March 2015

March 27, 2015

札幌ドームでの野球観戦中のファウルボールによる事故)について、球団などに賠償金支払いを命じる判決が地裁で下されたようだ。

この案件についての詳細な経緯がわからない以上、当ブログは無責任に責任の所在を空想で決めつけることなどできないし、また判決内容の適否についての議論も不可能だ。

この記事の意図するところは、当事者の方々それぞれの有利・不利に関与しようとするものではまったく無く、単に、MLBにおける「ファウルボール事故」は、どういう現状にあるのか?とシンプルに思った方たちに、多少なりとも「情報として数字実例」を提供することでしかない。いうまでもないが、情報の採否について個人の価値判断は含まれていない。


以下は、「ファウルボールによる怪我、foul ball injuries」について、BloombergのジャーナリストDavid Glovin2014シーズンについて2014年9月に書いた記事から要旨の一部を箇条書きに訳出したものだ。元記事の優れた数字と実例の収集に感謝を送りたい。(以下、わずらわしいので、「記事によれば」という表現は割愛させていただく。ご承知おきいただきたい)
Baseball Caught Looking as Fouls Injure 1,750 Fans a Year - Bloomberg Business



Bloombergが一部のボールパークで調査したところ、最大3160万人の観客について「球場の救護室に申告のあった怪我人が、750人 いた」ことがわかった。

この「割合」を単純に7400万人の観客全体に拡大してみると、「2014年に怪我をしたファンの数」は、「推定」で「1750人」となる。
これは「3試合に2人の割合で怪我人が出現する」という割合を意味し、また「観客100万人に対して、23.7人の怪我人が出現する」という意味でもある。

ブログ注:この記事のいう「1シーズンに、1750人」とは、あくまで「怪我人の総数の推定値」であり、「実際にMLB全試合を調査したデータ」ではないし、また、この「1750人という怪我人総数の推定」には、割合としてけして多くはないものの「ファウルボール以外による怪我」も含まれている。(例:折れたバットによる怪我、転がっていたボールで転んだこと等による怪我)

2014年のファウルボール総数7万3000のうち、「観客席に入ったファウルの数」は5万3000(72.6%)である。

ちなみにこの数値はfoulballz.comEdwin Comber氏の膨大な情報収集に基づく「実データ」の引用であり、ほんの数試合調査した結果からMLB全体の数値を推定した単なる理論値ではない。(以下、多くの情報ソースはEdwin Comberによる)

2014年の全ゲームにおける死球数はトータル1536であり、これは「怪我人総数の推計値」より少ない。

近年の重大事故においては、「子供」が被害に遭遇する例が多くみられた。
●2008年シカゴで、7歳の子供がライナーにより重度の脳浮腫
●生後18か月の乳児がシアトルの病院に入院
●2010年ブレーブスのゲームで、6歳の女の子がファウルボールで頭蓋骨折と骨の断片が脳を傷つける重傷を負い、手術
●2011年にニューヨークで、12歳の子供がファウルボールによる怪我で集中治療室に搬送
●2011年メッツのゲームで、外野席の15歳の少年がファウルで副鼻腔を骨折して手術
●2014年ブレーブスのゲームで、8歳の少年をライナーが直撃

新しいボールパークでは、より臨場感を味わいながら観戦できるように「よりフィールドに近い席」を用意していることが増えている。
前述のEdwin Comberのソースによると、新しいボールパークで観戦するファンは、「昔の球場よりも約7%ファウルゾーンに接近した位置で観戦している」らしい。

球場別にみたとき、ファウルボールによる重大事故の出現率には、「球場ごとの差異」がみられる。
また、どういう「」のファウルボールを重視して対策するかは、球場ごとに違いがある。例えばある球場では「高いフライボール」を重視しているが、別の球場では「ライナー」を重視している。

あるファウルボール事故の訴訟において原告側は、「約5万人が収容できる某球場で、「ネットで保護されている席」は2,791に過ぎないと主張した。

他のプロスポーツの重大事故としては、NHLのゲームで2002年に飛んできたパックに当たって10代のファンが亡くなっている例がある。


少なくともブログ主が言いたいのは、「野球を見に来るなら、観客は多少の危険は自己責任なのが当たり前だ」とか、「危険はすべて球場側の責任だから、球場のあらゆる場所にネットをつけておくべきだ」とかいうような、ヒステリックな議論には賛成できないということだ。
お互いが一方的で感情的な非難合戦に陥ることのないよう、より広く情報収集してあらゆる角度からこの問題を考え、柔軟な視野からこの問題に建設的な解決策を考えていってもらうことを願いたい。

