June 2020
June 11, 2020
滞在先のホテルで亡くなったエンゼルスのタイラー・スカッグスの「死因」について、日本版Wikiには「薬とアルコールを併用していて、嘔吐物が喉に詰まって窒息した」と書かれている。
風邪薬でも飲んで寝ていたとでも、言いたいのか。
バカバカしい。
それは真実ではない。
事実は、こうだ。
オピオイド乱用には呼吸に不具合を起こす副作用がある。だから、スカッグスの死が、果たして本当に嘔吐物が詰まったことだけが死因か、それとも、2種類の薬物そのものも直接の死因になったのかは、Wikiを読むだけではわからない。
いずれにせよ、彼の死の原因は「風邪気味だったため、市販の風邪薬と酒を飲み、ホテルで寝ている間に嘔吐で死んだ」などというような、牧歌的な話ではない。
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オピオイドは、本来なら末期癌患者の疼痛緩和にも使われるような「強い鎮痛剤」だ。「健康な人が風邪をひいたとき使う錠剤」というような軽い意味の「市販薬」では、まったくない。そもそも、健康な一般人が医師からオピオイドを処方されることなど、まったくありえない。
ところが、近年アメリカではオピオイドの「乱用」で万単位の人が亡くなり、社会問題化している。アメリカ疾病管理予防センター(CDC)によれば、オピオイド過剰摂取による死者は2015年には33,091人にのぼっている。
本来なら特殊な医療目的にしか使われない強い鎮痛剤を不道徳な目的に乱用した人間たちが「オピオイドをドラッグの一種にしてしまった」のである。
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オピオイドには、天然成分由来のものから化学合成のものまで、たくさんの種類がある。
オキシコドンは、乱用目的のオピオイドの代表格のひとつで、アヘン成分からつくられる。トヨタの現役の常務取締役だったアメリカ人女性、ジュリー・ハンプが、アクセサリーと称して偽装輸入しようとして逮捕された薬物も、これである。
オピオイド乱用が社会問題になったアメリカではメーカーへの訴訟が多数起こされ、オキシコドン製造元だったパーデュー・ファーマ社は倒産している。そのため、オピオイド乱用の需要は、オキシコドンから、ヘロインの50倍もの強さがあるといわれている「フェンタニル」などに流れた。
フェンタニルで死亡した有名人には、プリンス(2016年)、トム・ペティ(2017年)など、ミュージシャンが多い。彼らはタイラー・スカッグス同様、複数の薬物とアルコールを同時に服用していて亡くなっている。
タイラー・スカッグスは、ミュージシャンたちと同じく、オキシコドンとフェンタニルと酒を「同時に」やっていて死んだのである。
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先日、ミネソタ州で偽札を使おうとして警官に拘束され、亡くなったジョージ・フロイド氏(以下、敬称略)の剖検(=遺体を解剖して検査すること)からも、このフェンタニルが検出されている。
また、フェンタニルだけでなく、メタンフェタミンや(=いわゆる覚醒剤。日本では昔の俗称でいうシャブ、アメリカの俗語ではMeth)、11-Hydroxy Delta-9(=脱炭酸したマリファナの代謝物)、モルヒネなど、他の麻薬や薬物が「同時に」検出されている。
彼にはこの20年間に5回のコカイン使用での逮捕歴があり、端的にいえば、逮捕時の彼は明らかにオピオイド中毒であり、「かなりラリった状態」にあったといえる。
資料:https://www.hennepin.us/-/media/hennepinus/residents/public-safety/documents/Autopsy_2020-3700_Floyd.pdf
資料:https://thecourierdaily.com/george-floyd-criminal-past-record-arrest/20177/
彼のヘモグロビンS数値は約38パーセントだったが、これはアフリカ、地中海、中近東、インドなどにみられる黒人特有の遺伝性貧血「鎌状赤血球症」が彼の持病であり、日常生活で発症するレベルではないものの、例えば酸素分圧低下のような偶発的な状況変化に遭遇することによって発症する可能性があったと考えられる数値である。
