本代表の主要ゲームのスコア

001 100 030 ブラジル 逆転勝ち(福岡)
000 000 003 キューバ 負け(福岡)
000 000 0211 台湾   逆転勝ち(東京)
151 311 4   オランダ コールド勝ち(東京)
080 000 02× オランダ 勝ち(東京)
000 000 010 プエルトリコ 負け(サンフランシスコ)

2013WBCのゲームスコアを並べてみれば、誰の眼にも一目瞭然とわかることがある。「日本の得点イニングの遅さ」だ。
苦戦した台湾戦、負けたキューバ戦、プエルトリコ戦に特徴的に表れているが、2013WBC日本代表は、「序盤にリードを許して、後がない切羽詰まった状態になったままゲーム終盤を迎えてケツに火がつくまで、球審の判定傾向を把握できず、相手バッテリーの配球傾向をつかまえられず、不用意なバッティングを繰り返した結果、十二分な得点を得られないゲームを繰り返した」。非常に単純な話だ。

苦戦したブラジル戦、台湾戦になんとか勝てたのは、遅れに遅れたとはいえ、ゲーム終盤にかろうじて把握や修正が間に合ったからだ。
というか、もっと正確に言えば、慣れない外国人球審の判定や、外国人バッテリーの配球パターンや球種をなんとか把握できていた野手の打順に、偶然逆転チャンスが回ってきたからだ。(例えば井端選手は、球審のゾーンをかなりきわどいところまで見抜いていた)

逆に、プエルトリコ戦で負けたのは、監督コーチを含め、日本チームの大半が、相手チームの分析も自分たちのプレーの修正もできないまま8回を迎え、誰もやるはずのないギャンブルプレーに走って、自らの手で最後のチャンスを潰し、外国で行われる初めての国際試合の慣れないスピーディーなゲームテンポや、慣れないアメリカの空気にのみこまれたまま、ゲームが終わってしまったからだ。



例のダブルスチールについてだが、
書きたくもないが、いちおう書く。

あんなものは単なる「苦しまぎれのギャンブル」だ。戦術でもなんでもない。
テキサスの監督ロン・ワシントンは「自分なら絶対にやらない」とコメントしていたが、ワールドシリーズでいつも迷采配を連発して失笑をかっている彼に指摘されるまでもなく、「負けたら終わりのゲームの8回、2点差で負けていて、おまけに、キャッチャーが世界で指折りの強肩捕手ヤディア・モリーナだというのに、普段から一緒にプレーしてもいない寄せ集めの代表メンバーで、成功するかどうかわからないダブルスチールに挑戦する」なんてギャンブルは、そもそもあの失敗の許されない場面でトライすべき戦術ではない。当り前の話だ。

往生際の悪いデータ分析担当のWBC戦略コーチの橋上秀樹とやらが、「100%走れた」だのなんだのとメディアにコメントしているわけだが、くだらないにも程がある
「焦りまくった人間のやるギャンブルプレー」に、「100%」なんて、あるわけがない。倒産寸前の会社が、本業と関係ない不動産投資やゴルフ場経営に手を出して失敗するようなものだ。そういうことをする人間に限って、倒産した直後に「あれは100%成功するはずだった。間違いなく本業を立て直せた」なんてタラレバ言いたがるのと、少しも変わらない。
そもそも橋上は、投手フアン・カルロス・ロメロの手を離れた球がキャッチャーに届くのに1.8秒かかるだのなんだの、もっともらしく意味の無い言葉を盛っているわけだが、では、「プエルトリコ側のキャッチャーの強肩」「日本側のランナーの足の遅さ」「ダブルスチール時に特有の、1塁走者のスタートの遅れ」については、計算に入れてなくてもいい、とでもいうのか。笑わせるな、といいたい。
三盗は100%だったはず、と、橋上は言うが、たとえ三盗が成功していたとしても、2点差なのだから、モリーナはセカンドに送球して同点のランナーを刺し、アウトカウントを増やしてくる。そして次打者は、アウトコースのスライダーで簡単に空振り三振させられるのが濃厚な阿部なのだ。2アウトになって、犠牲フライでは得点できない状況をまねいて、何がダブルスチールだ。

さらに橋上とやらは、負けた後に「ツーシームが内角ではなく外に来たのがデータと違った。外に制球すれば長打はないという、球場の特性を考えたリードだと思う」などという、わかった風なコメントまでしている。
そんなこと、負けた試合の後で偉そうに語る暇があるのなら、なぜゲーム中の、それも早いイニングにそれに気づいて、チーム内に情報を発信して、打線を修正しなかったのか。チーム内で発言力が低いのなら、試合後に選手批判になるような無駄グチたたかず、黙ったままでいたほうが、よほど人間としてマシだ。

プエルトリコ戦は、観戦していた素人ですら、大半が「日本チームの打者が、アウトコースのボール球に手を出し続けて空振り三振していること」に気づいている。
もちろん、プエルトリコ側も試合中に気づいていた
私は98、00年の日米野球で日本に行ったことがある。その時にも感じたことだが、日本の打者はパワーはないかもしれないが本当に粘り強い。日本の一流選手は選球眼がいいうえに、厳しい球はファウルで粘る能力も備えている。だから、日本の打者は徹底的に打席で粘って、投手の球数を増やす策に出ると思っていた。
実際は違った。初回から、日本の打線は積極的に打ちにきてくれた。おかげで、我々の先発投手はリズムをつかみ、五回(途中)までほとんど安打も許さず投げられた。これも仮定の話だが、日本の打線が一丸となって、もっと打席で粘っていたら、我々は投手の継投を考えざるを得なかっただろう。そうなれば劣勢に立たされたはず。それが、予想とは全く逆の展開になった。これも勝敗のカギになったと思う」
プエルトリコ代表打撃コーチ カルロス・デルガド
出典:プエルトリコ代表打撃コーチが侍ジャパンをボロカス(上) (日刊ゲンダイ) - Yahoo!ニュース


ゲーム終盤に追い詰められて、苦しまぎれのギャンブル策で無駄にアウトカウントを増やすより先に、なぜもっと早いイニングに「打者の大半がアウトコースのボール球の変化球に手を出して空振り三振し続けていること」に気づいて、打者にバッティングの修正を求めなかったのか。橋上の言っていることのほとんどがタラレバに過ぎない。
議論すべきなのは、目先の問題としては、後のなくなった8回に出た2人のランナーをどうすれば確実に(最低でもひとりは)ホームに帰すことができたかであって、どうすればダブルスチールが可能だったか、なんて枝葉末節の話じゃない。
それに、そもそもダブルスチールだけが得点する方法だったわけじゃない。プエルトリコの打撃コーチのコメントに迎合するのではなく言うが、もし阿部が大振りしてマグレでもホームランを打ってくれれば、逆転まであった。彼の場合の「4番」は、それが仕事だ。


プエルトリコ戦の根本的な課題は、早いイニングからハッキリしていた。日本の打者が「キャッチャー、ヤディア・モリーナの決める配球を、どう掴まえるか」という問題だ。
日本ではいまだに「MLBでは投手がサインを決める。キャッチャーはただの壁」という「古臭い俗説」だけが正しいと思い込んでいる人が大勢いるかもしれないが、プエルトリコ先発マリオ・サンチアゴは「モリーナのサイン通り投げた」と明言している。
日本の打線を最初から最後まで翻弄し続けたのは、プエルトリコの投手陣ではなく、「ヤディア・モリーナ」だ

だが、結論からいって、(自称元メジャーリーガー桑田も含めて)日本国内のドメスティックな野球人は結局、ヤディア・モリーナを知らなかった。おそらく彼が守備の賞であるFielding Bible賞を5回受賞していることどころか、Fielding Bible賞そのものを知らないことだろう。(もちろん、決勝でドミニカと対戦しても、ロビンソン・カノーも誰も、「知らないまま」負けて終わっただろう)
盗塁阻止で最も高い評価を得ているのはヤディア・モリーナだが、Fielding Bibleにおける彼の評価は「Earned Runs Savedでの評価はイマイチだが、Stolen Basesで最高評価を得ている」キャッチャー、つまり盗塁阻止を評価されているキャッチャーである。
出典:Damejima's HARDBALL:2009年12月26日、Fielding Bibleが2008年までの過去6年間、および過去3年間について「メジャー最低」と酷評した「城島の守備」。盗塁阻止は「並」で、Earned Runs Savedは「メジャー最低」。

プエルトリコは、スイッチヒッターを上位打線にズラリと並べ、キャッチャーがチームを牽引するという、まるでキャッチャー出身の分析大好き監督マイク・ソーシア率いるロサンゼルス・エンジェルスをコピーしたかのようなチーム構成だったわけだから、ソーシアがイチローを研究し尽くして向かってくるのと同じように、プエルトリコが日本を分析していないわけがないわけだが、マイク・ソーシアにも、エンゼルスにも、触れた人間はいなかった。


