October 2018

October 11, 2018

何度も書いているように、2010年代MLBは「三振の世紀」だ。

参考記事:2017年2月4日、「三振の世紀」到来か。2010年代MLBの意味するもの。 | Damejima's HARDBALL

参考記事:2017年11月14日、ヒューストン・レボリューション2017。 「四球偏重時代」の終焉。 | Damejima's HARDBALL



いまでは信じられないかもしれないが、2000年以前には「1年に1300三振するチーム」など、ひとつもなかった

それが2001年にミルウォーキーが初めて「1399三振」を記録して以来、2000年代に「1300三振」が毎年1〜2チームずつ出現するようになった。
これが2010年代前半になると、全体の1/4〜1/3の球団が「1300三振」するようになり、さらに2016年以降の急増で、2017年には全体の2/3が、2018年にはなんと全体の90%が「1300三振」を超えてしまい、とうとう「1300三振するのが当たり前の時代」が2010年代後半に到来してしまった。


1400三振」が初めて登場するのは2010年アリゾナだが、それでも2010年代前半は1年に1チームか2チームでしかなかった。だが2010年代後半になって激増し、今では全チームの1/3が「1400三振」するようになって、「1400三振」はもはや珍しくない。

さらに「1500三振」は、いくら「三振の世紀」2010年代とはいえ、かつては登場しても年に1チームの「例外」に過ぎなかった。だが2016年以降、複数のチームが「1500三振」するようになり、2018年に史上初めて3チームが「1500三振」を越え、「史上初の1600三振チームが登場するのは時間の問題」となっている。

1500三振以上(計10チーム)

2018年 CHW(1594) SDP(1523) PHI(1520)
2017年 MIL(1571) TBR(1538)
2016年 MIL(1543) SDP(1500)
2015年 CHC(1518)
2014年 なし
2013年 HOU(1535)
2012年 なし
2011年 なし
2010年 ARI(1529)


1400三振以上(計34チーム)
2018年 CHW SDP PHI TEX SFG ARI MIL LAD NYY BAL NYM
2017年 MIL TBR SDP TEX OAK ARI PHI BAL COL CHC
2016年 MIL SDP TBR HOU ARI MIN
2015年 CHC
2014年 CHC HOU MIA
2013年 HOU MIN
2010年 ARI


1300三振以上(計103チーム)
2018年 CHW SDP PHI TEX SFG ARI MIL LAD NYY BAL NYM COL CHC CHW NYY LAD STL MIN CIN TOR MIA OAK STL CIN DET MIN KCR LAA
2017年 MIL TBR SDP TEX OAK ARI PHI BAL COL CHC CHW NYY LAD STL MIN CIN TOR WSN DET
2016年 MIL SDP TBR HOU ARI MIN PHI COL BAL LAD ATL
2015年 CHC HOU WSN SEA BAL SDP PIT ARI TBR
2014年 CHC HOU MIA ATL CHW BOS MIN PHI WSH
2013年 HOU MIN ATL NYM SEA PIT SDP BOS
2012年 OAK HOU PIT WSH TBR BAL
2011年 WSN SDP PIT
2010年 ARI FLA
2008年 FLA
2007年 FLA TBR
2005年 CIN
2004年 CIN MIL
2003年 CIN
2001年 MIL



たぶん、世の中には三振なんかいくらしても得点できればいいのさ、などと、いまだにタカをくくっている人が数多くいると思う。

だが、2018年MLBで「最も三振数が少なかったチーム」は、最も少ない順に、CLE、HOUで、BOSが5位であることくらい覚えておいて損はない。

ちなみに今年のチーム打率は、良かった順に、BOS、CLE、CHC、TBR、ATL、COL、HOUである。この中に「ポストシーズンに行けたチーム」「勝率の高いチーム」「チーム力が回復したチーム」が何チームあるか。2010年代の中期以降に打率のいいチームが活躍する例は、カンザスシティやヒューストンのワールドシリーズ制覇など、枚挙にいとまがない。
フライボール革命などといった嘘くさい話など、どうでもいい。「打率重視」こそ真のトレンドである。



2017年の記事で、ボストンが地区優勝監督ジョン・ファレルをクビにしたことについて、こんなことを書いた。

ボストンが、地区優勝し、なおかつ2018年まで契約が残っていた監督ジョン・ファレルをあえてクビにし、ワールドシリーズを勝ったヒューストンのベンチコーチ、アレックス・コーラを監督に迎えた。
もちろん、チーム独自の個性にこだわりたがる目立ちたがりのボストンがヒューストンとまったく同じ戦術をとるとは思えないが、少なくとも、これまでボストンが長年やり続けてきた「過度なまでの待球」をバッターに強いる「出塁率重視の戦術」がピリオドを迎えたことだけは間違いないだろう。でなければ、ここまで書いてきたことでわかるように、四球を重視しない2017ヒューストンのベンチコーチを、地区優勝監督をクビにしてまでして、わざわざ監督に迎える必要がない。

2018年にボストンの打撃スタイルがどう変わるかを見ることで、2017年のヒューストン・レボリューションがどういうものだったか、逆算的に眺めることになるかもしれない。

2017年11月14日、ヒューストン・レボリューション2017。 「四球偏重時代」の終焉。 | Damejima's HARDBALL



かつてのボストンは、待球が大好きで四球数の多い、出塁率超重視のチームだったが、チーム三振数は、2013年、2014年と「1300」を越え、三振数トップから数えたほうが早い「三振の多いチーム」でもあった。四球数の多さは、けして三振数激減を意味しないのである。

だが、今年のボストンの打撃スタイルは、ホームラン数こそ全体9位だが、ダスティン・ペドロイア不在にもかかわらず、打点、得点でMLBトップ、打率でもMLBトップ。そして三振数1253は全体5位の「少なさ」と、中身が濃い。

ボストンが、思い切りのいい監督交代で、チーム内のケミストリーとオフェンスの質を劇的に変え、「より多くのヒット、より多くのタイムリーを打っていくことで、着実に打点を稼ぐヒューストン流に転向した」ことは明らかだ。


