September 2013

September 28, 2013

ホーム最終戦を終え、ヤンキースタジアムのダグアウト裏への階段を下りていくマリアーノ・リベラの後ろ姿を見ていて、「なにか、もの足りない」。そんなことを思った。

ホーム最終戦で彼に、インタビューでも会見でもなく、
スピーチする機会を設けてやるべきだ、と思ったからだ。


ルー・ゲーリッグの有名なスピーチは、「スタジアムの中」で行われた。彼の引退の言葉が長く語りつがれている理由は、実は語った言葉にあるのではなく、「語った場所」にあった。(ちなみに、スピーチが行われたのは1939年7月4日で、ファイナルゲームである4月30日ではない)

Lou Gehrig

ゲーリッグが、スタジアムの中で、マイクに向かって語ってくれたために、その言葉は「病いの中にあるゲーリッグが、ファンに差し出してくれた一葉の手紙」のようなものとしてファンのもとに直接届き、だからこそ、その「遺言のような言葉」をファンは胸の中に大事にしまいこむことができた。


マリアーノ・リベラのホーム最終戦では、ゲーリッグのようなスピーチスタイルをとらず、普段どおりインタビュアーがリベラにマイクを向けて英語で話かけ、リベラは「インタビュアーの問いに答える形」で「英語で」話したわけだが、正直、あれはない。
リベラとファンのための濃密な時間を、インタビュアーのマイクの前や、プレス相手のカンファレンスルームの中などではなく、フィールドの中で作るべきだった。
また、今の時代はアメリカ国内のスペイン系住民やカリブ海周辺のスペイン語圏にたくさんのMLBファンがいる時代なのだし、リベラがスペイン語で語る場面もファンに披露すべきだった。


9回の投手交代をジラルディ自身が告げに行くのではなく、マイナー時代から長年一緒にプレーしてきたペティットとジーターに行かせたことを、なんて素晴らしいアイデアだ、あれでもう十分だと思って涙した人や、リベラがマウンドのダートを両手ですくいとる姿で十分だ、他に何も必要ない、などと思った人がいたかもしれないが、ブログ主は、よくそんな淡泊な考えでいられるな、としか思わない。


本当に美味いものなら、その真髄を飽きるほど食い倒してこそ人生だ、と考えるのが、ブログ主の「真髄」である。


目の前のことばかり見て、将来を考えずに時間を過ごして、「次の時代をあらかじめ用意しておくこと」に失敗したヤンキースが、今シーズンを「終わっていくヤンキースの送別」のためだけに使い果たそうと決めたのなら、半端な若者など使わずに、とことん送別会をやり尽すべきなのであって、ジラルディを先頭に中途半端なことばかりしているのは、今の彼らが「旨いものの本当の食べ方を知らない」証拠である。
リベラはMLB史上の至宝であって、ヤンキースだけのものだとは思わないから言わせてもらうと、残念なことに、今のヤンキースは、リベラの最後の勇姿という素材を、本当の意味で上手に料理して、最高の形で客に出せた、とは、お世辞にもいえない。
(もちろん、リベラ自身がスピーチを固辞した可能性もあるわけだが、ルー・ゲーリッグだって周囲の要請に応える形ではじめて言葉を発したわけであって、うまく名場面をつくるのには周囲の努力が不可欠なのだ)


パラグラフの中で同じ言葉が繰り返されるのを嫌うのと同じように、ルー・ゲーリッグの形を踏襲することは、ゲーリッグとリベラ、2人の権威や彼らへの敬意を損なうから避けるべきだと考える人がいても、それはそれで不思議ではないが、ならば問いたい。

リベラがファンに語りかける場所、それが「マウンド」でなくて、他のどこなら彼にふさわしいのか。

ブログ主はまったく思いつかない。

September 27, 2013

ホーム最終戦を終え去っていくマリアーノ・リベラ



September 26, 2013

以下にwOBAのデータを挙げるように、平均的な野手編成は、いくら生き馬の目を抜くMLBとはいえど、いまだに基本的には「ファーストとサードに強打者を置いて中心に据え、外野手を肉付けし、最後に守備重視のキャッチャー、ショート、セカンド」というようなものだが、それにくらべて、1990年代末から2000年代にかけてのCORE4世代のヤンキース打線の構造は「非常に特殊」だった
というのは、教科書的にいえば守備的なポジションとして扱われていて、打てなくてもおかしくないはずの「キャッチャー」と「ショート」に、2人も「打てるプレーヤー」が揃っていたからだ。

今のア・リーグで、これら2つのポジションにポサダやジーターレベルのバッターを揃えたチームは存在しない。せいぜいボストンとオークランドの数字が多少マシな程度だ。(だからこそ、この2チームの打線は「穴が少ない」ともいえる。逆にいえば、「穴がなく、繋がりのいい打線」を作ろうと思えば、「打てるキャッチャー、ショート、セカンド」が必要になるという意味にもなる)

まぁ、逆にいえば、ヤンキースをセンチメンタルに後ろ向きで語りたがるメディアやファンが、「キャッチャーだろうが、ショートだろうが、ヤンキースでは打てて当たり前だ」などと、いまだに「根拠のない勘違い発言」を繰り返す理由も、かつての「かつての、ショートやキャッチャーでさえ打てる、特殊なヤンキース打線」を、「常に実現できているのが当たり前」の現象だと勘違いするところから始まっている。
彼らは、かつてのヤンキース打線の特殊性やアドヴァンテージがなぜ生じていたのか、その理由をほとんど分析も理解しないまま、あれこれ語ってきたのである。


イヴァン・ロドリゲスはじめ、マウアー、マッキャン、ポージーのような、「バッティングとディフェンスの両方が優れた、長期にわたって活躍できるキャッチャー」なんてものは、リーグ単位でみても「10年にひとりかふたり」程度のペースでしか出現しない。
ニューヨーク・ポストのケン・ダビドフが主張するような「ラッセル・マーティンとの再契約」程度のせせこましい対策で、かつてのアドヴァンテージを完全に失ったヤンキース打線の没落が防げたわけがないし、ヤンキースの打線崩壊の主原因は、「キャッチャーの打撃成績が下がったこと」ではない。なのに、いまだにマーティンとの契約がどうこう言っているアホなライターやブロガーがいまだにたくさん存在することには、ほとほと呆れるばかりだ。


ポジション別」に今のア・リーグ各チームの打線をみてみると、野手について、どのチームが、どういうタイプの野手を、どのポジションに揃えて他チームとの競争に勝とうとしているのかという編成戦略については、おおむね以下の2つの原則、「常識的な原則」と「常識を超えた原則」が働いていることがわかる。

常識的な原則
打てて当たり前のポジションには、打てる主軸打者を置くことで、他チームに「後れをとらない」ようにする。
常識を超えた原則
打てなくても当たり前のポジションで打てる選手を発掘して、他チームの打撃に「差」をつける。打線の穴をより少なくする効果もある。

例えば2013ア・リーグ東地区の勝率5割越えチーム(BOS、TB、NYY、BAL)のポジション別の打撃成績(例えばwOBA)をみると、全チーム共通で、キャッチャーショートの数字が悪く、ファーストサードの数字がいい。つまり、基本的に常識的な教科書どおりのチーム編成がとられているわけだ。


ただ、「キャッチャーとショートは守備負担の重いポジションだから、打てない」という教科書的な説明なんてものは、誰でもできるし、そういう「教科書的な常識」をきっちり守ってチームを編成したからといって、「打撃で他チームに差をつけるられるチーム」が出来上がるわけではない。
哲学者ジル・ドゥルーズなどのいう「差異」と、どの程度共通性があるのかはわからないが、プロの世界における「差異」とは、できて当たり前、やって当たり前の常識的なことを実行するのは当然で、むしろ「常識を超えたプレーヤー」「常識を超えた才能」が出現し、「常識を超えた布陣」が成立して、はじめて、選手と選手の間、チームとチームの間に、「明確な差異」が生じるようにできている。 
これは、マーケティング上の「あらゆる市場価値が生まれる基本原則」と同じ原理だ。

DHは、「守備負担が無いから打てるポジションだ」と思われがちだ。しかし、実は、デビッド・オルティーズのいるボストンのような数少ない例外を除くと、DHの打撃成績がいいチームは想像よりはるかに少ない。
このことは、DHについては、「守備負担が軽いポジションでは打てる」「守備負担の重いポジションでは打てない」というような教科書的な原則が当てはまらないことを示している。
かつてヤンキース打線に「打てるキャッチャー、打てるショート」がいたことで、他チームに対する大きなアドヴァンテージが生まれたのと同じように、オルティーズのいるボストン打線は、「思ったよりたいしたことがないDHの打撃において、他チームに大差を築くことに成功」するによって、もともとあるボストンと他チームとの打撃格差を、さらに拡大することに成功している。
こうした見えにくい打撃格差をきちんとつかまえておくことには、今後大きな価値がある。


2013年に優れた打線の構築に成功したチームでは、ファースト(フィルダー、ナポリ、デービスなど)やサード(ミゲル・カブレラなど)のような「打てて当たり前と思われているポジション」に、「リーグを代表するスラッガーを配置する」という、ごく当たり前のチーム編成の基本がきちんと踏襲されている。(もちろんヤンキースはできていない)

だが、そうした「常識的な編成戦略」だけが全てか、というと、そうでもない。
たとえば、ファーストやサードが他チームの同ポジションの選手と同じ程度に打てても、他チームに「大差」などつけられないという可能性もあるからだ。
だが、かつてのヤンキース打線がそうだったように、「ファースト」や「サード」が人並み以上どころか爆発的に打てて、さらに、普通のチームなら打てなくてもおかしくない「キャッチャー」や「ショート」までもが、かなり打てるとなれば、話はまったく違ってくるのは当たり前だ。打撃面で他チームに大差がつかないわけがない。

これは、たとえとしていうと、280円の同じ価格の牛丼で、各チェーン間の売り上げに「差異」が生じる理由が、「価格」や「食事としてのおいしさ」といった「最優先に思える選択項目」にあるのではなくて、むしろ、「店員の対応の良さや礼儀」「店や制服の清潔感」「味噌汁がついている」「生姜がタダ」「食器が使いやすい」というような「二次的な選択」と思われている項目のどこかに、実はマーケティング上の「本当の差異」が隠れていることにかなり似ている。

「人並み外れて打てて、守れるキャッチャー」、「人並み以上に打てて、守れるショート」は、野球界全体で探しても数は限られる。それだけに、その両方をスタメンに置くことができていた、かつてのCORE4時代のヤンキースの「優位性」は、いまさらもういちど再現しようとしても、無理がある。よほどの運の良さでもない限り、そういう状態はもう再現できないと思ったほうが、よほど現実的だ。
(そう考えると、いまの日本のプロ野球の巨人は、打てるキャッチャーと打てるショートがいるわけだから、かつてのヤンキースが持っていたのと同じ「特殊なアドヴァンテージ」を保った状態ではある)


さて、具体的にポジション別wOBAをみてみる。
数値の高さによって、3グループに分かれる。

1)ファースト、サード、DH
2)外野手
3)キャッチャー、ショート、セカンド


1B、3B、DH
ポジション別wOBA_1B_3B_DH

外野手
ポジション別wOBA_外野手

C、SS、2B
ポジション別wOBA_C_SS_2B



2013シーズンにポストシーズン進出を果たしそうなチームと、ヤンキースの選手編成とでは、どこに違いがあるだろう。

ファースト、サード、DH
上で書いた「チーム編成上の常識的な原則」がここだ。
どんなチームでも、これら3つのポジション(特にファーストとサード)に、最低でも「ひとりの強打者」、有力チームの多くでは「2人の強打者」を確保した上で、レギュラーシーズンを戦った。
ボストンなら、オルティーズとナポリ。デトロイトなら、ミゲル・カブレラとフィルダー。ボルチモアなら、マニー・マチャドとクリス・デービス。他にロンゴリア。トロントですら、2人そろえている。

だが、かたやヤンキースは『ゼロ』だ。


DHについてだが、「守備負担がないのだから、打てて当たり前」という教科書的な考えを抱きがちだが、実は、wOBAでみるかぎり、リーグ全体でみても「優秀なDH」は非常に限られた数しかいない。このことは、数字からハッキリしている。
だからDHを、「守備負担がないこと」にとらわれて「打てて当然のポジションだ」と思い込むのは、そもそも出発点からして間違っている。
かつてのエドガー・マルチネスのような優秀なDHが払底している今のア・リーグでは、「打てる打線をつくるための基本」は、あくまでファーストとサードであり、DHは必ずしも含まれない。DHだからクリンアップを打つべき、DHだから上位打線に置くべきという考え方は、現実の野球に即していない

2013ヤンキースは、こうした「打線づくりの基本原則」をまるで踏襲しなかった。グラフを見てのとおりだ。
「打線低迷は、Aロッドとマーク・テシェイラを怪我で欠いたせいだ」などと平凡に説明する人がほとんどだが、では、もし仮に、彼らが怪我を経験せず、体調万全でシーズンを過ごしていたとしたら、この2人はミゲル・カブレラ並みに打てていただろうか? ヤンキースは他の有力チームに打撃で遅れをとらずに済んでいたか? 悪いけれど、ブログ主はそんな楽観論など、まったく信じる気にならない。
たとえAロッドとテシェイラの体調が完璧だったとしても、2人の打撃はマニー・マチャドにすら到底及ばず、2013ヤンキースは「ファーストとサードにおける大きな打撃格差」を抱えたまま、他チームに打撃面で大きく遅れをとっただろう。


