March 24, 2009

やれやれ。
日本はキューバ・韓国とゲームを繰り返している間に、いつのまにか決勝になってしまった。投打のバランスの普通にとれた中南米チームとの白熱の対戦など、もっと違うゲームバリエーションを見てみたかった。


今回のWBC、結局のところ、対応力の高い韓国に負けては、パターンを修正して、こんどはスカウティングをしないキューバに勝つ。これの繰り返しばかりだった気もする。
正直、見ていてパターンがわかりやすすぎて、多少飽きた。

決勝のポイントも、なぜ日本チームはキューバには完勝できて、宿敵韓国には何度もやられているのか、という点にある。
一般の野球ファンなら誰もが、キューバと韓国の差が、チーム力の差というより、「分析力」や「対応力」にあることはわかっているというのに、メディアのほうは、そんな基本事項にキチンと触れないまま決勝を煽っている。キューバ野球と韓国野球の質的な違いに言及しもしないでゲームを語って、何が面白いのだ。

決勝はお互いの分析力、即応力の勝負になる。キューバに欠けていて、韓国にあるのは「対戦相手を分析するチカラ、それと、分析に基づいてゲームの中で即応するチカラ」だが、それを上回るゲームを岩隈が作れるなら、日本が余裕で勝てるはずだ。


キューバは、試合相手をほとんどスカウティング(分析)しないらしい。そういう素朴な野球スピリットを指して、すべて間違いだとは言い切れない。むしろそれは野球の変わらぬ魅力のひとつでもある。。
ただ、そうはいっても、何の戦略もなしにやたらとバットを振り回してばかりでは、もはや現代野球では勝てなくなってきている。(アメリカにもキューバと似たような部分がある)
今の時代にしてはあまりに相手を研究しなさすぎるキューバ打線は、打線に「中南米系の選手+城島+セクソン」と、振り回すしか能ない打者ばかり並べ、負けに負け続けたシアトルマリナーズ打線のようなものだ。

熱心な野球ファンで知られるキューバのカストロ氏も、キューバの歴史的な敗戦の重さについて「(今後は)より技術的、科学的な方法を適用しなければならない」と、さすがに自国チームの戦略の旧式さ、古臭さを認めている。
【WBC】キューバのカストロ前議長「敗戦から教訓を」
http://sankei.jp.msn.com/sports/mlb/090320/mlb0903201748013-n1.htm

日本戦でのキューバ打線は、何度も何度も同じパターンで凡退し続けてくれた。岩隈の投げたキューバ戦などは、決め球のフォークとシュートを温存して、カーブ、チェンジアップ、スライダーの組み合わせだけで打線をかわすことができたほどだ。
さすがに試合後半には、松阪がヒットを打たれた球種を調べてみればわかるが、キューバ打者もスライダー系を狙い打ちしてきたが、チーム全体で徹底されていたとは言いがたい。そのため打線全体の迫力がなく、連打での得点など期待できるわけがなかった。


だが、韓国は違う。
ねちっこく相手チームの戦略や特徴を分析しつつゲームを進めてくる。

例えば日本が対戦した試合でも、中軸打者は一度は打ち取られてくれても、どこかで対応してくる。同じ球種の連投にその場で対応してきたり(例 3月9日に岩隈が決勝タイムリーを打たれたシュート連投)、2巡目から順応してきたり(例 3月9日に岩隈が決勝タイムリーを打たれた4回表の2人のランナー)、現状のキューバにはない順応力がある。これが打率の低さを補っている。

負けた韓国戦
3月7日 松阪● スライダー系にコントロールのつかない、いわゆる「悪い松阪」。組み立てに煮詰まった城島が苦し紛れにカットボールを要求し、ホームラン浴びて敗戦。古田氏、野村氏が城島を批判。
3月9日 岩隈● 2巡目からボールを見極められた。4回にランナーを貯められ、シュート連投。3塁線に決勝タイムリー浴びる。
3月17日 ダルビッシュ● 初回ランナーが出た場面で、同じコースにスライダー連投で、3失点。城島退場事件。

完勝したキューバ戦
3月16日 松阪○ スライダー系に制球が戻った「いい松坂」。「球を散らした」(松坂談)
3月19日 岩隈○ 2巡目から組み立てをカーブ主体に切り変えつつ、決め球フォークを温存。4回の2死1,3塁ではフォークを3連投、三振に打ち取った。


そんなキューバ・韓国のチームカラーの違いをアタマに入れた上で、あらためて岩隈先発の韓国戦・キューバ戦を比較してみるとどうだろう。
3月9日 岩隈● 2巡目からボールを見極められた。4回にランナーを貯められ、シュート連投。3塁線に決勝タイムリー浴びる。
3月19日 岩隈○ 2巡目から組み立てをカーブ主体に切り変えつつ、決め球フォーク、シュートを温存。4回の2死1,3塁ではフォークを3連投、三振に打ち取った。

韓国戦で打たれた決勝タイムリーは、「シュート」連投。そしてキューバ戦2巡目の2死1,3塁では「フォーク」連投。どちらのゲームもイニングは4回で、つまり打者2巡目のピンチで決め球を連投している点が共通している