いま思うに、ジム・リーランド時代のデトロイトがシャーザー、バーランダー、ポーセロと、3人ものサイ・ヤング級投手を揃え、ミゲル・カブレラやビクター・マルチネスなど強打者をそろえても、ワールドシリーズを勝てなかったのは、たとえ個人それぞれに類まれな才能があっても、「チームの強さ」がそれを支えなければ、ワールドシリーズを勝てないという、単純な理屈だった。

そのことは、2018年ボストンの「変わり身の成功」が証明している。




October 08, 2018

2000年以降のMLBとDETの観客動員数の相関
赤:MLB 青:DET

2000年以降のMLBで「観客動員数が激減したシーズン」が、2002、2009、2018年と、3シーズンあり、そのいずれのシーズンにおいてもデトロイトの観客動員が激減していること、デトロイトの観客動員数そのものがMLB全体の観客動員の動向と連動する傾向にあることを示した。
2018年10月4日、2004年以降ではじめて観客動員数が7000万人を割り込んだMLB。観客動員数の動向を如実に反映する「マーカー球団」を発見。 | Damejima's HARDBALL


近年の「激減局面」において、「デトロイトの観客動員数が、MLBの観客の連動している」ことは、理由はまだ判然としないものの、ほぼ疑いない。


では、「急増局面」では、どうだろう。

2000年以降、観客動員数が前年に比べて急増したシーズンは、なんといっても「2004年〜2007年」が筆頭で、あとは2012年に小さく上昇した程度だ。以下に2004年〜2007年に「年間40万人以上、観客動員数が増加した球団」とその年の地区順位を列挙してみる。

2004
PHI(2位) SDP(3位) HOU(2位 NLCS進出) DET(4位) FLA(3位 前年WS制覇) TEX(3位)

2005
WSN(5位) NYM(3位) STL(優勝 NLCS進出) CHW(優勝 WS制覇)

2006
CHW(3位 前年WS制覇) DET(2位、WS進出) NYM(優勝 NLCS進出)

2007
MIL(2位) NYM(2位) DET(2位) PHI(優勝 NLDS進出)

かなりの数の地区順位「2位」があるのが、ちょっと面白い。スポーツファンが優勝に興奮するのは当然の話だが、ある意味、「ドラマチックな2位」にこそ興奮する、そういうものなのかもしれない(笑)


「急増」リストに複数回出現するチームは4つ(DET、NYM、CHW、PHI)あるが、3回以上出現するチームは、DETNYMの、2つだけしかない。
結局、「激減」「急増」の両面みて、そのほとんどに登場するチームは、30球団のうち「デトロイト・タイガースだけに限定される」。
デトロイト・タイガースが、MLB全体の観客動員増減に非常に連動しやすい球団、マーカーであることは、もはや疑いようがない。



さて、2000年以降の観客数の激減と急増、両局面を見たことで、もうひとつわかることがある。

デトロイトのような「激減と急増を繰り返している球団」はむしろ例外で、ほとんどのケースでは、「激減をたびたび経験した球団」と、「急増をたびたび経験した球団」とが異なっていることだ。

減少 PIT、CLE、TEX、MIA(FLA)、BAL
増加 NYM、CHW、PHI


「観客動員が急激に増減する要因」は、大小いろいろ考えられる。
ネガティブ面では、チーム低迷、人気選手の移籍や引退、ファイヤーセールなど。ポジティブ面では、前年のワールドシリーズ制覇で翌年の期待が高まったことや、地区での好成績、ポストシーズン進出など。


では、「チーム成績がすべて」か。

もしそうなら、大半のチームがデトロイトと同じように「チーム低迷時の激減」と「好調時の急増」を繰り返していなくては、辻褄があわない。
だが、事実は違う。チーム好調時の観客急増はよくあるが、低迷時の観客激減をすべてのチームが経験するわけではない


リスト全体を何度となく眺めていて、単なる直感ではあるが、こんなふうに思えた。

メインの仮説

MLB球団の観客動員の「特性」は、実はチームごとに異なっており
以下の4種類くらいに大別される

熱しやすく、冷めやすい 例 DET
熱しにくく、冷めやすい 例 PIT CLE TEX MIA BAL
----------------------------------
熱しやすく、冷めにくい 例 NYM CHW PHI
良くも悪くも大きな変化はしない 大都市の人気球団

おしなべて、中小都市にあるチームのファンは「冷めやすい」。対して、シカゴ、ニューヨーク、ロサンゼルスなど大都市マーケットのチームはおおむね「冷めにくい」。


もし上に挙げた「仮説」が正しいとしたら、
次に、以下のようなことが連想される。

メイン仮説からの敷衍

中小マーケットのチームは「冷めやすい」。一度観客を手離してしまうと、再び観客を取り戻すのに時間がかかり、容易ではない
対して、大都市マーケットのチームの観客動員は、固定観客が多数いるため、「冷えにくい」。したがって、チーム成績による集客への影響が常に小さくおさまる。




ここにきてようやく、「2018年の観客動員が7000万人をひさしぶりに割り込んだ理由」に「仮説」を立てられそうだ。

2018年のMLBマーケットが縮小した理由

ただでさえ「冷えやすい」中小マーケットの多くが、チーム低迷と、チームの核の人気選手の大都市チームへの放出などによって、「急激に冷やされた」ことによると、推定される。


2018年の大都市チームの概況

2018年はドジャース、ボストン、ヤンキース、カブスなど、「大都市チーム」が同時にポストシーズン進出し、チーム補強のために過度ともいえる「選手狩り」を行った。(例 マッカチェン、マチャド、スタントン、JDマルチネス、ハップ、ハメルズ、ランス・リン、キンズラーなど多数)

