March 09, 2009

何が偶然で、何が偶然でないか。大事なのは、これだ。
解説者もファンもだが、それを見極めずにあれこれ言っても始まらない。これを書いているのはまだ4回だが、重いのは、偶然転がり込むひとつの牽制死などではなく、偶然ではない要素から起きる「1点の失点」である。

韓国打線2巡目、ランナーを貯められて4番にタイムリーを打たれた。結局、韓国の得点のキーマンはこの4番打者らしい。
初球に、第1打席では通用していたインコースへの食い込むシュート。そして同じ球種を続けて、やや甘く入ったところを三塁線を抜かれたのである。

この場面がまったくの偶然なら別に文句はつけない。
だが、そうではないものは書かざるをえない。

ひとつ目の理由。野球でよく言われることだが、同じ球を続けると甘くなるという言葉がある。同じコースに同じ球種を続ける、というのはそういうリスクを伴うということだ。それはそうだ。プロでも全く同じコースに続けて2球投げるのは簡単ではない。必ず甘くなる。

2つ目に、その「インコースにシュートを連投する」というリスクを犯すなら、サード村田をライン際に寄せるだけのコミュニケーションがとれていないと困る。これは古田も言っている。

3つ目に、ランナーが出たときの城島のリードのクセ。シアトルの試合を年間100試合くらいみればわかる。ランナーが出ると、同じコースを続けてついたり、同じ球種を続けて使う。つまり、ランナーズ・オンで城島はリードが急に単調になり、相手打者に読まれやすい。これは、このダメ捕手さんのもともと持っている特徴である。このクセのおかげで、メジャーでどれだけ打たれていることか。


そして、そもそも、なぜ韓国は2巡目にランナーを貯められたのか。
簡単に言うなら「韓国の打者は1巡目で岩隈の球筋の大部分を見ることができたから」である。

このゲームでの岩隈の本当の決め球はフォークである。なぜならランナーがセカンドに進んだ場面でもフォークを余裕で投げられている。これは、よほどコントロールに自信があるからである。そしてシュート。
だが、その2つの球種の組み立てを、城島は全て1巡目で使い切って、見せてしまった。だからこそ2巡目になったとたんに、いきなりランナーが2人出ているわけだ。


加えて、タイムリーを打たれたあとの5番打者との対戦だが、城島はコントロールはつかないと何度もこのブログで指摘してきた「スライダー」を何度も岩隈に要求して、フォアボールを与え、ピンチを拡大してしまっている。
これもシアトルではよくみる光景。打たれた直後にあわてて組み立てを変える、というやつだ。

WBCでのスライダーの危険性については何度も指摘してきた。
2009年3月1日、杉内にチェンジアップを要求し続けた城島は先制の一発を食らった。
2009年3月9日、「用意してこないプレーヤー」城島はふたたび初回ホームランを食らう。
なぜタイムリーを打たれた直後、塁上にランナーがいる場面で岩隈にとってはコントロールのつかないスライダーでフォアボールなのか。理解に苦しむ。

たまたま韓国のセカンド走者が牽制死してくれたが、これこそが「偶然」というものだ。あのままイニングが続いていたら、混乱したままのバッテリーはもっと失点していただろう。


もう一度言う。
何が偶然で、何が偶然でないか。
それを見極めずにあれこれ言っても始まらない。


追記
ここまで書き終えて7回だが、またランナーズ・オンで韓国4番にインコースのストレート。懲りない捕手である。ツーベースを打たれた。この試合を左右しかねない。またしても韓国の走塁ミスで助かる。4回の牽制死も走塁ミス。

追記2
試合は予想どおり、重い1点で負けた。
楽観的な解説を披露して城島を褒めてばかりいた古田は名捕手野村氏の弟子ではある。だが、今日の試合でよくわかることは、この2人の捕手は全く思考方法が異なることだ。
野村さんは選手への指導が細かい。それはなぜか。「偶然と、そうでない出来事の区別に厳しい」からだ。一見偶然に見えても、プレーは細かい事象の連鎖で起こる。連鎖しやすいプレーの関係がわかっているからこそ、細かい指導で連鎖を断ち切って、失点を防ごうとする。
だが、古田はそうではない。「偶然でないこと」に対する線引きがひどく甘い。そのために発言のポリシーが緩い。
この2人の監督としての実績に大差がある理由がわかる気がする。




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