November 2014

November 28, 2014

古参サイトのHardball Timesで、Jon Roegeleという人が今年10月に昨今の投高打低現象の原因を、「この数シーズン、ストライクゾーンが広がり続けていること」で説明する記事を書いている。

投高打低をどう理由づけするかは、人それぞれ異なる意見があるだろうけれど、このブログとしては、最近書いた記事の信憑性をより高めてくれた「最新ストライクゾーンデータ」を提供してくれた点を評価したい(笑)

The Strike Zone Expansion is Out of Control – The Hardball Times author:Jon Roegele

右バッターのストライクゾーン比較2009vs2014右バッターのストライクゾーン比較2009vs2014
左バッターのストライクゾーン比較2009vs2014左バッターのストライクゾーン比較2009vs2014


見てのとおり、「2009年と2014年のストライクゾーンの違い」で最大のポイントは、「低めの広さ」だ。(従来は広いのが当たり前だった左バッターのアウトコースが狭くなっていることにも驚いた)

もう少し具体的にいえば、「低めのゾーンが、ほぼルールブックどおりの広さに近づいた」ことが、近年のストライクゾーン拡張の最大のポイントといえる。
(よく「MLBのゾーンは日本より低い」とか無造作に書く人がいるが、過去のMLBの平均的なストライクゾーンがどういう形をしていたか、もういちどこのブログを読んで人生をやり直してほしい(笑) 参考ページ:カテゴリー:MLBのストライクゾーンの揺らぎ │ Damejima's HARDBALL


このブログでも2014年10月の記事で、最近の投高打低現象について、「アンパイアの若返りによる、判定の正確さの向上」という視点から若干の解説を試みて、アンパイアの正確さの向上が投高打低につながるというフロリダ大学のBrian M. Mills氏の論文も紹介した。
2014年10月31日、「MLBアンパイアの若返り傾向」と、「得点減少傾向」の関係をさぐる。 | Damejima's HARDBALL
「世代交代によるアンパイアの若返り」にどういう意味があるかというと、短くまとめるなら、「若いアンパイアほど、几帳面で、従順だ」ということだ。アメリカでもオトコは「草食男子化」しているわけだ(笑)
若いアンパイアは、データから推察する限り、「ルールブックどおりのストライクゾーンで判定したがる傾向」が非常に強い。彼らのゾーンに個性はないが、「正確に判定する能力」だけは、とてつもなく高い。
したがって、従来の個性的なMLBアンパイアたちが維持してきた 『ストライクゾーンの大きな個人差を許容する』というアンパイア文化は、いま大きく揺らぎつつあるわけで、アンパイアの世代交代の影響は近年、MLBのストライクゾーンに「従来にはありえなかった2つの傾向」を生み落とした可能性が高い。
1)ストライクゾーンが、より「ルールブックどおりのゾーン」に近いものに軌道修正された
2)ストライク・ボールがこれまで以上に正確に判定されている

結果だけみると、このブログも、Hardball Timesも、「ストライクゾーンがルールブックどおりのサイズに近づくことによって、投高打低現象が引き起こされている」可能性を指摘したわけだから、指摘の方向性そのものは似ている。

だが、残念ながらHardball Timesの記事には、「なぜストライクゾーンがルールブックに軌道修正されつつあるのか?」、「なぜルールブックどおりのゾーンだと投高打低になるのか?」について、解説も示唆もない。
Hardball Timesの記事はたぶん「広いゾーンは、打者に不利だ」程度の平凡な野球常識をベースに書いていると思われるが、「ゾーンが広がったこと、たったそれだけ」で投高打低のすべてを説明できるとは、到底思えない。

もっと簡単に言うと、ストライクゾーンさえ昔のように狭くすれば、再びバッター有利な時代が来るのか? 再び1990年代のようにホームランが急増し、得点も急増するのか?ということだ。
データ分析とスカウティングが全盛で、ステロイド禁止の今のMLBでは、「そんなこと、ありえない」と考えるのが妥当だし、当然だと思う。

「ストライクゾーンの拡張」は、投高打低を説明するファクターのひとつではあっても、すべてではない。もちろんこのブログでは、アンパイアのストライクゾーンだけが投高打低の理由だなどと考えたことは、一度もない。


かつて蔓延していた薬物不正を少しでも減らしていこうとするMLBの対策強化によって、あからさまなステロイド依存のホームラン量産ができにくくなったために、バッター、とりわけ低打率のスラッガー系打者は、打撃成績をキープするひとつの方法論として、「自分の狙いを極端なまでに絞りこむこと」を思いついた。

だが、これまでデータ分析に熱心でなかったチームも含め、MLB全体のデータ分析力が向上し続けていることによって、そうした「コースや球種に関する、打者の極端な絞りこみ」は、いとも簡単にスカウティングされてしまうようになってきている。
また打球コースの分析から、特にプルヒッターに対して極端な守備シフトをしくチームも増え、ヒット性の打球すらアウトにできてしまうようにもなってきた。


このブログでも、「狙いを絞りすぎのスラッガー」や、「得意なコースや球種が、あまりにもハッキリしすぎているバッター」について、何度となく書いてきた。
ジョシュ・ハミルトン。カーティス・グランダーソン、オースティン・ジャクソン。プリンス・フィルダー、BJアップトン、ケビン・ユーキリス(引退)。マニー・マチャド、ヤシエル・プイグ、サルバドール・ペレスなど。
彼らは、狙いを得意球種や得意コースに絞りこむことで打撃成績をキープしていると思われるタイプのバッターだが、彼らの「狙い」は、従来よりはるかに多くの投手、チームによって、より短期間で見抜かれるようになってきている。(だからこそブログ主は、彼らのようなバッターとの大型の長期契約に賛成しない)


投手が、スカウティングどおりに投げられない「コントロールの悪いパワーピッチャー」ばかりだった時代なら、引退したアダム・ダンが典型的だったように、投手のミスショットをひたすら「待って」フルスイングしていればよかった。
関連記事:2014年10月20日、やがて悲しきアダム・ダン。ポスト・ステロイド時代のホームランバッター評価の鍵は、やはり「打率」。 | Damejima's HARDBALL
彼らは、得意でない球は見向きもせず、ひたすら投手の甘いミスショットが来るのだけを待つ。たからこそ、見逃し傾向が非常に強く、打撃成績が四球と三振とホームランだけでできた「低打率のアダム・ダン型ホームランバッター」が量産された。(彼らの高出塁率で勘違いしている人間がほとんどなのだが、彼らの打撃は、けして効率的でも、「セイバーメトリクス的」でもない)

だが、日本人投手のように「コントロールがいい投手」が増え、その一方でストライクゾーンも広がるとなると、攻略方法がわかっている打者はスカウティングどおりの配球で簡単に封じ込められてしまう。
コントロールのいい日本人投手が近年のMLBで重宝される所以(ゆえん)である。(OPSのようなデタラメ指標と、四球の過大評価を、成績とサラリーの過大評価の「隠れ蓑」にしてきた「低打率のホームランバッター」が生きながらえられる時代はこうして終った)
投手としてパワーピッチに多少問題があっても、スカウティングとコントロールの良さの「合わせ技」でなんとか打者を料理できててしまうとしたら、「投手の時代」になるのは当然だ。

2012年10月6日、2012オクトーバー・ブック 「平凡と非凡の新定義」。 「苦手球種や苦手コースでも手を出してしまう」 ジョシュ・ハミルトンと、「苦手に手を出さず、四球を選べる」 三冠王ミゲル・カブレラ。 | Damejima's HARDBALL

2012年11月2日、2012オクトーバー・ブック 「スカウティング格差」が決め手だった2012ポストシーズン。グランダーソンをホームランバッターに押し上げた「極端なストレート狙い」が通用しなくなった理由。 | Damejima's HARDBALL

2012年11月6日、2012オクトーバー・ブック アウトコースのスカウティングで完璧に封じ込められたプリンス・フィルダー。キーワードは「バックドア」、「チェンジアップ」。 | Damejima's HARDBALL

2012年9月17日 アウトコースのスライダーで空振り三振するのがわかりきっているBJアップトンに、わざわざ真ん中の球を投げて3安打させるボストンの「甘さ」 | Damejima's HARDBALL

2012年8月20日、アウトコースの球で逃げようとする癖がついてしまっているヤンキースバッテリー。不器用な打者が「腕を伸ばしたままフルスイングできるアウトコース」だけ待っているホワイトソックス。 | Damejima's HARDBALL

2013年7月16日、ヤシエル・プイグは、これから経験するMLBの「スカウティング包囲網」をくぐりぬけられるか? | Damejima's HARDBALL

2013年7月5日、怖くないボルチモア打線 スカウティング教科書(1)マニー・マチャドには「アウトローを投げるな」 | Damejima's HARDBALL

2014年10月29日、2014オクトーバー・ブック 〜 ヴェネズエラの悪球打ち魔人サルバドール・ペレスにあえて「悪球勝負」を挑み、ワールドチャンピオンをもぎとったマディソン・"Mad Bum"・バムガーナーの宇宙レベルの「度胸」。 | Damejima's HARDBALL