なお剖検には、彼が「重度の動脈硬化性心疾患」はじめ「心臓に重い持病をかかえていたこと」が明記されている。(この事実を根拠に、ジョージ・フロイドの死が逮捕時の窒息ではなく、もともと持病を抱えていた心臓の発作による死であると指摘する人も多数いる)
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アメリカ各州で大麻解禁が進んだ背景には、こうしたオピオイド中毒の蔓延がある。
オピオイド対策に手を焼いた州当局は、「オピオイド依存がこれ以上増えるくらいなら、比較的安全な麻薬である大麻を解禁することで、ジャンキーたちをソフトドラッグに誘導したほうがマシだ」という「屁理屈」に飛びついて、事実上、「社会を管理する責任」を放棄したのである。
そうした州の知事の多くは民主党である。ジョージ・フロイドが住んでいたミネソタ州知事 Tim Walz も民主党であり、ミネソタは大麻解禁州のひとつだ。
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では、大麻解禁という屁理屈で「ハードドラッグ蔓延」は防げたのか。
ジョージ・フロイドもその典型例だが、オピオイドと大麻を同時にやる人が増えている。大麻解禁は、「ハードドラッグにジャンプアップする『助走路』を作っただけにすぎない」可能性が指摘されている。
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フェンタニル生産地は中国といわれ、アメリカでは何トンものフェンタニルが水揚げ寸前に摘発されたこともある。トランプ政権はフェンタニル輸入防止のため、中国に対処を要求したが、実質なにも実施されていないらしい。
フェンタニル。武漢肺炎。偽ドル紙幣。すべて中国由来ともいわれる「輸入品」だが、それらすべてに侵されていたジョージ・フロイドは、本当に「ロールモデル」、模範的といえる人物なのだろうか。
風邪薬でも飲んで寝ていたとでも、言いたいのか。
バカバカしい。
それは真実ではない。
事実は、こうだ。
タイラー・スカッグスは、「オキシコドンとフェンタニルという代表的なオピオイド」を2種類同時に「麻薬として乱用」していて、窒息して死んだのである。
オピオイド乱用には呼吸に不具合を起こす副作用がある。だから、スカッグスの死が、果たして本当に嘔吐物が詰まったことだけが死因か、それとも、2種類の薬物そのものも直接の死因になったのかは、Wikiを読むだけではわからない。
いずれにせよ、彼の死の原因は「風邪気味だったため、市販の風邪薬と酒を飲み、ホテルで寝ている間に嘔吐で死んだ」などというような、牧歌的な話ではない。
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オピオイドは、本来なら末期癌患者の疼痛緩和にも使われるような「強い鎮痛剤」だ。「健康な人が風邪をひいたとき使う錠剤」というような軽い意味の「市販薬」では、まったくない。そもそも、健康な一般人が医師からオピオイドを処方されることなど、まったくありえない。
ところが、近年アメリカではオピオイドの「乱用」で万単位の人が亡くなり、社会問題化している。アメリカ疾病管理予防センター(CDC)によれば、オピオイド過剰摂取による死者は2015年には33,091人にのぼっている。
本来なら特殊な医療目的にしか使われない強い鎮痛剤を不道徳な目的に乱用した人間たちが「オピオイドをドラッグの一種にしてしまった」のである。
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オピオイドには、天然成分由来のものから化学合成のものまで、たくさんの種類がある。
オキシコドンは、乱用目的のオピオイドの代表格のひとつで、アヘン成分からつくられる。トヨタの現役の常務取締役だったアメリカ人女性、ジュリー・ハンプが、アクセサリーと称して偽装輸入しようとして逮捕された薬物も、これである。
オピオイド乱用が社会問題になったアメリカではメーカーへの訴訟が多数起こされ、オキシコドン製造元だったパーデュー・ファーマ社は倒産している。そのため、オピオイド乱用の需要は、オキシコドンから、ヘロインの50倍もの強さがあるといわれている「フェンタニル」などに流れた。
フェンタニルで死亡した有名人には、プリンス(2016年)、トム・ペティ(2017年)など、ミュージシャンが多い。彼らはタイラー・スカッグス同様、複数の薬物とアルコールを同時に服用していて亡くなっている。
タイラー・スカッグスは、ミュージシャンたちと同じく、オキシコドンとフェンタニルと酒を「同時に」やっていて死んだのである。
