April 2020

April 13, 2020

このシリーズ記事のここまでの展開を一度まとめてみる。

対数グラフ」にすることの意味。
2020年3月31日、「感染者数グラフ」の正しい書き方、読み方。(1)ウイルス感染数の増加はなぜ時間をX軸にした片対数グラフがフィットするのか。 | Damejima's HARDBALL

対数グラフが寝てくる」ことの意味。
2020年4月2日、「感染者数グラフ」の正しい書き方、読み方。(2)なぜ実数が増えているのに「事態は落ち着いてきた」と言えるのか。 | Damejima's HARDBALL

対数グラフのX軸を「相対日数」にすべき理由。
2020年4月4日、「感染者数グラフ」の正しい書き方、読み方。(3)「感染の典型的パターンをみつけだす」ためのグラフの書き方---「日付の相対表示」 | Damejima's HARDBALL

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この記事では、「感染者数の対数グラフが、グラフの開始から寝てくるまでの「日数」において、世界全体に「共通性」がみられること」について論じる。

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よくマスメディアの記事で、ニューヨークの病院に行き、型通りの簡単なインタビューをして「酷い状況だ」と当たり前のことを言わせておいて、その後で、その病院関係者に「この状況は2〜3週間後の東京だ」と「最初から言わせたかったことを、言わせる」式のデタラメな記事がある。

ニューヨークやロンドンが酷い状況なことくらい、わざわざ忙しい現場の人を掴まえなくても誰でもわかっているのである。わかりきっているのに、わざわざインタビューに行って邪魔をして、ただ「とりたいコメントを言わせているだけ」の、どうしようもない取材方法である。

くだらないにも、程がある。

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以下は、ロンドン・カレッジ・ユニヴァーシティが公開しているデータのうち、「アメリカ各州」の「人口100万人あたりの感染者数」の片対数グラフである。

州ごとに医療制度の充実や気候など、さまざまな環境が違うわけだが、共通していることがある。
感染開始からグラフが寝てくるまでの日数が、
約3週間と、「各州共通」であること
である。

CoVID 19 Growth Rate 2020-04-13 US sort by stateソース:CoVID 19 Growth Rate

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他の国で同じことはいえるのだろうか。
同じサイトから「他の地域」のグラフを見てみる。

西ヨーロッパの「人口100万人あたりの感染者数の推移」

西ヨーロッパでは、アメリカ各州と似た傾向が見られ、おおむね「2週間〜3週間」でグラフが寝てきている。

また、同じことは、北欧、東欧、英国各州、英国各地域別、豪州およびニュージーランド、パキスタン、トルコ、イスラエル、チリ、パナマ、ドミニカ、東南アジアと、世界の広い地域で(多少の日数の長短があるにしても)同じことがいえる。
(煩雑な画面になるので、各地域の詳細なグラフは挙げない。リンク先を参照されたい。 ソース:CoVID 19 Growth Rate

CoVID 19 Growth Rate 2020-04-13 Western Europe per millionソース:CoVID 19 Growth Rate

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人口、気候、文化、また医療制度や習俗など、さまざまに異なる世界中の国々で、同じような現象がみられることから、以下のような仮説が可能になる。
武漢コロナウイルスの感染者の「指数関数的な意味での増加」は、
感染の爆発的開始から「一定期間」が経過すると鈍る傾向にある。

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では、その「一定期間」とは、常に一定なのだろうか。
以下に2つの例外を挙げてみる。

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これは西ヨーロッパの「感染者数の対数グラフ」だが、上に挙げたグラフが「人口100万人あたり」という補正をしているのに対して、こちらは補正されていない。

CoVID 19 Growth Rate 2020-04-13 Western Europe, total casesソース:CoVID 19 Growth Rate

こちらの「感染開始からグラフが寝るまでの日数」は、「人口100万人あたり」のグラフでの「グラフが寝るまでの日数」に比べると、わずかに長いように見える。

「感染者数全体のグラフ」と「100万人あたりのグラフ」との間に「微妙なズレ」があるわけだが、この差異が世界の他の地域でもみられるのかどうかについては、残念ながら、ソースのサイトに世界各国のデータがないことなどから確かめられなかった。ご自身で確かめてもらいたい。

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次に、日本を含む別の「100万人あたりの対数グラフ」をみる。

CoVID 19 Growth Rate 2020-04-13 World per million inhabitantsソース:CoVID 19 Growth Rate