だが、大都市チームの集客力は常に上限付近にある。単年のポストシーズン進出や、有名選手の集結程度で、大都市チームの観客動員が激増することはない。

2018年の中小マーケットの概況

シーズン100敗チームが続出する中、かなりの数のチームが一斉に低迷を迎えてしまい、中小マーケットは一斉に冷えこんだ。

「中小マーケットの人気選手」はもともと限られた数しかいないわけだが、これが一斉に大都市チームに移動し、中小マーケットはより冷却されることになった。


このブログでは、マイアミGMに就任したデレク・ジーターがチームを無意味に解体したことをたびたび批判してきたわけだが、その判断にはやはり間違いがなかった。マイアミに本当に足りなかったのは、無駄な再建ではなく、「先発投手陣を買い集める資金」だ。


大規模なリビルドやファイヤーセールがファン心理に与える影響が、大都市マーケットと、冷えやすい中小マーケットとで、まるで違うインパクトをもつことを、多くの人が忘れすぎている。

大都市チームは「リビルド速度」が早い。
それは、豊富な資金力によって、チームに「強い回復力」が備わっているからだ。ファンのマインドも、選手の回転に慣れているから、リビルドの影響が小さくて済む。

だが、資金に限度がある中小マーケットでは、有力選手を簡単には買い戻せない。そのため若手を育てる戦略をとるわけだが、それには一定の時間がかかる。また、育った選手への愛着も強い。
中小マーケットでは、大規模なリビルドやファイヤーセールで一度マーケットを「冷却」してしまうと、チーム再建に時間がかかるだけでなく、ファンのマインドを再び温めなおしてボールパークに呼び戻すのにも、かなりの時間がかかるのである。


上に書いたような「規模の違いによるビヘイビアの違い」はなにも今年に限ったことではなく、昔からあったことだが、問題なのは、MLBマーケット全体の拡大のキーポイントが、飽和状態にある大都市マーケットにあるのではなく、むしろ「中小マーケットを過度に冷却しすぎないこと」にあることを忘れて、大都市マーケットにばかり熱中したがる視野の狭い人間たちが今のMLBやマスメディアを主導している点だ。

ロブ・マンフレッドは、大都市に選手が集結して、バットをやたらと振り回して三振とホームランを繰り返すような「雑なマーケティング」を誘導して、中小マーケットを冷やしたことを、心から反省すべきだ。

October 07, 2018

CLE対HOUのALDS Game 2がたいへん面白かった。


あとからデータだけを見た人は、12三振を奪ったヒューストン先発ゲリット・コールのピッチングのほうが圧倒的で、6安打を打たれたクリーブランドのカラスコはヨレヨレだった、と思うかもしれない。

だが、実際の「5回までの展開」はまったく異なる。

例えば、5回までの投球数

毎回のようにシングルヒットを打たれるカラスコのほうが、むしろ三振をバカみたいにとったゲリット・コールよりたしか「15球ほど少ない」。

これは、ストライクを積極的に投げて三振をとろうとするコールと対照的に、この日のカラスコは打ち気にはやるヒューストンに、ボール球から入って、ヒットにできない球を振らせ、結果的に球数をセーブするピッチングができていたからだ。(ちなみに、カラスコは2017年に226三振を記録しているように、三振をとれないピッチャーではまったくない。なので、球威がないからこういう投球をしたわけではない)


5回までの四球数が両軍ゼロだったことをみても、同じことがいえる。

三振の山を築いたクリーブランドが四球どころではなかったのに対し、打ち気にはやるヒューストンが早いカウントからボール球をひっかけてカラスコを助けたために、結果的に、両方のチームに「四球を選ぶ余裕」がなかった。

ゲリット・コールが相手をチカラでねじふせたて圧倒したのに対して、カラスコは相手のはやる気持ちを利用したのである。



5回が終わっても、ヒューストンは、毎回のようにシングルヒットが出るものの、「ランナーを貯める場面」がまったくなく、長打も出ないまま、無得点に終わっていた。
他方、クリーブランドは、たった2安打で三振の山。だが3回、フランシスコ・リンドアが偶発的なソロホームランを打ち、この1点のリードを死守する。

投球数は、カラスコが60ちょっとで、コールが80球に近づきつつあり、5回終了時点では、圧巻のピッチングをしたゲリット・コールがむしろ先に降板し、ヒットを打たれ続けたカラスコが無失点のまま7回まで投げてしまうという逆転現象が起こる雰囲気にあった。


この日のカラスコのピッチングが最も効果的だったのは、次のシーン。

3回表に超劣勢のクリーブランドが1点勝ち越して、その裏にすぐヒューストンは1死1、3塁と、絶好のチャンスを作った。打席には、今年膝痛に悩まされたホセ・アルテューべ

ここは外野フライでも、ボテボテの内野ゴロでも、同点になるはずの場面だが、アルテューべは最初の2つのボール球に手を出して追い込まれ、4球目のチェンジアップを引っかけてサードゴロ、ダブルプレーと最悪の展開。ヒューストンにとって、試合の流れは一気に悪くなった。

2018ALDS Game 2 CLE vs HOU 3rd inn. Altuve DP初球 Slider Foul
2球目 Changeup Foul Bant
3球目 4seam Ball
4球目 Changeup 併殺

ソース:Indians vs. Astros Play By Play | 10/07/18



流れが変わるのは、6回裏だ。

先頭アルテューべがまたもやアウトコースの変化球に手を出し続けた挙げ句、サード前にゆるいゴロ。これが内野安打になって、打者はアレックス・ブレグマン

ここまでのパターンなら、ここでブレグマンがカラスコのボール球に我慢ができずに手を出して併殺とか、ランナーが入れ替わるだけの凡打に終わるところだっただろうが、ブレグマンは最初の2球のボールを見逃したのである。この「見逃し」が試合を変えた。

2018ALDS Game 2 CLE vs HOU 6th inn. Bregman walk初球 2seam Ball
2球目 changeup Ball
3球目 4seam Called Strike
4球目 Slider Foul
5球目 Slider Ball
6球目 Slider Foul
7球目 4seam walk