WBCの解説をした桑田真澄は、試合中こんなことを言った。耳を疑うようなレベルの話だ。ヤディア・モリーナさえ知らずに、この自称MLB経験者は、よくMLBがどうのこうの語れるものだ。(下記のツイッター上のコメントを、もうちょっと正確を期して書いておくと「こういうキャッチャーいるんですね。はじめてみました」と言った)

こういうキャッチャーって、どういう意味だ(失笑) まさか「MLBのキャッチャーは壁だ」なんて、素人みたいに間違った俗説を正しいと思い込んでいたんじゃないだろうな。
ヤディア・モリーナの「MLBでの格」やプレー内容すらわからない、知らないくせに、よく元メジャーリーガー気取りで物事を語れるものだ。
この人、自分はモリーナの凄さの意味をまるで知らなかったクセに、試合後になると、阿部とモリーナを比較して「両者の差が出た試合でした」なんて知ったかぶり発言までしている。
しょせん箔をつけるために行っただけのMLBで、1シーズンどころか、2007年にたったの21イニング投げただけでお払い箱になったマイナーレベルのセットアッパーだったくせに、よくも、まぁ、いけしゃあしゃあと言えるものだ。(当時桑田はナ・リーグ所属だったわけだが、同リーグのヤディア・モリーナのセントルイスとのゲームは、2007年8月のたった1試合しか経験してない)
Masumi Kuwata 2007 Pitching Gamelogs - Baseball-Reference.com

過去に桑田は、2012年の開幕を日本で迎えたシアトルが巨人とオープン戦をやったとき、解説者としてMLBで岩隈の調子が良くないことの一因として、MLBのキャッチャーの構えの下手さをあげつらっていたらしいが、まぁ、それについても笑うしかない。
伝統的にキャッチャーの指導が下手で、しかもピッチャーにストレートに頼りきった単調なピッチングばかりさせたがるシアトルを元ネタにして、MLB全体のキャッチャー、それもトップレベルを含めた全体を一緒くたに喋れるほど、桑田のMLBでのキャッチャー経験は多くない。
経験不足の「自称」メジャーリーガーだからこそ、2013WBCで「モリーナの本当の姿」を初めて見て驚いたのだ。よく恥ずかしげもなく、としか言いようがない。


プエルトリコは伝統的に名キャッチャーを輩出してきた国だ。そんなことは、MLBファンならかなりの割合の人間が知っている。同じプエルトリコの名手イヴァン・ロドリゲスが、かなり長い間ゴールドグラブ賞を独占し続け、MLBキャッチャー界のトップを独走してきたわけだが、その後継者が、ヤディア・モリーナだ。


なぜ橋上の「100%ダブルスチール成功予定でした赤っ恥発言」と、桑田の「モリーナはじめて見ました赤っ恥発言」を並べてとりあげるかといえば、「100%」橋上、「モリーナ知りませんでした思い出づくり」桑田、そして「モリーナのゲームでダブルスチールのサインを出すほどの世間知らず」山本浩二のような、「井の中の蛙のドメスティック野球人」が、ヤディア・モリーナのゲーム支配力について何も知らずに、2013WBCで、監督をやり、コーチづらをし、解説者をやっていた、ということを指摘するためだ。
かつてNBAのジェイソン・キッドイチローについて語ったように、球技においてはキープレーヤーがゲームを作る。ヤディア・モリーナは、プエルトリコ代表でも、MLBのセントルイス・カージナルスでも、ゲームを支配するキーパーソンであることは、いうまでもない。
参考記事:Damejima's HARDBALL:2011年6月12日、NBAで初優勝したダラス・マーヴェリックスのジェイソン・キッドが言う『イチローの支配力』という言葉の面白さ。「ランナーとして1塁に立つだけで、ゲームを支配できる」、そういうプレーヤー。
結局のところ日本国内の野球しか経験したことがないドメスティック野球人は、モリーナの存在の意味に気づくこともなく、むしろ橋上の「100%成功した発言」でわかるように、モリーナを軽視すらしてプエルトリコ戦を戦った。
こんな程度の情報レベルで、勝てるわけがない。


最後に球審のストライクゾーンの把握の遅れについて書こう。

2013WBC日本代表チームが球審のゾーンをどれだけ把握するのが遅れていたかについては、既に多少ブログ記事を書いた。それにしても日本チームは、偉そうに戦略コーチなんてものを名乗る橋上なんていう分析担当者まで用意しておきながら、なぜあれほど球審のストライクゾーンの把握が遅いのか。

Damejima's HARDBALL:2013年3月3日、WBCファースト・ラウンドにみる「MLB球審のストライクゾーン」とゲーム内容との関係 (2)ゲーム編

Damejima's HARDBALL:2013年3月8日、Fastball Count、あるいは日米の野球文化の違いからみた、WBCにおける阿部捕手、相川捕手と、田中将投手との相性問題。

ブラジル戦、中国戦の2人のMLB球審、Chris GuccioneとGerry Davisは、「試合中に判定傾向が変化していかないタイプの、堅実なアンパイア」だから、ちょっと事前に調べておきさえすれば、試合当日のゾーンがどんなものになりそうか、あらかじめ把握しておくことができたはずだ。
また、たとえ事前に把握できていないとしても、球審側が「ゾーンを試合途中で変えたりしないタイプ」なのだから、ゲーム中にゾーンを把握して、ゲーム中にバッティング修正が可能だった。

だが、プエルトリコ戦は違う。
プエルトリコ戦のBill Millerは、「球審として、試合途中で判定がブレる可能性のあるアンパイア」だったために、非常にやりにくい面があった。

だが、「判定がブレる」からといって、日本代表がプエルトリコ戦の球審Bill Millerについて「つかみどころのないゾーンで判定する、やっかいなアンパイアだ」ということ自体を把握しないままゲームをやっていていい、ということにはならない。
日本チームはBill Millerが、Chris GuccioneやGerry Davisと同じタイプのアンパイアか、それとも違うタイプか、そもそもどういうタイプのアンパイアなのか、ほとんど把握していなかったように見える。
日本チームは、日本の福岡や東京でのゲームと同じように、いつもと同じ「手探り状態でゲームを開始」し、「迷いながらゲームをすすめ」て、結局プエルトリコ戦では、ブラジル戦、台湾戦と違って、ゾーンについて何もつかめないまま負けた。


最後に余談。能見投手の2ラン被弾
阿部捕手と能見投手のバッテリーについて、「スプリット(日本風にいうとフォーク)の使い方が上手い」と一度書いたのだが、プエルトリコ戦で能見投手は勝負どころでチェンジアップを投げていて、スプリットを使っていない。そのチェンジアップが浮いて、2ランを打たれた。
これはどういうわけなのか。ど真ん中のコース低めにスプリットを投げておけば、空振り三振させることができた、と思う。もったいない。
Damejima's HARDBALL:2013年3月8日、Fastball Count、あるいは日米の野球文化の違いからみた、WBCにおける阿部捕手、相川捕手と、田中将投手との相性問題。

March 17, 2013

カリブ海ベースボール文化圏

日本以外の2013WBCの4強は、ドミニカプエルトリコ、カリブ海に浮かぶキュラソー出身者を中心に構成されるオランダと、実質的にカリブの国々が占めたおかげで、日頃は日本のプロ野球しか見ない方々の間に、カリブ海沿岸国のプレーヤーたちが、いかに今のMLBで重要な位置を占めているかについて、知れ渡ったのではないかと思う。


こういう状況を説明するとき、中南米諸国出身者を指して、「ヒスパニック」「ラテン系」という言葉がよく使われるわけだが、ほかに「カリビアン」という、音楽的な響きに溢れた言葉があるのに、あまり使われないのは残念だ。


現在MLBでは、アフリカ系アメリカ人プレーヤーが減少傾向にある。
原因としてよく言われるのは、「MLBへの人材供給源であるアメリカのカレッジベースボールにおけるスカラシップ(=奨学金)支給額が、あまりに少なすぎるために、身体能力の高いアフリカ系アメリカ人プレーヤーがバスケットやフットボールなど、スカラシップの多い競技に流れてしまっている」という経済的な観点の説明だ。
だが、これまで「父親とベースボール」シリーズを含め、いくつかの記事で20世紀のアメリカ社会の変遷を描いてきた記事でわかるように、コミュニティ崩壊や南部回帰など、アフリカ系アメリカ人社会の変化は、金銭的な理由だけでは説明できない。大学スポーツにだけ起きている変化なら奨学金で説明がつくが、変化ははるかに広範囲に起きている。
Damejima's HARDBALL:「父親とベースボール」 MLBの人種構成の変化
こうしたMLBを取り巻く変化は、もちろん2013WBCの結果にも少なからず反映されており、残念ながらその影響はWBCアメリカ代表の相対的な弱体化傾向にも繋がっているといわざるをえない。