March 11, 2015

ゾーン・ディフェンスのオーソリティとして知られ、殿堂入りもしているシラキュース大学のバスケットボール・コーチ、Jim BoeheimがNCAAからペナルティを受けた。(彼の名前のカタカナ表記は、ボウハイム、ベーハイム、ボーハイムなど、いくつかの綴り方がある。めんどくさいのでアルファベットにした)

Jim Boeheim

この人、アメリカ代表バスケットボールチームの「現役アシスタントコーチ」という肩書が示すとおり、バスケット界の大物のひとりであり、有名人でもあるのだが、どういうわけかこの件、他の多くの「ネガティブなスポーツニュース」と同様、日本ではほとんど報道されない。
NCAA suspends Jim Boeheim for nine games, cuts Syracuse Orange scholarships - ESPN

NCAAによるペナルティの中身はこんな感じだ。
●Boeheimの9ゲームの出場停止
●シラキュース大学のスポーツ奨学金を12削減
●108勝の勝利記録の抹消
(=2004-07と2010-12シーズンのバスケットボールと、2004年、2005年、2006年のフットボールが含まれる)

※上記に加えて、大学側の自主的判断でACC(Atlantic Coast Conference)トーナメントを含むポストシーズン出場を辞退することになった

けっこう重いペナルティだと思う。なんせBoeheimはNCAAバスケットの最多勝記録を持っているヘッドコーチなのだ、108もの勝利をチャラにされる処罰の重さはけして軽くない。(つまり、Boeheimとシラキュース大学が非常に重い処罰を受けなければならないだけの「重い違反を犯してきた」という意味)
また奨学金削減にしても、当然来期以降のシラキュースのリクルーティングに直接影響するわけで、チーム力そのものの低下につながるのは間違いない。

NCAAが問題にした「シラキュース大学のスポーツ選手の度重なる違反」とはどのようなものか。シラキュース大学が2001年に遡って行った「自己申告」によれば、以下のようなものらしい。
学業における不正行為
過剰な利益供与
ドーピング検査ポリシーの順守違反
許容されないレベルの援助行為
学業における許されざる援助行為

なにやら奥歯にモノがはさまったような、遠回しな言葉ばかり並んでいてわかりにくい。要するに、学業面ではテストで「ゲタ」をはかせてやり、レポート丸写しやカンニングのような不正行為も認めてやり、ドーピング検査は適当にスルーしてきたばかりか、かなりの金額の「お小遣い」や「裏金」も渡していた、というようなことだろう。

ニューヨーク州のこの私立大学は、卒業生から有名人をリストアップしているだけでこの記事が終わってしまうような有名校だが、なんとも三流なことをやってのけたものだ。(というか、シラキュースって「その程度」だったんだなと思う)


それにしても、あのシラキュースですら、スポーツさえやっていれば、卒業させてくれるどころか、裏金までくれるなんて事実が、スポーツファンとして残念でないわけがない。

というのは、『父親とベースボール』というシリーズで書いたように、MLBでアフリカ系アメリカ人プレーヤーの数が目に見えて減ってきていることの社会背景のひとつに、「野球での奨学金数が減らされている」という問題があるからだ。(うろ覚えだが、たしか野球の奨学金数は「11」だったように記憶している。これではスタメン9人と控え先発投手くらいしか奨学金がもらえない)

なぜアメリカで「野球で奨学金をもらえる人数が減らされた」のかは、まだ十分調べてないのでわからないのだが、少なくとも言えるのは、もしバスケットやフットボールなどのほうが「現在では奨学金がもらいやすいスポーツ」ならば、そちらに優秀な人材が流れてしまうのは当然だ、ということだ。


そうした状況がある中での、「シラキュース大学事件」である。
そんな不正を、シラキュースのバスケットですらやってるのか。それなら、野球の奨学金の数を元に戻せ」と、ついつい大きな声で言いたくなる。