このブレグマンの打席を少し詳しく見てみる。

初球。
右打者ブレグマンのインコースに2シーム。あとの球がすべてアウトコースだから、外で勝負することを最初から決めていて、初球だけ故意にインコースをえぐったことは明らか。

2球目。
初球が見せ球だったから、ここは当然ながら外の球。この日のカラスコの全体像からいえば、このチェンジアップは、ある意味で勝負球。3回にアルテューべを併殺打に仕留めたのも、この球。もしブレグマンがひっかけて内野ゴロ、併殺なら、この日のヒューストンの勝ちはなかった。
だが、ブレグマンは振らない。ブレグマン、かなり優勢。

3球目。
無死1塁で、カウント2-0。カラスコはどうしてもストライクが欲しい。高めに4シーム。ブレグマンは自重。この打席の7球のうち、ハッキリとしたストライクはこの1球のみ。

4球目〜6球目
カウント2-1から、3球つづけて外のスライダー。カラスコにしてみれば、5球目か6球目をひっかけて内野ゴロがベストだったが、そうはならなかった。フルカウントが続く。

7球目。
歩かせていい場面ではない。だがハッキリしたボール球が行って、フォアボール。


次打者グリエルがライナーを打ったのを見て、フランコーナは、カラスコをミラーにスイッチする。

だが、それこそがヒューストンにとって「最高の結果」ではあった。「打ち崩せそうなのに、打ち崩せないカラスコ」を、まだ100球いってもいないのに引きずり下せたからだ。ブレグマンの四球の功績である。ブレグマンは7回にもこの試合を決定づけるソロホームランを打っている。
マス・メディアはとかく2点タイムリーを打ったゴンザレスに注目するだろうが、実際にゲームを動かしたのはブレグマンだ。


試合後、なぜカラスコをあの場面でかえたのか、テリー・フランコーナに質問が殺到した。フランコーナは意外にも「4回とか、もっと早いイニングでかえようか、とも思っていた」らしい。
フランコーナにとって、この日のカラスコのピッチングが「意図的なボール球で、かわすピッチング」ではなく、単に「ハラハラするピッチング」に見えていたとしたら、それは監督としてどうなんだ、という気がする。

October 04, 2018

2000年以降のMLB観客動員数


2018シーズンのMLB総観客動員数が、2004年以来はじめて「7000万人」を割り込んだ
だが、このことはシーズン当初から予想されてはいた。というのも、シーズン最初の2ヶ月に天候があまりに悪すぎたことが、年間観客動員数に響くことが当時から懸念されていたからだ。


ただ、2018年5月にUSA Todayに掲載されたAP通信の記事は、観客動員数の減少がなにも天候のせいばかりでなく、「三振の激増も原因なのではないか」と、コミッショナーロブ・マンフレッドに疑念をぶつけている。
Attendance drop, strikeout rise has MLB concerned

マンフレッドは「シーズンは始まったばかり。あわててもしょうがない」と、例によって毒にも薬にもならない返事でお茶を濁したのだが、シーズンが終わってみると、観客動員数はAP通信が懸念したとおり、原因が「三振」かどうかはともかく、2018年は最も観客動員数が劇的に落ち込んだシーズンのひとつになった。


いち早く「MLBの三振激増」に気づいたブログ主の立場からいうと、USA Todayのようなマス・メディアが「三振増加のネガティブな影響」に着目したのはなかなか面白いことではあるのだが、少し仔細に点検してみると、ちょっと「違う話」がみえてくる。

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まず、どのくらい観客数が減ると「大幅な減少」といえるかを決めなくてはならない。


もちろん明確な基準などない。だが、たとえドジャースだろうと、どこだろうと、「20万人くらいの増減」は、どんな人気球団でもあることを考えると「1チームあたり、20万人」の増減では、基準値=マーカーにはならない。

今年は82試合ホームゲームを行った例外的なチームがあったが、通常のMLBのホームゲームは「81試合」なので、「1試合につき5000人観客が減少」すると、「年間約40万人の観客が減少」することになる。
この20年くらいでみると、この「40万人の減少」は、出現しても多くて1年に3チームほどが上限で、まったく出現しないシーズンも、数シーズンある。

だから「1チームあたり40万人」という数字なら、マーカーになりうる。


そこで、2000年以降の「40万人の減少チーム」を調べてみると、2000年以降に、8球団とか9球団がこの「40万人以上の観客減少」を同時に経験したシーズンが3シーズンあることがわかる。
「2002年、2009年、2018年」だ。

いいかえると、2000年以降のMLBで「観客動員数が激減したシーズン」は、実は2018年だけではなく、「3シーズン」あった。

その3シーズンには、ある「共通点」がある。
同じシーズンに8球団から9球団が、同時に大量の観客を失う
という現象だ。

いいかえると、観客激減シーズンの原因は、1チームが一気に500万人もの観客を失うというような1点集中の現象ではなく、多くのチームが「一斉に」観客数を失う横並びの現象だ、ということだ。


こんどは、それら「3シーズン」において、観客数が激減したチーム名を列挙してみる。「不思議な現象」があることがわかる。

1シーズンに40万人以上の観客を減らしたチームのリスト

2002年 MIL PIT CLE TEX FLA COL DET BAL HOU
2009年 NYM DET NYY TOR SDP WSN CLE ARI
2018年 TOR MIA KCR DET BAL PIT TEX

左から「観客減少数」が多い順
太字は上のリストに複数回登場するチーム


「不思議な現象」とは、以下のような話だ。

たった3つしかないリストに、3回デトロイトが登場する。
PIT、CLE、TEX、MIA(=FLA)、BALの5球団が、2度ずつ登場する。



デトロイトの2000年以降の観客動員数を図示してみる。

2000年以降のデトロイト・タイガースの観客動員数


次に、最初に挙げたMLBの図と、デトロイトの図を重ねてみる。

2000年以降のMLBとDETの観客動員数の相関


いやー。
作ってみて、ちょっと鳥肌たった(笑)