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先日、ミネソタ州で偽札を使おうとして警官に拘束され、亡くなったジョージ・フロイド氏(以下、敬称略)の剖検(=遺体を解剖して検査すること)からも、このフェンタニルが検出されている。
また、フェンタニルだけでなく、メタンフェタミンや(=いわゆる覚醒剤。日本では昔の俗称でいうシャブ、アメリカの俗語ではMeth)、11-Hydroxy Delta-9(=脱炭酸したマリファナの代謝物)、モルヒネなど、他の麻薬や薬物が「同時に」検出されている。
彼にはこの20年間に5回のコカイン使用での逮捕歴があり、端的にいえば、逮捕時の彼は明らかにオピオイド中毒であり、「かなりラリった状態」にあったといえる。
資料:https://www.hennepin.us/-/media/hennepinus/residents/public-safety/documents/Autopsy_2020-3700_Floyd.pdf
資料:https://thecourierdaily.com/george-floyd-criminal-past-record-arrest/20177/
彼のヘモグロビンS数値は約38パーセントだったが、これはアフリカ、地中海、中近東、インドなどにみられる黒人特有の遺伝性貧血「鎌状赤血球症」が彼の持病であり、日常生活で発症するレベルではないものの、例えば酸素分圧低下のような偶発的な状況変化に遭遇することによって発症する可能性があったと考えられる数値である。
なお剖検には、彼が「重度の動脈硬化性心疾患」はじめ「心臓に重い持病をかかえていたこと」が明記されている。(この事実を根拠に、ジョージ・フロイドの死が逮捕時の窒息ではなく、もともと持病を抱えていた心臓の発作による死であると指摘する人も多数いる)
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アメリカ各州で大麻解禁が進んだ背景には、こうしたオピオイド中毒の蔓延がある。
オピオイド対策に手を焼いた州当局は、「オピオイド依存がこれ以上増えるくらいなら、比較的安全な麻薬である大麻を解禁することで、ジャンキーたちをソフトドラッグに誘導したほうがマシだ」という「屁理屈」に飛びついて、事実上、「社会を管理する責任」を放棄したのである。
そうした州の知事の多くは民主党である。ジョージ・フロイドが住んでいたミネソタ州知事 Tim Walz も民主党であり、ミネソタは大麻解禁州のひとつだ。
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では、大麻解禁という屁理屈で「ハードドラッグ蔓延」は防げたのか。
ジョージ・フロイドもその典型例だが、オピオイドと大麻を同時にやる人が増えている。大麻解禁は、「ハードドラッグにジャンプアップする『助走路』を作っただけにすぎない」可能性が指摘されている。
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フェンタニル生産地は中国といわれ、アメリカでは何トンものフェンタニルが水揚げ寸前に摘発されたこともある。トランプ政権はフェンタニル輸入防止のため、中国に対処を要求したが、実質なにも実施されていないらしい。
フェンタニル。武漢肺炎。偽ドル紙幣。すべて中国由来ともいわれる「輸入品」だが、それらすべてに侵されていたジョージ・フロイドは、本当に「ロールモデル」、模範的といえる人物なのだろうか。
June 09, 2020
アメリカのスポーツメディア The Athleticが、ヤンキースのサイン盗み疑惑について新しい情報を報道している。
報道によれば、ニューヨークの裁判官 Jed Rakoff がヤンキースに「2017年にロブ・マンフレッドがヤンキース宛てに出した書簡の開示」を要求した。
だが、ヤンキース側は、書簡の完全な開示が「ヤンキースの評判に重大な傷をつける」との理由をつけて、完全な開示を拒絶した。ヤンキースは「個人情報を部分的に秘匿した形に編集した手紙」を裁判所に開示したらしい。
裁判所側の要求に完全には応えなかったということは、逆にいえば、元の「未編集の書簡」には「ヤンキースにとってよほどまずいことが、具体的な固有名詞とともに書かれている」という意味だ。
そして、これも非常に重要なことだが、こうしたヤンキースの不正情報を、ロブ・マンフレッドは「とっくの昔に知っていて」、「ヒューストンが槍玉に挙げられているときにさえ、ヤンキースの件を今の今まで黙ってきた」っていう意味にもなる。