日本(茶色)とシンガポール(緑色)が表中にあるが、この両国がここまで見てきた「急激に感染が拡大し、その後、ほぼ数週間で対数グラフが寝てくる」という一般論では語れないことは、グラフの形状から明らかだ。

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日本やシンガポールと似た傾向にある国は、他にバーレーンスウェーデンなどがあり、これらの国々では、
感染者数が非常に少なく抑えられていること感染者数の対数グラフがゆるやかに右上がりを続けていくこと
に他の国にない特徴がある。

これらの国々は「欧米を典型として、世界の広い地域の国々でみられる『急激な感染の拡大開始と、数週間後に訪れる指数関数上のピーク』というパターンにあてはまらない可能性がある。

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ここまで指摘したことから、「東京がニューヨークの数週間遅れた状態」というロジックが根本的におかしいことは、簡単に指摘できる。

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「東京がニューヨークの数週間遅れた状態」と断言するには、次の「2つの条件」が揃わなければならない。

1)東京がニューヨークより「数週間遅れて」感染が開始した
2)東京(あるいは)日本の感染拡大が、ニューヨーク(あるいはアメリカ各州)のグラフが描く曲線と同じ、『急激な感染拡大の開始と、数週間後の指数関数上のピーク』という典型的パターンで示すことができる

言うまでもなく、2つとも、答えは「 No 」である。日本での感染開始はアメリカより数週間遅れてなどいないし、日本の感染拡大は世界でも稀有なパターンで、アメリカとは似ても似つかない。

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日本は、シンガポール、バーレーン、スウェーデンなどもそうであるように、欧米を典型として世界全体でみられるような感染パターンを踏襲してはいない。

ゆえに、
「数週間たてば、東京はニューヨークのようになる」という報道は、ICUの供給の逼迫など、医療体制の緊迫という点を除けば、単なる根拠のないデマと同列の妄言でしかないのである。

April 03, 2020

シリーズ3回目となるこの記事では、「感染者数グラフの正しい書き方」について論じる。

「正しい」などという言葉は、正しさ自体が混迷したいまの時代には、たしかに「きわどい言葉」である。だが「ウイルス感染のグラフ」では「正しい書き方」というものがあるのである。

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いま武漢コロナウイルス感染のさなかにあって世界中の国々が苦しんでいる。だが、その惨状の渦中にあって、たったひとつだけ、光明といえる事実がある。

それは、他のウイルス感染と同様に、このウイルスの感染爆発においても、、どんな国にも共通の『拡大から終息に向かう決まったパターン』があるらしい」ということだ。その「パターン」はどうやら、たとえ生活文化や医療制度が違う国であっても「共通」らしいのである。

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なぜパターンが「存在する」といえるのか。

世界の国での感染の「規模」と「かかった日数」を、「横並びに比較してみること」で、感染拡大から終息までの経過に『共通性』『パターン』があることが判明したからである。

別の言い方をすると、人々は「自分の国がいま、そのパターン上の、どの地点にあるのか」を知ることで、自分たちの環境が今後どうなっていくのか、多少はわかるようになったのである。

それは、対数グラフ化することでパターンを「可視化」したおかげである。

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ただ、やみくもにデータをグラフ化しても、何も見えてこない。
可視化には「有効なやり方」もあれば、「まったく無駄なやりかた」もあるからである。

ウイルス感染の「パターン」を探り当てるには、グラフを「正しく」書かなくてはならない。「『感染の拡大終息のパターン』をみつけだすのに有効なグラフの書き方」の一部を以下で論じてみる。

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さて、具体例をあげる。

最初は、あるメディアの「失敗例」である。例によって、横軸は「絶対表示的な日付」、縦軸は「対数軸による感染者数」である。

このグラフは「3月4日時点」で、まだ「欧米全体での本格的オーバーシュート」は始まっていない。当時はまだダイヤモンド・プリンセス号事件が世界の注目を集め、「日本の感染者が世界的に見て多い」などと間違った批判を受けていた時期のグラフである。

図13月4日付の対数グラフ

3月4日時点の感染者数をみると、感染者数トップは中国が独走、その後ろを、第二グループの「韓国、イタリア、イラン」が追い、そのまた後ろには、第3グループの「ダイヤモンド・プリンセス号、ドイツ、フランス、日本、スペイン、アメリカ、スイス、イギリス、シンガポール、オランダ」が「団子状態」で続いている。