アフリカ系アメリカ人選手が減少する一方、増加の一途をたどってきたのは、ドミニカベネズエラ出身の選手たちだ。彼らは数だけでなく、質の高さにおいても群を抜きつつあり、メジャーリーガーを構成する人種地図は確実に塗り替えられつつある。
背景には、目先のきくMLBチームがアメリカ以外の国に育成組織を置き、現地での選手の発掘・育成を行いつつ、有望選手と安価にマイナー契約を結んで、メジャーで通用する人材を育て上げるといった、選手育成手法の変化がある。
例えば2013年MLBドラフトでは1位指名が高校生に集中し、大学生の指名が少なかったが、その理由は、単に今シーズン大学に有望選手数が少なかったということではなくて、おそらくアメリカ国内の大学卒業選手に対するメジャー側の期待度が年々下がっているということがあると、個人的には思っている。


ポジション別にいうと、かつてはカリビアンのメジャーリーガーというと、キャッチャー、ショート、パワー系ヒッターなどが伝統的に多く、逆に、投手は少ない、などと言われてきたものだが、今は違う。先発から、セットアッパー、リーグを代表するクローザーに至るまで、投手部門でも優秀な選手が出ている。
とりわけ、MLBで人材不足が著しいクローザーは、いまやカリビアンだらけである。
フェルナンド・ロドニー、ホセ・バルベルデ、カルロス・マーモル、ラファエル・ソリアーノ(以上ドミニカ)、フランシスコ・ロドリゲス、ラファエル・ベタンコート(以上ベネズエラ)、ホアキム・ソリア、アルフレッド・アセベス(以上メキシコ)、マリアーノ・リベラ(パナマ)、アロルディス・チャップマン(キューバ)、エルネスト・フリエリ(コロンビア)etc.
カリビアン系のクローザーはいまや、MLBに不可欠なのだ。(ちなみに2012ワールドシリーズを制したサンフランシスコのクローザー、セルジオ・ロモにしても、メキシコ移民二世)
Damejima's HARDBALL:2012年11月10日 2012オクトーバー・ブック 投げたい球を投げて決勝タイムリーを打たれたフィル・コーク、三冠王の裏をかく配球で見事に見逃し三振にしとめたセルジオ・ロモ。配球に滲むスカウティングの差。


ウィンターリーグは、カリブのドミニカ、ベネズエラ、プエルトリコ、メキシコ、パナマ、5か国のプロの野球組織の総称で、パナマを除く4か国の優勝チームはカリビアンシリーズに出場し、カリブ海ナンバーワンを決定する。
Caribbean Series - Wikipedia, the free encyclopedia

Winter Leagues: Caribbean Series | MLB.com: Events


延長18回に及んだ2013カリビアンシリーズ・ファイナルを制したのは、18回表に元メジャーリーガーのDoug Clarkのソロホームランで挙げた虎の子の1点を守り抜いて強豪ドミニカを破ったメキシコのヤキス・デ・オブレゴン(2度目の優勝)だ。

2013WBC本戦が始まるにあたって、日本のマスメディアでは誰もカリビアン・シリーズのことなど報道しようとしないものだから、カリビアン・ベースボールの情報に疎い野球ファンにしてみれば、1st Roundでアメリカを苦しめたメキシコの健闘ぶりが、まるでトーナメントにありがちな「マグレ」のように思われていたかもしれない。
だが、よくよく情報が与えられていれば、今年のカリビアン・シリーズでメキシコが、いまやMLBの寵児となっているドミニカとすら対等に近いところまで渡り合ったことがわかり、2013WBC本戦で強豪と対戦しても、好勝負になるだろうということ、ベネズエラあたりが相手なら軽く一蹴してしまいかねないことは、想像がついたはずだ。
2013 Caribbean Series - Wikipedia, the free encyclopedia

MLB.com At Bat | MLB.com: Gameday



これはアメリカのコロラド州に住んでいるとプロフィールに書かれている野球ファン(彼がカリビアンかどうかまではわからない)が、テレビ画面を家庭用ビデオで撮影してYoutubeにアップしてくれている2013年カリビアンシリーズのファイナルの様子だ。
動画の9分30秒過ぎ、試合が決まった瞬間に、興奮した観客が怒涛のごとくグラウンドになだれこんで、ルチャ・リブレよろしく飛び跳ねながら選手と抱き合ってソンブレロの乱れ飛ぶリアル過ぎる姿(笑)が映っている。
そりゃ、WBCもなにも、2月初旬に終わるカリビアンシリーズで既にこれだけの熱い戦いをしておいて、それからWBC本戦に来てるんだから、カリビアンが4強に残るのはしょうがないわけだ(苦笑)

もちろん映像としての完成度は低いし、お洒落でもない。
だが、そんなどうでもいい細かいことよりも、むしろ、日頃は日本国内野球だけを楽しんでいる人に確かめてもらえればと思うのは、地球上には、真冬の日本のちょうど裏側で、スペイン語放送(この場合はESPN)で、メキシコ対ドミニカなんていう組み合わせのゲームを見て、スペイン語で興奮している熱い人たちが、こんなにもたくさんいるという事実だ。

テレビ画面を映しただけの粗い映像ではあるが、かえって、わからない言葉で興奮している人たちを眺めることで、「同じベースボールといっても、言語が違うだけで、こんなにも響きやリズムが違うもんなんだな・・・。同じスポーツか?(笑)」と、「強い酒を飲みながら、ちょっと蒸し暑い音楽を聞くみたいな感覚」が伝わってくるのが、なんともたまらなくいい、と思うのだが、どうだろう(笑)


それこそ東京スタジアムではないが、大昔の映像を見ると、昔の日本野球でも、チームの優勝が決まった瞬間に観客がグラウンドになだれこむ、なんてシーンがあった。
もちろん、もし今のMLBでそんなことがあったら、安全面で非常に問題だし、運営管理上のありえない大失態なわけだが、逆にいうと、こうした昭和っぽい出来事が今でも現実に行われている「カリビアン・ベースボール」が今、いかに「熱い音色で鳴っているか」、とてもよくわかる映像だと思うのだ。



March 16, 2013

なんでまた、WBCなんてものをやっているのか。
WBCの「大会としての開催意義」についてのコメントや意見は数限りなく見てきた。だが、なるほど、と思わせてくれるような、説得力のあるコメントには一度も出会ってこなかった。


だが、嬉しいことに、初めて「なるほど」と簡潔に説明できていると思うコメントに出会った。MLB関連サイトの老舗、Hardball Timesの寄稿者のひとり、Dan Lependorfの以下の文章である。

The WBC isn’t designed to crown the best baseball country in the world. The WBC’s value lies in its ability to foster the growth of international baseball like no other event can.
「WBCは、どの国の野球が世界最高なのかを決め、栄誉を授ける目的でデザインされてはいない。WBCの価値とは、世界の野球の成長を育むことにある。それは、他のどんなイベントでも達成することができない。」
Hardball Times : Defending the World Baseball Classic

なるほどねぇ。 "foster" ね。さすが、Hardball Timesである。(Fosterとは、「フォスター・ペアレント」という言葉で使われるのと同じ「育てる」という意味だ)
ブログ主は、上の言葉の意図を自分なりにもっと明確にして、さらに明確な100パーセントに近い表現にしておく意味で、以下のようにさらに書き換えをこころみた。

WBCは、世界各国の野球が、それぞれの国で、いまどこまで成長したかを確かめるためにある。


たしかに敗退国はWBCのオモテ舞台から姿を消していく。

だが、WBCの目的が「優勝国を決めること」にあるのではなく「各国の野球の成長ぶりをたしかめること」とハッキリ意識して、これまでの対戦カードの意味を見なおしてみれば、景色はまるで違って見えてくる。

説明するまでもなく日本チームには優勝してもらいたいわけだが、WBC3連覇に燃えるその日本が、世界ランキング20位のブラジルに苦戦させられたこと、それこそが「WBC」、なのだ。ランキング11位のメキシコがアメリカを苦しめ、9位のイタリアがドミニカやプエルトリコを苦しめ、7位のオランダがキューバ、韓国を敗退に追いやったことが、WBCでしか確かめることのできない「世界野球のめざましい成長ぶり」なのだ。
穀物農家が穂を手にとって発育を確かめるように、アメリカや日本も含め、それぞれの国々での野球の育ち方がハッキリと確かめられること。これが「WBCを開催することの意味」なのだ。

