April 02, 2009

シアトルタイムズのベイカーは、以前にマリナーズの社長リンカーンへのインタビューを通じて、城島の契約延長が野球の実力からではなく日本からの異例のトップダウンで決まったことをスッパ抜いた男だが、WBCからキャンプに合流した城島を「ジョー」と呼んで皮肉る記事をさっそく書いた。地元メディアは城島の正捕手復帰など、まったく望んでいないのである。
Just an average "Joh''
http://blog.seattletimes.nwsource.com/mariners/2009/03/31/just_an_average_joh.html

(資料)城島契約延長問題の発端記事を読むには
2008年5月13日、地元記者ベイカーは長い重要な記事を書いた。
(資料)城島契約問題全体の流れを掴むには
時系列にそって「城島問題」を読む。

日本の英語も読まない城島オタなどが、城島のことを「ジョー」などと呼んでメジャー気分だか、外国気分だかに浸って悦にいっているようだが、とんでもない。きちんとこの記事あたり読めばわかる。シアトルの地元の番記者たちは、FoxESPNといった全米メディアの記者も含め、メジャー最低プレーヤーなのにクビにならず、むしろ高給をとりはじめたコネ捕手のことをハッキリ見下して嫌っている。親しみをこめてJohなどと呼びかけた記事など書いたりはしない。

ただ、この記事、ベイカーが多少2重に読めるように細工している。なので、中学生英語でサラッと読んでしまうと意味はわからない。巧妙な細工の種明かしは後日にでもするとして、ちょっとヒントだけ並べておこう。

(ヒント1)
記事タイトルの、Just an average "Joh"
きちんと全文のはしばしに隠された意味の「つながり」に気がついた上でないと、このタイトルの意味からしてわからないだろう。
例えば、中学生英語で「平均的に英語をこなせるジョー(と、ベイカーが親しみを込めて呼び、城島の努力を誉めたたえた)」などと訳したのでは、ベイカーに陰で腹を抱えて笑われる。anという、数を示す冠詞がついていることで、johという単語を「城島」と直訳してはいけないことくらいの程度のことくらい、いくら中学生英語でも、わからないのでは話にならない。ベイカーがJohという単語に、別のものをかけて書き、読む人間の英語力を、城島の英語同様に、思い切りコケにしているのである。

このブログでは、とりあえずこのタイトルを「まさに、どこにでもいる新参モノ。」とでも訳しておくことにする。理由は以下にあげるヒントにもある。まずは自分の頭を使って原文を読んでもらいたい。

(ヒント2)
下記の部分、読んでいて、ちょっとひっかかる箇所がある。そう。grunted for effectという部分だ。なにも、わざわざ使わなくてもよさそうなgruntという単語を使っている。これが記事タイトルを読み解く最も大きなカギだろう。gruntとは、通常は「豚などの動物がブーブーうなる」というような意味だが、ここではおそらく違う。

This morning was a landmark event of sorts in that I had my first conversation, in English, with catcher Kenji Johjima. He was walking by where Jim Street of MLB.com and I were standing and I said "How are you?''
"I'm very good, thank you,'' he said.
At which point, my brain went "Huh?''
Normally, Johjima would respond to such a greeting with a smile and a well-meaning nodding of his head, usually with a word like "good'' grunted for effect.
"That's the first conversation I've ever had with you in English,'' I told him.

(訳)今朝ちょっと画期的な出来事があった。キャッチャー城島健司と初めて「英語で」会話したのだ。僕がMLB.comのジム・ストリートと立ってたら、脇を彼が通りかかった。「調子どう?」と言ってみた。彼は「まぁまぁだよ。ありがとう」と言った。
そのとき僕の脳は「はぁぁぁぁ???」となった。だって通常、彼はそういう(欧米流の)挨拶には、(あまり反応しないことが多いが、反応したとしても)笑みを浮かべつつ善意の意味でクビをタテに振って(日本式に無言の会釈で)返すのが通例だし、good程度の単語をわざとボソっと言うのも普通にある。「これって、君と僕が話した今までで最初の英語の会話だよね」と、僕は彼に言った。