もし、この件が不正として確定すれば、ロブ・マンフレッドの進退が問われるのは確実だ。
「編集された書簡」が公開されるのは、理由はよくわからないが、「6月19日以降」らしい。おそらくヤンキースの弁護士は「6月19日までに公開を阻止する訴訟を起こす」だろうとThe Athleticの記事は予測しているが、もしそういうことになれば、ヤンキース側に「不正行為に身に覚えがある」ことはかえって確定になる。
2017年は、「アーロン・ジャッジが突如としてブレークした年」でもある。
アーロン・ジャッジは、2016年MLBデビュー直後に、84打数42三振もの「異常な数の三振」をしていた超大型扇風機だ。
その人間が、2017年前半に「突如としてバットにボールが当たるようになって」、ジョー・ディマジオが持っていたヤンキースの新人ホームラン記録を塗り替え、さらにはMLBの新人ホームラン記録さえ塗り替えたのである。(現在では2019年ピート・アロンソが記録を更新して、53本がMLB記録)
このときのアーロン・ジャッジのホームラン記録もかなり「異常」だった。なにせ、ほとんどのホームランが「オールスター前」だったからだ。オールスター後の彼は、2016年と同じ、ただの「扇風機」に戻って、「三振のメジャーワースト記録を更新」しているのである。
「2017年の前半だけボールが見えた理由」を、アーロン・ジャッジ自身にぜひ説明してもらいたいものである。
ヒューストン・アストロズにサイン盗みのテクニックを導入したことがバレて、2020年に指揮するはずだったメッツの監督をクビになったのは、プエルトリコ出身のカルロス・ベルトランだが、彼は2014年から2016年までヤンキースに所属していた。
ヤンキース時代のベルトランは、給料にまったく見合わない最悪の数字しか残せていないが、2018年12月にどういうわけか、ヤンキースのGMアドバイザーに就任している。もし、この「わけのわからない特別待遇」が、「サイン盗み導入への報酬」だとしたら、大問題である。
というのも、2017年にMLB機構はボストン・レッドソックスをApple Watchを悪用したサイン盗みで罰しているのだが、ことときボストンは、ヤンキースだって傘下のテレビ局であるYESのカメラを悪用したサイン盗みをやっていると反論しているからである。
だがMLB機構は、この2017年のボストンのヤンキース批判について、「証拠不十分」と判定し、ヤンキースをまったく罰しなかった。
電子機器を使用してのサイン盗みは禁止、MLBがレッドソックスに罰金処分 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
もし仮に、冒頭に挙げた The Athletic が指摘した書簡の存在が、「2017年までのヤンキースのサイン盗みを、MLB機構がとっくの昔から知っていた」ことの証拠で、また、ヒューストンで不正をやったカルロス・ベルトランがヤンキースでも不正に関わったことが明らかになるとしたら、ヤンキース自身の責任が重大なことはもとより、ロブ・マンフレッドは責任をまぬがれないし、ベルトランはMLBから追放になるだろうし、ヤンキースGMのブライアン・キャッシュマンの責任問題が浮上し、アーロン・ジャッジは自分の立場を明確にする必要が出てくるだろう。
いずれにしても、「うんざりした」。
MLBの再開問題もそうだが、ロブ・マンフレッドのMLBには、本当にもう、「うんざり」だ。
Judge orders 2017 MLB letter to Yankees unsealed; plaintiffs say it details sign stealinghttps://t.co/TuYEq9jBsJ
— Evan Drellich (@EvanDrellich) June 13, 2020
報道によれば、ニューヨークの裁判官 Jed Rakoff がヤンキースに「2017年にロブ・マンフレッドがヤンキース宛てに出した書簡の開示」を要求した。
だが、ヤンキース側は、書簡の完全な開示が「ヤンキースの評判に重大な傷をつける」との理由をつけて、完全な開示を拒絶した。ヤンキースは「個人情報を部分的に秘匿した形に編集した手紙」を裁判所に開示したらしい。
裁判所側の要求に完全には応えなかったということは、逆にいえば、元の「未編集の書簡」には「ヤンキースにとってよほどまずいことが、具体的な固有名詞とともに書かれている」という意味だ。
