February 2017

February 05, 2017

前の記事で、「ホームランバッターは三振するのが当たり前」という俗説が真っ赤な嘘にすぎないこと、また、「MLBで三振数が急増した」のは2000年代以降、とりわけ「2010年代」の現象である、という主旨の記事を書いた。

以下のグラフは、X軸に選手のシーズン三振数(10三振ごとに区切り)、Y軸に年代別パーセンテージをとり、「1999年まで」、「2000年代」、「2010年代」という3つの年代が、三振数の多い打者に占める割合を調べた。
例えば、X軸の「180」という項目は「シーズン三振数180以上の選手数」を意味しており、そこを縦にみることで「3つの年代」それぞれが占めるパーセンテージ」がわかる。

三振数が多ければ多いほど、2000年代、2010年代の打者の割合が増加していることを、あらためて説明するまでもないだろう。2010年代はまだ終わってもいないにもかかわらず、この有様なのだ。2010年代がまさに「三振の時代」であることがわかると思う。

シーズン三振数年代別比較

個人についてはわかったが、では、
チーム三振数」はどうか。

結論から先にいうと、
チーム三振数も、個人の三振数とまったく同じ現象のもとにある。

例えば、「シーズン総三振数1400を越えたチームは、MLB史上、2010年代にしか存在しない」。この事実からもわかるように、個人のみならず、「2010年代は、チームという視点でみても、三振全盛時代」なのである。

シーズン1500三振以上のチーム(計5チーム)
2016年 MIL 1543(地区順位:4位) SDP 1500(同:最下位)
2015年 CHC 1518(3位)
2013年 HOU 1535(最下位)
2010年 ARI 1529(最下位)

シーズン1400三振以上のチーム(計13チーム)
2016年 MIL(4位) SDP(最下位) TBR(最下位) HOU(3位) ARI(4位) MIN(最下位)
2015年 CHC(3位)
2014年 CHC(最下位) HOU(4位) MIA(4位)
2013年 HOU(最下位) MIN(4位)
2010年 ARI(最下位)

シーズン1300三振以上のチーム(計56チーム)
注:以下の太字地区優勝チーム
2016年 MIL SDP TBR HOU ARI MIN PHI COL BAL LAD ATL
2015年 CHC HOU WSN SEA BAL SDP PIT ARI TBR
2014年 CHC HOU MIA ATL CHW BOS MIN PHI WSH
2013年 HOU MIN ATL NYM SEA PIT SDP BOS
2012年 OAK HOU PIT WSH TBR BAL
2011年 WSN SDP PIT
2010年 ARI FLA
2008年 FLA
2007年 FLA TBR
2005年 CIN
2004年 CIN MIL
2003年 CIN
2001年 MIL

シーズン1200三振以上のチーム(計163チーム)
2010年〜2016年 119チーム(約73.0%)
2000年代 39チーム
〜1999年まで 5チーム


MLBにおいて、「シーズン1200三振以上したチーム」の96%以上、「シーズン1300三振したチーム」のすべては、「2000年代以降」だ。

「シーズン1300三振以上したチーム」は、「2000年より前」にはひとつも存在しないのだが、「2010年代」ともなると、1300三振したチームが年に8チームも登場し、けして珍しいものではなくなってしまっている。

また過去にシーズン1400三振以上のチームで、地区2位以上になったチームは、ひとつもない。その一方で、なんとも奇妙なことに、2010年代にはシーズン1300三振以上していながら地区優勝したチームが、6つもある。


こうした奇妙な事実から、まだ何の根拠もないが、以下の仮説を立ててみた。

チーム三振数1300という数字は、過去においては、そういうチームがまったく存在しないほど「多すぎる三振数」であり、地区優勝などありえない数字だった。
だが、2010年代になると「三振数の基本水準」が上がり過ぎて、誰も彼もが三振ばかりする時代になってしまい、その結果、たとえ「チーム三振数が1300を越えて」も、戦力次第では地区優勝を狙うことができるようになった。

ただし、三振の世紀である可能性がある2010年代以降でも、チーム三振数が1400を越えると、さすがに地区優勝の可能性は一気に低下する。

2010年代以降、チーム三振数の「分水嶺」は、1300後半である。



総三振数が1400を越えるチームが6つも出現した2016年というシーズンは、はたしてMLBにとって「いいシーズン」であったのか。2016年という「奇妙なシーズン」の後、MLBがいったいどんな「転機」を迎えたのか

そうした問いへの「答え」は2017年以降のMLBをみてみるしかないことだが、少なくともブログ主には「2016年がいいシーズンだった」という気は、まったくしないのである。