(おまけ1)
この部分に出てくる「オライリー・ファクター」はアメリカのFOXでトップといわれる人気番組のことで、ビリー・オライリーはその番組のたいへん早口のキャスター。外国人の就労ビザをわざわざたとえ話に持ち出してきたのにも、もちろん意味はある。
この部分、城島を誉めていると読める人はよほどのお人好し。後半の文章など、メジャー4年目だか5年目だかにして挨拶程度しかできない城島の英語をひどく馬鹿にしていて笑える。

Now, I don't want to pretend Johjima is fluent enough to go on The O'Reilly Factor and get in a heated debate with ole' Billy about foreign work visas. But it was clear he understood the questioning and was able to phrase his answer so that we understood.
(訳)Johjimaがオライリー・ファクターに出て、ビリー・オライリーと外国人の就労ビザについて激論するほど(英語が)流暢だと言うつもりはない。しかし彼が質問を理解し、私たちにわかる答えを(初めて)言葉にできたのは明らかだった。


(ヒント3)
この部分にも、(ヒント1)のgrunt for effect同様に、使い方のわざとらしい単語がある。fire backである。べつにfireという単語でなくてもよさそうな部分だ。
Joh、grunt、fire、こうしてつながりのある単語を並べていけば、そろそろ意味もわかることだろう。ちなみに、英語にはfire for effectという言葉もある。
なお、後半部分で「城島は基礎英語は学んだ」と言いながら、すぐに大きくけなしているのはもちろん、「ようやく挨拶程度の英語くらいはできるようになったか」と皮肉った上で、「中南米系のスペイン語圏の野手も投手もたくさんいてスペイン語も飛び交うシアトルで、英語の挨拶程度すらやっとこさ4年も5年もかけて学んでいるようでは、捕手としてはどうしようもないわな?」という意味。

Don't get me wrong. I'm not one of those "Speak English!'' types who demands instant translation from everyone who comes over here. Johjima is a resident of Japan. Try putting yourself in his place and attempting to speak Japanese in a year or two if you went over there to play baseball six months a year. Yes, he has to understand the basics. And he does. He did last year. But as someone who speaks rudimentary Spanish, I can tell you there's a difference between me understanding one word of every three that Jose Lopez says to Yuniesky Betancourt and being able to fire back a thought or two of my own without having to think about it and write it down first.
(訳)誤解しないでもらいたい。僕は、ここに来るプレーヤー全員に簡易通訳を要求するような、「英語の国なんだから英語を話せ!」的なタイプの人間じゃあない。Johjimaは日本の住人である。彼の立場に立ってみたらいいし、そして1年か2年、1年につき6カ月野球をしに日本に行って日本語会話を試してみたらいい。ただ彼は基礎は理解しなければならない。そして彼はそうした。去年彼は基礎は学んだ。
だがしかし、(アメリカ人であってスペイン語ネイティブではない私ベイカーだが、取材に必要なため勉強して)初歩のスペイン語を話す者のひとりとしていわせてもらいたい。
(ベネズエラ出身でスペイン語を話す)ホセ・ロペスが(キューバ出身で、やはりスペイン語を話す)ユニスキー・ベタンコートに話す(スペイン語の会話の)言葉の3分の1しかわからない(=もう何年もアメリカにいて、仕事にどうしても必要なクセに、社交辞令で言ってもその程度の英語力しかない日本語ネイティブの城島の英語会話の能力や努力)と、考えをまとめてから話すだの、まず書きとめてからだのではなく、自分の考えのひとつやふたつ即座に言い返せる能力(=スペイン語ネイティブでなくても、仕事にどうしてもスペイン語が必要なので勉強して実用レベル程度には達している自分ベイカーやメジャーの取材記者たちの外国語会話能力や、スペイン語を話すプレーヤーがたいへんに多いメジャー各球団で、スペイン語が話せるように努力しなければならず、そして会話もかなり当たり前にできるようになっている他チームの英語圏キャッチャーたちの外国語会話能力。つまり、メジャーでごく普通に求められる外国語会話能力の実用レベル)とでは、まるで意味が違う。
(ブログ注:一部誤訳があったため訂正。大意には変更ありません。ご指摘に感謝します。2009年6月6日日本時間)



では、種明かしは、また明日。





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