もちろん、30球団すべてを図示してみないと最終的に断言はできないが、上で指摘したように「2002、2009、2018シーズンすべてにおける観客数激減が、デトロイトタイガースのみにしか見られない現象」であることから、まず間違いなく、以下のことが言える。

デトロイト・タイガースの観客動員数というのは非常に特殊で、MLB全体の観客動員数の動向(特に減少する場合)を最も如実に反映する「鏡」であり、マーカーである。


もちろん、言うまでもないが、デトロイトが代表格であるにしても、2度登場する「PIT、CLE、TEX、MIA、BALの5球団」にも、おそらく「デトロイトに似た傾向」が見られるはずだ。



では、なぜデトロイトを代表格として、「特定の球団グループの観客動員数と、MLB全体の観客動員数とが密接に連動する傾向」がみられるのか。そして、それは「MLB全体の観客動員数の激減を直接左右するような要因」なのか。

そのことは「次の記事」に譲る。


少なくともここで言えることのひとつは、LAD、NYY、BOSなどの「大都市の人気球団の観客動員数の動向」と「MLB全体の観客動員数の増減」とは、あまり連動しない、ということだ。(ただし2009年の激減にはNYYが関係している)
「人気球団は、MLB全体の観客動員数と関係なく、人気が維持できる」という見方も、もちろんできるが、それは見方を変えれば「人気球団の観客動員はすでに天井、上限値であって、もうこれ以上なにをやろうと観客動員の増加が見込めない」という意味でもある。


また、MLB全体の観客動員数を7400万人前後に押し上げたようなパワーは、実は「人気球団以外の球団」をどれだけ底上げできるかに常にかかっている、ということもハッキリした。


この件については記事をあらためてさらに考える。

バック・ショーウォルターがボルチモアを去ることになった。

彼と彼のスタッフが2010年代初期のボルチモアで実践した「バランスの整ったチームづくり」は、長年にわたって投守打のバランスを欠いた雑な野球ばかりして低迷し続けたこのチームにとって、とても意味のある仕事だったと思う。


だが、残念なことに、「2013年あたり以降のボルチモア」は、それまでの野球を忘れたかのように、ネルソン・クルーズクリフ・デービスなどのステロイダー(ブログ主はマニー・マチャドもそのひとりだと思っている)に依存するチームになってしまい、かつてのような「投手はまったくもって酷いものだが、強力な打線に依存して、なんとか帳尻つける」という、昔の「雑なパワー野球」に戻ってしまった。


2010年〜2012年あたりまで、ブログ主はこのチームについて熱心に記事を書いた記憶があるが、2013年以降はどういうものか、あまり関心をもてなくなっていき、記事を書くこともめっきりなくなった。

2012年に以下の2つの記事を書いているが、今読みかえしてみても、当時のボルチモアの「バランスのとれたチームづくりにかける熱意」を感じさせる、意味のある記事だった。

今のボルチモアに、そのはまったくない。

参考記事:
2012年4月29日、長年の課題だった投手陣再建を短期で実現しア・リーグ東地区首位に立つボルチモア (1)ボルチモアはどこがどう変わったのか? | Damejima's HARDBALL

2012年4月29日、長年の課題だった投手陣再建を短期で実現しア・リーグ東地区首位に立つボルチモア (2)ジェイソン・ハメルはどこがどう変わったのか? | Damejima's HARDBALL


上の2つは、投打のバランスを長年欠き、長打重視の雑な野球ばかりして低迷を続けたボルチモアが、なぜバック・ショーウォルター監督以降に投打のバランスが整ってきたのかについて、当時のピッチングコーチ、リック・アデアが、冴えないエースだったジェレミー・ギャスリーをようやくトレードしてコロラドから獲得したジェイソン・ハメルに2シームを習得させた話を中心に、「ボルチモアの投手陣整備」を眺めた記事だ。

リック・アデアがコメントした、シアトルでピッチングコーチだった時代に育てたダグ・フィスターと、ハメルが似ているという話など、いま読むと、とても懐かしい。シアトル時代のブランドン・モローにカーブを投げるよう勧めたのも、リック・アデアだ。(だが、そのアイデアは実現しなかった)



そのリック・アデア、2013年に突如としてボルチモアのピッチングコーチを辞めている。理由は、当時の記事を検索しても、英語版Wikiをみても、なぜかほとんどわからない。

O's pitching coach Rick Adair takes personal leave of absence | Baltimore Orioles



これはあくまでMLBファンとしてのブログ主の想像だが、細かい事情はともかく、「2013年以降のボルチモア」は「2010年〜2012年あたりのボルチモア」と何かが大きく違ってきてしまい、投手の粘り強い育成にチカラを入れようとしなくなった、あるいは、有能なピッチングコーチを必要としなくなって、そのことが投手を育てることに熱心なリック・アデアを呆れさせ、ボルチモアを離れる理由になったのではないか、と思っているのである。


そんなことを思う理由はいくつかあるが、最大の根拠は「2013年7月の自軍投手の放出トレード失敗による戦力低下」だ。

2013年7月、ボルチモアはジェイク・アリエッタペドロ・ストロップジョシュ・へイダーと、自軍の若い才能ある投手陣をベイト(=英語でいう「餌」「エサ」)にして、カブスからスコット・フェルドマン、ヒューストンからバド・ノリスを獲得した。
結果的に、この「2013年7月の駆け込みトレードでの若手投手放出」は、それまでのボルチモアの投手育成の努力を「台無し」にし、ボルチモア投手陣の極端な劣化につながったと、ブログ主は見る。


ジェイク・アリエッタは、移籍先のカブスで2年連続ノーヒットノーランをやり、いまはフィラデルフィアで3年75Mもの高額契約を得て将来を確約されているわけだが、かつては2007ドラフト5位で入団し、数年にわたってボルチモアのマイナーが欠点を我慢しながら育ててきたたボルチモアの生え抜きプロスペクトだった。(2010年6月にメジャーデビューして、翌2011年に10勝。その後ヒジの手術で戦列を離れたが、2012年の開幕投手になっている)