割と真剣に、MLBはそろそろこういうルールを作るべきだろうと思っている。競争原理の導入というやつだ(笑)
地区最下位を5シーズン経験したGMは、問答無用にクビ
(別に4シーズンでも、6シーズンでもいい)

そういう無能なGMを「2人続けて」雇ったオーナーがいたら、
そのオーナーも問答無用で交代


2014シーズン地区優勝したドジャースが、新たにコンサルティング会社出身のGMを雇った。これはちょっとした驚きだった。MLBの風向きが少し変わったのかもしれない、とまで思ったほどだ(笑)

というのも、
これまでのMLBでは、「ジェネラル・マネージャーの責任を問うスピード」があまりにも遅すぎることが原因で、チーム側(それは同時にファンの側でもある)が致命傷を負うことが、当然のように行われ続けてきたからだ。

これまでは、地区優勝のような「結果」さえ出していれば、たとえ優勝にたどりつくための「方法」があまりに劣悪であっても、(よほどの内紛でもないかぎり)GMがクビにされるようなことはなかった。
それどころか、長期にわたって結果を出せていない能無しGMであっても、すぐクビになることはよほどのことがない限り、無い。たいていの場合は、チームが「取り返しのつかない致命傷を負う」まで、たとえ劣悪なGMであってもチャンスが与えられ続けてきた。
それどころか、ジャック・ズレンシック(シアトル・マリナーズ)やブライアン・キャッシュマン(ニューヨーク・ヤンキース)のように、チームが致命傷を通り越し、「既におまえは死んでいる by ケンシロー」状態に至っているのに、そのGMとの契約をさらに延長し、チャンスを与えるチームすらあるのである(笑)(日本のことわざに「盗人に追い銭」という言葉がある)

近年のドジャースが使った予算とその投資結果をみれば、地区優勝したとはいいながら、その投資があまりに非効率だったことは、MLBファンなら誰でもわかっていた。
だから、ドジャースが今回「たとえ地区優勝したGMでも、手法が酷ければクビにする」という「新たな選択肢」をクリエイトしてくれたことには、その結果が吉とでるかどうかはともかく、決断そのものに心から拍手を送りたい。


それにしても、あくまで想像だが、ドジャース以外のチームでも、またMLB機構のありとあらゆる場所で、「野球以外の畑の出身者」がますます増加していることは、たぶん間違いない。

特に根拠となる記事や資料を発見したわけではないが、そうした「野球をよくわからないまま、野球界に入った人々」の「不可解なお買い物ビヘビア」を助長しているのが、「セイバーメトリクスなどのデータ数値を、十分な検討も経ないで、単純適用することによる、あまりにもお粗末な選手評価」である可能性は高いと、ブログ主はいつも思っている。

もちろん野球にとって「数字」が便利で不可欠な存在になっているのは確かだが、OPSというデタラメな数字や、パークファクターの未熟さ、守備補正のデタラメさなどのデタラメさ、未成熟さを見てもわかる通り、データ分析手法そのものが十分成熟しているとは、お世辞にもいえない。

にもかかわらず、「野球を知らない責任者」、あるいは、「数字がもともと苦手なくせに、データ野球に手を出して失敗した責任者」にとっては、「数字」があらゆる行動の「ものさし」になるどころか、あらゆることを数字で決めがちなのではないか、と想像する。

つまり、数字「だけ」が彼らの「売買の基準」であり、さらには「数字が、自分たちの売買の意味を、チームの投資家たちにプレゼンするためのツール」であるのはもちろん、「「数字」を、自分の過去の買い物(売り物)の正しさを正当化するための言い訳ツール」にもしているのではないか、と思うのだ。

どうしても誤魔化したい失敗を犯したとき、人はやたらと頭を下げたり、むしろふんぞり返ったり、いろいろな対処をするものだが、近年のトレンドが「数字とグラフを駆使して、自分の失敗を言い訳しまくること」なのは、リーマンショックを経験して以降、もはや誰でもわかっている。


上は、セイバーメトリクスの流行とともにMLBライターのひとりになったRob Neyerのツイートだ。
彼はこのツイートで、イチローがこれまでヤンキース移籍後も含めて左投手を問題なく打ちこなしてきたという基本データさえ見ずに、自分の「臆断」だけで「イチローには右投手専門の代打くらいの価値しかない」と断定している。

ブログ主はこれを見て「おまえは左右病患者ジョー・ジラルディか?(笑)」と即座に笑い飛ばしたわけだが、ファンならずとも「おいおい・・何言ってんの」と笑われるような幼稚なレベルの話を、データ派と目されてきたライターが公然と断言してもらっては困る。
Rob Neyerはかつて「数字という流行」にのっかってメディア入りしたデータ派の書き手だった人だが、Twitterやブログ記事から眺める限り、彼はこの数年、到底彼の得意分野とは言えない野球以外のジャンルに手を出し、迷走を繰り返し、自分の活躍の場を自分から狭め、なおかつ、筆力を衰えさせてきた。近年彼がデータを駆使して凡人の気づかない視点を独自に発掘する姿など、見たことがない。
そうした自分自身の近年の「迷走」と「衰え」に無自覚なまま、根拠の無い、しかも平凡な批判を羅列する行為は、このうえなく迷惑だ。


Rob Neyerのような古株のデータ派ライターの「衰えぶり」「干されぶり」から察するに、「データに強いというだけで、メディアで大きな顔ができた時代」はようやく「終わった」のだろう。
ただしそれは、データ派の居場所が限定されたという意味ではまったくないだろう。むしろ、活躍場所がメディア、アナリスト、エヴァンジェリストといった「野球の周辺部」に限定されていた時代が終わって、いまやGMや球団経営そのものといった「野球のコア」にまで活躍場所が拡大したと考えるべきに違いない。


データに強い人間が増えるそのものはもちろん「いいこと」だ。
だが、哀しいことに、人間はいちど手に入れた「権威」を手放そうとはしない。また人間は、「失敗」を認めようとしない動物であり、さらには「衰え」を認めたがらない動物でもある。そして、データ上で眺めるのと、実際に金を動かすのとでは、かかってくるプレッシャーは別次元になる。

たとえデータ・エリートの出身だろうと、自分がそれまで動かしたことのない大金を投資する恐怖に押しつぶされ、こわごわ大金を投じては失敗を繰り返し、失敗した投資をデータによるプレゼンで投資家に言い訳しまくり、地位を守ろうとする人間が登場するに終わるならば、これまでのMLBの「温室的なGMの扱い」と、どこも、なにも、変わりない。

「データに強いこと」を「自分を売りこむためのセールスポイント」として使った後は、プロスポーツの発展に貢献するどころか、泣かず飛ばずの成績で、それでもGMという地位にしがみついて、結局はチームの不振を法外な大金でFA選手を獲得してくる程度のことで解決しようとするなら、彼らの得意分野である「数字」は、「結局、自分を売り出したのみで、中身なしに終わった、数字という名のステロイド」に過ぎない、ということになる。

November 26, 2014



ステロイド時代がタテマエとしては終わり(実際には終わってない。ライアン・ブラウンを見ればわかる)、ワールドシリーズが「1年おきに、サンフランシスコ・ジャイアンツとセントルイス・カージナルスが優勝するためのシリーズ」になってずいぶんと年月が過ぎたが、この5年間、この2チームをはじめ、ナ・リーグ有力チームから、ア・リーグ、特に東地区に高額な長期契約で移籍した選手たちを数えあげてみたことがあるだろうか?(笑)

ラッセル・マーティン LAD→NYY(2011)→PIT→TOR(2015)
エイドリアン・ゴンザレス SDP → BOS(2011)→ LAD
アルバート・プーホールズ STL → LAA(2012)
プリンス・フィルダー MIL → DET(2012)→ TEX
カルロス・ベルトラン STL → NYY(2014)
ブライアン・マッキャン ATL → NYY(2014)
Shin-Soo Choo CIN → TEX(2014)
パブロ・サンドバル SFG → BOS(2015)
ハンリー・ラミレス LAD → BOS(2015)

太字ア・リーグ東地区に移籍した選手
赤色をつけたのは、成績の酷い年

いやはや。酷いもんだ(笑)

これだけ多くのナ・リーグの有力選手たちが、ア・リーグ、特に東地区に移籍した(加えて彼らは日本や中米で選手をあさってもきた)というのに、この5年間というもの、ワールドシリーズの主導権は常にナ・リーグ、サンフランシスコ・ジャイアンツとセントルイス・カージナルスに握られてきたのだ。

最近のア・リーグ、特に東地区、とりわけヤンキースのマネジメントが、どれほど迷走してきたことか。いい加減、自分たちのやってきたことの「失敗」くらい認められないのかね、と言いたくなる。
1958年にドジャースとジャイアンツがニューヨークから西海岸に移転して半世紀以上が経つわけだが、もし「フリーエージェント」というシステムと、ドラフト外の獲得、そして「ありあまるカネ」がなかったら、2010年代のア・リーグ東地区はとっくの昔に日陰の隅に追いやられていただろう。