外野手
「ア・リーグにおける外野手の役割」について誤解している人が、いまだに呆れるほど多い。ほとんどの人がそうだといってもいいかもしれないくらいだ。
というのは、ア・リーグで唯一の「外野手依存チーム」であるエンゼルスのように、「MLBでは外野にスラッガーが2人くらいいるのが常識が」だのなんだのと、データも見ないで自分勝手に信じ込んでこんでいる人が少なくないからだ。

だが、現実には、外野にスラッガーの並んでいるチームなど、ほとんどない。
いまやア・リーグにおける外野手というポジションには、ファーストやサードを守っているスラッガーのようなタイプはほとんどいないというのが、データの示す「現実」だ。

おそらく、このブログで何度となくジョシュ・ハミルトンとカーティス・グランダーソンの打撃面の衰えについて書いてきたように、スカウティングの発達は、どんな球種、どんなコースを狙っているかを推定されやすい「外野手のスラッガーのワンパターンなホームラン狙い」が長期にわたって成功し続けられる安易な時代を、とっくに終わらせてしまった、と思われる。
ジョシュ・ハミルトンカーティス・グランダーソンは(あるいはニック・スイッシャーもそうなるかもしれない)、その典型なのだ。

今の外野手に基本的に求められるのは「走攻守のトータル・バランス」であって、「ホームラン量産」などではない。

守って、走って、打つ。そういうバランスのとれたプレーが今の外野手の基本であり、「多少は打てるが、守備の下手な外野手」には、ファーストなどへコンバート以外は、短い選手生活しか待っていない。その程度の外野手なら、「かわりになる給料の安い若手」がいくらでもいるからだ。
逆にいえば、走攻守に優れたヤシエル・プイグの活躍で明らかになったように、今の外野手には、ブレット・ガードナーやフランクリン・グティエレスのような「キャッチングのいい外野手」はいても、プイグやイチローのような「走攻守のバランスがとれているだけでなく、強肩でもある外野手」は非常に数が限られている


キャッチャー、ショート、セカンド
いまのア・リーグで「セカンドとショートに、打って守れる選手が2人揃っているチーム」は、ほとんどない。せいぜいクリーブランドがそういえるくらいで、あとはボストン程度だ。
だが、逆にいえば、これらのポジションが、チームの打線を編成する上での「常識を超えた原則」だといえるのは、「打てなくてもしょうがないと思われているポジション」だからこそ、もし「人並み外れて打てるキャッチャーや、ショートや、セカンド」が手に入ったらたら、他チームには同じポジションに「打てない守備だけの選手」しかいないのだから、大きな差をつけることができるからだ。


かつて「キャッチャーとショートに打てる選手がいたヤンキースが、他チームの打撃に大差をつけ続けることができた理由のひとつも、ここにある。

ポサダの引退とジーターの故障と不調が、ヤンキースの打撃面のアドヴァンテージを奪い、打撃成績に多大な悪影響を及ぼすことを、当のヤンキース自身がほとんど理解していなかったことは、GMブライアン・キャッシュマンがファーストとサードにロクな選手を連れてこなかったことと並んで、はかりしれない長期的な損失をヤンキースにもたらした。

2013シーズンのヤンキースのキャッチャーとショートが、「守備負担が重いために、打てない」などという「ごく平凡なポジション」に戻ってしまうこと、そして、それを短期間でリカバリーすることは難しいことは、最初からわかりきっていた。
だから、ヤンキースは、かつてのヤンキースがもっていたキャッチャーとショートで保持してきた「他チームでは、ありえないようなアドヴァンテージ」を補完できるような「何かもっと別の対策」をあらかじめ用意しておくべきだったわけだが、実際には何も用意できていなかった。

もちろん、本来の対策は、チームが奇跡的に地区首位だったシーズン序盤に、きちんとサードやファーストに予備のスラッガーを獲得しておくことでなければならなかったはずだが、ヤンキースは若いユーティリティ・プレーヤーを重用してみるような「その場かぎりの、場当たり的対応」だけを繰り返しつつ2013シーズン後半を迎えてしまい、ポストシーズン進出のチャンスを自ら潰す結果を招いた。


こうして書き並べてみて、ヤンキースというチームが、かつての自分たちが、どういう意味で、どこのポジションにアドヴァンテージを持っていたか、ほとんど理解していなかったことは、ほとんど明白だ。

第一に、2013ヤンキースは、打線を編成する上での「常識的な原則」をまったく踏襲しなかった。つまり、Aロッドとテシェイラの怪我で欠けたサードとファーストに、必要なレベルでの補強をきちんと行うのを怠って、場当たり的な補強ばかりやった。かといって、マグレで活路を見出せるかもしれないDHをみつけてくるようなチャレンジもやろうとしなかった。
第二に、2013ヤンキースは、打線を編成する上での「常識を超えた原則」を持とうとしなかった。
ヤンキースは、ポサダ引退とジーターの故障で、かつて他チームに対して持ち続けてきた「打てなくてもおかしくないポジションでの優れた打撃」というアドヴァンテージを完全に喪失するのはわかりきっていたが、にもかかわらず、ヤンキースは他チームとの間に「常識を超えた差異」を築くことのできるプレーヤーを優遇しなかった。イチローの奇妙な起用ぶりでわかるように、チーム体質の改善にマトモに取り組もうとしなかったし、十分可能性のあったポストシーズン進出も、わけのわからない突然の若手起用でみずから潰す結果を招いた。
Damejima's HARDBALL:2013年9月9日、イチローのバッティングを常に「冷やし」続けてきたジョー・ジラルディの不合理な起用ぶりを、この際だから図に起こしてみた。


ここまで書いたことでわかるように、今シーズンの打線強化のための補強ポイントが「内野手」であるべきだったことなど、いまさら言うまでもない。これほど明確な話もない
なのに、ヤンキースは的はずれに外野手ばかり補強して、選手をダブつかせ、かわるがわる起用してはバッティングを「冷やし」続け、また一方では、本来もっと補強すべきだった内野手について場当たり的な対症療法ばかり繰り返して、意味のわからないユーティリティプレーヤーを使ったりしたことは、今シーズンのヤンキースのチーム編成上の大失態だ。説明するまでもない。
シーズン終盤に、かつて打てるショートだったジーターのポジションを、どこにでもいる打てない守備専門プレーヤーにくれてやるような応急措置で、曲がり角を曲がりつつあるヤンキースの深部の何かが変わるわけではない。その理由は、この文章を読めばわかるはずだ。

September 20, 2013

2013年秋、ヤンキースで「やたらと起用されだしている若手選手」には、共通の特徴がある。

2004 フィル・ヒューズ
2005 ブレット・ガードナー
2006 チェンバレン、ロバートソン
2007 オースティン・ロマイン
2008 デビッド・アダムス、デビッド・フェルプス
2009 J.R.マーフィー、アダム・ウォーレン
2010 プレストン・クレイボーン



そう。キーワードは、「ドラフト」だ。
全員が全員、ヤンキースがドラフトで獲得してきた生え抜き選手たちばかりなのだ。この中に「トレードのおまけ」とかでヤンキースに来た選手はひとりもいない。

つまりは、だ。
ヤンキースは、いまさらながら、「自前の若い選手」を前面に押し立ててみようとしているらしいのだ。(そういう意味では、2013年のポストシーズン進出をヤンキースはかなり早い段階から本気で考えてはいなかった、といえる)

最初にハッキリ言っておく。
「植物を種とか苗から育てあげた経験がない人間」には、たぶんわからないだろうが、「もともと育ちの悪かった植物」に、突然、大量の肥料を与えるなんてことをすれば、最悪の結果を招くだけだ。育ちが改善されたりはしないし、まして立派な作物が実ったりはしない。枯れるだけだ


こうした「実験の秋」を過ごしているヤンキースに、「いまさらながら」と、わざわざ皮肉めいた前置きをあえて付け加えさせてもらったのには、もちろん、ハッキリした理由がある。(そもそもハッキリ把握してないものを書こうとは思わない)
それは、最初に名前を並べた生え抜き選手たちのなかに、「ドラフト1巡目の、それも、上位30位以内での指名」というような、「まさにドラフト1位指名選手。まさに金の卵」といえる選手は、せいぜいフィル・ヒューズくらいしかいないからだ。
つまり、いくらヤンキースが慌てて「若手という畑」を必死にたがやすことにしたからって、その「畑」とやらの実態は、実は、将来性がまったく見当がつかないような「ドラフト下位指名選手ばかりでできた畑」なのだ。
育ちの悪い畑にヒョロヒョロ生えている植物の芽の群れが果たして、素材として良質なのか、将来の伸びしろは本当にあるのか。それを見極めもしないで、「全部の芽が育てよ」とばかりに、突如として「出場機会という肥料」を大量に与え続けたとしても、全部の芽が育つわけがない。

明らかにこれは、「猫の額ほどの家庭菜園をやり始めたばかりの素人」が「最初によくやる失敗」のひとつだ。

「今までほったらかしだった将来性のわからない畑を、いまさら掘り返し、肥料を撒きまくること」に、ヤンキースが「いまさら」必死になったりするから、ついつい、「いまさらながら」と揶揄したくなる。当然の話だ。

もっとハッキリ言わないとわからない人もいるだろうから、もっとハッキリ書いておこう。
この10年、ヤンキースは、いつかはジーターなどヴェテランたちの後継者として、若手を育てるプロセスに注力しておかなければならなかったはずだが、それをずっと怠ってきた。
そして、なお悪いことに、ヤンキースはこの10年というもの、ドラフト1位指名において将来のチームの骨格となる選手を、誰ひとり育てあげてこれなかった
つまり、2013年秋になってヤンキースが、「いまさらながら」に、耕し、肥料を撒きはじめた「畑」の中身は、実は、過去10年の間、ずっと失敗ばかり続けてきたドラフトの結果、チーム内に溜まりに溜まってしまっている「賞味期限のあやしい、ドラフト下位指名の選手たち」を、一斉にゲームに出しっぱなしにして鍛え直そうとするような、そういう「ドタバタな若手育成の三文芝居」でしかないということだ。

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では、
そもそもこの10年でヤンキースがドラフト1位指名した、
「ヒューズ以外の選手たち」は、
いったいどこに行ってしまったのか?

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2012年に『父親とベースボール』のシリーズなどで書いてきたように、近年のMLBでは、アフリカ系アメリカ人が減少する一方で、ドミニカ、ベネズエラ出身選手が大幅に増加し、多国籍化が日増しに進み、優秀な選手の「供給源」も、非常に多様化してきた。今年などは新しいトレンドとして、セスペデス(OAK)、プイグ(LAD)、ホセ・フェルナンデス(MIA)などのキューバ出身選手が注目を集めた。

Damejima's HARDBALL:「父親とベースボール」 MLBの人種構成の変化

Damejima's HARDBALL:2012年4月5日、MLBのロスターの3.5人にひとりは、メインランド(アメリカ大陸の50州)以外の出身選手、というESPNの記事を読む。(出身国別ロスター数リスト付)

Damejima's HARDBALL:2012年6月4日、恒例の全米ドラフトは高校生が主役。

Damejima's HARDBALL:2012年6月11日、MLBにおけるアフリカ系アメリカ人プレーヤーの減少について書かれたテキサス大学ロースクールの記事を訳出してみた


だから、2000年代中期までのように、「ドラフト」、つまり、ドラフトという名の、「大学生中心のアメリカ人プレーヤーのマーケット」こそが、「MLBで最も優れた選手を獲得できる、最高にして最大の市場である」とは、必ずしも言い切れなくなりつつあるわけだ。

例えば、かつては、空前のドラフト豊作イヤーだった2005年ドラフトや(Jアップトン、ジマーマン、トゥロウィツキー、マッカチェン、ステロイダーのライアン・ブラウン、エルズベリーなど)、投手の素晴らしい当たり年だった2006年ドラフト(カーショー、シャーザー、リンスカム、モローなど)のように、すぐにチームのコア・プレーヤーになれるほどの才能を備えた選手が同じ年度に10人前後も集結するような「爆発的なドラフト豊作年」があった。
だが、2008年以降になると、そうした豊作年ほとんどない。たしかにポージー(2008)、トラウト(2009)、ハーパー(2010)と、それぞれの年の目玉選手はいる。だが、全体の豊作度としては「小粒」であり、2005年や2006年の豊作ぶりには比べようもない。

だから、ぶっちゃけ、いまのドラフトで「大当たり」を引くことができるのは、全体1位からせいぜい全体4位くらいまでの「優先くじ」を持っているチームか、よほど運のいいチームだけということになってしまっている可能性が高い。

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さて、2013シーズンのいま、ア・リーグ東地区をみると、チーム間にこれまで存在しなかった「選手層の厚みの格差」ができつつある
その理由のひとつに、以下にみるような2000年代中期までのドラフトでの巧拙の影響がある。つまり、ア・リーグ東地区(それと参考までにデトロイトを加えた)では、ドラフトによる選手獲得の成否がまだチームの将来を左右していた「2000年代中期までのドラフトにおける巧拙」が、2010年代における選手層の「厚み」というか、選手層の骨格の「太さ」を左右した、ということだ。(言い換えると、ドラフトに最も優秀な選手が集まらなくなってきた2000年代終盤のドラフトでの巧拙は、ほとんど選手層の厚みに関係してない)