February 02, 2017

このブログではOPSという指標がデタラメであることを繰り返し指摘してきた。期待値と率を合算する無意味な計算方法といい、四球と長打を過大評価する計算結果といい、こんなデタラメな数字でスポーツを語っていた人間は、救いようのない馬鹿である。
また、こういうデタラメな計算方式の指標の恩恵を最も受けてきたのが、アダム・ダンマーク・レイノルズのような「低打率のホームランバッター」であるという指摘もずっと続けてきた。
カテゴリー:指標のデタラメさ(OPS、SLG、パークファクターなど) 1/17ページ目 │ Damejima's HARDBALL

さらには、「四球や長打の過大評価」が、かえって近年のMLBの得点力低下をもたらしたことについても指摘してきた。
1990年代中期以降ずっと続いてきた「ホームラン偏重によって得点を得るという手法」が衰退しはじめていることの意味や、得点とホームランの相関関係における最大の問題が「ホームランの量的減少」ではなく「ホームランの著しい質的低下」であることを、人は忘れすぎている。(中略)

「ホームランバッターに高いカネさえ払っておけば、多くの得点が得られることが約束された時代」は、10数年前に終わっているわけだが、どういうわけか知らないが、「量的にも質的にも価値が低下している長打能力を過大評価し、それに高いカネを払う、わけのわからない時代」は、今なお続いている。
出典:2014年12月21日、「MLBの得点力低下をもたらした四球・長打の過大評価」原論に向けて (1)MLB25年史からわかる「2000年代以降、特に2010年代のホームランの得点効率の質的劣化」 | Damejima's HARDBALL


こうしたブログ主の立場からすれば、去年41本打ったクリス・カーターが所属球団から再契約のオファーがなかったことなど、別に不思議でもなんでもないが、こんな簡単なことすら理解できない(理解したがらない)人も、きっといまだにいるに違いない(笑)

そういう頑固で時代遅れな人のために、
ちょっとだけ資料を作っておく(笑)


クリス・カーターの2016年の成績は、160試合に出場(うち1塁手として155試合)、ホームラン41本94打点。長期休養もないし、数字だけ見るとあたかも堂々たるスラッガーのようにみえる。

ところが、だ。

クリス・カーターは他の数字が実に酷い。原因は、三振数206とか、打率.222といった、基本的な打席パフォーマンス全体の「質の悪さ」だ。そのためFangraphではwOBA.346、WAR0.9、しかなく、Baseball ReferenceでもWAR0.9しかない。
Chris Carter » Statistics » Batting | FanGraphs Baseball
Chris Carter Stats | Baseball-Reference.com


とはいえ、WAR0.9とか数字だけいわれても実感がわかない人もいるだろう。もっと具体的で、わかりやすい話をしてみる。

例えばBaseball Referenceで、ホームラン40本、OPS.850以下という検索条件で調べてみると、以下の「13人の選手」が出てくる。
(この「13人」に近年の選手がやたらと多いことを覚えておいてもらいたい。また、あえてここで「OPSというデタラメ指標」を検索条件として使用したのは、「四球と長打を過大評価するデタラメ指標で測定してさえも、救いようがないほど低い評価数値しか出ない」のが「低打率のホームランバッター」だという「事実」を理解してもらうためだ)

マーク・トランボ2016年 47本 .850 SS)
ホセ・カンセコ(1998年 46本 .836 SS)
トニー・アーマス・シニア(1984年 43本 .831 SS)
フアン・ゴンザレス(1992年 43本 .833 SS)
カーティス・グランダーソン(2012年 43本 .811)
ロッキー・コラビート(1959年 42本 .849)
ディック・スチュアート(1963年 42本 .833)
クリス・デイビス2016年 42本 .831)
アダム・ダン(2012年 41本 .800)
トニー・バティスタ(2000年 41本 .827)
クリス・カーター2016年 41本 .821)
アルバート・プーホールズ(2015年 40本 .787)
トッド・フレイザー2016年 40本 .767)
(注:SS=シルバースラッガー賞)


この「MLBはじまって以来の中身のないシーズンを記録したことのあるホームランバッター13人」に、さらに「打率.250以下」というフィルターをかけてみる。すると、以下の近年の選手ばかり、7人に絞られる。

ホセ・カンセコ(1998年 打率.237)
カーティス・グランダーソン(2012年 打率.232)
クリス・デイビス2016年 打率.247)
アダム・ダン(2012年 打率.204)
クリス・カーター2016年 打率.222)
アルバート・プーホールズ(2015年 .244)
トッド・フレイザー2016年 .225)

2016年の選手が3人もいる。どう表現すると、この「2016年のホームランバッターたちの酷さ」が表現できるだろう。

100年をこえるMLB史で、「シーズン40本以上のホームランを打ったバッター」なんてものは、「のべ300人」ほどしかいない。
その、100年間に出現した「たった300人」のうちの、「ワースト10」のほとんど全員(もちろんマーク・トランボも例外ではない)が、「2012年以降の数シーズン」、「特に2016年に集中」して出現しているわけである。
2016年に40本以上打ったバッターで、「中身がともなったスラッガー」なんてものは、守備もうまく、ルーキー三塁手としてゴールドグラブを受賞し、今年はフィールディング・バイブルまで受賞したコロラドのノーラン・アレナドしかいないのである。これは、いったいどうしたことか。

