July 14, 2008

セクソンが解雇された記事だが、セクソンのことは後日に回しておく。シアトル公式サイトのセクソン解雇記事で、リグルマンが6月29日に続いて今後の捕手の起用方法について触れた部分があるが、メディアでの報道ぶり、ブログでの解釈には、いろいろと問題があって、このときのリグルマンの発言がきちんと伝わっていないどころか、多少歪められてもいるので、それから触れてみる。
まずは、自分の目と解釈でじっくりと元ソースを読んでみてほしい。(以下は関係部分の抜粋)

Mariners release infielder Sexson
By Jim Street / MLB.com 07/10/2008 4:00 PM ET
http://seattle.mariners.mlb.com/news/article.jsp?ymd=20080710&content_id=3107402&vkey=news_sea&fext=.jsp&c_id=sea
Although catcher Kenji Johjima recently took ground balls at first base, there are no immediate plans to put him there in a game situation.

"That is not something I see happening in the near future, Riggleman said. "We want to take a good look at [Jeff] Clement behind the plate and if Joh starts coming on with the bat and forces himself into the lineup, I guess we would have to consider him over [at first base] some."



この文章、簡単なようでいて、筆者的にはけっこうニュアンスが難しい文章だと思っている。意図的に直訳気味にした訳を載せておく。この文章には、take a good look、would、forceなど、いくつか注意すべき表現がある。

●当ブログの解釈
キャッチャー城島は最近ファーストでゴロ捕球練習をしているが、ゲームシチュエーションによって彼を一塁に回すという緊急なプランはない。(筆者注:ここまではライターであるMLB.comのジム・ストリートの意見。次からがリグルマンの意図)

リグルマン「それは僕が近い将来起こりえると考えるハプニング的な何かとは違うな。我々は今後もクレメントを捕手としてじっくりと見守っていきたいと思っている。もしも城島のバットがいい結果を出し始めて先発ラインアップに割り込んでくるようなことがあるんだったら、(城島を1塁に入れることも)少しは考えなくてはならないかもしれないけどね(それはありえない)。」

マーサマーサとポール
ビートルズの1968年のMartha My Dearという曲がある。
ポール・マッカートニーが別れた女性のことを歌ったなどと、さまざまに解釈のある曲だが、直接には「マーサ」とは、当時ポールが飼っていた犬の名である。この曲の詞にちょうど、take a good lookという表現が2度、続けて使われている。
リグルマンがWe want to take a good look at Clement.という表現をとるとき、ただ「感情抜きに観察したい」とクールな意味で言っているわけではない。だから上に挙げた訳で「見守っていく」と好意的なニュアンスを強く加えて訳した。またtake a lookとtake a good lookは基本的に意味が違う。

次に、forces himselfという表現。城島の打撃復活で先発ラインアップに復帰する可能性についてリグルマンは、(Johjima) forces himself into the lineup.つまり、城島によるスタメン強奪(割り込み)と、「主語」をリグルマン自身でなく城島にしている。これはどうみても実に微妙な表現だ。

3つ目に、wouldという単語。野球のインタビューでしばしば使われることは、このブログでも一度説明したことがあるのでおわかりと思う。仮定法過去というやつで、学校で習ったはずだ。ありえないことを一度仮定して、それからモノを言うという裏返しな論法で、便利な英語表現だ。

まとめると、リグルマンは、「すぐに城島の打撃が調子を大きく取り戻すことはあまり期待できないと考えている」「では、もし城島の打撃が戻ったとしたら?それでもクレメントを捕手からはずすことはしない」「ありえないことだが、もし城島の打撃が戻ったら、その場合はかえって城島の一塁コンバートが再度プランにのぼってくる」そういう3つのニュアンスを同時に言ってのけているのであって、打撃が戻っても城島を正捕手に戻すことなど全く念頭にないこと、クレメントの1塁コンバートはまずないことの2点は当然、このインタビューから読み取れなければならないし、さらに言うなら、すでにわかっていたことだが、リグルマンが打撃不振だけで城島を干しているのではないことも明言したに等しい。

今後の城島の進路、というか退路について、なかなか重い発言であることがわかってもらえただろうか。

●MAJOR.JPは誤報というより、流言。
さて対比する意味で、このニュースについてのメディアの報道ぶりを笑っておこう。適当な翻訳で、しかも元ソースを歪めて流すことの多いので有名なMAJOR.JPだ。

城島の一塁起用はある? セクソン放出で監督が見解
http://mlb.yahoo.co.jp/headlines/?a=14731
リグルマン監督代行は、城島の一塁起用について「近い将来に見ることはないだろう」と明言。「我々は(期待の若手であるジェフ・)クレメントがキャッチャーを務めるところを見たいし、もしジョー(城島の愛称)が復調して打撃に集中できるようになれば、そのときは起用法を考えなくてはならなくなると思う」との見解を示した。
マリナーズは、オールスターまではホセ・ビドロとミゲル・カイロの両内野手をファーストで併用する予定。傘下の3Aタコマでプレーする若手有望株のブライアン・ラヘア一塁手も新たなレギュラー候補だが、あいにく足の故障から復帰したばかりで、しばらくはマイナーでの調整が必要な状況だ。


一読しておわかりだろう。あえて説明するまでもないのだが、MAJOR.JPのライターは「起用法」とお茶を濁した表現をあえてとることで、あたかも城島の打撃が復調してきたら、捕手起用の増加もありうるとリグルマンが発言したかのように、読み手側の読み違えを誘発する書きかたを故意にしている部分がある。おまけにリグルマンがforces himself into the lineupと、実に微妙なことを言った部分はわざとカットしている。
「そのときは起用法を考えなくてはならなくなると思う」という部分は、実際には「打撃復調がもしあるなら、一塁起用も考えなくてはならなくなると思う」程度には訳さないと、自分の歪んだ意図を晒して、恥を晒すことになる。

●某翻訳ブログの文章
リグルマン監督:  「近い将来には、そういうことは考えていない。我々は、今後も捕手としてのジェフ(クレメント)をじっくりと観察していきたいと思っているので、もしジョーに当たりが戻ってきて打線に入れざるを得なくなってきた場合は、(1塁に入れることも)少し考えなくてはならないかもしれない。」

これについても、後半の城島1塁コンバートについての表現が、あいまいなままに訳してしまっていることは、MAJOR.JPの例からもうおわかりいただけることと思う。



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