もう少し具体的にいうと、「2000年代中期までのドラフト」でうまく立ち回ったチームでは、ドラフト豊作年の2005年や2006年に、確実に「大当たり」を引いていることが多い。ここで獲得できた将来性豊かな才能ある選手たちは、「2000年代中期までに大当たりを引けたチームと、引けなかったチームとの間の、選手層格差」を産む「最初のきっかけ」となった。
また「2000年代中期までのドラフト」で成功したチームでは、たとえ豊作年でない年でも、下位指名選手から「当たり」を「発掘」することに成功していることが多い。
さらには、デトロイトのように、「ドラフト1位指名選手を、FA選手獲得のためのトレードの駒にする」という思い切った手法によって、他チームの有名プレーヤーを「釣り上げる」ことに成功し、選手層の骨格を太くすることに成功したチームもある。

こうして、「2000年代中期までのドラフトの巧拙」は、まだアメリカ国内の選手層が十分豊かだった2000年代が終わらないうちに、若くて分厚い選手層を十分に築き終え、次世代である「2010年代」に備えることができたチームと、そうでないチームの間に、「選手層格差」を産んだ。
それは必ずしも「地区優勝したチームは、翌年のドラフトで成功できっこない」ということを意味しない。例えば、ボストンは2004年にバンビーノの呪いを解いてワールドシリーズを制覇したが、それでも2005年ドラフトにおいてきちんと戦力補強に成功している。

では、チーム別にみていこう。

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この10年、ドラフトでの成功例がないヤンキース

リストを見ると一目瞭然だが、ヤンキースの2000年代のドラフト1位指名選手は、ほとんどリーグを代表するような選手に育っていない。ほとんどの年度で、メジャーにさえ上がれなかったり、契約そのものができなかったりしている。
例えば、実はヤンキースは豊作年の2005年にダグ・フィスターをドラフトで指名しているのだが、サインに至らなかった。また、今年ついにひさびさの地区優勝しそうなピッツバーグで中心投手になったゲリット・コールも、2008年に指名しているが、サインできなかった。2006年にドラフト1位指名してサインしたイアン・ケネディを放出してまでして獲得した選手たちが結局活躍しなかったことといい、この10年、ヤンキースのドラフト1位指名は成功したためしがない
今年、かろうじて戦力になっているのは、ヒューズ(2003)、チェンバレン(2006)、ロマイン(2007)くらいだが、スタッツなどみなくても、彼らがリーグを代表するプレーヤーに育ちつつあるわけではないことは誰でもわかる。

前にも一度書いたが、ヤンキースは2006年に、それまで長い間保持してきて、ジーター、リベラ、ペティットなどの有望新人を数多く輩出してきたマイナーチーム、「Columbus Clippers」を手放してしまっている。こうした育成組織の軽視が、ヤンキースのドラフトが10年ほど成果を産んでいないことと無関係なはずがない。
Damejima's HARDBALL:2013年8月5日、「生え抜きの成長、黄金期、ステロイド、そして衰退」 正しいヤンキース30年史。
だからこそ、2013年秋にヤンキースが必死に出場機会を与えている若い選手たちは、こうしたヤンキースの「失敗続きのドラフト10年史」の、いわば「残り物」だというのだ。

ヤンキース関連のフロガーやニューヨークメディアは、よく若い選手への過剰な偏愛をクチにしたがる。それをヤンキース愛だとかいえば、聞こえはいい。
だが、「もともと育ちの悪い植物」に突然、大量の肥料を与えたりしても、畑はよくならないし、立派な作物は実らない。むしろ枯れてしまう。ヒョロヒョロとはえた芽の段階で肥料をやりすぎて枯らしてしまうのは、家庭菜園で非常によくある間違いだ。そんな田舎くさい、素人くさいことをやっていて、ヤンキースが強くなれたりはしない。

ダメな苗は見切る、間引く。強い苗だけを育てる。それが本気の農業というものであり、それが「プロ」だ。

2003年以降の
ヤンキースのドラフト1位指名選手リスト


2003 全体27位で3B指名。モノにならず
2004 全体23位でフィル・ヒューズ指名
     全体37位でC指名、モノにならず
2005 全体17位でSS、全体29位でRHP指名
     いずれもモノにならず
2006 全体21位でイアン・ケネディ指名。
     後にピッツバーグへトレード。獲得選手は活躍せず
     全体41位でジョバ・チェンバレン指名
2007 全体30位でRHPを指名。モノにならず
     全体94位でオースティン・ロマイン指名
2008 全体28位でGerrit Cole指名。サインできず
     (2011年にピッツバーグに入団、活躍)
     全体44位でLHP指名、モノにならず
2009 全体29位でCF指名、モノにならず
2010 全体32位でRHP指名、2巡目全体82位SS指名。
     いずれもマイナー 


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選手層の太い骨格をドラフトで作ったボストン

ボストンがドラフト1位指名で成果があったのは、2000年代中期までだ。2000年代後期には、トレードではいろいろと成果があったにしても、ドラフトでは成功例がない。
今のボストンの強さを支えている「生え抜きの選手層の厚み」が形成されたのは、「2000年代中期までのドラフト」で獲得したペドロイアバックホルツなど、「選手層の太い骨格」を形成している選手層が常に盤石なことからきている。
そのためボストンは、2012年シーズン終了後のように、チーム再編の必要性に直面したとしても、「選手層の基本骨格」を全くいじらなくても、トレードによる小手先の修正でチームを簡単に「再起動」できる。実際、2000年代終盤以降、このチームは、トレードによる主軸打者の入れ替えやクローザーの入れ替えのような部分修正で、チームを再起動してきた。

2003 全体17位でデビッド・マーフィー指名(後にエリック・ガニエとトレード)全体32位でマット・マートン指名(後に4チームのからむトレードでカブスへ)4巡目全体114位でジョナサン・パペルボン指名
2004 1位指名なし
     (2巡目全体65位でダスティン・ペドロイア指名)
2005 全体23位でジャコビー・エルズベリー指名
     全体42位でクレイ・バックホルツ指名
     全体45位でジェド・ラウリー指名
2006 全体27位でOF指名。モノにならず
(2巡目全体71位でジャスティン・マスターソン指名。後にビクター・マルチネスとトレード。17巡目全体523位でジョシュ・レディック指名。後にアンドリュー・ベイリーなどとトレード)
2007 全体55位でLHP、全体62位でSSを指名。モノにならず (5巡目全体174位でミドルブルックス指名)
2008 全体30位でSS指名
2009 全体28位でCF指名
2010 全体20位で2B、全体36位でLF、全体39位でRHP指名



攻守に才能ある野手を得たボルチモア

2000年代、まだ弱かったボルチモアは、常にドラフトの上位指名権をもっていた。だが、2005年と2006年のドラフト豊作年、何の成果を得ていないことでわかるように、必ずしもドラフトの上手いチームだったとはいえない。
だがそれでも、この10年のうちにマーケイキスウィータースマチャドと、攻守に優れた野手をドラフトで獲得できたことで、近年のこのチームにはじめて「選手層の骨格」と呼べるものが形成された。
こうした「打てて守備もできる野手の連続的な獲得」は、かつてエラーだらけのザル守備で有名で、打撃にしか取り柄のない大雑把なチームを大きく変貌させた。
ただ、このチームにアダム・ジョーンズがいるといないとでは、全く意味が違ってくる。もちろん、2011年夏に思い切って上原を放出して、クリス・デービスを獲得したことも大きいとしても、それよりなにより、シアトルが育てきれなかったアダム・ジョーンズを獲得したトレードは、ボルチモアの「未来」を一変させる重要な出来事だった。エリック・ベダードのトレードがボルチモアの一方的な勝ちであることは、いうまでもない。

2003 全体7位でニック・マーケイキス指名
2004 全体8位指名でRHP指名。モノにならず
2005 全体13位でC、全体48位でLHP指名 いずれもモノにならず (2巡目全体61位でノーラン・ライモールド指名)
2006 全体9位で3B、全体32位でRHP指名。いずれもモノにならず (3巡目全体85位でザック・ブリットン指名)
2007 全体5位でマット・ウィータース指名
2008 全体4位でブライアン・マットゥース指名
     (同年2月トレードでアダム・ジョーンズ、クリス・ティルマンをSEAからトレードで獲得)
2009 全体5位でRHP指名
2010 全体3位でマニー・マチャド指名



最低限の主力をキープしたタンパベイ

タンパベイも必ずしもドラフトが上手いとはいえない。
だが、それでも、2006年のロンゴリア、2007年のプライスの獲得があまりに存在として大きいために、それだけで十分な成果だったとさえいえる。
特に、投手におけるドラフト豊作年だった2006年に、クレイトン・カーショーやティム・リンスカムでなく、あえて野手のロンゴリアに白羽の矢を立てたのは慧眼だった。
2003 全体1位でデルモン・ヤング指名
2004 全体4位でジェフ・ニーマン指名
2005 全体8位でRHP指名。モノにならず
2006 全体3位でエヴァン・ロンゴリア指名
2007 全体1位でデビッド・プライス指名
2008 全体1位でSS指名
2009 全体30位で2B指名
2010 全体17位でRF、全体31位でC、全体42位でRF指名



1位指名選手をトレードの駒にするデトロイト

ドラフトで獲得した生え抜き選手を育て上げるのが上手いボストンのようなチームと違って、デトロイトでは、2004年のバーランダー、2007年のポーセロを除いて、ドラフト1位指名選手を惜しげもなくトレード要員にする手法によって、「選手層の太い骨格」を形成してきた。
ミゲル・カブレラはじめ、マックス・シャーザーダグ・フィスターオースティン・ジャクソンのような選手はすべてドラフト1位指名選手を放出して成立させたトレードによる獲得だ。特に、ミゲル・カブレラ獲得は、ドラフト豊作年である2005年、2006年のドラフト1位指名選手を思い切って同時に放出することで実現させた。
ドラフトで「他チームにとって魅力的な選手」を1位指名していなければ、こうしたトレード戦略はとれないわけで、デトロイトはある種のドラフト巧者だといえる。

かつての「生え抜きのカーティス・グランダーソン放出」という事件も、当時いろいろ議論があったわけだが、長い歳月を隔てて眺めてみると、長い目でみてデトロイトが「生え抜きにそれほどこだわらない体質のチーム」なのだとわかると、それはそれで自然な成り行きだったのかもしれないと思えてくる。

2003 全体1位でRHP指名 モノにならず
2004 全体2位でジャスティン・バーランダー指名
2005 全体10位でOF指名
     (=ミゲル・カブレラ獲得の際のトレード要員)
2006 全体6位でLHP指名
     (=ミゲル・カブレラ獲得の際のトレード要員)
2007 全体27位でリック・ポーセロ指名
     全体60位でRHP指名
2008 全体21位でRHP指名
     (5巡目全体163位でアレックス・アビラ指名)
2009 全体9位でRHPジェイコブ・ターナー指名
(同年12月、三角トレードでグランダーソンを放出し、マックス・シャーザーオースティン・ジャクソンを獲得)
2010 全体44位で3B、全体48位でRHP指名(=ダグ・フィスター獲得のトレード要員)2巡目全体68位でドリュー・スマイリー指名


September 19, 2013

前から思ってたんだけど、ニューヨーク・ポストのKen Davidoffって、好きなライターなんだよな(笑)だって、面白いんだもん、この人。いつも「的はずれ」なのに、いつも自信満々だからさ(笑)
Yankees’ woes stem from a wrong winter | New York Post


この御大層な記事の主旨はですね、「2012年冬にヤンキースが次のシーズンのためにやったことで、最も大きなミステイクは何?」って話。まぁ、ブリーチャー・リポートなんかでよくある素人っぽいランキング形式の記事なわけなんだけど(笑)、ケン・ダビドフは以下の4点を挙げてる。

1)ラッセル・マーティンと再契約しなかったこと
2)イチローと再契約したこと
3)ケビン・ユーキリスと契約したこと
4)ジーターの健康問題について備えを怠ったこと

なら、さ。
なにもこんな長ったらしい記事クドクドと書かなくたってさ、「GMキャッシュマンが悪い」って、ひとこと書いとけば済む話じゃん?(笑)だって、全部キャッシュマンが責任もつべきことばっかりなわけだからさ。
外野手をあり余るほど獲得しちまって、レギュラー外野手が5人もいて、誰も彼も休ませながら使わなくちゃいけなくなって、誰も彼もバッティングが「冷えていく」一方で、内野手も、ブルペンも、キャッチャーも、いつまでたっても「マトモ」にならなかったのは、いったい誰のせいか、ちっとはアタマ使って記事書けよと。


まぁ、それはともかくとして、ダビドフがイチローとの再契約が間違いだったと主張するにおいて、彼が何を証拠というか、根拠に挙げてるかというとね、たったこれだけなんだな(笑)
His on-base percentage is now down to .297, the worst of his career.