例えば、温かい料理を冷めて台無しにしてしまってから客に出す「下手クソな料理人」、ヤンキース監督ジョー・ジラルディだ。彼を見ていると「選手操縦の下手さ」がよくわかる。
たとえイチローの調子が上がってヒートアップしていようと、「左投手を打てるのは右打者」などという根拠のない古い野球常識にとらわれて、左投手先発ゲームで起用しようとせず、1試合おきに起用するような意味のないことを繰り返して、打者としての調子を「冷やして」しまう。
参考データ2013年9月9日、イチローのバッティングを常に「冷やし」続けてきたジョー・ジラルディの不合理な起用ぶりを、この際だから図に起こしてみた。 | Damejima's HARDBALL
なのに、大金を払って獲得した選手は、払った金がもったいないとばかりに、ダメなのがわかっていても、しつこく起用し続ける。
また、そういう「怪我もち選手」に限って、ブライアン・キャッシュマンが、ところかまわず大金払って獲得してきてしまう(笑)

まったくもって成金の悲しい性(さが)としか言いようが無い。

チーム総得点とチーム総失点の差が小さいのに、勝利数が負け数より多いという、たったそれだけの理由にもならない理由で、ジョー・ジラルディは監督として有能だとか、わけのわからないことを言っている人を見たことがあるが(笑)、2014ヤンキースの貯金6は、「ひとりで13勝5敗と8つもの貯金を作った、田中将の貯金」を減らしながらもかろうじて維持した、たったそれだけの話だ。
もしも田中将が貯金8を作らなかったら、2014ヤンキースの貯金は総得点と総失点の差からはじきだされるデータ(=Baseball ReferenceでいうPythagorean W-Lなどのこと)どおりのレンジ、つまり「負け越し」「マイナス」に終わって、順位ももっと下だったはずだ。優秀だったのは田中将であって、ジラルディではない。

あれだけの予算を使っても、無能なGMキャッシュマンが「打てないくせに、怪我ばかりする野手」ばかり集めてきてしまい、チームの得点力は上昇しなかったにもかかわらず、提灯持ちメディア代表のニューヨーク・ポストなどは、御用聞きライターのひとり、Ken Davidoffが、「怪我がちなマーク・テシェイラのバックアップ一塁手がきちんと用意できなかったのは、イチローがロスターを占めていたせいだ」などと、とんでもなく的外れな、いいががり記事を書いたりしている(笑)
A-Rod can cause same first-base problem that Ichiro did | New York Post
体がもともと弱いのか、準備運動が足りないのか、アナボリック・ステロイドの副作用なのかしらないが、法外なサラリーをもらっているマーク・テシェイラが怪我がちなのは、マーク・テシェイラ自身のせいであり、そういう怪我もちなのがわかっている選手に大金を払う契約をしながら、バックアップの内野手を準備しないままシーズンインするのは、もちろんGMブライアン・キャッシュマンのせいなのに、記事には、テシェイラのフィジカルの弱さやキャッシュマンの無能さを批判するどころか、キャッシュマンのキャの字すらすら出てこないのだから、おそれいる(笑)

November 20, 2014

ブログ主はアンパイア好きということもあって(笑)、アンパイアがストライク/ボールを判定するファクターとして、framing(フレーミング)が最も重要とまでは思わない。またキャッチャーの資質としても、フレーミングが上手いほうがいいに決まっているにしても、絶対不可欠な資質だ、とまでは思わない。以下にその理由の一端を書いてみる。

2010ALCS Game1 でボール判定をするGerry Davis


Baseball ProspectusでMike Fastという人がやたら推しまくっているせいか、このところMLBのキャッチャーの評価や能力比較について、フレーミングという指標をもとに話す人を見かける。
「フレーム」とは、この場合「ストライクゾーンの四角い仮想的な枠」のことで、要するに「ピッチャーが非常にきわどい球を投げたときに、キャッチャーがアンパイアの判定を『ストライク』に傾かせるキャッチング技術」を指している。(誰がみても明らかなボールをストライクにみせかけるためにミットをこれみよがしに大きく動かすテクニック、という意味ではない。そんなのはアンパイアの判断を惑わせようとする下劣な行為として、MLBアンパイアの心象を悪くするだけだ)

いうまでもなくフレーミングという技術そのものは昔からある。新しいのは技術そのものではなく、「ただでさえ数値化しにくかったキャッチャーの守備技術の一部を、可視化させたこと」だ。


この新しいアイデアをどう評価するかは、
まだそれぞれの判断にまかされている。

例えば、データサイトとして有名なFangraphは、今のところ「フレーミングについて詳しく知りたい方は、こちらをどうぞ」と、Mike Fastの記事へのリンクなどを貼りつける程度で済ませている。つまり、いまのところFangraphとしては「まだマトモには扱うわけにはいかんけんね」的な立場なので、どこかよそよそしいのだ(笑)
Catcher Defense | FanGraphs Sabermetrics Library


最初に挙げた写真は、Mike Fast自身がBaseball Prospectusに書いた記事の冒頭に挙げているもの。出典:Baseball Prospectus | Spinning Yarn: How Accurate is PitchTrax?

NYY対TEXというカードで行われた2010年ALCS Game 1、NYYが1点リードで迎えた9回裏に、左投手マリアーノ・リベラが先頭の左打者ミッチ・モアランドのインコース低めに投げた初球を、球審Gerry Davisが「ボール」とコールした場面だ。
キャッチャーは、「フレーミングが下手」なことでで有名だったキャッチャーのひとり、ホルヘ・ポサダ
October 15, 2010 American League Championship Series (ALCS) Game 1, Yankees at Rangers | Baseball-Reference.com

この球、画面上では「きわどいコース」だったように「見える」。

まず先に、結論を書こう。
おそらくこの球は、「多くのアンパイアがボールとコールする、明らかなボール」であり、判定にキャッチャーのフレーミングはほとんど無関係だっただろう。そもそもこのゲームの球審は、ストライクゾーンがMLBで最も狭いことで有名なGerry Davisなのだから、ストライク判定になりようがない。他にも、初球というカウント、左バッターのインロー、あらゆる要素が、このボールをストライクとコールさせにくくしてもいる。

では、なぜ「ボール」とコールされたのか
以下に「とりあえず考えられる理由の候補」を10個ほど挙げてみる。

候補1)ポサダがフレーミングが下手だから。
候補2)ポサダがミットを動かし過ぎて、球審の反感を買った。
候補3)「初球」というカウントでは、フレーミングは効果がない。
候補4)よく見るとコースが低すぎる。フレーミングでなんとかなるような球ではなく、もともとボールとしか判定しようがない球だ。
候補5)MLBアンパイアは、普通あまり「左バッターのインローのきわどい球」をストライクコールしない。
候補6)MLBアンパイアは、「コーナーぎりぎりの球」をストライクコールしない。
候補7)球審Gerry Davisのストライクゾーンは、もともと「非常に狭い」。
候補8)このゲームに限って、Gerry Davisが低めをとらなかった。
候補9)このゲームに限って、Gerry Davisの左打者のゾーンが狭い。
候補10)投手不利のカウント、例えば3-0では、球審が投手寄りのコールをすることもある。だが初球ではそういうことは起こらない。
候補11)単にGerry Davisが正確に判定しただけ。


以上のどれが最も適切な解答だろうか。

なにより、まず最初に確認しておきたいのは、球審がGerry Davisであることだ。このブログで何度となく書いてきたことだが、Gerry DavisはMLBで最もストライクゾーンの狭いアンパイアのひとりであり、その事実を抜きに、この判定の是非について語ることはできないし、意味がない。

この日の球審Gerry Davisの判定ゾーンを見てみると、このゲームでのGerry Davisのゾーンは、彼にしては「低めをとり、アウトコースもとり、珍しく広め」になっている。(以下は左打者のデータだが、右も同じく広い)
BrooksBaseball.net: PITCHf/x Tool | Strikezone Maps
2010年ALCS Game1 球審Gerry Davisの左打者判定傾向


続いて、ミッチ・モアランドの打席データをPitchF/Xで調べてみる。
Mike Fastの挙げた画像では、初球のインコース低めの球は「ストライクゾーンに入っている」ように「見える」。
だが、これは、地上波のテレビ画面によくある精度のよくないマトリクスであり、Gamedayでみると「ストライクゾーン内」でも、実際には「ボール」だったりするのと同じ現象だ。実際、この球はPitchF/Xでみると、「明らかに低い」
BrooksBaseball.net: PITCHf/x Tool
2010 ALCS Game1 9回裏 モアランド初球判定 球審Gerry Davis