余談ではあるが、上のグラフだけからいうと、「3月4日時点」でのダイヤモンド・プリンセス号の感染者数は、堂々世界第5位を占めている。このグラフがそうであるように、「日々の感染者数」しか見ない、知性に欠けたマスメディアは、「ダイヤモンド・プリンセス号事件が、世紀の大事件に見えた」のだろう。だから必死になって日本の悪評を書いたのである。

だが、その後の1ヶ月で、どの国、どのタイミング、どんな規模でオーバーシュートが起こったか、思い出すべきだ。欧米を中心に、あっという間に世界中で、何十万という感染者、何万もの死者が出現するに至ってようやく人々は、「ダイヤモンド・プリンセス号での感染がいかに、規模の小さい、世界が注目するほどでもない、ささいな出来事だったか」を思い知ることになったのである。

当時日本を批判した人々は、武漢コロナウイルスの感染が一般的にどう推移するか、まったく知りもせず、単に「3月4日時点での、世界第5位という感染者数」という「数字」だけ見てモノを言っていたにすぎない。


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さて、
この「感染者数を、日付順にただ並べただけの、平凡きわまりないグラフ」から、なにか「法則性」読み取ることができるだろうか。

申し訳ないが、自分にはとても無理だ。

「日付順に感染者数をただ並べただけ」では、感染者数の増加がたどる「世界共通のパターン」を探り当てることなど、できない。「日付順に感染者数をただ並べただけ」のつまらない作業から読み取れるのは、ただ単に「それぞれの国で感染者数が、それぞれに増えた」という、なんともつまらない事実のみでしかない。

この3月末のグラフから、その後1ヶ月で、グラフにあるいくつかの国はド派手にオーバーシュートし、いくつかの国の感染が終息に向かうことが4月初頭の今の時点ではわかっているわけだが、このグラフのデータから「その後1ヶ月に起きることの兆し」はまったく見えてこない。

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結論を先に言うと、
このグラフの欠陥は、
日付を絶対表示にしているから
だ。
これでは何の収穫も得られない。


以下において、日時における「絶対表示」とは、例えば「2020年3月4日」というような「リアルな日付」という意味であり、「相対表示」とは、例えば「感染発生から10日目」というような「相対的な日付」という意味だ。

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2つ目の例として、いつもとりあげているUCLのグラフを挙げる。こちらのグラフには、「日付を相対表示する」という違いがある。

ソース:CoVID 19 Growth Rate
CoVID 19 Growth Rate 2020-04-05

「日付の相対表示」について、このグラフの作者(ロンドン・カレッジ・ユニバーシティの研究者)のサイトでのコメントによると、作者は「その国の感染者数が10人を越えた時点」を、その国のグラフの「始点」にしていると発言しているのを見た記憶がある。

だが、上のグラフを仔細に眺めると、「それぞれの国のグラフの始点における感染者数は、国によって微妙に異なっていて、必ずしも『10人』ではなく、『100人前後』から始めて」いる。
それはおそらく「グラフの差異を越えた『共通性の発見』を強調するために、細部では多少妥協しているのだろう。
たとえそうであったとしても、このグラフはたいへんに貴重な情報を提供してくれる。

それが、
世界共通の拡大パターン」の発見である。

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この作者のグラフはどれも、横軸の日付は「3月4日、5日、6日」というような絶対表示ではなく、す「感染開始から何日目」という相対表示であることに特徴がある。
横軸の目盛りはすべて「感染が始まってからの経過日数になっている」のである。


そうすることで初めて、
各国のグラフに「ピッタリと重なりあう部分がある」
ことがわかってくる。

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その「重なり」をもう少し詳しく書くと、以下のようになる。
グラフの始点を「感染の開始」とすると、「感染者数が4000人〜5000人という、1000単位のレンジに達するまで」は、どの国でもグラフは「共通の傾きを」もった「右上がりの直線」になっている。また、「傾きが同じ」であるからには、その特定レンジに達するのにかかる日数も、世界でほとんど「共通」している。

「感染の開始」から「感染者数が4000人から5000人というレンジを超える」と、グラフはそれぞれの国によって異なる展開をみせはじめる。

いずれにしても、「感染の開始」から「感染者数が万単位のレンジに入ってくる」と、グラフは「寝て」くる傾向にある。

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たかだか「日付」を「絶対表示から相対表示にした」だけじゃないかと思う人がいるかもしれないが、雲泥の差とはまさにこのことであって、2つの表現に存在する差はあまりにも大きい。「絶対表示の日付と、絶対表示の感染者数しか見ない」ような馬鹿なマスメディアが日本にも欧米にも数多くいるからこそ、日本を批判したりする馬鹿が続出するのである。