この人、バーノン・ウェルズの出塁率には触れないで、「ジラルディに打撃成績を冷やされた」イチローのスタッツだけを槍玉に挙げようっていうんだから、こズルいねぇ(笑)でも、すぐに手の内がバレるような、程度の低い記事書いてるから、ケン・ダビドフが、いつ、なに書こうと、いつも笑って見てられるわけだけどね(笑)


ジラルディがやってる「選手のとっかえひっかえ起用」、まぁ、サッカーなんかでいう「ターンオーバー制」みたいな選手起用だけど、こうしたおかしな選手起用の被害が、イチローのバッティングに酷い「悪影響」を及ぼしたことは、もう書いた。
Damejima's HARDBALL:2013年9月9日、イチローのバッティングを常に「冷やし」続けてきたジョー・ジラルディの不合理な起用ぶりを、この際だから図に起こしてみた。

で、その「悪影響」はなにも、イチローだけに留まるわけじゃない。
以下に、2013ヤンキースで、ジラルディの「ターンオーバー制」的選手起用で使われている選手たちを中心に、主な野手の「打率」と「出塁率」を挙げておくから、見ておくとといい。今のヤンキースのバッティングの「冷え方」がひとめでわかるから。
(2013シーズン9月17日までのデータ 2013 New York Yankees Batting, Pitching, & Fielding Statistics - Baseball-Reference.com

数字でみれば、ヤンキースでいい出塁率残しているのなんて、ロビンソン・カノーくらいしかいないことは、マトモなライターなら理解できるはず(笑)特定選手の出塁率なんかあげつらう程度の記事なんか書いたところで、そんなの、なん意味も、価値もない。


出塁率(2013シーズン)
--------------------
Wells .287
Stewart .296
Hafner .296
Ichiro .297(=ジラルディの愚策の結果の数字)
Overbay .299
Soliano .300
Reynolds .301
Nunez .301
Jeter .308
A Rod .316 (Last 7 days)
Granderson .320
Gardner .344
A Rod .362 (2013)
Cano .390

最近の打率
--------------------
レイノルズ
28 days .342
14 days .281
7 days .188
Mark Reynolds 2013 Batting Splits - Baseball-Reference.com

ウェルズ
28days .200
14days .200
7days .091
Vernon Wells 2013 Batting Splits - Baseball-Reference.com

オーバーベイ
28days .188
14days .167
7days .077
Lyle Overbay 2013 Batting Splits - Baseball-Reference.com

イチロー
28days .194
14days .194
7days .133
Ichiro Suzuki 2013 Batting Splits - Baseball-Reference.com

グランダーソン
28days .212
14days .178
7days .211
Curtis Granderson 2013 Batting Splits - Baseball-Reference.com

ヌニェス
28days .278
14days .222
7days .111
Eduardo Nunez 2013 Batting Splits - Baseball-Reference.com


昔からイチロー嫌いなケン・ダビドフは、どうしてもイチローをあげつらいたくてたまらないのはわかるんだけどさぁ(笑)、出塁率が3割を大きく越えてる野手自体なんて、2013ヤンキースには「ほとんどいない」わけでね。それどころか、打率が2割越えたか超えないか程度の野手が打線にズラっと並んでるのが、今のヤンキースなわけ。
キャッシュマンのチーム操縦の下手さと、ジラルディの選手起用の下手さのせいで、野手のバッティングが、カノー以外、誰も彼も「下降線」だってことくらい、エクセル使って、小綺麗にグラフなんかにまとめなくてもわかるでしょ(笑)
左投手に強いイチローを左投手の日に全部休ませてる責任は、イチロー自身には無いよ、そりゃ。当たり前でしょうが(笑)

ブログ主なら、「2013年ヤンキースの失敗を10個挙げる記事」を書くとしたら、必ず、「好調だったイチローを、意味もなく干したこと」と、「ジラルディの選手起用」は必ず入れるよ。マジに(笑)


ほんとの原因をきちんと「えぐりだせない」から、いつまでたっても弱点が直らない。勝てない。それが、今のヤンキース。まぁ、ケン・ダビドフ程度の知見じゃ、無理だろうけどね。まったく浅はかな記事を書くもんだよ。

September 18, 2013

『共同通信ホームラン写真捏造事件』はともかく、アメリカの全国紙USA Todayでつい最近起きた『Debby Wong事件』のことは知らない人がほとんどだろうと思うけれど、そういう人にこそ、あの事件を知って、覚えておいてほしいと思うので、まず『Debby Wong事件』のあらましを説明する。


このブログが『Debby Wong事件』と呼ぶ「事件」は、USA Todayのカメラマン、Debby Wongが、自らの怠慢とミスでイチローの日米通算4000安打達成時の決定的瞬間の写真を撮りそこなったにもかかわらず、自分の撮影失敗を周囲に隠しとおしたまま、まったく別の日に撮影した「似た感じの、イチローがヒットを打った瞬間の写真」を、「イチロー日米通算4000安打達成時の写真」と偽ってメディアに配信した事件である。
「Debby Wongが用意したニセのイチロー4000安打達成写真」は、USA Todayが作成した「イチロー日米通算4000安打達成を報じる電子版記事」のビジュアルとして採用されて公開されたほか、USA Today傘下にあるUSA Today Sports Imageのウェブサイトにおいても公開された。

事件発覚直後、USA Todayは、Debby WongとUSA Today Sports Imageとの間で結んでいた写真提供契約を即座に打ち切った


『Debby Wong事件』を最初に報道したのは、当事者であるUSA Todayではなく、全米報道写真家協会(NPPA)のDonald Winslow氏で、2013年8月30日にNPPAのウェブサイトにアップされた。
この秋以降から、大手通信社のひとつ、ロイター通信が、ロイターと契約したカメラマンが撮影した写真を買い上げて契約各社へ配信するという従来のスタイルに見切りをつけ、かわりにUSA Today傘下にあるUSA Today Sports Image社の写真をロイターを通じて配信する手法に切り替えるという発表を行ったばかりだったことから、NPPAはDebby Wong事件を、単なる「個人的なミスを隠蔽するための写真すりかえ」としてではなく、スポーツジャーナリズムの今後に大きく関わる事件として扱った。
元記事A Swing And A Hit (And A Miss) | NPPA
資料記事Damejima's HARDBALL:2013年8月31日、『Debby Wong事件』 〜スポーツ・カメラマンDebby Wongが、「まったく別の場面のイチローの写真」を「イチロー4000安打の写真」としてUSA Todayに供給し、USA Todayが記事として公開していた事件。


上記の事件をひきおこしたDebby Wongは契約を打ち切られたわけだが、同時期に日本で似た事件が発覚した。それが、以下の「共同通信ホームラン写真捏造事件」だ。
ほぼ同時期に日米で似たような事件が発覚したことには、正直、驚いた。


共同通信社は17日、昨年5月〜今年7月のプロ野球3試合で、本塁打の写真と偽って同じ選手の別打席の写真3枚を配信していたと明らかにした。大阪支社編集局写真映像部の男性写真記者(28)が、本塁打の場面を撮影できず、別の写真を偽って出稿していた。他にも偽装して配信した可能性があるといい、同社は他の競技も含めて調査し、関係者を処分する方針。

3試合は、7月14日の阪神−DeNA戦、昨年9月4日のオリックス−ロッテ戦、昨年5月19日の阪神−楽天戦。ブランコ選手(DeNA)と根元俊一選手(ロッテ)、テレーロ選手(楽天)が本塁打を放った写真として加盟社に配信した。

同社によると、今月8日、この記者が出稿に手間取っていたため、写真映像部のデスクがパソコンを確認したところ、記者が同日撮影したプロ野球の試合の写真を、順番を入れ替えて保存していたことに気付いた。不審に思い、記者が撮影した昨春以降の写真を確認すると、3枚の写真説明が実際とは異なっていたことが判明したという。(太字はブログ側による)
<共同通信>プロ野球本塁打の写真偽装し配信 (毎日新聞) - Yahoo!ニュース


いうまでもないことだが、新聞やテレビといった「マスメディア」は、予算や人員などの制約から、「自前で、ありとあらゆる事件、イベント、ニュースのオリジナルな情報ソースを用意できる」わけではない。

むしろメディアは、ありとあらゆる事件・イベントを、「自前の」記者・カメラマンを駆使して、「自前で」取材し、「自前で」記事と写真や動画を調達するかわりに、マスメディアのための情報提供サービスである「通信社」を情報源として、通信社の提供する大量のメニューの中から、その日に視聴者や読者に配信したい情報を「買い上げる」ことで、ようやくその日に必要とされるニュースの「品揃えのすべて」を調達できる。
そうした状況は、たとえナショナルメディアの大きな新聞社であっても、変わらない。メディアとして彼らが重きを置きたがる政治・経済は自前で取材したがるが、スポーツや文化は通信社から買いあげる情報に頼りっきりというケースは、当然ながら多々ある。
マスメディアは昔から大量のソースを、自前で取材することなく、「通信社」から仕入れたネタを情報として配信することで成り立ってきた「情報ブローカー」のような面が少なからずあったが、今ではさらに、新鮮味のあるネタ作りの下手な彼らは、インターネットからもたくさんのネタをこっそりピックアップするようになっている。

だが、マスメディアが通信社から有料で買い上げ続ける「ネタ」の中に、「ニセモノ」が混じっている可能性について、マスメディアが十分神経と予算を使って検査してきたとはいえない
それを「マスメディアと通信社の間の信頼関係」といえば聞こえはいいが、要は、『Debby Wong事件』にしても、『共同通信ホームラン写真捏造事件』にしても、マスメディアがこれまで通信社に「情報の製造」そのものを「丸投げ」しておいて、しかも入ってくるネタをほとんどチェックせずに配信していたことが、こうした情報捏造事件の発生を招いた背景のひとつでもある、ということだ。


だが、これらの事件は「マスメディアって、ほんとダメね」という嘆息で終われない。
なぜなら、それは、マスメディアにとっての外部情報源である「通信社」のひとつ、ロイターが、「従来のようにフリーのカメラマンから写真を買い上げる手法を打ち切って、写真の収集事業そのものを外部委託する」というニュースでわかるように、マスメディアが情報源として頼り切っている「通信社」それ自体さえも、「自前で」情報収集するのを止めてしまい、通信社のさらに外部にある情報源から通信社が「情報を買い上げ」、それを「マスメディアに向けて丸投げする」、そんな困った時代になってきている、ということがあるからだ。

当然のことながら、情報提供会社から通信社、通信社からマスメディア、マスメディアから視聴者・読者へと、「情報が丸投げされるステップ」が多くなればなるほど、情報の真偽のチェックは難しくなり、また、ニセ情報が捏造される危険性は増大していく


今回の日本の『共同通信ホームラン写真捏造事件』では、3件もの写真において「すりかえ」が行われている。この件数の「多さ」からみて、過去においてもこうした捏造行為が多々行われてきただろうと考えるのは、ごく自然な発想だ。
USA TodayはDebby Wong事件でカメラマンと即座に関係を断ったわけだが、もし共同通信がみずからをジャーナリズムの一角であると今後も自負し続けたいのであれば、共同通信も、USA Today同様、たとえそのカメラマンが正社員であろうとなんだろうと、懲戒解雇クラスの厳罰を科すくらいでないと、共同通信がこれからジャーナリズムがどうのこうのと言えなくなるような危機だと、ブログ主は考える。


それにしても、アメリカの『Debby Wong事件』では、事件のかなり詳しい経緯や撮影現場での生々しいエピソード、捏造を犯したカメラマンの「実名」もきちんと報道されているというのに、日本の『共同通信ホームラン写真捏造事件』では、詳しい経緯も、カメラマンの名前も、まるで報道されておらず、「ぬるい」こと、このうえない。
これこそ、なんとも嘆かわしいジャーナリズムの「日米の差」のひとつである。

September 14, 2013

以下、9月13日ボストン戦の7回裏に浴びた決勝の満塁ホームランが、なぜ「ヤンキース自身がみずから招きよせた人災」であるかを説明するわけだが、その前に、このゲームが、なぜ4-4の同点で7回裏を迎えたのかについて、ひとこと書いておきたい。
New York Yankees at Boston Red Sox - September 13, 2013 | MLB.com Classic


そもそも今日のゲームが最初から0-4と劣勢にあったのは、初回に黒田が4点をとられたからだ。
言うまでもないが、「ポストシーズンを争うような、カネのかかったチームの、高額サラリーの主力投手」として、4失点は多すぎるし、そもそも大量失点イニングが早すぎる。この失点数と失点イニングは、「もし2回以降のイニングでちょっとでも失点を重ねれば、即座に交代させられても、投手側から何も文句は言えないほどのレベルの失態」を意味する。
だが、黒田が交代させられずに済んだのは、単に、野手ばかり補強している偏ったロスター構成のヤンキースでは、本来補強ポイントだったはずのブルペンの台所が常に苦しいために、たとえ「初回に4失点した先発投手」でさえ、1回裏ではやばやと交代させるわけにはいかない、それだけだ。


4失点を1点ずつ取り返していくのは、とても骨が折れる。タイムリーなんてものは、チャンスが数回あって、やっと1回出るのが普通だし、そもそもヤンキースはタイムリーが出やすいチーム構成にはなっていない。たとえソロ・ホームランが数発出て2点くらいはなんとかなるとしても、4点差を一気にひっくり返すようなビッグイニングを作るのは、先発投手がマウンドから降り、ゲームが切羽詰ったタイミングにしか起こらないことがほとんどだ。


よくメディア解説者でもファンでも、黒田について「粘りのピッチング」などと呼んで褒めちぎりたがる人がいるが、ブログ主は全くそう思わない。
理由は簡単。この投手が常に「先取点を許してしまう先発ピッチャー」だからだ。

資料:2013黒田 全登板 ©damejima
黒田が先取点をとられたゲームを青色のセルで示した。(4月8日クリーブランド戦含む。この試合では、1回表ヤンキースが3点先制したが、1回裏に3失点している) なお、赤色のセルは、ヤンキースが先制しながら、黒田が打たれて逆転負けした試合。
黒田登板ゲームの詳細data generated by Hiroki Kuroda 2013 Pitching Gamelogs - Baseball-Reference.com

「投球数が無駄に多すぎる」こと、「テンポが悪く、野手の守備時間が長くなりすぎる」こと、「配球のワンパターンさ」など、この投手を好きになれない理由は他にも多々あるが、最も評価を下げているのは、他のなにより「先取点を簡単に与えすぎること」だ。
例えばブログ主は、2013年7月には、このピッチャーを一度もけなさなかった。それは、よくいわれるこのピッチャーの「防御率の良さ」が理由ではなく、「先取点をやらない登板が何試合も続いた」からで、単にそれだけに過ぎない。(もちろん、基本的に投手として高評価することにしたわけではない)