さらに、かつて2011年7月11日の記事で書いたように、MLBアンパイアは「打者有利なカウント、例えば3-0では、投手有利に判定し、逆に投手有利なカウント、例えば0-2では、打者有利に判定する傾向」がある。
また、「ストライクゾーンは必ずしも四角い形をしておらず、むしろ『下膨れの円形』に近いこと」、したがって、「コーナーぎりぎりの球は、ストライク判定されにくい傾向にあること」が知られている。
したがって、この初球はカウントにしても、コースにしても、ストライク判定されにくい状況にある。
(なお、Mike Fast自身も、2014年3月の記事のカウント別データで、「初球」が「最もフレーミングの効果が期待できないカウントである」ことを書いている Baseball Prospectus | Framing and Blocking Pitches: A Regressed, Probabilistic Model
記事:2011年7月11日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (5)カウント3-0ではゾーンを広げて四球を避け、カウント0-2ではゾーンを狭めて三振を避ける。あらためて明らかになったアンパイアの「故意にゲームをつくる行為」。 | Damejima's HARDBALL
カウント0-3と、カウント0-2の、ストライクゾーンの違い


こうした簡単な検証例でも、わかることは数多くある。
短くいうなら、「球審の判定に影響しているファクター」は、なにもフレーミングだけではなく、非常に多くのファクターがからんでいること、そして、いったい、どの『きわどいストライク』が、フレーミングの効果によってストライクになったのかは、よほど膨大なファクターを仔細に点検しないかぎり、正確にはわからないということだ。

言いかえると、きわどいストライクがストライクになった理由なんてものは、数え上げれば両手では足りないかもしれないというのに、フレーミングの元データの収集自体がそんな簡単な作業なはずはない。


Mike Fastが2010年ALCSの写真を得意気に挙げた記事は、確かにフレーミングについての記事ではないわけだが、ブログ主には、彼がPitchF/X以外にどのくらいの数のファクターを考慮して、フレーミングの効果を調べあげたのかが見えてこない。つまり、球審がGerry Davisだったことや、投球が初球だったことなど、「フレーミング以外のファクター」をどの程度考慮して書いているかも見えてこないこの人を、あまり信用できていないのである。

ひとつひとつの判定には、アンパイアの個人差を中心に、これまでのMLBの慣習など、数多くのファクターが絡みつきあって判定されている。
だからこそ、このブログの意見では、たしかに面白い視点だとは思うが、だからといって数値を鵜呑みにして、フレーミングの数値で「このキャッチャーは、この人より上だ、下だ」と論じてしまうわけにはいかないと思うし、将来的にもそれは無理だろうと考える。

(まぁ、それでも、シアトルの近年の歴代キャッチャーが、ほぼ例外なくフレーミングがマイナスというのには思わず笑った(笑)探せば、2008-2013で最もフレーミング数値が悪いワースト10に城島はじめ、ムーア、ジョンソン、ジェイソ、モンテーロと、5人が入ったとする記事、あるいは城島を2007年のワーストとした記事などがみつかるはず。例:Baseball Prospectus | Spinning Yarn: Removing the Mask Encore Presentation

November 18, 2014

今年イチローについて書かれた記事のうち、最も印象に残った記事として、ウォール・ストリート・ジャーナルの「イチローのスペイン語能力」についての記事を挙げておきたいと思う。一時期、いつTwitterを開いても、いつも誰かがリツイートしているのをみかけたものだし、わざわざこの記事を引用して書いた他のメディアの派生記事もいくつかあった。
Ichiro Suzuki Uncensored, en Español - WSJ
知られざるイチローのスペイン語力―ラテン系選手との絆深める - WSJ日本語版

この記事が印象的だったのは、「日本人イチローが、きわどいスペイン語も話せる」というこの記事の主旋律そのものではない。彼の語学力が、必要であればトラッシュトークすらこなすレベルにあることは、普通のイチローファンならとうの昔に知っている。
むしろ記事そのものよりもずっと興味深かったのは、「日本人がスペイン語を、しかもトラッシュトークしていた」というだけで、なぜこれほどまでの「反響」があったのか、という点だ。


WSJの2014年9月の記事によれば、アメリカに約1920万人もいる「英語力が不十分な人たち」のうち、3分の2の人たちの母国語が「スペイン語」らしい。アメリカの学校で教える第二外国語も、圧倒的にそのスペイン語であり、多言語化するアメリカ社会におけるスペイン語の重要性はますます高まっている。

だが、アメリカで「英語の話せない人」がますます増え続けていることが明らかになる一方で、アメリカ人、つまり、英語を話せる既存のアメリカ人の第二外国語習得に対する関心の低さ、さらには、ヨーロッパに比べてエグゼクティブや一般市民のマルチリンガル率がかなり低いという調査結果も出ている。
つまり、「現実社会でのアメリカの多言語化」がもはや止められないほどの勢いで進行しつつあり、それを誰もがわかっているにもかかわらず、「アメリカの多言語化への対応」は、あまり進んでいないどころか、かなり遅れているようなのだ。


MLBにおけるスペイン語の重要度にしても、これからどんどん高くなるのはわかりきっている。MLB公式サイトにはスペイン語版があるし、データサイトでもスペイン語ページを用意しているサイトもある。

だが、はたして今のレベルで十分といえるだろうか。
おそらく十分とはお世辞にもいえないのではないか、と思うのだ。

かつて2013年9月にパナマ出身のマリアーノ・リベラの引退ゲームについて書いたとき、「スペイン語圏出身であるリベラに、スペイン語スピーチをやらせるべきだった」と書いたが、あのときの放送にしても、「まさに今、もの凄い数のスペイン語圏の人々がこの放送を見ているだろう」という「気くばり」は、あまり感じられなかったように思う。

イチローのスペイン語によるトラッシュトークという記事にしても、記事自体は、オリジナリティがあり、十分な取材をもとに書いた面白い企画だとは思うが、他方で、「英語ネイティブでない国の選手同士のスペイン語トーク」がいまさらこれほど話題になるくらい、「アメリカ社会でのスペイン語の位置付けは、まだまだなんだな」と思う。


もちろん、アメリカで「ガイジン扱い」を受ける立場にある日本人イチローが「どうやらスペイン語が、かなりやれるらしいぜ!」というだけで、スペイン語圏の人たちの間での「イチローに対するシンパシー」がググググっと高まったことは、ファンとしてとても嬉しい出来事だった。

記事でイチローは「ラテン系の選手と交流したくなる動機」について、以下のように語っている。
"We're all foreigners in a strange land. We've come over here and had to cope with some of the same trials and tribulations. When I throw a little Spanish out at them, they really seem to appreciate it and it seems to strengthen that bond. And besides, we don't really have curse words in Japanese, so I like the fact that the Western languages allow me to say things that I otherwise can't."
「僕ら(=日本人やスペイン語国出身者)は、よその国では外国人扱いされる。ここに来たら、同じ試練に打ち勝っていかなければならない。ちょっとしたスペイン語を話しかけるだけでも彼らは本当に喜んでくれるし、彼らとの絆が深まる気がする。加えて言うと、日本語には悪態をつくためのちょうどいい言葉がない。外国の言葉でなら日本語では表現できないようなことが言えて、それがとても楽しい。」


ここでちょっと、「世界が、いまどんな言語でできているか」を眺めてみよう。

アメリカ社会でのスペイン語の重要性という話を書いたばかりのくせに相反するようで恐縮だが、MLBファンだけでなく、毎日スポーツばかり見ている人はともすると、世界が英語と、スペイン語をはじめとするラテン系言語、この「2種類だけでできている」と思いこんでしまいがちだ(笑)

だが、実際の「世界の言語環境」のマジョリティは、人数だけでみると、英語とスペイン語の2つで過半数、とはいかない。
たしかにスペイン語は、国連における6つの公用語(=英語、フランス語、スペイン語、ロシア語、中国語、アラビア語)のひとつではあるが、スペイン語は居住地域が主に中南米に限られているため、総数は4億数千万人程度で、思ったほど多くはないし、なにより今後の拡大に「頭打ち感」がある。

実数はともかく、「インターネット上で飛び交う言語」という視点でみると、「英語」と「中国語」の2つで過半数を占めているという調査がある。
スペイン語はここでも世界第3位という定位置なのだが、いかんせん、やはり成長率が低い。第4位「アラビア語」がいま爆発的成長をしているため、やがてネット言語としてのスペイン語はアラビア語に追い抜かれる可能性がある。
(ちなみに日本語は、日本人の多くが「世界でみると超マイナーな言語だ」と思いこんでいるわけだが、それは間違いだ。そもそも日本は、国土こそ狭いが、人口は世界第10位の「大国」であり、また「ネット上の言語としての日本語」は、世界第6位の言語であり、ロシア語、ドイツ語、フランス語などと肩を並べる、堂々たる世界の主要言語のひとつなのだ。)