そして、これも非常に重要なことだが、こうしたヤンキースの不正情報を、ロブ・マンフレッドは「とっくの昔に知っていて」、「ヒューストンが槍玉に挙げられているときにさえ、ヤンキースの件を今の今まで黙ってきた」っていう意味にもなる。
もし、この件が不正として確定すれば、ロブ・マンフレッドの進退が問われるのは確実だ。
「編集された書簡」が公開されるのは、理由はよくわからないが、「6月19日以降」らしい。おそらくヤンキースの弁護士は「6月19日までに公開を阻止する訴訟を起こす」だろうとThe Athleticの記事は予測しているが、もしそういうことになれば、ヤンキース側に「不正行為に身に覚えがある」ことはかえって確定になる。
2017年は、「アーロン・ジャッジが突如としてブレークした年」でもある。
アーロン・ジャッジは、2016年MLBデビュー直後に、84打数42三振もの「異常な数の三振」をしていた超大型扇風機だ。
その人間が、2017年前半に「突如としてバットにボールが当たるようになって」、ジョー・ディマジオが持っていたヤンキースの新人ホームラン記録を塗り替え、さらにはMLBの新人ホームラン記録さえ塗り替えたのである。(現在では2019年ピート・アロンソが記録を更新して、53本がMLB記録)
このときのアーロン・ジャッジのホームラン記録もかなり「異常」だった。なにせ、ほとんどのホームランが「オールスター前」だったからだ。オールスター後の彼は、2016年と同じ、ただの「扇風機」に戻って、「三振のメジャーワースト記録を更新」しているのである。
「2017年の前半だけボールが見えた理由」を、アーロン・ジャッジ自身にぜひ説明してもらいたいものである。
ヒューストン・アストロズにサイン盗みのテクニックを導入したことがバレて、2020年に指揮するはずだったメッツの監督をクビになったのは、プエルトリコ出身のカルロス・ベルトランだが、彼は2014年から2016年までヤンキースに所属していた。
ヤンキース時代のベルトランは、給料にまったく見合わない最悪の数字しか残せていないが、2018年12月にどういうわけか、ヤンキースのGMアドバイザーに就任している。もし、この「わけのわからない特別待遇」が、「サイン盗み導入への報酬」だとしたら、大問題である。
というのも、2017年にMLB機構はボストン・レッドソックスをApple Watchを悪用したサイン盗みで罰しているのだが、ことときボストンは、ヤンキースだって傘下のテレビ局であるYESのカメラを悪用したサイン盗みをやっていると反論しているからである。
だがMLB機構は、この2017年のボストンのヤンキース批判について、「証拠不十分」と判定し、ヤンキースをまったく罰しなかった。
電子機器を使用してのサイン盗みは禁止、MLBがレッドソックスに罰金処分 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
もし仮に、冒頭に挙げた The Athletic が指摘した書簡の存在が、「2017年までのヤンキースのサイン盗みを、MLB機構がとっくの昔から知っていた」ことの証拠で、また、ヒューストンで不正をやったカルロス・ベルトランがヤンキースでも不正に関わったことが明らかになるとしたら、ヤンキース自身の責任が重大なことはもとより、ロブ・マンフレッドは責任をまぬがれないし、ベルトランはMLBから追放になるだろうし、ヤンキースGMのブライアン・キャッシュマンの責任問題が浮上し、アーロン・ジャッジは自分の立場を明確にする必要が出てくるだろう。
いずれにしても、「うんざりした」。
MLBの再開問題もそうだが、ロブ・マンフレッドのMLBには、本当にもう、「うんざり」だ。
June 07, 2020
武漢肺炎で10万人もの命が失われたアメリカでは、MLB機構と選手会との交渉がまとまらない。その一方では、ジョージ・フロイドさん事件が起きてBlack Lives Matterスローガンが都市を席巻している。
自分の基本は、「対立にエネルギーを無駄に費やすより、知恵で無駄なエネルギーをかけずに解決する」ということだ。
そういう意味でいうと、例えば、新冷戦といわれだしている中国とアメリカの対立にしても、こと中国に武漢肺炎の責任をとらせるという意味だけなら、(ここにはあえて書かないが)両者のメンツが立つ解決方法は「ある」。