ダルビッシュファンには申し訳ないが、強豪相手だと、たとえ先発投手が「わずか1失点」であっても負けるなんてことは、よくある。むしろ、それが「ポストシーズン進出を狙うチームの主力ローテーション投手」に課せられた「宿命」というものだし、そういう強豪相手のクロスゲームで先取点をやらないことが、優勝チームの投手としての「ノルマ」でもある。
そういう立場にある投手が達成すべき「仕事」とは、数字の上でクオリティ・スタートとなる試合を積み重ねるなどという「うわっつらな仕事」ではなく、文字通り、勝つこと、そのものだ。
テキサスにとってのオークランド戦、デトロイトにとってのクリーブランド戦、ヤンキースでいえば同地区の上位チームとのゲームすべて。そういう、勝ちにくいゲームでも勝ててこそ、はじめて「仕事した」「エース」という言葉が似合う。(もっとも、「クオリティスタートできたから、仕事している」などという、低レベルな目標しか持たない投手だとしたら、話は別だが)
だから、今日のボストン戦のような大事なゲームでこそ、「先取点を簡単に与えてはいけない」のだ。ランサポートの数字なんて、どうでもいい。
先取点を与えて負けてばかりいては、防御率がいくらよくても、その投手の勝ち数は伸びないし、チームの勝率は上がらない。球数が多すぎれば、イニングイーターにすらなれない。当然のことだ。防御率がいいのに負けてばかりいる投手には、ちゃんと説明のつく「理由」がある。

単年だろうが、なんだろうが、これだけの額のサラリーをもらっている先発投手は「先取点をやらないピッチングができて当たり前」だと思っている。(同じように、20億近くもらっているステロイダーのAロッドがほんのたまにホームラン打ったからって、別に褒める気になどならない。「仕事」して当然のプレーヤーだ)
誰かのピッチングを「我慢のきくピッチング」と呼びたいなら、「先取点を与えるのが普通な投手」ではダメだ。先取点と追加点を、ダラダラ、ダラダラと相手チームに与え続けるような先発投手が、「我慢のきくピッチャー」であるはずがない。


さて、7回裏。
先頭シェーン・ビクトリーノがヒットで出塁すると
ジラルディは問答無用に黒田を降板させた。

ジラルディはマウンドに行く前に既に投手交代を手で示し、またマウンドの黒田と視線を合わせることも、言葉をかけることもしなかった。
なぜかといえば、理由は簡単、7回表にとうとう同点に追いついたというのに、その直後の先頭バッターをノーアウトで塁に出してしまうような、だらしないピッチングをしたからだ。
ブログ主はジラルディの選手起用のスタイルが大嫌いだが、この場面でジラルディが怒るのは当然だ。この交代については黒田が悪い

だが、血が頭に上ったジラルディは、次の投手を誰にするか、という点で、ゲームを左右する大きなミスを犯した


次の投手は、新人シーザー・カブラル
デビット・オルティーズに死球をぶつけ、
わずか2球で降板。


2013年6月に上げてきたヴィダル・ヌーニョというヤンキースのマイナー上がりのピッチャーがいたが、あの投手がそうだったように、このシーザー・カブラルというピッチャーも、フォームがおかしい。いずれ、股関節か肘か、体のどこかに重い故障を発症して長期休養する羽目になるだろう。こんなフォームのままマウンドに上げるなんて、ヤンキースのにはロクなピッチングコーチがいないとみえる。
参考記事:Damejima's HARDBALL:2013年6月13日、ヴィダル・ヌーニョの股関節の故障と、ピッチングフォームの関係。(クレイトン・カーショーとの比較)

この新人ピッチャーのコントロールが根本的に悪いことについては、こんなフォームに作り上げたマイナーのピッチングコーチのせいだろうが、そんなことより問題なのは、こんな経験のない新人投手を、これほどヘビーな場面でマウンドに上げてしまうジラルディであって、言うまでもなく、監督ジラルディに責任の全てがある。ジラルディは、この大事なゲームの、それも、同点になった直後のノーアウト1塁という場面を、なぜまた、こんな経験不足の新人にまかせようという気になったのか。


死球でノーアウト1,2塁になって、ジラルディは、投手をプレストン・クレイボーンに交代させた。
だが、前の投手がたった2球でマウンドを降りてしまい、心も肩も準備ができていないクレイボーンは、代打ジョニー・ゴームズを四球で歩かせてしまい、さらに満塁のピンチを招くことになる。


クリス・スチュアートというキャッチャーの配球発想は、どういうわけか、ダメ捕手城島や去年までヤンキースにいたラッセル・マーティンのような、「頭をまるで使わないタイプのキャッチャー」と酷似している。スチュアートはピンチになると、とたんに「アウトコース低めの変化球」ばかり投げさせたがるのである。
資料:Damejima's HARDBALL:2012年8月20日、アウトコースの球で逃げようとする癖がついてしまっているヤンキースバッテリー。不器用な打者が「腕を伸ばしたままフルスイングできるアウトコース」だけ待っているホワイトソックス。
このクリス・スチュアートがいまだにヤンキースの正捕手でいられるのは、彼が打てるからでも、リードがいいからでも、肩が強いからでも、相手チームの打者の特徴を研究しつくしているからでもない。そもそも「キャッチャー」というポジションが2013年開幕前の補強ポイントのひとつだったにもかかわらず、ヤンキースが補強しようとしなかった、だからスチュアートも使うしかない、ただそれだけだ。
誰も言わないが、今のヤンキースは、ア・リーグ有数の選手層の薄いチームだ。だから、クリス・スチュアートがマスクをかぶり続けて、クソつまらない配球をやり続けることについての責任は、スチュアート本人以外には、GMブライアン・キャッシュマンに責任がある。

ジョニー・ゴームズだけでなく、ボストンというチーム自体が、MLBで最も待球してくるチームであり、可能な限り「ボール球を振らない」ということが徹底教育されている。
参考記事:Damejima's HARDBALL:2013年5月24日、「ボールを振らず、かつ、ストライクだけ振れるチーム」など、どこにも「存在しない」。ボールを振るチームはストライクも振り、ボールを振らないチームは、ストライクも振らない。ただそれだけの話。

だからこそ、ヤンキースの先発投手たちとクリス・スチュアートがよくやるような「ボールになるアウトコースの変化球を空振りさせる」などという紋切型のワンパターンな配球戦略は、ボストンのような待球型チームとの対戦においては、そもそも通用しないのが当然なわけだが、ヤンキースバッテリーが「ボストン相手にはストライクゾーンで勝負しなければ最初から勝負にならないこと」に気づいたためしがない。
2012年にあれだけラッセル・マーティンのアウトロー配球を批判したわけだが、その後もヤンキースはまるで変わっていない。

実際、この代打ゴームズにしても、投手クレイボーンが、捕手スチュアートのサインにまんま従って、何も考えず投げこんでくる「最初からボールになるとわかっている、流れ落ちる軌道をえがく変化球の釣り球」に、まったく釣られず、振ってこなかった。

2013年9月13日 ジョニー・ゴームズ四球


加えて言うと、先発の黒田登板時からだが、ボストンは、ヤンキースのピッチャーが投げる球種のうち、「ストレート系」にずっとヤマを張り続けてきていて、それが、このゲームにおけるボストン打線の基本傾向だった。
もっというと、ボストンのバッターには、ホワイトソックスやブルージェイズ、エンゼルス、アストロズなどの「フリースインガーがズラリと揃った非分析型のチーム」(ここにヤンキースも含まれる)のように、「アウトコース低めのボールになる変化球」で簡単に空振り三振してくれるような簡単な打者は、ほとんどいない。(だからこそ、ボストンが勝負強い打線になっているわけだ)

だからこそ、もし「四球の許されない」満塁というシチュエーションになれば、突然登板させられてコントロールの定まらないクレイボーンと、アウトローの変化球で逃げる配球しか能がないスチュアートのヤンキースバッテリーがやろうとしている「ボールになる変化球を、なんとか振ってもらえないだろうか?」などという「曖昧で、かつ、弱気な作戦」が簡単に破綻するのは目にみえていた。
ヤンキースバッテリーが、このあとどこかで変化球でカウントを悪くしてしまって、ストライクをとるために「ストレート」を投げてくることは、この代打ゴームズを四球で歩かせた時点で、ほとんど確定していたといっていいのである。


ダニエル・ナバ、無死満塁の場面
アウトコースのチェンジアップで三振。

前の打者、ジョニー・ゴームズをアウトコースに外れる変化球の連投で歩かせてしまったクセに、次のダニエル・ナバの打席で「アウトコースの大きく外れたチェンジアップ」がたまたま効いて、三振がとれてしまった。
このことで、明らかにヤンキースのキャッチャー、クリス・スチュアートは、非常に大きな「勘違い」をした
「ゴームズは歩かせてしまったが、それでも、アウトコースの変化球でかわしておけば、なんとかなるのではないか」と、「甘すぎる判断」をしたのである。次打者サルタラマキアに対する初球で、ナバの4球目、5球目に投げたのと、まったく同じコース、まったく同じ球種を、3連投してまで使ったのが、その動かぬ証拠だ。
そして、監督ジョー・ジラルディもまた、同じ「勘違い」をした。「クレイボーンの変化球でなんとかしのげるのではないか」と、甘い考えを抱いたのである。だからこそ、ジラルディはコントロールのあやしいクレイボーンを替えなかった。


次打者、ジャロッド・サルタラマキア


次打者サルタラマキアへの初球は、前の打者ダニエル・ナバが三振した球と、まったく同じコース、まったく同じ球種の「チェンジアップ」だ。この球で、クレイボーンは、3球続けて「外のチェンジアップ」を投げている。
だが、サルタラマキアはピクリとも動かなかった
この「初球のチェンジアップ」でサルタラマキアが微動だにしなかったことで、「サルタラマキアの狙いが、『ストレート』、それもインコースのストレートであること」は確定していた。(もちろん、フォアボールの許されないこの場面では、打者が誰であろうと、ストレート系を待つ場面であることは言うまでもない)

だが、みずから満塁のピンチをまねいてしまい、「ボールになる変化球をアウトコース低めに投げ続ける」という「能無し配球」すらできなくなったクレイボーンとスチュアートのバッテリーは、サルタラマキアの対応ぶりをまったく観察せず、単なるストライク欲しさで、まさにその「投げてはいけないストレート」を、よせばいいのに「投げてはいけないインコース低め」に投げてしまう


結果、満塁ホームラン。

付け加えておくと、サルタラマキアは典型的な「ローボールヒッター」なのである。

サルタラマキアの右投手に対するHot Zone
サルタラマキア HotZone
via Jarrod Saltalamacchia Hot Zones - ESPN

2013年9月13日 7回裏 サルタラマキア満塁ホームラン



どうだろう。
2013年にヤンキースが野球というものを舐めてかかってチームを作った結果の、ほとんど全てがここに凝縮して表現されているのが、おわかりだろう。
New York Yankees at Boston Red Sox - September 13, 2013 | MLB.com Classic

この満塁ホームランは、
偶然などではない。

September 10, 2013

今シーズンのヤンキース監督ジョー・ジラルディイチロー起用については、多々、言いたいことがある。

とりわけ、今シーズン、イチローのバッティングが好調であっても不規則、不連続な起用を止めず、さらには、起用するにしても、今シーズンの夏までに限っていえば左投手よりも打率が低かった右投手先発ゲームばかり起用し続け、結果として、バッティングを(さらに、ときに守備の勘さえも)「冷やし」続けてきたことについて、不快感を隠そうとは思わない。
例:Yankees hottest hitter, Ichiro Suzuki, pulled from game by Joe Girardi in double switch  - NY Daily News
「イチローがあまりにも絶不調だから先発を外されている」とか、「ジーターやAロッドが戦列に復帰したから、イチローをより打率の高い左投手先発ゲームをメインに起用する」というふうな、十分に合理的な「イチローを起用しない理由」「起用を減らす合理性」があるならば、こんなめんどくさい図を作ってまでして、文句をつけようとは思わないが、ジラルディの選手起用には合理性が欠けている。だから文句をつけるのが当然だ。
(ジラルディが「野手のバッティングを冷やした」のは、なにもイチローだけではなく、イチローと同じように、起用されたり、されなかったり、行き当たりばったりに起用され続けている他の打者でも、同じような事態は起きている)

大いに不満な今シーズンのイチローの起用ぶりを記録として残しておくため、まずは以下の図を用意してみた。長大な図だから、そのまま見るのではなく、まずはクリックして別窓にファイルを開き、さらに図をクリックして拡大して、「原寸大」で見ることをすすめる。


わざわざこんな図を作ったのは、ひとつには、後世の人に「2013年にイチローのバッティングは衰えた」などと、わけのわからない誤解をしてもらいたくないからだ。
マルチヒットで調子を上げかけるたびに、毎試合スタメンで使われるようになるどころか、むしろ先発から外され、マイナス30度の冷蔵庫で冷やされるような馬鹿馬鹿しい、不合理な起用ぶりで、ホットなバッティングが維持継続できるわけがない。

また、これも後世の誤解を避ける意味で、「2013年8月以降のイチローは、右投手をまるっきり打ててないわけではない」こともハッキリさせておきたい。
図からわかるように、イチローは、右投手先発ゲームにばかり起用され、バッティングを「冷やされ」だした「8月9日以降から9月8日まで」の1か月間において、右投手先発ゲームで出場した試合数の約3分の1にあたる「6試合」でマルチヒットを記録しているからだ。