野球のプレーにおいてだけでなく、野球のマーケティングにとっても、「どの言語圏をカバーするか」は重要な意味を持っているわけだが、「スペイン語圏」で最も人気のあるスポーツは、今のところ、まだ「野球」ではない。
野球は、スペイン語圏やラテン系言語圏への拡大途上にあるわけだが、今後は、今までと同じく「英語を世界唯一の共通言語としていく」べきなのか、それとも、もう少し拡大して「英語圏以外の、スペイン語圏をはじめとするラテン系言語の国々」での普及をもっと爆発的に推し進めるべきなのか。表面上マーケティングの問題だが、これは同時に「世界観」の問題でもある。


さて、せっかくだからWSJの記事の一部を、MLBにあまり詳しくない人にもわかる形で資料として残しておきたいと思うが、その前に、まだ知らない人のために書いておくと、「イチローの外国語によるトラッシュ・トーク」といえば、スペイン語の前に、2000年代後半のMLBオールスターで、試合前にア・リーグのミーティングでぶちかましていたという下ネタ満載英語スピーチのほうが有名なわけで、まずそちらから資料を残しておきたい。

元資料:Ichiro's speech to All-Stars revealed - Yahoo Sports date:2008年7月 writer:Jeff Passan

マイケル・ヤング
"How do you know about that?"
"The cool thing," Young said, "is that for two days, at least, we call a truce and become a bit of a team."
「それ、どこで知ったんだい?(笑)(イチローの英語スピーチの)何がクールかって、ライバル選手たちが少なくともオールスターの2日間だけは一時停戦して、ひとつのチームになれるってことさ。」

デビッド・オルティーズ
"It's why we win,"
「それが(ア・リーグが2000年代オールスターで)勝ててる理由さ」

ジャスティン・モーノー
"That's kind of what gets you, too," Minnesota first baseman Justin Morneau said. "Hearing him say what he says. At first, I talked to him a little bit. But I didn't know he knew some of the words he knows."
「まぁ、君らが思ってるような内容(=放送禁止のきわどい英語だらけ)なのは確かさ。」とミネソタ(当時)の一塁手ジャスティン・モーノー。「彼がスピーチやった後、ちょっと聞いてみたこともあるんだけど、彼がなんでああいうたぐいの言葉まで知ってんのか、ほんと、謎だよ(笑)」
"If you've never seen it, it's definitely something pretty funny," Morneau said. "It's hard to explain, the effect it has on everyone. It's such a tense environment. Everyone's a little nervous for the game, and then he comes out. He doesn't say a whole lot the whole time he's in there, and all of a sudden, the manager gets done with his speech, and he pops off."
「(イチローが英語スピーチしてるのを)実際見たことがないと、『ウソでしょ、絶対ありえない』とか思うだろうな。言葉じゃ説明しづらいけど、影響はすごいある。ああいうテンション上がってる場面だしね。誰もがゲーム前でナーバスになってる。すると、彼が出てくるわけ。しゃべりまくるってほどじゃないけど、監督のスピーチが終わると、彼が突然すっくと立ち上がるわけさ(笑)」

この記事には他にミゲル・テハダ、福留が登場


さて次に、今年話題になったスペイン語のトラッシュ・トークについて。
引用元:Ichiro Suzuki Uncensored, en Español - WSJ date:2014年8月 writer:Brad Lefton
WSJ日本語版:知られざるイチローのスペイン語力―ラテン系選手との絆深める - WSJ日本語版
引用記事:Yankees' Ichiro Suzuki is a legendary trash talker...in Spanish | NJ.com
引用記事:Ichiro has been talking trash in Spanish, for years - SBNation.com

ラモン・サンティアゴ(ドミニカ)
2003年デトロイトで、セカンド、ショート、ファーストを守ったドミニカン。彼によれば、先頭打者でヒットを打ったイチローがすかさず盗塁を決め、セカンドで立ち上がると、ポーカーフェイスのままスペイン語で "No corro casi." と言ったらしい。
元記事Brad Leftonの英訳は "I don't have my legs today."。また、同紙の日本語版では、「きょうは速くないな」と訳している。元記事がなぜそういう風に解釈したのかはわからないが(笑)"No corro casi." をとりあえず英語直訳すれば、"I hardly run." だ。
なので、このブログ訳としては、「この程度のスピードぢゃ、走ったとはいえねぇべ(歩いたようなもんだ)」としておく(笑)

カルロス・ペーニャ(ドミニカ)
ペーニャがタンパベイでファーストを守備していたときのこと。内野安打で出塁したイチローが "Que coño tu mira? と話かけてきたらしい。元記事では "What the hell are you looking at?" と訳してお茶を濁し、日本語版ではconoと「スペルを変えて」いる。
だが、原文にあるcoñoとは、本来「女性器」を意味するスペイン語なのだ(苦笑)だから、わざときわどく訳すなら、「あんた、あたいとナニしたいわけ?」。さらに崩すと、「あんた、どこ見てんのよぉ・・・やらしいわねぇw」となる(笑)
このブログなら、世間を気にせず、きわどいところまで書けるが、まぁ、いくらなんでも天下の公器ウォールストリートジャーナルだ。訳すに訳せなかったのも、しかたがないといえばしかたがない(笑)

ラウル・イバニェス(両親はキューバ移民)
シアトル、ヤンキースでチームメイトだったイバニェスは、ニューヨーク生まれだが、両親はキューバ移民なので、英語もスペイン語もペラペラ。
"He's a really observant, really smart guy and he can pick up Spanish pretty quickly," Ibanez said. "He'd overhear us Latin guys talking and he would imitate it exactly the way that we said it and then he'd ask, 'What does that mean?' Everything that he does, he tries to do it exactly perfect, right? So it only makes sense that he would do that when he's trying to speak Spanish."
「彼はほんとに観察力があって、ほんとに頭の切れる男さ。スペイン語もとても早く身につけるしね」とイバニェス。「彼は僕らのようなラテン系選手の会話を立ち聞きすると、言ってたとおり正確に真似て、その後で『これ、どんな意味?』って質問してくるんだ。彼は自分のやることなすこと全てをパーフェクトにこなそうとするのさ。スペイン語もそう。話すからにはパーフェクトでなきゃ意味がない、それがイチローさ。」

ビクター・マルチネス(ヴェネズエラ)
今はデトロイトのDHだが、彼がまだクリーブランドのキャッチャーで、サイ・ヤング賞投手クリフ・リーとかの球を受けていた時代に、誰かと会話しているイチローが "muy peligroso" (=「とても危ない」)というスペイン語を使っているのを、マルチネスが「また聞き」した。
そこでマルチネス、打席に入ったイチローに、マスク越しに "muy peligroso" と話しかけてみた。すると、イチローは笑顔で応え、すかさずヒットを打って出塁していったらしい。
その後2人はすっかり打ち解けたらしく、あるときなどは打席に入って難しい球をファウルしたイチローが、 "Mala mia" (=「ミスったぜ」)とスペイン語でマルチネスをからかったこともあるらしい。(注:この部分は元記事にはあるが、日本語版では削られている)

ミゲル・カブレラ(ヴェネズエラ)
いまや押しも押されもしないア・リーグの代表的スラッガーの彼が、イチローと初めて会ったのは、カブレラが初選出された2004年ヒューストンでのオールスターで、ヴェネズエラ人プレーヤー7人に混じって一緒に記念撮影したのが最初。
後年デトロイトに移籍したカブレラが、三塁手としてヤンキースとゲームしていたとき、塁上のイチローにカブレラが "Feo!" (=ugly)とスペイン語で声をかけると、イチローがスペイン語で応酬。このときのやりとりで使われたスペイン語も、とてもとても紙面に書き表せるようなたぐいの言葉ではなかったかったらしい(笑)(注:この部分も元記事にはあるが、日本語版では削られている)


2014年10月末に、Latin Postというラテン系メディアに、今オフのストーブ・リーグのFA選手ベスト5という記事が出て、1位がイチロー、後は、パブロ・サンドバル、メルキー・カブレラ、マックス・シャーザー、ジェームズ・シールズだった。
この記事を作るにあたって、例のWSJの記事がどのくらい寄与したのかは当然ながら不明なわけだが、イチローとスペイン語圏選手の親しい関係が判明したことがラティーノ圏でのイチローの好感度をかなり押し上げたことは、おそらく間違いないだろうと思う。
MLB Free Agents 2015 Rumors & Rankings: Top 5 Best Players Available This Offseason : Sports : Latin Post



November 14, 2014

「年度」を覚えておいてほしいのだが、2010年7月日本経済新聞のスポーツ記事に、「2000年代MLBオールスターで、ア・リーグ名物として出場選手間だけで知られていた、イチローの試合前スピーチ」について、かつてダメ捕手城島の提灯持ちライターだった丹羽政善が書いた「イチローを巡る球宴のジンクスと後半戦の変化」という「妙な」記事がある。

丹羽はこの記事で「2010年オールスターでイチローは例のスピーチをやった」という証言コメントを、「たまたまスタジアム内の通路を通りかかったオルティーズ」を呼び止めて、あたかも「自分の耳で直接聞いた」かのような「芝居じみた書き方」をして紙面をかせいでいる。(具体的表現については以下の引用を参照)