0-1で負けた試合の韓国の4番は岩隈のシュート連投を打ち返してきたが、キューバ戦4回の1.3塁でキューバの7番はワンバウンドのフォークを空振りしてくれた。この差が最初に言ったキューバと韓国の「分析力・対応力の差」である。

何が言いたいか、もうおわかりだろう。
2つのゲームで、岩隈自身のピンチでの投球術は特に変わってはいないのである。

松阪の場合は、韓国戦で打たれた後、スライダーのコントロール精度を上げつつシュートを混ぜ、投球内容に手を加えてその後のゲームに臨んでいるわけで、岩隈と同じではない。
岩隈の韓国戦のシュート連投は打たれたから批判して、キューバ戦のフォーク連投は勝ったから批判しないのでは筋が通らない。フォークが打たれないのは、ひとえに岩隈のフォークのコントロールがズバ抜けているからに過ぎない。


だから決勝を見る上で、岩隈の投球術そのものが過去2試合で大きく変わっていたわけではないことをアタマに入れておく必要がある。
2ストライク以降の要所でのシュート、さらにピンチではフォーク連投もいとわない岩隈の必勝パターンが。このまま「不動の必勝パターン」で終わることができるのか、それとも、打率も防御率もたいしたことがないのに決勝まで来た韓国の「対応力」がそれを上回るのか。

以前にも言ったことだが、今の岩隈の絶対的な決め球は韓国戦で多用したシュートでなく、キューバ戦で多用したフォーク(アメリカ風に言うならスプリッター)のほうである。岩隈本人もアメリカ戦後に「フォークには自信がある」と明言している。自信があるから、ランナーがいてもパスボールを怖れることなく、平気でフォークを投げられる。

アメリカ戦終盤、馬原がフォークのスッポ抜けをタイムリーされて2点差まで詰め寄られたが、捕手は馬原と岩隈のフォークには差があることを考慮せずにピンチでバカのひとつ覚えのようにフォークを要求すればいいわけではない。
岩隈の場合はストライクになるフォークと、ボールになるフォークを投げ分けられるほど、フォークのコントロールがいい。馬原のフォークとはレベルに差があるのである。
相手打線は縦の変化に弱い、だから要所でフォークを使えばいい、その程度のリードでは単に絵に書いた餅であり、記録に現れないミスどころか、馬原が2点差に詰め寄られた後の追加点がなかったら、この試合、どうなっていたかわからない。

試合観戦中の追記
3回裏
無死1,2塁、城島はバントを2度失敗。その後サードゴロで二塁封殺。飛んだコースが野手正面なら当然ダブルプレーを食っていた。

4回裏
ちょうど予想どおりのシチュエーションが来た。2死1塁で韓国4番。スライダー スライダー フォーク 直球 フォーク インコースの抜けたストレート。最後の球は本来ならシュートかもしれないが、抜けた球がフラフラとインコースに来たのをレフトフライ。これは明らかに打った側の打ち損じ。うっかりするとホームランだった。これが後々にどう影響するか。打ち取ったと勘違いした判断をすると怪我をする
5回表
ノーアウト1,3塁、城島、外角スライダーを空振り三振。
5回裏
スライダーでカウントをとりにいったところをホームランされた。次打者も内川のファインプレーでセカンドでアウトにはできたが、やはりスライダーを狙い打たれてヒットされている。これが韓国の「対応力」というやつ。試合中盤以降にカウントをとるスライダーに狙いを絞ってくるにしても、キューバは打てないが、韓国は打ってくる。本来ならこのイニングから組み立てを変えているべきだっただろう。
6回裏
打たれた「後」で組み立てを変えてくる、いつもの城島。シュートを多用しはじめた。1イニング遅い。ここからはランナーが出たケースとクリンアップには、シュート、フォークを投げることになる。
7回表
1死1,3塁、城島、フォークをサードゴロ併殺。
8回裏
先頭打者にスライダーを打たれ、無死二塁。1死三塁となって、代打イ・デホに初球のスライダーを狙い打たれて大きなセンター犠牲フライ。1点差に詰め寄られる。
9回表
1死1,2塁、城島センターへの浅いフライ。ランナーは釘付け。ここまで日本ヒット12本、韓国4本。それで3-2なのだから、点の入らない原因は4番城島。
9回裏
スライダーの多投をダルビッシュに要求してはいけないのである。何度も書いたことだ。
そして狙い打たれてタイムリーだ。
言わぬことではない。これでわかったろう?城島は馬鹿だ。
打たれたらいつものようにさっそくストレート主体に切り替えとは。やれやれ。城島。
10回表
2死満塁、城島見逃しの三振。

優勝おめでとう!






Play Clean
日付表記はすべて
アメリカ現地時間です

Twitterボタン

アドレス短縮 http://bit.ly/
2020TOKYO
think different
 
  • 2014年10月31日、PARADE !
  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年6月1日、あまりにも不活性で地味な旧ヤンキースタジアム跡地利用。「スタジアム周辺の駐車場の採算悪化」は、駐車場の供給過剰と料金の高さの問題であり、観客動員の問題ではない。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年6月29日、『父親とベースボール』 (1)星一徹とケン・バーンズに学ぶ 『ベースボールにおける父親の重み』。
Categories
ブログ内検索 by Google
ブログ内検索 by livedoor
Thank you for visiting
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

free counters

by Month