ペドロ・ストロップは、2013WBCドミニカ代表で、いまはカブスで年間70試合弱を投げる優秀なブルペンピッチャーに育っている。

同じく、いまはミルウォーキーの堂々たるブルペン投手になっているジョシュ・へイダーは、ヒューストンのバド・ノリス獲得のために放出された。



アリエッタにストロップまでつけて獲得したスコット・フェルドマンだが、ボルチモアではまったく使い物にならなかった。いまは故障を抱えながらチームを渡り歩くジャーニーマンに過ぎない。
バド・ノリスにしても、良かったのは2014年だけ。フェルドマンと同じく、ジャーニーマンとしてMLBにぶら下がっているだけの投手に過ぎない。


リック・アデアが、まるで若者が突然無断欠勤して会社を辞めるように、突然として職を離れた理由は、おそらくはアデアが、「2013年7月の一連の駆け込みトレードによる、自軍投手放出」に、責任あるピッチングコーチとして断固反対したのにもかかわらず、GMダン・デュケットがトレードを強行したからではないかと、ブログ主は想像する。

なぜなら、アデアの辞職が、「2013年7月の駆け込みトレード」直後の、「2013年8月」だからだ。

もし自分が高いプライドをもってコーチ業をやってきて、ようやく若手が育ってチームの明るい未来を思い描けるようになってきたとしたら、こんなトレードには断固反対する。

それはそうだ。

ボルチモアのマイナーは時間をかけて、「これから長い活躍が見込める、若くて、健康で投手たち」をズラリと揃えたのだ。
にもかかわらず、プロのピッチングコーチとして、あの投手はステロイドで成績をもたせているだけだろう、とか、投げ方がおかしいとか、この投手のコントロールはどうやっても直せないとか、きっと故障を抱えているに違いない、などと感じる「将来性の乏しい中堅投手」を、その場かぎりの目的で獲得するだけのために、「これから長期に活躍できそうになってきた若手たち」を次々と放出させられたら、コーチとして、たまったものじゃない。



ボルチモアは、この「2013年7月の駆け込みトレード」の後、さらにマニー・マチャドジョナサン・スクープといった野手も失って、ネルソン・クルーズやクリス・デービスといったステロイド系打者に依存する姿が顕著になる。
ステロイドが疑われるマチャドはともかく、もし「2013年7月の駆け込みトレード」の失敗によって投手陣が崩壊することなく、ボルチモアがずっと優勝争いに常時加われるチームだったら、ジョナサン・スクープがチームに残ってくれる可能性があったかもしれない。


長い話になった。
かつてあれほど強いボルチモアの再建に熱心だったダン・デュケットは、これほど酷い成績に終わった2018年も、まったくといっていいほど何もしないまま、チームの惨状を放置した。
おそらくはこのシーズンが終わったらボルチモアを去って、どこかのチームに行く腹積もりじゃないかと想像する。酷い話だ。


もしブログ主の想像があまり間違っていないとしたら、だが、こんな悪い流れの中で監督をやらされていたバック・ショーウォルターには、責任はない。ぜひ来シーズンには違うチームで指揮をとってもらいたい。

October 02, 2018

MLBにおけるロスターは25人しかいない。

先発が最低5人、ブルペン7人程度、クローザー1人。野手が8人、場合によってDH。控えが、キャッチャー、内野、外野、ユーティリティと、4人程度。その25人が、「他のスポーツに類を見ない、多くのゲーム数」をこなす。

年間試合数の多さは、高額年俸をはじめとする選手の待遇の良さ、スタッフの充実、立派な専用スタジアムの維持など、スポーツとしての豪華さを維持可能にしている。また、その豪華さは、才能ある選手を世界中からMLBに集約する原動力にもなっている。

いいかえれば、プロのスポーツとしての野球は「限られた人数で多くのゲームを戦うチーム運営技術の優劣を競っている」という見方もできる。



野球に限らず、企業や自治体のような組織においても、「限られた人数、最低限の人数を前提に、組織運営の効率を上げていく」には、「プレーヤーの多くがマルチタスクであること」が非常に重要だ。専門性なんてものに高い給料を払っているばかりでは、その組織のコスト体質はいつまで立っても改善されず、少ない人数で回せるようにはならない。





もし例えば野球チームに「肘の痛くない大谷翔平が5人いる」としたら、どうだろう。
先発5人全員が「マルチタスク」になるわけだから、典型的なチーム構成にあと5人の選手を追加できることになる。別の見方をすれば、ロスターがたったの「20人」で回せる、といってもいい。

逆に、投手12人以外が、すべて「守備のほとんどできないDH」だったらどうか。
高得点が期待できると思うかもしれないが、守備時間が膨大に長くなるから、疲れきって、たぶん攻撃どころではない。
素人以下の守備しかできない集団は、大量失点を繰り返す。難しい内野ゴロは、ほとんどヒット。ダブルプレーなんて完成するわけがない。外野フライのかなりの数が長打やホームランになる。素人キャッチャーはプロの投手の球が捕れないで、変化球の多くを後逸する。盗塁はもちろん、やられ放題。
これではいつまでたってもチェンジにならない。当然ながら、投手は膨大な球数を投げさせられ、投手がすぐに足りなくなる。

これではプロではない。
というか、野球ですらない。


こうした例示でもわかるように、そもそも野球というスポーツは「マルチタスクなプレーヤーのスポーツ」として出発しているのである。


かつてエンゼルス全盛期のマイク・ソーシアは、足の速いスイッチヒッターをズラリと並べる独特の打線で地区優勝をかっさらい続けた。ソーシア流スイッチヒッター打線では、相手投手が左だろうと右だろうと、打線も守備の布陣も組み直す必要がない。

対して、最近あまりに多すぎる「左右病監督」や、オークランドに代表されるプラトーンシステムでは、相手投手によって左打者と右打者を使い分ける。そのためポジションそれぞれに2人ずつ選手を用意し、毎試合のように打線を組み直す。下位打線の選手は、続けて出場できないからどうしてもコンディショニングが難しくなる。