つまりは、こういうことだ。
2013シーズンのある時期、イチローが右投手を打ちあぐねた時期があったのは確かであるにしても、他方で、左投手からかなりのヒット数を効率よく稼いだことによって、トータルには打率を2割8分台に乗せ、さらに上昇させつつあった。(そしてシーズン当初、チームは地区首位を走った)
にもかかわらず、ジラルディは、2013年シーズン終盤に突如としてイチローを、打率の高い「左投手先発ゲーム」ではなく、むしろ、より打率の低い「右投手先発ゲーム」でのみ起用する、不合理きわまりない起用法をイチローに押し付けだして、そのことは結果的にイチローのバッティングを「冷やし」た。
しかも、当初は、左投手先発ゲームのゲーム終盤の代打や守備要員としてゲームに出ていたが、やがてベンチに座ったままゲームが終わることが目立ちだした。
その結果、イチローのプレータイムは、「得意な左投手ゲームでの完全な欠場」と「苦手な右投手ゲームでのスタメン」が交互に繰り返される異常な状態にあり、しかも、「出場するたびに、異なる打順を打たされる」ような、データ上の合理性がまったく欠如し、かつ、プレーヤーに過度のストレスのたまる状態に直面させられだした。
イチローが8月初旬以降の1か月の右投手先発ゲームで記録した「6回」のマルチヒットは、そんな「わけのわからない起用」のさなかに記録されたものなのだから、むしろ、たいしたものだといえる。


基本的に言いたいことのひとつは、「イチローの出場ゲーム」を表す図の右半分において、「赤色部分(=マルチヒットのゲーム)と、青色部分(=イチローが先発起用されてないゲーム)とが、常に交錯して存在していること」によってハッキリ示されている。
これは、イチローにマルチヒットが続きだしたとき、あるいは、その直後、必ずといっていいほどジラルディはイチローを先発から外していることを意味している。

具体的にいえば、例えば「7月28日」にイチローは「左投手先発ゲーム」で4安打している。にもかかわらず、ジラルディは、その直後の「左投手先発4ゲームを含む8ゲーム」において、半分の4ゲームでイチローを先発させず、左投手先発ゲーム4試合のうち、3試合を先発させていないのだから、この監督の起用は意味がわからない。バッティングが「冷えて」当然である。
同様に、「8月9日」に3安打、「8月18日・20日」には2日続けて2安打しているにもかかわらず、数試合で先発から外されている。また「8月30日」には逆転2ランを打ったにもかかわらず、直後に左投手先発ゲームが3試合続くと、ジラルディはイチローを先発から外し続けた。

図から、7月末以降にイチローが、今シーズン得意としている左投手先発ゲームで、ほとんど起用されていないこと、さらには、たとえ左投手相手にマルチヒットを打ったとしても先発起用が続かないことは、図の最も右側に記した「」というマークと、イチローの打撃成績を対比させてもらえばわかるはずだ。
8月以降にイチローが左投手のときに先発することもあったように思う人がいるかもしれないが、それは「9月8日」がそうであるように、ジーターが怪我で休んだとか、何か理由があってのことで、ジラルディは左投手先発の日は基本的にはイチローをスターターから外している。


また、この図から、言いたいこと、言えることは、単に「左投手先発ゲームでもイチローを使え」などというような、単純なことばかりではない。

例えば、あまり言及している人がいないことだが、7月にヤンキースと対戦したチームは、大半のゲームで右投手を先発させている。(左投手より右投手のほうが得意なロビンソン・カノーは、7月に多かった右投手との対戦で5月6月の不調な感覚を乗り越えるきっかけを掴んだ)
だが、7月末以降にヤンキースがアルフォンソ・ソリアーノやマーク・レイノルズといった右打者を補強し、右打者ジーターが復帰して、ヤンキースの打線が変化すると、さっそくヤンキースの対戦チームは左投手を先発させるゲームをかなり増やしてきた。

夏に左投手先発ゲームが増えたことで、それまで左投手に高い打率を残していたイチローの起用が8月以降増えたのか、というと、実際には、図を見てもらうとわかるとおり、逆に減少して、右投手先発ゲームでばかり使っているのだから、まったく頭にくる。

例えば、移籍当初、驚異的な打撃成績を残した右打者アルフォンソ・ソリアーノだが、彼がヤンキースに移籍してきたときには、ヤンキースが右投手とばかり対戦していた時期(=7月)を過ぎていた。そのためソリアーノは移籍当初から彼の得意な左投手との対戦も多く、それで高い打撃成績を維持できた。
というのは、ソリアーノは、2013年でも、キャリア通算でみても同じなのだが、「左投手のほうがはるかに得意な、典型的な右バッター」だからだ。
Alfonso Soriano Career Batting Splits - Baseball-Reference.com
ナ・リーグにいたソリアーノのことをよくわからないア・リーグのチームは、おそらく当初は彼の得意不得意がわからず、面食らって打たれもしただろうが、それは「ソリアーノに対する単なるデータ不足」であり、その後ソリアーノの打撃がパタリと止まったことでわかるように、ヤンキースの右打者獲得の効果なんてものが永続するわけではない。

そして、チームがたとえ右打者を増やしたからといって、いわゆるジグザグ打線を組めばいいかというと、そうではないことは、各打者のデータなどから明らかだ。

この図から言えることについては、これからも必要に応じて記事にしていく予定。

2013ジョー・ジラルディによるイチロー起用ゲームリスト
© damejima

凡例 legends
図のもっとも右側に「」とあるのは、「相手チームの先発が右投手だったゲーム」を意味する。この記号は、7月以降について、つけてある。全ゲームつけると良いのはわかっているが、これを調べて図示する作業が、もう、考えられないほどめんどくさい(苦笑)
図の凡例


September 09, 2013


2013 MLB Walk-Offs | BoS@NYY: Ichiro scores winning run on a wild pitch - Video | yankees.com: Multimedia

Mr.From-Hand-To-Mouth、場あたり的采配ばかりふるっているジョー・ジラルディが、まだ1点差の8回だというのに、このところ再びセーブ失敗が増えてきたマリアーノ・リベラを投入するような「苦し紛れ采配」をふるった。クローザー、リベラが「2イニング」を投げてセーブに成功したのは、2006年7月にまでさかのぼる。(via @DannyKnoblerCBS)

リベラは、案の定、登板2イニング目の9回表に、最近復調気味のミドルブルックスに同点ホームランを浴びて、つかまってしまう。(セーブ失敗は今シーズン7度目)
すると、なんとジラルディは、ブルペン投手に降格になったフィル・ヒューズをウォームアップさせ、おまけに9回裏にキャッチャーのロマインに代打まで出した。(ロマインはスチュアートが怪我でベンチに下がった代役であり、ベンチにキャッチャーはいない)
だが、これらの愚策の全てが、Wizard イチローの演出したサヨナラで消滅した。つまり、イチローがジラルディの尻拭いをしたわけだ。

3-3の同点で迎えた9回裏。1死からセンター前のクリーンヒットで出塁したイチローは、快足を飛ばして今シーズン20個目の盗塁を決める。(デビュー後13シーズン連続20盗塁達成)
2番バーノン・ウェルズのライトフライで、2塁にいたイチローはすかさずタッチアップして、サードへ。すると、次打者3番ラファエル・ソリアーノの打席のワイルドピッチで、あっさり生還。

2013年9月8日タッチアップしてスライディングするイチロー

このときのタッチアップは、MLB公式サイトに動画としてわざわざアップロードされている。
なぜなら、ウェルズの打ったライトフライがそれほど深くないものだっただけに、このタッチアップが誰にでも可能なわけではないからだ。そのことを、MLB公式サイトの担当者はわかっているから、わざわざアップロードしているわけだ。
もちろん、もしボストンのライトが、ダニエル・ナバでなく、イチローだったなら、このタッチアップは成功していなかっただろう。今シーズン鮮烈なデビューを飾ったドジャースのライト、ヤシエル・プイグの強肩がたびたび話題になるが、MLBにおけるライトの守備の重要性はレフトとは比べものにならない。(だからこそ、あらゆる指標の守備補正でレフトとライトを同じマイナス値にすること自体が馬鹿げているし、そもそもライトのマイナス値が大きすぎる)
タッチアップの動画(MLB公式):Video: BOS@NYY: Ichiro moves to third in the ninth inning | MLB.com

結局このゲームは、イチローの「シングルヒット、盗塁、タッチアップ、ワイルドピッチ」の、「ひとりでできるもんサヨナラ」でヤンキース勝利(笑)

まさにイチローの「魔法の季節」らしい結末だ(笑)

2013年9月8日サヨナラのホームインをするイチロー
2013年9月8日サヨナラのホームインをするイチロー(別角度)

ゲータレードかけを準備するガードナー(未遂)試合後のインタビューを受けるイチローに「ゲータレードかけ」を準備するガードナー(しかし未遂に終わった)


今日イチローが達成した「デビュー後13シーズン連続20盗塁」は、これまで盗塁魔王リッキー・ヘンダーソン(23年連続 1979年〜2001年)と、オジー・スミス(16年連続 1978年〜1993年)、2人の殿堂入りリードオフマンだけが達成している素晴らしい記録である。

もし、今シーズンに多発しまくっているジラルディの「右往左往してよろめき歩く酔客」のような酔いどれ采配がなく、選手起用さえ、きちんとスジの通ったものだったとしたら、イチローのこの記録はとっくに達成されていたはずであり、むしろ「ようやく9月になって達成された」という感が強い。
もし、今シーズンのヤンキースの選手起用がマトモで、理にかなったものだったら、とっくにイチローは30盗塁くらい達成できていただろう。


イチローのMLB通算盗塁数は、今日の二盗を含め、これで472MLB通算500盗塁まで、あと28。今年も、もうあと1か月弱しかないわけだが、いくつか盗塁を追加して、来シーズンには500盗塁というマイルストーンもクリアしてくれることだろう。

MLB通算盗塁数ランキング(2013年9月8日現在)
MLB通算盗塁数(2013年9月8日現在)
data generated via Career Leaders & Records for Stolen Bases - Baseball-Reference.com

赤飯スタンプ


September 08, 2013

東京開催を示すIOCロゲ会長

IOC ロゲ会長は、2020年夏季五輪が東京に決まったことについて、投票直前に行われ、東京開催を決定づけたといわれる安倍首相のスピーチを念頭に置きつつ、「オリンピックの価値を高め、同時に、次世代にスポーツの意義を伝えるためのイベントとして、よく計画され安全なオリンピックを開催する。そういう“明日を見つける” 招待だった」と語ったが、この発言の「オリンピック」という部分を「野球」に置き換えて読むと、なかなか面白い。


例えば今のヤンキースだが、一部メディアや関係者は、あいもかわらずヤンキースが勝つことこそMLB全体の至上命令であるとか思っているかもしれないが、もし「今の」ヤンキースが勝つことが「野球の価値を高め、同時に、次の世代に野球の意義を伝え、広める」ことだと思っているとしたら、それは単なる見識の無さ、もしくは、思い上がりに過ぎない。

たとえば、エリック・クラプトンを素晴らしいブルース・ミュージシャンのひとりだと考えることは別に構わない。だが、クラプトンがブルースの全て、などと考えるのは、明らかに間違っている。同じように、ヤンキースは確かに素晴らしい野球チームのひとつではある。だが、ベースボールの全て、ではない。


「今のままのヤンキース」が勝ち続けてポストシーズンに進出したとしても、次世代の野球、そして次世代のヤンキースに、何も残りはしない。

野球というスポーツは、新しい時代を迎えようとしている。パワーとともに、分析力に裏付けられた集中力を攻守に兼ね備えたチームが躍進を遂げつつある。
野球はもはや、カネとステロイドにモノをいわせれば勝てる「マネーゲーム」ではないし、かといって、OPSのようなデタラメ指標を作った数字オタクが支配する「数字ゲーム」でもない。

ひるがえって、2013年ヤンキース野球は、インテリジェンスの裏付けを欠いた古い野球だ。その戦略的な粗さ、計画性の無さ、場当たり的な選手獲得、状況分析力の無さ、守備の軽視、無駄に使われ続ける予算執行のだらしなさ、PEDに関する態度の曖昧さ。むしろ、ヤンキースがそれら全てを改めることこそ、「野球の価値を高め、次の世代に野球の意義や面白さを伝える」ことになる。


ヤンキースは、自らが次世代に向けて生まれ変わるべきターニングポイントに来ていることを、もっと自覚すべきだ。それをきちんと考えるなら、いまジョー・ジラルディがやっているような野球は、From-Hand-To-Mouth-Baseballであり、こんな「毎日毎日、場当たり的なこと」ばかりやっているヤンキースが、次世代ヤンキースが育つ契機になるわけがない。

 
2020TOKYO

2020年夏季オリンピックが東京に決まった。

2020年、というと、7年後。アスリートにとって、「7年」はけして短くない。それどころか、今の時点でトップアスリートの位置にいる人は2020年オリンピックの主役ではなく、むしろ「これから出てくるアスリート」こそがメインキャストになる。遠い先に行われるオリンピックに向けて新しい芽を尊重する気持ちが無ければうまくいかない。

ソフトボール日本代表 北京五輪金メダル

2020年には野球とソフトボール、特にソフトボールが五輪競技に復活しているように、関係者は死にもの狂いで努力を重ねてもらいたい。「レスリングの復活が当確」という話があるが、それはそれ。野球とソフトボールのさかんな国、日本でのオリンピック開催が決まったのだから、競技を、レスリング以外にもうひとつ復活させることくらい目指して必死にロビー活動するのが当然だろう。(もちろん、日本での夏季五輪開催決定を必死に邪魔してくれた国のテコンドーとかいう、五輪競技に残っていること自体が不自然なマイナー競技を五輪から外すことで解決するという手もある)