もういちどしっかり書いておこう。

「WBCは、各国の野球の成長をたしかめるためにある」

勘違いしてもらっても困るのだが、これは、なにもオリンピックでよく言われる「参加することに意義がある」的な不明瞭なスポーツマンシップから言うのではない。
あくまで純粋に、野球というスポーツの種をまいた畑の成長を計測するマーチャンダイズの観点で言っているのである。そういう意味では、WBCという大会の基本的な性格は、オリンピックとは異なっているし、異なっていてまったく構わないし、また、異なっていてもらいたい。

よく、「WBCは世界最高のリーグであるMLBに有望選手を刈り取るための大会」だのと得意気に発言して、WBCを揶揄できているつもりになっているわけのわからない人を見かけることがある。また、「どこどこの国はベストメンバーではない」からどうとか、こうとか、どうでもいいことを指摘して得意気な人もしばしば見かける。
何をあたり前のことを、としか言いようがない(笑) 国際大会での活躍が認められて、そのスポーツの世界最高のリーグに招かれるなんてことは、あらゆるスポーツにある。ファン目線からいっても、WBCで最高のパフォーマンスを見せてくれた選手たちのプレーをもっと見てみたいと思うのは、当然の話だ。問題があるはずもない。


ちなみに、最初に挙げたコメントを書いたDan Lependorfは、もともとAthletics Nationというブログのライターだった。

Athletics Nationは、オークランドでTyler Bleszinskiが運営する地域限定のブログだったが、Bleszinskiは「ブログのネットワーク化」を目指して、他の有力スポーツブログとの提携をすすめ、新たに "SB nation" を設立し、社長になった。SBとは、 Sports Blog の意味だ。

この「ブログのネットワーク化」に成功したサイトといえば、他に、SB nationのライバルBreacher Reportがあるが、これらは、ESPNやFOX、CBS、スポーツ・イラストレイテッドなどの全米メディアが新聞雑誌テレビといったマス・メディア出身であるのと違って、いわば「たくさんのサイトが集合したブログ合衆国」、「クラウド・メディア」ともいえる草の根的スポーツメディアだ。提携サイトは、トップページを共同で利用するが、それぞれの記事の構成や執筆は、それぞれのサイトが独自に行う。
日本ではこうした組織が簡単に資金調達できるとも思えないが、アメリカではこうしたクラウド的なスポーツメディアに投資するファンドなどがあるため、運営には少なからぬ資金が投入されている。
資料:AOLの前幹部、スポーツ・ブログ・ネットワークのために資金調達 | TechCrunch Japan


最初に挙げた引用の元記事は、よく読むと実は、Athletics Nationというブログ出身のDan Lependorfが、FOXの有名ライターJon MorosiのWBCに関する意見が二転三転していることを批判するのが本来の主旨。
かたやLependorfが、クラウド的なブログ・ネットワークの創始者Athletics Nationの出身、かたやJon Morosiがもともと新聞系の出身で、いわゆる旧来のマス・メディアであるFOXのライターであることを知ってから読むと、またひと味違った味わいがある。
Jon Paul Morosi - FOX Sports on MSN | FOX Sports on MSN

March 09, 2013

WBC Round 2 日本対台湾戦の文字通りの死闘は、4時間半もの時間をかけて日本の薄氷の勝利に終わった。それぞれの持ち味が発揮された屈指の好ゲームだったわけだが、セットアッパーに回って登場した田中将投手が、2人のキャッチャーを相手に「好対称のデキ」、つまり阿部捕手を相手に好投、相川捕手を相手に崩れるという結果を見せたことについて、ちょっとした思いつきをメモしておきたい。

以下は、普段は楽天のゲームを見てない人間が書いた、単なる思いつきだから、結論なんてエラそうなものではない。まぁ、「楽天の捕手って、かなりいいキャッチャーなんだろうな」と思ったまでのことだ。


相川捕手については、一度このブログで書いたような気はしていたのだが、あらためてブログ内検索してみたところ、やはり1度だけ書いていた。なにせ2年半も前のことだから、正直、書いたこと自体忘れていた(苦笑)
(ちなみに下記の記事は、理由はよくわからないのだが、このブログで最もよく読まれた記事のひとつだ。まぁ、MLBファンの数より日本のプロ野球のファン数のほうが圧倒的に多いのだから、しかたがない)
「巨人・阿部とは逆に、データで見るかぎり、例えばヤクルトの相川というキャッチャーなどは、『何回打たれても、同じチーム、同じバッターに、同じような攻めを繰り返したがるキャッチャー』にどうしてもみえる。彼は『どこが対戦相手だろうと、ワンパターンな自分の引き出しにある攻めだけしか実行しない。引き出しが少なく、探究心も無いキャッチャー』のひとりで、だからこそ阪神が神宮でゲームをするときには、彼のリードする投手はまるで『神宮球場が阪神の第二のホームタウン』ででもあるかのように、ボコボコ打たれるハメになる。」
出典:Damejima's HARDBALL:2010年9月30日、逆転3ランを打った村田が「なぜ、あれほど勝負のかかった場面で、高めのクソボールを強振できるのか?」についてさえ、何も書かない日本のプロ野球メディア、野球ファンの低レベルぶり。



まず阿部捕手だが、何度もツイートしていることだが、能見投手とのバッテリーを見ていて、非常に印象に残った配球がある。 「初球に、ど真ん中に落として見逃しストライクをもぎとるスプリット」 だ。(日本でいう「フォークボール」)

これ、何が面白いかというと、変化球、特に「その投手の最も得意な変化球」という貴重な財産、貴重な資源を、「バッターを追い込んでおいて、それから空振り三振をとるためだけにしか、その変化球を使わない」という、「狭苦しい用途」に押し込めないで済む、という意味だ。
別の言い方をすると、「バッターに、どの球種を、どのカウントで、どういう目的に使うかを、わからせないで済む」のだ。
そりゃ、初球にスプリットでストライクをとられれば、バッターは追い込まれてからのスプリットが、ワンバウンドするのか、それともゾーン内に来るのか決められなくなるし、そもそも決め球がストレート系か変化球かを推定できなくなる。


たしかにキューバ戦では、追い込んでスプリットさえ投げておけば簡単に空振り三振してくれたから、スプリットは切り札、勝負球として、最後までとっておけばよかった。
だが、そういう単純な配球が、全ての球審、全ての対戦相手に通用するわけではない。能見が打者を追いこんだ後に投げる低めのスプリットが非常に効果的なのは間違いないが、だからといってスカウティングの得意なチームに「低めのスプリットは、振らなければボールになるだけだ。振らなくていい」と見切られてしまえば、せっかくのスプリットが、切り札どころか、単にカウントを悪くするだけの「無駄球」に変わってしまう。

実際、台湾戦ではかなりの低めの球が見切られ、低めをとらないタイプのGuccioneが球審だったために、ボール判定された。
キューバ戦では、ストレートでカウントを稼いでおいて、低めにスプリットを連投しておけば打ち取れたが、日本の投手の配球パターンがわかっている打者の多い台湾戦に限っては、そもそもバッターがスプリットを振ってくれないという事態が頻繁に起こったのである。

だからこそ、阿部捕手が「能見のスプリットは、低めに使うだけじゃない。見逃せばストライクになるコースに投げることもあるんだぜ」と、長いゲームの中で「一度だけ」見せておく、というのは、スプリットの効果をできるだけ延命させる有効な策略になる。


かたや、相川捕手だが、日本対台湾戦の途中で、こんなツイートをした。


これはどうも、「Fastball Count」という言葉について、もう一度おさらいしておく必要がありそうだ。
Damejima's HARDBALL:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」damejimaノート(11) なぜライアン・ハワードは9回裏フルカウントでスイングできなかったのか? フィリーズ打線に対する"Fastball Count"スカウティング。

Fastball Count」は、文字通り、「投手が、球種としてストレートを投げる可能性が非常に高いカウント」なわけだが、これには「日本とMLBの配球文化の違い」が非常に大きく影響する。
(なお、WBCで「各国のファーストボール・カウントの違い」を観察することは、それぞれの国で異なる発達を遂げつつある各国の野球文化の「発展の方向性の違い」を知ることに繋がる

アメリカと、MLBの流儀の野球が教えられている地域では、カウント3-0や2-0のような「ボール先行カウント」は、論議する必要のまるでないfastball countであり、投手はほとんど例外なくストレートを投げてくる。