(つづく)

April 02, 2020

「感染者数グラフの正しい書き方、読み方」の最初の記事(2020年3月31日、「感染者数グラフ」の正しい書き方、読み方。(1)ウイルス感染数の増加はなぜ時間をX軸にした片対数グラフがフィットするのか。 | Damejima's HARDBALL)では、自然現象に指数関数的な増加や減少が多くみられることから、ウイルス感染の把握に対数グラフが適している理由を説いた。

2回目のこの記事では、グラフを具体的に書くべきかについて論じてみたい。(以下、常にX軸は「日付」、Y軸は「感染者数」)

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出発点として、まず、目盛りが等間隔にできた、リニアなグラフを見てみる。の2つのデータをプロットしてある。

図1リニアなグラフ(基本図)

赤い線
赤い直線が表しているのは、「毎日、同じ数だけの感染者が増加していく」という状態であり、この例では「1日ごとに2万人ずつ」、「2万、4万、6万、8万、10万」と増えて、5日間で感染者数10万人に到達する。

緑の線
緑色は曲線で、赤い線とは「増加のしかた」がまったく異なる
赤い線のように1日の増加が「毎日2万人ずつ」と決まっているのではなくて、感染者数が1日ごとに「10人、100人、1000人、10000人、100000人」と、「毎日毎日、その前日の10倍に増えていく」。

また、2つのグラフは見た目も違う。緑の直線は「最初はほぼ横ばい」だが、感染の急激な拡大が起こると「いきなり立って」くる。

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どちらのグラフが「現実に即して」いるか。
これは論ずるまでもないので、次にいく。

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通常のリニアなグラフにおいては、「2万、4万、6万、8万、10万」と「決まった数ずつ増加する事象」は「直線」で表される。

対して、「10人、100人、1000人、10000人、100000人」と「増加のしかたそのものが右上がりに増えていく」という増加は、「指数関数的な増加」であり、緑で示したような曲線であらわされる。

武漢コロナウイルスの感染では、「1人の感染者から、2人〜2.5人に感染する」という拡大がみられるという研究結果が中国にある。つまり、武漢コロナウイルス感染の拡大という事象は、前の記事でも書いたように、1人の感染者が2人に感染させ、その2人の感染者が4人に、4人が8人に、8人が16人に、「1→2→4→8→16→32」というふうに、「増加が、時間経過とともに急激になっていく」という、自然界によくみられる典型的な指数関数的増加なのである。

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問題はここからだ。

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典型的な指数関数的な増加である武漢コロナウイルスの感染者数の爆発的増加(オーバーシュート)を図示する最適な方法を探すため、まず「3日おきに感染者数が決まって10倍になる」というグラフを2種類用意した。

図22つならべたグラフ

左:リニアなグラフ
Y軸の目盛りはそれぞれ等間隔でできている。ここではオーバーシュートは、「急激に右上がりになる曲線」として表現される。

右:Y軸が対数でできたグラフ
次に、同じデータを「対数グラフ」で書いてみる。Y軸のみを対数にした片対数グラフである。グラフの横線が均等に並んでいないことでわかるように、Y軸の目盛りは等間隔ではない
すると、「右上がりの曲線」だったグラフが、こんどは「まっすぐな直線」として表現される。


2つのグラフは、データそのものは同じだが、「Y軸の目盛りの並べ方がまったく異なっている」ために、表現されるグラフの形状がまったく異なる。このことから、次のようなことがわかる。

・対数グラフにおける「右上がりの直線」は、「感染の拡大が続いていること」を意味する。

・対数グラフにおける「右上がりの直線」の「傾き」は「増加の激しさ」を意味していて、傾きが「立って」いるほど、増加は激しい。

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次に、上の2つグラフに少し変化をつけてみる。

「1日目から7日目までは『3日ごとに10倍』になったが、7日目以降で感染者数の増加がちょっと鈍り、10日目の感染者数は『7日目の10倍の10000人』ではなく、『3倍の3000人』だった」という状態を、太い青線で示してみた。