だが、それはウソだ。

なぜなら、丹羽の2010年の記事は、表現と構成の酷似ぶりから判断して、この記事が書かれた2年以上も前、2008年7月に、アメリカの検索サイトYahoo.comのJeff Passanが、まったく同じネタである「オールスターでのイチローの試合前スピーチ」について書いた記事をパクって書いたのが明らかだからだ。

よく恥ずかしげもなく、こういう記事を掲載するものだ。

元記事のどこをどの程度パクったのかは細かい検証が必要なわけだが、少なくとも、2010年日経記事のいう「2010年オールスターで、丹羽という日本人ライターが、イチローが恒例の試合前スピーチをやったという話を、通りすがりに、デビッド・オルティーズから聞いた」という部分については、「まったく架空の話である可能性」すらあるといえる。

なぜなら、この「イチロー本人ではない他の選手から、『伝聞』で聞いた話」の「根幹部分」が、そもそも「過去の他人の書いた記事からパクっている」からだ。「伝聞記事が事実として成立するための根幹部分」が「パクリ」である以上、パクリ部分を事実のみに沿って謝罪した上で訂正し、パクリが行われた事実関係を正して襟を正すことをしない限り、記事は全体として信憑性を失う。当然のことだ。


では以下に具体的表現を採集しておこう。

まずは2010年丹羽の記事から。無駄な改行とタイトル類は省略してある。また、太字加工はブログ側添付によるもので、元記事にはない。
 13日行われたオールスターの試合後、なぜか薄暗い球場の裏通路をレッドソックスのデビッド・オルティスと並んで歩くことになった。下から見上げれば、193センチ104キロの彼の巨体は他の者を押しつぶしそうな威圧感がある。

その威圧感に圧倒されながらも、なんとか確認したかったのはオールスターのジンクスについて。イチローが出場した昨年までの過去9年、2002年の引き分けを除けばすべてア・リーグが勝利を収めてきた。それをア・リーグの選手に言わせれば、こういうことになる。

イチローが試合前にスピーチをしているからだ

始まりははっきりしないが、毎年のようにイチローを担いだのが、このオルティスだったのだという。

「イチローが、言いたいことがあるそうだ」と。

今年はどうだったのか? 足早に歩く彼に聞きたかったのはそれだけだったが、前日のホームランダービーを制した大男は白い歯を見せていった。

「今年もやったぜ。最高だったよ」

「なんと言ったのか?」との問いには、「“Bleep … bleep bleep … National League …bleeeeeeeeep … National - bleep」と、書き表すことのできないようなスラングを並べた。

ありきたりのフレーズではなく

「本当に?」と聞き返せば、「ガハハハハ」と笑っただけでイエスともノーとも言わなかったが、少なくとも、「ナ・リーグをやっつけようぜ」という、ありきたりのフレーズではなかったようだ。


では、次に、Yahoo.comのJeff Passanが、2008年に「イチローのオールスターのゲーム前に行うスピーチについて」書いた記事を引用する。

出典Ichiro's speech to All-Stars revealed - Yahoo Sports

A whisper here. A story there. Something about the greatest pregame speech since Rockne invoked the Gipper, one laced with profanity and delivered to the American League All-Stars every year.

"It's why we win," David Ortiz said.
(中略)

"That's kind of what gets you, too," Minnesota first baseman Justin Morneau said. "Hearing him say what he says. At first, I talked to him a little bit. But I didn't know he knew some of the words he knows."

The exact words are not available. Players are too busy laughing to remember them. Ichiro wouldn't dare repeat them in public. So here's the best facsimile possible.

"Bleep … bleep bleep bleep … National League … bleep … bleep … bleeeeeeeeep … National – bleep bleep bleepbleepbleep!"

"If you've never seen it, it's definitely something pretty funny," Morneau said. "It's hard to explain, the effect it has on everyone. It's such a tense environment. Everyone's a little nervous for the game, and then he comes out. He doesn't say a whole lot the whole time he's in there, and all of a sudden, the manager gets done with his speech, and he pops off."


以下に、「2010年丹羽の記事」が、構成と表現を含めて「2008年Jeff Passanの記事」からのパクリと断定する根拠をいくつか抜粋して示しておこう。
太字で示した「Bleep以下の部分」は、記事間でパクリが行われた決定的証拠である。
もっと詳しく言うなら、コミックでよくやるようにアルファベットの e を重ねて、bleeeeeeeeepと、音を伸ばすことを表現した部分の「eの数が、9つであること」まで同じだ(失笑)
また "National League" という表現の後に、"National" と省略表現をもってきた部分も、まったく同じ。開いた口がふさがらないほどのパクリぶりだ。だが、これだけでは終わらない。

くわしく読めばわかることだが、2008年Yahoo.com記事における「Bleep以下の太字部分」は、ジャスティン・モーノーのコメントについて書かれたパラグラフの中盤あたりに置かれた表現であり、筆者Jeff Passanは「Bleep以下の太字部分」を、モーノーの発言だとか、オルティーズの発言だとか、「誰が発言した言葉なのか」を明示していない
それはそうだろう。説明するまでもないことだが、この部分は「筆者Jeff Passanが選手たちから聞いたイチローのトラッシュ・トークを、もし放送コードに抵触しないように書いたとすると、これほど『ビープ音』だらけになるほど過激な内容だ」という意味で、Jeff Passanが、「誰がリークしたのか」については曖昧にボカしつつ、ジョークに逃げている部分なのだから、当然だ。
その「2008年製造のジョーク」が、どこを、どういう経緯を経ると、「2010年にデビッド・オルティーズ本人から聞いた発言を、曖昧にボカした表現」になるというのか。しかも「単語の選択までそっくり」に(笑) やることがあまりに安易すぎる。

丹羽は前振り部分で、「イチローの試合前スピーチとア・リーグのオールスター連勝をリンクさせる発言をした人物」について、「ア・リーグの選手に言わせれば」と、その発言をしたのが誰なのかについて「具体的に指摘するのをわざと避ける」奇妙な表現をとっている。
かたや、その2年前、2008年のJeff Passan記事では、「オルティーズの発言」であることが「明記」されている。

オルティーズが「オールスターでア・リーグは連勝できてるのは、イチローの試合前スピーチがあるからさ」と語ったコメントは、2008年には全米メディアで記事化されていることでわかるように、2000年代終盤には日米問わず多くの人が知っていた。
もう少し詳しく言うと、この発言の発信源が、ほかならぬ丹羽が取材した「はず」のオルティーズであることは、日米のイチローファン、日米のMLBファンの一部、アメリカのMLBメディアの一部においては、2010年どころか、その数年前から既に有名で、2010年時点でいえば、すっかり定着した感があった話なのだ。

それを2010年にもなってビートライターが曖昧に表現するのは、明らかにおかしい。まして「多忙なオルティーズと立ち話できるほど親しい、MLB通の人物」が、「オルティーズ本人から直接聞いたコメント」をもとに記事を書くというのに、わざわざ「ア・リーグの選手に言わせれば」などと「名前をボカして書く」こと、そのこと自体が、辻褄が合わなさ過ぎる。(もっといえば、イチロー本人に『今年はスピーチ、やりましたか?』と聞けばいいだけのことなのである)

どうみても、過去に何度か記事になっている話題を、新たに「オルティーズから直接聞いたという体裁」にして、2010オールスターのネタ記事として書こうとしていて、オルティーズ本人がとっくの昔にした発言をわざわざ冒頭に引用したのでは、「実はこの話題が、とっくの昔からあったネタで、しかも既にまったく同じ内容で記事化されているネタの、『使い回し』であること」が、MLBに詳しくない人の多い経済新聞の読者にさえバレてしまう。それを無理矢理避けようと記事構成をこねくりまわした結果、「ア・リーグの選手に言わせれば」などという、「おかしな表現」が生まれたに違いない。


ここまでハッキリした「パクリ」「使い回し」をやった理由について、考えられる言い訳としては「ビープ音として表現するジョークについてはパクったが、オルティーズから聞いたことは事実だ」という程度だろう。

だが、考えてみたらいい。丹羽の記事における「Bleep以下の表現」については、ライター本人がしつこいほど「書き表すことのできないようなスラングを並べた」だの、「『本当に?』と聞き返せば、「ガハハハハ」と笑っただけでイエスともノーとも言わなかった」だのと、「自分の耳で聞いた臨場感」を徹底して主張しているのだ。そんな「レベルの低い言い訳」が通用するわけがない。


かつて、2013年8月に、このブログが『Debby Wong事件』と呼ぶ捏造事件があった。
関連記事:2013年8月31日、『Debby Wong事件』 〜スポーツ・カメラマンDebby Wongが、「まったく別の場面のイチローの写真」を「イチロー4000安打の写真」としてUSA Todayに供給し、USA Todayが記事として公開していた事件。 | Damejima's HARDBALL