また、MLB機構と選手会の対立の原因は単純に「カネの問題」だろうと思うから、正直にいえば、それは「深刻とは呼べない低レベルの問題」だと、自分などは思う。問題は、事態の複雑さではなくて、「議論のやりかた」であって、「カネを出せ」「元手がないのに出せるわけないだろ」などという「押し問答」にしてしまっては、解決の糸口がみつかるわけはない。
対立を解消できないものにさせてしまっているのは、交渉者のどちらもが肩にチカラが入りすぎているせいだ。論点の設定そのものが間違ってる。りきんでバットを振ってばかりいては、バットにボールが当たらなくなり、空振りばかり増える。MLB機構も選手会も、三振ばかりしていてはダメだ。
また、自分だけがそう思ったのかもしれないが、Black Lives Matter問題にしても、人種差別の問題としてとらえると、アメリカ史の根深い部分がどうのこうと、こむつかしい話になってしまう。
だが、はたして問題のとらえかたは、それだけしかないのか。自分などが思うには、それでは狭すぎる。というか、堅苦しい。
アメリカでいま、さまざまな問題が噴出し、そのどれもが解決に時間がかかっているのは、「アメリカが疲れている」、「解決のための柔軟なランディングのアイデアが不足している」せいで、特に前者の「疲れている」という点にあるんじゃないかと思う。
それはそうだろう。
何十万人もウイルス病の感染者が出て、10万人もの人が亡くなり、慣れないマスクをして、他人との距離に気をつかうような「アメリカ人の苦手な閉鎖的現状」がもう何ヶ月も続いているのである。いくらタフさを売り物にする国民性とはいえ、「疲れるのは当然」だ。
アメリカがいま受け入れるべきなのは、「ずっと人種差別してきたなどというような過度の反省を社会全体に求めるような、大袈裟なこと」ばかりではなく、もっと単純に「自分たちはどうやらちょっと疲れているらしい、という素直な自己認識」だと思う。
アメリカは、「自分たちが疲れていること」を、否定せず、「受け入れる」べきだ。
そうすることで脳をリフレッシュし、柔軟になった脳であらためて隣人と話し合うことが、自分の「2020年疲れたアメリカ」への提案である。
自分の基本は、「対立にエネルギーを無駄に費やすより、知恵で無駄なエネルギーをかけずに解決する」ということだ。
そういう意味でいうと、例えば、新冷戦といわれだしている中国とアメリカの対立にしても、こと中国に武漢肺炎の責任をとらせるという意味だけなら、(ここにはあえて書かないが)両者のメンツが立つ解決方法は「ある」。
また、MLB機構と選手会の対立の原因は単純に「カネの問題」だろうと思うから、正直にいえば、それは「深刻とは呼べない低レベルの問題」だと、自分などは思う。問題は、事態の複雑さではなくて、「議論のやりかた」であって、「カネを出せ」「元手がないのに出せるわけないだろ」などという「押し問答」にしてしまっては、解決の糸口がみつかるわけはない。
対立を解消できないものにさせてしまっているのは、交渉者のどちらもが肩にチカラが入りすぎているせいだ。論点の設定そのものが間違ってる。りきんでバットを振ってばかりいては、バットにボールが当たらなくなり、空振りばかり増える。MLB機構も選手会も、三振ばかりしていてはダメだ。
また、自分だけがそう思ったのかもしれないが、Black Lives Matter問題にしても、人種差別の問題としてとらえると、アメリカ史の根深い部分がどうのこうと、こむつかしい話になってしまう。
だが、はたして問題のとらえかたは、それだけしかないのか。自分などが思うには、それでは狭すぎる。というか、堅苦しい。
アメリカでいま、さまざまな問題が噴出し、そのどれもが解決に時間がかかっているのは、「アメリカが疲れている」、「解決のための柔軟なランディングのアイデアが不足している」せいで、特に前者の「疲れている」という点にあるんじゃないかと思う。
それはそうだろう。
何十万人もウイルス病の感染者が出て、10万人もの人が亡くなり、慣れないマスクをして、他人との距離に気をつかうような「アメリカ人の苦手な閉鎖的現状」がもう何ヶ月も続いているのである。いくらタフさを売り物にする国民性とはいえ、「疲れるのは当然」だ。
アメリカがいま受け入れるべきなのは、「ずっと人種差別してきたなどというような過度の反省を社会全体に求めるような、大袈裟なこと」ばかりではなく、もっと単純に「自分たちはどうやらちょっと疲れているらしい、という素直な自己認識」だと思う。
アメリカは、「自分たちが疲れていること」を、否定せず、「受け入れる」べきだ。
そうすることで脳をリフレッシュし、柔軟になった脳であらためて隣人と話し合うことが、自分の「2020年疲れたアメリカ」への提案である。