図32つならべたグラフ変化型

このことからわかることは、以下である。

・対数グラフにおける「右上がりの直線」の「角度がX軸に平行に寝てくること」は、「感染の増加がやや鈍ってきたこと」を意味する。

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この例によって、「なぜ『見た目の感染者数の増加』にとらわれるべきでないか」がわかる。

数字にとらわれやすい人は「7日目が1000人で、10日目に3000人」と聞くと、「なんと2000人も増えた! 大変だ!」と感じてしまう。増加率の変化にまったく気づかないまま、2000人増加という数字の増加だけにとらわれて、パニックを起こしてしまうのである。その挙げ句に、全員をPCR検査しろだの、都市を封鎖しろだのと無意味に騒ぎたて、買いだめに走るのである。

だが、それはまったくの勘違いだ。

事実は、
対数グラフがX軸に平行に寝てきた」ということであり、それは「感染の拡大が落ち着いてきたかもしれない」といえる状態なのだ
という意味である。

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もう少し説明する。

上の例では、最初に、「感染者数が3日おきに10倍になる」と、「『同じ増加率』が10日間ずっと続く」という「想定」でグラフを作成した。「増加率に変化がないこと」は、片対数グラフでは「右上がりのまっすぐな直線」として示される

その後、変化を加え、「3日おきに10倍という決まった率」ではなく、7日目以降に「3日で『3倍』」としてみる。すると、それまで「まっすぐな直線」だったグラフ形状が変わり、「寝てくる」のである。

この「グラフの形状の変化」が、「もしかすると感染の拡大が落ち着いてきたかもしれない」という近未来の推測につながる。

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もういちど、元の「3日おきに感染者数が10倍になる」という2種類のグラフを眺めてみる。

図42つならべたグラフ3つのパターン

左のリニアなグラフの最大の欠点は、10日目の感染者数が、「9000人」だろうが、「1万人」だろうが、「1万1000人」だろうが、見た目に「ほとんど違いがわからず、どれもこれも同じ、右上がりの急激な曲線にしか見えない」ことである。

こんな雑なグラフでは「事態の推移」を読み取ることはできない。マスメディアが感染者数の増加だけを記事にする無責任な行為は、事実の報道などではなく、パニックを煽っているのと同じなのである。

だが、右の対数グラフでは、実数の変化にとらわれずに、感染の拡大がいまどういう傾向にあるかを「グラフの形状の変化から直接読み取る」ことができる

「1万1000人なら、グラフがやや右上がりに曲がる。右上がりに曲がることは、感染が『より拡大傾向にある』ことを意味する」

「1万人なら、グラフは直線のままで、感染はそれまでと『同じ率』で拡大を続けている」

「9000人なら、グラフは右に寝てくるから、感染は『やや収束に向かいつつある』」


(3につづく)

April 01, 2020

武漢コロナウイルスの世界的感染において、「log scale」の有用性がやっと認識されてきたようだが、その「使い方」、「読み方」は、いまだに満足いくものではない。

なので、「感染者数グラフの正しい書き方、読み方」をもっと理解してもらうために、以下の記事を書く。誰が読んでもわかるようにはしたいのはやまやまだが、だからといって、読む人の努力がまったく必要ないというような過剰サービスをするつもりはない。譲れないところは正確を期して、しっかり書く。

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まず最初に理解しなければならないのは、なにも「対数グラフが見やすくて便利だ」などと、単に視覚的な意味の話をしているのではない、ということだ。
武漢コロナウイルスの感染拡大のような時間とともに変化が急激になる自然現象こそ、対数グラフで表現するのが妥当なのは、なぜなのか」ということを、なにより先に理解しなければ意味がない。

先に簡略化した結論を示せば、
「時間軸に沿って推移する自然現象の動的な変化」には「指数関数的に推移するケース」がかなり多いから
である。

ウイルス感染症の拡大をlog scaleグラフで見ると「より全体を読めるようになる」が、それは、感染症のオーバーシュートが、現象として「自然界では、よくある変化のしかた」だからなのである。

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自然現象、ことに「時間と事象の関係」が、リニアではなく、むしろ、対数的であることが多々ある。

もっとかみ砕いて書くと、時間が「1日、2日,3日,4日」とか、「1年、2年、3年、4年」とか、「決まった数だけ変化していく」間に、現象は、例えば、感染者が「1人、2人、4人、8人、16人」とか、温度が「1度、10度、100度、1000度、10000度」などというふうに、「時間がたつにつれて増加が急激になる」(あるいは「時間がたつにつれて減少が急激になる」)ような事象が少なくない、ということだ。