(ただし、fastball countは単に投手と打者の「騙し合い」の出発点に過ぎない。いまや投手も打者も相手を研究・工夫して、変化している。例えば2012年ワールドシリーズ最終ゲームでは、スライダーを多投することで知られるサンフランシスコのクローザー、セルジオ・ロモが、デトロイトの三冠王ミゲル・カブレラを追い込んでおいて、得意のスライダーではなく、ストレートを投げて見逃し三振にうちとってゲームセットになった。 資料:Damejima's HARDBALL:2012年11月10日 2012オクトーバー・ブック 投げたい球を投げて決勝タイムリーを打たれたフィル・コーク、三冠王の裏をかく配球で見事に見逃し三振にしとめたセルジオ・ロモ。配球に滲むスカウティングの差。

それに対して、日本では fastball count でも変化球が多投される。(例:第3回WBC 日本対台湾戦で、能見-阿部バッテリーは、カウント3-0でスライダーを選択した)
この背景には、日本の投手のコントロールの良さがある。

MLBと日本の配球は、構造において裏返しになっている点が非常に多い
あえて相違点だけ強調して言うと、例えばMLBでは、早いカウントではストレート系で入って、変化球で締めるパターンは多い。(例:プレートの真上に落ちるチェンジアップ、シンカー、カーブ)
かたや日本では、変化球から入って、最後はストレートやスライダーのような「速さのある球」を、それもアウトローに集めるのが配球常識という「思い込み」は非常に強い。また、ピンチの場面になると「最初から最後まで徹頭徹尾アウトロー」というワンパターン配球になってしまいがち。(もちろんMLBにも、ラッセル・マーティンのような弱気でワンパターンなアウトロー信者は存在する)

同じ現象を、バッター視点で見直してみる。
MLBでは大半の打者がヒットを打つのは、早いカウント。逆に言えば、大半のバッターは、追い込まれたカウントでの打撃成績が極端に悪い。(例外は、イチローや全盛期のボビー・アブレイユジョー・マウアーなど、ほんのわずかの高打率のバッター)
MLBの投手は、特に早いイニング、早いカウントでは、ストレート系を投げなさいと教えられて育つ投手が多いから、結果的に「バッターの側でも、早いイニング、早いカウントでは、ストレート系を狙う」ことになる。(こんな基本的なことは、MLBルーキーのダルビッシュに指摘されるまでもない)

そもそもMLBの打者は、「豪速球」には滅法強い。その上、早いカウントではストレート系狙いに徹してくる打者は多い。
(例:ヤンキースのグランダーソンがホームラン王になれたのは、極端なストレート系狙いのおかげ。Damejima's HARDBALL:2012年11月2日、2012オクトーバー・ブック 「スカウティング格差」が決め手だった2012ポストシーズン。グランダーソンをホームランバッターに押し上げた「極端なストレート狙い」が通用しなくなった理由。
そのためMLBの投手たちは、打者の「ストレート狙い」をかわす意味で、早いカウントでストレート系を投げるにしても、「動かない4シーム」ではなく、「動くストレート系」、例えば、2シームやカットボールなどを多投し、打ち損じを誘うように進化を続けてきた。(例:イチローがマリアーノ・リベラから打ったサヨナラ2ランは、初球のカットボール。リベラのあの決め球を初球打ちできたからこそ価値がある)
つまり、MLBのほとんどの球種が「動く」という事実の裏には、打者と投手の「早いカウントにおけるストレート勝負」という歴史があるわけだ。4シーム勝負できるのは、あくまでストレートによほどの球速がある、ほんのわずかな投手たちだけである。(例:バーランダーチャップマン


以上のような「MLBのストレート系が『動く』ようになった歴史」をふまえて、もういちど相川捕手の「ストレート、ストレート、変化球」というワンパターンなサインの意味を見てみる。

まず指摘したいのは、「ストライクになるストレート系を続けておいて、ボールになる変化球を振らせる」というけれども、こういうパターンに慣れている国は多い、ということだ。球にキレや球威が無ければ通用しない。
そして、「パターン認識」の得意な選手の多い国のバッターに、「ストレートはストライクにして、変化球はボールにする」という単純な配球パターンが見抜かれてしまうのに、さほど時間はかからない

さらにいけないのは、
ストレート系に強い打者の揃うWBCでは、日本の投手の4シームが通用しないこと、特に、早いカウントにおいて4シームでストライクをとりにいくという手法が、ほとんど通用しないこと」に、注意を怠っている。
さらには、「俗説で「ゾーンが低い」と言われがちなMLBの球審には、実際にはたくさんのタイプがいて、中には低めをとらない人、極端にストライクゾーンの狭い人もいる」という「球審ごとに違うゾーンの個人さの問題」にも、注意が足りないまま、低めにボールを集め続けてボール判定を食らい続けている。

その結果、「早いカウントのストレート」を狙われ、強振されて二塁打にされたり、ランナーが出てから、いたずらに低めに集めようとして、低めをとらない球審Gucchioneにきわどい球をボール判定され続けて四球を連発してしまい、カウントを悪くして苦し紛れにストライクをとりにいった高めの球をタイムリーされるという悪循環を招いた。
(ちなみに、カウントが悪くなってから、低めだけを突いてピンチを逃れようとしてドツボったのは、田中将-相川バッテリーだけでなく、能見-阿部バッテリーでも同じ現象がイニング中盤に見られた)



まとめよう。

相川捕手の「ストレート、ストレートでカウントをまとめておいて、最後は変化球」という配球のワンパターンさは、田中将のストレートを、不用意にも、ストレート系に滅法強い外国チームの狙い打ちに晒してしまい、また、球審のゾーンを考慮しないまま変化球を低めに集めた結果、変化球の効果も同時に台無しにした。
名捕手野村さんは、WBC本戦を前に田中投手について、以下のようなことを言ったらしいが、主旨には同感する。
「(田中投手の)打たれてるのは全部ストレート。お前のストレートは、ストライクゾーンに投げるとやられる。それがプロ」
強化試合で敗戦、田中将大にノムさんは「お前の真っ直ぐはプロじゃダメ」(Sports Watch) - livedoor スポーツ

だが、田中投手が辛抱できず、失点し続けてしまう原因は、相川捕手との相性の悪さにあると指摘したい。
たしかに、国際試合ではストレートにべらぼうに強い打者ばかり集まるから、日本の投手のストレートが通用しないという問題も関わってはいる。だが、その問題以前に、「ストレートを最大限に生かす配球をするという責任」において、相川捕手のワンパターンなサインとの相性の悪さによって、田中将は現状のポテンシャルすら発揮しきれていない。
実際、台湾戦での田中-阿部バッテリーにおいては、珍しくカーブも投げさせ、チェンジアップの数も増やすなどして、田中投手に足りない緩急の組み立てをキャッチャー阿部が配球の知恵で補強して、彼にあたかも緩急があるかのように見せかける(笑)工夫をしていた。
その結果、問題とされがちな「ストレート」も、阿部捕手の工夫のおかげで、それなりに台湾バッターに通用していたし、そもそも台湾にストレート系に狙いを絞らせなかった。

だが、阿部に代走が出てキャッチャーが相川に変わると、田中将はやはり早めのカウントのストライクになる4シームを狙われて、やすやすと外野にヒットされ続け、また低めのボールになる変化球は、打者に見逃されるか、もしくは球審にボール判定されて、四球もからんで自滅していくという、いつもながらの崩壊パターンにハマってしまったのは、明らかだ。
相川 読みの先頭打 延長10回決勝点の起点も反省は「配球見つめ直したい」 (スポニチアネックス) - Yahoo!ニュース


田中将投手は、頭を使ってリードしてくれる阿部とのバッテリーでなら、「組み立ての単調さ」という彼が元々持っている欠点を改善し、ストレートの使い道にも工夫が凝らされて、彼本来のポテンシャルが発揮可能になると思う。相川捕手がやったような、ストレートで追い込んで変化球で仕留める程度の、初歩的なMLB風配球など、WBCでは通用しない。
そういう意味で、楽天におけるこれまでの田中投手の好成績は、相棒をつとめている嶋捕手(と楽天のキャッチャー陣)の功績と考えていいのではないか。そんな風に思ったわけである。

March 04, 2013

第3回WBC 1st Round
日本対ブラジル戦
球審Chris Guccioneのストライクゾーン
Chris Guccioneのストライクゾーン

第3回WBC 1st Round
日本対中国戦
球審Gerry Davisのストライクゾーン
Gerry Davisのストライクゾーン

(上の図で、赤い線は「ルールブック上のストライクゾーン」。青い線が「そのアンパイアのゾーン」だ。あくまで、それぞれのアンパイアの過去の判定結果を集計したデータからみたストライクゾーンの判定傾向である。実際の個々のゲームでは、「過去に低めを広くとる傾向にあったアンパイア」が、その日に限っては低めが辛い、なんてことも、よくある)