ありがとうトルコ、ありがとうスペイン。
2020年東京で会いましょう。


第1回投票結果
---------------------
東京 42票
イスタンブール 26票
マドリッド 26票
(再投票の結果、イスタンブールが決戦投票に進出)

決戦投票結果
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東京 60票
イスタンブール 36票




赤飯スタンプ

September 03, 2013

宮崎駿(Hayao Miyazaki)


天の光はすべて星』 (The Lights in the Sky Are Stars, 1952) というフレデリック・ブラウンの作品がある。「なぜ人は空を飛びたいと熱望するのか」について、全てが語り尽くされていると思えるほどの作品だ。
ならば、『天空の城ラピュタ』から『風立ちぬ』に至るまでの宮崎駿による「空を飛ぶ作品群」を見る必要はないのか。

The Lights in the Sky are Stars


飛ぶ教室』(Das fliegende Klassenzimmer, 1933)という1933年発表の児童文学作家エーリヒ・ケストナーの作品がある。劇中劇として、教師と生徒たちが飛行機に乗り、ヴェスビアス火山、ギゼーのピラミッド、北極などを巡る夢の旅が描かれている。
これまた、空を飛ぶことについて描いた名著だが、ならば、『飛ぶ教室』から20年ほどして書かれた1952年のフレデリック・ブラウンの『天の光はすべて星』は読む必要がなく、さらに時代が下った『天空の城ラピュタ』から『風立ちぬ』に至るまでの宮崎駿による「空を飛ぶ作品群」を見る必要もないのか。

飛ぶ教室(エーリヒ・ケストナー, 1933)

たとえ古今集に恋の歌があるからといって、1000年たとうが、何年たとうが、人が恋の病を語りたがる気持ちが失せるわけはない。

わざと極論を言ってしまえば、とは永遠に「恋の歌」のことを指すのであり、そして物語とは永遠に「空を飛びたいという願い」のことを意味する、と思うのである。(児童文学翻訳の大家、神宮輝夫氏のいう「物語」と「ものがたり」の違い等については、ここで書き切ることはできない。諸資料によって各自研究されたい)



ここから先の部分を加えて終わるかどうか、非常に迷ったが、こんな時代だ、やむをえない。つまらない蛇足をつけ加えておくことにした。読みたくない人は読む必要はない。自分でも、こんな話は読みたくもないが、しかたがない。


ケストナーの『飛ぶ教室』、フレデリック・ブラウンの『天の光はすべて星』、宮崎駿の『風立ちぬ』と、3つの作品を並べてみると、そこに、「3つの作品に共通してあるもの」がある反面、「それぞれが少しずつ異なっている部分」があることに気づく。

違っているのは、
その時代その時代の「テクノロジー」である。


「空を飛ぶためのテクノロジーがまだあまりハッキリしていない時代」に空を飛ぶ夢を描く行為と、今の時代に空を飛ぶ夢を描くのでは、背景にあるテクノロジーは全く違う。たとえ話でいうと、ケストナーにはリニアモーターカーやコンピューターの匂いがまるでしないが、宮崎駿には、ほんの微かにだが、香っている。

それでも宮崎駿にとって、映画は、空を飛ぶためのテクノロジーを描くことではない。彼は「空を飛びたい」という素朴な願いを描くことを諦めない。
彼は常に、どうやったら今のこの「空を飛ぶためのテクノロジーがハッキリわかってしまっている時代」に生きる我々の心に、「空を飛ぶ夢」を呼び覚ますことができるか、という、なかなか困難な問題に挑戦し続けてきた。

だが、テクノロジーというのはひとつのイデオロギーであって、常にファンタジーに罵声を浴びせかける。『風立ちぬ』についても、技術史や戦争史からみた視点で批判したい人は、それこそ掃いて捨てるほどいるわけだが、その人たちが語っているのはイデオロギーであって、ファンタジーではない。


物語とは、「空を飛ぶ夢」なのである。
宮崎が『風立ちぬ』で描いた堀越二郎は、実際の堀越二郎ではない。宮崎が描こうとしたのは、イデオロギーが大勢を占め、常に世界を左右する時代の渦中にあって、それでも「ファンタジーを守り抜こうとする行為」の「はかなさ」、そして「強さ」だと思う。


以下、文字で言われないとわからない人たちのために書いておこう。

ファンタジーとは何だ。

恋すること。そして
空を飛ぶこと。だ。

これらがファンタジーでないなら、
いったい何がファンタジーだというのか。


愛するものを守り抜こうとする素朴なファンタジーそれ自体を、それこそ根っ子から否定し尽くそうとしてきたイデオロギーの存在に、我々はもう気づいている。それなのに、それを言葉で説明しないとわからない人が増えすぎたのは、本当に不幸なことだ。なぜこんな当たり前のことを説明しておかなければならないようになったのか。不幸な時代に生きているもんだ、と、自分でもよく思うことがある。

damejima at 01:49
Japanese Legend 

September 01, 2013

まずはクイズ。
次のAとB、2つの画像を見比べて、「違い」を探してもらいたい。
ヒントは2つ。
1)ヤンキースベンチに下りていく階段にいる人物
2)イチローの顔の向き


画像A)
USA TodayのカメラマンDebby Wongが「イチロー4000安打の画像」としてUSA Todayに供給した画像を使い、USA Todayが作成した記事のキャプチャー

原出典:NPPA(全米報道写真家協会)の以下の記事
A Swing And A Hit (And A Miss) | NPPA NPPA=National Press Photographers Association | NPPA

damejima注:この写真、本当は、何月何日のゲームの、どの打席の写真なのは、いまのところわからない。少なくとも、イチローの視線方向から察する限り、おそらく「センター前ヒット」であろう。(4000安打は「レフト前ヒット」)さらに、画像Bとの違いでいうと、ダグアウトに下りる階段付近に2人の選手がいるのが見える。(おそらくソリアーノとガードナー)

Debby WongがUSA Todayに提供した「偽物のイチロー4000安打写真」

画像Aのバリエーション(資料映像)
google.comの検索により、ネット上のキャッシュから採取。おそらく、USA Todayの記事に掲載された写真の「元画像」と思われる。
「偽のイチロー4000安打写真」の元画像と思われる画像


画像B)
イチロー4000安打についてのMLB公式サイトの動画から直接キャプチャーした「本物」のイチローの4000安打の瞬間の画像(レフト前ヒット)

イチローの視線が、本来の打球方向である「レフト側」を向き、ダグアウトの階段のところに、画像Aにある「2人の選手の姿」がない。

イチロー4000本の「正しい写真」(キャプチャー)


damejima注:
結論からいえば、USA Todayが当初「イチロー4000安打の画像」として報道していた画像Aは「ニセモノ」であり、イチロー4000安打達成の瞬間を撮影したものではない。
以下に、こうした「悪質な詐欺まがいの行為」がなぜ生じたのかという謎ときとなる記事を訳出してある。出典となっているNPPAとは、National Press Photographers Association、つまり、全米報道写真家協会のことであり、そんじょそこらの安っぽい協会ではない。(ちなみに、この記事タイトルは、おそらくは、野球の著述として名著といわれるJ. Patrick Lewisの "A Swing And A Miss" をもじったものだろうと思われる。いかにも報道の専門家らしいチョイスだ)



A Swing And A Hit (And A Miss) | NPPA
Aug 30, 2013
By Donald Winslow

NEW YORK, NY (August 30, 2013) – When New York Yankee Ichiro Suzuki swung at a pitch and connected with his 4,000th career base hit during the first inning of a home game against the Toronto Blue Jays on August 21st, it was a record-making moment worthy of the cacophony of motor-driven camera shutters that followed.
(和訳省略)

But at least two of the photographers working the game on the third base line that night didn't capture the moment: Debby Wong, a USA Today Sports Images photographer, and Andrew Theodorakis of the New York Daily News. Wong was either looking at her earlier pictures on the camera's LCD display, or she was pointing the camera elsewhere, when Suzuki hit. And Theodorakis' view was blocked by Wong, when she rested her 300mm lens over her left shoulder at the exact moment of the crucial pitch.
しかし、この夜、三塁側にいた少なくとも2人のカメラマンが、この決定的瞬間をカメラでとらえることに失敗した。USA Todayのスポーツ・カメラマン、Debby Wongと、ニューヨーク・デイリーニューズのAndrew Theodorakisだ。
Wongは、イチローがヒットを打った瞬間には、自分のカメラのLCDディスプレイで、自分が既に撮った写真を見ていたか、あるいは、どこか別の場所にカメラを向けていた。そして、その重大な投球の、まさに瞬間に、彼女(Wong)は自分の300ミリ望遠レンズを左肩の上にかついでいた。Theodorakisの視界が遮られたのは、そのためである。
(太字はdamejimaによる)

Which can happen, as those who frequently shoot sports can attest. Not everyone gets every important shot every time. Sometimes it's the photographer's fault. And sometimes the view is blocked by another player. Or sometimes the obstruction is an umpire, or a fan, or even – as in this case – another photographer.
(翻訳省略)

When she started hearing a few rumbles, Yankees' chief photographer Ariele Goldman Hecht came over from her first base spot to see what was going on.
ヤンキースのチーフ・カメラマン、Ariele Goldman Hechtは、彼女のいた1塁側カメラマン席からやってきて、いったいサード側で何が起きているのかと、イザコザについてヒアリングを始めた。

"To begin with, she [Wong] wasn't where she was supposed to be," Hecht said. "I had put her in the second row. It was crowded because of the record, and she told me that she had switched positions with one of the Japanese photographers. I told her that wasn't allowed. The Yankees decide who sits where." Hecht said that Wong apologized, and the photographer told them that she was sorry for blocking the shot.
「まず言えることは、『彼女(=Wong)は、彼女の居場所として設定してあった場所にいなかった』ということよ。」と、Hechtは言う。
「私は彼女を2列目に位置させた。イチローの記録達成で混雑してたからね。彼女は私に『ひとりの日本人カメラマンと位置を交代してもらった』って言ったんだけど、私は彼女に『そんなの、許可してないわ』と言った。誰がどこに位置するかを決めるのは、ヤンキースよ。」
Hechtが言うには、Wongはそれについて謝罪したといい、カメラマンは、Wongが撮影を邪魔したことを謝っていたと、彼らに言った。

And so the game went on.
そしてそのままゲームは進行した。

And in most circumstances this is probably where this small incident would have ended; we wouldn't have heard anything more about it. Only the handful of other photographers along the third base line who had witnessed the little dust-up between a couple of their peers would have had something to chat about for a few days.
(翻訳省略。カメラマンの位置関係で撮影にトラブルが起きること自体はよくある話だ、というのが、このパートのおおまかな主旨)

Except it didn't end there. Because later that night on the USA Today Sports Images photo Web feed a picture by Wong appeared. And then the same picture also appeared in a photo gallery published on the USA Today newspaper Web site. Its caption and photo credit said:
しかし、事件はそれだけで終わらなかった。
なぜなら、USA Today Sports Imageのウェブサイトに、Wongが「撮った」という写真がアップロードされたからだ。そして同じ写真は、USA Today電子版のフォトギャラリーにもアップロードされた。写真には次のようなキャプションとWongのクレジットが添付されていた。
(注:太字はdamejimaによる)

"New York Yankees right fielder Ichiro Suzuki singles to left field to record his 4000th career hit during the first inning against the Toronto Blue Jays at Yankee Stadium. Debby Wong, USA Today Sports"
(翻訳省略)

Wait ... What? The photographers who worked the Yankees game and who saw or heard what happened during the Suzuki hit were perplexed. How did she get this picture? A few compared Wong's image their own pictures and to others. The background looked different, one said. The swing and follow-through didn't look quite the same, another photographer said.
「おいおい・・・・・ちょっと待てよ・・・・・。」
ヤンキースのゲームに帯同しているカメラマンたち、そしてイチローのヒットの間に(カメラマン席で)起こった事件を見聞きしていた人々は、誰もが首をひねった。「いったい彼女はどうやって、この写真を撮ったっていうんだよ?」
何人かのカメラマンは、Wongの写真と彼ら自身の撮った写真、あるいは他のカメラマンの写真を比べてみた。あるカメラマンは「背景が異なっているように見える」と言い、別のカメラマンは「スイングと、フォロースルーがまったく違う」と発言した。
(注:太字はdamejimaによる)


The conversation had new life.