そもそも「ホームラン40本以上、シーズン200三振」なんておかしな記録は、100年以上のMLB史において、クリス・カーター以外に、クリス・デービス、マーク・レイノルズ、アダム・ダンと、「たったの4人」しかやっていない。どいつもこいつも近年の選手ばかりだ。
例えば、馬鹿ばかりがマネージメントしていた2000年代後期のシアトル・マリナーズが4番をまかせた、あの三振王リッチー・セクソン、毎日毎日三振ばかりしてファンを激怒させ続けた、あの「リッチー・セクソン」ですら、シーズン最多三振は「167」なのだ。
クリス・カーターの200を越える三振数が、いかに天井を突き抜けた数字か、わかりそうなものだ。

いわば2016年クリス・カーターは、「MLB史に残るほど酷い内容のホームランバッター」だったのであって、こんなのに再契約の高額オファーを出す球団があるとしたら、出すほうがどうかしてる。


ちなみに、こういう話をすると必ず「ホームランをたくさん打つバッターは三振が多いのなんて当たり前だ」などと、知ったかぶりにお説教したがるアホな年寄りが出現するものだ。
昔の野球マンガか、スポーツ新聞の記事か、どこでそういう間違った思い込みを吹き込まれるのか知らないが、それはハッキリいって、他人に野球についてしゃべるのを止めたほうがいいレベルの「低俗で子供じみた間違い」だ。

いい機会だから、きちんと認識をあらためたらどうか。
「ホームランバッターがやたらと三振ばかりする」のは、
昔からあったことではない。
むしろ、「つい最近に限った傾向」だ。


例えば、「シーズン200三振」という恥ずべきシーズン記録だが、過去に記録したのは、わずか「延べ9人」で、2000年代のマーク・レイノルズの2回を除き、200三振のすべては「2010年以降」に記録されているのである。(以下、「9例」とは「延べ9人」を意味する)

これを「シーズン180三振以上」とすると、どうか。過去51例が記録されているが、「2000年代以前の100年間」には、わずか6例しか記録がない一方で、残り45例すべてが「2000年代以降」であり、ことに「2010年代」が29例(約56.9%)と、半数以上が2010年代の記録で占められている。
シーズン160三振以上」と範囲を広げても事態はさほど変わらない。過去157例のうち、「2000年代以前の100年間」はわずか35例にとどまる一方、「2000年代以降」が48例、「2010年代」にいたっては74例(約47.1%)と、またもや2010年代が約半数を占めるのである。

さらに捜索の範囲を広げ、「ホームラン数30本以上で、三振180以上」としてみると、100年以上のMLB史で該当記録はたった「33例」しかいない。
そして、その「ホームラン数30本以上で、三振180以上を喫した33例」は、そのほとんどが「2000年代以降の選手」によるものだ。ジム・トーミ、ライアン・ハワード、ジャック・カスト、マーク・レイノルズ、アダム・ダン、ペドロ・アルバレス、マーク・トランボ、マイク・ナポリ、マイク・トラウト、クリス・カーター、クリス・デービス。これは、どうかしてる。

逆に、「ホームランを30本以上うちながら、三振数を150以下に抑えた」という記録は、過去に「300例」ほどある。これは、たった30例ほどしかない「30本、180三振以上」の約10倍にあたる。「ホームランバッターが三振ばかりすることが、けして当たり前だったわけではないこと」は、ほぼ動かしようのない事実だ。


最後にしつこく、もう一度まとめる

「ホームランバッターが三振が多いのは当たり前」というのは、真っ赤な嘘である。

●MLBで「三振ばかりするホームランバッター」が大量生産されだしたのは、「2000年代以降」のことであって、とりわけ「2010年代」に大量に生産されだした。彼らは、本物のスラッガーではなく、いわゆる「大型扇風機」にすぎない。


ちなみに大型扇風機が三振しやすい理由は、とっくの昔に書いた。
かつてカーティス・グランダーソンはヤンキース所属時代の終盤に「インコースのストレートを強振してホームランを打つこと」ばかり狙って打席に入っていた。
そんな「ホームランだけを狙って、特定のコースだけ、特定の球種だけを狙う、単調なバッティング」なんてものが、このスカウティング全盛の時代、長く通用するわけはない。
2012年11月2日、2012オクトーバー・ブック 「スカウティング格差」が決め手だった2012ポストシーズン。グランダーソンをホームランバッターに押し上げた「極端なストレート狙い」が通用しなくなった理由。 | Damejima's HARDBALL

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