2人のMLBアンパイアに共通していえることは、「ストライクゾーンが狭いこと」だ。
(なお、この2人は「信頼性が非常に高いアンパイア」でもある。信頼性の高さとゾーンの狭さは、直接関係ない。ゾーンの狭いアンパイアほど信頼性が高いわけではない)


1974年生まれと若いChris Guccioneだが、少し前の彼のゾーンデータは「全体として、やや狭め。ただし、高めだけは少しだけ広い」ということになっている。
これは、正確無比な判定で知られ、ポストシーズンなど重要ゲームを任されることも多いMLBのアンパイアの重鎮のひとり、Jeff Kelloggのゾーンと、もう瓜二つといっていいくらい、似ている。また近年評価が高まっていて、2011年にはアンパイア界の重鎮のひとりであるGerry Davisのクルーに加わったAngel Hernandezも、似たタイプのゾーンを持っている。

ひとくちに「ゾーン全体が狭めなアンパイア」といえども、いくつかのタイプがあり、アンパイアごとに個人差もある。
高めの判定の違いだけに注目して比較すれば、「全体が狭いが、高めだけは多少広い」、Kellogg、Guccione、Hernandez、Cousinsなどのタイプと、「全体に狭いし、高めもとらない」、Davis、Chad Fairchild、Tim McClelland、Paul Schrieberのようなタイプに分かれる。
ブラジル戦の球審Chris Guccioneは前者で、「全体に狭めだが、高めだけは広め」。中国戦の球審Gerry Davisは後者であり、「全体に狭く、高めもとらないが、低めだけは例外的に広め」、ということになる。

こうした事前データから、これらの球審がさばく2つのゲームで、投手と打者が意識しておくべきポイントは、次のような点だった。

「ゾーンが全体として狭めだ」という意識が必要。

四球が出やすい。特に投手がきわどいところを突こうとし過ぎると、四球連発で大量失点に繋がることが多々ある。

ゾーンの左右は狭い。よって、打者が内外の難しい球に無理に手を出す必要は、ほとんど無い。
(特に右バッターのアウトコース)

打者が「高め」「低め」に手を出すべきかどうかは、球審とイニングしだいで判断。


ブラジル戦の球審Chris Guccione
日本の投打との関係


さて、上に書いたまとめから、以下のブラジル戦に関するツイートの意味は、詳しく説明するまでもなく、ハッキリするはずだ。

打つほうでいうと、早いカウントで、内外のきわどい球を無理に打つ必要は全くなく、ボールを見極めてさえいけば、割と簡単に四球が獲得できる可能性が、どの打者にも、常にあった。特に、右バッターがアウトローのコーナーに逃げていくスライダーに無理に手を出す必要は、全く無かったはず。(例えば坂本や長野の凡打)
投げるほうは、打者とは逆で、(日本のキャッチャーに非常にありがちなリードだが)アウトローのコーナーいっぱいを突くきわどい球でストライクをとろうとばかりすると、球審にボール判定を連発されて、投手のリズムも配球プランも両方崩れて、四球連発で試合を壊してをしまうことになりかねない。(例えば杉内の2イニング目)
実際、ブラジルのバッターの何人かは、外のスライダーをあえて見逃し、低めがストライクにならないことに日本側の投手がイライラし、焦れて高めに浮かせてくる球をヒットにしていた。




ブラジルは、遅い球の無い田中将の主力武器である「ストレート」、杉内の決め球「スライダー」と、その投手が多投してくるのがわかりきっている球種に、最初から狙いを定めてバッティングして、功を奏していた。
もちろん、それができたのは、ブラジルチームに日本野球経験者が多く、日本の投手の情報が十分に活用されてもいたからだ。

ツイートで、日本のキャッチャーについて「阿部がふさわしい」と言ったのは、ブラジル戦で7回までマスクをかぶっていた相川捕手は、「その投手の最もいい球を投げさせる」「低めに集める」という原則にとらわれすぎている、と思うからだ。
相川捕手は、自軍投手とのコミュニケーションにばかり気をとられて、対戦しているブラジル側打者が「日本の投手それぞれの最もいい球に狙いを絞って打席に入っている」こと、そして「早いカウントから、その狙い球をスイングしてきていること」に、球審が低めをとらないタイプであることに、ほとんど気がつかないでいた、と思う。

逆に、8回からマスクをかぶった阿部捕手は、球審にストライクをとってもらいやすい高めの球を上手に使えていた。例えば、能見投手のフォークだが、これも、よくある「低めにはずれて、空振りさせるフォーク」ではなくて、このゲームで投げたのは「見逃しストライクになるフォーク」だった。
もし、よくある「低めの、ワンバウンドするような、振らせるフォーク」だったなら、もし打者に見逃された場合、この球審は低めをとらないタイプだから、間違いなく「ボール」判定されていた。もちろん、外国の打者は早いカウントでストレート系を狙うことが多い、ということもある。
それにしても、よくまぁ、好打者の初球に、真ん中のフォークを投げさせるものだ。能見投手の技術の確かさ、阿部捕手のサインを出す度胸には、感心するしかない。



中国戦の球審Gerry Davis
日本の投打との関係


球審Gerry Davisは、1953年生まれの60歳のヴェテラン。
同じゾーンの狭いタイプの球審でも、高めはとってくれたブラジル戦の球審Guccioneとは違って、「高め」はとらない。加えて、もっと大事なことは、この記事の最初に挙げた図からわかるように、左右のゾーンが非常に狭い

実際、ゲームを見ていた人は、前田健太投手のキレのあるストレートが、左右のバッターのアウトコース一杯、あるいは右バッターのインコースに、『ズバッと決まった』と見えたのに、球審にあっさりボール判定され、マエケンが「えっ?」っと驚いた表情を浮かべるシーンを、かなりの回数見たはず。
もしそこで、かつてダメ捕手城島がやり続けた馬鹿リードのように、アウトローぎりぎりに投げさせることに無理矢理こだわり続ければ、逃げ道の無くなった投手は自滅するほかなくなる。


中国戦のマスクは、相川でなく、阿部が復帰している。これは大きかった。というのは、記憶力がよく柔軟性のある阿部捕手は、「球審が、コースぎりぎりのストレートを、ストライクとコールしないこと」に、早々と気づいたからだ。阿部はイニングを重ねるごとに、マエケンの主力球種をストレートではなく、スライダーなどの変化球に変えていった。

前の試合のブラジルは分析力のあるチームで、日本の投手それぞれの中心球種が何かを把握してゲームに臨んでいたし、アウトコースのボールになるスライダー(もっと正確にいえば、「きわどいが、球審にボールと判定されるスライダー」)を見逃すことができるバッターもいた。
だが、中国チームのバッターは、「この球審の場合、本来は見逃すべき、アウトコースのボール気味のスライダー」を投げても、やすやすと三振がとれた。これは中国チームの選手個人個人の野球センスの無さでもあるし、またチームとしてのスカウティング能力の無さでもある。



中国にない日本の野球史の長さを表わすこんなシーンがある。日本がようやく中国を突き離しにかかった5回裏、元メジャーリーガー、松井稼頭央が、フルカウントからの極めてきわどい外のストレートをあえて見逃して、貴重な四球を選んだシーンだ。
これは高度な選球眼が要求されるし、試合の流れをずっと追いかけて頭に入れて打席に入っていないとできないファインプレーだと思う。
マエケンのゲーム序盤の投球では、松井が四球を選んだような「アウトコースぎりぎり」の、それも「ストレート」は、大半がボール判定になっていた。
もし松井稼頭央が、このアウトコースのきわどい球に無理に手を出して凡退し、打線の繋がりが切れていたら、その後の大量点はどうなっていたか。地味に見えるかもしれないが、明らかにファインプレー。さすが松井稼頭央、さすがベテランとしか、言いようがない。


ちなみに、この中国戦の球審Gerry Davisが、そんじょそこらの「球場の雰囲気に左右されて、肝心の判定基準がフラフラと変わる」ような、ボンクラなアンパイアではないことは、この「松井稼頭央の四球」でも、よくわかる。
この1球の判定は、ただでさえ「アウトコース一杯」の難しい判定であるばかりでなく、この判定の結果で、打者松井が三振になるか、四球になるかが決まり、さらに、このイニングが、どのくらい日本のチャンス、中国のピンチになるかが決まる「重い」判定でもある。
もしここで、それまで重ねてきた「ボール」判定ではなく、突如として、この球だけに限って「ストライク」とコールしてしまうような「判定の揺らぎ」があれば、それこそゲームが混乱する大きな原因になる。