当時USA Todayの契約カメラマンのひとりだったDebby Wongが、イチローの日米通算4000安打達成時に、「まったく別のゲームのイチローの写真」を、「4000安打達成時の写真」としてUSA Todayに供給し、USA Todayが記事の一部として公開した、という事件だ。
この事件は当時全米報道写真家協会で大きな議論を呼んだ。USA Todayは「捏造の事実」が明らかになるやいなや、即刻Debby Wongとの契約を打ち切った。Debby Wong事件はジャーナリズムの問題として、けして小さな事件ではなかったのである。
(ちなみに同年2013年9月には日本の共同通信社でも、ホームランのシーンを撮りそこなったカメラマンがまったく別のゲームの写真を配信するという、同種の捏造事件があった)

丹羽が2010年日本経済新聞に書いた「2010年オールスターの試合前にイチローが例年どおりスピーチをした」という話が、もし捏造ならば、Debby Wong事件に比肩する「ジャーナリズムとしての問題」である。


最後に少し手の内を明かしておこう。

2年の隔たりをもって書かれた2つの記事の「相似性」がわかったのは、今年ツイッター上でたくさんリツイートされて話題になった「イチローのスペイン語によるトラッシュトーク」について書くために資料をあさったからだ。
2つの記事は、書かれた年にそれぞれ単独に読んだ記憶はある。だが、2つの記事を並べて読んだことはこれまで一度もない。だからかつては「2つの記事の相似性」に気づかなかった。


丹羽の記述を鵜呑みにすると、イチローがオールスターに出場するようになった2000年代のMLBオールスターでは、いつそれが開始されたのかは定かではないにしても、2010年まで連綿と、「一度も途切れることなく」イチローの英語による試合前スピーチが行われたことになる。

だが、それはブログ主の「記憶」とは違う

ブログ主の「うろおぼえの記憶」によれば、たしか「イチローのこれまでの10回のオールスター出場のうち、たった一度だけ、それまで恒例といわれ続けてきた試合前スピーチを『やらなかった』シーズンがあり」、そして、その「イチローがスピーチをしなかったオールスター」は、「出場選手だけが密かに楽しんでいたイチローの試合前スピーチが、記事化されて有名になって以降、2010年までのオールスターの、どれかだ」と、長い間思ってきたのである。

ネット検索の結果を見るかぎり、2008年Jeff Passan以外にもごく少数ながらこの件について書かれた記事はあるようだが、少なくとも2008年にJeff Passanの記事がある以上、「イチローが試合前スピーチをやらなかったオールスター」が存在する可能性があるのは、おそらく「2008年、2009年、2010年のどれか」だ。
当時「え? イチロー、今年は例のスピーチ、やらなかったのかよ・・・」と非常に残念に思ったのを、よく覚えているので、単なる「記憶違い」とはまったく思わない。

この「うろおぼえ」を「事実」にして記事にとりかかるべく資料をあさったわけだが、探し方がよくないのか、確証となる資料が(そして、反証となる資料も)いまだにみつかっていない。(もちろん、「うろおぼえの記憶」が間違いだとわかったとしても、丹羽の記事がパクリをやっていることは事実なのだから、批判を取り下げたりはしないし、この記事を削除するつもりもない)


スペイン語のトラッシュトークについて楽しく書いて、笑顔で今シーズンの出来事を振り返るつもりが、こういう硬いことを書かざるをえないハメになった。精神的に大変にくたびれる作業だが、まぁ、しかたない。
従軍慰安婦問題についての捏造記事を数十年にもわたって「事実」と主張し続けて国益を大きく損なってきたのは朝日新聞はじめとする新聞ジャーナリズムだが、丹羽の2010年記事の内容が本物であるかどうかは、スポーツ・ジャーナリズムがジャーナリズムとして成立するために、Debby Wong事件同様の、大事な問題だと思っている。

というのも、2010年の丹羽の記事が扱っているのは、他に類似資料、比較資料が少ない話題だからだ。もし放置すれば、後世のファンやスポーツ史研究にとっての「根底資料」のひとつになりかねない。ならば事実が曖昧なまま、ほっておくことはできない。




November 03, 2014

オクタゴンのアラン・ニーロが代理人をつとめるジョン・マドンの電撃的なカブス監督就任に浮上している「タンパリング疑惑」について、MLBの内部動向に地球上で最も詳しいはずのFoxケン・ローゼンタールはたくさんの皮肉と溜息とともに、こんなことを書いている。彼のこういう落胆したトーンをみるのは、ライアン・ブラウンのドーピング記事以来だ。
Yeah, it’s a little dirty. Baseball is a little dirty. Life is a little dirty.(中略)
The Rays probably are right. The people bothered by Maddon’s conduct definitely are right. But while I have sympathy for both the Rays and Renteria, this is the way baseball operates. Actually, it’s the way most large businesses operate. The end justifies the means, however unseemly those means might be.
野球には少しだけ汚れた部分があり、それは人生にもあるが、これはちょっとダーティーだ。(中略)
レイズはたぶん正しい。マドンの契約で迷惑こうむった人々も、当然正しい。しかしながら、レイズと(カブスを首になった)レンテリアに同情を禁じえない一方で、これが野球の仕事というものだ、とも思う。実際それは大半のビッグビジネスのやり方でもある。達成した結果がその手段を正当化するとはいうものの、その手段とやらの見苦しさときたら。
So, does this Joe Maddon-to-Cubs deal feel icky? Deal with it | FOX Sports

奥歯にモノがはさまったような遠回しなコメントだ(苦笑)結局のところ、ローゼンタールが「アラン・ニーロのいつものやり方」を批判しているのか、ビジネスではよくある話と追認しているのか、はっきりしない。たぶん彼自身にもわからないのだろう。

だが、それより門外漢にとって大事なことは、MLB最大の事情通の彼が、この件の存在を認め、おおやけに記事にした、という事実だ。
例えば彼は「城島問題」についても、日本ではその存在すら「ないもの」とまだフタされていた時点でも、それを確証させるだけの取材も加えた上で批判記事を書いた。また、2011年にチーム内で苦しい立場に置かれて移籍すべきかどうか悩むマイケル・ヤングの本音を引き出す記事を書いたのも、ローゼンタールだ。他の記者とは情報の精度が違う。
参考記事:2008年6月17日、FOXローゼンタールは城島をオーナーだけのご贔屓捕手と皮肉った。 | Damejima's HARDBALL
参考記事:2011年2月25日、エイドリアン・ベルトレの怪我で、ますますこじれるマイケル・ヤングの移籍問題。 | Damejima's HARDBALL

つまり、ローゼンタールの日頃の情報の正確さ、速さから判断する限り、
カブス監督就任におけるジョン・マドンのタンパリングは「ほぼ存在する」、「クロと推定される」ということだ。

この件、報道しているのはなにもローゼンタールだけではない。他にも、CBS、Hardball Talk、スポーツイラストレイテッド、ESPNといった、MLBに関わるナショナル・メディアの大半がこの件について記事やツイートを書いていて、報道レンジは思ったよりはるかに広く、単なるゴシップという域を越えている。このことも、この件が「クロ」であるという推定に確かさを与える根拠だ。
Joe Maddon's agent denies tampering charges in jump from Rays to Cubs - CBSSports.com
Rays considering filing tampering charges against Cubs for Joe Maddon situation | HardballTalk
Joe Maddon hired as Chicago Cubs manager, Tampa Bay Rays may file tampering charges - MLB - SI.com
追記:MLBがカブスのタンパリング疑惑を調査 via NY Post MLB probing Cubs for tampering with Maddon | New York Post

代理人アラン・ニーロ、タンパリングとくれば、当然、2009年のダメ捕手城島と阪神の契約を思い出さないわけにはいかない。

当時オリックス監督だった元阪神監督の岡田彰布氏が、移籍先がまだ誰にも見当がつかなかった時点でいきなり「行き先を知っている」とコメントしたのには、びっくりしたものだ。
彼は「何日から話し合いになるという話じゃない。その前に話しとったんやろ!何年か前に、そんな話を聞いている。(オレも)阪神におったわけやから」と語ったが、城島の移籍先はその後「岡田発言どおりの阪神」に決まり、移籍交渉の「タイミング」自体が、タンパリングそのもの、つまり、城島の自主的なマリナーズ退団以前から交渉が行われていたことは決定的になった。
参考記事:2009年10月27日(日本時間)、まさにスポニチ「事前」報道と岡田氏の指摘どおり、城島、阪神入団決定。 | Damejima's HARDBALL

この件がタンパリングとして事件化しなかったのは、マリナーズ自身が城島退団を望んでいたためMLB機構に提訴しなかったからに過ぎない。タンパリングはルール上、元の所属球団が提訴しないかぎり、事件化に至らない。(タンパリングについての野球協約は、2008年以前と2009年以降で大きく異なる。下記のリンク先記事での解説を参照のこと)
参考記事:2009年10月27日、元阪神監督岡田氏の指摘する「城島事前交渉契約疑惑」簡単まとめ(結果:まさにスポニチの「事前」報道と岡田氏の指摘どおり、城島、阪神に入団決定) | Damejima's HARDBALL