Then two days after Ichiro's big game the news broke that Thomson Reuters will soon be dropping their network of freelance sports photographers in North America come September. Instead of using their own shooters, Reuters will instead be taking a picture feed from the USA Today Sports Images team and delivering those images to Reuters picture clients around the world.
イチローのビッグゲームから2日経って、トムソン・ロイター(damejima注:いわゆる『ロイター通信』のことだと思えばいい)のこんなニュースが明らかになった。
ロイターは、この9月、北米のフリーのスポーツカメラマンを切って、(従来のように)ロイター自身がフリーカメラマンを使って写真を撮るかわりに、USA Todayのスポーツ画像チームが供給する写真を、世界中のロイターの顧客に向けて配信するというのだ。

With that development, the conversation really heated up inside sports photojournalism circles. The topics included who will – and who won't – be shooting major league sporting events in North America come this autumn. And what impact having former US Presswire photographers who have become USA Today Sports Images photographers shooting pictures for Reuters might have on the photojournalism industry and freelancers in North America.
この展開に、フォト・ジャーナリズムのサークル内部は、熱い議論でかなりヒートアップした。話題に上ったのは、この秋やってくる色々な北米のメジャーなスポーツイベントを、いったい誰が撮るのか(そして誰が撮れないのか)という話題であり、そして、ロイターのために写真を撮る元US Presswire(現USA Today Sports Image)のカメラマンたちが、北米のフォトジャーナリズムとフリーランサーに、非常に強いインパクトや影響を及ぼすことになるかもしれない、という話題だ。

Five days after the Reuters deal became known, when Suzuki's big hit had almost faded into recent history, USA Today Sports Images added fuel to the dialogue when they transmitted to their clients a "Picture Kill" notice for Wong's photo. They told their clients that it had come to their attention that the picture "was not correctly identified." Clients were advised to pull it from their archives.
ロイターの決定がわかって5日後、その頃にはイチローの4000安打はすでに直近の野球史にフェードアウトしつつあったわけだが、USA Today Sports Images社が議論に油を注いだ。
というのは、彼らがクライアントに、例のWongの写真の『掲載停止』をうながすと伝えたからだ。彼らはクライアントに対し、「Wongの写真が『正確にホンモノだと特定できない』として、クライアントに注意をうながし、クライアントのアーカイブから削除するよう助言した。
(damejima注: "Picture Kill" を『掲載停止』と訳した)

Bruce Odle, the president of USA Today Sports Images, told News Photographer magazine tonight that someone outside their company notified one of their staffers of a problem with the image. Earlier this week, News Photographer had learned that Wong's editors had requested her entire take so that they could examine the images shot by shot.
USA Today Sports Images社長のBruce Odleは今夜、News Photographer誌に、「スタッフのひとりが画像について問題を抱えているようだと、外部の人間から知らされた」と語った。News Photographer誌は今週はじめ、Debby Wongの記事の担当編集者が、Wongの撮った写真の全テイクを、あらゆるショットについてチェックしなおすようリクエストされていたことを知っていた。
(damejima注:News Photographer誌=全米報道写真家協会の発行する専門誌 News Photographer Magazine | NPPA

"We were made aware that an image provided by one of our contributors was not correctly identified and we immediately looked into the situation," Odle said tonight. "After determining that the photo was incorrect, we issued a Picture Kill to alert our customers consistent with industry practice and to minimize disruption or resulting impact, if any."
Bruce Odleは今夜、以下のように語った。
「我々は、我々の画像寄稿者のひとりが供給したある画像(=このブログ記事の最初に挙げた画像A)が『ホンモノでないこと』がわかったため、ただちに状況調査に着手した。結果、その写真が正しいものでないと断定されたため、われわれは顧客に対し、業界綱領に沿って、たとえそれがどんな程度のものであれ、損害やインパクトが生じるのを最小限にとどめるために、顧客に『掲載停止』の警告を発した。」

Odle also confirmed that in the aftermath, Wong's work agreement with the picture service has been terminated.
またOdleは、今回の警告の直後、Wongとの間にあった画像作品提供に関する契約を停止したことを認めた。

"We have clear language in our contributors agreement and we have internal policies consistent with industry practice with regards to ethical matters," Odle said.
「寄稿者との契約において明快に規定していることだが、我々は倫理的問題について業界の綱領に沿った内部的ポリシーを持っている。」とOdleは言う。

Wong did not immediately return calls requesting comment.
我々はDebby Wongにコメントを要請したみたが、すぐに返事は返ってこなかった。

USA Today Sports Images is an arm of the USA Today Media Group, which was formerly known as the Gannett Digital Media Network. Its parent company is Gannett Company, Inc.
Odle heads USA Today Sports Images, and he managed the sale of the company to Gannett in August 2011. It was founded by former Sports Illustrated photographer Bob Rosato, who is now its chief operating officer. The sports photo service rebranded itself in December 2012 to provide sports images to all Gannett properties. Before then, Rosato's picture service was known as US Presswire.
USA Today Sports Imagesは、USA Todayメディアグループの一部門だが、かつてはGannett Digital Media Networkという名前で知られており、親会社はGannett Companyだった。
現在USA Today Sports Imagesを率いているOdleは、2011年8月にGannettへの会社譲渡をマネジメントした人物。そもそもUSA Today Sports Imagesは、今は同社の執行役員になっている元スポーツ・イラストレイテッドのカメラマン、Bob Rosatoによって創立された写真提供会社で、2012年12月にGannettにスポーツ画像を供給する企業として改組されるまでは、US Presswireという名前で知られていた。



この事件は、表層的な話としては、こんな話になる。

USA TodayのカメラマンDebby Wongは、イチロー4000安打達成の決定的瞬間の画像を絶対に確保していなければならなかった立場にあった。Debby Wongは当日、ヤンキースサイドから指示されていた撮影場所から許可なく勝手に移動してまでして、撮影位置を確保した。にもかかわらず、その決定的瞬間に、Debby Wongはイチローにカメラを向けていないという決定的なミスを犯し、決定的瞬間を撮り損ない、さらには他のカメラマンの撮影を妨げた。
Debby Wongが写真を撮り損なった事実は、彼女と撮影場所を巡ってトラブルになったニューヨーク・デイリーニューズのカメラマンと、彼らがトラブルっているのを周囲で見聞きしていたカメラマンたちが知っていた。
だが、Debby Wongは、物理的に彼女に撮れるはずのないイチロー4000安打の写真について、(おそらく「手持ちのストック」の中から探したのだろうが)「似たような画像」を見つけてきて、それを平然と「イチローの4000安打の決定的瞬間の写真」としてUSA Todayに提出し、USA Todayは、その「Debby Wongが提出してきたニセモノの写真」を使い、記事にした。


なんとも呆れ果てた詐欺まがいの事件ではあるわけだが、この事件、実際には、さらに複雑かつ重要な倫理的問題を孕んでいると思う。

Debby Wongの現場での自己中心的な行動ぶりが感じさせる根本的な不愉快さ
この事件でカメラマンDebby Wongは、ヤンキースサイドからあらかじめ指定されていた撮影場所にいなかった理由として、不愉快にも「日本人カメラマンに場所を変わってもらった」と発言しているわけだが、それが本当に事実だったのかどうか、それがそもそも怪しい。
ヤンキースのチーフカメラマンが非常に具体的に指摘しているように、カメラマンの撮影位置は、あらかじめヤンキースサイドによって詳細に指定されていたわけだが、おそらくDebby Wongの現場での行動ぶりは、どうみても「ゴリ押し」かつ「わが物顔」の不遜な行動だっただろう、と想像できる。
そして最悪なのは、無理矢理に最前列の撮影ポジションを確保したクセに、この厚顔無恥なカメラマンはなんと、いまにもイチローが4000本目のヒットを打つかもしれないという打席で、「自分のカメラをイチローに向けてさえいなかった」という事実だ。
周囲のカメラマンに、「カメラ向けるつもりがないのなら、そこどけよ!! このバカヤロー!!」と、怒鳴り散らされてもしかたがない迷惑行為を、このカメラマンは平然とやってのけているのである。
事実、Debby Wongがイチローに向けていない300ミリのデカい望遠レンズを肩にかついで他のカメラマンの視界を邪魔したせいで、デイリーニューズのカメラマンはイチローの決定的瞬間を撮り損なっている。

デカい望遠レンズを肩にかついだ状態の例「大きな望遠レンズのついたカメラを肩にかついだ状態」の例(参考 これはたぶん400丱譽鵐此

問題なのは、こうした無神経な行為がまかり通ってしまうような空気と、画像流通についての手抜きともいえるシステムが、自由なジャーナリズムの気風を育ててきたはずのアメリカという国と、スポーツジャーナリズムの内部に生まれつつある、ということだ。
まぁ、おそらくはスポーツ画像を「独占的な商売」にして儲けたい人たちが現れ、そして、その人間たちに雇われているカメラマンに「慢心」という病が広がりつつあるのだろう。哀しいことだ。


メディアの商業主義化に沿って著しく浸食されつつあるスポーツ写真、ジャーナリズムとしての倫理
上の記事では、「Debby Wong・ニセ4000安打写真掲載事件」と並行して、通信社ロイターが、北米のフリーのスポーツ・カメラマンから写真を買い上げるのを止め、USA Todayの写真部門にスポーツの画像供給を「丸投げする」ことにした、という話題が語られている。
北米のスポーツ・カメラマンたちが危惧しているように、今回の『Debby Wong事件』と、ロイターの方針変更の話は、「繋がっている」といわざるをえない。
ロイターの方針変更は、どうもこの記事を読む限りでは、きちんとした基本ルールが確立されないままの見切り発車のようだ。だから、今後も今回のような「ジャーナリズムの基本倫理に関わる大問題」を起こしかねない。
資料:Reuters Dumping North American Freelance Sports Photographers | NPPA


USA Todayが行った、ピート・ローズへのイチロー4000安打に関するインタビューとの関連で感じる不愉快さ
今回のイチローの日米通算4000安打という偉業の達成にあたって、どのメディアよりも先にピート・ローズのところにインタビューにのこのこ出かけて行って、イチロー4000安打に関する否定的コメントを引出してきたのは、ほかならぬ、この「Debby Wong・ニセ4000安打写真掲載事件」を引き起こしたUSA Todayである。
Pete Rose says Ichiro can't catch him
事件全体の流れを考えると、イチローの偉業達成について、USA Todayが最初から何か「冷えびえとした意図」があったようにも見える。
ニセモノの画像を使った記事を作成しておいて、それを外部に向けてきちんと謝罪してもいないのに、その一方で、否定的なコメントをするのがわかりきっているピート・ローズにコメントをもらいにいっているUSA Todayの姿が無礼千万に見えるのは当然だろう。
料理の「味」を批評するにあたって、その料理を食べてもいないクセに、まったく別の店の料理の写真を掲載した上で、「あの店の味は、アメリカには追いつけっこない」などと冷ややかな批評を掲載するような行為は、どうみてもフェアではない。三流以下の仕事であり、悪質で、馬鹿げている。
こうした「パブリックな人類遺産であるスポーツに、個人的好みを反映させたがるようなバランス感覚に欠けたメディア」が、今後スポーツの画像を牛耳ることになるということについて、危機感を持っている北米のカメラマン、メディア関係者も、おそらく多数数いるのではないか。
USA Todayは、あくまで一般メディアなのであって、イチローの4000安打に喝采を贈ってくれたESPNやスポーツ・イラストレイテッドのようなスポーツ専門メディアではない。なのに、専門外のことを、商売になりそうだからという理由で牛耳りたがる人たちが出てきて、情報の流通を牛耳ろうとすることは、スポーツにとってプラスだとは、どうしても思えない部分がある。


スポーツメディアとしての生産性、クオリティへの疑問
もし仮に、多少の基本ルールが整備された上で、スポーツの画像の寡占化がやむをえず進んでいくとしても、もし今回の怠慢なDebby Wongのように、カメラマンが写真が撮りそこなったとか、思ったようなクオリティで供給できないとかいう最悪の事態に陥ったとき、そのカメラマンが謙虚な気持ちでコトに対処できるとは、到底思えない。
残念ながら、人は、自分が苦労して築いたわけではない山であっても、その山のテッペンに据えられると、まるで自分が大将になったような気になってしまう、そういう弱い動物だからだ。
もし、ロイターが全世界の顧客に配信するのがあらかじめわかっている写真を、ひとりのカメラマンが撮り逃した(あるいは思ったクオリティで撮れなかった)としたら、今回のDebby Wongのような卑劣な行動をとらないでいられるという倫理的保証はどこにもない。


まぁ、ともかく、この件に関して、おそらくヤンキースは事を荒立てたくないだろうが、日本の至宝イチローのファンとして、これは沽券に係わる問題であり、黙って見過ごすわけにはいかない
本来なら、この件できちんとUSA Todayなり、Debby Wongなりが謝罪するのがスジだと思うが、それがあろうと、なかろうと、この件をたくさんの人に知ってもらうことが、まず重要だと思うから、時間を割いて、この粗訳を作ってみた。


ブログ主は、この「Debby Wong・ニセ4000安打写真掲載事件」について、単なる「写真をとりちがえた程度のミス」だとか、「自分のミスをとりつくろうための、どこにでもある愚行」だとか、まったく思わない。今回の事件は、PEDがそうであるように、スポーツとジャーナリズムの倫理を著しく傷つけている。

あまり上品な言葉とはいえないが、Debby Wongとそこに連なる人たちは、「他人が大事にしているもの」を、どこかで「なめてかかっている」。
こうした「なめている」人間たちが、イチローに限らず、スポーツの記録や出来事を、とやかく議論する資格はない。他人の撮影を邪魔する資格もない。もちろん、言うまでもなく、この程度の倫理しかもたないカメラマンやメディアに、ジャーナリズムなんてものを気取ってもらっては困る。


アートであれ、スポーツであれ、経済であれ、「他人を押しのけて前に進み出ること」そのものは、あっていい。それが自由競争というものだからだ。

だが、「他人を押しのける」にあたっては、周囲がその前に出ようとする人物の天性や足跡、気質を認め、その人物のために数歩うしろに下がって道を譲ることをよしとするだけの、オーラと実績と倫理がなければならない。
「こんどからロイターが私たちの撮った写真を全世界に配信することになったのよ。だから、私たちはなにがなんでも撮らなきゃならないの。わかるわよね?」と言わんばかりのあつかましいだけの人間が、「そこは、いつも私が使ってる場所よ。どきなさい」だの主張して、他人を押しのけ、最前列に居座って、なのに、カメラをまるで構えもしないまま、ふんぞりかえって、他人の撮影まで邪魔して、挙句の果てには、自分が撮ってもいない全く別の写真を「はい、どうぞ」と記事にして商売する、こんなことが当たり前になるなんてことを、ブログ主は許そうとは思わない。

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