March 08, 2015

ひさびさ、人の言葉を読んでハタと膝を打った。
(将棋というボードゲームの歴史をほとんど知らないのだが、なんでも「二歩」が「即時負けのペナルティ行為」になったのは、最初からそうだったわけではなく、江戸時代にできた「新ルール」なんだそうだ)

某巨大掲示板における「ID:Vh3mh2bH0」氏のオリジナル発言
ルールがあってゲームが生まれるのではなく
ゲームによってルールが定まる

【将棋】橋本崇載八段、まさかの「二歩」反則負け-NHK杯©2ch.net

拍手。天晴れ。座布団50枚。
そうなんだよ。それ。

この言葉、野球だけでなく、モノを考えたり分析したりする上で「大事な原則とは何か」を教えてくれる。


MLBの初期、例えば「フォア・ボール」が「9ボール」だったように、初期のルールには今と大きく違う部分がいくつかあった。だが、多くの人が野球に関わるうち、だんだんと整理・変更され、今のようなルールになっていった。

つまり野球でも、「最初にルールを決め、それから野球というゲームが開始されたわけではない」のであって、あくまで野球というゲームそのものの発展につれて、ルールが定まっていったのだ。


新しいMLBコミッショナー、ロブ・マンフレッドは今、「バッターは打席を外すな」などというゲーム時間短縮のための新ルール(通称「ペースルール」)をいくつか作ろうとしているわけだが、彼のやろうとしていることの基本発想はまさに「ルールによってゲームを変化させていこうとする発想」そのものであって、けして「ゲームがルールを定めていく発想」ではないと思う。


朝日新聞は従軍慰安婦問題に際して「ジャーナリズムという名目のもと、30年間もの長きにわたって、政権批判のためと称して、事実無根の記事を掲載し、さらにそれを元に『日本人はこの事実を反省せよ』と強硬に言い張り続け」、外部からその間違ったプロパガンダ行為の根本的な誤りを指摘・批判されると「批判側の広告を黒く塗りつぶし、他者の言論の自由をチカラづくで奪ってみせた」ことで「自己崩壊した」だけでなく、「ジャーナリズム全体の社会的信頼性そのものにも致死量以上の打撃を与えた」。(もちろん彼ら自身は自己の過失の重さをいまだに理解していない)

この朝日新聞の例でもわかるように、現代社会において「目的は手段を正当化したりはしない」のである。このことは、今の時代、たいへん重要な原則だ。いいかえると「自分が正義だと信じる『目的』さえあれば、『手段』も正義として広く認められる」わけではないのだ。


と、いうわけで、
ロブ・マンフレッドにはこの言葉を贈りたい。

ルールがゲームを産むのではない。
ゲームがルールを定めるのだ。


March 01, 2015

MLB.comのTracy Ringolsbyによれば、2015年は、1995年に野茂英雄がMLBデビューして以来、はじめての「新たにMLBデビューする日本人選手がいない年」なんだそうだ。

正直、言われるまで気がつかなかった(笑)

Now, Major League Baseball has opened Spring Training without a newcomer from Japan. For the first time since Hideo Nomo debuted with the Dodgers in 1995, there will be no Japanese rookies in the big leagues.
MLB without a Japanese rookie in 2015 | MLB.com


MLBに日本人プレーヤーがいるのが当たり前になった時代は、イチローによって築かれた。確かに時代のドアを開いたのは野茂さんだが、時代を「築いた」といえるのは、イチローだ。イチローは、野茂さんが開いたドアに入っていって、「暖炉の前の特等席」にドッカリ座ったのである。

イチローの大きな成功をみて、投手だけでなく野手も数多くMLBにやってくるようになったことで、日本人にとってのMLBが「身近なもの」になったが、イチロー以降、野手はほとんど成功していない。


日本人投手は成功している、
という話もある。

だが、「契約の大きさ」と「成功の大きさ」は必ずしも比例しない。いくら松阪、ダルビッシュ、田中将大など先発投手の契約が長期の大型契約だからといって、彼らのMLBにおける成績が、その金額に見合うものかどうかは、まだまだ未知数だ。


こうして考えてみると、MLBにイチローがいるか、いないかで、日本人にとってのMLBのイメージは大きく違ってくる。



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  • 2014年10月31日、PARADE !
  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
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  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
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