アラン・ニーロの所属するオクタゴン(彼がベースボール部門の責任者)は、2000年代以降シアトル・マリナーズに数多くの契約選手を送りこんできた。
代表格はフェリックス・ヘルナンデスで、他に、ランディ・ジョンソンのトレードでシアトルに入団したカルロス・ギーエン (1998-2003)、城島(2006-2009)、現ヤクルトのバレンティン (2007-2009)、ズレンシックのお気に入りのフランクリン・グティエレス(2008〜)、ダグ・フィスターの安売りトレードでデトロイトに行ったデビッド・ポーリー(2010-2011)、城島の後釜捕手のひとりジョシュ・バード(2010-2011)などがいる。(近年ではハンベルト・キンテーロもオクタゴン。彼も捕手)
日本人にも契約選手が多い。「阪神関連」だけでも、城島以外に、元カブスで現阪神の福留、カブス藤川球児の後釜クローザーとして阪神に入団した小林宏之。他に現カブスの和田毅もオクタゴン。福盛、田口、建山など多数。

アラン・ニーロの、シアトル、カブス、阪神をつなぐ「不可思議なライン」には、なにやらよくわからない「繋がり」がありそうにはみえる。(そういう意味でいうと、和田毅も日本復帰後は阪神入団が「暗黙の規定路線」かもしれない)
かつてボストンのジャスティン・ペドロイア、ジョン・レスター(現在はオークランド)もかつてはオクタゴンを代理人にしていたが、理由はまったくわからないが、テオ・エプスタインがカブスに電撃的に去った後、代理人はACESに変更されている。
そういうところから、ニーロの「商売のやり方」は、代理人とチームというパブリックなものより、言いたいことはわかると思うが、ニーロとGM個人との「濃密な関係」からくるものかもしれないのだ。


いずれにせよ、タンパベイ・レイズがジョン・マドンの件をMLB機構に提訴して訴えが認められた場合、カブス側が人的補償をすることになる公算が高い。ジョン・マドンの損失にみあった「タイプAの選手」がひとり、カブスからレイズに移籍することになるだろう。

November 01, 2014

2014シーズンのMLBアンパイアの「判定の正確さ」について、こんなランキングがあった。
引用元:Umpire Auditor - Businessweek

ヒトをランク付けしておいて、何を基準にランキング化したのか、説明がサイト内にみつからないのは、片手落ちというか、無礼きわまりない話だが、correct call%と表現しているところをみると、おそらく「ストライク・ボールの判定の正確さ」で並べたのだろう。
後で説明するが、このランキングにはちょっと「眉唾な部分」があって、すぐに鵜呑みにしてはいけない。だが、それなりに面白いのは確かだ。アンパイアの年齢に注目して読んでもらいたい。

左から、名前correct call%年齢と生年
2014 MLB umpire accuracy ranking best 10
注:2014年MLBデビューのHal Gibson 靴了駑舛ネット上に乏しく、生年が調査できなかった。

2014 MLB umpire accuracy ranking worst 10

ベストアンパイア10人のうち、
CB Backnor(50代)を除いた全員が30代40代

ワーストアンパイア10人のうち、
Doug Eddings(40代)を除いた全員が50代60代

MLB機構は、50代以上のアンパイアに「老眼鏡を買うための補助金」を出すことを検討すべきかもしれない(笑)
MLBでは、アンパイアもプレーヤーと同じで、ロスター、DLという言い方をするわけだが、上位10位までに入ったアンパイアのほとんどが、つい最近マイナーからメジャーのロスターに採用されたばかりのアンパイア、あるいは、DL中のMLBアンパイアの補充のため臨時にAAAから上がってきたアンパイア、もしくは比較的若いMLBアンパイアで占められている。


データ元のUmpire Auditorにはなんの解説もないのだが、ブログ主は「年齢の高いアンパイアほどパーセンテージが低くなっているのには、以下のような明確な理由があると推測した。
年齢の高いMLBアンパイアは「そのアンパイア独自のストライクゾーン」をもっていることが非常に多い。そのため、ルールブック上のストライクゾーンをもとに計測すると、年齢層の高いアンパイアほど、より多くの誤判定をしているかのような結果が出てしまう。

その一方で、臨時雇いの若いアンパイア、マイナーから昇格したばかりの若い新人アンパイアは、自分のスタイルを貫くことより、律儀にルールブックどおり判定することを選ぶ傾向があるのではないか。

例えば、Mike Wintersは1958年生まれの55歳、ヴェテランのひとりだが、彼のストライクゾーンはルールブックより「横長」にできているといわれている。こうした「横長のストライクゾーンで判定するアンパイア」は、過去の調査結果からして、けして少なくない。
他にも、ゾーンが他のアンパイアより極端に狭い、あるいは、極端に広いアンパイアも、MLBには実際に数多く存在する。

つまり、過去のMLBにおいては「アンパイアごとのストライクゾーンの個人差」が長い間許容されてきた文化的歴史があるのだ。

関連記事:2010年10月29日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (2)2007年の調査における「ルールブックのストライクゾーン」と、「現実の判定から逆測定したストライクゾーン」の大きな落差。 | Damejima's HARDBALL
Mike Wintersの横長なストライクゾーン青色の線=Mike WIntersの横長のストライクゾーン 
赤色の線
=ルールブック上のストライクゾーン

多くのヴェテランはこうした「個人差を許容するストライクゾーン文化」のど真ん中で育ってきているから、当然、彼らの判定結果を「ぎちぎちのルールブックどおりの基準」にあてはめて測定すると、「誤判定だらけ」という結果がでるに決まっている。だから、最初に挙げた「正確さのランキング」は、必ずしもそのアンパイアの能力を表現できていない



こうした個人差を許容してきた昔ながらのMLBアンパイア文化をこれからも認めるべきかどうかという議論はともかくとして、いまのMLBアンパイアが世代交代による「若返り」の方向に向かっていることは確かだ。
(ブログ主自身は、アンパイアの個人差はあっていいと思っている。早くヴェテランをMLBから追い出せなんて、まったく思わない)

アンパイア若返りの背景には「野球のスタイルがやたらとSelectiveになって、ボールを見逃したがるバッターが増えすぎたこと」があって、引退したTim Tschidaが「1試合の球数が300にも達した結果、アンパイアの仕事が昔よりもはるかに激務になった」と語ったように、生半可な体力ではもうやっていけなくなっていることが理由のひとつとして挙げられるだろう。
参考記事:2014年10月21日、1ゲームあたり投球数が両チーム合計300球に達するSelective野球時代であっても、「球数」は単なる「負担」ではなく、「ゲーム支配力」、「精度」であり、「面白さ」ですらある。 | Damejima's HARDBALL


さて、「アンパイアの若返りによる画一化傾向」は、これからのベースボールにとって、次のようなことを意味していくのかどうか。
1)ストライクゾーンが、より「ルールブックどおりのゾーン」に近いものに修正されていく

2)ストライク・ボールがこれまで以上に正確に判定される

これらは野球のクオリティに直接関係するかもしれないトレンドであり、推移や影響を見守っていく必要があるかもしれない。

スポーツマネジメントなどを研究しているフロリダ大学のBrian M. Mills氏が2014年8月に発表した、1988年以降のMLBについてのある研究によると、プレーの判定精度がより正確になればなるほど、野球というスポーツのオフェンスのアウトプットは縮小する傾向にあるという。つまり、判定が正確になればなるほどゲームがタイトになって、得点が減る、ということだ。
This paper examines the role of changes in monitoring, technological innovation, performance standards, and collective bargaining as they relate to performance improvements among Major League Baseball umpires from 1988 through 2013. I find structural changes in performance concurrent with known bargaining struggles, and substantial improvements in performance after implementation of incentive pay and new technological monitoring and training. Not only do umpires improve performance in expected ways, but the variability in umpire performance has also decreased substantially. These changes have reduced offensive output often attributed to a crackdown on performance enhancing drug use in MLB.
出典:Expert Workers, Performance Standards, and On-the-Job Training: Evaluating Major League Baseball Umpires by Brian M. Mills :: SSRN


この研究論文はかなりの長文で、まだ全文を読んだわけではないし、確実なことはまだ何もいえない。この記事自体が「風ふけば桶屋が儲かる」的な話でないとも限らない(笑)

ただ、「アンパイアの若返り」が、仮に「ストライクゾーンのルールブック回帰」や「より正確な判定結果」をもたらすとしたら、当然ながら、MLBの野球に多少なりとも質的変化をもたらす可能性があること、そして、アンパイアの若返りやインスタント・リプレイの拡大も含めた「プレーの判定精度の画期的な向上」が、近年のMLBのオフェンス面での得点低下傾向に拍車をかける可能性もあること、それくらいの程度の話は誰もがアタマの隅に入れて、これからの野球を検討していく材料のひとつにしていいんじゃないかと思う。

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  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
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