October 2019

October 16, 2019

ワシントン・ナショナルズのクローザー、ダニエル・ハドソンの育休取得に、「外部の人間」のくせして難癖をつけたのは、マイアミの元社長David Samsonデビッド・サムソン)だが、こいつがどういう人物か、もっと踏み込んで書かないと、この話のニュアンスが伝わるわけはない。(もちろん、いうまでもないが日本のマスメディア、日本人のMLBライターは誰ひとりとしてきちんと書かない)



ことは、まずは「1980年」にさかのぼる。

この年、デビッド・サムソンの実母シルビア・サムソンSivia Samson)が再婚した。シルビアはデビッド・サムソンがまだ幼い頃に一度離婚していて、デビッド・サムソンの父親はその離婚相手だから、再婚相手は義父(step-father)ということになる。

その再婚相手、義父が、
かのクソ野郎ジェフリー・ローリアJeffrey Loria)である。


ローリアが悪名高いファイアー・セールをやったモントリオール・エクスポズを買収したのは「1999年12月」である。2005年にジェフリー・ローリアとシルビア・サムソンは離婚することになるが、エクスポズ買収時点では、まだ離婚していない。デビッド・サムソンは当時30代に入ったばかりである。

ローリアは、エクスポズ買収と同時に、自分の義理の息子デビッドをすぐに「エクスポズ副社長(executive vice president)」に任命した。デビッドには野球経験も球団経営の経験もないのだが、エクスポズ買収に関与しただけでなく、ローリアによるマイアミ・マーリンズ買収でも大きな役割を果たしたといわれている。

MLBでは2つの球団を同時に所有することなどできない。マイアミ買収にあたってローリアはエクスポズを売却して、法外かつ理不尽な売却益を得た。ジェフリー・ローリアが、モントリオールとマイアミでどれほどの悪行を働いたか、ここで書くまでもない。いろいろな紹介記事があるだろうから、自分で調べてみるといい。


その後、ローリアが新しく買ったマイアミ・マーリンズが2003年にワールドシリーズを勝つことになった一方で、ローリアがぶち壊したまま捨てたエクスポズは、2004年にモントリオールでの球団史に終止符を打ち、ワシントンDCに移転する羽目に陥った。

この移転で「やっとジェフリー・ローリアと縁が切れたナッツ」は、「再建のための故意の低迷」を続けた。ドラフトをうまく利用し、スティーブン・ストラスバーグ、ブライス・ハーパー、アンソニー・レンドンなど、有力な全米1位指名選手を次々と獲得。チーム力を急速にアップさせて、いつしかナ・リーグ東地区の常勝チームとなった。

そしてついに2019年、球団創設以来初のワールドシリーズ進出を果たすことになった。

この快挙は「球団創設以来51年目」だが、そこでいう「球団創設」とは、もちろん「エクスポズが創設された1969年以来」という意味だ。きっとモントリオール市民も喜んでいることだろう。この快挙により、ワールドシリーズに一度も進出していないMLB球団は「シアトル・マリナーズのみ」になった。


エクスポズが球団名を変えて移転しなければならなくなる理由を作ったのが、ジェフリー・ローリアと、かつてエクスポズのエグゼクティブだった義理の息子デビッド・サムソンなのだから、この2人はいわば「エクスポズを窒息死させた張本人」なわけだが、そのデビッド・サムソンは、いまやワシントン・ナショナルズと何の縁もゆかりもない。
それどころか、マイアミをローリアから買い取ったデレク・ジーターの投資家グループはデビッド・サムソンをクビにしたので、もはやマイアミの球団オーナーですらない。
(そのジーターにしても、マイアミでジェフリー・ローリアまがいのファイヤーセールをやって、クリスチャン・イエリッチなどを安売りし、マイアミ・マーリンズを崩壊させた。いってみればジーターはジェフリー・ローリアのstep-son-ownner、「義理の息子同然のオーナー」だ)


その、「いまやワシントン・ナショナルズとはなんの縁もゆかりもないデビッド・サムソン」が、51年ぶりにとうとうワールドシリーズ進出を果たした「かつてのエクスポズ」に、外野から難癖をつけたのである。自分と義父のせいでエクスポズを弱体化させておいて、遠くからナッツのワールドシリーズ進出にお祝いコメントをするどころか、重箱の隅をつつくような嫌がらせを言うのだから、義理の父と同じく、まったくもってクソ野郎としか言いようがない。

外野からケチをつけようとしたデビッド・サムソンの、この曲がった根性ときたら。かつてのエクスポズファンなら、「黙ってろ、このクソガキ」と言うところだろう。


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