どちらがマルチタスクかは明らかだ。マイク・ソーシアこそ、野球本来の「マルチタスク」のオーソリティだ。


話をもう少し拡張していこう。

「HRばかり狙って、低打率で、守備のできないバッター」は、シングルタスクだ。
そうした選手を何人も打線に並べる打線は、当然三振も多くなるし、タイムリーなど期待できない。また守備のための交代要員も必要になる。

参考記事:2017年2月1日、41本ホームラン打ったクリス・カーターに再契約オファーがなかったことからわかる、「ホームランバッターは三振が多くて当たり前」という話の真っ赤な嘘。 | Damejima's HARDBALL



こういうことを書くと、必ず「2人か3人の打者が連続でヒットを打って得点することより、たった1人で得点できるホームランのほうが、はるかに『マルチタスクだ」などと、わけのわからないことを言い出す人間が必ずいることだろう(笑)

そういう根本的にアタマの悪い人間が出現する原因は簡単だ。ホームランの「出現頻度の少なさ」や「出現確率の低さ」をまるで考慮しないからそうなる。


かつてデタラメ指標のOPSでは、「ホームランでベースが4つ回れるから、その価値はシングルヒットの4倍だ」などと、単細胞きわまりない奇怪な思考方法(笑)から、ホームランに過大な価値を認めていた。(実際には計算式のトリックを加え、4倍以上もの過大評価をしていた)

出現頻度の低さをきちんと考慮すれば、「まぐれ当たり的なホームランしか打てない、スカウティングされやすい、低打率の打撃専門野手」の価値なんてものは、打って走って守れる5ツールの選手の、5分の1どころか、それ以下の価値しかないことは言うまでもないことだが、OPS信仰時代には、そんな簡単なことすら誰もが忘れていた。


OPS全盛時のセイバーメトリクスなんてものは、片方でアウトカウントを増やすのは悪だなどと決めつけつつ、他方で、効率の非常に悪いホームランバッターに異常な過大評価を与え、シングルタスク・プレーヤーのネガティブな面を考慮しないまま、野球を「間違った価値観」で覆い尽くした。

そうしたデタラメ指標の影響は、今でも無くなってなどいない。フライボール革命などと称してホームランを称揚した挙げ句、2010年代のMLBは未曾有の「三振激増時代」に突入したのも、間違ったデータ主義が遠因になっている。



だが、現実の野球は、まったく違う。

例えばクリス・カーターのような「非効率なシングルタスクのバッター」の打撃の中身の無さを見ればわかる。
全打席のほんの数%をホームランする程度の能力しかないにもかかわらず、大半の打席で凡退して数多くのチャンスを潰し、打席の30%以上にもあたる200以上の打席で三振して、アウトカウントを増大させ、ランナーを釘付けにする。
その効率の悪さは、3割打者の多くがマルチタスクであり、打席の30%以上をヒットにしてランナーを進め、打席の35%以上で出塁する一方で、盗塁や犠打、守備などをこなせるのと、まるで対照的だ。


wOBAのような、よりリアルな指標において、ホームラン1本の得点寄与能力がシングルヒット1本のせいぜい2倍ちょっと程度に過ぎないとみなされることでもわかるように、「シングルヒットの得点生産能力」は、ホームランと比べ、けして低くなく、デタラメなOPSが言っていたような「ホームランの4分の1」ではない。
「得点圏にランナーがいて、シングルヒットが出れば得点が生まれる可能性がある場面の数」、「シングルヒットによる打点が実際に発生する可能性」は、ホームランのそれに比べ、はるかに出現頻度が高く、同時に、ずっと高い確率で実現する。



シングルタスクの権化といえば、ホームランにばかり頼ってタイムリーが出ず、いつまでたっても地区優勝に縁がないヤンキースだが(笑)、マイク・ソーシアがエンゼルスで目指した野球が、そうしたヒエラルキー主義のシングルタスク野球ではなく、マルチタスクだったことは明らかだ。(ソーシアがベンチからサインをやたら出しまくるのも、ヒエラルキーそのものではあるが 苦笑)
彼が大谷翔平を気にいっていた理由もたぶん、大谷が投打に才能があるからだけでなく、大谷の二刀流が「ソーシアが大好きなマルチタスクそのもの」だったからに違いない。


いまもMLBには「マルチタスク主義」と「シングルタスク主義」、2つの流れがある。

ワールドシリーズを制覇したときのロイヤルズ、優勝争いの常連になった近年のアストロズなど、成功しているチームがやっているのは野球本来の「マルチタスク」だ。

参考記事:2015年4月14日、昨年のワールドシリーズ進出がフロックでなかったことを証明し、ア・リーグ中地区首位を快走するカンザスシティ・ロイヤルズの「ヒット中心主義」。 | Damejima's HARDBALL

参考記事:2017年11月14日、ヒューストン・レボリューション2017。 「四球偏重時代」の終焉。 | Damejima's HARDBALL

参考記事:2018年4月11日、意図的に「ホームランの世紀」をつくりだそうとした2010年代MLB。実際に起きたのは、「三振とホームランの世紀にさからったチーム」によるワールドシリーズ制覇。 | Damejima's HARDBALL


だが、MLB全体でみると、近年横行しているのは、年間1300三振するチームの激増でもわかるとおり、シングルタスク主義であり、選手単位でみても単純なタスクしか実行できない不器用な選手が激増している。


エンゼルスも、マイク・トラウト、大谷と、才能あるマルチタスクのビッグネームを抱えている一方で、かつてソーシアがエンゼルス全盛期にやったような「攻守走すべてがこなせるスイッチヒッターを、ズラリと打線に並べたマルチタスク打線」なんて徹底した芸当は、「シングルタスクのプレーヤーばかり増えてしまった現状」からいうと、人材不足で実現しにくくなっている。