ボールなものは、ボール。
どんなにきわどい場面であろうと、なかろうと、変わらず自分の主張、自分のストライクゾーンを貫き通してくれるGerry Davisは素晴らしいアンパイアだ。

2人のMLBアンパイア、Chris Guccione と、Gerry Davis がそれぞれ球審をつとめたWBC日本対ブラジルと、日本対中国戦の2試合について、いつもMLBのゲームを見ながらやっているように球審のストライクゾーンについてツイートしていたところ、思わぬ数の反響(リツイートやらフォローやら)を頂いて驚いた。

おそらく、日本のテレビでWBCを観戦している方は、普段は日本のプロ野球だけ見るタイプの方が多いと思われるわけだが、それだけに、これら2人の球審が「非常に強い特徴をもつ、独特のストライクゾーン」を持っていることをこちらのツイートで知って、驚かれたのだろう、と思う。


そこで、そうした方々にも、MLBと日本のプロ野球との違い、MLBのアンパイアの個性とその意味について知ってもらい、MLBに関する間違った認識も訂正しつつ、もっとMLBに親しんでくれるファンを増やす意味で、簡単にだが、ちょっと自分のわかる範囲で説明してみることにした。(もちろん解説が100%正確ともいえないとは思うが、アメリカはともかく、日本では他の野球サイトでMLBのストライクゾーンの現状について、このブログ以上にきちんとまとめた解説をこれまで見たことがない)



MLBのストライクゾーンについての基礎知識

ネットでも、ファン同士のリアルな会話でも、よく「MLBのストライクゾーンは、日本より低い」という話を聞かされたことがあると思う。だが、そんなのは単に過去の「情報不足の時代」に言われていた俗説に過ぎない。
昔はまだMLBで実際にプレーする日本人選手が限られ、実際のゲームを見る機会も今ほど多くはなかっただろうし、またインターネットも無く、パソコンを使ったデータ収集もままならなかった。そんな情報不足の時代に、ほんのちょっと見ただけの印象が、聞きかじりに伝聞され、通説化していたとしか思えない。

日本にはいまだに存在しないのが残念だが、アメリカには、MLBについてのパブリックなデータサイトが非常に発達している。(例:Baseball Reference
中には、実際のゲームの何十万球もの投球データを集計して、アンパイアの実際のストライクゾーンを研究したデータ、なんてものもある。
だから、調べれば「MLBのストライクゾーンは低い」なんて単純な話ではないことは、誰でもわかる。


1)一般論としてのMLBのストライクゾーンは「横長」

ルールブック上のストライクゾーンは見た目に「縦長」な形をしているが、実際の試合でMLBの球審が判定するストライクゾーンは「一般論としては、横長」にできている。つまり、ルールブック上のゾーンに比べて、実際のゾーンは、高低が狭く、左右は広いのである。
もちろん個々のアンパイアには大きな個人差が存在する。アンパイアによって、「縦長」「横長」「真四角」と、さまざまな形のゾーンが存在する。だが、非常にたくさんの判定データをぶちこんで、ならしてみると、結局「横長」のゾーンになる、という集計結果が出ている。
資料:Hardball Times:The eye of the umpire


2)左バッターと右バッターのゾーンは異なる

MLBの左バッターのゾーンは、「アウトコースが異常に広い」のが特徴。アンパイアによっては、ルールブックよりボール2個以上広いことすらある。逆にインコースは、ルールブック通り。全体として言えば、「左打者のゾーンはアウトコース側に大きくズレている」ともいえる。もし左打者としてMLBで成功しようと思うなら、広いアウトコースに対応できなくてはならない。
右バッターのゾーンは、インコース、アウトコース、ともに、ルールブックより少し広い。ただ、右バッターのアウトコースのゾーンは、左バッターのアウトコースほど広くない。逆に、インコースは左打者よりやや広め。全体として言えば、右バッターは、インコースもアウトコースも、両方に対応する必要がある。
資料:Damejima's HARDBALL:2010年10月29日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (2)2007年の調査における「ルールブックのストライクゾーン」と、「現実の判定から逆測定したストライクゾーン」の大きな落差。
ルールブックのストライクゾーンと実際に計測されたゾーンの差
上の図で、左図は右バッター、右図は左バッター。アンパイア視点で書かれた図なので、向かって右がライト側、左がレフト側になる。赤色の線が「ルールブック上のストライクゾーン」、緑色の線が「実際のゲームでアンパイアがコールしているゾーン」。球審のコールするゾーンが「横長」であることがわかる。


3)個々のアンパイアのストライクゾーンは「個人差」が非常に激しく、その「個人差」は、他のあらゆるファクターに優先する

MLBのゾーンが「一般的に横長」という特徴をもつことや、左打者・右打者のゾーンの違い、それらのどの項目よりも、「アンパイアごとの個人差」は優先される
球審ごとにゾーンは少しずつ異なるが、いくつかのタイプ分けはできないこともない。(ただ、勘違いしてほしくないのは、ゾーンが狭いから上手いとか、広いから下手とか、そういう意味ではないことだ)
「ほぼルールブックどおり」代表例:Jeff Kelllog
「非常に狭い」例:Gerry Davis
「非常に広い」例:Jeff Nelson
「めったやたら横長」例:Mike Winters
「全体として高い」例:Sam Holbrook
「全体として低い」例:Tim Timmons

資料:Damejima's HARDBALL:2010年11月8日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (4)特徴ある4人のアンパイアのストライクゾーンをグラフ化してみる(付録テンプレつき)

資料:Hardball Times:A zone of their own


4)アンパイアに存在する「技術差」について

ひとこと確認しておかなければならないと思うことがある。
それは、アンパイアごとの「個人差」と「技術差」は、意味がまったく違う、ということだ。
技術の下手なアンパイアはMLBにもいるが、そしてWBCに派遣されているアンパイアは、たとえ「ストライクゾーンの個人差」は存在するにしても、MLBでも指折りの、技術の確かな厳選されたアンパイアが派遣されてきている、ということは強調しておきたい。日本のブラジル戦、中国戦の2試合をさばいたChris Guccione と、Gerry Davisは、2人とも素晴らしいアンパイアであり、MLBでの評価は非常に高い。

例えば、「MLBのアンパイアが実際に使うストライクゾーンは、ルールブック上のゾーンとは、かなり異なっており、また、個人差が非常に大きく影響する」などと書くと、とたんに、「じゃあ、MLBのアンパイアは、みんな下手なんだな」とか、「MLBのアンパイアは、バラバラの判定をしてるのか」とか、勘違いする人が出てくる可能性がある。

だが、それは間違っている。

最後はどうしても日米の文化論に帰結してしまうことになるが、アメリカでは州ごとに法律が異なっているように、「個人差を認める」というルールが文化の根幹に通底している。「アンパイア全員が、まったく同じ基準で判定しなければスポーツではない」と考えなければならない理由は、どこにもない。
では、個人差が認められているから、MLBのアンパイアの判定がバラバラなのかというと、そういうわけではなく、「通底した了解」も同時に存在する。けしてバラバラではない。ちょっと日本人には理解できにくいことなのかもしれないが、「大きな個人差があり、それが優先されながらも、全体としてひとつの方向性が存在する」という発想を認めなければ何事も先に進まない。

野球というゲームのアンパイアの判定で、最も困ることのひとつは、「ゾーンが高すぎる」とか「ゾーンが横長すぎる」というような「個人差の存在」ではなくて、むしろ「ゲーム中に判定基準がコロコロ変わること」や、「重要なゲーム、重要な場面で、プレッシャーに押しつぶされて、アンパイアがわかりきった判定をあからさまにミスすること」、つまり、「経験を含めた判定技術の上手い、下手」だ。

野球選手はプロだから、「今日の球審のゾーンは高いな」とか、「今日の球審はアウトコースが広い」とか、わかった上でプレーしている。だから、選手はアンパイアの個人差をそれほど問題にしてはいない。
だが、判定基準をゲーム中に突然変えることは、プレーしている選手にはバレるし、怒りを買う。突然さっきまでボールと言われていたコースをストライク判定されて三振させられたら、選手は一気に頭にくるし、黙ってない。アンパイアに執拗に抗議して退場させられたりすることもある。


最後にアンパイアの「個人差」と「技術の上手い下手」が意味が異なる、という例を挙げてみる。

Close Call Sportsという各種プロスポーツの退場処分だけを扱ったユニークなサイトによれば、日本対ブラジル戦を球審としてさばいたChris Guccioneだが、彼は、2011年に退場コールを3回行っているが、そのどれもが後に「正しい判定だった」(つまり抗議した側が判断を間違っていた)ことがわかっている。さらに2012年には、彼はなんと、一度も退場コールをしていない。
資料:Close Call Sports: Chris Guccione
このことからわかるのは、Chris Guccioneのストライクゾーンが他のアンパイアと比べて「やや高い」というような「判定の個人差」と、彼の判定技術の高さの間には、なんの関係もない、ということだ。