例えば、モノが冷えるとき、時間の経過とともにみられる「ニュートンの冷却の法則」。時間経過に対する放射性物質の崩壊。細胞分裂。「時間と位置の関係」である雨粒の落下速度。コンデンサーに蓄えられた電気の減衰。 地震の強さを示すマグニチュード。音圧。エントロピー。情報量。大気圧と高度の関係など、とても書ききれない。

だからこそ、自分は武漢コロナウイルスの対数グラフについては、X軸もY軸も対数であるような「両対数グラフ」ではなく、X軸だけが「リニアな時間」、Y軸には「対数で示した感染者数」という「片対数グラフ」を推奨するわけである。


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生物の生理現象ではかなりの部分が指数関数的にできているらしいが、細胞分裂非常に典型的でわかりやすい現象だ。

一般的な細胞は、「ひとつの細胞が2つに分裂して」増えていく。だから、その増え方は「1、2,3,4」という「リニアな増加」ではない。「1、2、4、8」と、倍々に増えていく「指数関数的な増加」なのである。「時間がたてばたつほど」、その数は「急激に」増えるのが特徴だ。
例えば、人間の赤ちゃんは母親の体内で最初はとても小さい。だが、臨月が近づくにつれて急激に発達するから、おかあさんのお腹は急に大きく膨らんで、出産が近いことを知らせてくれるのである。

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ウイルスの増殖そのものは、一般的な生物にみられる「1、2、4、8」という細胞分裂ではない。

というのも、一般的な生物では、細胞は「ひとつが、2つに分裂する「1、2、4、8」的な方式(=「対数増殖」)で数を増やしていくが、ウイルスは「1つのウイルスが、入り込んだ宿主、たとえば人間の細胞内で数を大きく増やし、それを体外に一気に放出して、次の宿主を探す」という感染方式(=「一段階増殖」)だからで、例えば「ひとつのウイルスが、放出時にはいきなり10000個になっている」ような増殖形態だからだ。

だが、
ウイルス感染を、「感染者数」という角度からみてみることで、指数関数的な現象として把握することが可能になる。

なぜなら、感染拡大の、特に初期においては、「ひとりの感染者が2人にうつし、2人の感染者が4人にうつし、4人の感染者が8人にうつす」というふうに、ひとりの感染者から「指数関数的」にウイルス感染して広がっていく。これは一般的な生物での増殖と同じ、指数関数的な増え方である。(1人の感染者が何人にうつすかを示す「基本再生産数」は現在のところ、「世界全体で2から2.5」)

このことは、ウイルス感染の拡大を、「死亡者数」ではなく、「感染者数」でみていったほうが事態の推移がわかりやすいと考える理由でもある。
死亡者数の推移は、自然現象そのものというよりも、その国のふだんの衛生状態、医療制度の整備度合い、国としての裕福さなどのような、人工的個別的な要因に左右されやすい。

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ウイルス感染者数の増加にみられる「自然現象によくある指数的な増加傾向」の「数の変化の特徴」を、もっと平易な言い方になおすと、
最初の段階では変化の量が少ないが、時間の経過とともに爆発的な増大に移行する現象
ともいえる。

最初のうちは、「1→2→4→8」と、数字の絶対値が小さい。だから、人はほとんどその意味の重さに気づかないし、ビビらない。

だが、その数字がやがて、「256→512→1024→2048」となっていくと、事の重大さに気づき、さらに「16384→32768→65536→131072」となると、パンデミックだ!と誰もが気づいて、絶望感が漂うわけである。(いわゆる、日本でいう「将棋盤問題」、西洋でいう「小麦とチェス盤の問題」である)
この「時間の経過とともに、変化が急激になる」という部分は、とても大事な部分で、武漢コロナウイルス感染者の対数グラフが、両対数グラフではなく、X軸が「リニアな時間」になった片対数グラフが望ましいと考える理由のひとつでもある。
自然界の指数関数的な増加現象は、常にリニアでゆっくりした時間変化と対比させながら注視していかないと、その激増や終息の始まりを視覚的に追っていけないのである。

(2につづく)
2020年4月2日、「感染者数グラフ」の正しい書き方、読み方。(2)なぜ実数が増えているのに「事態は落ち着いてきた」と言えるのか。 | Damejima's HARDBALL

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