ソーシアが長いエンゼルスでのキャリアでやろうとしてきた彼独特の野球は、いまや実現不可能になりつつあるかもしれないから、彼がアナハイムを去るのは、いたしかたないかもしれない。



しかしながら「ソーシア流のマルチタスク」を受け入れて、チームを根本から変えるべき「方針の間違っているチーム」、「方針が見えないチーム」は、今のような時代だからこそ、むしろ、たくさんある。

長年にわたって雑な野球ばかりやってきたボルチモア。本来ならマルチタスクをもっと徹底させ継続すべきだったカンザスシティ。ワールドシリーズ優勝が実現しないまま賞味期限切れしたデトロイト。投資金額はデカイが総合力がたいして上がってない成金ドジャース。無能なGMがチームを低迷させたテキサス。いつまでたっても何がやりたいのかわからないサンディエゴ。チーム本来のいやらしい強さがなくなったセントルイス。常勝チームの賞味期限切れが近いナッツ。他にもある。


ソーシアをこのまま引退させるのは、もったいない。

監督でなくても、いまのこの「三振の王国に退化しつつあるシングルタスクのMLB」を質的に改造する大仕事を、どこか他のチームでやってもらいたい。

October 01, 2018

樹木希林さんのご葬儀に前後して、たぶんかなり型破りな関係だろうと想像されてきたご主人との夫婦関係について、生前のやりとりの一部が公開され、世間で感動を呼んでいるようだ。

ブログ主には、世間の人たちと、希林さんの娘さんは、外からは理解しにくかった2人の奇妙な夫婦関係に「愛が存在することを発見して、ようやくホッとした」、というふうに見えた。



この記事でブログ主が言いたいことは、その「愛が存在することを確かめることでようやく安堵する現象」は、とても人間的ではあるものの、始末に負えない、人間特有の悪癖だ、ということだ。


後でわかったことだが、実際には、彼ら夫婦の間には、周囲にわかるかどうかは別にして、当初から「彼らなりのカタチでの恋愛や夫婦関係」があったようだ。

だが、希林さんの娘さんを含め、世間には、彼らにある種の「不安(人によっては嫌悪感)を覚えた人たち」がたくさんいた。
希林さんの娘も含めた世間が、希林さん夫妻の不思議な夫婦関係に、不安を覚えたり、人によっては嫌悪を抱いたりした理由は、おそらく「愛がないのに、関係だけ維持している」、「ああいうのは愛とはいえない」などといったネガティブな感情であり、それらをひとくるめに言えば、「先入観」である。



このケースで、人がなぜ不安を覚えるか。
人は、愛がたしかに存在することを確かめずにいられないという、非常に強い欲求から逃れられないからだ。



この「確かめずにいられない欲求」の一端について、女性向けアダルトビデオを制作しているという牧野江里さんという方が、「セックス」という切り口から、ある意味岡崎京子の漫画を文章にしたような秀逸な文章にまとめていらっしゃる。

参照:セックスは愛を確かめる行為ではない?エロメンから学ぶエクスタシーに達する方法|AM

牧野さんが不思議に思ったことを自分なりに受け止めて書きなおすと、人は「愛を確かめる行為こそセックスだ」と思いたがる。だが実際のセックスにおいては、相手の性感帯もわからないまま愛をたしかめようとするような、ある意味で無謀で乱暴な行為が頻繁に行われもする。
その結果、人は不幸なセックスを繰り返しながら、別れと出会いを繰り返す。
(この「愛」という部分は「幸福」といいかえてもいい。「セックスでこそ幸福が確かめられる」と思い込んでいる人がたくさんいるにもかかわらず、その方法論はといえば、「出たとこ勝負」だったりするのである)


ブログ主の今回の問題意識に換算してみよう。
すべての「出発点」は、これだ。

人は「愛というものの存在を確かめずにいられない」。


確かめずにいられない、確かめないと不安になる、と、いうのなら、確かめればいい、ただそれだけの話だ。

だが、現実にはどうか。
確かめない」で、不安だけ抱える、のである。
あるいは「不用意に、不手際だらけの手法で確かめようとして、関係を壊す」のである。


そういうことになってしまう理由はいくつか考えられるが、そのひとつが、「外部からは、そこに愛が存在することが簡単に確かめられないような人間関係」のケースだ。

例えば、「子供から見た、親の夫婦関係」がまさにそうだ。

ブログ主だけの理解かもしれないが(笑)、「恋愛感情も含め、夫婦の関係というものは、親子関係とは、まったく異質、まったく異次元のもの」であり、「子供から、両親の人間関係が見えるわけがないし、まして理解できるはずもない」のである。

だが、不思議なことに、そういう事例に出会うことは、まずない。「理解させるべき」「理解できるはず」「理解したい」「確かめたい」「理解したら美しい」、そんな安易なヒューマニズムのオンパレードで、人は洗脳されていく。

だからやたらと確かめたがる。


確かめないと、どうなるのか。
確かめない関係は可能なのか。


樹木さんなら、たぶんこう言うと思う。

「確かめたら、どうなのよ。あの人、家に帰ってくるの?(笑)
帰ってくるような人だったら、アナタ、うれしい?(笑)」


だから、ブログ主は言うのである。
あれは「恋」だ。と。

確かめることを放棄する(放棄させられる)ことから始まったロックな関係に、常識など通用しない。そのことはご当人が誰より理解していたはずだ。そういう関係にあてはめる言葉がない。「恋」とでも呼ぶほかない。




ちなみにブログ主は、両親が愛し合っていたかどうかとか、気にしたことがほとんどない。そのことで失った人間関係の感覚もある一方、そのことでしか得られなかった感覚もある。そのことは、自分自身が一番よくわかっている。

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  • 2014年10月31日、PARADE !
  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
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  • 2013年6月1日、あまりにも不活性で地味な旧ヤンキースタジアム跡地利用。「スタジアム周辺の駐車場の採算悪化」は、駐車場の供給過剰と料金の高さの問題であり、観客動員の問題ではない。
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