March 02, 2013

Davidoff Humidor No.6Davidoff Humidor No.6


2002年に亡くなられたパンチョ伊東さんの体調は2000年頃にはすでにかなり思わしくないものだったようだが、9月1日にホワイトソックスの本拠地、「新しいほう」のコミスキー・パークを訪れた、と記録にある。(パンチョ伊東のメジャーリーグ通信)本当に野球が好きで好きでたまらない方だったことがよくわかる。頭が下がる。

球場では試合前、旧知の間柄のホワイトソックスオーナー、Jerry M. Reinsdorf (ジェリー・ラインズドルフ。1936年ニューヨーク・ブルックリン生まれ。マイケル・ジョーダンが所属したシカゴ・ブルズのオーナーとしても有名)に偶然出会い、スイートルームに招かれて葉巻を勧められたという。
たとえMLBの球団オーナーになるような富豪であっても 『旧知の友人』 で 『気軽にスイートに招かれる』 というのが、パンチョさんのMLB人脈の無尽蔵さを物語る。感心するほかない。


2000年9月にパンチョさんが訪れたコミスキー・パークというのは、今でいうと、USセルラー・フィールドだ。というのも、1910年開場した旧コミスキー・パークが1991年に取り壊され、新たに建設されたホワイトソックスの本拠地は2003年まで旧球場と同じ『コミスキー・パーク』を名乗ったからだ。
だが、古くからの熱狂的なMLBファン、enthusiastであるパンチョさんが2000年9月の記事でUSセルラーを「コミスキー・パーク」と呼んでいらっしゃるのをあらためて見ることのほうが、かえって時代の「匂い」がリアルに感じられて、とてもいい。やはり時は移り変わるものなのだと、かえって時のうつろいが身にしみる。

2000年のホワイトソックスは、主砲フランク・トーマスの復活などもあって、約40年ぶりのワールドシリーズ進出か、と騒がれたほどの好調ぶりで地区優勝を果たすことになるのだが、ア・リーグ・ディヴィジョンシリーズ(ALDS)で、ワイルドカードでポストシーズン進出してきたシアトルに3連敗してしまい、世界制覇の野望は潰えてしまった。
(ちなみに、ホワイトソックスの日本語版Wikiにシアトルに負けたのが「リーグチャンピオンシップ」、つまりALCSであるかのような記述があるが、間違っている 2000 League Division Series - Seattle Mariners over Chicago White Sox (3-0) - Baseball-Reference.com

この翌年、2001年には、メジャー移籍したイチローセーフコで行われたMLBオールスターに出場することになった(イチローがランディ・ジョンソンから内野安打を打ち、盗塁したゲーム)が、体調の思わしくないパンチョさんは現地観戦できなかった。コミッショナー、バド・セリグはオールスター当日、パンチョさんからプレゼントされた黄色のネクタイをしめていた、という。



2002年オールスターは7月9日にミラー・パークで行われ、イチローも2年連続で先発出場しているわけだが、パンチョさんはイチロー2年目のオールスターの5日前、7月4日に亡くなっている。おそらく天国のブリーチャーから熱心に観戦なさったことだろうと思う。

Bleacher


ジェリー・ラインズドルフは、パンチョさんにすすめた葉巻の銘柄について、こんなことを言っている。
「キューバの上物は手に入らないが、
このドミニカ産もいいんだぜ」
となると、ラインズドルフのすすめた葉巻は、キューバ産の代表ブランド、コイーバ(Cohiba)やモンテクリスト(Montecristo)ではなく、キューバ産に比肩するドミニカ産葉巻で、1990年に生産拠点をキューバからドミニカ共和国に移したプレミアム・シガー、ダビドフ(Davidoff)だっただろう、ということになる。

Davidoff Aniversario - No.2

高級な葉巻の保管については、乾燥によるヒビ割れや、湿り気による青カビを防ぐために、humidorと呼ばれる専用箱に入れられ、湿度が70%前後に保たれる。(ちなみに香水を保管する箱を、高級葉巻の保管箱であるhumidorになぞらえて、Fで始まる綴りに変え、fumidorと呼ぶこともあるらしい)


今シーズン、三角トレードでナショナルズからシアトルに出戻ったマイク・モースだが、彼は元をただせば、パンチョさんがコミスキー・パークを訪れた2000年にホワイトソックスに入団している選手だ。(2000年6月19日に行われたアマチュアドラフト3巡目。全体82番目。パンチョさんが稀代のMLB通なのはいうまでもないが、シカゴ入団当時のモースの存在に気づいていたかどうかまではわからない)
3rd Round of the 2000 MLB June Amateur Draft - Baseball-Reference.com

そのモースがシアトルに来たのは、2004年6月27日にシカゴのモース、ミゲル・オリーボ、ジェレミー・リードと、シアトルのフレディ・ガルシア、ベン・デービスという3対2のトレード。そして、2009年6月28日にライアン・ランガーハンズとの1対1のトレードでナショナルズへ移籍した。
モースのシアトルにおけるキャリアのかなりの部分は、タコマでのマイナー暮らしで、メジャーでの出場試合数はわずか107ゲーム、打席数にして337打席でしかない。
モースがシアトルでの不遇時期に何を思っていたかはよくわからないが、少なくとも彼がナショナルズで開花した形になってから、三角トレードで古巣に凱旋したとき、彼がかつてシアトルに在籍した2004年から2009年までずっとチームの主力だった選手は、もう誰ひとり残っていなかった。(モースの在籍期間にフェリックス・ヘルナンデスが本当にエースといえる活躍をしたのは2009年のわずか1年だけでしかないし、2009年にシアトルに来た外様のフランクリン・グティエレスは「モースにとって、シアトルの匂いのする選手」ではないはず)


最初に挙げた文章を、どう訳せば、モースの使った Humidor という言葉の香りが損なわれずに済むか。


直訳すれば、「イチローは、僕に必要不可欠な湿めり気なんだ」とか、「イチローは、高級葉巻がクオリティを保つのに必要な『適度な湿度』をキープしてくれる宝箱的な存在の選手だ」とかいうことになる。
もっと意訳するなら、「自分がかつてシアトルにいた時代に嗅いだ あの『かつてのシアトル・マリナーズらしい香り』は、いま『イチロー』という存在の中に封印されている。その香りは常に僕に自分自身のかつてのシアトル時代を思い起こさせる」、とでもいうようなことになる。
シアトルでマイナー暮らしの長かったモースにとって、メジャー移籍直後からずっと目覚ましい活躍をし続けていたイチローは、いつかは自分もあんな風に第一線に立って活躍するんだという目標、あるいは、マイナー暮らしに耐えながら自分に対する自信を見失わないための支柱だっただろうと思う。

2001年のオールスターには8人もの選手がシアトルから選ばれ、さらにスターティングメンバーに4人もの野手が選ばれている。(イチロー、ブーン、オルルッド、エドガー)
モースは、シカゴで「強かった時代のシアトル」を知り、さらに「イチローのいるシアトル」にやってきて、やがて巣立ち、そして「イチローのいないシアトル」に戻ってきた。モースにとって、「イチローのいるシアトル」こそが「彼にとってのシアトル」なのは当然だ。
(ついでに言えば、それは2010年11月に亡くなったデイブ・ニーハウスにとっても同じだったはずだ。かつてブログに書いたように、「イチローのいるシアトル」こそが、「彼にとっての最後のマリナーズ」だった。 Damejima's HARDBALL:2010年11月15日、デイブ・ニーハウスにとっての「ラスト・マリナーズ」。

とすれば、最初の文章は、「イチローは僕にとって、僕がかつてのシアトルに感じた香りを封じ込めておいてくれる葉巻の箱のような存在なんだ」とか、軽く訳しておくだけでいいかもしれない。だが、それではモースがせっかく「ヒュミドール」という言葉を使って漂わせたかった「甘い想い出が発酵したときにだけ生じる、独特のかぐわしさ」や、モースがシアトルでの不遇時代に味わった「自分史における、ほろ苦さ」の微妙な感覚は消えうせてしまう。
匂いが消えてしまえば、シガーは台無しになる。もちろんジャック・ズレンシックの作った「匂いの消えうせたシアトル」は、「台無しになった後のシガー」だ。


結局、Humidorは、Humidorだ。そのまま味わうしかない。
そんな気がする。

伊東さん。それでいいっスよね。


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